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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】設計表、及び、設計方法
(51)【国際特許分類】
   G06C 3/00 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
G06C3/00 341C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024016444
(22)【出願日】2024-02-06
【審査請求日】2024-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】西本 舞
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-204483(JP,A)
【文献】特表平06-510097(JP,A)
【文献】特開2022-050891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06C 1/00-29/00
E04D 13/00-15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、
前記配管システムの高さの複数の範囲を前記高さの昇順に示す第1欄と、
前記第1欄の隣にあって、前記複数の範囲それぞれの前記縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の前記縦管の排水能力を示す複数の第2欄と、
を有し、
前記高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における前記配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、
前記排水能力は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式での排水能力であり、
前記複数の範囲の各々の前記縦管の排水能力は、対応する範囲の前記縦管の排水能力の代表値であり、
前記複数の第2欄は、前記第1欄側から前記管径の昇順に並ぶ、
設計表。
【請求項2】
前記複数の範囲の数は、2以上5未満である、
請求項1の設計表。
【請求項3】
前記複数の範囲は、第1範囲と、第2範囲と、を含み、
前記第1範囲は、前記高さが閾値未満である範囲であり、
前記第2範囲は、前記高さが前記閾値以上である範囲であり、
前記閾値は、10m以上12m以下である、
請求項1の設計表。
【請求項4】
前記第1欄では、前記複数の範囲が上から下に前記高さの昇順に並び、
前記複数の第2欄は、前記第1欄の右側に、左から右に前記管径の昇順に並ぶ、
請求項1の設計表。
【請求項5】
前記第1欄では、前記複数の範囲が左から右に前記高さの昇順に並び、
前記複数の第2欄は、前記第1欄の下側に、上から下に前記管径の昇順に並ぶ、
請求項1の設計表。
【請求項6】
縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、
前記配管システムの高さの複数の数値を上から下に前記高さの昇順に示す第1欄と、
前記第1欄の右側にあって、前記複数の数値それぞれの前記縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の前記縦管の排水能力を示す複数の第2欄と、
を有し、
前記高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における前記配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、
前記排水能力は、
第1配管形式での排水能力と、
第2配管形式での排水能力と、
を含み、
前記第1配管形式は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致する配管形式であり、
前記第2配管形式は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式であり、
前記複数の第2欄は、左から右に前記管径の昇順に並ぶ、
設計表。
【請求項7】
前記複数の数値の数は、5以上である、
請求項6の設計表。
【請求項8】
前記複数の第2欄の各々では、前記第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄が左側に、前記第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄が右側にある、
請求項6の設計表。
【請求項9】
前記複数の第2欄の各々では、前記第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄が右側に、前記第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄が左側にある、
請求項6の設計表。
【請求項10】
縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、
前記配管システムの高さの複数の指標を上から下に前記高さの昇順に示す第1欄と、
前記第1欄の右側にあって、前記複数の指標それぞれの前記縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の前記縦管の第1配管形式での排水能力を示す複数の第1下位欄を含む第2欄と、
前記第1欄の右側にあって、前記複数の指標それぞれの前記縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の前記縦管の第2配管形式での排水能力を示す複数の第2下位欄を含む第3欄と、
を有し、
前記高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における前記配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、
前記第1配管形式は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致する配管形式であり、
前記第2配管形式は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式であり、
前記第2欄では、前記複数の第1下位欄が左から右に前記管径の昇順に並び、
前記第3欄では、前記複数の第2下位欄が左から右に前記管径の昇順に並ぶ、
設計表。
【請求項11】
前記第2欄は、前記第1欄と前記第3欄との間にある、
請求項10の設計表。
【請求項12】
前記第3欄は、前記第1欄と前記第3欄との間にある、
請求項10の設計表。
【請求項13】
前記複数の指標の各々は、前記配管システムの高さの範囲を示し、
前記複数の指標の数は、2以上5未満である、
請求項11の設計表。
【請求項14】
前記複数の指標の各々は、前記配管システムの高さの数値を示し、
前記複数の指標の数は、5以上である、
請求項11の設計表。
【請求項15】
前記縦管の排水能力は、流量、対応屋根面積、又は、対応降雨強度の少なくとも一つにより表される、
請求項1の設計表。
【請求項16】
縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計方法であって、
前記配管システムを設置する建物の屋根面積及び高さを決定し、
前記建物の場所の雨量を決定し、
前記建物の屋根面積と前記建物の場所の雨量とに基づいて前記配管システムが達成することが求められる流量である必要流量を決定し、
請求項1~15のいずれか一つの設計表に基づいて、前記建物の高さを前記配管システムの高さとして、前記必要流量を満足する前記縦管の管径と前記縦管の設置数を決定する、
設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設計表、及び、設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、サイフォンの原理を利用する雨水排水構造を開示する。特許文献1は、雨水を溜める水溜り部に設けられた排水口と、前記排水口から雨水を排出する為の排水管とを有し、サイフォンの原理による排水を行なう雨水排水構造において、前記水溜り部の高さは、排水管の水封トラップを含む逆勾配により生じる水頭の総和よりも高いことを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-139659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配管システムの排水能力は、配管システムが設置される建物の規模、建物の周囲環境等に応じて適切な範囲で設定されることが好ましい。一般に、建物の規模が大きいほど、より大きな排水能力が求められる。建物の建設予定地が比較的降雨量が多い土地である場合にもより大きな排水能力が求められる。
【0005】
特許文献1は、排水の流量を計算する方法をいくつか開示する。しかしながら、排水の流量の計算には、専門的な知識を必要とし、専門知識を持たないユーザが排水の流量を計算することは難しい場合が多い。
【0006】
本開示は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする設計表、及び、設計方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる設計表は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、配管システムの高さの複数の範囲を高さの昇順に示す第1欄と、第1欄の隣にあって、複数の範囲それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す複数の第2欄と、を有し、高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、排水能力は、上流側開放点の中心軸と下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式での排水能力であり、複数の範囲の各々において、縦管の排水能力は、対応する範囲での縦管の排水能力の代表値であり、複数の第2欄は、第1欄側から管径の昇順に並ぶ。
【0008】
本開示の一態様にかかる設計表は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、配管システムの高さの複数の数値を上から下に高さの昇順に示す第1欄と、第1欄の右側にあって、複数の数値それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す複数の第2欄と、を有し、高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、排水能力は、第1配管形式での排水能力と、第2配管形式での排水能力と、を含み、第1配管形式は、上流側開放点の中心軸と下流側開放点の中心軸とが一致する配管形式であり、第2配管形式は、上流側開放点の中心軸と下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式であり、複数の第2欄は、左から右に管径の昇順に並ぶ。
【0009】
