(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】ベルトプレスのろ布折り方法
(51)【国際特許分類】
B30B 9/06 20060101AFI20240419BHJP
C02F 11/123 20190101ALI20240419BHJP
B01D 33/04 20060101ALI20240419BHJP
B01D 33/58 20060101ALI20240419BHJP
B01D 33/80 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
B30B9/06 G
C02F11/123 ZAB
B01D33/04 D
B01D33/34
(21)【出願番号】P 2021121181
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】新川 颯
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅義
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-73928(JP,A)
【文献】特開昭51-19177(JP,A)
【文献】米国特許第6221265(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/06
C02F 11/123
B01D 33/04
B01D 33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラー(2)…に走行自在に掛け回された無端状のろ布(3)上に汚泥を供給する汚泥供給工程(S1)と、ろ布(3)を幅方向両側方から供給側に向かって折り返し、折り返したろ布(3)同士を重ね合わせてろ過空間(5)を形成するろ布折り工程(S2)と、ろ過空間(5)内の汚泥を圧搾ろ過する圧搾ろ過工程(S3)と、折り返したろ布(3)を展開するろ布展開工程(S4)と、展開したろ布(3)からケーキを剥離させるケーキ剥離工程(S5)と、を行うベルトプレスにおいて、
ろ布折り工程(S2)で、
折り装置(6)をろ布(3)の幅方向に揺動させ、所定幅移動させた折り装置(6)にろ布(3)を案内し、ろ過空間(5)両端に形成される折り部(10a)、(10b)の位置を偏移させる
ことを特徴とするベルトプレスのろ布折り方法。
【請求項2】
前記ろ布折り工程(S2)は、押圧ローラー(12)と、ガイドローラー(13)と、ガイド部(14)と、を有する折り装置(6)をろ布(3)の幅方向に揺動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のベルトプレスのろ布折り方法。
【請求項3】
前記折り装置(6)は、ろ布(3)の幅方向に揺動可能な揺動部(21)を有する移動機構(16)に設ける
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のベルトプレスのろ布折り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行自在に掛け回した無端状ろ布の幅方向に形成する折り目の位置を偏移させながら運転することでろ布の長寿命化を図るベルトプレスのろ布折り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の無端状ろ布を複数のローラーで走行自在に掛け回し、2枚のろ布間に形成されたろ過空間に挟み込んだ汚泥をろ布の張力と加圧ローラーによる圧搾力で脱水するベルトプレスが知られている。
【0003】
特許文献1には、2枚の無端状ろ布を構成する上ろ布と下ろ布の両端を重ねて折り返し、上下のろ布間にろ過空間を形成したベルトプレスが開示されている。
【0004】
また、特許文献2、特許文献3には、1枚の無端状ろ布を幅方向に折り返してろ過空間を形成したベルトプレスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6164534号公報
【文献】特許第6233715号公報
【文献】特開2016-073928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、2枚の無端状ろ布を用いたベルトプレスは、2枚のろ布を重ね合わせてろ過空間を形成している。しかし、上下にろ布を重ね合わせただけの構成であり、ろ布の合わせ面のシール性が低いため、加圧時に外部からの圧力を受けてろ布の合わせ面から汚泥が流れ出るサイドリーク現象が生じていた。
