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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/00 20180101AFI20240419BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20240419BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20240419BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20240419BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240419BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240419BHJP
【FI】
F21V5/00 320
F21V8/00 281
F21V9/32
G02B3/08
G02B5/20
F21Y115:30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019179260
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057190
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高平 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】大野 晴士
(72)【発明者】
【氏名】西 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山江 和幸
(72)【発明者】
【氏名】中野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】河地 秀治
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-154995(JP,A)
【文献】特開2003-121337(JP,A)
【文献】特開2016-020875(JP,A)
【文献】特開2016-066480(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/00
F21V 8/00
F21V 9/32
G02B 3/08
G02B 5/20
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置から出力されたレーザー光の光強度のピークを低下させて出力するカレイドスコープと、
前記カレイドスコープから出力された前記レーザー光の波長を変換し、前記レーザー光の波長と異なる波長の光を放射する波長変換部と、
前記波長変換部から放射された光が入射されかつ当該入射された光を散乱させる光散乱構造部、および、前記光散乱構造部で散乱した光を出射する出射部を有するレンズと、
を備え、
前記カレイドスコープは、断面が矩形状のミラーパイプであり、
前記波長変換部は、前記レーザー光を透過する基板と、前記基板上に設けられかつ前記基板から見て前記レンズ側に配置された蛍光体と、を有し、
前記蛍光体は、前記カレイドスコープとは逆側である前記レンズ側に前記レーザー光の波長と異なる波長の光を放射し、
前記光散乱構造部を前記レンズの光軸に沿う方向に投影したときの投影面積は、前記カレイドスコープの出力側の開口の面積よりも大きい
照明装置。
【請求項2】
光源装置から出力されたレーザー光の光強度のピークを低下させて出力するカレイドスコープと、
前記カレイドスコープから出力された前記レーザー光の波長を変換し、前記レーザー光の波長と異なる波長の光を放射する波長変換部と、
前記波長変換部から放射された光が入射されかつ当該入射された光を散乱させる光散乱構造部、および、前記光散乱構造部で散乱した光を出射する出射部を有するレンズと、
前記カレイドスコープ、前記波長変換部および前記レンズを固定する筐体と、
を備え、
前記カレイドスコープは、断面が矩形状のミラーパイプであり、
前記光散乱構造部を前記レンズの光軸に沿う方向に投影したときの投影面積は、前記カレイドスコープの出力側の開口の面積よりも大きい
照明装置。
【請求項3】
さらに、前記カレイドスコープ、前記波長変換部および前記レンズを固定する筐体を備える
請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
さらに、前記光源装置から出力されたレーザー光が導入される光ファイバーの端部を保
持するファイバー取付部材を備え、
前記波長変換部は、前記筐体内において、前記カレイドスコープと前記レンズとの間に配置され、
