(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240419BHJP
A42B 3/22 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A42B3/22
(21)【出願番号】P 2020132197
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】520292051
【氏名又は名称】株式会社take
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】竹川 広三
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05692522(US,A)
【文献】特開2014-124397(JP,A)
【文献】米国特許第06016808(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108323840(CN,A)
【文献】特開2015-205104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A42B 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の頭部に装着するための保持具と、該保持具に取付けられて該保持具が装着者の頭部に装着されたとき、該装着者の顔面を覆う透明な保護シートと、が備えられているフェイスシールドにおいて、
前記保持具が、前記装着者の頭部に装着されたとき、該装着者の頭部両側方において、該装着者の顔面前方にそれぞれ伸びる棒状の一対の保持部を備え、
前記一対の各保持部の前端部に前記保護シートが着脱可能に
取付けられ、
前記保持具に、さらに連結部が備えられ、
前記連結部が、前記一対の保持部の後端部同士を連結することにより該一対の保持部を該一対の保持部の並設方向に拡縮可能とするように設定されている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対の各保持部の後方側部分が、その後方側部分よりも前方の前方側部分を基準として、後方に向かうに従って偏位長さが増大するように折曲されている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1項において、
前記一対の各保持部が、第1構成部と、該第1構成部に着脱可能に一体化されて該第1構成部に連続して伸びる第2構成部とをそれぞれ備え、
前記一対の第1構成部の前端部に保護シートが取付けられ、
前記一対の第2構成部が、前記装着者の頭部に対する保持用具として用いられている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項4】
請求項3において、
前記一対の第1構成部及び前記一対の第2構成部の一方が、金属的性質を有するように形成され、
前記一対の第1構成部及び前記一対の第2構成部の他方にマグネットが備えられ、
前記一対の各第1構成部と前記一対の各第2構成部とが、その一方とその他方のマグネットとの吸着により、それぞれ着脱可能に一体化されている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項5】
請求項4において、
前記各第1構成部の後端部又は前記各第2構成部の前端部に、該第2構成部に対する該第1構成部の傾斜角度を調整する角度調整部が設けられている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記一対の各保持部の外面に、マスクの耳掛け部を引っ掛けるための係止突起部が形成されている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記一対の各保持部の前端部に係止爪部がそれぞれ形成され、
前記保護シートに、その横方向両側上方において、前記一対の係止爪部が係止される複数組の一対の係止孔が形成され、
前記複数組の各一対の係止孔は、前記一対の係止爪が係止されたとき、前記一対の保持部に対する保護シートの取付け角度が変わるように設定されている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項において、
前記保護シートが、その横方向両側上方において、前記一対の保持部の前端部に回動調整可能に支持されている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
前記保護シート内面の少なくとも周縁部が、親水性処理面とされている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項10】
装着者の頭部に装着するための保持具と、該保持具に取付けられて該保持具が装着者の頭部に装着されたとき、該装着者の顔面を覆う透明な保護シートと、が備えられているフェイスシールドにおいて、
前記保持具が、前記装着者の頭部に装着されたとき、該装着者の頭部両側方において、該装着者の顔面前方にそれぞれ伸びる棒状の一対の保持部を備え、
前記一対の各保持部の前端部に前記保護シートが着脱可能に取付けられ、
前記一対の各保持部の前端部に係止爪部がそれぞれ形成され、
前記保護シートに、その横方向両側上方において、前記一対の係止爪部が係止される複数組の一対の係止孔が形成され、
前記複数組の各一対の係止孔は、前記一対の係止爪が係止されたとき、前記一対の保持部に対する保護シートの取付け角度が変わるように設定されている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項11】
請求項10において、
前記一対の各保持部が、別個独立した部品とされ、
前記各保持部にマグネットがそれぞれ備えられている、
ことを特徴とするフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛沫を遮断するフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメットには、特許文献1に示すように、保護カバー(フェイスシールド)を備えたものが提案されている。具体的には、保護カバーと、ヘルメットに着脱可能に取付けられて、ヘルメットを被ったとき、そのヘルメットを被った者の顔面を覆うように前記保護カバーを保持する保持具と、を備えたものとなっている。これにより、工場での作業時において、ヘルメットを被った者の顔面を保護できる。
