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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】ベルトプレスのろ布折り方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 9/06 20060101AFI20240419BHJP
   C02F 11/123 20190101ALI20240419BHJP
   B01D 33/04 20060101ALI20240419BHJP
   B01D 33/58 20060101ALI20240419BHJP
   B01D 33/80 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
B30B9/06 G
C02F11/123 ZAB
B01D33/04 D
B01D33/34
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021121180
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017151
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】新川 颯
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅義
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-73933(JP,A)
【文献】特開昭51-19177(JP,A)
【文献】特開2017-136526(JP,A)
【文献】米国特許第6221265(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/06
C02F 11/123
B01D 33/04
B01D 33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラー(2…)に走行自在に掛け回された無端状のろ布(3)上に汚泥を供給する汚泥供給工程(S1)と、ろ布(3)を幅方向両側方から汚泥供給側に向かって折り返し、折り返したろ布(3)同士を重ね合わせてろ過空間(5)を形成するろ布折り工程(S3)と、ろ過空間(5)内の汚泥を圧搾ろ過する圧搾ろ過工程(S4)と、折り返したろ布(3)を展開するろ布展開工程(S5)と、展開したろ布(3)からケーキを剥離させるケーキ剥離工程(S6)と、を行うベルトプレスにおいて、
ろ布折り工程(S3)前段で、
蛇行検知部(18)をろ布(3)の幅方向に揺動し、強制的にろ布(3)と接触させ、蛇行修正装置(9)にてろ布(3)を幅方向に移動させて蛇行検知部(18)と離間させる折り位置偏移工程(S2)を備え、
ろ布(3)を任意の方向に所定幅移動させて折り装置(6)に案内し、ろ過空間(5)両端に形成される折り部(10a)、(10b)の位置を偏移させる
ことを特徴とするベルトプレスのろ布折り方法。
【請求項2】
前記蛇行検知部(18)は、ろ布(3)の幅方向に揺動可能な揺動部(28)を有する移動機構(26)に設ける
ことを特徴とする請求項1に記載のベルトプレスのろ布折り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行自在に掛け回した無端状ろ布の幅方向に形成する折り目の位置を偏移させながら運転することでろ布の長寿命化を図るベルトプレスのろ布折り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の無端状ろ布を複数のローラーで走行自在に掛け回し、2枚のろ布間に形成されたろ過空間に挟み込んだ汚泥をろ布の張力と加圧ローラーによる圧搾力で脱水するベルトプレスが知られている。
【0003】
