IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図1
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図2
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図3
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図4
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図5
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図6
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図7
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図8
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図9
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図10
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図11
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図12
  • 特許-自転車用チャイルドシート及び自転車 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】自転車用チャイルドシート及び自転車
(51)【国際特許分類】
   B62J 1/16 20060101AFI20240419BHJP
   B60N 2/26 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
B62J1/16
B60N2/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019183462
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021059162
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 武博
(72)【発明者】
【氏名】小川 満
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06305744(US,B1)
【文献】特開平11-034705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0057088(US,A1)
【文献】特開2011-084211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00 ー 1/28
B60N 2/26
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車に取り付けられる自転車用チャイルドシートであって、
座部と前記座部の後側で立設されたバック部とを含むシート本体と、
前記シート本体の着座者側の面に取り付けられ、発泡樹脂を含む材料で構成されたクッション部材とを備え、
前記クッション部材のシート本体側の面に、前記クッション部材を支持する支持部材が取り付けられており、
前記支持部材は挿入部を有し、該挿入部が前記クッション部材に挿入されており、
前記クッション部材の外周端部の全周又は周方向の互いに離れた複数箇所に、着座者側からシート本体側に折り返されかつ前記挿入部が挿入される断面略U字状の折返し部が設けられており、
後側から前側を見たときの、左側に位置する前記折返し部と右側に位置する前記折返し部とは、互いに反対向きに折り返されていることを特徴とする自転車用チャイルドシート。
【請求項2】
請求項1記載の自転車用チャイルドシートにおいて、
前記支持部材は肉抜き孔を有することを特徴とする自転車用チャイルドシート。
【請求項3】
自転車に取り付けられる自転車用チャイルドシートであって、
座部と前記座部の後側で立設されたバック部とを含むシート本体と、
前記シート本体の着座者側の面に取り付けられ、発泡樹脂を含む材料で構成されたクッション部材とを備え、
前記クッション部材のシート本体側の面に、前記クッション部材を支持する支持部材が取り付けられており、
前記支持部材は挿入部を有し、該挿入部が前記クッション部材に挿入されており、
前記支持部材は肉抜き孔を有し、
前記クッション部材は、前記肉抜き孔を貫通して前記シート本体に接触する突状部を有することを特徴とする自転車用チャイルドシート。
【請求項4】
自転車に取り付けられる自転車用チャイルドシートであって、
座部と前記座部の後側で立設されたバック部とを含むシート本体と、