前記レーザー光の光軸方向において、前記ファイバー取付部材は、前記筐体の一方の端部に設けられ、前記レンズは、前記筐体の他方の端部に設けられ、
前記カレイドスコープは、前記筐体内において、前記ファイバー取付部材と前記波長変換部との間に配置され、
前記カレイドスコープには、前記ファイバー取付部材によって保持された前記光ファイバーの端部から出力されたレーザー光が入力される
請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記カレイドスコープの出力側の開口の中心から前記光散乱構造部を見込む頂角は、前記カレイドスコープから出力される前記レーザー光の拡がり角よりも大きい
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記出射部は、前記レンズの光軸に垂直で、かつ、平坦な出射面を有している
請求項1~のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光散乱構造部は、前記出射面よりも表面粗さが粗い
請求項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記光散乱構造部を前記レンズの光軸に沿う方向に投影したときの投影面積は、前記出射面の面積の25%以下である
請求項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記レンズは、前記レンズの光軸に沿う方向であって前記出射部側に窪む凹部を有し、
前記光散乱構造部は、前記凹部の底面の少なくとも一部に設けられている
請求項1~のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記凹部の側面は、前記レンズを前記光軸に沿う面で断面視した場合に、前記底面に向かうほど前記光軸に近づく傾斜形状を有している
請求項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光の波長を変換して照明光を出射する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光の波長を変換して照明光を出射する照明装置が知られている。この種の照明装置の一例として、特許文献1には、光源装置から出力されたレーザー光を波長変換部で波長変換および拡散し、さらに光散乱部材を経由して照明光を出射する照明装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-154995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、照明装置に対する衝撃や経年変化によって波長変換部が破損したり脱落したりした場合、レーザー光が波長変換部にて拡散されず、照明装置から出射される光のパワー密度が高くなってしまう。これにより、人の目に対する安全性が低下することがある。
【0005】
そこで本発明は、人の目に対する安全性を確保することができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る照明装置は、光源装置から出力されたレーザー光の光強度のピークを低下させて出力するカレイドスコープと、前記カレイドスコープから出力された前記レーザー光の波長を変換し、前記レーザー光の波長と異なる波長の光を放射する波長変換部と、前記波長変換部から放射された光が入射されかつ当該入射された光を散乱させる光散乱構造部、および、前記光散乱構造部で散乱した光を出射する出射部を有するレンズと、を備え、前記カレイドスコープは、断面が矩形状のミラーパイプであり、前記波長変換部は、前記レーザー光を透過する基板と、前記基板上に設けられかつ前記基板から見て前記レンズ側に配置された蛍光体と、を有し、前記蛍光体は、前記カレイドスコープとは逆側である前記レンズ側に前記レーザー光の波長と異なる波長の光を放射し、前記光散乱構造部を前記レンズの光軸に沿う方向に投影したときの投影面積は、前記カレイドスコープの出力側の開口の面積よりも大きい。
本発明の一態様に係る照明装置は、光源装置から出力されたレーザー光の光強度のピークを低下させて出力するカレイドスコープと、前記カレイドスコープから出力された前記レーザー光の波長を変換し、前記レーザー光の波長と異なる波長の光を放射する波長変換部と、前記波長変換部から放射された光が入射されかつ当該入射された光を散乱させる光散乱構造部、および、前記光散乱構造部で散乱した光を出射する出射部を有するレンズと、前記カレイドスコープ、前記波長変換部および前記レンズを固定する筐体と、を備え、前記カレイドスコープは、断面が矩形状のミラーパイプであり、前記光散乱構造部を前記レンズの光軸に沿う方向に投影したときの投影面積は、前記カレイドスコープの出力側の開口の面積よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る照明装置によれば、人の目に対する安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る照明装置の使用態様を示す図である。