【0003】
ところで、近時、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、医療関係者を初めとして、一般人の多くにもフェイスシールドが用いられる傾向にある。このフェイスシールドは、装着時の重量負担を軽減すると共に多様な人に利用されることを考慮し、極力簡素な構成が採用されており、その一般的な構成は、装着者の頭部に装着するための保持具と、その保持具に取付けられてその保持具が装着者の頭部に装着されたとき、その装着者の顔面を覆う透明な保護シートと、を備えたものとされている。このフェイスシールドを装着使用すれば、透明な保護シートが、その保護シートを基準とした内外の視認性を確保しつつ、周囲の人からの飛沫が顔にかかることを防ぎ、また、装着者自身の飛沫が対面者にかかることを防ぐことができる。これにより、新型コロナウイルスが各人の体内に取り込まれることを抑制することができる。
【0004】
このようなフェイスシールドは、他人との交流、接触を図るときに使用される。このため、仮に、フェイスシールドが装着使用されていても、日頃と同様のコミュニケーションをとれることが好ましく、この観点から、フェイスシールドの装着者の外見(視認性)に関しては、極力、違和感を生じさせないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記フェイスシールドにおいては、一般に、その保持具の全部又は一部に帯状のゴムバンドが用いられ、フェイスシールドが装着使用されたときには、その保持具(ゴムバンド等)が装着者の頭部に鉢巻き状に巻かれた状態となる。このため、装着者の額から前頭部上において、鉢巻状のものが横断して存在することが、透明な保護シートを介して印象的に視認されることになり、そのような状況は、フェイスシールド装着者を視認する者に、外見上、少なからず尋常でないイメージ(非日常的なイメージ)を想起させる。このようなことは、円滑なコミュニケーションを図らなければならない各種状況下において、普段とは異なる一種の違和感を生じさせることになり、好ましいものとはいえない。
【0007】
しかもこの場合、フェイスシールドの装着使用に際して、その保持具が装着者の頭部に巻回されるように保持されることから、装着者の髪形を変形する(壊す)可能性を高める。特にフェイスシールドの装着者が女性の場合、髪形が外に大きく膨らむような形状とされているときには、その頭部への保持具の装着に伴い、その髪形が保持具により押し潰される等して変形されることになる。このようなことは、上述のようにそれを見る者に対して違和感を生じさせるだけでなく、フェイスシールドの装着使用自体をためらわせる原因となるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、装着に伴い、髪形が変形することを極力抑えると共に、外見上の違和感を極力生じさせないフェイスシールドを提供することにある。
【0009】
前記目的を達成するために本発明にあっては、下記(1)~(11)とした構成とされている。
【0010】
(1)装着者の頭部に装着するための保持具と、該保持具に取付けられて該保持具が装着者の頭部に装着されたとき、該装着者の顔面を覆う透明な保護シートと、が備えられているフェイスシールドにおいて、
前記保持具が、前記装着者の頭部に装着されたとき、該装着者の頭部両側方において、該装着者の顔面前方にそれぞれ伸びる棒状の一対の保持部を備え、
前記一対の各保持部の前端部に前記保護シートが着脱可能に取付けられ、
前記保持具に、さらに連結部が備えられ、
前記連結部が、前記一対の保持部の後端部同士を連結することにより該一対の保持部を該一対の保持部の並設方向に拡縮可能とするように設定されている構成とされている。
【0011】
この構成によれば、装着者が当該フェイスシールド(保持具)を装着することにより、周囲の人及び自己の飛沫を保護カバーとしての保護シートにより遮断することができる。その一方で、フェイスシールドの正面視(保護シートの前面をその前方側から見た状態)においては、保持具について、透明な保護シートを介して、その各保持部の前端面ないしその近辺部分が部分的に見えるだけとなり(各保持部のその他の後方部分が正面視では見えにくいこと)、装着者の顔は、額、前頭部を初めとして、ほとんどの部分が保持具により覆われることはない。このため、当該フェイスシールドを装着しても、その装着者の顔は、透明な保護シートを介して、フェイスシールドの保持具によって変化を受けない普段の状態に近い顔として見ることができ、装着者の顔を視認するに当たり、違和感を極力生じさせないようにすることができる。
【0012】
またこの場合、保持具における一対の保持部の前端部に対して保護シートが着脱可能に取付けられることから、フェイスシールドの装着に際して、先ず、保持具だけを、一対の保持部の間に首筋を通すようにしながら、装着者の頭部に装着し、その後、その各前端部に保護シートを取付けることができる。このため、その際、一対の保持部により、その装着者の髪形に触れたり、その髪形を押し潰したりすることを抑制することができる。しかもこの場合、一対の各保持部の前端部が装着者の顔面前方へ伸びるように配置され、その各前端部に対して透明な保護シートが着脱可能に取付けられることから、装着者の顔面と保護シートとの間に一定の空間が確保されることになり、一対の保持部に対する保護シートの取付けに際して、装着者の顔面前面における髪形が変形を受けないようにすることができる。このため、当該フェイスシールドを用いて、上記装着手順を取ることにより、フェイスシールド装着者の髪形の変形を極力抑えることができる。
【0013】
【0014】
また、前記保持具に、さらに連結部が備えられ、前記連結部が、前記一対の保持部の後端部同士を連結することにより該一対の保持部を該一対の保持部の並設方向に拡縮可能とするように設定されていることから、連結部によって一対の保持部に拡縮可能なばね性を持たせることができ、装着者の頭部両側部によって一対の保持部を押し開くことにより、その一対の保持部に発生する弾発力(復帰力)に基づく挟持力によってその一対の保持部を装着者の頭部両側部に挟持できる。しかもこの場合、装着者の左右の耳(上部)が一対の保持部が下がることを規制し、装着者の首筋後部から後頭部にかけての部分が連結部の前方移動を規制することになり、一対の保持部の前端部を装着者の顔面前方の所定位置において所定高さ位置に位置させることができる。このため、保持具として、一対の保持部と、その一対の保持部を連結する連結部とを備えるだけの簡単な構成のものを用いるだけで、保護シートを、装着者の顔面前方の所望の位置に的確に配置できる。