前記シート本体の着座者側の面に取り付けられ、発泡樹脂を含む材料で構成されたクッション部材とを備え、
前記クッション部材のシート本体側の面に、前記クッション部材を支持する支持部材が取り付けられており、
前記支持部材は挿入部を有し、該挿入部が前記クッション部材に挿入されており、
前記支持部材は肉抜き孔を有し、
前記支持部材は、格子状であり、
前記肉抜き孔は、格子の孔であることを特徴とする自転車用チャイルドシート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の自転車用チャイルドシートを備えていることを特徴とする自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用チャイルドシート及び自転車に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自転車の荷台等に取り付けられる自転車用チャイルドシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような自転車用チャイルドシートは、座部とバック部(背凭れ部)とを含むシート本体を備えている。このシート本体は、通常、硬質の樹脂で構成されるので、シート本体における座部及びバック部の着座者(子供)側の面には、発泡樹脂で構成されたクッション部材が取り付けられる。特許文献1では、シート本体に、EVA樹脂等により形成したクッション部材が貼り付けられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-47852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発泡樹脂で構成されたクッション部材は、直射日光が当たり続けると、収縮したり、クッション部材の端部が反シート本体側に捲れるように反ったりするという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シート本体に取り付けられる、発泡樹脂を含む材料で構成されたクッション部材の収縮や反りを、簡単な構成で抑制可能な自転車用チャイルドシート及び自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、自転車に取り付けられる自転車用チャイルドシートを対象として、座部と前記座部の後側で立設されたバック部とを含むシート本体と、前記シート本体の着座者側の面に取り付けられ、発泡樹脂を含む材料で構成されたクッション部材とを備え、前記クッション部材のシート本体側の面に、前記クッション部材を支持する支持部材が取り付けられている、という構成とした。
【0008】
前記の構成により、クッション部材のシート本体側の面に、支持部材が取り付けられているので、この支持部材によって、クッション部材の収縮や反りを抑制することができるようになる。
【0009】
前記自転車用チャイルドシートにおいて、前記クッション部材は、前記支持部材を介して前記シート本体に取り付けられている、ことが好ましい。
【0010】
このことにより、支持部材を、支持部材に設けた係止爪等によってシート本体に容易に取り付けることができる。ここで、発泡樹脂を含む材料で構成されたクッション部材は、接着性が低い傾向にあるので、クッション部材をシート本体に貼り付けても、剥がれ易いという問題がある。これに対し、クッション部材が支持部材を介してシート本体に取り付けられることで、支持部材が前記係止爪等によってシート本体から外れ難くすることが容易にできる。また、クッション部材及び支持部材の形状等によってクッション部材が支持部材から外れ難くすることも容易にできる。
【0011】
前記自転車用チャイルドシートにおいて、前記クッション部材の外周端部の全周又は周方向の互いに離れた複数箇所に、シート本体側に折り返される断面略U字状の折返し部が設けられており、前記支持部材は、前記折返し部に前記支持部材の端部が挿入されることによって、前記クッション部材に取り付けられている、ことが好ましい。
【0012】
このことで、支持部材をクッション部材に容易に取り付けることができるとともに、クッション部材の収縮や反りを効果的に抑制することができる。また、クッション支持部材の端部の折返し部への挿入量を適切に設定することによって、クッション部材の成型時の寸法にばらつきがあったとしても、その端部が折返し部から抜けないようにすることができる。
【0013】
前記自転車用チャイルドシートにおいて、前記シート本体に取り付けられた前記クッション部材におけるシート本体側の面の一部が、前記シート本体に接触している、ことが好ましい。
【0014】
これにより、クッション部材のシート本体に対する移動を抑制することができる。特に、クッション部材が支持部材を介してシート本体に取り付けられている場合に、クッション部材がシート本体から浮いた状態にあると、自転車の走行時にクッション部材が振動し易くなる。これに対し、クッション部材のシート本体側の面がシート本体に接触していることで、クッション部材の振動を抑制することができ、この振動による異音の発生を抑制することができる。