本開示の一態様にかかる設計表は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、配管システムの高さの複数の指標を上から下に高さの昇順に示す第1欄と、第1欄の右側にあって、複数の指標それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の第1配管形式での排水能力を示す複数の第1下位欄を含む第2欄と、第1欄の右側にあって、複数の指標それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の第2配管形式での排水能力を示す複数の第2下位欄を含む第3欄と、を有し、高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、第1配管形式は、上流側開放点の中心軸と下流側開放点の中心軸とが一致する配管形式であり、第2配管形式は、上流側開放点の中心軸と下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式であり、第2欄では、複数の第1下位欄が左から右に管径の昇順に並び、第3欄では、複数の第2下位欄が左から右に管径の昇順に並ぶ。
【0010】
本開示の一態様にかかる設計方法は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計方法であって、配管システムを設置する建物の屋根面積及び高さを決定し、建物の場所の雨量を決定し、建物の屋根面積と建物の場所の雨量とに基づいて配管システムが達成することが求められる流量である必要流量を決定し、上記設計表に基づいて、建物の高さを配管システムの高さとして、必要流量を満足する縦管の管径と縦管の設置数を決定する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の態様は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態の設計方法のフローチャート
図2】建物の一例の概略図
図3】配管システムの第1配管形式の概略図
図4】配管システムの第2配管形式の概略図
図5】配管システムの第1配管形式の計算モデルの説明図
図6】配管システムの高さと流量との関係を示すグラフ
図7】配管システムの第2配管形式の計算モデルの説明図
図8】一実施の形態の設計方法で用いられる設計表の説明図
図9】変形例1の設計表の説明図
図10】変形例2の設計表の説明図
図11】変形例3の設計表の説明図
図12】変形例4の設計表の説明図
図13】変形例5の設計表の説明図
図14】変形例6の設計表の説明図
図15】変形例7の設計表の説明図
図16】変形例8の設計表の説明図
図17】変形例9の設計表の説明図
図18】変形例10の設計表の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.実施の形態]
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。以下の実施の形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0015】
なお、以下の説明において、複数ある構成要素を互いに区別する必要がある場合には、「第1」、「第2」等の接頭辞を構成要素の名称に付すが、構成要素に付した符号により互いに区別可能である場合には、文章の読みやすさを考慮して、「第1」、「第2」等の接頭辞を省略する場合がある。
【0016】
なお、以下の説明において、複数ある構成要素を互いに区別する必要がある場合には、「-1」、「-2」等の接尾辞を構成要素の符号に付すが、複数ある構成要素を区別する必要がない場合には、文章の読みやすさを考慮して、「-1」、「-2」等の接尾辞を省略する場合がある。
【0017】
[1.1 構成]
図1は、一実施の形態にかかる設計方法のフローチャートである。本実施の形態にかかる設計方法は、配管システムの設計に用いることができる。配管システムは、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行うように設計される。配管システムは、例えば、雨樋システムである。上記の縦管は、雨樋システムでは、竪樋とも呼ばれる。雨樋システムは、建物からの雨水を地面のます部に流すために用いられる。建物は、例えば、店舗、オフィス、工場、ビル、学校、福祉施設又は病院等の非住宅施設、及び戸建住宅、集合住宅、又は戸建住宅若しくは集合住宅の各住戸等の住宅施設の建物である。非住宅施設には、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、百貨店、ホテル、旅館、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅及び空港等も含む。
【0018】
図1を参照すると、本実施の形態にかかる設計方法は、配管システムを設置する建物の屋根面積及び高さを決定する(S1)。
【0019】
屋根面積は、配管システムが雨水を受ける屋根の一部又は全部の面積である。屋根面積は、屋根の面積それ自体ではなく、屋根を水平面に投影した場合の面積(屋根投影面積)である。屋根面積は、建物の構造から特定することができる。屋根には、切妻屋根、寄棟屋根、入母屋屋根、片流れ屋根、方形屋根、半切妻屋根、差し掛け・招き屋根、越屋根、鋸屋根、バタフライ屋根等の様々な種類がある。屋根の種類に基づいて、建物の寸法から、配管システムに対応する屋根面積を決定することができる。
【0020】
図2は、建物200の一例の概略図である。建物200は、屋根210を備える。屋根210は、切妻屋根である。屋根210は、棟211と、第1軒先212-1及び第2軒先212-2とを有する。屋根210において、棟211と第1軒先212-1との間が第1屋根部213-1、棟211と第2軒先212-2との間が第2屋根部213-2である。
【0021】
第1軒先212-1に配置される配管システムを考慮する。
【0022】
第1軒先212-1に配置する配管システムは、第1屋根部213-1からの雨水を受ける。第1軒先212-1に配置する配管システムに対応する屋根面積は、第1屋根部213-1の屋根面積である。第1屋根部213-1の屋根面積は、第1軒先212-1の長さL1[m]と、水平面内での棟211と第1軒先212-1との間の距離L2[m]とで求められる。第1屋根部213-1の屋根面積をS[m]とすると、Sは、S=L1×L2で表される。
【0023】
第1軒先212-1に配置する配管システムの高さは、建物200における地面から第1軒先212-1までの高さH[m]と実質的に等しいから、地面から第1軒先212-1までの高さHを、第1軒先212-1に配置する配管システムの高さとして扱うことができる。
【0024】
配管システムを設置する建物の屋根面積及び高さは、建物の建築図面等に基づいて決定することができる。
【0025】
図1を参照すると、本実施の形態にかかる設計方法は、建物の場所の雨量を決定する(S2)。
【0026】
建物の場所の雨量としては、降雨強度が用いられる。降雨強度は、単位時間当たりの降雨量である。降雨強度は、建物の場所から特定することができる。例えば、2以上の地域の降雨強度を含む地域別降雨強度情報から、建物の場所が属する地域の降雨強度を取得することができる。2以上の地域は、特に限定されないが、日本の都道府県、都道府県の市町村区等であってよい。降雨強度は、例えば、国、地方公共団体、又は企業が提供するデータに基づいて決定されてよい。一例として、降雨強度は、各都道府県が提供する降雨強度のデータ、国土交通省が提供する都道府県別の降雨強度式から求めることができる。なお、建物の場所は、実際に建物がある場所、又は、建物を建てる予定の場所であり得る。
【0027】
次に、配管システムの必要流量を決定する(S3)。配管システムの必要流量は、配管システムが達成することが求められる流量である。必要流量は、建物から配管システムへの雨水の流量の最大値であり得る。必要流量は、建物の屋根面積と、建物の場所の雨量(降雨強度)とから求められる。必要流量をQ[l/s]、屋根面積をS[m]、降雨強度をR[m/s]とすると、Qは、Q=S×Rで表される。
【0028】
次に、縦管の管径及び設置数を決定する(S4)。
【0029】
縦管の管径は、配管システムの管径に対応する。配管システムの管径は、配管システムの流路の内径に相当する。従来から、配管システムの構築に利用可能な管材として、サイズが異なる管材が提供されている。管材のサイズとしては、呼び径を用いることができる。呼び径は、例えば、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格における呼び径であってよい。以下では、縦管の管径として、呼び径を用いる。
【0030】
表1は、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格におけるVPの硬質ポリ塩化ビニル管の呼び径の一例である。表1において、外径(基準寸法)、厚さ(最小寸法)及び近似内径の単位はmmである。
【0031】
【表1】

【0032】
表2は、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格におけるVUの硬質ポリ塩化ビニル管の呼び径の一例である。表2において、外径(基準寸法)、厚さ(最小寸法)及び近似内径の単位はmmである。
【0033】
【表2】

【0034】
縦管の設置数は、配管システムに用いる縦管の数である。縦管の設置数を変えることで、縦管の必要排水能力を変えることができる。縦管の必要排水能力は、縦管1本当たりに必要とされる縦管の排水能力である。縦管の必要排水能力をq、縦管の設置数をnとすると、q=Q/nで表される。すなわち、縦管の必要排水能力は、配管システムの必要流量を、縦管の設置数で除した値で表される。
【0035】
縦管の設置数は、任意に決定されてよい。例えば、縦管1本当たりのコストを下げたい場合には、縦管の設置数を増やせばよい。つまり、縦管の設置数が増加すると、縦管の必要排水能力が減少するから、縦管1本当たりのコストを下げることができる。一方、設計上の条件から、縦管の設置数が制限される場合があり、この場合には、縦管の必要排水能力が増加する結果となる。
【0036】
縦管の排水能力は、サイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力である。サイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力は、いわゆる通常排水時の縦管の排水能力ではなく、配管システムにおいてサイフォン現象が発生し、維持されている場合の縦管の排水能力をいう。サイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力は、サイフォン現象による影響を受ける。以下では、単に文章を分かりやすくするため、特別な断りがない限り、「排水能力」は、サイフォン現象を利用した場合の排水能力をいう。縦管の排水能力は、縦管が一つの場合の配管システムの下流側開放点での流量で表される。配管システムの設計にあたっては、流量の実際の値に基づいて、流量の保証値が用いられることが多い。そこで、本実施の形態では、縦管の排水能力は、配管システムの下流側開放点での流量の保証値を含む。
【0037】
次に、縦管の排水能力について説明する。
【0038】
配管システムには様々な配管形式がある。配管形式は、配管システムの流路の形状を特定する。例えば、流路の形状としては、直線形状、折れ曲がり形状、分岐形状等が挙げられる。配管形式には、流路の断面積、流路の長さ等は必ずしも含まれない。配管形式は、配管システムの分類に対応し得る。本実施の形態では、配管形式として、第1配管形式と、第2配管形式とが用いられる。第1配管形式は、上流側開放点の中心軸と下流側開放点の中心軸とが一致する配管形式である。雨樋システムの例では、第1配管形式は、建物からの雨水の落とし口の中心軸と縦管(竪樋)の中心軸とが一致する雨樋システムの配管形式である。第2配管形式は、上流側開放点の中心軸と下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式である。雨樋システムの例では、建物からの雨水の落とし口の中心軸と縦管(竪樋)の中心軸とが一致しない雨樋システムの配管形式である。
