(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240418BHJP
F16K 1/44 20060101ALI20240418BHJP
F25B 41/26 20210101ALI20240418BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K1/44 Z
F25B41/26 Z
(21)【出願番号】P 2023038527
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2019192915の分割
【原出願日】2019-10-23
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】北見 雄希
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132347(JP,A)
【文献】実開平02-116074(JP,U)
【文献】実開平03-107572(JP,U)
【文献】特開2006-266667(JP,A)
【文献】国際公開第2019/154342(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F16K 1/44
F25B 41/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジングの主弁室内に設けられた主弁ポートの周縁に形成された主弁座と近接または離隔する主弁体を備えるとともに、前記主弁体の内部の副弁室内に設けられた副弁ポートの周縁に形成された副弁座と近接または離隔する副弁体とを備える二段式の電動弁であって、
前記副弁体と、前記主弁体とは、互いに直接接触する当接部をそれぞれ備え、
前記副弁体が、前記弁ハウジングの軸線を中心線とする円柱からなるストレート部を有し、前記ストレート部の外径は、前記副弁ポートの内径よりも小さく、
前記主弁体が前記主弁座に着座するとともに前記ストレート部が前記副弁ポート内に位置することで前記副弁体と前記副弁ポートとの隙間からなる第1絞り部が形成された状態において、前記副弁体が前記当接部により前記主弁体と当接することで、前記副弁体が前記主弁体を前記主弁座に押し付けるよう構成されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記副弁体は、前記当接部と、ニードル部と、を備え、
前記ニードル部は、前記ストレート部と、前記主弁ポート側に向かって縮径するとともに前記ストレート部の前記主弁ポート側に接続されるニードルと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記当接部より前記副弁ポート側に、前記主弁室と前記副弁室とを連通する導通孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記副弁体と前記主弁体との前記当接部は、少なくとも一方が段部であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記副弁体と前記主弁体との前記当接部は、一方が前記副弁ポートの軸線を中心軸とするテーパ部であり、他方が前記軸線を中心軸とする段部であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項6】
前記主弁座または前記主弁体に、または/および、前記副弁座または前記副弁体に第2の絞り部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
【請求項7】
前記第2の絞り部が、溝または孔により構成されていることを特徴とする請求項6に記載の電動弁。
【請求項8】
圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~7のいずれか一項に記載の電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の冷凍サイクルに設けられる電動弁として、小流量制御域と大流量制御域とで流量制御する電動弁がある。このような電動弁は、室内機に搭載される用途(例えば除湿弁)があり、例えば特開2019-132347号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電動弁は、小流量制御域は例えば除湿運転を行うものであり、この小流量制御域では、主弁座の主弁ポートを主弁体で全閉状態とし、この主弁体に形成された副弁ポートとニードル弁(副弁体)との間の絞り部を冷媒が通過するように構成されている。