【0015】
本発明の別の態様は、前記自転車用チャイルドシートを備えた自転車である。
【0016】
この自転車の自転車用チャイルドシートのクッション部材の収縮や反りを、簡単な構成で抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の自転車用チャイルドシート及び自転車によると、クッション部材のシート本体側の面に支持部材が取り付けられていることにより、シート本体に取り付けられたクッション部材の収縮や反りを、簡単な構成で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】例示的な実施形態に係る自転車用チャイルドシートを備えた自転車を示す側面図である。
図2】自転車用チャイルドシートを前側かつ左側から見た斜視図である。
図3】自転車用チャイルドシートの分解斜視図である。
図4】シートクッション支持部材が取り付けられたシートクッション部材を下側から見た図である。
図5図4のV-V線に沿って切断した断面図である。
図6】シートクッション部材が取り付けられた座部の前側部分の左右方向中央の断面図である。
図7】背クッション部材及び背クッション支持部材を示す、斜め後側から見た斜視図である。
図8】背クッション支持部材が取り付けられた背クッション部材を後側から見た図である。
図9図8のIX-IX線に沿って切断した断面図である。
図10】ヘッド部の左右方向中央の断面図である。
図11】グリップバーの、左側の側壁部から外れた左側端部が、右側端部の下側に位置するように、グリップバーをその右側端部を中心にして回動させた状態を示す側面図である。
図12】グリップバーの右側端部を構成する嵌合部材が筒状部材に外嵌合した状態を示す断面図である。
図13】各挿入孔に棒状部材を挿入してピン部材を押圧した状態を示す図12相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、例示的な実施形態に係る自転車用チャイルドシート(以下、単にチャイルドシートという)10が設けられた自転車100を示す。以下の説明では、自転車100の進行側及び後退側をそれぞれ単に前側及び後側という。また、自転車100を後側から見たときの左側及び右側をそれぞれ単に左側及び右側という。チャイルドシート10については、チャイルドシート10に着座した子供(着座者)が向く側が前側であり、その反対側が後側である。また、その着座した子供の左側及び右側がそれぞれチャイルドシート10の左側及び右側である。本実施形態では、チャイルドシート10は、チャイルドシート10の前側、後側、左側、右側、上側及び下側がそれぞれ、自転車100の前側、後側、左側、右側、上側及び下側となるように、自転車100に取り付けられている。したがって、以下の説明で、例えば単に前側という場合、自転車100の前側でもあり、チャイルドシート10の前側でもある。
【0021】
本実施形態において、自転車100は電動アシスト自転車である。自転車100は、車体102と、前輪103と、後輪104と、駆動機構105と、電気コンポーネント106とを備える。車体102の前後方向中央からは上側に向かってシートチューブ121が延びている。シートチューブ121には、シートポスト122を介してサドル123が取り付けられている。電気コンポーネント106は、シートチューブ121の後側に取り付けられている。シートチューブ121の上側端部からは、シートステー124が後側に向かって下側に傾斜して延びて、後輪104の車軸に接続されている。サドル123の後側でかつ後輪104の上側には、荷台125が設けられており、荷台125の前端部がシートステー124に固定され、荷台125の後端部が、後輪104の車軸から上側に向かって後側に傾斜して延びる荷台支持ステー127に固定されている。車体102の前側端部には、ハンドルポスト126を介して、ハンドル107が設けられている。尚、図示は省略しているが、ハンドル107の左右両側端部には、自転車100の乗員が握るグリップがそれぞれ設けられる。
【0022】
本実施形態では、チャイルドシート10は、サドル123よりも後側における荷台125上に取り付けられている。
【0023】
図2及び図3に示すように、チャイルドシート10は、硬質の樹脂で構成されたシート本体11を有する。シート本体11は、子供が着座する座部12と、座部12の後側で立設され、座部12に着座した子供の背中(本実施形態では、背中及び頭部)を支持するバック部13と、座部12に着座した子供が両足を載せる左右一対の足載せ部17と、座部12及びバック部13の左右方向両側の端部に設けられた左右の側壁部19とを有する。
【0024】
座部12の下面が荷台125の上面に当接した状態で座部12がネジによって荷台125に固定されることで、チャイルドシート10が荷台125上に取り付けられることになる。
【0025】