【0039】
図3は、第1配管形式に対応する雨樋システム100Aの概略図である。雨樋システム100Aは、建物200Aの屋根210からの雨水を受けて、地面300のます部310に流す。ます部310に集められた雨水は、ます部310から埋設管320を通って雨水管に流れ出る。
【0040】
雨樋システム100Aは、軒樋120と、縦管130と、ドレン140とを備える。
【0041】
軒樋120は、建物200Aの屋根210からの雨水を受ける。軒樋120は、建物200Aの屋根210の下に設置される。軒樋120は、長尺の桶状である。軒樋120は、底壁120aを有する。底壁120aに落とし口120bがある。
【0042】
ドレン140は、軒樋120の落とし口120bに配置される。ドレン140は、落とし口120bでの渦の発生及び空気の巻き込みを低減する。ドレン140は、サイフォン現象の発生に寄与し得る。ドレン140は、周知の構成であってよい。
【0043】
縦管130は、落とし口120bから雨水を排水するために設置される。縦管130は、控金具131a,131b,131cにより建物200の壁面220に固定される。縦管130は、落とし口120bからの雨水を垂直に流すための流路を構成する。雨樋システム100Aでは、縦管130には、軒樋120とは別の軒樋からの枝管等は接続されていない。つまり、縦管130に、落とし口120bとは別の落とし口からの雨水が流入しないように構成されている。
【0044】
縦管130は、上流側の端部130aと下流側の端部130bとを有する。上流側の端部130aは、縦管130において落とし口120bに接続される端部(図3での上端部)である。縦管130は落とし口120bに直接的に接続される。つまり、落とし口120bから雨水が縦管130内に垂直に落下して、ます部310内に流入する。下流側の端部130bは、縦管130において、ます部310に挿入される端部(図3での下端部)である。縦管130とます部310との隙間からます部310内に雨水が流入しないように排水管カバー132が配置される。
【0045】
雨樋システム100Aでは、縦管130が、落とし口120bに直接的に接続され、建物200Aからの雨水の落とし口120bの中心軸と縦管130の中心軸とが一致する。第1配管形式では、配管システムの流路の形状は直線状である。第1配管形式は、慣用的に、直管タイプとも呼ばれる。
【0046】
図4は、配管システムの第2配管形式に対応する雨樋システム100Bの概略図である。雨樋システム100Bは、建物200Bの屋根210からの雨水を受けて、地面300のます部310に流す。ます部310に集められた雨水は、ます部310から埋設管320を通って雨水管に流れ出る。
【0047】
建物200Bは、建物200Aよりも軒が長い。建物200Bでは、落とし口120bに縦管130を直接的に接続すると、縦管130と建物200Bの壁面220との距離が大きくなり、縦管130の施工基準を満たさなくなる。雨樋システム100Bは、軒が長い建物に適した構造を有する。
【0048】
雨樋システム100Bは、軒樋120と、縦管130と、ドレン140と、呼び樋150と、第1エルボ161と、第2エルボ162と、接続管170と、を備える。
【0049】
雨樋システム100Bの軒樋120、縦管130及びドレン140は、雨樋システム100Aの軒樋120、縦管130及びドレン140と同様である。
【0050】
雨樋システム100Bでは、雨樋システム100Aとは異なり、縦管130は、落とし口120bに直接的に接続されていない。縦管130は、呼び樋150、第1エルボ161、第2エルボ162及び接続管170を介して、落とし口120bに接続される。
【0051】
呼び樋150は、建物200Bからの雨水の落とし口120bと縦管130との間にある。第1エルボ161は、呼び樋150の上流側の端部150aを落とし口120bに接続する。第2エルボ162は、呼び樋150の下流側の端部150bを縦管130の上流側の端部130aに接続する。接続管170は、落とし口120bと第1エルボ161との間を接続する。
【0052】
雨樋システム100Bでは、縦管130が、落とし口120bに呼び樋150を介して接続され、建物200Aからの雨水の落とし口120bの中心軸と縦管130の中心軸とが一致しない。第2配管形式では、配管システムの流路の形状は直線状ではなく、折れ曲がり状、特にクランク状又はS字状である。第2配管形式は、慣用的に、エルボ振りタイプとも呼ばれる。
【0053】
配管システムの配管形式は、配管システムを設置する建物の形状等を考慮して決定される。一般的には、第1配管形式(直管タイプ)のほうが、第2配管形式(エルボ振りタイプ)よりも部品数が少なく、構造も簡単であるから、選ばれ易い。第2配管形式(エルボ振りタイプ)では、建物200Aからの雨水の落とし口120bに対して、縦管130の位置を比較的自由に設定できる。そのため、第2配管形式は、建物の構造上の問題(例えば、建物に対する縦管の位置が事前に決定できない、軒樋と建物の壁面との距離が離れている、窓を避ける必要がある等)に対処するために好適に用いられ得る。また、第1配管形式では、縦管130の熱収縮による寸法変化の影響は、直接的にドレン140に及んでしまうが、第2配管形式では、第2エルボ162により、縦管130の熱収縮による寸法変化による影響を低減でき、ドレン140の保護が図れる。同様に、第1配管形式では、建物200Aの屋根210の熱収縮に伴う軒樋120の位置ずれの影響は、直接的にドレン140に及んでしまうが、第2配管形式では、第1エルボ161により、軒樋120の位置ずれの影響を低減でき、ドレン140の保護が図れる。
【0054】
配管システムの高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、これは、配管が分断されず、外気との完全な開放部分がなく、サイフォン現象が維持されている高さを意味する。配管システムの高さは、鉛直方向における配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表される。配管システムの上流側開放点は、配管システムの上流側において外気圧に開放される部位である。配管システムの下流側開放点は、配管システムの下流側において外気圧に開放される部位である。配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間には、外気との完全な開放部分が存在しない。つまり、下流側開放点は、大気圧に対して開放となり、サイフォン現象が停止する箇所である。したがって、上流側開放点と下流側開放点とは、配管システムにおいてサイフォン現象が維持される範囲の上流端及び下流端であるといえる。
【0055】
雨樋システム100A,100Bにおいて、上流側開放点は、ドレン140の下端であり、下流側開放点は、縦管130の下流側の端部130bの開口である。雨樋システム100A,100Bにおいて、配管システムの高さをh[m]とする。hは、鉛直方向におけるドレン140の下端と縦管130の下流側の端部130bの開口との間の距離である。なお、上流側開放点は、ドレン140の下端ではなく、落とし口120bの上端又は下端であってよい。一般的に、配管システムの高さhは、専ら縦管130の長さによって決まるところ、上端側開放点がドレン140か落とし口120bかによるhの変化は、縦管130の長さに比べれば無視できる程度に小さいと考えられる。なお、雨樋システム100Aにおいて、建物200Aに庇があり、縦管130が、庇で、一旦、大気圧に対して開放されている場合には、下流側開放点は、縦管130の下流側の端部130bの開口ではなく、庇で大気圧に対して開放されている部分になる。つまり、ドレン140の下端から、縦管130において庇で大気圧に対して開放されている部分までの、鉛直方向の長さが、サイフォン現象が有効な高さ、つまり、配管システムの高さhとなる。
【0056】
図5は、図3の配管システムの第1配管形式の計算モデルの説明図である。第1配管形式の計算モデルは、上流側開放点111と下流側開放点112との間の流路が縦管130により規定されている。ここで、上流側開放点111での位置エネルギーをH、圧力をP、運動エネルギーをVとする。下流側開放点112での位置エネルギーをH、圧力をP、運動エネルギーをVとする。配管システムの配管部材による圧力損失の和をΣDとする。配管システムの管路総圧力損失をDとする。この場合、ベルヌーイの定理から、次式(1)が成立する。
【0057】
【数1】
【0058】
上流側開放点111での位置エネルギーHと下流側開放点112での位置エネルギーHとの差は、上流側開放点111と下流側開放点112との高さの差で決まる。H,Hの単位をmとした場合、H-H=hである。
【0059】
上流側開放点111での圧力Pと下流側開放点112での圧力Pとは、いずれも0である。
【0060】
上流側開放点111での流速は0であるから、上流側開放点111での運動エネルギーVと下流側開放点112での運動エネルギーVとの差は、下流側開放点112での流速で決まる。下流側開放点112での流速をVとし、Vの単位をmとした場合、V=V /(2g)[m]である。gは重力加速度である。
【0061】
第1配管形式において、ΣDは、ΣD=Da+Dcで表すことができる。Daは、上流側開放点111での圧力損失(入口圧力損失)である。Dcは、配管システムにおいて生じるその他の微小な圧力損失の総和である。例えば、Dcは、配管システムの配管同士のつなぎ目の段差等により生じる圧力損失を含む。
【0062】
流速をVとし、ΣDの単位をmとすると、ΣD=Σd・V/g=(da+dc)・V/gとすることができる。da及びdcは、実験による雨樋システム100Aの評価等から、予め決定することができる。
【0063】
管路圧損Dは、配管システムの管径(つまり、縦管の管径)をd、管摩擦係数をλ、配管システムの長さをL、流速をVとする。Dの単位をmとすると、Dと、次式(2)で与えられる。
【0064】
【数2】
【0065】
通常、配管システムの内壁は滑らかであるから、管摩擦係数λは、レイノルズ数に応じた式を用いることができる。例えば、レイノルズ数Reが2320未満の場合、ハーゲン・ポアズイユの法則により、λ=64/Reを用いることができる。レイノルズ数Reが3×10~1×10の場合、ブラジウスの式により、λ=0.3164×Re-1/4を用いることができる。レイノルズ数Reが1×10~3×10の場合、ニクラゼの式により、λ=0.0032+0.221×Re-0.237を用いることができる。以下では、ニクラゼの式を用いた場合を説明するなお、管摩擦係数λは、これらに限定されず、予め決められた図表等を用いて決定されてよい。
【0066】
下流側開放点112での流速をVとすると、流速Vは、次式(3)のように表すことができる。
【0067】
【数3】
【0068】
上式(3)において、f(Σd,L,d)は、流速の2乗の項の摩擦損失係数であり、Σd,L,dの関数とすることができる。f(L,d)は、流速の1.763乗の項の摩擦損失係数であり、L,dの関数とすることができる。
【0069】
Σdは、配管システムの配管部材による圧力損失の和に対応する係数である。第1配管形式では、Σd=da+dcである。上述したように、da及びdcは、実験による雨樋システム100Aの評価等から、予め決定することができる。したがって、Σdは、配管形式に基づいて特定することができる。第1配管形式では、L=hである。
【0070】
上式(3)から、管径d及び配管システムの高さhを特定することにより、流速Vを求めることができる。
【0071】