【0007】
サイドリークの発生を防ぐために、重ね合わせた上下ろ布を幅方向の両側方から汚泥供給側に向かって折り返してろ過空間を形成するベルトプレスが特許文献1に開示されているが、ろ布の折りと展開を繰り返しながら運転する必要があったため、折り部に応力が集中的に働いていた。これにより、折り部に破断が生じてろ布破れを引き起こす問題を有していた。特に、自由端同士を重ね合わせて縫製したろ布継手と交差する位置に形成される折り部で折りと展開を繰り返すことで縫製部に応力が集中して働き、縫製部の摩耗により早期にろ布が破断していた。ろ布の破断が頻繁に生じていたため、その都度、ろ布の修理あるいは交換を行う必要があった。修理及び交換時には運転を停止する必要があったため、運転停止時間が長期化する課題も有していた。
【0008】
特許文献2、特許文献3のベルトプレスも同様に、ろ布を幅方向の両側方から汚泥供給側に向かって折り返してろ過空間を形成していたため、ろ過空間両端に形成される折り部に応力が集中的に働き、ろ布が早期に破れる課題を有していた。短期間でろ布破れが生じていたため、ろ布の修理や交換を頻繁に行う必要があり、手間やコストが発生していた。
【0009】
また、特許文献2、特許文献3には、ろ布の折り部の位置を偏移させることで様々なろ過空間を形成できることが記されているが、折り部の位置を偏移させる目的として、折り部に働く応力を分散させてろ布の延命を図る等の記載や示唆はない。
【0010】
本発明は、無端状ろ布の幅方向に形成される折り部の位置を偏移させながら運転することで、折り部にかかる応力を分散して早期のろ布破れを防ぐことができるベルトプレスのろ布折り方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
複数のローラー…に走行自在に掛け回された無端状のろ布上に汚泥を供給する汚泥供給工程と、ろ布を幅方向両側方から供給側に向かって折り返し、折り返したろ布同士を重ね合わせてろ過空間を形成するろ布折り工程と、ろ過空間内の汚泥を圧搾ろ過する圧搾ろ過工程と、折り返したろ布を展開するろ布展開工程と、展開したろ布からケーキを剥離させるケーキ剥離工程と、を行うベルトプレスにおいて、ろ布折り工程で、折り装置をろ布の幅方向に揺動させ、所定幅移動させた折り装置にろ布を案内し、ろ過空間両端に形成される折り部の位置を偏移させることで、折りと展開を繰り返す折り部に応力が集中して働くことを防止できる。
【0012】
前記ろ布折り工程は、押圧ローラーと、ガイドローラーと、ガイド部と、を有する折り装置をろ布の幅方向に揺動させることで、ろ布に形成される折り部の位置を偏移させることができる。
【0013】
前記折り装置は、ろ布の幅方向に揺動可能な揺動部を有する移動機構に設けることで、ろ布の幅方向に揺動できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、折り装置を幅方向に強制的に揺動させて任意の方向に所定幅移動させることで、ろ布の幅方向に形成される折り部の位置を偏移させることができる。折り部の位置を偏移させることで、ろ布の折りと展開により折り部に働く応力を分散でき、ろ布の長寿命化を図ることができる。これにより、頻繁にろ布を修理及び交換する必要がなくなり、ろ布交換の手間やコストが不要となる。修理や交換に伴う運転停止時間も短くなり、効率よく連続脱水運転を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る、ベルトプレスの概略側面図である。
【
図2】同じく、折り装置で折られたろ布の展開図である。
【
図3】同じく、折り装置で折られたろ布の断面図である。
【
図8】同じく、折り装置の移動機構の概略斜視図である。
【
図9】本発明の実施例に係る、折り位置偏移工程S2を説明するための平面図である。
【
図10】同じく、折り位置偏移工程S2を説明するための平面図である。
【
図11】同じく、折り位置偏移工程S2を説明するための平面図である。
【
図12】同じく、折り位置偏移工程S2を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係るベルトプレスの概略側面図である。
本発明のベルトプレス1は、複数のローラー2…と、該複数のローラー2…に掛け回して走行自在とした無端状の一枚の上ろ布3a及び下ろ布3bと、下ろ布3b上に汚泥を供給するホッパー4と、下ろ布3bを幅方向両側方から汚泥供給側に折り返し、折り返した下ろ布3bと上ろ布3aを重ね合わせて後段で示すろ過空間5を形成する折り装置6と、ろ過空間5を形成した下ろ布3bと上ろ布3aを巻き掛けるせん断ロール7と、折り返した下ろ布3bと上ろ布3aをそれぞれ展開する展開装置8と、展開した各ろ布3からケーキを剥離させる剥離ローラー9,9と、剥離ローラー9を通過後に回帰する下ろ布3bを折り装置6に案内する案内ローラー33と、を備える。