座部12の前端部における左右方向の中央部には、前側に突出した突出部21が設けられている。この突出部21の上側が、フロントカバー22によって覆われている。
【0026】
左右一対の足載せ部17は、足載せ部17の左右方向の内側端部及び後端部から上側に延びる連結部18によって、突出部21の左右両側端部、及び、座部12の前端部における左右両側端部に連結されている。
【0027】
図3に示すように、座部12の上面(着座者側の面)には、シートクッション部材31が取り付けられている。このシートクッション部材31は、発泡樹脂を含む材料で構成(成型)される。この材料としては、発泡樹脂を含んでいればよく、発泡樹脂以外の材料が含まれていてもよい。本実施形態では、シートクッション部材31は、エチレンビニルアセテート(以下、省略してEVAという)で構成されている。シートクッション部材31は、樹脂(本実施形態では、ポリプロピレン)からなるシートクッション支持部材32を介して座部12(シート本体11)に取り付けられている。このシートクッション支持部材32の構成については、後述する。
【0028】
バック部13は、座部12に着座した子供の背中を支持する背凭れ部14と、該背凭れ部14の上側に位置し、該子供の頭部の高さ位置に位置するヘッド部15とを有する。背凭れ部14の前面(着座者側の面)には、背クッション部材35が取り付けられている。この背クッション部材35も、シートクッション部材31と同様の材料で構成(成型)される。本実施形態では、背クッション部材35も、EVAで構成されている。背クッション部材35は、樹脂(本実施形態では、ポリプロピレン)からなる背クッション支持部材36を介して背凭れ部14(シート本体11)に取り付けられている。この背クッション支持部材36の構成についても、後述する。
【0029】
ヘッド部15の前側には、バック部13(シート本体11)に対して上下移動可能に構成されたヘッドガード41が設けられている。このヘッドガードの後面における左右方向中央部には、ヘッドガード41の下端よりも下側に延びるヘッドガード支持部41aが設けられている。このヘッドガード支持部41aが、バック部13における背凭れ部14とヘッド部15との境界部分(段差部分)に設けられた貫通孔13aから挿入されて背凭れ部14の後側に位置する。背凭れ部14の後側には、ヘッドガード支持部41aを上下方向にスライド可能に支持するスライド支持部(図示省略)が設けられている。これにより、ヘッドガード41の高さ位置を、座部12に着座した子供の頭部の高さ位置に合わせて調整可能になる。
【0030】
ヘッドガード41は、前側に開放されたU字状をなしている。このヘッドガード41のU字内側の面(着座者側の面)には、ヘッドクッション部材42が、該U字内側の面に沿うように取り付けられている。ヘッドクッション部材42も、シートクッション部材31と同様の材料で構成される。本実施形態では、ヘッドクッション部材42も、EVAで構成されている。本実施形態では、ヘッドクッション部材42は、シートクッション部材31及び背クッション部材35とは異なり、支持部材を介すことなく、ヘッドガード41に直接取り付けられている。
【0031】
また、ヘッドガード41には、蛇腹式の日除け部材44を支持する日除け支持部材45が、左右方向に延びる軸回りに回動可能に取り付けられている(図1にのみ示す)。
【0032】
シートクッション支持部材32及び背クッション支持部材36は、シートクッション部材31及び背クッション部材35が直射日光により収縮したりこれらクッション部材31,35の端部が反シート本体11側に捲れるように反ったりするのを抑制するためのものである。
【0033】
図2に示すように、チャイルドシート10には、座部12に着座した子供を拘束するシートベルト装置50が設けられている。本実施形態では、シートベルト装置50は、5点式のシートベルト装置である。シートベルト装置50は、座部12に着座した子供の両肩をそれぞれ拘束する左右一対の肩ベルト51と、該子供の腰部を拘束する左右一対の腰ベルト52と、該子供の股間を通る股ベルト53と、バックル55とを有する。
【0034】
股ベルト53は、突出部21に固定された下端部からフロントカバー22の後側を通って上側に延びており、股ベルト53の上端部にバックル55が取付固定されている。
【0035】
左右一対の肩ベルト51は、ヘッドガード41に設けられた左右一対の肩ベルト孔41bから前側にそれぞれ露出している。左右の肩ベルト51の前側に露出している部分の大部分は、不図示の肩ベルトカバーによりそれぞれ覆われている。
【0036】
左側の肩ベルト51は、左側の肩ベルト孔41bから下側に延びて、第1タング56のベルト挿通孔を通り、このベルト挿通孔を通った後は、左側の腰ベルト52とされる。右側の肩ベルト51は、右側の肩ベルト孔41bから下側に延びて、第2タング57のベルト挿通孔を通り、このベルト挿通孔を通った後は、右側の腰ベルト52とされる。左側の腰ベルト52は、第1タング56から左側かつ下側に延びて、シートクッション部材31の左側側方を通った後に止め具(図示省略)により座部12に固定される。右側の腰ベルト52は、第2タング57から右側かつ下側に延びて、シートクッション部材31の右側側方を通った後に止め具(図示省略)により座部12に固定される。