【0015】
(2)前記(1)の構成の下で、
前記一対の各保持部の後方側部分が、その後方側部分よりも前方の前方側部分を基準として、後方に向かうに従って偏位長さが増大するように折曲されている構成とされている。
【0016】
この構成によれば、一対の保持部の各前方側部分を、装着者の各耳上において略水平に配置して、一対の各保持部の後方側部分を、後方に向かうに従って下方に向かうように傾斜させることができ、髪形が後頭部において後方に膨出した部分を有するとしても、連結部をその髪形部分の下方に位置(回避)させることができる。このため、髪形が後頭部において後方に膨出した部分を有する場合であっても、当該フェイスシールドを的確に装着することができる。勿論この場合、上記髪形部分が壊れ易い場合には、フェイスシールドの装着に際して、一対の保持部の間を首筋後方から通すことによって、一対の保持部を左右各耳上に位置させると共に、連結部を上記髪形部分の下方に位置させ、その上で、一対の各保持部の前端部に保護シートを取付けることができる。
【0017】
他方、一対の各保持部の後方側部分を後頭部において略水平に配置して、一対の各保持部の前方側部分を前方に向かうに従って上方に向うように配置することもでき(保持具の逆さ使用)、装着者の顔面に対する保護シートの傾斜角度を、装着者の顔面と保護シート下側との間隔が増大するように変更できる。
【0018】
【0019】
【0020】
(3)前記(1)~(2)のいずれかの構成の下で、
前記一対の各保持部が、第1構成部と、該第1構成部に着脱可能に一体化されて該第1構成部に連続して伸びる第2構成部とをそれぞれ備え、
前記一対の第1構成部の前端部に保護シートが取付けられ、
前記一対の第2構成部が、前記装着者の頭部に対する保持用具として用いられている構成とされている。
【0021】
この構成によれば、先ず、一対の第2構成部の開口を利用することにより、その一対の第2構成部を装着者の頭部(左右側部)に髪形に影響を与えることなく(髪形を変形させてしまうことなく)装着することができ、その装着後において、保護シートが取付けられた一対の各第1構成部を一対の各第2構成部に一体化することができる。このため、髪形を変形させてしまうことを防ぎつつ、迅速且つ簡単にフェイスシールドを装着者の頭部に装着することができる。
【0022】
(4)前記(3)の構成の下で、
前記一対の第1構成部及び前記一対の第2構成部の一方が、金属的性質を有するように形成され、
前記一対の第1構成部及び前記一対の第2構成部の他方にマグネットが備えられ、
前記一対の各第1構成部と前記一対の各第2構成部とが、その一方とその他方のマグネットとの吸着により、それぞれ着脱可能に一体化されている構成とされている。
【0023】
この構成によれば、前述の(3)の作用効果を具体的且つ容易に実現できるだけでなく、一対の第2構成部に対する一対の第1構成部の傾斜角度及び重なり長さを任意の状態にした上で一体化できることにもなり、フェイスシールドの装着者顔面に対する保護シートの傾斜角度、及び保護シートと装着者顔面との間の間隔を容易に調整できる。
【0024】
(5)前記(4)の構成の下で、
前記各第1構成部の後端部又は前記各第2構成部の前端部に、該第2構成部に対する該第1構成部の傾斜角度を調整する角度調整部が設けられている構成とされている。
【0025】
この構成によれば、角度調整部を用いることにより、第2構成部に対する第1構成部の傾斜角度を容易に調整することができ、これに伴い、装着者顔面に対する保護シートの傾斜角度調整を容易にすることができる。
【0026】
(6)前記(1)~(5)のいずれかの構成の下で、
前記一対の各保持部の外面に、マスクの耳掛け部を引っ掛けるための係止突起部が形成されている構成とされている。
【0027】
この構成によれば、マスクをも併せて使用する場合に、その耳掛け部を係止突起部に引っ掛けることにより、その耳掛け部を耳に引っ掛けることをなくすことができる。このため、耳掛け部を耳に引っ掛けたときに生じる局部荷重(局部的な痛み)を耳に作用させないようにすることができ、マスクの使用を長期に亘って継続できる。
【0028】
(7)前記(1)~(6)のいずれかの構成の下で、
前記一対の各保持部の前端部に係止爪部がそれぞれ形成され、
前記保護シートに、その横方向両側上方において、前記一対の係止爪部が係止される複数組の一対の係止孔が形成され、
前記複数組の各一対の係止孔は、前記一対の係止爪が係止されたとき、前記一対の保持部に対する保護シートの取付け角度が変わるように設定されている構成とされている。
【0029】
この構成によれば、一対の保持部における係止爪部が係止する一対の係止孔を変えるだけで、一対の保持部に対する保護シートの取付け角度を変えることができ、フェイスシールド装着者の顔面に対する保護シートの傾斜角度を簡単に変更できる。
【0030】
(8)前記(1)~(6)のいずれかの構成の下で、
前記保護シートが、その横方向両側上方において、前記一対の保持部の前端部に回動調整可能に支持されている構成とされている。
【0031】
この構成によれば、保護シートに対して外力を与えることにより、フェイスシールド装着者の顔面に対する保護シートの傾斜角度を調整できることになり、便宜性を高めることができる。
【0032】
(9)前記(1)~(8)のいずれかの構成の下で、
前記保護シート内面の少なくとも周縁部が、親水性処理面とされている構成とされている。
【0033】
この構成によれば、保護シートの内面のうち、親水性処理面(親水性処理が施されている部分)に水を噴霧すれば、その部分に水膜を保持できることになり、フェイスシールド装着使用時に、その水膜からの水分の蒸発により、保護シートとフェイスシールド装着者顔面との間の気化熱を奪って、その間の温度を、保護シート内面に水膜が保持されていない場合に比して下げることができる。これにより、保護シートとフェイスシールド装着者顔面との間の快適性を向上させることができ、フェイスシールドの装着継続性を高めることができる。しかも、保護シートの内面のうち、少なくとも周縁部に水膜を保持できることから、保護シートが着火し易い可燃性物質(可燃性プラスチック等)により形成され、その保護シートが、着火源が存在する環境で使用されるとしても、着火しにくくすることができる。このため、フェイスシールドの装着使用において、着火に対するリスクを低減できる。