しかし、一次側または二次側における冷媒流れの脈動などにより圧力変化や配管振動が生じ、主弁体が振動して小流量域の制御性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、主弁体を主弁座に着座状態とし、この主弁体と主弁座との間の絞り部や、主弁体に形成された副弁ポートとニードル弁との間の絞り部により冷媒の小流量制御域での流量制御を行う二段の流量制御域を有する電動弁において、小流量制御域での主弁体の振動を防止して、小流量域の制御性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁ハウジングの主弁室内に設けられた主弁ポートの周縁に形成された主弁座と近接または離隔する主弁体を備えるとともに、前記主弁体の内部の副弁室内に設けられた副弁ポートの周縁に形成された副弁座と近接または離隔する副弁体とを備える二段式の電動弁であって、前記副弁体と、前記主弁体とは、互いに直接接触する当接部をそれぞれ備え、前記副弁体が、前記弁ハウジングの軸線を中心線とする円柱からなるストレート部を有し、前記ストレート部の外径は、前記副弁ポートの内径よりも小さく、前記主弁体が前記主弁座に着座するとともに前記ストレート部が前記副弁ポート内に位置することで前記副弁体と前記副弁ポートとの隙間からなる第1絞り部が形成された状態において、前記副弁体が前記当接部により前記主弁体と当接することで、前記副弁体が前記主弁体を前記主弁座に押し付けるよう構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記副弁体は、前記当接部と、ニードル部と、を備え、前記ニードル部は、前記ストレート部と、前記主弁ポート側に向かって縮径するとともに前記ストレート部の前記主弁ポート側に接続されるニードルと、を備えることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0008】
この際、前記当接部より前記副弁ポート側に、前記主弁室と前記副弁室とを連通する導通孔が形成されることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0009】
また、前記副弁体と前記主弁体との前記当接部は、少なくとも一方が段部であることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0010】
また、前記副弁体と前記主弁体との前記当接部は、一方が前記副弁ポートの軸線を中心軸とするテーパ部であり、他方が前記軸線を中心軸とする段部であることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0011】
また、前記主弁座または前記主弁体に、または/および、前記副弁座または前記副弁体に第2の絞り部が形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0012】
また、前記第2の絞り部が、溝または孔により構成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0013】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、前記電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、副弁体と副弁ポートとの間の絞り部(隙間)による、または、主弁体と主弁座との間や副弁体と副弁座との間の絞り部による小流量制御の状態では、副弁体と主弁体との当接部(副弁体と主弁体の間にバネを介したものも含む)が当接し、副弁体が主弁体を主弁座に押し付けるので、主弁ポートでの流体の圧力変化や配管振動が生じても、主弁体が振動することなく、小流量域の制御性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図である。
【
図2】第1実施形態の電動弁の主弁体の全開状態で運転停止時、または冷房運転時の縦断面図である。
【
図3】第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。
【
図4】第2実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。
【
図5】第2実施形態における第2絞り部の実施例1及び実施例2を示す図である。
【
図6】第1及び第2実施形態の電動弁の小流量制御域状態でのニードル部と副弁ポートの拡大図である。
【
図7】第1及び第2実施形態の変形例を示す図である。
【
図8】第3実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。
【
図9】第4実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。
【
図10】第5実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。
【
図11】第6実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。
【
図12】本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図、
図2は第1実施形態の電動弁の主弁体の全開状態で運転停止時、または冷房運転時の縦断面図、
図3は第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1及び