【0037】
第1タング56及び第2タング57は、股ベルト53の上端部に固定されたバックル55に連結固定される。すなわち、股ベルト53は、バックル55を介して左右の肩ベルト51(及び左右の腰ベルト52)と連結可能に構成されている。
【0038】
また、シートベルト装置50は、左右の肩ベルト51の途中にチェストクリップ59をそれぞれ有する。チェストクリップ59は雄雌構造であり、例えば左側が雄部であり、右側が雌部である。チェストクリップ59は、座部12に着座した子供の胸部を拘束する。
【0039】
図4及び図5に示すように、シートクッション支持部材32は、シートクッション部材31に取り付けられている。具体的には、シートクッション部材31の外周端部の全周には、座部12側(シート本体11側)に折り返される断面略U字状の折返し部31aが設けられている。シートクッション支持部材32の外周端部の全周には、折返し部31aに挿入される挿入部32aが形成されている。この挿入部32aが折返し部31aに挿入されることによって、シートクッション支持部材32がシートクッション部材31に取り付けられる。シートクッション部材31は柔らかいので、折返し部31aを捲りあげることができるとともに、シートクッション支持部材32はある程度変形させることができるので、挿入部32aを折返し部31aに挿入することができる。シートクッション支持部材32の挿入部32aの折返し部31aへの挿入量は、挿入し易く、かつ、シートクッション部材31の成型時の寸法にばらつきがあったとしても挿入部32aが折返し部31aから抜けないような量に設定される。
【0040】
本実施形態では、シートクッション支持部材32は、軽量化のために、格子状に成形されている。但し、このようにする必要はなく、適宜肉抜きを設ければよい。また、シートクッション部材31の収縮や反りを抑制できれば、シートクッション支持部材32はどのような形状であってもよく、どのような材料で構成されていてもよい。
【0041】
シートクッション支持部材32の下面の前端部における左右方向中央部には、僅かに下側に延びた後に前側に延びる前側係合部32bが設けられている。また、シートクッション支持部材32の下面の後側部分における左右両側の部分には、下側に延びる2つの後側係合部32cが設けられている。
【0042】
一方、座部12の前側部分における左右方向の中央部には、前側係合部32bの全体が嵌まる凹部12a(図3参照)が形成されているとともに、その凹部12aの前側壁部に、前側係合部32bの先端部が挿入される前側係合孔12b(図6参照)が形成されている。また、座部12の後側部分における2つの後側係合部32cに対応する位置には、後側係合部32cが挿入される後側係合孔12cが、座部12を上下方向に貫通するように形成されている。
【0043】
シートクッション部材31に取り付けられたシートクッション支持部材32を座部12に取り付けるには、まず、シートクッション支持部材32の前側が後側よりも低くなるように斜めにして、前側係合部32bを凹部12aに嵌める。その状態で前側係合部32bを前側にスライドさせることで、前側係合部32bの先端部を、前側係合孔12bに挿入して前側係合孔12bの上側壁部に当接係合させる(図6参照)。続いて、後側係合部32cを後側係合孔12cに挿入して、後側係合部32cの先端部を座部12の下面における後側係合孔12cの縁部に係合させる。
【0044】
座部12(シート本体11)に取り付けられたシートクッション部材31の下面(シート本体11側の面)の一部(本実施形態では、折返し部31aの下面の略全体)は、座部12の上面に接触している。これにより、自転車100の走行時に、シートクッション部材31が振動するのを抑制することができ、この振動による異音の発生を抑制することができる。尚、シートクッション部材31の下面において座部12の上面に接触する部分は、折返し部31a以外の部分であってもよい。この場合、シートクッション部材31は、例えば、シートクッション部材31の下面に、シートクッション支持部材32の格子の孔等を貫通して座部12の上面に接触する突状部を有する。
【0045】
図7図9に示すように、背クッション支持部材36は、背クッション部材35に取り付けられている。具体的には、背クッション部材35の左右両側の端部(周方向の互いに離れた2箇所)には、背凭れ部14側(シート本体11側)に折り返される断面略U字状の折返し部35aが設けられている。背クッション支持部材36の左右両側の端部には、折返し部35aに挿入される挿入部36aが形成されている。これら左右の挿入部36aが左右の折返し部35aにそれぞれ挿入されることによって、背クッション支持部材36が背クッション部材35に取り付けられる。シートクッション支持部材32の挿入部32aの折返し部31aへの挿入量と同様に、背クッション支持部材36の挿入部36aの折返し部35aへの挿入量は、挿入し易く、かつ、背クッション部材35の成型時の寸法にばらつきがあったとしても挿入部36aが折返し部35aから抜けないような量に設定される。