特許文献1には、2枚の無端状ろ布を構成する上ろ布と下ろ布の両端を重ねて折り返し、上下のろ布間にろ過空間を形成したベルトプレスが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、1枚の無端状ろ布を幅方向に折り返してろ過空間を形成したベルトプレスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6164534号公報
【文献】特許第6233715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、2枚の無端状ろ布を用いたベルトプレスは、2枚のろ布を重ね合わせてろ過空間を形成している。しかし、上下にろ布を重ね合わせただけの構成であり、ろ布の合わせ面のシール性が低いため、加圧時に外部からの圧力を受けてろ布の合わせ面から汚泥が流れ出るサイドリーク現象が生じていた。
【0007】
サイドリークの発生を防ぐために、重ね合わせた上下ろ布を幅方向の両側方から汚泥供給側に向かって折り返してろ過空間を形成するベルトプレスが特許文献1に開示されているが、ろ布の折りと展開を繰り返しながら運転する必要があったため、折り部に応力が集中的に働いていた。これにより、折り部に破断が生じてろ布破れを引き起こす問題を有していた。特に、自由端同士を重ね合わせて縫製したろ布継手と交差する位置に形成される折り部で折りと展開を繰り返すことで縫製部に応力が集中して働き、縫製部の摩耗により早期にろ布が破断していた。ろ布の破断が頻繁に生じていたため、その都度、ろ布の修理あるいは交換を行う必要があった。修理及び交換時には運転を停止する必要があったため、運転停止時間が長期化する課題も有していた。
【0008】
特許文献2のベルトプレスも同様に、ろ布を幅方向の両側方から汚泥供給側に向かって折り返してろ過空間を形成していたため、ろ過空間両端に形成される折り部に応力が集中的に働き、ろ布が早期に破れる課題を有していた。短期間でろ布破れが生じていたため、ろ布の修理や交換を頻繁に行う必要があり、手間やコストが発生していた。
【0009】
また、特許文献2には、ろ布の折り部の位置を偏移させることで様々なろ過空間を形成できることが記されているが、折り部の位置を偏移させる目的として、折り部に働く応力を分散させてろ布の延命を図る等の記載や示唆はない。
【0010】
本発明は、無端状ろ布の幅方向に形成される折り部の位置を偏移させながら運転することで、折り部にかかる応力を分散して早期のろ布破れを防ぐことができるベルトプレスのろ布折り方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
複数のローラーに走行自在に掛け回された無端状のろ布上に汚泥を供給する汚泥供給工程と、ろ布を幅方向両側方から汚泥供給側に向かって折り返し、折り返したろ布同士を重ね合わせてろ過空間を形成するろ布折り工程と、ろ過空間内の汚泥を圧搾ろ過する圧搾ろ過工程と、折り返したろ布を展開するろ布展開工程と、展開したろ布からケーキを剥離させるケーキ剥離工程と、を行うベルトプレスにおいて、ろ布折り工程前段で、蛇行検知部をろ布の幅方向に揺動し、強制的にろ布と接触させ、蛇行修正装置にてろ布を幅方向に移動させて蛇行検知部と離間させる折り位置偏移工程を備え、ろ布を任意の方向に所定幅移動させて折り装置に案内し、ろ過空間両端に形成される折り部の位置を偏移させることで、折り部に応力が局所的に働くことを防止できる。
【0012】
前記蛇行検知部は、ろ布の幅方向に揺動可能な揺動部を有する移動機構に設けることで、任意の方向に所定幅だけ揺動可能となる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、蛇行検知部を幅方向に強制的に揺動させてろ布に接触させ、蛇行修正装置にてろ布を幅方向に移動させることで、ろ布の幅方向に形成される折り部の位置を偏移させることができる。折り部の位置を偏移させることでろ布の折りと展開により折り部に働く応力を分散でき、ろ布の長寿命化を図ることができる。これにより頻繁にろ布を修理及び交換する必要がなくなり、ろ布交換の手間やコストが不要となるとともに、修理や交換に伴う運転停止時間も短くなり、効率よく連続脱水運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る、ベルトプレスの概略側面図である。