(10)装着者の頭部に装着するための保持具と、該保持具に取付けられて該保持具が装着者の頭部に装着されたとき、該装着者の顔面を覆う透明な保護シートと、が備えられているフェイスシールドにおいて、
前記保持具が、前記装着者の頭部に装着されたとき、該装着者の頭部両側方において、該装着者の顔面前方にそれぞれ伸びる棒状の一対の保持部を備え、
前記一対の各保持部の前端部に前記保護シートが着脱可能に取付けられ、
前記一対の各保持部の前端部に係止爪部がそれぞれ形成され、
前記保護シートに、その横方向両側上方において、前記一対の係止爪部が係止される複数組の一対の係止孔が形成され、
前記複数組の各一対の係止孔は、前記一対の係止爪が係止されたとき、前記一対の保持部に対する保護シートの取付け角度が変わるように設定されている構成とされている。
この構成によれば、一対の保持部における係止爪部が係止する一対の係止孔を変えるだけで、一対の保持部に対する保護シートの取付け角度を変えることができ、フェイスシールド装着者の顔面に対する保護シートの傾斜角度を簡単に変更できる。
(11)前記(10)の構成の下で、
前記一対の各保持部が、別個独立した部品とされ、
前記各保持部にマグネットがそれぞれ備えられている構成とされている。
この構成によれば、髪に留められる金属製の髪留め(ヘアピン)を利用して、その金属製の髪留めに各保持部のマグネットをそれぞれ吸着させることができ、その金属製髪留めを頭部の左右両側部の髪に留めることにより、各保持部を装着者の頭部の左右側部に簡単に保持することができる。このため、各保持部の前端部が保護シートに予め取付けられているとしても、一対の保持部の後方側の間に、装着者の頭部をその頭部前方側から相対的に通すことにより、一対の保持部を装着者の頭部における金属製髪留めに吸着させることができ(フェイスシールドの装着)、この際、装着者の髪形を押し潰すこと等によって変形させること(壊すこと)を防止できる。この結果、装着者の髪形を変形させないようにしつつ、フェイスシールドを装着者の頭部に簡単に装着することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、装着に伴い、髪形が変形することを極力抑えると共に、外見上の違和感を極力生じさせないフェイスシールドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1実施形態に係るフェイスシールドを示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係るフェイスシールドを示す平面図。
【
図4】第1実施形態に係るフェイスシールドにおいて、一対の保持部に対する保護シートの取付けを説明する説明図。
【
図5】第1実施形態に係るフェイスシールドの装着の一例を説明する説明図。
【
図6】第1実施形態に係るフェイスシールドを装着した装着者を示す平面図。
【
図7】第1実施形態に係るフェイスシールドを装着した装着者を示す正面図。
【
図8】マスクを併用する際の第1実施形態に係るフェイスシールドの利用例を説明する説明図。
【
図10】第2実施形態に係るフェイスシールドの装着の一例を説明する説明図。
【
図11】第2実施形態に係る第1構成部と第2構成部との着脱可能な一体化構成を説明する説明図。
【
図12】第3実施形態に係るフェイスシールドの装着の一例を説明する説明図。
【
図13】第3実施形態に係る第1構成部と第2構成部との着脱可能な一体化構成を説明する説明図。
【
図15】第4実施形態に係るフェイスシールドを装着した装着者を示す斜視図。
【
図16】第4実施形態に係る保持部の構造を説明する説明図。
【
図18】第5実施形態に係る保持部の先端部と保護シートとの取付け関係を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1~
図9は第1実施形態を示す。この第1実施形態において、符号1がフェイスシールドであり、そのフェイスシールド1は、
図1~
図3に示すように、装着者の頭部に装着するための保持具2と、その保持具2に着脱可能に取付けられる保護カバーとしての保護シート3と、を備えている。
【0038】
前記保持具2は、細長い棒状部材を用いて、
図1に示すように、人の頭部が収まるにはやや狭い間隔をあけつつ伸びる一対の保持部2Aと、その一対の保持部2Aを連結する連結部2Bと、を一体的に備えている。本実施形態においては、一対の保持部2A及び連結部2Bは、樹脂成形品として一体的に成形されており、その断面は矩形状に形成されている。
【0039】
前記一対の各保持部2A,2Aは、その伸び方向一方側部分である後方側部分2Abと、その後方側部分2Abよりも前方側の前方側部分2Afとを有している。この一対の保持部2Aの前方側部分2Afは、その一対の保持部2Aの前端(
図2中、左端)の幾分手前までは、互いに対向しつつ後方側(
図2中、右側)から前方側(
図2中、左側)に向うに従って互いに近づくように伸び、その一対の保持部2Aの前端の幾分手前を過ぎると、一対の保持部2Aの前端部として、互いに離れる方向に反転されることになっている。このため、一対の保持部2Aは、その各前端の幾分手前において、その間の間隔Lが最も狭くなり、その間隔Lを押し拡げることにより、一対の保持部2Aには、元に戻ろうとする弾発力(復帰力)が発生する。
【0040】
前記一対の各保持部2A,2Aの後方側部分2Abは、
図1、
図3に示すように、前記前方側部分2Afに対して折曲されている。具体的には、その後方側部分2Abは、前方側部分2Afに連続して、その前方側部分2Afの伸び方向後方側外方に向うに従って、前方側部分2Afを基準として、次第に偏位長さ(オフセット量)が長くなるように傾斜されている。
【0041】
前記連結部2Bは、
図1、
図2に示すように、前記一対の保持部2Aにおける伸び方向一方側端部(後方側部分2Abの後端部)同士を連結している。連結部2Bは、各保持部2A(2A)との連結点を中心として、その各保持部2A(2A)に対して撓み性を付与しており、その各撓み性に基づき、一対の保持部2Aは、前述した如く、その両者2A,2Aの並設方向(
図2中、上下方向)に拡縮可能となっている。
【0042】
前記一対の各保持部2A,2A(前方側部分2Af)の前端部には、
図1~