下流側開放点112での流量の保証値は、下流側開放点112での流量の実際の値に基づいて設定される。下流側開放点112での流量の実際の値は、上式(3)より求めた流速Vを用いて得られる下流側開放点112での流量の理論値から決定される。
【0072】
下流側開放点112での流量の理論値をQとする。Qは、次式(4)で表される。
【0073】
【数4】
【0074】
下流側開放点112での流量の実際の値をQとすると、Qは、Q=a×Qで表すことができる。実際の値は、理論値との対比で用いられており、あくまでも理論値に比べれば真の値に近いという意味合いである。aは、流量の理論値Qを流量の実際の値Qに変換するための補正係数である。aは、下流側開放点112での流量の理論値Qと、実験により求めた雨樋システム100Aの下流側開放点112での流量の実測値とから決定することができる。これによって、理論値だけではなく、理論値と実測とに基づいた流量を提示することが可能となる。流量の実際の値Qは、実測値に基づいているから、配管システムを安全に使用できる流量である配管システムの保証値を設定するのに適している。
【0075】
図6は、配管システムの高さと流量との関係を示すグラフである。図6のグラフは、第1配管形式、VP75の配管システムに対応する。F11は、配管システムの高さhに対する理論値Qの変化を示す近似曲線である。任意の高さhでの理論値Qに対する実測値の比率をaとして用いる。例えば、aは、h=3での理論値Qに対する実測値の比率であってよい。F12は、F11の近似曲線を示す式にaを乗じて得られる。図6では、F12は、実測値とよく一致していることがわかる。したがって、実験又は試験等によって流量を評価していない配管システムの構成についても、理論値Qを利用することで、実測に基づいた流量を求めることが可能になる。これにより、縦管の管径dと配管システムの高さhで決まる下流側開放点112での流量の理論値Qから、下流側開放点112での流量の実際の値Qを精度よく求めることができる。
【0076】
下流側開放点112での流量の保証値をQとすると、Qは、Q=b×Qで表すことができる。bは、流量の実際の値Qに対する保証値Qの比率である。bは、いわゆる、配管システムの設計における安全率である。bは、配管システムのエア混入量、配管システムの高さ、配管形式、流量の保証値のマージン、配管システムの誤差(例えば、配管部材の形状誤差、組み立て誤差等)等の種々の事情を勘案して適宜決定されればよい。一例としてbは、0.7~0.9の範囲で設定されてよい。
【0077】
したがって、縦管の管径dと配管システムの高さhとを用いて、縦管の排水能力を示す下流側開放点112での流量の保証値Qを求めることができる。
【0078】
図7は、図4の配管システムの第2配管形式の計算モデルの説明図である。第2配管形式の計算モデルは、上流側開放点111と下流側開放点112との間の流路が、縦管130、呼び樋150、第1エルボ161、第2エルボ162及び接続管170により規定されている。
【0079】
第2配管形式の計算モデルにおいても、上式(1)が成立する。
【0080】
第2配管形式においては、ΣDは、ΣD=Da+Db1+Db2+Dcで表すことができる。Db1は、第1エルボ161近傍での圧力損失である。Db2は、第2エルボ162近傍での圧力損失である。
【0081】
第2配管形式においては、ΣD=Σd・V/g=(da+db1+db2+dc)・V/gとすることができる。da、db1、db2及びdcは、実験による雨樋システム100Bの評価等から、予め決定することができる。Σdは、Σd=da+db1+db2+dcとして、配管形式に基づいて特定することができる。
【0082】
したがって、第2配管形式においても、流速Vは、上式(3)で表すことができる。
【0083】
Σdは、第2配管形式で決まる値である。第2配管形式では、Σd=da+db1+db2+dcである。上述したように、da、db1、db2及びdcは、実験による雨樋システム100Bの評価等から、予め決定することができる。したがって、Σdは、配管形式に基づいて特定することができる。第2配管形式では、L=h+lである。lは、呼び樋150、第1エルボ161及び第2エルボ162により規定される流路の長さである。第1エルボ161及び第2エルボ162が90°エルボである場合、lは、水平方向における配管システムの上流側開放点111と下流側開放点112との間の距離で表される。lは、例えば、第2配管形式の雨樋システム100Bの施行制約、平均的な構成等を参酌して予め決定されてよい。
【0084】
第2配管形式においても、上式(3)から、管径d及び配管システムの高さhを特定することにより、流速Vを求めることができる。
【0085】
第2配管形式においても、実験による雨樋システム100Bの評価等から、a及びbを予め特定することができる。したがって、Vが求まれば、Q、Q、及び、Qを求めることができる。
【0086】
したがって、第2配管形式においても、縦管の管径dと配管システムの高さhとを用いて、縦管の排水能力を示す下流側開放点112での流量の保証値Qを求めることができる。
【0087】
以上述べたように、サイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力は、配管システムの高さ及び縦管の管径に基づいて決定される。本実施の形態では、縦管の排水能力は、縦管の流量の理論値Q、実際の値Q、又は、保証値Qを含む。縦管の排水能力は、配管システムの配管形式の影響を受け得る。例えば、配管システムが第1配管形式であるか第2配管形式であるかにより、縦管の排水能力は変化し得る。
【0088】
上述したように、上式(3)から、管径d及び配管システムの高さhを特定することにより、流速Vを求めることができる。そして、Vが求まれば、Q、Q、及び、Qを求めることができる。すなわち、配管システムの配管形式、配管システムの高さ、及び、縦管の管径に対して、縦管の排水能力を決定することができる。
【0089】
縦管の管径及び設置数の決定には、図8に示す設計表10が用いられる。
【0090】
図8は、設計表10の説明図である。なお、図8では、説明を簡単にするために、設計表10が部分的に省略されている。
【0091】
設計表10は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表である。設計表10は、第1欄11と、複数の第2欄12-1~12-3と、を有する。
【0092】
第1欄11は、配管システムの高さの複数の範囲を高さの昇順に示す。複数の範囲の数は、2以上5未満であるとよい。本実施の形態では、複数の範囲の数は、2である。より詳細には、複数の範囲は、第1範囲と、第2範囲と、を含む。第1範囲は、配管システムの高さが閾値未満である範囲である。第2範囲は、配管システムの高さが閾値以上である範囲である。閾値は、建物を区別するための様々な基準に基づいて設定されてよい。例えば、閾値は、低層の建物と、中高層の建物とを区別するように設定されてよい。建築基準法では、第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域では、建物の高さが10m又は12m以内と定められている。この点を考慮すれば、閾値は、好ましくは、10m以上12m以下である。ただし、閾値は、この例に限定されず、対象となる建物の施工地域、建物の高さの境界値の分かりやすさ等を考慮して、好適に設定されてよい。本実施の形態では、閾値は10mである。図8では、第1範囲は、「10m以下」、第2範囲は、「10m超過」として示されている。
【0093】
複数の第2欄12-1~12-3は、第1欄11の隣にあって複数の範囲それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す。
【0094】
複数の第2欄12-1~12-3の各々において、排水能力は、上流側開放点111の中心軸と下流側開放点112の中心軸とが一致しない配管形式(すなわち、第2配管形式)での排水能力を示す。
【0095】
第2欄12-1~12-3それぞれにおいて、複数の範囲の各々の縦管の排水能力は、対応する範囲での縦管の排水能力の代表値である。第1範囲の縦管の排水能力は、第1範囲における排水能力の代表値であり、第2範囲の縦管の排水能力は、第2範囲における排水能力の代表値である。代表値は、最小値、最大値、中央値、中間値、平均値等の統計的な値であってよい。排水能力の保証という観点からは、代表値は、最小値であってよい。
【0096】
複数の第2欄12-1~12-3は、第1欄11側から管径の昇順に並ぶ。図8では、第2欄12-1,12-2,12-3は、それぞれ、縦管の管径VP75,VP100,VP125に対応する。複数の第2欄12-1~12-3は、第1欄11側から、この順に並ぶ。
【0097】
本実施の形態において、第1欄11では、複数の範囲(第1範囲及び第2範囲)が上から下に配管システムの高さの昇順に並ぶ。複数の第2欄12-1~12-3は、第1欄11の右側に、左から右に管径の昇順に並ぶ。第1欄11及び第2欄12-1~12-3は、設計表10の列を構成する。
【0098】
設計表10は、配管システムの高さに関して、縦管の管径と排水能力との関係を示す。設計表10により、ユーザは、配管システムの設計条件(特に縦管の管径及び設置数)をどのように設定すべきかの判断を行いやすくなる。そのため、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化を容易にする。
【0099】
本発明者らは、配管システムの高さ(サイフォン有効高さ)が、サイフォン現象が発生するかどうかだけではなく、縦管の排水能力に影響を及ぼすことに着目した。従来、サイフォン効果を利用する雨水排水システム等の配管システムにおいて、縦管の排水能力は、「サイフォン現象発生の最低保証高さ」における排水能力であったため、配管システムの高さに関わらず、同一の排水能力で配管システムの設計をせざるを得ず、縦管の数が実際に必要な数より多くなったり、縦管の管径が実際に必要な関係より大きくなったりといった顧客不利益に繋がる可能性がある提案しかできていなかった。
【0100】
しかしながら、上述したように、設計表10を用いることで、サイフォン現象を利用する配管システムの設計条件(特に縦管の管径及び数)の最適化が可能になり、従来よりも効率的で顧客にとって無駄がない、最適な配管システムの提示をすることが可能となる。
【0101】
次に、設計表10を用いた縦管の管径及び設置数の決定について簡単に説明する。
【0102】
一例として、建物の屋根面積Sが2400m、降雨強度Rが5×10-5m/s、建物の高さHが13mであるとする。この場合、必要流量Qは、120l/sである。
【0103】
縦管の管径及び設置数を決定する場合、縦管の管径及び設置数のいずれか一方を仮に決定してよい。
【0104】
仮に、設置数を3と決定したとする。この場合、縦管の必要排水能力は、40l/sである。
【0105】
次に、設計表10の第1欄11を見て、配管システムの高さに対応する範囲を探す。建物の高さHが13mであるから、設計表10の第1欄11の「10m以上」を探す。第1欄11から配管システムの高さに対応する範囲を見つけた後は、視線を第1欄11から第2欄12-1~12-3のほうに移動させて、排水能力が必要排水能力以上となる管径を探す。管径VP100に対応する第2欄12-2に着目すると、排水能力は42l/sであり、縦管の必要排水能力は、40l/sを満たす。このようにして、縦管の管径を決定することができる。特に、複数の第2欄12-1~12-3は、第1欄11の右側に、左から右に管径の昇順に並ぶ。一般的に、人は上下よりも左右の視線移動のほうが得意である。そのため、縦管の管径を決定する作業をより容易にできる。
【0106】
仮に、管径をVP75と決定したとする。
【0107】
