(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】装身具の製造方法及びこの方法により製造される装身具
(51)【国際特許分類】
A44C 27/00 20060101AFI20240419BHJP
A44C 25/00 20060101ALI20240419BHJP
A44C 9/00 20060101ALI20240419BHJP
A44C 7/00 20060101ALI20240419BHJP
A44C 1/00 20060101ALI20240419BHJP
A44C 5/02 20060101ALI20240419BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20240419BHJP
G02C 11/02 20060101ALI20240419BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A44C27/00
A44C25/00 A
A44C9/00
A44C7/00 A
A44C1/00
A44C5/02 F
A44C5/00 E
G02C11/02
G04B45/00 V
(21)【出願番号】P 2020035418
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501097798
【氏名又は名称】有限会社小林眼鏡工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓治
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸三
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-213694(JP,A)
【文献】中国実用新案第212325670(CN,U)
【文献】特開2008-114449(JP,A)
【文献】登録実用新案第3219486(JP,U)
【文献】独国実用新案第29617252(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2008/173045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 1/00-27/00
G02C 11/02
G04B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の少なくとも一部に孔又は溝が形成され、この孔又は溝に着色剤が充填されるとともに、前記本体の表面にメッキ層、塗装層、金属蒸着層を含む被覆層が形成された眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側又は時計ベルトを含む装身具の製造方法において、
液状又は半液状の前記着色剤を準備し、
前記孔又は溝の形状に一致させた形状の透明又は半透明のカバーを準備するとともに、前記孔又は溝の容積に基づいて前記カバーの肉厚及び前記着色剤の容量を予め設定し、
前記本体に前記被覆層を形成し、
前記孔又は溝に前記着色剤を充填し、
前記着色剤の上に前記カバーを被せ、充填する前記着色剤の容量と前記カバーの肉厚と
から、前記カバーの表面を前記孔又は溝の表面に対して予め設定された高さ位置に位置させ、
前記本体を加熱して前記着色剤を硬化させることで前記カバーを前記本体に対して固定したこと、
を特徴とする装身具の製造方法。
【請求項2】
前記カバーは、一枚のシート状部材に予め複数のカバー形状を配置し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成されることを特徴とする請求項1に記載の装身具の製造方法。
【請求項3】
前記カバーの少なくとも一方の面に
、予め光干渉機能を含む機能性のコーティング層を形成することを特徴とする請求項1に記載の装身具の製造方法。
【請求項4】
前記シート状部材
の少なくとも一方の面に、予め光干渉機能を含む機能性のコーティング層を形成し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成すること
、又は、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後に前記コーティング層を形成することを特徴とする請求項
2に記載の装身具の製造方法。
【請求項5】
前記シート状部材に文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを形成し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成すること又は前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後に前記文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを形成することを特徴とする請求項
2に記載の装身具の製造方法。
【請求項6】
前記着色剤が七宝風の模様を現出
するものであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の装身具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体の少なくとも一部に孔又は溝が形成され、この孔又は溝に例えば七宝風の模様などを現出することのできる着色剤が充填されるとともに、前記本体の表面にメッキ層、塗装層、金属蒸着層などの被覆層が形成された眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側又は時計ベルトなどの装身具の製造方法及びこの方法により製造される装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