図4に示すように、保護シート3を着脱可能に取付けるための係止部4がそれぞれ形成されている。その各係止部4には、係止基部5と、係止爪部6とが一体的に形成されている。係止基部5は、一対の保持部2A,2A間の間隔が最も狭い個所から前方に向かうに従って、一対の保持部2A,2Aの並設方向(
図2中、上下方向)外方に伸びるように形成されていて、その上面幅は、各保持部2A,2A先端に向かうに従って、各保持部2A,2Aの係止基部5以外の部分に比して拡げられている。この係止基部5は、横方向を長辺とした長方形状の端面5aを有しており、その向きは、一対の保持部2A,2Aの並設方向外方側に向けられている。この係止基部5の端面5aには、その横方向内方側に縮小されるようにした状態で係止調整部7が一体的に備えられており、その係止調整部7は、後述の保護シート3の肉厚よりも多少、厚い一定厚みをもって係止基部5の端面5aから突出されている。
【0043】
前記係止爪部6は、
図3、
図4に示すように、前記各係止基部5の端面5aに前記係止調整部7を介して一体化されている。係止爪部6は、横方向(
図3中、左右方向)を長辺とした正面視長方形の板状のものとして形成され、その横方向長さは係止調整部7の横方向長さと同じ長さとされている。この係止爪部6は、横方向において、係止調整部7の長さに揃えた上で、係止調整部7の肉厚方向外方(突出方向)に連続して配置されている。この係止爪部6は、その上部6aが横方向全長に亘って係止基部5及び係止調整部7の両上面よりも上方に突出されており、係止爪部6の上部6a上面と、係止基部5及び係止調整部7の両上面との間には段差が形成されている。
【0044】
前記保護シート3は、
図1、
図4に示すように、前記一対の保持部2Aの係止部4に着脱可能に取付けられる。この保護シート3には、比較的薄い矩形状の透明な樹脂シートが用いられ、その大きさは、横方向(
図4中、左右方向)長さが一対の保持部2A前端部の間隔を十分に超える長さとされ、縦方向(
図4中、上下方向)の長さが一般的な人の顔の上下長さ程度に設定されている。この保護シート3をなす樹脂シートは、十分な可撓性を有し、折り畳む位まで湾曲させることができることになっており、この保護シート3が一対の保持部2A,2Aの係止部4に取付けられたときには、保護シート3は、その横方向中央部分を中心として、外に膨らむように湾曲される。この保護シート3の湾曲の曲率半径は、保護シート3の可撓性が十分高いことから、一対の保持部2A前端部間の間隔に応じて、その膨らみ長さ(突出量)を変化させながら、変化することになる。この保護シート3としては、透明で且つ上記可撓性を有していれば、どのような材質をも用いることができるが、本実施形態においては、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート又はPP(ポリプロピレン)シートが用いられている。
【0045】
前記保護シート3の上部には、その保護シート3を一対の各保持部2A,2Aの係止部4に着脱可能に取付けるべく、
図1、
図4に示すように、その横方向両側において、一対の係止孔8,8が対称的に形成されている。この一対の係止孔8,8は、複数組(本実施形態においては2組)が設けられており、その各組の係止孔8A,8A(8B,8B)は、保護シート3の縦方向(
図1、
図4中、上下方向)に間隔をあけて順次、配置され、各組の係止孔8A,8A(8B,8B)の形状は、基本的に同じとされている。
【0046】
本実施形態においては、複数組の一対の係止孔8,8のうち、最上方位置に位置するもの8A,8Aが基本係止孔とされている。この一対の各係止孔8A,8Aは、正面視長方形状に形成され、その各係止孔8A,8Aの横辺の方向は保護シート3の横辺の方向と略同じとされている。この各係止孔8A,8Aの横辺の長さは、前記各保持部2A,2Aにおける係止爪部6の横辺の長さと同じとされ、その縦辺の長さは、係止爪部6の縦辺の長さより多少、短くされている。このような保護シート3を各保持部2A,2Aの係止部4(前端部)に取付けるに当たっては、先ず、係止爪部6の上部6aを保護シート3の係止孔8Aを介してその保護シート3の内面側から表面側に通し、その上で、係止孔8Aの上縁を係止調整部7の上面に当接するまで相対的に降ろし、その後、係止爪部6の上部以外の部分を係止孔8Aを介して保護シート3の内面側から表面側に通す。これにより、係止爪部6の上部6aが保護シート3の前方移動を規制し、係止基部端面5aが保護シート3の後方移動を規制することになる。またこのとき、係止調整部7は、その厚みをもって、係止爪部6が係止孔8Aを完全に通り抜けることを確保し、その係止調整部7の上面は、係止孔8Aの上縁(保護シート3)を支え持つ。しかもこのとき、係止爪部6全体が係止孔8Aをほぼ全体に覆うことになる。この結果、保護シート3は、一対の保持部2Aの係止部4(前端部)に対して基本的な態様をもって取付けられることになる。このとき、一対の保持部2Aのばね性(拡縮性)は、保護シート3の十分な可撓性に基づき確保(維持)されており、一対の保持部2A間が押し拡げられたとしても、保護シート3の曲率半径が大きくなることにより吸収される。尚、仮に、保護シート3を一対の保持部2Aから外すときには、上述の手順とは逆の手順となる。
【0047】
前記複数組の一対の係止孔8,8のうち、最上方位置よりも下方に位置する一対の係止孔8B,8Bは、各保持部2A,2Aに対する保護シート3の傾斜角度を変更するものとなっている。このため、本実施形態においては、各係止孔8B,8Bは、その横辺が、保護シート3の横方向内方に向かうに従って縦方向下方に向けて伸びるよう傾斜されている。これにより、保護シート3を一対の保持部2A,2Aの係止部4に取付けたときには、最上方位置の一対の係止孔8A,8Aに一対の保持部2Aの係止部4を取付けたときに比べて、保護シート3は、保持部2Aの係止部4と保護シート3下部との間の離間長さが長くなるように傾斜する。
【0048】
前記一対の各保持部2A,2Aの外面の一つである外側側面10には、
図1に示すように、マスクの耳掛け部(掛け紐)用の複数の係止突起部11が設けられている。複数の係止突起部11は、各保持部2A,2Aにおける前方側部分2Afの後側において、間隔をあけて配置されており、その各係止突起部11は、開口を後側に向けたフック状に形成されている。ここで、各保持部2A,2Aの外面とは、各保持部の外側側面10、上面12、下面13を意味し、係止突起部11を、各保持部2A,2Aの外側側面10に限らず、上面12、下面13に設けてもよい。
【0049】