図2】実施の形態に係る照明装置を示す断面図である。
図3】実施の形態に係る照明装置のレンズを示す図である。
図4】実施の形態に係る照明装置のレンズの光散乱構造部およびカレイドスコープを示す図である。
図5】波長変換部が設けられていない照明装置から出射される光の露光許容時間を示す図である。
図6】照明装置から出射される光の中心光度を示す図である。
図7】実施の形態の変形例1に係る照明装置のレンズを示す図である。
図8】実施の形態の変形例2に係る照明装置のレンズを示す図である。
図9】実施の形態の変形例3に係る照明装置のレンズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本発明の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
【0010】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0011】
(実施の形態)
[1.照明装置の構成]
実施の形態に係る照明装置について、図1図4を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る照明装置1の使用態様を示す図である。
【0013】
照明装置1は、例えば、建築物90の天井などに取り付けられて室内を照らす装置として使用される。建築物90の外には、レーザー光を出力する光源装置2、および、光源装置2から出力されたレーザー光を照明装置1に伝送する光ファイバー3が配置されている。
【0014】
光源装置2は、例えば、青紫から青色の波長(波長:395nm~490nm)のレーザー光を出力する半導体レーザー素子と、このレーザー光を光ファイバー3の一端に導入する光学部品とによって構成される。光ファイバー3の一端に導入されたレーザー光は、光ファイバー3内を通って光ファイバー3の他端から出力され、照明装置1に入力される。
【0015】
図2は、実施の形態に係る照明装置1を示す断面図である。
【0016】
照明装置1は、レーザー光Lの波長を変換して照明光を出射する装置である。図2に示すように、照明装置1は、筐体10と、ファイバー取付部材20と、カレイドスコープ30と、波長変換部40と、レンズ50とを備えている。ファイバー取付部材20、カレイドスコープ30、波長変換部40およびレンズ50は、レーザー光Lの光軸A1に沿って、かつ、光が出射される向きにこの順で配置されている。
【0017】
筐体10は、これらのファイバー取付部材20、カレイドスコープ30、波長変換部40およびレンズ50を収容する収容体である。筐体10は、円筒状であり、一方の端部にファイバー取付部材20が設けられ、他方の端部にレンズ50が設けられる。
【0018】
ファイバー取付部材20は、光ファイバー3の他端を保持する部材である。光ファイバー3は、ファイバー取付部材20を介して筐体10に固定される。これによりレーザー光Lの光軸A1が、筐体10内の所定の位置に位置決めされる。光ファイバー3の他端から出力されたレーザー光Lは、カレイドスコープ30に入力される。
【0019】
カレイドスコープ30は、断面が矩形状のミラーパイプであり、両端に開口31を有している。カレイドスコープ30は、ファイバー取付部材20と波長変換部40との間に配置され、カレイドスコープ30の中心軸がレーザー光Lの光軸A1に一致するように、筐体10に固定されている。光ファイバー3の出射端における中心軸とカレイドスコープ30の中心軸とは略平行となっている。
【0020】
カレイドスコープ30は、カレイドスコープ30に入力されたレーザー光Lの光強度を一様化して出力する。具体的には、カレイドスコープ30は、正規分布状であるレーザー光Lの光強度分布を方形状の分布に変更して出力する。すなわち、カレイドスコープ30は、レーザー光Lの光強度のピークを低下させて出力する。これにより、例えば波長変換部40が破損または脱落した場合に、照明装置1から出射される光のパワー密度が高くなることを抑制できる。なお、レーザー光Lの光強度のピークを低下させるとは、カレイドスコープ30の出射側の開口31におけるレーザー光Lの輝度のピークを低下させることを含む意味である。カレイドスコープ30から出力されたレーザー光Lは、波長変換部40に入力される。
【0021】
波長変換部40は、カレイドスコープ30から出力されたレーザー光Lの波長を変換し、レーザー光Lの波長と異なる波長の光を放射するデバイスである。波長変換部40は、カレイドスコープ30とレンズ50との間に配置され、筐体10に固定されている。
【0022】