図2の図面における上下に対応する。この電動弁100は、弁ハウジング1と、ガイド部材2と、主弁体3と、「副弁体」としてのニードル弁4と、駆動部5と、を備えている。
【0017】
弁ハウジング1は例えば、黄銅、ステンレス等で略円筒形状に形成されており、その内側に主弁室1Rを有している。弁ハウジング1の外周片側には主弁室1Rに導通される第1継手管11が接続されるとともに、下端から下方に延びる筒状部に第2継手管12が接続されている。また、弁ハウジング1の第2継手管12の主弁室1R側には円筒状の主弁座13が形成され、この主弁座13の内側は主弁ポート13aとなっており、第2継手管12は主弁ポート13aを介して主弁室1Rに導通される。主弁ポート13aは軸線Lを中心とする円柱形状の透孔(貫通した孔)である。なお、第1継手管11及び第2継手管12は、弁ハウジング1に対してろう付け等により固着されている。
【0018】
弁ハウジング1の上端の開口部には、ガイド部材2が取り付けられている。ガイド部材2は、弁ハウジング1の内周面内に圧入される圧入部21と、圧入部21より小径で圧入部21の上下に位置する略円柱状のガイド部22,23と、上側のガイド部22の上部に延設されたホルダ部24と、圧入部21の外周に設けられたリング状のフランジ部25とを有している。圧入部21、ガイド部22,23、ホルダ部24は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部25は、例えば、黄銅、ステンレス等の金属板であり、このフランジ部25は、インサート成形により樹脂製の圧入部21と共に一体に設けられている。なお、フランジ部25には主弁室1Rと後述するケース14内とを弁軸の軸線L方向に連通する孔(不図示)が設けられている。
【0019】
ガイド部材2は、圧入部21により弁ハウジング1に組み付けられ、フランジ部25を介して弁ハウジング1の上端部に溶接により固定されている。また、ガイド部材2において、圧入部21及び上下のガイド部22,23の内側には軸線Lと同軸の円筒形状のガイド孔2Aが形成されるとともに、ホルダ部24の中心には、ガイド孔2Aと同軸の雌ねじ部24aとそのねじ孔が形成されている。そして、下側のガイド部23の内側でガイド孔2A内には主弁体3が配設されている。
【0020】
主弁体3は、主弁座13に対して着座及び離座する主弁部31と、円柱状のニードルガイド孔32aを有する保持部32と、ニードルガイド孔32aの底部を構成する副弁座33と、保持部32の端部に設けられたリテーナ34と、を有している。また、ニードルガイド孔32aの下側にはこのニードルガイド孔32aに連なる副弁室3Rとなっており、この副弁室3Rとニードルガイド孔32aとの境界に「当接部」としての段部3aが形成されている。保持部32のニードルガイド孔32a内には、後述のロータ軸51に取り付けられたワッシャ43とロータ軸51と一体に形成されたニードル弁4のガイド用ボス部41とが挿通されている。なお、リング状のリテーナ34は保持部32の上端に嵌合固着または溶接等により固着されている。
【0021】
また、リテーナ34とガイド孔2Aの上端部との間には、主弁ばね35が配設されており、この主弁ばね35により主弁体3は主弁座13の方向(閉方向)に付勢されている。副弁座33の中心には軸線Lを中心とする円筒形状の副弁ポート33aが形成されている。また、段部3aより下側で保持部32の側面の一箇所には、副弁室3Rと主弁室1Rとを導通する導通孔32bが形成されており、副弁体としてのニードル弁4が副弁ポート33aを開状態としたとき、主弁室1R、副弁室3R、副弁ポート33a及び主弁ポート13aが導通する。さらに、主弁室1Rとケース14の内部は、フランジ部25に設けられた弁軸の軸線L方向に連通する孔(不図示)により連通され、ケース14の内部とガイド部材2の内部は、ガイド部材2の上部に設けられた連通孔により連通され、主弁体3の上部と主弁体3の段部3a直上の空間は、ワッシャ43の外周及びニードル弁4のガイド用ボス部41の外周と主弁体3のニードルガイド孔32aの内周との隙間により連通されることで、主弁室1Rと副弁室3Rが連通する。
【0022】
「副弁体」としてのニードル弁4は、ロータ軸51の下端部にこのロータ軸51と一体に形成されており、このニードル弁4はガイド用ボス部41とニードル部42とで構成されている。ガイド用ボス部41はニードル部42側に向かって徐々に径が小さくなる円錐台状の「当接部」としてのテーパ部41aを有し、このテーバ部41aは主弁体3の段部3a(当接部)に当接可能となっている。また、ニードル部42はテーパ部41aの端部に連結されている。また、ガイド用ボス部41の上端には、潤滑性樹脂からなる円環状のワッシャ43が配設されている。そして、ワッシャ43とガイド用ボス部41は、ニードルガイド孔32a内に摺動可能に挿通されている。
【0023】
弁ハウジング1の上端にはケース14が溶接等によって気密に固定され、このケース14の内外に駆動部5が構成されている。駆動部5は、ステッピングモータ5Aと、ステッピングモータ5Aの回転によりニードル弁4を進退させるねじ送り機構5Bと、ステッピングモータ5Aの回転を規制するストッパ機構5Cと、を備えている。
【0024】
