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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/14 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
D06F39/14 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020127993
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025265
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拓海
(72)【発明者】
【氏名】徳崎 雅朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 将平
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-167290(JP,A)
【文献】実開平01-059593(JP,U)
【文献】特開2017-221326(JP,A)
【文献】特開2002-331197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0044843(US,A1)
【文献】中国実用新案第209724073(CN,U)
【文献】特開平11-033288(JP,A)
【文献】特開平9-30555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類が出し入れされる開口部を有する本体と、
前記開口部を開閉する蓋体と、を備え、
前記蓋体は、前記本体に軸支され、閉じられるときに前記本体に当接する衝撃を緩衝する緩衝部材を備え、
前記緩衝部材は、下面になる円形でわずかに膨出した形状の当接面を有し、
前記緩衝部材の前記当接面が当接する前記本体の接触部は、上面が上方に丸みを有する半球状の断面形状の突起形状に形成され
前記接触部は、1点の前記突起形状を中心とし、前記1点の前記突起形状の円周に6点の前記突起形状を配した複数の突起形状に形成される、
洗濯機。
【請求項2】
前記接触部は、滑らかな面の連続で突起形状に形成される、
請求項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯物が出し入れされる開口部に蓋体を有する洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蓋体の閉鎖時に大きな衝突音が出ることのないようにする洗濯機を開示する。この洗濯機は、上面部に、洗濯物出入口を有すると共に、この洗濯物出入口の周辺部に一端部が上下に回動可能に枢支されてその回動により前記洗濯物出入口を開閉する蓋を備えたものにおいて、その蓋の下面の全周に、蓋の閉鎖時に前記洗濯物出入口の周囲部分に当接する緩衝部材を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-167290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、蓋体に備え付けられた弾性体の緩衝部材と上部枠体との長時間の接触に伴い、緩衝部材が溶け出して付着しても、上部枠体の接触部における色移りを目立たなくさせるようにして、外観品位が損なわれることを抑制できる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における洗濯機は、衣類が出し入れされる開口部を有する本体と、前記開口部を開閉する蓋体と、を備える。前記蓋体は、前記本体に軸支され、閉じられるときに前記本体に当接する衝撃を緩衝する緩衝部材を備え、前記緩衝部材は、下面になる円形でわずかに膨出した形状の当接面を有し、前記緩衝部材の前記当接面が当接する前記本体の接触部は、上面が上方に丸みを有する半球状の断面形状の突起形状に形成され、前記接触部は、1点の前記突起形状を中心とし、前記1点の前記突起形状の円周に6点の前記突起形状を配した複数の突起形状に形成される。
【発明の効果】
【0006】
本開示における洗濯機は、上部枠体の平面に蓋体の緩衝部材が上部枠体の平面に直接当接しないように突起形状の接触面を設けることにより、接触面積を小さくできる。このため、緩衝部材が付着する面積を小さくし、上部枠体への色移りを目立たなくさせることで、外観品位が損なわれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1における洗濯機の外観斜視図
図2】実施の形態1における洗濯機の蓋体が開いた状態の外観斜視図
図3】実施の形態1における洗濯機の蓋体に設けられる緩衝部材の斜視図
図4】(a)実施の形態1における洗濯機の上部枠体に設けられる接触部の縦断面図、(b)実施の形態1における洗濯機の上部枠体に設けられる接触部の縦断面図
図5】実施の形態1における洗濯機の上部枠体に設けられる接触部の斜視図
図6】実施の形態1における洗濯機の蓋体が閉められた状態の要部側断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、蓋体に備え付けられた弾性体の緩衝部材と上部枠体との長時間の接触に伴い、緩衝部材が熱などにより溶け出したり、擦れ合ったりして、上部枠体の接触部に付着する状態が発生していた。また、特に、上部枠体と緩衝部材の色が異なる場合、その色移りが目立ち、外観品位が損なわれてしまっていた。そこで