【0017】
複数のローラー2…に掛け回された無端状の一枚の下ろ布3bは、折り装置6により幅方向の両端が折り返される。無端状の下ろ布3bが汚泥を受け入れるよう、折り装置6は下ろ布3bの両端を進行方向(縦方向)に折りながら汚泥をホッパー4より供給する。従って、折り返す過程で、下ろ布3bの両端を折り、下ろ布3b断面がU型となったところで下ろ布3b上に汚泥を供給する。汚泥供給後、下ろ布3bに供給された汚泥を覆うように上ろ布3aを押圧ローラー12aで案内し、走行させる。
【0018】
下ろ布3bと上ろ布3aは折り装置6で幅方向両端を折り返すことでろ過空間5を形成している。ろ過空間5に汚泥を供給された下ろ布3bと上ろ布3aはせん断ロール7に巻き掛けることで汚泥を圧搾ろ過する。圧搾ろ過後、展開装置8により下ろ布3bと上ろ布3aをそれぞれ展開し、剥離ローラー9、9によって剥離されたケーキが外部に排出される。
【0019】
図2は、本発明に係る、折り装置で折られたろ布の展開図である。
ろ布3は、幅方向両側からそれぞれ任意の位置で汚泥の供給側に向かって折り返される。進行方向に対してろ布3の左端部から供給側に向かって任意の距離t1だけ折り返すことで折り部10aが形成される。進行方向に対してろ布3の右端部から供給側に向かって任意の距離t2だけ折り返すことで折り部10bが形成される。ろ布3を左側方から折り返した際の折り面を11a、右側方から折り返した際の折り面を11bとする。
なお、無端状の一枚の上ろ布3aおよび無端状の一枚の下ろ布3aはどちらも同様に折り返すため、ろ布3は、上ろ布3aまたは、下ろ布3を示している。
【0020】
図3は、本発明に係る、折り装置で折られたろ布の断面図である。
図3(a)に示すように、上ろ布3aと下ろ布3bを重ね合わせた状態で両側方から供給側に向かって幅方向に折り返すことでろ過空間5が形成される。外部からの圧力で変形するろ過空間5の幅方向の両端を折り部10a、折り部10bで形成することでサイドリークの発生を防いでいる。
【0021】
折り返した下ろ布3bの折り面11a及び折り面11bは、対応する上ろ布3aの折り面11a及び折り面11bと重なることでろ過空間5のシールの役割を果たす。シール性を高くするためには、上ろ布3aと下ろ布3bの折り面11a、折り面11bの重なる面積を増やせばよい。上ろ布3aと下ろ布3bの折り面11a、折り面11bの重なる箇所をさらに折り返すことでもシール性は向上する。
【0022】
折り面11a及び折り面11bを形成する際に両側方から折り返す距離t1、t2は同じ長さであっても異なる長さであってもよい。また、
図3(b)に示すように、二つの折り部10a、10b間と同等幅の上ろ布3aを汚泥の上方に案内する構成や、
図3(c)に示すように、折り返した下ろ布3bの折り面11a、11bの上面に上ろ布3aを案内する構成としてもよい。
なお、本実施例では、無端状の2枚のろ布を有するベルトプレスとしたが、1枚の無端状ろ布を有するベルトプレスとしてもよい。
【0023】
図4、
図5はそれぞれ本発明に係るろ布の折り装置の平面図及び側面図である。
折り装置6は、下ろ布3bを上方から押圧してU型の底部を形成する押圧ローラー12bと、下ろ布3bを幅方向両側方から折り返してU型の側面を形成するガイドローラー13と、折り曲げた下ろ布3bの折り面11a、11bを水平に案内するガイド部14a、14bと、上ろ布3aを上方より案内しながら押圧する押圧ローラー12aと、で構成されている。なお、U型に折り曲げられた下ろ布3b内へ汚泥を供給できる位置にホッパー4を設けている。
【0024】
折り装置6で折り曲げられる下ろ布3bは、汚泥が漏れ出ないように押圧ローラー12bによってU型に形成されている。押圧ローラー12bの幅は下ろ布3bの折り返し幅と等しく、押圧ローラー12bで下ろ布3b上面中央部を下方に押圧して下ろ布3bをU型に形成する。従って、押圧ローラー12bはU型の底部を形成させる。
【0025】
同時に、下ろ布3bの両端は、押圧ローラー12bの両側面に垂直に配設されたガイドローラー13によって折り曲げられ、U型の側面が形成される。押圧ローラー12bの下流側では汚泥を供給するためのホッパー4が走行する下ろ布3bに向かって垂下されており、連続して汚泥を供給する。ホッパー4の下流側では、押圧ローラー12aによって上ろ布3aが汚泥の上方に案内され、上ろ布3aと下ろ布3bで汚泥を狭持する。