ステッピングモータ5Aは、ロータ軸51と、ケース14の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ52と、ケース14の外周においてマグネットロータ52に対して対向配置されたステータコイル53と、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸51はブッシュを介してマグネットロータ52の中心に取り付けられ、このロータ軸51のガイド部材2側の外周には雄ねじ部51aが形成されている。この雄ねじ部51aはガイド部材2の雌ねじ部24aに螺合されており、これにより、ガイド部材2はロータ軸51を軸線L上に支持している。そして、ガイド部材2の雌ねじ部24aとロータ軸51の雄ねじ部51aはねじ送り機構5Bを構成している。また、ケース14の内側天井部で回転ストッパ機構5Cを保持する円筒部14a内には、ロータ軸51の上端に当接するバネ受け54を介してコイルバネ55が配設されており、このコイルバネ55はロータ軸51を下方に付勢することにより、ねじ送り機構5Bにおけるのバックラッシュを防止している。
【0025】
以上の構成により、ステッピングモータ5Aが駆動されるとマグネットロータ52及びロータ軸51が回転し、ロータ軸51の雄ねじ部51aとガイド部材2の雌ねじ部24aとのねじ送り機構5Bにより、マグネットロータ52と共にロータ軸51が軸線L方向に移動する。そして、ニードル弁4が軸線L方向に進退移動してニードル弁4が副弁ポート33aに対して近接又は離間する。また、ニードル弁4が上昇するとき、ワッシャ43が主弁体3のリテーナ34に係合し、主弁体3はニードル弁4と共に移動して、主弁座13から離座する。なお、マグネットロータ52には突起部52aが形成されており、マグネットロータ52の回転に伴って突起部52aが回転ストッパ機構5Cを作動させ、ロータ軸51(及びマグネットロータ52)の最下端位置及び最上端位置が規制される。
【0026】
図1の小流量制御域状態では、主弁体3は主弁座13に着座した状態で主弁ポート13aが弁閉となり、ニードル弁4により副弁ポート33aの開度が制御され、小流量の制御が行われる。また、例えば冷凍サイクルシステムの圧縮機が停止して流体(冷媒)が停止した状態で、ニードル弁4と主弁体3が上昇されると、
図2のように主弁ポート13aが全開状態となる。これにより、冷房運転時、第1継手管11から第2継手管12へ大流量の流体(冷媒)が流されたり、暖房運転時、第2継手管12から第1継手管11へ大流量の流体(冷媒)が流される。
【0027】
図3に示すように、ニードル部42は、軸線Lを中心線とする円柱からなるストレート部42aと、先端側にかけて縮径されたニードル42bとから構成されている。また、ストレート部42aの外径は、副弁ポート33aの内径より小さくなっており、ストレート部42aと副弁ポート33aとの間には第1の絞り部(隙間)が形成される。そして、この第1絞り部を一定流量の冷媒が流れることにより小流量制御が行われる。また、この小
流量制御の状態では、ニードル弁4のガイド用ボス部41のテーパ部41aが主弁体3の段差部3aに当接する。そして、このときバックラッシュ防止用のコイルバネ55の付勢力により、ニードル弁4は主弁体3を主弁座13側に押圧する。したがって、主弁室1Rと主弁ポート13aとの間で流体の圧力変化が生じても、主弁体3が振動することなく、小流量域の制御性が向上する。
【0028】
図4は第2実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図、
図5は第2実施形態における第2絞り部の実施例1及び実施例2を示す図、
図6は第1及び第2実施形態の電動弁の小流量制御域状態でのニードル部と副弁ポートの拡大図、
図7は第1及び第2実施形態の電動弁の変形例を示す図であり、以下の各実施形態及び変形例において電動弁の全体構成は
図1及び
図2と同様である。
【0029】
図4の第2実施形態の電動弁でも、ニードル部42のストレート部42aと副弁ポート33aとの間で第1の絞り部を構成すること、小流量制御の状態でニードル弁4のテーパ部41aが主弁体3の段差部3aを当接、押圧して、主弁体3が振動することなく、小流量域の制御性が向上することは、第1実施形態と同様である。これに加えて第2実施形態では、主弁体3と主弁座13との間に第2絞り部Pを形成したものである。
【0030】
図5(A)の実施例1は、主弁座13において主弁ポート13aの開口縁に「第2の絞り部P」としての溝6を形成したものである。溝6は、副弁ポート33aとニードル部42のストレート部42aとの第1絞り部により小流量制御が行われるときにも、この溝6により主弁室1Rから主弁ポート13aに冷媒を流す作用をする。したがって、副弁ポート33aとニードル部42との絞り部の前後の差圧が減少し、この絞り部での冷媒通過音を低減することができる。
【0031】
図5(B)の実施例2は、主弁3の主弁部31において「第2の絞り部P」としての溝6′を形成したものである。そして、実施例1と同様に。溝6′は、副弁ポート33aとニードル部42のストレート部42aとの第1絞り部により小流量制御が行われるときにも、この溝6′により主弁室1Rから主弁ポート13aに冷媒を流す作用をする。したがって、副弁ポート33aとニードル部42との絞り部の前後の差圧が減少し、この絞り部での冷媒通過音を低減することができる。