次に、設計表10の複数の第2欄12-1~12-3から、管径に対応する第2欄12を探す。特に、複数の第2欄12-1~12-3は、第1欄11の右側に、左から右に管径の昇順に並ぶ。一般的に、人は上下よりも左右の視線移動のほうが得意である。そのため、縦管の管径を決定する作業をより容易にできる。複数の第2欄12-1~12-3から管径VP75に対応する第2欄12-1を見つけた後は、視線を下方に移動させて、配管システムの高さに対応する排水能力を探す。管径VP75において、設計表10の第1欄11の「10m以上」に対応する排水能力は、28l/sである。このようにして、縦管の排水能力を決定することができる。
【0108】
縦管の排水能力が28l/sの場合、必要流量Q=120l/sを満足する縦管の設置数は5以上である。
【0109】
このようにして、設計表10を用いることで、縦管の管径及び設置数を容易に決定することができる。
【0110】
特に、設計表10では、配管システムの高さを細かく数値で分ける(例えば1m刻みに分ける)のではなく、範囲で大きく分けてあえて情報量を減らしている。これによって、設計表10の視認性が向上し、選んだ配管システムの高さから視線を移動させて排水能力を見つける作業が容易になり、配管システムの高さに対する排水能力の値を読み間違えてしまう可能性を低減できる。これにより、縦管の管径を決定する作業を容易にできる。
【0111】
さらに、設計表10では、縦管の排水能力を示す第2欄12-1~12-3が左から右に縦管の管径の昇順に並ぶ。これは、人は、通常の視線の流れから、表を左から右に向けて読み、該当する値を探すこと、及び、配管システムの設計者は、管径が小さいほど縦管は安価になることから、特別な事情がない限り、管径が小さい縦管を選ぶことを考慮したものである。つまり、縦管の排水能力を示す欄が左から右に縦管の管径の昇順に並んでいることで、表を左から右に向けて読んだ際に、排水能力を満たす管径の最小値に容易にたどり着くことができる。
【0112】
さらに、設計表10では、排水能力は、第2配管形式での排水能力である。第2配管形式での排水能力は、通常、第1配管形式の排水能力より低くなる。排水能力として、第2配管形式での排水能力を採用することで、施工時に排水能力が不足する可能性を低減できる。
【0113】
このように、設計表10を用いることで、縦管の径を決定するという作業を容易にすることができる。
【0114】
[1.2 効果等]
以上述べた設計表10は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表である。設計表10は、配管システムの高さhの複数の範囲を高さの昇順に示す第1欄11と、第1欄11の隣にあって、複数の範囲それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す複数の第2欄12-1~12-3と、を有する。高さhは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における配管システムの上流側開放点111と下流側開放点112との間の距離で表される。排水能力は、上流側開放点111の中心軸と下流側開放点112の中心軸とが一致しない配管形式での排水能力である。複数の範囲の各々において、縦管の排水能力は、対応する範囲での縦管の排水能力の代表値である。複数の第2欄12-1~12-3は、第1欄11側から管径の昇順に並ぶ。この構成は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【0115】
設計表10において、複数の範囲の数は、2以上5未満である。この構成は、縦管の管径を決定する作業を容易にできる。
【0116】
設計表10において、複数の範囲は、第1範囲と、第2範囲と、を含む。第1範囲は、高さが閾値未満である範囲であり、第2範囲は、高さが閾値以上である範囲であり、閾値は、10m以上12m以下である。この構成は、縦管の管径を決定する作業を容易にできる。
【0117】
設計表10において、第1欄11では、複数の範囲が上から下に高さの昇順に並び、複数の第2欄12-1~12-3は、第1欄の右側に、左から右に管径の昇順に並ぶ。この構成は、縦管の管径を決定する作業を容易にできる。
【0118】
以上述べた設計方法は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計方法であって、配管システムを設置する建物の屋根面積及び高さを決定し(S1)、建物の場所の雨量を決定し(S2)、建物の屋根面積と建物の場所の雨量とに基づいて配管システムが達成することが求められる流量である必要流量を決定し(S3)、設計表10に基づいて、建物の高さを配管システムの高さとして、必要流量を満足する縦管の管径と縦管の設置数を決定する(S4)。この構成は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【0119】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0120】
[2.1 変形例1]
図9は、変形例1にかかる設計表20の説明図である。設計表20は、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図9では、説明を簡単にするために、設計表20が部分的に省略されている。
【0121】
設計表20は、第1欄21と、複数の第2欄22-1~22-4と、を有する。
【0122】
第1欄21は、配管システムの高さの複数の範囲を高さの昇順に示す。複数の範囲の数は、2以上5未満であるとよい。本変形例では、複数の範囲の数は、2である。より詳細には、複数の範囲は、第1範囲と、第2範囲と、を含む。第1範囲は、配管システムの高さが閾値未満である範囲である。第2範囲は、配管システムの高さが閾値以上である範囲である。本変形例では、閾値は12mである。図9では、第1範囲は、「12m以下」、第2範囲は、「12m超過」として示されている。
【0123】
複数の第2欄22-1~22-4は、第1欄21の隣にあって複数の範囲それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す。
【0124】
複数の第2欄22-1~22-4は、排水能力として、建物からの雨水の落とし口の中心軸と縦管の中心軸とが一致しない雨樋システムの配管形式(すなわち、第2配管形式)での排水能力を示す。
【0125】
第2欄22-1~22-4において、複数の範囲の各々において、縦管の排水能力は、対応する範囲での縦管の排水能力の代表値である。
【0126】
複数の第2欄22-1~22-4は、第1欄21側から管径の昇順に並ぶ。図9では、第2欄22-1,22-2は、それぞれ、VU75、VP75に対応する。VU75、VP75は、いずれも呼び径が75である。呼び径が同じ場合には、第2欄22-1,22-2は、コストの昇順に並んでよい。一般に、VU75よりもVP75のほうが肉厚であるため、VU75よりもVP75のほうが高価になる。ただし、VU75よりもVP75のほうが肉厚であるため、VP75よりもVU75のほうが近似内径が大きく、結果として、排水能力は、VP75よりもVU75のほうが大きくなる傾向にある。
【0127】
本変形例において、第1欄21では、複数の範囲(第1範囲及び第2範囲)が左から右に配管システムの高さの昇順に並ぶ。複数の第2欄22-1~22-4は、第1欄21の下側に、上から下に管径の昇順に並ぶ。本変形例では、第1欄21及び第2欄22-1~22-4は、設計表20の行を構成する。
【0128】
設計表20を用いて、縦管の管径を決定するにあたっては、まず、第1欄21を見て、配管システムの高さに対応する範囲を探す。第1欄21から配管システムの高さに対応する範囲を見つけた後は、視線を第1欄21から第2欄22-1~22-4のほうに移動させて、排水能力が必要排水能力以上となる管径を探す。このようにして、縦管の管径を決定することができる。設計表20では、複数の第2欄22-1~22-4は、第2欄21の下側に、上から下に管径の昇順に並ぶ。一般的に、人は上下よりも左右の視線移動のほうが得意であるものの、配管システムの高さの範囲が2以上4以下であるから、視認性への影響を低減できる。
【0129】
以上述べた設計表20において、第1欄21では、複数の範囲が左から右に高さの昇順に並び、複数の第2欄22-1~22-4は、第1欄21の下側に、上から下に管径の昇順に並ぶ。この構成は、縦管の管径を決定する作業を容易にできる。
【0130】
[2.2 変形例2]
図10は、変形例2にかかる設計表30の説明図である。設計表30は、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図10では、説明を簡単にするために、設計表30が部分的に省略されている。
【0131】
設計表30は、第1欄31と、複数の第2欄32-1,32-2と、を有する。第1欄31及び複数の第2欄32-1,32-2は、設計表30の列を構成する。
【0132】
第1欄31は、配管システムの高さの複数の数値を高さの昇順に示す。複数の数値の数は、5以上であるとよい。図10では、複数の数値は、配管システムの高さを3mから1m刻みで示すように設定される。複数の数値は、特に限定されないが、一定間隔の数値であることが好ましい。
【0133】
複数の第2欄32-1,32-2は、第1欄31の右側にあって複数の数値それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す。排水能力としては、好ましくは、保証値Qが用いられる。なお、図10において、「N/A」は、サイフォン現象の発生の可能性が低く実質的に利用できないことを意味している。
【0134】
複数の第2欄32-1,32-3は、左から右に管径の昇順に並ぶ。図10では、第2欄32-1,32-2は、それぞれ、縦管の管径VP75,VP100に対応する。複数の第2欄32-1,32-2は、左から右に、この順に並ぶ。
【0135】
複数の第2欄32-1,32-2の各々において、排水能力は、第1配管形式(直管タイプ)での排水能力と、第2配管形式(エルボ振りタイプ)での排水能力と、を含む。特に、図10では、管径毎に、第1配管形式での排水能力と第2配管形式での排水能力とがまとめて提示される。この場合、所望の管径での配管形式毎の排水能力を把握しやすくなる。
【0136】
第2欄32-1は、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-1と、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-1と、を含む。第1下位欄33-1は左側に、第2下位欄34-2は右側にある。第2欄32-2は、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-2と、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-2と、を含む。第1下位欄33-2は左側に、第2下位欄34-2は右側にある。
【0137】
このように、設計表30では、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-1、33-2が左側に、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-1,34-2が右側にある。通常、第1配管形式での排水能力は、第2配管形式での排水能力より大きくなり、第1配管形式のほうが第2配管形式よりも多く用いられる傾向がある。そのため、表を左から右に向けて読むと、同じ管径においては、第1配管形式が先に目に入り、この時点で、第1配管形式での排水能力が縦管1本あたりに要求される排水能力より小さければ、第2配管形式での排水能力も縦管1本あたりに要求される排水能力より小さくなることが予見され、第2配管形式での排水能力に注視せずに、次の大きさの管径の欄に視線を移動させることができる。これは、設計表30から、縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0138】