【0026】
ガイドローラー13に沿って次第に両側面がU型に折り曲げられる下ろ布3bは、ホッパー4、押圧ローラー16aの配設位置より下流側の、水平に固定された複数のガイド部14a、14bによって内側に折り曲げられる。このとき、U型となった下ろ布3bの凹部には上ろ布3aが案内されており、下ろ布3bを折り返す際には、上ろ布3aを狭持するように下ろ布3bの両端を折り返す。
【0027】
一方の垂直になった下ろ布3bの側端部をガイド部14aの底部で水平に折り曲げるよう案内し、更に他方の垂直になった下ろ布3bの側端部も同様にしてガイド部14bの底部で水平に折り曲げるよう案内する。垂直になった下ろ布3bの両側面が内側に折られて水平になることで、下ろ布3bが走行しながら折り返され、汚泥と汚泥の上方に案内された上ろ布3aを内部に包み込む。
【0028】
ガイド部14a、14bの接するろ布3の底部に、補助部17を水平に配設すると、ガイド部14a、14bの押しつけによるろ布3の撓みがなくなり、ろ布3を三つ折りにする際にズレが生じない。ガイド部14、補助部17は棒状、板状等が用いられる。
本実施例では、ガイド部14を、ろ布3の両側方にそれぞれ配設したが、共通のガイド部で押しつける構成としてもよい。ガイド部14の形状、材質、数量、配設方法等は適宜選択する。
【0029】
図6、
図7はそれぞれ本発明に係る、展開装置の平面図及び側面図である。
ろ布3を折り返してろ過空間5を形成したベルトプレス1は、内部の脱水ケーキを排出するために、せん断ロール7の下流側にろ過空間5を形成したろ布3を展開する展開装置8を設けている。
【0030】
展開装置8は、せん断ロール7の後段に配設された矯正ローラー18と、ろ布3の展開を案内する展開ガイド19と、で構成してある。展開したろ布3が再び折れ曲がろうとする場合は、展開ガイド19後段に展開したろ布3を保持する補助ガイド20を配設してもよい。展開装置8の後段には、展開したろ布3を掛けまわした剥離ローラー9を設けてある。
【0031】
矯正ローラー18は、ろ布3を展開しようとする張力がせん断ロール7にまで影響してろ布走行に影響を及ぼすことを防ぐために、せん断ロール7の後段に配設してある。矯正ローラー18は、せん断ロールから移行してきたろ布3の幅方向両端で回転自在に配設し、ろ布3が摺接して走行することで、ろ布3が展開を開始する際にU型以上に展開しないように案内できる。そのため、せん断ロール7にろ布3が展開しようとする張力が直接伝わらず、せん断ロール7でろ布3が展開することもない。
【0032】
本実施例で用いる展開ガイド19は、2本の長板状のものを使用する。展開ガイド19は、矯正ローラー18の下流側の、折り返されたろ布3の内側に配設され、ろ布3が左右に広がるように案内する。
【0033】
具体的には、2本の展開ガイド19を、ろ布3の上流側から下流側に向かって拡開するようにろ布3上にハの字型に配設する。ろ布3の両端で展開ガイド19は屈曲し、ろ布3の外側下方に延設される。このように展開ガイド19を配設することで、ろ布3は展開ガイド19に沿って展開し、展開ガイド19の屈曲部ではろ布3両端が引っかかり、完全に展開する。
本実施例では、2本の展開ガイド19をそれぞれ配設しているが、展開ガイド19、19間の幅方向に補強リブ等を複数設けて連結し、一体的に構成してもよい。
【0034】
また、展開ガイド19の下流側に位置するろ布3両端に補助ガイド20をそれぞれ配設してもよい。展開ガイドで展開されたろ布3は、ろ布3中央部に集中した張力により再び内側に折り曲がろうとする。そこで、ろ布3を上下から挟み込むように補助ガイド20を配設し、展開したろ布3が折り曲がらないように挟持して案内する。補助ガイド20をろ布3の進行方向に向かって外側に傾斜をつけて配設すると、ろ布3の展開に沿うため、ろ布3に負荷がかからず案内できる。
【0035】
上記の展開装置8でろ布3を展開することで、走行するろ布3のろ過空間5内で生成されたケーキが排出される。展開装置8によって排出されるケーキは展開装置8後段の剥離ローラー9、9で剥離された後、外部に排出される。
なお、展開装置8を構成する各部材の形状、材質、数量、配設方法等は適宜選択する。
【0036】
図8は、本発明に係る、折り装置の移動機構の概略斜視図である。
折り装置6は、工作機械や物品の搬送等に用いるリニアガイド27を、送りネジ機構30にて軸方向に相対移動させる移動機構16を用いてろ布3の幅方向に揺動可能に構成している。移動機構16は、リニアガイド27と、送りネジ機構30と、これらを支持するテーブル体32と、で構成している。