【0046】
本実施形態では、背クッション支持部材36も、軽量化のために、格子状に成形されている。但し、このようにする必要はなく、適宜肉抜きを設ければよい。また、背クッション部材35の収縮や反りを抑制できれば、背クッション支持部材36はどのような形状であってもよく、どのような材料で構成されていてもよい。さらに、本実施形態では、背クッション支持部材36の中央部には、矩形状の孔36bが形成されて、この孔36bに、背クッション部材35の後面の中央部に膨出形成された膨出部35bが挿入される。これは、背クッション部材35をできる限り薄くしながら背クッション部材35の特に中央部のクッション性を確保するためである。但し、そのクッション性に問題がなければ、背クッション部材35の後面に膨出部35bを形成する必要はなく、背クッション支持部材36に孔36bを形成する必要もない。
【0047】
背クッション支持部材36の後面の下側部分における左右両側の部分には、下側に向かって後側に斜めに延びる2つの下側係合部36cが設けられている。また、背クッション支持部材36の後面の上側部分における左右両側の部分には、後側に延びる2つの上側係合部36dが設けられている。
【0048】
一方、背凭れ部14の下側部分には、左右方向に延びる下側係合孔14aが形成されている。この下側係合孔14aは、背凭れ部14における下側係合孔14aよりも上側部分が下側部分に対して後側にずれていることで、形成されたものである。この下側係合孔14aの左右両側の部分に、2つの下側係合部36cを上側から差し込むことができるようになっている。このとき、下側係合部36cが背凭れ部14における下側係合孔14aよりも上側部分の下端部に押されて下向きに撓むことで、該下端部に下側係合部36cが係合する。また、背凭れ部14の上側部分における2つの上側係合部36dに対応する位置には、上側係合部36dが挿入される上側係合孔14bが、背凭れ部14を前後方向に貫通するように形成されている。
【0049】
背クッション部材35に取り付けられた背クッション支持部材36を背凭れ部14に取り付けるには、まず、下側係合部36cを下側係合孔14aに上側から差し込んで背凭れ部14における下側係合孔14aよりも上側部分の下端部に係合させる。続いて、上側係合部36dを上側係合孔14bに挿入して、上側係合部36dの先端部を背凭れ部14の後面における上側係合孔14bの縁部に係合させる。
【0050】
シートクッション部材31と同様に、背凭れ部14(シート本体11)に取り付けられた背クッション部材35の後面(シート本体11側の面)の一部(本実施形態では、折返し部35aの後面の略全体)は、背凭れ部14の前面に接触している。これにより、自転車100の走行時に、背クッション部材35が振動するのを抑制することができ、この振動による異音の発生を抑制することができる。尚、折返し部35aの後面が背凭れ部14の前面に接触することに代えて、又は、加えて、背クッション部材35の膨出部35bが、背凭れ部14の前面に接触するようにしてもよい。
【0051】
図10に示すように、バック部13(本実施形態では、ヘッド部15)の後面における上端部近傍には、内部にLEDを含むテールライトユニット61が取り付けられている。このテールライトユニット61の後面が赤色に光るようになっている。
【0052】
テールライトユニット61の前面には、テールライトユニット61をヘッド部15の後面に取り付けるための取付けクリップ62が設けられている。この取付けクリップ62は、ヘッド部15を前後で挟む前側部62aと後側部62bとを有し、後側部62bの後面にテールライトユニット61が固定されている。
【0053】
前側部62a及び後側部62bは、下側に開口する逆U字状の形状をなす連結部62cで互いに連結されている。連結部62cは、ヘッド部15に設けられた貫通孔15aに挿入されており、前側部62aはヘッド部15の前側に位置する一方、後側部62bは、テールライトユニット61と共にヘッド部15の後側に位置する。前側部62aは、貫通孔15aの後側から貫通孔15aに挿入されて、ヘッド部15の前側に位置する。
【0054】
前側部62aの下端部及び上下方向中間部には、ヘッド部15の前面に設けられた係合凹部15bと係合する係合突起部62dがそれぞれ設けられている。また、後側部62bの上下方向中間部の2箇所にも、ヘッド部15の後面に設けられた係合凹部15cと係合する係合突起部62eがそれぞれ設けられている。前側部62aが貫通孔15aに挿入されてヘッド部15の前側に位置したときには、前側部62aと後側部62bとの間隔が挿入前に比べて大きくなり、これにより、前側部62a及び後側部62bには、互いに近接する力が作用する。この力によって、係合突起部62d,62eが係合凹部15b,15cと確実に係合して、取付けクリップ62(つまりテールライトユニット61)がヘッド部15に強固に固定される。