設計表30では、配管システムの高さを、範囲で大きく分けずに、細かく数値で分けられている。そのため、縦管の管径毎に、配管システムの高さと排水能力との関係をより詳細に把握することができる。
【0139】
以上述べた設計表30は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、配管システムの高さhの複数の数値を上から下に高さの昇順に示す第1欄31と、第1欄31の右側にあって、複数の数値それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す複数の第2欄32-1,32-2と、を有する。高さhは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における配管システムの上流側開放点111と下流側開放点112との間の距離で表される。排水能力は、第1配管形式での排水能力と、第2配管形式での排水能力と、を含む。第1配管形式は、上流側開放点111の中心軸と下流側開放点112の中心軸とが一致する配管形式である。第2配管形式は、上流側開放点111の中心軸と下流側開放点112の中心軸とが一致しない配管形式である。複数の第2欄は、左から右に管径の昇順に並ぶ。この構成は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【0140】
設計表30において、複数の数値の数は、5以上である。この構成は、縦管の管径毎に、配管システムの高さと排水能力との関係をより詳細に把握することができる。
【0141】
設計表30において、複数の第2欄32-1,32-2の各々では、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-1、33-2が左側に、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-1,34-2が右側にある。この構成は、縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0142】
[2.3 変形例3]
図11は、変形例3にかかる設計表30Aの説明図である。設計表30Aは、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図11では、説明を簡単にするために、設計表30Aが部分的に省略されている。
【0143】
設計表30Aは、第1欄31と、複数の第2欄32A-1,32A-2と、を有する。
【0144】
第2欄32A-1は、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-1と、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-1と、を含む。第1下位欄33-1は右側に、第2下位欄34-2は左側にある。第2欄32A-2は、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-2と、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-2と、を含む。第1下位欄33-2は右側に、第2下位欄34-2は左側にある。
【0145】
このように、設計表30Aでは、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-1、33-2が右側に、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-1,34-2が左側にある。第2配管形式は、第1配管形式よりも、建物の構造上の問題(例えば、建物に対する縦管の位置が事前に決定できない、軒樋と建物の壁面との距離が離れている、窓を避ける必要がある等)に容易に対処できるという利点がある。さらに、第2配管形式での排水能力は、第1配管形式での排水能力より小さい。よって、仮に第2配管形式で設計しておき、後から第1配管形式に変更する分には、排水能力が不足する可能性が低い。そのため、第1配管形式よりも第2配管形式を優先的に使用したい場合がある。そして、設計表30Aを左から右に向けて読むと、同じ管径においては、第2配管形式が先に目に入る。この時点で、第2配管形式での排水能力が縦管1本あたりに要求される排水能力より小さければ、次の大きさの管径の欄に視線を移動させることができる。これは、設計表30Aから、第2配管形式において縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0146】
以上述べた設計表30Aにおいて、複数の第2欄32A-1,32A-2の各々では、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-1、33-2が右側に、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-1,34-2が左側にある。この構成は、第2配管形式において縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0147】
[2.4 変形例4]
図12は、変形例4にかかる設計表40の説明図である。設計表40は、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図12では、説明を簡単にするために、設計表40が部分的に省略されている。
【0148】
設計表40は、第1欄41と、第2欄42と、第3欄43と、を有する。第1欄41、第2欄42及び第3欄43は、設計表40の列を構成する。
【0149】
第1欄41は、配管システムの高さの複数の指標を高さの昇順に示す。本変形例において、複数の指標の各々は、配管システムの高さの範囲を示す。複数の指標の数は、2以上5未満であるとよい。図12では、複数の指標の数は、2である。より詳細には、複数の指標は、第1範囲と、第2範囲と、を示す。第1範囲は、配管システムの高さが閾値未満である範囲である。第2範囲は、配管システムの高さが閾値以上である範囲である。閾値は、好ましくは、10m以上12m以下である。例えば、閾値は10mである。図12では、第1範囲は、「10m以下」、第2範囲は、「10m超過」として示されている。
【0150】
第2欄42は、第1欄41の右側にある。第2欄42は、複数の第1下位欄421-1~421-3を含む。複数の第1下位欄421-1~421-3は、複数の指標それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の第1配管形式での排水能力を示す。複数の第1下位欄421-1~421-3は、左から右に、管径の昇順に並ぶ。図12では、第1下位欄421-1~421-3は、それぞれ、縦管の管径VP75,VP100,VP125に対応する。複数の第1下位欄421-1~421-3は、第1欄41側から、この順に並ぶ。
【0151】
第3欄43は、第1欄41の右側にある。第3欄43は、複数の第2下位欄431-1~431-3を含む。複数の第2下位欄431-1~431-3は、複数の指標それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の第2配管形式での排水能力を示す。複数の第2下位欄431-1~431-3は、左から右に、管径の昇順に並ぶ。図12では、第2下位欄431-1~431-3は、それぞれ、縦管の管径VP75,VP100,VP125に対応する。複数の第2下位欄431-1~431-3は、第1欄41側から、この順に並ぶ。
【0152】
設計表40では、第1配管形式と第2配管形式とに分けて、管径毎の排水能力が提示される。そのため、所望の配管形式での管径毎の排水能力を容易に把握できる。これは、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【0153】
設計表40では、第2欄42及び第3欄43はいずれも第1欄41よりも右側にあるが、第2欄42が第1欄41と第3欄43との間にある。つまり、第2欄42のほうが第3欄43よりも第1欄41に近い。通常、第1配管形式での排水能力は、第2配管形式での排水能力より大きくなり、第1配管形式のほうが第2配管形式よりも多く用いられる傾向がある。そして、設計表40を左から右に向けて読むと、第2配管形式よりも第1配管形式が先に目に入る。そのため、設計表40から第1配管形式での排水能力を選びやすくなり、効率の向上が図れる。よって、第1配管形式において縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0154】
第2欄42及び第3欄43の各々では、配管システムの縦管の排水能力を示す欄が左から右に縦管の管径の昇順に並んでいる。これは、人は、通常の視線の流れから、表を左から右に向けて読み、該当する値を探すこと、及び、配管システムの設計者は、管径が小さいほど縦管は安価になることから、特別な事情がない限り、管径が小さい縦管を選ぶことを考慮したものである。つまり、縦管の排水能力を示す欄が左から右に縦管の管径の昇順に並んでいることで、表を左から右に向けて読んだ際に、排水能力を満たす管径の最小値に容易にたどり着くことができる。
【0155】
設計表40では、配管システムの高さを、範囲で大きく分けることで、配管システムの高さが細かく数値で分けられている場合(例えば1m刻み)に比べて、選んだ配管システムの高さから視線を移動させて排水能力を見つける作業が容易になり、配管システムの高さに対する排水能力の値を読み間違えてしまう可能性を低減できる。これにより、縦管の管径を決定する作業を容易にできる。
【0156】
以上述べた設計表40は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、配管システムの高さhの複数の指標を上から下に高さの昇順に示す第1欄41と、第1欄41の右側にあって、複数の指標それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の第1配管形式での排水能力を示す複数の第1下位欄421-1~421-3を含む第2欄42と、第1欄41の右側にあって、複数の指標それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の第2配管形式での排水能力を示す複数の第2下位欄431-1~431-3を含む第3欄43と、を有する。高さhは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における配管システムの上流側開放点111と下流側開放点112との間の距離で表される。第1配管形式は、上流側開放点111の中心軸と下流側開放点112の中心軸とが一致する配管形式である。第2配管形式は、上流側開放点111の中心軸と下流側開放点112の中心軸とが一致しない配管形式である。第2欄42では、複数の第1下位欄421-1~421-3が左から右に管径の昇順に並ぶ。第3欄43では、複数の第2下位欄431-1~431-3が左から右に管径の昇順に並ぶ。この構成は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【0157】
設計表40において、第2欄42は、第1欄41と第3欄43との間にある。この構成は、第1配管形式において縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0158】