【0037】
具体的には、リニアガイド27は、ろ布3の幅方向に設けた一対のレール26、26と、各レール26に係合しつつレール26上を幅方向に摺動可能な一対の案内部材8、8と、各案内部材8上に橋架けし幅方向に揺動可能な揺動部21と、で構成している。
【0038】
送りネジ機構30は、幅方向に設けたボールネジ22と、ボールネジ22と螺合してボールネジ22の回転により幅方向に揺動可能なスライダ29と、ボールネジ22を回転させる駆動源23と、ボールネジ22を回動可能に支持する支持部34と、で構成している。スライダ29は、リニアガイド27の構成部材である揺動部21と連結しているため、スライダ29を介して揺動部21を幅方向に揺動できる。
【0039】
揺動部21は、連結部材24を介して折り装置6を構成する各部材と連結している。駆動源23にてボールネジ22を正逆回転させてスライダ29を揺動させることで揺動部21を介して折り装置6をろ布3の幅方向に移動させる。また、折り装置6を構成する押圧ローラー12a、12b、ガイドローラー13a、13b、ガイド部14a、14bは、連結部材24にそれぞれ固定配置するとともに連結部材24を介して共通の揺動部21に固定配置してあるため、一体的に揺動する。
【0040】
リニアガイド27及び送りネジ機構30は、テーブル体32により支持されている。テーブル体32は、リニアガイド27の一対のレール26及び送りネジ機構30の駆動源23を載置し中央が開口した支持部材31と、支持部材31の底部四隅に付設された支脚25…と、で構成している。
【0041】
本実施例では、移動手段として、送りネジ機構30を示したが、シリンダ機構、ラックピニオン機構、リンク機構等、公知の機構を採用できる。ボールネジ22を回転駆動させる駆動源23についても、油圧式、機械式、手動式等、限定しない。リニアガイド26の構成に関しても折り装置6と連結部材24の連結位置や、スライダ29と揺動部21の連結位置等、各部材の連結位置もこれに限定しない。その他、テーブル体32、揺動部21の各部材の形状、材質、配置方法等も適宜決定する。
【実施例】
【0042】
本発明のベルトプレス1は、複数のローラー2…に走行自在に掛け回された無端状のろ布3上に汚泥を供給する汚泥供給工程S1と、ろ布3を幅方向両側方から供給側に向かって折り返し、折り返したろ布3同士を重ね合わせてろ過空間5を形成するろ布折り工程S3と、ろ過空間5内の汚泥を圧搾ろ過する圧搾ろ過工程S4と、折り返したろ布3を展開するろ布展開工程S5と、展開したろ布3からケーキを剥離させるケーキ剥離工程S6と、を行う。また、ろ布折り工程S2で折り装置6を任意の方向に所定幅移動させ、折り返されるろ布3に形成される折り部10a、10bの位置を偏移させる。
【0043】
【0044】
図10は、ろ布を両側方から均等に折り返した様子を示している。
折り装置6を構成する押圧ローラー12a、12bは、中心が案内ローラー33の軸心と交差する中心線上に位置するように配置している。中心線から押圧ローラー12aの中心までの幅方向の距離及び中心線から押圧ローラー12bの中心までの幅方向の距離は0である。
なお、以下記載の距離は、全て幅方向の距離とする。
【0045】
また、ガイドローラー13a、13bは、中心線からの距離が等しい位置にそれぞれ設置している。同様に、ガイド部14a、14bも中心線からの距離が等しい位置にそれぞれ設置している。中心線を基準に折り装置6の各部材を配置することで、ろ布3を左右から任意幅で折り返すことができる。
【0046】
図10のように折り装置6を配置することで、
図12(b)に示すように、ろ布3の左側方からの折り面11aの幅t1と右側方からの折り面11bの幅t2が均等になる。このとき、形成される折り部10aから中心線までの距離及び折り部10bから中心線までの距離は等しい。
【0047】
この状態で折り位置6を偏移させずにろ布走行を続けると、同じ箇所で折りと展開を繰り返す。そのため、折り部10a、10bに局所的に応力が働き、ろ布破れを引き起こす。そこで、本発明では、折り装置6を強制的に任意方向に所定幅移動させて折り部10a、10bの位置を偏移させながら運転する。これにより、応力が折り部10a、10bに集中して働くことを防ぎ、早期のろ布破れを防ぐ。
なお、折り部10a、10bの形成位置は、折り装置6を構成する各部材の配設位置で決まるため、任意方向に所定幅移動させる際には折り装置6を構成する各部材を一体的に移動させる。
【0048】
図9は、折り装置を
図10の位置から左方向に所定幅揺動させることを表している。