着色剤の一種である七宝は、古来から伝統工芸品などに用いられており、特有のガラス質の透明感と質感があり、複雑に変化する微妙な色合いと光沢を有するという特徴がある。このような七宝風の模様(以下、「七宝模様」と記載する)を現出できる着色剤として、エポキシを主剤とする七宝風塗料が知られており、眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側又は時計ベルトなどどの装身具に利用されている。そして、このような七宝風塗料を用いることで、前記装身具に美観と優雅性とを付与することができる。
【0003】
このような七宝又は七宝風塗料の特性を活かして、メッキや塗装、金属蒸着などとともに装飾性を高めた製品の開発が種々行われている。
例えば、特許文献1には、金属板の表面に有線七宝、無線七宝又は透明七宝などで形状模様を形成した後に、七宝以外の金属露出面にニッケル、クロム、金、銀などのメッキを施した七宝焼製品が提案されている。
また、特許文献2には、表面金属板に切抜部を設け、この切抜部内に七宝が凹面をなすように又は前記切抜部から七宝が盛り上がるようにした装飾器物が提案されている。
さらに特許文献3には、金属製素地に凹凸模様をプレスや鍛造で形成し、銀メッキを施した後に前記凹凸模様の孔又は溝内に七宝釉を充填した七宝加工方法が提案されている。
【0004】
図7は、本発明の従来例にかかり、眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側又は時計ベルトなどの装身具1に七宝模様を形成する工程の一例を示す図である。各図においては本体を断面で示してある。
図7(a)に示すように、チタンやステンレスなどの金属で形成された装身具1の本体11には、形成しようとする七宝模様の形状に合わせて、その少なくとも一部に孔11aが形成されている。
次いで、
図7(b)に示すように、本体11の表面にメッキ層、塗装層、金属蒸着層などの被覆層12を形成する。
この後、
図7(c)に示すように、孔11a内に七宝風塗料13(以下、七宝13と記載する)を充填する。
【0005】
なお、特許文献3の七宝加工品のように、七宝13の表面を本体11の縁部11bから凹ませる場合は、孔11a内に充填する七宝13の量を少なくすればよく、七宝13を縁部11bから盛り上がらせるために、宝13の量を多くすればよい。
図7(e)に示すような七宝13の表面を本体11の縁部11bと面一にした装身具1を得るには、
図7(c)のように七宝13の表面が縁部11bから盛り上がるように孔11aに充填した後、
図7(d)に示すように七宝13の表面をグラインダGなどで研磨すればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-46391号公報
【文献】実開昭57-149199号公報
【文献】特開昭53-99216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、
図7(d)のように縁部11bから盛り上がる七宝13をグラインダGで研磨すると、縁部11bの表面に形成された被覆層12も研磨されてしまうという問題がある。
被覆層12にグラインダGが接触しないぎりぎりを見極めて七宝13を研磨すればよいが、このような加工は非常に困難で熟練を要する上、大量生産には不向きでコスト高になるという問題がある。
また、被覆層12を形成する工程(
図7(b)の工程)を七宝13の充填・研磨工程(
図7(c)(d)の工程)の後にすることも考えられるが、七宝13が被覆層12の形成時に高温に晒されると炭化・剥離しやすくなるという問題がある。例えば、本体11がチタンで形成されている場合において、その表面に電気メッキ法などでメッキ層を形成する場合は、メッキ後に本体11を200℃~400℃に加熱する熱処理(ベーキング)を行う必要があるが、このような高温で本体11を加熱すると七宝13が炭化・剥離するおそれがある。そのため、このような場合に、本体11に形成できる被覆層12は低温での形成が可能なものに限られ、装身具1の本体11の材質や外観のバリエーションが限定されるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような制限を解除し、七宝風塗料などの着色剤で着色された装身具の適用範囲を拡げること及びさらなる付加価値を付与することが可能な装身具の製造方法及びこの方法により製造される装身具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、本体の少なくとも一部に孔又は溝が形成され、この孔又は溝に着色剤が充填されるとともに、前記本体の表面にメッキ層、塗装層、金属蒸着層を含む被覆層が形成された眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側又は時計ベルトを含む装身具の製造方法において、液状又は半液状の前記着色剤を準備し、前記孔又は溝の形状に一致させた形状の透明又は半透明のカバーを準備するとともに、前記孔又は溝の容積に基づいて前記カバーの肉厚及び前記着色剤の容量を予め設定し、前記本体に前記被覆層を形成し、前記孔又は溝に前記着色剤を充填し、前記着色剤の上に前記カバーを被せ、充填する前記着色剤の容量と前記カバーの肉厚とから、前記カバーの表面を前記孔又は溝の表面に対して予め設定された高さ位置に位置させ、前記本体を加熱して前記着色剤を硬化させることで前記カバーを前記本体に対して固定した方法としてある。
【0010】