設計表40において、複数の指標の各々は、配管システムの高さの範囲を示す。複数の指標の数は、2以上5未満である。この構成は、縦管の管径を決定する作業を容易にできる。
【0159】
[2.5 変形例5]
図13は、変形例5にかかる設計表40Aの説明図である。設計表40Aは、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図13では、説明を簡単にするために、設計表40Aが部分的に省略されている。
【0160】
設計表40Aは、第1欄41と、第2欄42と、第3欄43と、を有する。第1欄41、第2欄42及び第3欄43は、設計表40Aの列を構成する。
【0161】
設計表40Aでは、第2欄42及び第3欄43はいずれも第1欄41よりも右側にあるが、第3欄43が第1欄41と第2欄42との間にある。つまり、第3欄42のほうが第2欄42よりも第1欄41に近い。第2配管形式は、第1配管形式よりも、建物の構造上の問題(例えば、建物に対する縦管の位置が事前に決定できない、軒樋と建物の壁面との距離が離れている、窓を避ける必要がある等)に容易に対処できるという利点がある。さらに、第2配管形式での排水能力は、第1配管形式での排水能力より小さい。よって、仮に第2配管形式で設計しておき、後から第1配管形式に変更する分には、排水能力が不足する可能性が低い。そのため、第1配管形式よりも第2配管形式を優先的に使用したい場合がある。そして、設計表40Aを左から右に向けて読むと、第1配管形式よりも第2配管形式が先に目に入る。そのため、設計表40Aから第2配管形式での排水能力を選びやすくなり、効率の向上が図れる。よって、第2配管形式において縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0162】
以上述べた設計表40Aにおいて、第3欄43は、第1欄41と第2欄42との間にある。この構成は、第2配管形式において縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0163】
[2.6 変形例6]
図14は、変形例6にかかる設計表50の説明図である。設計表50は、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図14では、説明を簡単にするために、設計表50が部分的に省略されている。
【0164】
設計表50は、第1欄51と、第2欄52と、第3欄53と、を有する。第1欄51、第2欄52及び第3欄53は、設計表50の列を構成する。
【0165】
第1欄51は、配管システムの高さの複数の指標を高さの昇順に示す。本変形例において、複数の指標の各々は、配管システムの高さの数値を示す。複数の指標の数は、5以上であるとよい。図14では、複数の指標は、配管システムの高さを3mから1m刻みで示すように設定される。複数の数値は、特に限定されないが、一定間隔の数値であることが好ましい。
【0166】
第2欄52は、第1欄51の右側にある。第2欄52は、複数の第1下位欄521-1,521-2を含む。複数の第1下位欄521-1,521-2は、複数の指標それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の第1配管形式での排水能力を示す。複数の第1下位欄521-1,521-2は、左から右に、管径の昇順に並ぶ。図14では、第1下位欄521-1,521-2は、それぞれ、縦管の管径VP75,VP100に対応する。複数の第1下位欄521-1,521-2は、第1欄51側から、この順に並ぶ。
【0167】
第3欄53は、第1欄51の右側にある。第3欄53は、複数の第2下位欄531-1,531-2を含む。複数の第2下位欄531-1,531-2は、複数の指標それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の第2配管形式での排水能力を示す。複数の第2下位欄531-1,531-2は、左から右に、管径の昇順に並ぶ。図14では、第2下位欄531-1,531-2は、それぞれ、縦管の管径VP75,VP100に対応する。複数の第2下位欄531-1,531-2は、第1欄51側から、この順に並ぶ。
【0168】
設計表50では、第2欄42が第1欄41と第3欄43との間にある。設計表50を左から右に向けて読むと、第2配管形式よりも第1配管形式が先に目に入る。そのため、設計表50から第1配管形式での排水能力を選びやすくなり、効率の向上が図れる。よって、第1配管形式において縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0169】
第2欄52及び第3欄53の各々では、配管システムの縦管の排水能力を示す欄が左から右に縦管の管径の昇順に並んでいる。縦管の排水能力を示す欄が左から右に縦管の管径の昇順に並んでいることで、表を左から右に向けて読んだ際に、排水能力を満たす管径の最小値に容易にたどり着くことができる。
【0170】
設計表50では、配管システムの高さを、範囲で大きく分けずに、細かく数値で分けられている。そのため、縦管の管径毎に、配管システムの高さと排水能力との関係をより詳細に把握することができる。
【0171】
[2.7 変形例7]
図15は、変形例7にかかる設計表50Aの説明図である。設計表50Aは、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図15では、説明を簡単にするために、設計表50Aが部分的に省略されている。
【0172】
設計表50Aは、第1欄51と、第2欄52と、第3欄53と、を有する。第1欄51、第2欄52及び第3欄53は、設計表50Aの列を構成する。
【0173】
設計表50Aでは、第2欄52及び第3欄53はいずれも第1欄51よりも右側にあるが、第3欄53が第1欄51と第2欄52との間にある。設計表50Aを左から右に向けて読むと、第1配管形式よりも第2配管形式が先に目に入る。そのため、設計表50Aから第2配管形式での排水能力を選びやすくなり、効率の向上が図れる。よって、第2配管形式において縦管1本あたりに要求される排水能力を満たす管径を探す作業の速度の向上を可能にする。
【0174】
[2.8 変形例8]
図16は、変形例8にかかる設計表30Bの説明図である。設計表30Bは、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図16では、説明を簡単にするために、設計表30Bが部分的に省略されている。
【0175】
設計表30Bは、第1欄31と、複数の第2欄32B-1,32B-2と、を有する。
【0176】
第2欄32B-1,32B-2は、第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄33-1,32-2と、第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄34-1,34-2と、それぞれを含む。
【0177】
設計表30Bでは、排水能力は、流量ではなく、対応屋根面積で表されている。図16において、対応屋根面積の単位は[m]である。
【0178】
対応屋根面積は、所定の降雨強度に対して縦管一つで対応可能な屋根面積を意味する。換言すれば、対応屋根面積は、軒樋の制約が無い場合に、所定の降雨強度に対して落とし口一つあたりで対応可能な屋根面積の最大値である。ここで、縦管の流量をq[l/s]、対応屋根面積をs[m]、対応降雨強度をr[m/s]とすると、q=s×rで表される。対応降雨強度rは、所定の屋根面積に対して縦管一つで対応可能な降雨強度を意味する。換言すれば、対応降雨強度rは、軒樋の制約が無い場合に、所定の屋根面積に対して落とし口一つあたりで対応可能な降雨強度の最大値である。
【0179】
縦管の流量qは、上述のQT、QA、及び、QGから選択可能である。したがって、対応降雨強度rを固定すれば、竪樋の流量qから対応屋根面積sを求めることができる。対応降雨強度rには、任意の値を用いることが可能である。
【0180】
このように、縦管の排水能力は、縦管一つ当たりの屋根面積で表されてもよい。縦管一つ当たりの屋根面積は、落とし口一つ当たりの屋根面積であるといえる。
【0181】
一方で、対応屋根面積sを固定すれば、縦管の流量qから対応降雨強度rを求めることができる。
【0182】
このように、縦管の排水能力は、流量、対応屋根面積、又は、対応降雨強度の少なくとも一つにより表されてよい。
【0183】
[変形例9]
図17は、変形例9にかかる設計表60の説明図である。設計表60は、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図17では、説明を簡単にするために、設計表60が部分的に省略されている。
【0184】
設計表60は、第1欄51と、複数の第2欄62-1,62-2と、を有する。
【0185】
第1欄61は、第1欄11と同様に、配管システムの高さの複数の範囲を高さの昇順に示す。
【0186】
複数の第2欄62-1,62-2は、第1欄61の隣にあって複数の範囲それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す。図17では、排水能力は、上流側開放点111の中心軸と下流側開放点112の中心軸とが一致する配管形式(すなわち、第1配管形式)での排水能力を示す。
【0187】
複数の第2欄62-1,62-2の各々は、複数の下位欄621-1~621-5を含む。複数の下位欄621-1~621-5は、複数の異なる対応降雨強度rそれぞれでの対応屋根面積sを示す。
【0188】
複数の第2欄62-1,62-2の各々は、縦管の排水能力の、対応降雨強度に対する変化を示す。上述したように、縦管の流量qは、q=s×rで表される。縦管の流量qは、上述のQ、Q、及び、Qから選択可能である。したがって、流量qが決まれば、対応降雨強度rの変化に対する対応屋根面積sの変化を求めることができる。図17の第2欄62-1は、VP75の管径に対して、直管タイプ(第1配管形式)での、配管システムの高さの第1範囲及び第2範囲に対する対応屋根面積sの、対応降雨強度rに対する変化を示す。図17において、対応屋根面積sの単位は[m]、対応降雨強度rの単位は[mm/h]である。
【0189】
図17では、複数の下位欄621-1~621-5は、対応降雨強度rの降順に並ぶ。これにより、排水能力が不足する縦管を誤って選択する可能性を低減できる。
【0190】
設計表60では、縦管の排水能力は、対応降雨強度毎の対応屋根面積で表されてよい。これは、建物の屋根面積から、必要な縦管の管径及び設置数を計算する作業を容易にする。
【0191】
[変形例10]
図18は、変形例10にかかる設計表20Aの説明図である。設計表20Aは、設計表10に代えて、縦管の管径及び設置数の決定に用いられ得る。なお、図18では、説明を簡単にするために、設計表20Aが部分的に省略されている。
【0192】
設計表20Aは、第1欄21と、複数の第2欄22A-1~22A-4と、を有する。
【0193】
複数の第2欄22A-1~22A-4は、第1欄21の隣にあって複数の範囲それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す。
【0194】
複数の第2欄22A-1~22A-4の各々は、第1部分221と、第2部分222と、を含む。第1部分221は、第1欄21の高さの複数の範囲それぞれの縦管の排水能力を流量で示す。第2部分222は、図17の設計表60と同様に、第1部分221の流量に基づく、対応降雨強度毎の対応屋根面積を示す。なお、第2部分222において、「/」の左側が、12m以下での対応屋根面積を示し、「/」の右側が、12m超過での対応屋根面積を示す。
【0195】
[2.11 その他の変形例]