波長変換部40は、レーザー光Lを透過する基板41と、基板41上に設けられた蛍光体42とを有している。蛍光体42は、円板状の薄膜であり、レーザー光Lの光軸A1に対して垂直に配置されている。蛍光体42の直径の長さは、カレイドスコープ30の開口31の対角線長さよりも長い。波長変換部40は、励起光であるレーザー光Lが照射されることで蛍光し、例えば複数の波長からなる光であって全体として白色に看取される光を拡散して放射する。波長変換部40から放射された光は、レンズ50に入射される。
【0023】
レンズ50は、レンズ50に入射した光を散乱して出射する光学部品である。レンズ50は、レンズ50の光軸A2がレーザー光Lの光軸A1に略一致するように、筐体10に固定されている。レンズ50は、波長変換部40から放射される光が透過する材料で形成され、例えば、アクリルまたはポリカーボネート等の樹脂材料、あるいは、ガラス材料などで形成される。
【0024】
レンズ50は、入射部51と、出射部55と、反射部59とを有している。
【0025】
入射部51は、波長変換部40から放射された光が入射する部分である。入射部51には、入射した光を散乱させる光散乱構造部53aが設けられている。この光散乱構造部53aによって光が散乱されることで、例えば波長変換部40が破損または脱落した場合に、照明装置1から出射される光のパワー密度が高くなることを抑制できる。入射部51については後で詳しく説明する。
【0026】
反射部59は、レンズ50の外周部分のうち、入射部51と出射部55とを繋ぐ部分である。反射部59は、鏡面であり、光散乱構造部53aで散乱した光のうち出射部55に向かわず反射部59に到達した光を反射する。反射部59で反射された光の大部分は、最終的に出射部55から出射される。
【0027】
出射部55は、光散乱構造部53aで散乱した光および反射部59で反射した光を出射する部分である。出射部55は、レンズ50の光軸A2に垂直な出射面56を有している。出射面56は、凹凸形状の配光制御構造を有しておらず、表面が平坦である。
【0028】
ここで入射部51について、さらに詳しく説明する。
【0029】
図2に示すように、入射部51は、レンズ50の光軸A2に沿う方向であって、出射部55側に窪む凹部52を有している。凹部52は、光軸A2に交差する円形状の底面53と、筒状の側面54とを有している。
【0030】
側面54は、先細り状であり、レンズ50を光軸A2に沿う面で断面視した場合に、底面53に向かうほど光軸A2に近づく傾斜形状を有している。また側面54は、鏡面であり、波長変換部40にて放射された光のうち、底面53に向かわず側面54に到達した光を透過する。側面54で透過された光の大部分は、反射部59で反射されたのち出射面56より出射される。
【0031】
底面53は、出射部55とは反対側に湾曲する凸面形状を有している。底面53は、底面53に到達した光を散乱させる光散乱構造部53aを有している。光散乱構造部53aは、図2に示す破線で示された領域に形成されている。
【0032】
光散乱構造部53aの形状は、球面や多項式曲線に基づく面を備えた立体形状、三角柱、多角柱、三角錐、多角錘などの複数の凹凸などが考えられるが、形状によって限定されるものではない。光散乱構造部53aは、出射面56よりも表面粗さが粗く、光散乱構造部53aの算術平均粗さRaは、例えば2μm以上40μm以下である。なお、光散乱構造部53aの全ての凹凸が同じ形状である必要はなく、相互に異なる形状であってもよい。光散乱構造部53aは、成形型によって形成されてもよいし、サンドブラストによって形成されてもよいし、シリカ等を含む紛体が塗布されることで形成されてもよい。
【0033】
図3は、照明装置1のレンズ50を示す図である。図3の(a)は、レンズ50を光軸A2に沿う面で切断した場合の断面図であり、図3の(b)は、レンズ50を光出射側から見た図である。
【0034】
図3の(a)に示すように、光散乱構造部53aは、レンズ50の光軸A2と交差するように、底面53の凹面形状に沿って設けられている。また、図3の(b)に示すように、光散乱構造部53aは、外周が円形状であり、底面53の全面に設けられている。なお、光散乱構造部53aは、底面53の全面に限られず、底面53の一部に設けられていてもよい。
【0035】
また、図3の(b)に示すように、光散乱構造部53aを光軸A2に沿う方向に投影したときの投影面積S1は、出射面56の面積S2の25%以下となっている。これにより、レンズ50に入射された光が必要以上に散乱されず、レンズ50から出射される光の量の低下が抑制される。なお、出射面56の面積S2は、光が有効に出射される面の面積であり、例えば、反射部59を光軸A2に沿う方向に投影したときの投影形状の外周を出射面56の外周と定義して求めることができる。上記投影面積S1は、出射面56の面積S2の20%以上25%以下であることが望ましい。
【0036】
次に、光散乱構造部53aおよびカレイドスコープ30の配置、大きさ等の関係について説明する。