図2】同じく、折り装置で折られたろ布の展開図である。
図3】同じく、折り装置で折られたろ布の断面図である。
図4】同じく、ろ布の折り装置の平面図である。
図5】同じく、ろ布の折り装置の側面図である。
図6】同じく、展開ローラーに巻き掛けたろ布の平面図である。
図7】同じく、蛇行修正装置及び蛇行検知部を配置したろ布の平面図及びA-A断面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る、蛇行修正装置及び蛇行検知部を配置したろ布の平面図である。
図9】同じく、蛇行検知部を配置したろ布の断面図である。
図10】本発明に係る、蛇行検知部の移動機構の概略側面図である。
図11】本発明の実施例に係る、折り位置偏移工程S2を説明するための平面図である。
図12】同じく、折り位置偏移工程S2を説明するための平面図である。
図13】同じく、折り位置偏移工程S2を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係るベルトプレスの概略側面図である。
本発明のベルトプレス1は、複数のローラー2…と、該複数のローラー2…に掛け回して走行自在とした無端状の一枚の上ろ布3a及び下ろ布3bと、下ろ布3b上に汚泥を供給するホッパー4と、下ろ布3bを幅方向両側方から汚泥供給側に折り返し、折り返した下ろ布3bと上ろ布3aを重ね合わせ、後段で示すろ過空間5を形成する折り装置6と、ろ過空間5を形成した下ろ布3bと上ろ布3aを巻き掛けるせん断ロール7と、折り返した下ろ布3bと上ろ布3aをそれぞれ展開する展開ローラー8と、下ろ布3bと上ろ布3aの蛇行を修正する蛇行修正装置9と、下ろ布3bと上ろ布3aの蛇行を検知する蛇行検知部18と、を備える。
【0016】
複数のローラー2…に掛け回された無端状の一枚の下ろ布3bは、折り装置6により幅方向の両端が折り返される。無端状の下ろ布3bが汚泥を受け入れるよう、折り装置6は下ろ布3bの両端を進行方向(縦方向)に折りながら汚泥をホッパー4より供給する。従って、折り返す過程で、下ろ布3bの両端を折り、下ろ布3b断面がU型となったところで下ろ布3b上に汚泥を供給する。汚泥供給後、下ろ布3bに供給された汚泥を覆うように上ろ布3aを案内ローラー16で案内し、走行させる。
【0017】
下ろ布3bと上ろ布3aは折り装置6で幅方向両端を折り返すことでろ過空間5を形成している。ろ過空間5に汚泥を供給された下ろ布3bと上ろ布3aはせん断ロール7に巻き掛けることで汚泥を圧搾ろ過する。圧搾ろ過後、展開ローラー8により折られた下ろ布3bと上ろ布3aをそれぞれ展開し、生成されたケーキが剥離されて外部に排出される。
【0018】
展開ローラー8から案内ロール16に回帰する上ろ布3a上に蛇行修正装置9、蛇行検知部18を設けている。ろ布3走行時にろ布3の伸びや、ろ過空間5内の汚泥の偏在による上ろ布3aの蛇行を蛇行検知部18により検知した場合、蛇行修正装置9にて蛇行修正を行う。同様に、展開ローラー8からせん断ロール7に回帰する下ろ布3bに蛇行修正装置9、蛇行検知部18を設けており、下ろ布3bの蛇行を検知した場合、蛇行修正を行う。
【0019】
図2は、本発明に係る、折り装置で折られたろ布の展開図である。
ろ布3は、幅方向両側からそれぞれ任意の位置で汚泥の供給側に向かって折り返される。進行方向に対してろ布3の左端部から供給側に向かって任意の距離t1だけ折り返すことで折り部10aが形成される。進行方向に対してろ布3の右端部から供給側に向かって任意の距離t2だけ折り返すことで折り部10bが形成される。ろ布3を左側方から折り返した際に形成される折り面を折り面11a、右側方から折り返した際の折り面を折り面11bとする。
なお、無端状の一枚の上ろ布3aおよび無端状の一枚の下ろ布3aはどちらも同様に折り返すため、ろ布3は、上ろ布3aまたは、下ろ布3を示す。