一変形例において、配管形式は、上述した第1配管形式及び第2配管形式に限定されない。第1配管形式及び第2配管形式は、雨樋システムにおいて比較的典型的な配管形式ではあるが、雨樋システムではさらに多様な配管形式が用いられていることはいうまでもない。配管形式としては、本管に対して分岐管が合流する形式や、複数の分岐管が一つにまとまる形式等が挙げられる。
【0196】
例えば、第2配管形式においては、上述したように、ΣDは、ΣD=Da+Db1+Db2+Dcで表すことができる。Db1は、第1エルボ161近傍での圧力損失である。Db2は、第2エルボ162近傍での圧力損失である。第1エルボ161及び第2エルボ162としては、様々な周知のエルボが利用され得る。例えば、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」では、90°エルボ、90°大曲がりエルボ、45°エルボ等がある。第1エルボ161及び第2エルボ162にどのようなエルボを用いるかで、第1エルボ161及び第2エルボ162近傍での圧力損失は変化し得る。そのため、配管形式で用いられる1以上の配管部材の情報は、第1エルボ161及び第2エルボ162の種類に関する情報を含んでよい。これによって、サイフォン現象を利用した場合の排水能力の演算の精度の向上が期待できる。
【0197】
一変形例において、縦管の管径は、縦管に用いる配管の種類ではなく、管径を示す離散変数であってよい。管径を示す離散変数としては、表1及び表2に挙げられる近似内径の値を用いることができる。例えば、第2情報は、VU75に対応する83mm、VP75に対応する77mm、VP100に対応する100mm、VP125に対応する125mmから選択可能であってよい。縦管の管径は、管径を示す連続変数であってよい。これによって、配管システムの設計の自由度が高い場合にも対応できる。
【0198】
以上述べた情報提示システムは、雨樋システム以外の配管システムにも利用可能である。配管システムの例としては、上水道又は下水道のための配管システム、工場等の施設内において目的の流体を搬送数ための配管システムが挙げられる。つまり、配管システムで搬送する流体は、雨水に限定されない。
【0199】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0200】
[態様1]
縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、
前記配管システムの高さの複数の範囲を前記高さの昇順に示す第1欄と、
前記第1欄の隣にあって、前記複数の範囲それぞれの前記縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の前記縦管の排水能力を示す複数の第2欄と、
を有し、
前記高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における前記配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、
前記排水能力は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式での排水能力であり、
前記複数の範囲の各々の前記縦管の排水能力は、対応する範囲の前記縦管の排水能力の代表値であり、
前記複数の第2欄は、前記第1欄側から前記管径の昇順に並ぶ、
設計表。
【0201】
[態様2]
前記複数の範囲の数は、2以上5未満である、
態様1の設計表。
【0202】
[態様3]
前記複数の範囲は、第1範囲と、第2範囲と、を含み、
前記第1範囲は、前記高さが閾値未満である範囲であり、
前記第2範囲は、前記高さが前記閾値以上である範囲であり、
前記閾値は、10m以上12m以下である、
態様1又は2の設計表。
【0203】
[態様4]
前記第1欄では、前記複数の範囲が上から下に前記高さの昇順に並び、
前記複数の第2欄は、前記第1欄の右側に、左から右に前記管径の昇順に並ぶ、
態様1~3のいずれか一つの設計表。
【0204】
[態様5]
前記第1欄では、前記複数の範囲が左から右に前記高さの昇順に並び、
前記複数の第2欄は、前記第1欄の下側に、上から下に前記管径の昇順に並ぶ、
態様1~5のいずれか一つの設計表。
【0205】
[態様6]
縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、
前記配管システムの高さの複数の数値を上から下に前記高さの昇順に示す第1欄と、
前記第1欄の右側にあって、前記複数の数値それぞれの前記縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の前記縦管の排水能力を示す複数の第2欄と、
を有し、
前記高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における前記配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、
前記排水能力は、
第1配管形式での排水能力と、
第2配管形式での排水能力と、
を含み、
前記第1配管形式は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致する配管形式であり、
前記第2配管形式は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式であり、
前記複数の第2欄は、左から右に前記管径の昇順に並ぶ、
設計表。
【0206】
[態様7]
前記複数の数値の数は、5以上である、
態様6の設計表。
【0207】
[態様8]
前記複数の第2欄の各々では、前記第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄が左側に、前記第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄が右側にある、
態様6又は7の設計表。
【0208】
[態様9]
前記複数の第2欄の各々では、前記第1配管形式での排水能力を示す第1下位欄が右側に、前記第2配管形式での排水能力を示す第2下位欄が左側にある、
態様6~8のいずれか一つの設計表。
【0209】
[態様10]
縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、
前記配管システムの高さの複数の指標を上から下に前記高さの昇順に示す第1欄と、
前記第1欄の右側にあって、前記複数の指標それぞれの前記縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の前記縦管の第1配管形式での排水能力を示す複数の第1下位欄を含む第2欄と、
前記第1欄の右側にあって、前記複数の指標それぞれの前記縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の前記縦管の第2配管形式での排水能力を示す複数の第2下位欄を含む第3欄と、
を有し、
前記高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における前記配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、
前記第1配管形式は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致する配管形式であり、
前記第2配管形式は、前記上流側開放点の中心軸と前記下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式であり、
前記第2欄では、前記複数の第1下位欄が左から右に前記管径の昇順に並び、
前記第3欄では、前記複数の第2下位欄が左から右に前記管径の昇順に並ぶ、
設計表。
【0210】
[態様11]
前記第2欄は、前記第1欄と前記第3欄との間にある、
態様10の設計表。
【0211】
[態様12]
前記第3欄は、前記第1欄と前記第3欄との間にある、
態様10の設計表。
【0212】
[態様13]
前記複数の指標の各々は、前記配管システムの高さの範囲を示し、
前記複数の指標の数は、2以上5未満である、
態様11又は12の設計表。
【0213】
[態様14]
前記複数の指標の各々は、前記配管システムの高さの数値を示し、
前記複数の指標の数は、5以上である、
態様11又は12の設計表。
【0214】
[態様15]
前記縦管の排水能力は、流量、対応屋根面積、又は、対応降雨強度の少なくとも一つにより表される、
態様1~14のいずれか一つの設計表。
【0215】
[態様16]
縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計方法であって、
前記配管システムを設置する建物の屋根面積及び高さを決定し、
前記建物の場所の雨量を決定し、
前記建物の屋根面積と前記建物の場所の雨量とに基づいて前記配管システムが達成することが求められる流量である必要流量を決定し、
態様1~15のいずれか一つの設計表に基づいて、前記建物の高さを前記配管システムの高さとして、前記必要流量を満足する前記縦管の管径と前記縦管の設置数を決定する、
設計方法。
【0216】
態様2~5、7~9、11~15は、任意の要素であり、必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本開示は、設計表、及び、設計方法に適用可能である。具体的には、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表、及び、当該設計表を用いる設計方法に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0218】
10 設計表
11 第1欄
12-1,12-2,12-3 第2欄
20,20A 設計表
21 第1欄
22-1,22-2,22-3,22-4 第2欄
22A-1,22A-2,22A-3,22A-4 第2欄
221 第1部分
222 第2部分
30,30A,30B 設計表
31 第1欄
32-1,32-2 第2欄
32A-1,32A-2 第2欄
32B-1,32B-2 第2欄
33-1,33-2 第1下位欄
34-1,34-2 第2下位欄
40,40A 設計表
41 第1欄
42 第2欄
421-1,421-2,421-3 第1下位欄
43 第3欄
431-1,431-2,431-3 第2下位欄
50,50A 設計表
51 第1欄
52 第2欄
521-1,521-2 第1下位欄
53 第3欄
531-1,531-2 第2下位欄
60 設計表
61 第1欄
62-1,62-2 第2欄
621-1,621-2,621-3,621-4,621-5 下位欄
【要約】
【課題】サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする設計表、及び、設計方法を提供する。
【解決手段】設計表は、縦管を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの設計表であって、配管システムの高さの複数の範囲を高さの昇順に示す第1欄と、第1欄の隣にあって複数の範囲それぞれの縦管の管径に対するサイフォン現象を利用した場合の縦管の排水能力を示す複数の第2欄とを有する。高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表される。排水能力は、上流側開放点の中心軸と下流側開放点の中心軸とが一致しない配管形式での排水能力である。複数の範囲の各々において、縦管の排水能力は、対応する範囲での縦管の排水能力の代表値である。複数の第2欄は、第1欄側から管径の昇順に並ぶ。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18