このようなフェイスシールド1を用いるに際しては、その装着に当たり、髪形の変形を考慮する必要がないときには、保護シート3を取付けた保持具2(
図1参照)を装着者の頭部にその上側から被るようにする。これにより、一対の保持部2Aが装着者の頭部によって弾発力(復帰力)に抗して押し開かれ、その弾発力に基づく挟持力により、一対の保持部2は、装着者における左右耳上方の頭部両側部に保持され、連結部2Bは、首筋後部から後頭部にかけての部分に当接される。この結果、保護シート3は、装着者の顔面前方の所定位置において所定の傾斜をもって装着者の顔面を覆う。
【0050】
また、フェイスシールド1の装着に当たり、髪形の変形防止を考慮する必要があるときには、
図5に示すように、先ず、保持具2だけを、一対の保持部2Aの間に首筋がその後側から通るように前方移動させて、装着者14の頭部14Aに装着する。このとき、装着者の髪形が全体的に膨らむ形になっていても、保持具2を装着者頭部14Aに上側から被せるように装着しないことから、髪形は押し潰されることはない。また、装着者14の後頭部14Abの髪形が、ヘアクリップ、パレッタ等により後方に膨らむような髪形部分15が形成されていても(
図5参照)、一対の保持部2Aの後方側部分2Abが斜め下方に傾斜されていることから、連結部2Bが、
図5、
図6に示すように、上記髪形部分15の下方に位置し、上記保持具2の装着により、上記髪形部分15によって頭部14Aへの保持具2の装着が困難になることも、その装着により上記髪形部分15が変形されること(壊されること)もなくなる。勿論このとき、一対の保持部2Aが押し開かれることによりそれらに弾発力(復帰力)が発生することになり、その弾発力に基づく挟持力により、一対の保持部2Aは、装着者14における左右耳16上方の頭部14側部に保持される。
【0051】
この後、装着者14の顔面14B前方に突出する一対の保持部2Aの係止部4に保護シート3を取付ければ、上述の場合同様、保護シート3は、
図5、
図6に示すように、装着者14の顔面14B前方の所定位置において所定の傾斜角度をもって装着者14の顔面14Bを覆う。尚、
図5においては、透明な保護シート3に覆われた顔面14B部分を、明瞭にすべく細線で示す(以下、
図7、
図8等においても同じ)。
【0052】
このとき、一対の保持部2Aと連結部2Bとは、保護シート3を装着者14の顔面14B前方の所望の位置に配置するに当たって、的確に機能する。すなわち、フェイスシールド1(保持具2)が装着されると、装着者14の左右の耳16(上部)により一対の保持部2Aが下がることが規制され、装着者14の首筋後部から後頭部14Abにかけての部分により連結部2Bの前方移動が規制されることになる。これにより、一対の保持部2Aの係止部4(前端部)は、装着者14の顔面14B前方の所定位置において所定高さ位置に位置されることになり、保護シート3は、装着者14の顔面14B前方の所望の位置に的確に配置される。
【0053】
この結果、当該フェイスシールド1は、装着者14の頭部14Aに適正に装着されることになり、周囲の人及び自己の飛沫が保護シート3により遮断される。その一方で、フェイスシールド1の正面視(保護シート3の前面をその前方側から見た状態)においては、
図7に示すように、保持具2について、透明な保護シート3を介して、その各保持部2A,2Aの係止爪部6ないしその近辺部分が部分的に見えるだけとなり(各保持部2A,2Aのその他の部分が係止爪部6ないし近辺部分により隠れること)、装着者14の顔面14Bは、額ないし前頭部を初めとして、ほとんどの部分が保持具2により覆われることはない。このため、当該フェイスシールド1を装着しても、その装着者14の顔面14Bは、透明な保護シート3を介して、フェイスシールド1の保持具2によって変化を受けない普段の状態に近い顔として見ることができ、装着者14の顔面14Bを視認しながらコミュニケーションを図るに当たり、違和感を極力生じさせないようにすることができる。
【0054】
また、フェイスシールド1を装着使用するに当たり、装着者14がマスク17も使用するときには、
図8、
図9に示すように、マスク17の耳掛け部(掛け紐)18を複数の係止突起部11のいずれかに引っ掛ける。これにより、マスク17の耳掛け部18を耳16に引っ掛けることをなくすことができ、耳掛け部18を耳16に引っ掛けたときに生じる局部荷重(局部的な痛み)を耳16に作用させないようにすることができる。この結果、マスク17の使用を長期に亘って継続できる。
【0055】
また、本実施形態に係る保持具2を逆さの態様をもって使用することもできる。すなわち、一対の各保持部2A,2Aの後方側部分2Abを後頭部14Abにおいて略水平に配置して、一対の各保持部2A,2Aの前方側部分2Afを前方に向かうに従って上方に向うように配置することもできる。これにより、装着者14の顔面14Bに対する保護シート3の傾斜角度を、装着者14の顔面14Bと保護シート3下側との間隔が増大するように変更できる。
【0056】
図10、
図11は第2実施形態、
図12~
図14は第3実施形態、
図15~
図17は第4実施形態、
図18は第5実施形態、
図19は第6実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図10、
図11に示す第2実施形態は、前記第1実施形態の変形例を示す。この第2実施形態においては、一対の各保持部2A,2Aが、2分割されることによって第1構成部2A-1と第2構成部2A-2とにより構成され、その第1構成部2A-1と第2構成部2A-2とが着脱可能に一体化されることになっている。具体的に説明する。
【0058】
第2実施形態に係る一対の各保持部2A,2Aは、第1構成部2A-1と第2構成部2A-2とを備えており、その各第1構成部2A-1の前端部には、前述の係止部4がそれぞれ形成され、一対の保持部2Aにおける第2構成部2A-2の後端部同士が、前述の連結部2Bにより連結されている。また、一対の第2構成部2A-2は、その前端側に向かうに従って互いに近づくように伸びており、その一対の第2構成部2A-2の間隔を押し開くことにより弾発力が発生することになっている。
【0059】
このような第1構成部2A-1及び第2構成部2A-2の下、各第1構成部2A-1の後端部には接続筒体21が予め嵌合されている。この接続筒体21に対する第1構成部2A-1の後端部の嵌合は、接続筒体21の一端側においてなされ、接続筒体21の他端側には、保護シート3を顔面14B前方に配置する際に、第2構成部2A-2の前端部が嵌合されることになる。