【0037】
図4は、レンズ50の光散乱構造部53aおよびカレイドスコープ30を示す図である。
【0038】
ここで図4に示すように、光散乱構造部53aを光軸A2に沿う方向に投影したときの投影形状の直径をd1とし、カレイドスコープ30の出力側の開口31の対角線長さをd2とすると、光散乱構造部53aおよびカレイドスコープ30は、d1>d2の関係を有している。言い換えると、光散乱構造部53aを光軸A2に沿う方向に投影したときの投影面積S1は、カレイドスコープ30の出力側の開口31の面積S3よりも大きくなっている。
【0039】
また、前述した投影形状の直径をd1、カレイドスコープ30の開口31の中心31aから光散乱構造部53aまでの距離をz1、カレイドスコープ30から出力されるレーザー光Lの拡がり角をθ2とすると、光散乱構造部53aおよびカレイドスコープ30は、d1/2≧z1・tan(θ2/2)の関係を有している。言い換えると、カレイドスコープ30の出力側の開口31の中心31aから光散乱構造部53aを見込む頂角θ1は、カレイドスコープ30から出力されるレーザー光Lの拡がり角θ2よりも大きくなっている。
【0040】
カレイドスコープ30から出力されるレーザー光Lの拡がり角θ2は、本構成の場合、すなわち照明装置1の外部に半導体レーザー素子を備えた光源装置2が設けられ、光ファイバー3によりレーザー光Lを伝送して照明装置1内に導入し、光ファイバー3の出射端の中心軸とカレイドスコープ30の中心軸が略平行となっている構成の場合、光ファイバー3の広がり角θFiberに依存し、概ねθFiber≒θ2である。よって、θ1>θ2≒θFiberとなる。
【0041】
なお、光ファイバー3の広がり角θFiberは、光ファイバー3の種類やレーザー波長に依存するが、本構成で使用する場合は、40°以下であることが望ましく、30°以下であることがより望ましい。また、広がり角θFiberは、ピーク強度が1/eとなる角度(全角)である。
【0042】
図4に示すように、波長変換部40の中心40aからレンズ50の入射部51を見込む頂角θ3は、θ3>θ1であり、より望ましくはθ3>2θ1である。また、頂角θ3は、80°以上であり、より望ましくは120°以上である。
【0043】
波長変換部40より出射される光は、略ランバーシアン配光となる為、波長変換部40より出射される光を効率よく取り込むために必要である。
【0044】
このように光散乱構造部53aおよびカレイドスコープ30が上記関係を有することで、例えば波長変換部40が破損または脱落した場合に、カレイドスコープ30から出力されたレーザー光Lが光散乱構造部53aに入射され、散乱される。これにより、照明装置1から出射される光のパワー密度が高くなることを抑制することができ、人の目に対する安全性をさらに高めることができる。
【0045】
[2.効果等]
本実施の形態の照明装置1の効果等について、図5および図6を参照しながら説明する。
【0046】
まず、照明装置の安全性について、図5を参照しながら説明する。
【0047】
図5は、波長変換部が設けられていない照明装置から出射される光の露光許容時間を示す図である。同図には、照明装置にカレイドスコープ30が設けられている場合および設けられていない場合における露光許容時間の違いが示されている。つまり図5には、波長変換部40が脱落したと仮定した場合の露光許容時間が、カレイドスコープ30の有無に応じて示されている。
【0048】
図5における横軸は光の散乱度合であり、縦軸は露光許容時間である。光の散乱度合は、例えば、光散乱構造部53aの表面粗さを変えることで調整できる。露光許容時間は、国際規格IEC62471に基づいて作成された日本工業規格JIS C7550(ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性)にて規定されている時間であり、露光許容時間が大きいほど、安全性が高いことを示す。例えば、図5に示す「リスクグループ2」は、嫌悪感や熱的な不快感を伴う障害を引き起こさない領域であり、「リスクグループ2」よりも下の領域は、そのような障害を引き起こす可能性のある領域である。
【0049】
図5に示すように、照明装置にカレイドスコープ30が設けられていない場合、光の散乱度合を大きくしても露光許容時間が「リスクグループ2」に入りにくく、安全性を確保することが難しい。それに対し、照明装置にカレイドスコープ30が設けられている場合、光の散乱度合をある程度大きくすると露光許容時間が「リスクグループ2」に入る。このように、照明装置1がカレイドスコープ30を備えかつ所定の光の散乱度合を有することで、人の目に対する安全性を確保することができる。
【0050】
一方、照明装置にカレイドスコープ30を設けたことにより、照明装置から出射される光の量が極端に少なくなると照明装置としての本来の機能を実現することができない。そこで次に、照明装置から出射される光の量について、図6を参照しながら説明する。