【0020】
図3は、本発明に係る、折り装置で折られたろ布の断面図である。
図3(a)に示すように、上ろ布3aと下ろ布3bを重ね合わせた状態で両側方から汚泥供給側に向かって幅方向に折り返すことでろ過空間5が形成される。外部からの圧力で変形するろ過空間5の幅方向の両端を折り部10a、折り部10bで形成することでサイドリークの発生を防いでいる。折り返した下ろ布3bの折り面11a及び折り面11bは、対応する上ろ布3aの折り面11a及び折り面11bと重なることでろ過空間5のシールの役割を果たす。シール性を高くするためには、上ろ布3aと下ろ布3bの折り面11a、折り面11bの重なる面積を増やせばよい。上ろ布3aと下ろ布3bの折り面11a、折り面11bの重なる箇所をさらに折り返すことでもシール性は向上する。
【0021】
折り面11a及び折り面11bを形成する際に両側方から折り返す距離t1、t2は同じ長さであっても異なる長さであってもよい。また、図3(b)に示すように、二つの折り部10a、10b間と同等幅の上ろ布3aを汚泥の上方に案内する構成や、図3(c)に示すように、折り返した下ろ布3bの折り面11a、11bの上面に上ろ布3aを案内する構成としてもよい。
なお、本実施例では、2枚の無端状ろ布3を有するベルトプレスとしたが、1枚の無端状ろ布3を有するベルトプレス1としてもよい。
【0022】
図4図5はそれぞれ本発明に係るろ布の折り装置の平面図及び側面図である。
折り装置6は、下ろ布3bをU型に折り曲げる押圧ローラー12とガイドローラー13、折り曲げた下ろ布3bの折り面11a、11bを水平に案内するガイド棒14a、14b、上ろ布3aを下ろ布3bの上方まで案内する案内ローラー16で構成されている。U型に折り曲げられた下ろ布3b内へ汚泥を供給できる位置にホッパー4を設けている。
【0023】
折り装置6で折り曲げられる下ろ布3bは、汚泥が漏れ出ないように押圧ローラー12によってU型に形成されている。押圧ローラー12の幅は下ろ布3bの折り返し幅と等しく、押圧ローラー12で下ろ布3b上面中央部を下方に押圧して下ろ布3bをU型に形成する。従って、押圧ローラー12はU型の底部を形成させる。同時に、下ろ布3bの両端は、押圧ローラー12の両側面に垂直に配設されたガイドローラー13によって折り曲げられ、U型の側面が形成される。押圧ローラー12の下流側では汚泥を供給するためのホッパー4が走行する下ろ布3bに向かって垂下されており、連続して汚泥を供給する。ホッパー4の下流側では、案内ローラー16によって上ろ布3aが汚泥の上方に案内され、上ろ布3aと下ろ布3bで汚泥を狭持する。
【0024】
ガイドローラー13に沿って次第に両側面がU型に折り曲げられる下ろ布3bは、ホッパー4、案内ローラー16の配設位置より下流側の、水平に固定された複数のガイド棒14a、14bによって内側に折り曲げられる。このとき、U型となった下ろ布3bの凹部には上ろ布3aが案内されており、下ろ布3bを折り返す際には、上ろ布3aを狭持するように下ろ布3bの両端を折り返す。一方の垂直になった下ろ布3bの側端部をガイド棒14aの底部で水平に折り曲げるよう案内し、更に他方の垂直になった下ろ布3bの側端部も同様にしてガイド棒14bの底部で水平に折り曲げるよう案内する。垂直になった下ろ布3bの両側面が内側に折られて水平になることで、下ろ布3bが走行しながら折り返され、汚泥と汚泥の上方に案内された上ろ布3aを内部に包み込む。
【0025】
ガイド棒14a、14bの接するろ布3の底部に、補助棒17を水平に配設すると、ガイド棒14a、14bの押しつけによるろ布3の撓みがなくなり、ろ布3を三つ折りにする際にズレが生じない。ガイド棒14、補助棒17は棒状、板状等が用いられる。上述する折り装置6は実施例の折り方だけでなく、複数のガイド棒14を適切に配設することで、多様な折り方に対応できる。折り装置6の構成は、本実施例に限定しない。
【0026】
図6は、本発明に係る、展開ローラーに巻き掛けたろ布の平面図である。