この方法では、メッキ層や塗装層、金属蒸着層などの被覆層を形成した本体の孔又は溝に着色剤を充填する。カバーは予め前記孔又は溝の形状に一致させた形状に形成されているので、前記着色剤の上に被せるように前記孔又は溝にカバーを嵌め込むことができる。嵌め込まれたカバーの表面は、前記孔又は溝に充填される前記着色剤の容量とカバーの肉厚とが予め設定されていることから、前記本体の表面に対して前記着色剤の容量とカバーの肉厚とに応じた高さ位置となる。被覆層が形成された前記本体の表面と面一の高さ位置とすることもできるし、僅かに凹ませた高さ位置とすることもできる。
なお、前記カバーを前記本体に対して固定する手段としては、前記カバーを孔又は溝に嵌め込むことによる物理的固定の他、着色剤又は着色剤に含まれる成分を接着剤として利用するもの、前記カバーの周縁及び/又は前記孔や溝の開口周縁に接着剤を塗布して接着するものなどを挙げることができる。
着色剤は、前記孔又は溝に充填し前記カバーを被せた後に加熱して硬化させるが、前記着色剤を硬化させるときの温度は50℃~120℃程度であるので、カバーはこの温度でも変形及び変質等しない材質のもの(例えばポリカーボネートやガラス)を選択する。
【0011】
前記カバーは、請求項2に記載するように、一枚のシート状部材に予め複数のカバー形状を配置し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成されるようにするとよい。このようにすることで本発明の装身具の自動生産及び大量生産が容易になる。
【0012】
請求項3に記載するように、前記カバーの少なくとも一方の面に、予め光干渉機能を含む機能性のコーティング層を形成してもよい。
例えば光干渉機能を有するコーティング層を形成することで、見る方向によって装身具の色が変化し、例えば着色剤として七宝風塗料を用いた場合に、七宝の持つ透明感と質感と相俟ってさらに美観や優美性を高めることができる。このようなカバーを用いることで、装身具にさらなる付加価値を付与することが可能になる。また、防護機能を有するコーティング層を形成することで、カバー表面の傷つきを防止することができる。
請求項4に記載するように、前記シート状部材の少なくとも一方の面に、予め光干渉機能を含む機能性のコーティング層を形成し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成するか、又は、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後に前記コーティング層を形成するようにしてもよい。
また、請求項5に記載するように、前記カバーには文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを形成するようにしてもよい。この場合も、前記シート状部材に文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを印刷、手書き又は刻印で形成して前記カバー形状に沿ってカバーを打ち抜き又は切り抜き形成するようにしてもよいし、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後、個々のカバーに前記文字、図形、模様又はこれらの組み合わせ(文字等)を印刷、手書き又は刻印で形成するようにしてもよい。
コーティング層とともに塗料などを使って印刷や手書きで文字等をカバーに形成する場合は、コーティング層と文字等を同じ面に形成してもよいし、一方の面にコーティング層を形成し、コーティング層を形成しない他方の面に文字等を形成するようにしてもよい。同じ面にコーティング層と文字等とを階層的に形成してもよく、コーティング層が文字層の下であっても上であってもよい。
【0013】
前記着色剤(有色及び無色を含む)としては、本発明の方法が適用できるものであればその種類は問わず、樹脂や塗料などであってもよく、請求項6に記載するように七宝風の模様を現出できる塗料としてもよい。
【0014】
本発明の方法によって形成可能な装身具は、眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側及び時計ベルトを含む装身具であって、表面にメッキ層、塗装層又は金属蒸着層を含む被覆層が形成された装身具の本体と、この本体の少なくとも一部に形成された孔又は溝と、この孔又は溝に充填された着色剤と、この着色剤の上に被せて取り付けられた透明又は半透明のカバーとを有するものである。
また、前記カバーには防護機能や光干渉機能などの機能性コーティング層が形成されていてもよく、前記カバーには文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを形成してもよい。
さらに、前記着色剤は七宝風の模様を現出する塗料であってもよい。
着色剤として七宝風塗料を用い、前記カバーに光干渉機能を有するコーティング層を形成することで、前記七宝風塗料と相俟って、見る方向によって装身具の色が変化する美観と優美性の高い付加価値の高い装身具を得ることが可能になる。また、防護機能を有するコーティング層を形成することで、カバー表面の傷つきにくい装身具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第一の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の装身具の製造方法を説明する概略図で、装身具を構成する本体の断面図、
図2(a)は、本発明の製造方法の手順を説明する流れ図、
図2(b)(c)(d)はカバーにコーティング層を形成する場合の本発明の別の製造方法の手順を説明する(a)のA部の部分的な流れ図、
図3は、シート部材にカバーの型取りの線を形成した部分斜視図、
図4は、この実施形態の装身具の構成を説明する一部を破断した分解斜視図である。
【0016】
図1(a)に示すように、装身具1の本体11には、着色剤である七宝13を充填するための有底の孔(凹部)11aが予め形成されている(
図2(a)のステップS1)。
また、
図2(a)に示すように、上記した本体11を準備するほか、孔11aに充填する七宝13を準備する(