【0051】
図6は、照明装置から出射される光の中心光度を示す図である。図6には、照明装置にカレイドスコープ30が設けられている場合および設けられていない場合における中心光度の違いが示されている。図6における横軸は光の散乱度合であり、縦軸は中心光度である。中心光度は、レンズ50の中心すなわち光軸A2における光の強さである。
【0052】
図6に示すように、照明装置にカレイドスコープ30が設けられている場合および設けられていない場合の両方とも、光の散乱度合が大きくなると中心光度が小さくなる。しかしながら、中心光度が小さくなる度合は、カレイドスコープ30が設けられている場合と設けられていない場合とでほぼ同じである。このように、照明装置1がカレイドスコープ30を備えている場合であっても、照明装置1から出射される光の量が極端に少なくなることはなく、照明装置としての本来の機能を維持することができる。
【0053】
なお、図5および図6の検討は、θ1=35°、θ2=26°、θ3=120°の場合の検討結果である。
【0054】
以上、本実施の形態に係る照明装置1は、光源装置2から出力されたレーザー光Lの光強度のピークを低下させて出力するカレイドスコープ30と、カレイドスコープ30から出力されたレーザー光Lの波長を変換し、レーザー光Lの波長と異なる波長の光を放射する波長変換部40と、波長変換部40から放射された光が入射されかつ当該入射された光を散乱させる光散乱構造部53a、および、光散乱構造部53aで散乱した光を出射する出射部55を有するレンズ50と、を備える。
【0055】
このように、カレイドスコープ30がレーザー光Lの光強度のピークを低下させて出力し、また、光散乱構造部53aが光を散乱させて出射することで、例えば波長変換部40が破損または脱落した場合であっても、照明装置1から出射される光のパワー密度が高くなることを抑制できる。これにより、人の目に対する安全性を確保することができる。
【0056】
また、カレイドスコープ30の出力側の開口31の中心から光散乱構造部53aを見込む頂角θ1は、カレイドスコープ30から出力されるレーザー光Lの拡がり角θ2よりも大きくてもよい。
【0057】
これによれば、例えば波長変換部40が破損または脱落した場合であっても、カレイドスコープ30から出力されたレーザー光Lを光散乱構造部53aに入射させて散乱させることができるので、照明装置1から出射される光のパワー密度が高くなることを抑制できる。これにより、人の目に対する安全性をさらに高めることができる。
【0058】
また、光散乱構造部53aをレンズ50の光軸A2に沿う方向に投影したときの投影面積S1は、カレイドスコープ30の出力側の開口31の面積S3よりも大きくてもよい。
【0059】
これによれば、例えば波長変換部40が破損または脱落した場合であっても、カレイドスコープ30から出力されたレーザー光Lを光散乱構造部53aに入射させて散乱させることができるので、照明装置1から出射される光のパワー密度が高くなることを抑制できる。これにより、人の目に対する安全性をさらに高めることができる。
【0060】
また、出射部55は、レンズ50の光軸A2に垂直で、かつ、平坦な出射面56を有していてもよい。
【0061】
これによれば、光散乱構造部53aにて散乱した光を適切に出射することができ、レンズ50から出射される光の量が低下することを抑制できる。
【0062】
また、光散乱構造部53aは、出射面56よりも表面粗さが粗くてもよい。
【0063】
これによれば、光散乱構造部53aにて適切に光を散乱することができるので、照明装置1から出射される光のパワー密度が高くなることを抑制できる。これにより、人の目に対する安全性を高めることができる。
【0064】
また、光散乱構造部53aをレンズ50の光軸A2に沿う方向に投影したときの投影面積S1は、出射面56の面積S2の25%以下であってもよい。
【0065】
これによれば、レンズ50に入射された光が必要以上に散乱されることを抑制し、レンズ50から出射される光の量が低下することを抑制できる。
【0066】
また、レンズ50は、レンズ50の光軸A2に沿う方向であって出射部55側に窪む凹部52を有し、光散乱構造部53aは、凹部52の底面53の少なくとも一部に設けられていてもよい。
【0067】
これによれば、例えば波長変換部40が破損または脱落した場合であっても、カレイドスコープ30から出力されたレーザー光Lを凹部52の底面53の光散乱構造部53aに入射させて散乱させることができるので、照明装置1から出射される光のパワー密度が高くなることを抑制できる。これにより、人の目に対する安全性をさらに高めることができる。
【0068】
また、凹部52の側面54は、レンズ50を光軸A2に沿う面で断面視した場合に、底面53に向かうほど光軸A2に近づく傾斜形状を有していてもよい。