折り装置6を構成する各部材を左方向に所定幅揺動させている。これにより、
図10で、中心線までの距離が0であった押圧ローラー12a、12bの中心は、中心まで所定幅の距離が生じる。また、左側のガイドローラー13bの中心から中心線までの距離は、右側のガイドローラー13aの中心から中心線までの距離より大きくなる。同様に、左側のガイド部14bの中心から中心線までの距離は、右側のガイド部14aの中心から中心線までの距離より大きくなる。
【0049】
中心線を基準に折り装置6を左方に所定幅移動させることで、案内ローラー33より案内されるろ布3は、左方に移動した押圧ローラー12b及びガイドローラー13a、13bにて右側面が左側面より高くなるように押圧され、押圧ローラー12aを介して上方より案内される上ろ布3aと共にガイド部14a、14bの底部で折り返される。
【0050】
このとき、形成される折り部10a、10bは、
図12(a)に示すように、
図12(b)の位置から左方に所定幅移動しており、折り面11bの幅t2が折り面11aの幅t1より大きい。また、折り部10aから中心線までの距離は折り部10bから中心線までの距離より大きい。
【0051】
図11は、折り装置を
図10の位置から右方向に所定幅揺動させることを表している。
折り装置6全体を右方向に所定幅揺動させている。これにより、押圧ローラー12a、12bの中心は、中心線から所定幅距離が生じる。また、左側のガイドローラー13bの中心から中心線までの距離は、右側のガイドローラー13aの中心から中心線までの距離より小さくなる。同様に、左側のガイド部14bの中心から中心線までの距離は、右側のガイド部14aの中心から中心線までの距離より小さくなる。
【0052】
中心線を基準に折り装置6を右方に所定幅移動させることで、案内ローラー33より案内されるろ布3は、右方に移動した押圧ローラー12b及びガイドローラー13a、13bにて左側面が右側面より高くなるように押圧され、押圧ローラー12aを介して上方より案内されるろ布3と共にガイド部14a、14bの底部で折り返される。
【0053】
このとき、形成される折り部10a、10bは、
図12(c)に示すように、
図12(b)の位置から右方に所定幅移動しており、折り面11bの幅t2が折り面11aの幅t1より小さい。また、折り部10aから中心線までの距離は折り部10bから中心線までの距離より小さい。
【0054】
このように、折り装置6を任意の方向に所定幅揺動させることで、案内ローラー33より案内されるろ布3に形成される折り部10a、10bの位置を偏移させることができる。
なお、折り装置6を所定量揺動させる際、展開装置8も同様に移動させてもよい。
【0055】
本実施例において、折り部10a、10bの位置を偏移させる際は、ろ布走行時に段階的に偏移させても、常時偏移させてもよい。段階的に偏移させる場合は、事前に所定時間を設定し、所定時間経過後に折り装置6を移動させて段階的に折り部10a、10bの位置を偏移させる。その他、事前にろ布3がベルトプレス1を周回する所定周回数を設定し、所定周回数検知後に折り装置6を移動させて段階的に折り部10a、10bの位置を偏移させる。常時偏移させる場合は、ろ布走行時に折り装置6a、6bをろ布3の幅方向に移動させる。
なお、ろ布走行時にろ布3の折り返し位置を偏移させることができればよいため、偏移させるタイミングは適宜選択するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のベルトプレスの折り方法は、無端状のろ布を幅方向両側方から折り返してろ過空間を形成するベルトプレスに利用することが可能である。折り部の位置を偏移させながらろ布を走行させることで、折り部に局所的に応力が働くことを防ぎ、ろ布が早期に破れることを防止できる。これにより、ろ布の破断が生じて汚泥が漏れ出ることを防ぐことができるとともに、ろ布破断時の修理や交換が不要となるため、手間やコストを省くことができる。また、メンテナンス時に必要な運転停止時間が短くなるため、効率よく連続脱水運転を続けることが可能となる。装置の構成も容易であるため、既存のベルトプレスにも容易に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 ベルトプレス
2 ローラー
3 ろ布
5 ろ過空間
6 折り装置
10a、10b 折り部
12 押圧ローラー
13 ガイドローラー
14 ガイド部
16 移動機構
21 揺動部
S1 汚泥供給工程
S2 ろ布折り工程
S3 圧搾ろ過工程
S4 ろ布展開工程
S5 ケーキ剥離工程