複数のせん断ロール7に巻き掛けられた上ろ布3a及び下ろ布3bは、展開ローラー8に巻き掛けることで展開されてケーキが排出される。折り返されたろ布3を展開して展開ローラー8に巻き掛けて走行させることで、ろ布3がせん断ロール7から展開ローラー8の間で自然に展開する。高圧で脱水したケーキは剥離性が良いため、剥離装置として用いる展開ローラー8にろ布3を巻き掛けることで、ケーキを容易に剥離できる。
【0027】
図7は、本発明に係る、蛇行修正装置及び蛇行検知部を配置したろ布の平面図及びA-A断面図である。
進行方向左側に位置するろ布3の左端部近傍に蛇行検知部18aを設けるとともに、進行方向右側に位置するろ布3の右端部近傍に蛇行検知部18bを設けてある。走行するろ布3の左端部が蛇行検知部18aに接触した場合、ろ布3が左寄りに蛇行したことを検知し、ろ布3の右端部が蛇行検知部18bに接触した場合、ろ布3が右寄りに蛇行したことを検知する。ろ布3の両端部が蛇行検知部18a、18bに接触していない場合、ろ布3が蛇行せずに正しい軌道上で走行していると判断する。
なお、蛇行検知部18は、接触式であっても非接触式であってもよい。蛇行修正装置9と別々に設置しても、一体的に構成して配置してもよい。
【0028】
蛇行修正装置9は、ろ布3の左側方に蛇行修正装置9a、右側方に蛇行修正装置9bを配置してある。蛇行修正装置9a、9bは、それぞれ上下に対設した円筒形状の上部ロール19及び下部ロール20で構成し、走行するろ布3を上下のロール間で挟持する。下部ロール20は、伸縮可能なロッド21を介してエアー式または油圧式または水圧式のシリンダ22に接続し、上下方向に伸縮可能である。
【0029】
上下のロールでろ布3を挟持する際は、ロッド21を伸張して下部ロール20を上部ロール19に近づける。ろ布3の挟持を解除する際は、ロッド21を収縮して下部ロール20を上部ロール19から離間させる。
【0030】
走行するろ布3の両端部が蛇行検知部18a、18bに接触せず、正しい軌道上にある場合、ろ布3は蛇行していないと判断する。このとき、ろ布3は、蛇行修正装置18a、18bをそれぞれ構成する上下一対のロール間に挟持された状態で走行する。
【0031】
運転経過に伴い、ろ布3の左端部が蛇行検知部18aに接触した場合、ろ布3が左寄りに蛇行したと判断し、蛇行検知部18aから蛇行修正装置9aに蛇行修正の指示を出す。指示を受けた蛇行修正装置9aは、ロッド21を収縮して下部ロール20を上部ロール19から離間させ、ろ布3の左側方の挟持を解除する。
【0032】
このとき、ろ布3の右側方は、蛇行修正装置9bの上下のロール間に挟持された状態である。この状態で走行を続けると、左方に蛇行していたろ布3は次第に右方向に偏移し、正しい軌道位置に戻る。蛇行検知部18aからろ布3が離間し、ろ布3の左側方が挟持状態に復帰した時点を蛇行修正終了の指標とする。
【0033】
一方、ろ布3の右端部が蛇行検知部18bに接触した場合、ろ布3は右寄りに蛇行したと判断し、蛇行検知部18bから蛇行修正装置9bに蛇行修正の指示を出す。指示を受けた蛇行修正装置9bは、ロッド21を収縮させて下部ロール20を上部ロール19から離間させて、ろ布3の挟持を解除する。
【0034】
このとき、ろ布3の左側方は、蛇行修正装置9aの上下のロール間に挟持された状態である。この状態で走行を続けると、右方に蛇行していたろ布3は次第に左方向に偏移し、正しい軌道位置に戻る。蛇行検知部18bからろ布3が離間し、ろ布3の右側方が挟持状態に復帰した時点を蛇行修正終了の指標とする。
【0035】
なお、蛇行修正装置9は、図8に示すように、ロッド21を介してシリンダ22に接続された1本のロール23を有する蛇行修正装置9をろ布3の幅方向にわたって設ける構成としてもよい。ロール23の形状や材質は限定しない。
【0036】
この場合、ろ布3の左方の蛇行を蛇行検知部18aで検知した時はシリンダ22を駆動してロッド21を伸張させる。ロッド21の伸張によりロール23の左端側が右端側よりも進行方向に伸張されるため、左方に蛇行するろ布3は右方向へ案内されて次第に右方向に偏移して蛇行が修正される。