、これらを同系色で構成する方法も考えられるが、緩衝部材はゴム材料で、上部枠体は樹脂材料で形成され、材質が異なるため、光の反射具合の違いなどにより、使用者には異物が付着したように見え、外観品位が損なわれることには違いはなかった。また、これらの材料を、より摩擦に強い材料または劣化が小さい材料とすることも考えられるが、いずれも相応のコストアップとなる。このため、緩衝部材が上部枠体に付着したとしてもその色移りを目立ちにくくすると言う課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0009】
そこで、本開示は、緩衝部材が上部枠体の接触部に当接する面積を小さくし、色移りを目立たなくさせることで外観品位が損なわれることを抑制できる洗濯機を提供する。
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0012】
(実施の形態1)
以下、図1図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0013】
[1-1.構成]
[1-1-1.洗濯機の構成]
図1および図2において、洗濯機は、本体1の内部に衣類などの洗濯物が収容される洗濯槽3が設けられ、本体1の一部として上部に上部枠体2が設けられる。上部枠体2には、洗濯槽3の開口に合わせて洗濯物が出し入れされる開口部2aが形成され、開口部2aを覆う蓋体5が設けられる。蓋体5の後方に操作表示部4が配設される。操作表示部4の内方には、洗濯機の運転制御を行う制御装置(図示せず)が収設される。
【0014】
図2において、蓋体5は、回転軸6を支点にして開閉自在となるように上部枠体2に軸支される。蓋体5は、閉じられるときに上部枠体2当接する衝撃を緩衝するための緩衝部材7を先端側の裏面の2カ所に備える。上部枠体2には、蓋体5が閉じられるときに緩衝部材7が当接する接触部8が、2カ所設けられる。
【0015】
[1-1-2.緩衝部材および接触部の構成]
次に、緩衝部材7および突起形状に形成される接触部8の構成を説明する。
【0016】
緩衝部材7は、図3に示すような形状であり、下面になる円形でわずかに膨出した形状の当接面7aを備える。緩衝部材7は、上部に係止部7bが設けられ、蓋体5の裏面に設けられる穴に差し込まれて係止されることにより抜け落ちなくなる。使用される材料は、ゴム系であれば特に限定されないが、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が用いられる。また、色は、ホワイト、ブラックおよびベージュ等が一般的に用いられる。
【0017】
接触部8は、緩衝部材7との接触面積が小さくなるような円形の突起形状に形成される。使用される材料は、特に限定されないが、PP(ポリプロピレン)が一般的に用いられる。
【0018】
接触部8は、第1の例としての図4(a)に示すような半球状の断面、もしくは、第2の例としての図4(b)に示すような上部が半球状で裾が広がる山形の断面、を有する突起形状に形成されてもよい。特に、第2の例としての図4(b)のように、上部が丸みを有するだけでなく、裾部分も丸みを帯びて滑らかな面の連続で上部枠体2の平面2bに接続するように形成されてもよい。このように、面同士の接続部分が識別できないように滑らかであれば、接続部分に汚れが溜まるようなことがなく、外観品位が損なわれない。
【0019】
なお、接触部8の突起形状は、緩衝部材7に対応して1つずつあればよいが、本実施の形態では、図5および図6に示すように、1つではなく複数個の突起形状に形成される。また、その配列は、緩衝部材7の当接面7aの円形形状に対応するように、1点を中心とし、その円周に6点配して形成される。この形状は、同じ直径の円が幾何学的に配列されるものであり、意匠としてもバランスよく違和感なく取り入れることができる。
【0020】
また、接触部8の突起形状は、その先端があまりにも細いと、衝撃吸収性能が低下したり、緩衝部材7の当接面7aの変形が大きくなったりする。さらに、場合によっては、使用者が触れてけがをしたりすることも推測されるので、半球状など相応の丸みを有するように形成されるとよい。
【0021】
[1-2.動作]
[1-2-1.洗濯機の動作]
以上のように構成された洗濯機について、以下その動作、作用を説明する。
【0022】
洗濯運転は、一般の洗濯機と変わるところはない。つまり、使用者は、蓋体5を開放し、開口部2aから洗濯物を洗濯槽3に投入し、蓋体5を閉める。そして、電源を入れ、操作表示部4によって洗濯コースを設定して運転を開始する。洗濯コースは、基本的には、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程が順番に行われる。
【0023】
運転が開始されると、洗い工程として、洗濯槽3内に洗剤を含む洗濯水が供給され、パルセータ(図示せず)が回転して洗濯物が撹拌洗浄される。洗い工程が完了すると、すすぎ工程として、汚れた洗濯水が排出され、あらためて水道水が供給されて、洗濯物がすすがれる。すすぎ工程が完了すると、脱水工程として、すすぎ水が排出され、洗濯槽3が高速回転して、洗濯物に含まれる水が遠心力により分離され脱水される。脱水工程が完了すると、洗濯運転は終了し、洗濯機の電源は自動的に切れる。
【0024】
[1-2-2.蓋体閉時緩衝動作]
洗濯機が使用される中で、使用者が洗濯物を洗濯槽3に投入して洗濯運転を行うとき、あるいは、使用者が洗濯機を使用し終わったとき、図1に示すように、蓋体5は閉じられる。このとき、蓋体5の裏に設けられる緩衝部材7は、開口部2aの前方の上部枠体2に設けられる接触部8に衝突して、蓋体5が閉じられる衝撃を緩和する。そして、図6に示すように、洗濯機が運転されている間、あるいは、使用者が次に洗濯機を使用するまで、蓋体5は閉じられた状態で、蓋体5の重量の多くが緩衝部材7にかかった状態が継続される。
【0025】