図11中、符号22は、接続筒体21内に膨出する位置決め用突部、符号23は第2構成部2A-2(第1構成部2A-1)に形成される位置決め用凹部であり、両者22,23の嵌合により、接続筒体21に対する第2構成部2A-2(第1構成部2A-1)の嵌合度合いが適正なものとされる。
【0060】
この第2実施形態においては、フェイスシールド1の装着に当たり、先ず、
図10に示すように、保護シート3に取付けられた一対の第1構成部2A-1と、連結部2Bにより連結された一対の第2構成部2A-2とを、独立した状態で準備する。その上で、一対の第2構成部2A-2の開口を利用することにより、その一対の第2構成部2A-2を装着者14の頭部14Aにその頭部14A後方側から装着する。これにより、一対の第2構成部2A-2を装着者14の頭部14Aに装着するに当たり、髪形を変形させないようにすることができる。勿論このとき、一対の第2構成部2A-2には、装着者14の頭部14Aによりその一対の第2構成部2A-2が押し開かれるため、弾発力に基づく挟持力が生じることになり、その挟持力により一対の第2構成部2A-2は装着者14の頭部14Aに装着(保持)される。
【0061】
一対の第2構成部2A-2が装着者14の頭部14Aに保持されると、保護シート3が取付けられた一対の第1構成部2A-1が、
図11に示すように、装着者顔面14Bの前方側から頭部14Aに近づけられ、各第1構成部2A-1の後端部に予め取付けられた接続筒体21の他端側に各第2構成部2A-2の前端部がそれぞれ嵌合される。このとき、接続筒体21の位置決め用突部22が第2構成部2A-2の位置決め用凹部23に嵌まり込み、接続筒体21の他端側に対する第2構成部2A-2の前端部の嵌合度合いは、適切なものとなると共に、所定以上の外力が作用しない限り、その接続筒体21と第2構成部2A-2の前端部との嵌合状態は維持される。
【0062】
これにより、このフェイスシールド1の装着者頭部14Aに対する装着においては、髪形を変形させたくないときであっても、第2構成部2A-2の装着後に、一対の保持部2Aの先端部に対する保護シート3の取付け作業を行う必要がなくなり、装着者14の頭部14Aに対するフェイスシールド1の装着を迅速且つ簡単に行うことができる。
【0063】
図12~
図14に示す第3実施形態は、前記第2実施形態の変形例を示す。この第3実施形態においては、第1構成部2A-1と第2構成部2A-2とを着脱可能に一体化する手段としてマグネット(磁石)25が利用されると共に、第2構成部2A-2に対する第1構成部2A-1の取付け角度を複数の角度の中から選択できる内容が示されている。
【0064】
この第3実施形態においては、第1構成部2A-1については、その少なくとも後端部が、マグネットにより吸着される金属的性質を示すように形成されている。具体的には、第1構成部2A-1の少なくとも後端部表面を金属被膜として形成すること、第1構成部2A-1の少なくとも後端部内部に金属材料を埋設すること、第1構成部2A-1の少なくとも後端部に金属片を取付けること等のいずれかが行われる。
【0065】
他方、第2構成部2A-2の前端には、角度調整部26が接続されている。角度調整部26は、正面視扇状であって、その2つの半径相当辺部がなす中心角が略90度とされる基板(1/4円板)27を有し、その基板27を基準として、その厚み方向一方側には、複数のガイド溝28が形成され、その基板27の厚み方向他方側には収納ケース部29が形成されている。
【0066】
前記複数のガイド溝28は、基板27の厚み方向一方側面に、ガイド部27aを設けると共に、両半径相当辺部においてガイド壁部27bをそれぞれ起立させることにより形成されており、その複数のガイド溝28は、両ガイド壁部27bの交差部を中心として、所定角度毎に放射状に延びて、その各溝端は、基板27の円弧相当辺部から外方に開放されている。この複数の各ガイド溝28は、第1構成部2A-1の後端部を嵌め込むことができるように形成されており、そのいずれかのガイド溝28に第1構成部2A-1の後端部を嵌め込んだときには、ガイド溝28の伸び方向を除き、基板27の面に沿う方向に関しては、ガイド部27a、ガイド壁部27bにより移動することが規制されることになっている。
【0067】
収納ケース部29は、基板27の厚み方向他方側面に、その周縁部において周壁部27cを起立させており、その周壁部27cは、基板27の厚み方向他方側外方に開口する収納空間27dを形成している。この収納空間27dには、全体的にマグネット(
図14においては簡略的に表示)25が収納されており、そのマグネット25は、収納空間27dの開口を蓋体30により施蓋することにより、収納ケース部29内部に保持されている。
【0068】
これにより、この第3実施形態においては、第2構成部2A-2を装着者14の後頭部14Abにその後方側から装着した後、
図13に示すように、その第2構成部2A-2の先端に設けられた角度調整部26におけるいずれかのガイド溝28に第1構成部2A-1の後端部を嵌め込めば、その後端部は、ガイド部27a、ガイド壁部27bによりガイドされた状態で、そのガイド溝28の底部にマグネット25により吸着される。これにより、第1構成部2A-1と第2構成部2A-2とが一体化した状態で、第2構成部2A-2に対する第1構成部2A-1の取付け角度が決まることになり、保護シート3は、その取付け角度に応じた傾斜角度姿勢を示すことになる。このとき、保護シート3の十分な可撓性を利用して、第1構成部2A-1の後端部を装着者14における頭部14Aの側部外方から角度調整部26のいずれかのガイド溝28内に嵌め込ませることができることから、そのガイド溝28への第1構成部2A-1の後端部の嵌め込みを容易にすることができると共に、髪形を変形させることを確実に防止できることになる。
【0069】
図15~
図17に示す第4実施形態は、前記第1実施形態の変形例を示す。この第4実施形態においては、髪に金属製髪留め(ヘアピン)31を取付けることを前提として、その金属製髪留め31とマグネット32との吸着を利用することにより、保持具2を装着者14の頭部14Aに装着することを示す。
【0070】