【0032】
また、
図6に示すように、ニードル部42は、軸線Lを中心線とする薄型円柱からなるストレート部42aと、先端側にかけて縮径されたニードル42bとから構成されている。また、ストレート部42aの外径は、副弁ポート33aの内径より小さくなっており、ストレート部42aと副弁ポート33aとの間には第1絞り部(隙間)が形成される。そして、この第1絞り部を一定流量の冷媒が流れることにより小流量制御が行われる。また、この小流量制御のとき、ストレート部42aと副弁ポート33aの絞り部に流れ込む冷媒の圧力は、副弁ポート33aの副弁室3R側に形成された溝6(第2絞り部)により軸線L周りに分散され、副弁座33とニードル部42とで構成される第1絞り部の前後の差圧が減少し、この第1絞り部での冷媒通過音を低減することができる。
【0033】
図7の変形例は、ニードル部42に「第2絞り部」としての溝4aを形成したものである。溝4aは、ニードル部42の前記ガイド用ボス部44側の付け根部42cからストレート部42aの中ほどまで形成したものである。また、この溝4aは複数(この例では6個)形成され、この溝4aは、軸線L周りで等間隔(60°毎)となる軸線Lに対して回転対称な位置に形成されている。さらに、溝4aの水平断面の面積は軸線L方向で副弁ポート33aに近づくにしたがって小さくなっている。この変形例では、溝4aはストレート部42aの中ほどまでしか形成されていないので、ストレート部42aと副弁ポート33aとの絞り部の開口面積は実施形態と同様に一定であり、小流量制御のときの流量を一定に保つことができる。
【0034】
そして、この変形例でも、小流量制御のとき、ストレート部42aと副弁ポート33aの絞り部に流れ込む冷媒の圧力は、ニードル部42に形成された溝4aより軸線L周りに分散され、副弁座33とニードル部42とで構成される絞り部の前後の差圧が減少し、この絞り部での冷媒通過音を低減することができる。
【0035】
図8は第3実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。この第3実施形態と第1実施形態との違いは、「副弁体」としてのニードル弁4′の構造である。この第3実施形態のニードル弁4′は、ロータ軸51と一体に形成された薄型のガイド用ボス部41′と、第1実施形態と同様なニードル部42と、円柱部43と、ニードル部42側に向かって徐々に径が小さくなる円錐台状の「当接部」としてのテーパ部44とで構成されている。そして、ニードル部42はテーパ部44の端部に連結されており、テーバ部44は主弁体3の段部3aに当接可能となっている。また、ガイド用ボス部41′と主弁体3の段差部3aとの間には、潤滑性樹脂からなる円環状のバネ受け7aを介してコイルバネ7が配設されている。
【0036】
以上の構成により、第1実施形態と同様に、ニードル部42のストレート部42aと副弁ポート33aとの間の第1絞り部を一定流量の冷媒が流れることにより小流量制御が行われ、この小流量制御の状態では、ニードル弁4′のテーパ部44が主弁体3の段部3aに当接する。そして、このときコイルバネ7の付勢力により、ニードル弁4′は主弁体3を主弁座13側に押圧する。したがって、主弁室1Rと主弁ポート13aとの間で流体の圧力変化が生じても、主弁体3が振動することなく、小流量域の制御性が向上する。
【0037】
図9は第4実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。この第4実施形態は第3実施形態のテーパ部44を無くしたものである。この第4実施形態のニードル弁4″は、ロータ軸51と一体に形成された薄型のガイド用ボス部41″(フランジ部)と、1実施形態と同様な「副弁体」としてのニードル部42と、長尺円錐台状の連結ロッド43″とで構成されており、ニードル部42は連結ロッド43″の端部に連結されている。また、第3実施形態と同様に、ガイド用ボス部41″と主弁体3の段部3aとの間には、潤滑性樹脂からなる円環状のバネ受け7aを介してコイルバネ7が配設されている。そして、コイルバネ7の下端は段部3aに当接する「当接部」を構成している。
【0038】
以上の構成により、第1実施形態と同様に、ニードル部42のストレート部42aと副弁ポート33aとの間の第1絞り部を一定流量の冷媒が流れることにより小流量制御が行われ、この小流量制御の状態では、コイルバネ6の付勢力により、ニードル弁4″は主弁体3を主弁座13側に押圧する。したがって、主弁室1Rと主弁ポート13aとの間で流体の圧力変化が生じても、主弁体3が振動することなく、小流量域の制御性が向上する。
【0039】