【0055】
図2に示すように、チャイルドシート10には、座部12に着座した子供が握るグリップバー71が設けられている。グリップバー71は、左右方向に延びている。グリップバー71の左右方向両側の端部は、左右両側の側壁部19の前端部にそれぞれ連結されている。
【0056】
グリップバー71の両端部は、左右の側壁部19に対してそれぞれ着脱自在に構成されている。グリップバー71の一端部(本実施形態では、左側端部)は、ユーザ(通常は子供の親であって自転車100の乗員である)が子供を座部12に着座させる前に容易に外れるように、左側端部において径方向に互いに対向するように設けられた2つの操作ボタン72(図11参照)の押圧により左側の側壁部19から外れるようになっている。
【0057】
図11に示すように、グリップバー71の左側端部が左側の側壁部19から外れると、その外れた左側端部が他端部(右側端部)の下側に位置するように、グリップバー71をその右側端部を中心にして回動させることができ、これにより、ユーザが子供を座部12に着座させる際にグリップバー71が邪魔になることはない。
【0058】
一方、グリップバー71の右側端部は、右側の側壁部19から外すことはできるものの、容易には外せない構成になっている。すなわち、グリップバー71の右側端部には、2つの操作ボタン72の代わりに、2つの挿入孔73が設けられている。各挿入孔73の径は、ユーザや子供の指が入らないほどの非常に小さい径である。各挿入孔73に、径が小さい棒状部材74(図13参照)を挿入して後述のピン部材77を押圧することで、グリップバー71の右側端部が右側の側壁部19から外れるようになっている。棒状部材74は、各挿入孔73に挿入してピン部材77を押圧できるものであれば、どのようなものであってもよい。棒状部材74は、例えば治具として作製したものであってもよい。
【0059】
図12及び図13により、グリップバー71の右側端部の詳細な構成について説明する。
【0060】
右側の側壁部19の前端部には、取付部材75を介して筒状部材76が前側に突出するように固定されている。取付部材75は、2つの部材75a,75bで構成され、これら2つの部材75a,75bにより右側の側壁部19の前端部を挟むようにして、取付部材75が右側の側壁部19の前端部に固定される。筒状部材76は、一方の部材である部材75aに固定されている。
【0061】
筒状部材76の突出先端部(前端部)は閉塞されている。筒状部材の突出先端部の近傍における外周壁部の径方向に対向する2箇所には、径方向に貫通する貫通孔76aがそれぞれ形成されている。これら2つの貫通孔76aには、ピン部材77がそれぞれ嵌合しており、これらピン部材77は、筒状部材76の内部に配置された略V字状の板バネ部材78によって、筒状部材76の外周壁部よりも径方向外側に突出するように付勢されている。
【0062】
グリップバー71の右側端部は、筒状部材76に外嵌合する嵌合部材81で構成されている。嵌合部材81は、嵌合部材81の端面に開口しかつ筒状部材76と嵌合する嵌合孔81aを有している。嵌合孔81aの径は、筒状部材76の外周壁部の外径と略同じである。嵌合孔81aの奥側には、筒状部材76の外周壁部よりも径方向外側に突出した2つのピン部材77がそれぞれ収容されるように、嵌合孔81aの内周面よりも径方向外側に広がる2つのピン収容空間81bが設けられている。図12に示すように、2つのピン収容空間81bに2つのピン部材77がそれぞれ収容されているときには、各ピン部材77が各ピン収容空間81bの嵌合孔81a側の壁部に引っ掛かって、筒状部材76が嵌合孔81aから抜けることはない。すなわち、グリップバー71の右側端部を筒状部材76(つまり右側の側壁部19)から外すことはできない。
【0063】
2つの挿入孔73は、嵌合部材81において2つのピン収容空間81bにそれぞれ連通するように形成されている。図13に示すように、各挿入孔73に棒状部材74を挿入してピン部材77を押圧することによって、ピン部材77を貫通孔76aに押し込めることができる。これにより、グリップバー71の右側端部を筒状部材76から外すことができるようになる。
【0064】
グリップバー71の右側端部を右側の側壁部19(筒状部材76)に取り付けるには、グリップバー71の右側端部を構成する嵌合部材81を筒状部材76に外嵌合させるだけでよい。このとき、筒状部材76の外周壁部よりも径方向外側に突出した2つのピン部材77は、嵌合部材81の端面における嵌合孔81aの周縁部に設けられたテーパ面81cによって貫通孔76aに押し込められ、これにより、筒状部材76が嵌合孔81a内に挿入可能になる。そして、挿入完了の直前でピン部材77がピン収容空間81bに突出する。したがって、グリップバー71の右側端部の、右側の側壁部19への取付けは容易に行える。
【0065】