【0037】
ろ布3の右寄りの蛇行を蛇行検知部18bで検知した時はシリンダ22を駆動してロッド21を収縮させる。ロッド21の収縮によりロール23の右端側が左端側よりも進行方向に伸張されるため、右寄りに蛇行するろ布3は左方向へ案内されて次第に左方向に偏移して蛇行が修正される。
【0038】
蛇行検知部18a、18bについても同様に、本実施例に限定しない。図9(a)に示すように、光を投射する投光部と受光する受光部を有する非接触型の蛇行検知部18を用いてもよい。この場合、投光部から投射された光が受光部で感知された時、ろ布3が蛇行していないと判断するとともに、投射された光がろ布3によって遮られ、受光部で感知されない時はろ布3が蛇行していると判断する。図9(b)に示すように、投光部と受光部を一体的に構成した投受光部を有する非接触型の蛇行検知部18を用いて、投射した光がろ布3から反射したことを感知して蛇行を判断してもよい。
【0039】
図10は、本発明に係る、蛇行検知部の移動機構の概略側面図である。
ろ布3の幅方向両側方に設けた蛇行検知部18a、18bは、移動機構26にて幅方向に揺動可能に構成してある。移動機構26は、ろ布3の幅方向にわたって設けた基部27と、蛇行検知部18a、18bを載置し、下方に基部27と係合して軸方向に摺動可能な案内部材29を有した揺動部28と、揺動部28を幅方向に移動させるスクリューネジ30と、スクリューネジ30を回転駆動する駆動源32と、スクリューネジ30を回転自在に支持する支持部31と、で構成している。
【0040】
揺動部28はスクリューネジ30と螺合するネジ穴を有し、スクリューネジ30の回転に応じて基部27に沿って左右に揺動する。
なお、本実施例ではスクリューネジ30を示したが、雄ネジと雌ネジが螺合する位置にボールを介在させたボールネジを適用してもよい。
【0041】
蛇行検知部18a、18bをろ布3の幅方向に移動させる場合、駆動源32を駆動してスクリューネジ30を正逆回転させて揺動部28をろ布3の進行方向に対して左側または、右側に移動させる。このとき、蛇行検知部18a、18bが載置された揺動部28の内側に形成された雌ネジは、スクリューネジ30の雄ネジと螺合しながらろ布3の幅方向に任意の方向に移動する。スクリューネジ30に動力を伝達し、回転駆動させる駆動源32は、油圧式、機械式、手動式等、限定しない。
【0042】
本実施例では、移動させる手段としてスクリューネジ機構を示したが、シリンダ機構、ラックピニオン機構、リンク機構等、公知の機構を採用できる。また、蛇行検知部18a、18bを揺動部28に載置して一体的に揺動移動可能にしているが、蛇行検知部18a、18bをそれぞれ独立して揺動移動させる機構としてもよい。蛇行検知部18a、18bを揺動部28に載置するのではなく、各蛇行検知部18の上方に配設した揺動部28と連結し、上方から蛇行検知部18を支持した状態で左右に揺動させてもよい。
【0043】
従来、蛇行修正装置9は、ろ布3の蛇行修正に用いるが、本発明では、蛇行修正に加えて、ろ布3を幅方向に移動させてろ過空間5両端に形成される折り部10a、10bの位置を偏移させることを目的として用いる。蛇行修正装置9は、上ろ布3a及び下ろ布3bにそれぞれ設けている。各蛇行修正装置9を順次、幅方向に移動させて折り部10a、10bの位置を偏移させることも可能であるが、同時に移動させて折り部10a、10bの位置を偏移させるほうが望ましい。
【実施例
【0044】
本発明のベルトプレス1は、複数のローラー2…に走行自在に掛け回された無端状のろ布3上に汚泥を供給する汚泥供給工程S1と、ろ布3を幅方向両側方から汚泥供給側に向かって折り返し、折り返したろ布同士を重ね合わせてろ過空間5を形成するろ布折り工程S3と、ろ過空間5内の汚泥を圧搾ろ過する圧搾ろ過工程S4と、折り返したろ布3を展開するろ布展開工程S5と、展開したろ布3からケーキを剥離させるケーキ剥離工程S6と、を行う。また、ろ布折り工程S3の前段で、ろ過空間5の両端に形成される折り部10a、10bの位置を偏移させる折り位置偏移工程S2を行う。