図10は第5実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。この第5実施形態と第1実施形態との違いは、ニードル弁4のテーパ部41aに対向する主弁体3の段差部3aに溝8を形成したものである。この第5実施形態でも、ニードル部42のストレート部42aと副弁ポート33aとの間の第1絞り部で小流量制御が行われること、この小流量制御のとき、ニードル弁4が主弁体3を主弁座13側に押圧することで、主弁体3が振動することなく、小流量域の制御性が向上することは、第1実施形態と同様である。溝8は、主弁体3のニードルガイド孔32a内とガイド部材2のガイド孔2A内とを副弁室3Rに導通し、テーパ部41aが主弁体3の段部3aに当接した状態でもニードル弁4に対する背圧を副弁室3Rと均圧するものである。
【0040】
図11は第6実施形態の電動弁の小流量制御域状態の要部拡大縦断面図である。この第
6実施形態と第1実施形態との違いは、ニードル弁4のテーパ部41aに溝9を形成したものである。この第6実施形態でも、ニードル部42のストレート部42aと副弁ポート33aとの間の第1絞り部で小流量制御が行われること、この小流量制御のとき、ニードル弁4が主弁体3を主弁座13側に押圧することで、主弁体3が振動することなく、小流量域の制御性が向上することは、第1実施形態と同様である。溝9はガイド用ボス部41の外周側からニードル部42のストレート部42aの付け根まで形成したものである。ニードル部42のストレート部42aと副弁ポート33aとの間の第1絞り部を一定流量の冷媒が流れることにより小流量制御が行われることは前記各実施形態と同様である。溝9は、主弁体3のニードルガイド孔32a内とガイド部材2のガイド孔2A内とを副弁室3Rに導通し、テーパ部41aが主弁体3の段部3aに当接した状態でもニードル弁4に対する背圧を副弁室3Rと均圧するものである。
【0041】
次に、
図12に基づいて本発明の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステムは、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記実施形態の電動弁100は、空気調和機の第1室内側熱交換器91(除湿時冷却器として作動)と第2室内側熱交換器92(除湿時加熱器として作動)との間に設けられており、圧縮機95、四方弁96、室外側熱交換器94および電子膨張弁93とともに、ヒ-トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内側熱交換器91と第2室内側熱交換器92及び電動弁100は室内に設置され、圧縮機95、四方弁96、室外側熱交換器94および電子膨張弁93は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0042】
除湿弁としての実施形態の電動弁100は、除湿時以外の冷房時または暖房時には主弁体が全開状態とされて、第1室内熱交換器91と第2室内熱交換器92は一つの室内熱交換器とされる。そして、この一体の室内熱交換器と室外熱交換器94は、「蒸発器」及び「凝縮器」として択一的に機能する。すなわち、電子膨張弁としての電動弁93は、蒸発器と凝縮器の間に設けられている。
【0043】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁100を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0044】
また、前記実施形態では、ニードル弁側に当接部としてのテーバ部を形成し、主弁体側に当接部としての段部を形成した例について説明したが、ニードル弁側に円柱状の段部を形成し、主弁体側にこの円柱状の段部をに対向するようなすり鉢状のテーバ部を形成してもよい。また、前記実施形態では、主弁体、主弁座、段差部、又は、ニードル弁に形成した第2の絞り部は溝の構成として記載したが、第2の絞り部は溝に限定するものではなく、孔などによる第2絞り部でもよい。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 弁ハウジング
1R 主弁室
11 第1継手管
12 第2継手管
13 主弁座
13a 主弁ポート
14 ケース
2 ガイド部材
2A ガイド孔
21 圧入部
22 ガイド部
23 ガイド部
24 ホルダ部
24a 雌ねじ部
25 フランジ部
3 主弁体
3R 副弁室
3a 段部(当接部)
31 主弁部
32 保持部
32a ニードルガイド孔
32b 導通孔
33 副弁座
33a 副弁ポート
34 リテーナ
35 主弁ばね
4 ニードル弁(副弁体)
41 ガイド用ボス部
41a テーパ部(当接部)
42 ニードル部
43 ワッシャ
5 駆動部
5A ステッピングモータ
51 ロータ軸
51a 雄ねじ部
52 マグネットロータ
53 ステータコイル
54 バネ受け
55 コイルバネ
5B ねじ送り機構
5C ストッパ機構
L 軸線
6 溝
6′ 溝
4′ ニードル弁(副弁体)
41′ ガイド用ボス部
42 ニードル部
43 円柱部
44 テーパ部(当接部)
7a バネ受け
7 コイルバネ
4″ ニードル弁(副弁体)
41″ ガイド用ボス部
42 ニードル部
43″ 連結ロッド
8 溝
9 溝
91 第1室内側熱交換器
92 第2室内側熱交換器
93 電子膨張弁
94 室外側熱交換器
95 圧縮機
96 四方弁
100 電動弁