左側の側壁部19の前端部にも、右側の側壁部19と同様に、筒状部材76が取付部材75を介して固定されている。左側の側壁部19の筒状部材76も、貫通孔76aを介してピン部材77が筒状部材76の外周壁部よりも径方向外側に突出している。
【0066】
グリップバー71の左側端部も、操作ボタン72以外はグリップバー71の右側端部と同様の構成である。すなわち、グリップバー71の左側端部を構成する嵌合部材82において、嵌合部材81の挿入孔73に相当する部分に操作ボタン72が設けられており、操作ボタン72の押圧により、ピン部材77を押圧して貫通孔76aに押し込めることができる。また、グリップバー71の左側端部を左側の側壁部19に取り付けるには、グリップバー71の右側端部と同様に、グリップバー71の左側端部を構成する嵌合部材82を筒状部材76に外嵌合させるだけでよい。したがって、グリップバー71の左側端部の、左側の側壁部19に対する取付け及び取外しは共に容易に行える。よって、ユーザが子供を座部12に着座させる際の手間が軽減される。
【0067】
本実施形態では、シートクッション部材31の下面にシートクッション支持部材32が取り付けられ、背クッション部材35の後面に背クッション支持部材36が取り付けられているので、シートクッション部材31及び背クッション支持部材36が、直射日光を長時間受けたとしても、収縮したり、クッション部材31,35の端部が反シート本体11側に捲れるように反ったりすることはない。
【0068】
また、シートクッション部材31がシートクッション支持部材32を介してシート本体11の座部12に取り付けられ、背クッション部材35が背クッション支持部材36を介してシート本体11のバック部13の背凭れ部14に取り付けられるので、シートクッション部材31及び背クッション部材35を、シート本体11から外れ難いようにシート本体11に取り付けることが容易にできる。
【0069】
さらに、シートクッション支持部材32の挿入部32aをシートクッション部材31の折返し部31aに挿入し、背クッション支持部材36の挿入部36aを背クッション部材35の折返し部35aに挿入することによって、簡単な構成で、シートクッション部材31がシートクッション支持部材32から外れ難くすることができるとともに、背クッション部材35が背クッション支持部材36から外れ難くすることができる。また、挿入部32a,36aの折返し部31a,35aへの挿入により、シートクッション部材31及び背クッション部材35の収縮や反りを効果的に抑制することができる。
【0070】
本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0071】
例えば、前記実施形態では、シートクッション部材31がシートクッション支持部材32を介してシート本体11の座部12に取り付けられ、背クッション部材35が背クッション支持部材36を介してシート本体11のバック部13の背凭れ部14に取り付けられていたが、シートクッション支持部材32が取り付けられたシートクッション部材31が座部12に直接取り付けられ、背クッション支持部材36が取り付けられた背クッション部材35が背凭れ部14に直接取り付けられてもよい。
【0072】
また、シートクッション部材31及び背クッション部材35以外のクッション部材のシート本体11側の面に、該クッション部材を支持する支持部材が取り付けられていてもよい。例えばヘッドクッション部材42にヘッドクッション支持部材が取り付けられてもよい。この場合、ヘッドクッション部材42がヘッドクッション支持部材を介してヘッドガード41(シート本体11と見做すことができる)に取り付けられることが好ましい。また、左右両側の側壁部19の着座者側の面にサイドクッション部材がそれぞれ取り付けられる場合において、これらサイドクッション部材のシート本体11側の面に、サイドクッション支持部材が取り付けられてもよい。この場合、サイドクッション部材がサイドクッション支持部材を介して側壁部19に取り付けられることが好ましい。
【0073】
また、前記実施形態では、自転車100の荷台125上に取り付けられるチャイルドシート10のクッション部材について説明したが、例えばハンドル107に取り付けられるチャイルドシートのクッション部材に、支持部材が取り付けられていてもよい。
【0074】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、自転車に取り付けられる自転車用チャイルドシート、及び、この自転車用チャイルドシートが取り付けられる自転車に有用である。
【符号の説明】
【0076】
10 自転車用チャイルドシート
11 シート本体
12 座部
13 バック部
31 シートクッション部材
31a 折返し部
32 シートクッション支持部材
32a 挿入部
35 背クッション部材
35a 折返し部
36 背クッション支持部材
36a 挿入部
100 自転車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13