【0045】
<折り位置偏移工程(S2)>
図11図12図13は、本発明の実施例に係る、折り位置偏移工程S2を説明するための平面図である。
図12に示すように、折り装置6a、6bに対して、ろ布3のそれぞれの端部から等距離となるようにろ布3を案内させることで、折り面11a、11bの幅方向の距離t1、t2が等しくなるように折り返される。ろ布3の両側方には蛇行検知部18a、18bを固定配置しており、各折り装置6a、6bから蛇行検知部18a、18bまでの幅方向の距離はそれぞれ等しい。
【0046】
ろ布3は、両端部が蛇行検知部18a、18bに接触していない場合、蛇行せずに正しい軌道上で走行していると判断されて両側方を蛇行修正装置18a、18bの上部ロール19及び下部ロール20間で挟持された状態でろ布3を巻き掛けたローラー12の中央部を走行する。この状態で走行を続けると、ろ布3は折り部10a、10bの位置で折りと展開を繰り返すため、折り部10a、10bに集中的に応力がかかる。ろ布3の両側方に設けた蛇行検知部18a、18bをろ布3の幅方向に同時に揺動させることで、図12の状態からろ布3を強制的に任意の方向に移動させることができる。
【0047】
図11に示すように、ろ布3左端部からの折り面11aの長さt1を右端部からの折り面11bの長さt2より大きい幅で折り返す場合、蛇行検知部18a、18bを、図12の位置から左方向に所定量揺動させ、ろ布3を左方向に所定量移動させる。このとき、折り部10a、10bは図12の位置から偏移している。
【0048】
ろ布3を進行方向に対して左方向に強制的に移動させる場合、ろ布3の右側方に配置した蛇行検知部18bを左方向に所定量揺動させ、ろ布3の右端部に接触させて蛇行修正装置9bに蛇行修正を指示する。このとき、蛇行検知部18aも同時に左方向に蛇行検知部18bと同じ幅揺動させる。蛇行修正を指示された蛇行修正装置9bは、ロッド21を収縮させて下部ロール20を上部ロール19から離間させて右側方のろ布3の挟持を解除する。このとき、蛇行修正装置9bにより左側方を挟持されたろ布3は、次第に左方向に偏移し、蛇行検知部18bから離間する。
【0049】
強制的に左方に偏移させることで、左方に蛇行したろ布3は、折り装置6に対して左方に偏移した状態で折り装置6aに案内され、折り装置6aで折り返される。したがって、折り面11aの長さt1が折り面11bの長さt2より大きい幅で折り返される。このとき、折り装置6a、6bは固定配置してあり、折り装置6aから蛇行検知部18aまでの幅方向の距離は折り装置6bから蛇行検知部18bまでの幅方向の距離よりも長くなる。
【0050】
一方、図13に示すように、ろ布3右端部からの折り面11bの長さt2を左端部からの折り面11aの長さt1より大きい幅で折り返す場合、蛇行検知部18a、18bを、図12の位置から右方向に所定量揺動させ、ろ布3を右方向に所定量移動させる。このとき、折り部10a、10bは図12の位置から偏移している。
【0051】
ろ布3を進行方向に対して右方向に強制的に移動させる場合、ろ布3の左側方に配置した蛇行検知部18aを右方向に所定量揺動させてろ布3の左端部に接触させ、蛇行修正装置9aに蛇行修正を指示する。このとき、蛇行検知部18bも同時に右方向に蛇行検知部18aと同じ幅揺動させる。蛇行修正を指示された蛇行修正装置9aは、ロッド21を収縮させて下部ロール20を上部ロール19から離間させて左側方のろ布3の挟持を解除する。このとき、蛇行修正装置9bにより右側方を挟持されたろ布3は、次第に右方向に偏移し、蛇行検知部18aから離間する。
【0052】
強制的に右方に偏移させることで、右方に蛇行したろ布3は、折り装置6に対して右方に偏移した状態で折り装置6bに案内され、折り装置6bで折り返される。したがって、折り面11bの長さt2が折り面11aの長さt1より大きい幅で折り返される。このとき、折り装置6a、6bは固定配置してあり、折り装置6aから蛇行検知部18aまでの幅方向の距離は、折り装置6bから蛇行検知部18bまでの幅方向の距離よりも短くなる。