この第4実施形態においては、一対の各保持部2A,2Aは、別個独立した部品とされ、その両保持部2A,2Aの後端部同士は前述の連結部2Bにより連結されていない。また、各保持部2A,2Aには、その内側側面33から外部に開口する凹部34がそれぞれ形成されており、その各凹部34は、比較的浅い深さをもって、各保持部2A,2Aの伸び方向一定範囲に亘って伸びる入口凹部35と、その入り口凹部35の底部に、保持部2Aの伸び方向に所定間隔をあけて順次形成される開口円状の複数の個別凹部36とを有している。この各個別凹部36内には円板状のマグネット32がそれぞれ収納されており、その各マグネット32は、入口凹部35に蓋体37を嵌め込んで凹部34の開口を施蓋することにより、保持部2A内部内に保持されている。これにより、各保持部2A,2Aは、マグネット32に基づき一定範囲で金属に対して吸着能力を有することになる。
【0071】
したがって、フェイスシールド1の装着に当たっては、保護シート3に一対の各保持部2A,2Aを取付けた上で、その各保持部2A,2Aの一定範囲を、頭部14A側部の髪に留めた金属製髪留め31に近づければ、その両者2A,31の吸着により一対の保持部2A,2Aは装着者14の頭部14A側部に保持され、装着者14の頭部14A両側部に対する一対の保持部2A,2Aの装着は、極めて簡単となる。しかもこのとき、保護シート3の十分な可撓性を利用して、装着者14における頭部14Aの側部外方から側部に各保持部2A,2Aを移動させることができ、髪形を変形させることを確実に防止できる。
【0072】
図18に示す第5実施形態は、前記第1~第4実施形態の変形例を示す。この第5実施形態においては、一対の各保持部2A,2Aの先端部に対して保護シート3が回動可能に支持され、保護シート3に対して外力を作用させないときには、保護シート3の傾斜姿勢が保持される内容を示す。
【0073】
この第5実施形態においては、保護シート3の横方向両側上部に軸具41がそれぞれ取付けられ、各保持部2Aの先端部の外側側面10には、円筒状の受け具42がそれぞれ突設されている。軸具41は、円板状の基板43と、その基板43の中央部から突出する軸部44とを有しており、軸部44の基部外形は非円形形状としての多角形状として形成され、軸部44の先端部は球形形状に形成されている。保護シート3には、その横方向両側上部において、軸部44の基部外形に対応した孔(図示略)がそれぞれ形成されており、このような保護シート3の両孔に軸具41における軸部44が保護シート3の表面側から内面側に挿入されて、軸部44の基部が、その保護シート3の孔に相対回転不能に圧入されている。
【0074】
他方、円筒状の各受け具42の外壁には、受け具42の軸線方向に伸びるようにしてスリット(図示略)が形成されており、その各受け具42は、その径方向に多少、拡縮可能となっている。この円筒状の各受け具42内に前記軸具41の軸部44がそれぞれ圧入されており、保護シート3に外力を作用させて、円筒状の両受け具42の軸線Oを中心として、保護シート3を摩擦力に抗して回動させれば、保護シート3を任意の傾斜姿勢にすることができ、保護シート3に対して外力を作用させないときには、保護シート3は、そのときの傾斜姿勢を維持することになる。
【0075】
これにより、フェイスシールド装着者14の顔面14Aに対する保護シート3の傾斜角度を調整できることになり、便宜性を高めることができる。
【0076】
図19に示す第6実施形態は、前記第1~第5実施形態の変形例を示す。この第6実施形態においては、視認性、外見性に問題がない限り、保護シート3の内面の水膜保持能力を高めることにより、保持シート3と顔面14Aとの間の快適性等を高める内容を示す。
【0077】
第6実施形態においては、保護シート3の内面のうち、少なくとも周縁部(本実施形態では上縁部を除く)が親水性処理面(好ましくは超親水性処理面(水滴の接触角10度以下))とされている。
図19において、斜線の領域Aが、本実施形態における親水性処理面の領域を示す。この親水性処理面とするための親水性処理に当たっては、一般的に疎水性を示す樹脂シート(PETシート、PPシート等)においては、コロナ放電処理等が行われるが、保護シート3の素材面が親水性表面(水滴の接触角が90度以下)であれば、サンドブラスト等によって微細な凹凸を形成すればさらに接触角が減少することになることを利用(Wenzel又はCassie-Baxterの式を利用)してもよい。
【0078】
これにより、保護シート3の内面のうち、親水性処理面(親水性処理が施されている部分)に水を噴霧すれば、その部分に水膜を保持できることになり、フェイスシールド装着使用時に、その水膜からの水分の蒸発により、保護シート3と装着者顔面14Aとの間の気化熱を奪って、その間の温度を、保護シート3内面に水膜が保持されていない場合に比して下げることができる。これにより、保護シート3と装着者顔面14Aとの間の快適性を向上させることができ、フェイスシールド1の装着継続性を高めることができる。しかも、保護シート3の内面のうち、少なくとも周縁部に水膜を保持することから、保護シート3が着火し易い可燃性物質(可燃性プラスチック等)により形成され、その保護シート3が、着火源(例えばライターの火)が存在する環境で使用されるとしても、着火しにくくすることができる。本実施形態においては、保護シート3の内面の周縁部に親水性処理を施してそこに水を噴霧することとしているが、保護シート3を、結露する環境で使用する場合には、曇り止めを考慮し、保護シート3の内面全体に対して親水性処理を施してもよい。
【0079】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)係止孔8と係止爪部6とを同じ正面視長方形状として、係止爪部6を係止孔8に通し易くすること。
(2)一対の係止孔8,8を一組とすること。
(3)各保持部2Aに対する係止突起部11の配置位置を、マスク17の耳掛け部18(紐)を掛ける観点から、適宜、設定すること。
(4)第2実施形態において、第2構成部2A-2を装着者14の頭部に保持するに当たり、その第2構成部2A-2にマグネット32を設け、そのマグネット32を、頭部上の髪に取付けられた金属製髪留め31に吸着させること。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、フェイスシールド1の装着に伴い、髪形が変形することを極力抑えると共に、外見上の違和感を極力生じさせないことに利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 フェイスシールド
2 保持具
2A 保持部
2B 連結部
3 保護シート
4 係止部
6 係止爪部
8,8A,8B 係止孔
11 係止突起部
21 接続筒体
25 マグネット
26 角度調整部
32 マグネット