【0069】
これによれば、波長変換部40で放射された光のうち、底面53に向かわず側面54に到達した光を、底面53の光散乱構造部53aに適切に導入させることができる。これにより、波長変換部40にて放射された光がレンズ50の外に放出されることを抑制し、レンズ50から出射される光の量が低下することを抑制できる。
【0070】
[3.実施の形態の変形例1]
次に、実施の形態の変形例1に係る照明装置1について説明する。変形例1では、レンズの光散乱構造部53aが底面53の全面でなく一部に設けられている例について説明する。
【0071】
図7は、変形例1に係る照明装置1のレンズ50Aを示す図である。図7の(a)は、レンズ50Aを光軸A2に沿う面で切断した場合の断面図であり、図7の(b)は、レンズ50Aを光出射側から見た図である。
【0072】
図7の(a)に示すように、光散乱構造部53aは、レンズ50Aの光軸A2と交差するように、底面53の凹面形状に沿って設けられている。
【0073】
また、図7の(b)に示すように、光散乱構造部53aは、外周が円形状であり、底面53の一部に設けられている。光散乱構造部53aを光軸A2に沿う方向に投影したときの投影面積S1aは、底面53を光軸A2に沿う方向に投影したときの投影面積S4の80%以上99%以下であることが望ましい。
【0074】
カレイドスコープ30の出力側の開口31の中心31aから光散乱構造部53aを見込む頂角θ1(図7の(a)参照)は、カレイドスコープ30から出力されるレーザー光Lの拡がり角θ2よりも大きくなっている。
【0075】
変形例1によれば、レンズ50Aに入射された光が必要以上に散乱されず、レンズ50Aから出射される光の量が低下することを抑制できる。
【0076】
[4.実施の形態の変形例2および変形例3]
次に、実施の形態の変形例2および3に係る照明装置1について説明する。変形例2および3では、レンズの凹部52の底面53が、凸面形状でなく凹面形状となっている例について説明する。
【0077】
図8は、変形例2に係る照明装置1のレンズ50Bを示す図である。
【0078】
図8に示すように、レンズ50Bの入射部51は、レンズ50Bの光軸A2に沿う方向であって、出射部55側に窪む凹部52を有している。凹部52は、光軸A2に交差する底面53と、筒状の側面54とを有している。
【0079】
変形例2の底面53は、出射部55側に湾曲する凹面形状を有している。底面53の少なくとも一部は、波長変換部40から出力された光を散乱させる光散乱構造部53aを有している。
【0080】
変形例2のレンズ50Bでは、凹部52の底面53が凹面形状となっているので、光をより拡散することができ、人の目に対する安全性を確保することができる。
【0081】
図9は、変形例3に係る照明装置1のレンズ50Cを示す図である。
【0082】
図9に示すように、レンズ50Cの入射部51は、レンズ50Cの光軸A2に沿う方向であって、出射部55側に窪む凹部52を有している。凹部52は、光軸A2に交差する底面53と、筒状の側面54とを有している。
【0083】
変形例3の底面53は、底面53の一部の領域において、出射部55側に湾曲する凹面形状を有している。この底面53の一部の領域には、波長変換部40から出力された光を散乱させる光散乱構造部53aが形成されている。
【0084】
変形例3のレンズ50Cでも、凹部52の底面53が凹面形状となっているので、光をより拡散することができ、人の目に対する安全性を確保することができる。
【0085】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る照明装置1について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0086】
上記実施の形態では、照明装置1の外部に半導体レーザー素子を備えた光源装置2が設けられ、光ファイバー3によりレーザー光Lを伝送して照明装置1内に導入しているが、この態様に限定されるものではない。例えば、照明装置1は、光ファイバー3を備えず、筐体10の一方の端部に直接、光源装置2が設けられていてもよい。
【0087】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 照明装置
2 光源装置
30 カレイドスコープ
31 開口
31a 開口の中心
40 波長変換部
50、50A、50B、50C レンズ
51 入射部
52 凹部
53 底面
53a 光散乱構造部
54 側面
55 出射部
56 出射面
A1 レーザー光の光軸
A2 レンズの光軸
L レーザー光
S1、S1a、S4 投影面積
S2 出射面の面積
S3 開口の面積
θ1 頂角
θ2 拡がり角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9