【0053】
図11図13で、蛇行検知部18a、18bを揺動させる際、各蛇行検知部18a、18bに対応する蛇行修正装置9a、9bは、幅方向に移動するろ布3の端部を修正できる許容幅を有しているため、蛇行修正装置9は揺動させていないが、蛇行修正装置9を蛇行検知部18の揺動に同期して揺動させてもよい。
【0054】
なお、蛇行検知部は図10に示す移動機構26にて揺動移動させるが、蛇行修正装置9には蛇行検知部18と共に移動機構26に載置してある場合、共通の移動機構26で移動可能となる。一方、蛇行検知部18と別の移動機構26に載置する場合、蛇行修正装置9用に移動機構26を新たに設ける必要がある。
【0055】
図11図13では、蛇行検知部18a、18bを任意の方向に所定量だけ移動させ、一方の蛇行検知部18a、18bを片側のろ布3に接触させて蛇行修正の指示を受けた蛇行修正装置9によってろ布3片側の挟持を解除し、ろ布3を強制的に任意の方向に移動させているが、ろ布3両側方を蛇行修正装置9a、9bで挟持した状態で、蛇行修正装置9a、9bを幅方向に揺動させてろ布3を任意の方向に強制的に移動させる方法としてもよい。この場合、複数のロール2…による張力を受けて緊張状態にあるろ布3を強制的に左右に移動させるため、しわ寄りが発生しないように微量ずつ調整しながら移動させる。
【0056】
具体的には、ろ布3両側方を蛇行修正装置9a、9bで挟持した図12の状態から左方向にろ布3を移動させる場合、ろ布3を挟持した状態で移動機構26に載置した蛇行修正装置9a、9bを左方向に所定量だけ移動させる。このとき、蛇行検知部18a、18bも蛇行修正装置9a、9bとともに左方向に同じ幅移動させる。同様に、図12の状態から右方向に所定量だけ移動させる場合、ろ布3を挟持した状態で移動機構26に設置した蛇行修正装置9a、9bを右方向に所定量移動させる。このとき、蛇行検知部18a、18bも蛇行修正装置9a、9bとともに右方向に同じ幅移動させる。この方法では、一方の蛇行検知部18をろ布3の片側に接触させる必要はない。
【0057】
本実施例において、折り部10a、10bの位置を偏移させる際は、ろ布3走行時に段階的に偏移させても、常時偏移させてもよい。段階的に偏移させる場合は、事前に所定時間を設定し、所定時間経過後に蛇行検知部18を移動させて段階的に折り部10a、10bの位置を偏移させる。その他、事前にろ布3がベルトプレス1を周回する所定周回数を設定し、所定周回数検知後に蛇行修正装置9を移動させて段階的に折り部10a、10bの位置を偏移させる。常時偏移させる場合は、ろ布3走行時に常時蛇行検知部18をろ布3の幅方向に移動させる。
なお、ろ布3走行時にろ布3の折り返し位置を偏移させることができればよいため、偏移させるタイミングは適宜選択するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のベルトプレスの折り方法は、無端状のろ布を幅方向両側方から折り返してろ過空間を形成するベルトプレスに利用することが可能である。折り部の位置を偏移させながらろ布を走行させることで、折り部に局所的に応力が働くことを防ぎ、ろ布が早期に破れることを防止できる。これにより、ろ布の破断が生じて汚泥が漏れ出ることを防ぐことができるとともに、ろ布破断時の修理や交換が不要となるため、手間やコストを省くことができる。また、メンテナンス時に必要な運転停止時間が短くなるため、効率よく連続脱水運転を続けることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 ベルトプレス
2 ローラー
3 ろ布
5 ろ過空間
6 折り装置
9 蛇行修正装置
18 蛇行検知部
26 移動機構
28 揺動部
S1 汚泥供給工程
S2 折り位置偏移工程
S3 ろ布折り工程
S4 圧搾ろ過工程
S5 ろ布展開工程
S6 ケーキ剥離工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13