このように、蓋体5が閉じられているとき、緩衝部材7と上部枠体2の接触部8とが長時間接触する。また、蓋体5が閉じられるときの衝撃により緩衝部材7は一時的に変形する。しかし、通常の当接状態に戻ると、接触部8の上部のみと接触している状態になり、接触面積は微小となる。
【0026】
そして、このような衝突と長時間接触が、継続的に行われることで、緩衝部材7から接触部8に色移りする。ただし、色移りしたとしても、接触部8の上部のみであり、その面
積は微小な面積に限られる。これにより、色移りを目立たなくさせることができ、外観品位が損なわれることを抑制できる。
【0027】
また、本実施の形態では、接触部8は、複数個の突起形状が所定の配列で形成される。これにより、複数個の突起形状による陰影が発生する。この陰影により、色移りを視覚的に軽減できる。
【0028】
さらに、緩衝部材7を複数の点で支持でき、緩衝部材7の当接面7aの1点に荷重が集中することによる変形を抑制できる。
【0029】
また、必ずしも複数の点で同時に支持する必要はない。しかし、蓋体5の取り付けにおけるガタツキ、および、寸法誤差などによって、蓋体5が閉じられるときに僅かな位置ズレが生じたとしても、いずれかの突起形状が緩衝部材7に当接して支持できる。
【0030】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、洗濯機は、洗濯物が出し入れされる開口部2aを有する本体1の上部枠体2と、開口部2aを開閉する蓋体5とを備える。蓋体5は、上部枠体2に軸支され、閉じられるときに上部枠体2に衝突する衝撃を緩衝する緩衝部材7を備える。そして、緩衝部材7が当接する上部枠体2の接触部8は、互いの接触面積が小さくなるような突起形状に形成される。
【0031】
これにより、洗濯機は、蓋体5の緩衝部材7と上部枠体2との接触部8との接触面積を小さくできる。このため、緩衝部材7が付着する面積を小さくし、上部枠体2への色移りを目立たなくさせることで、外観品位が損なわれることを抑制できる。
【0032】
また、本実施の形態の洗濯機において、接触部8は、半球状の突起形状に形成される。これにより、緩衝部材7の当接面7aの変形が大きくなって衝撃吸収性能が低下したり、使用者が触れてけがをしたりすることがない。
【0033】
また、本実施の形態の洗濯機において、接触部8は、複数個の突起形状に形成される。これにより、複数個の突起形状により発生する陰影により、色移りを視覚的に軽減できる。また、緩衝部材7を複数の点で支持して、緩衝部材7の当接面7aの1点に荷重が集中することによる変形を抑制できる。また、蓋体5が閉じられるときに僅かな位置ズレが生じたとしても、いずれかの突起形状が緩衝部材7に当接して支持できる。
【0034】
また、本実施の形態の洗濯機において、接触部8は、緩衝部材7の形状に対応した突起形状に形成される。これにより、意匠としてバランスよく配列されるとともに、蓋体5が閉じられるときに僅かな位置ズレが生じたとしても、いずれかの突起形状が緩衝部材7に当接して支持できる。
【0035】
また、本実施の形態の洗濯機において、接触部8は、1点を中心とし、その円周に6点配した複数の突起形状に形成される。この形状は、同じ直径の円を幾何学的に配列したものであり、意匠としてもバランスよく違和感なく取り入れることができる。
【0036】
また、本実施の形態の洗濯機において、接触部8は、滑らかな面の連続で突起形状に形成される。これにより、面同士の接続部分が識別できないように滑らかになり、接続部分に汚れが溜まるようなことがなく、外観品位が損なわれない。
【0037】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。
しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0038】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0039】
実施の形態1では、上部枠体2に設けられる接触部8として、上部が円形で半球状の突起形状およびその複数配列について説明した。しかし、これに限定されない。例えば、上部の形状が、丸みを帯びた四角形などの多角形でもよい。また、上部形状が丸みを帯びた帯状の突起形状でもよいし、これらを複数配列してもよい。また、半球状の1点を中心とし、その周囲にドーナツ状の突起形状が形成されてもよい。いずれにしても、緩衝部材7と接触部8との接触面積が、従来のように単純に面同士が接触するときより小さくなって、色移りしても目立たなくなればよい。
【0040】
また、実施の形態1では、洗濯機の一例として縦型洗濯機を説明した。洗濯機は、衣類などの布を水洗いできるものであればよい。したがって、洗濯機は、縦型洗濯機に限定されない。ただし、洗濯機として縦型洗濯機を用いれば、蓋体5を閉じたときに自重で上部枠体2に接触するので、緩衝部材7から接触部8への色移りが起こりやすく、軽減の効果を得やすい。また、洗濯機としてドラム式洗濯機用いてもよい。洗濯機としてドラム式洗濯機を用いれば、洗濯物を出し入れする開口部2aを側面に設けることができるので、洗濯機のデザインの自由度を広げることができる。
【0041】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示は、緩衝部材を有する蓋体を備えた洗濯機に適用可能である。具体的には、縦型洗濯機、ドラム式洗濯機などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 本体
2 上部枠体
2a 開口部
2b 平面
3 洗濯槽
4 操作表示部
5 蓋体
6 回転軸
7 緩衝部材
7a 当接面
7b 係止部
8 接触部
図1
図2
図3
図4
図5
図6