図2(a)のステップS2)。また、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂又はガラスなどで形成された透明又は半透明のシート状部材を準備する(同S3)。なお、七宝13を硬化させる際には、本体11を50℃~120℃で3時間程度加熱することから、前記シート部材はこのような加熱下でも変形や変質しないもの、例えば、ポリカーボネートやガラスなどで形成されたものを選択する。
着色剤としての七宝13は、加熱硬化前は液状又は半液状のもので、例えば七宝模様のアクセサリを作成する際に使用される市販のものを使用することができる。七宝13に金属粉などを添加するなどして、ラメ模様が七宝13の表面に表れるようにしてもよい。
【0017】
カバー14は、孔11aの形状に合わせて一つずつ形成する個別形成としてもよいが、
図3(a)に示すように、シート状部材Sに孔11aの形状に合わせてカバー14の型取り線14′を複数形成し(同S4)、この型取り線14′に沿ってカバー14を打ち抜き形成又は切り抜き形成する(同S5)ことで、一枚のシート部材Sからカバー14を効率良く短時間で大量に形成することができ、コスト的に有利である。
また、
図3(a)(b)に示すように、カバー14の表面又は裏面若しくは表裏両面には、防護機能や光干渉機能などの機能を有するコーティング層Saや、印刷、手書、刻印などによる文字、図形、模様又はこれらの組み合わせ(図示の例ではTOKYOの文字:以下、文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを総称して「文字等Sb」と記載する)を形成してもよい。
例えば防護機能を有するコーティング層Saをカバー14に形成することで、カバー14の傷つきを抑制することができる。また、光干渉機能を有するコーティング層Saをカバー14に形成することで、見る方向から色が変化する装身具1を得ることができる。このような光干渉機能を有するコーティング層Saを形成すれば、前記七宝風塗料と相俟って、見る方向によって装身具の色が変化する美観と優美性の高い付加価値の高い装身具1を得ることができる。
また、文字等Sbを形成することで、装身具1に広告性を担持させたり、装身具1の装飾性を高めたりすることができる。
【0018】
コーティング層Saをカバー14に形成するには、
図2(b)に示すように、
図2(a)のAの工程において、シート状部材Sを準備する工程(S3)の後であって、カバー14の型取り線14′を形成する工程(S4)の前に、シート状部材Sにコーティング層Saを形成する工程(S3′)を設けてもよいし、
図2(c)に示すように、
図2(a)のAの工程において、カバー14の型取り線14′を形成する工程(S4)の後であって、型取り線14′に沿ってカバー14を切り抜き又は打ち抜く工程(S5)の前に、シート状部材Sにコーティング層Saを形成する工程(S4′)を設けてもよい。
さらに、
図2(d)に示すように、
図2(a)のAの工程において、型取り線14′に沿ってカバー14を切り抜き又は打ち抜く工程(S5)の後に、カバー14のそれぞれにコーティング層Saを形成する工程(S5′)を設けてもよい。またさらに、特に図示はしないが、予めコーティング層Saが形成されたシート状部材Sを購入して準備するようにしてもよい。
また、文字等Sbは刻印の他、UV塗料などの塗料を用いた印刷や手書きによって形成することができる。印刷や手書きで文字等Sbを形成する工程は、コーティング層Saを形成する前であっても後であってもよい。すなわち、文字等はコーティング層Saの上であってもよいし下であってもよい。さらに、カバー14の一面にコーティング層Saを形成し、コーティング層Saを形成しない他面に文字等Sbを形成するようにしてもよい。
なお、文字等を刻印によって形成する場合は、文字等Sbを形成した後にコーティング層を形成するのが好ましい。
なお、文字等の形成においても、コーティング層Saの場合と同様に、シート状部材Sに文字等Sbを形成した後に、カバー形状に沿ってカバー14を打ち抜き又は切り抜き形成するようにしてもよいし、カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後、個々のカバー14に文字等Sbを形成するようにしてもよい。
【0019】
七宝13は、孔11aの内容積に合わせて予め計量を行い、一定容量ずつ孔11aに供給できるようにしておく(同S6)。七宝13の容量は、七宝13の加熱硬化前後の膨張率又は収縮率を考慮し、孔11aの内容積からカバー14の体積(孔11aの断面積×カバー14の肉厚)を差し引いた容積を基準として決定するとよい。このようにすることで、本体11の縁部11bに対する孔11aに嵌め込んだカバー14の高さ位置を調整することができる。
例えば、加熱硬化の前後で七宝13が膨張又は収縮しない場合(七宝13の容量が変化しない場合)において、七宝13の容量を孔11aの容積からカバー14の体積を差し引いた容積と同じとすれば、カバー14の表面を縁部11bと同一の面内に位置させることができる。
【0020】
次に、
図1(b)に示すように、本体11の表面に、公知の方法でメッキ層、塗装層、金属蒸着層などの被覆層12を形成する(同S7)。例えば本体11がチタンで形成されている場合に、その表面に電気メッキ法でメッキ層を形成する場合は、電気メッキ後に200℃~400℃に加熱して加熱処理(ベーキング)を行う。
【0021】
この後、
図1(c)に示すように、予め計量された容量の七宝13を孔11a内に充填し(同S8)、
図1(d)及び
図4に示すようにカバー14を孔11aに嵌め込んで七宝13の上に被せる(同S9)。この状態で本体11を50℃~120℃で3時間程度加熱し、七宝13を硬化させる。着色剤が七宝の場合、七宝が接着剤として作用し、カバー14と七宝13とが接着されるので、これによってカバー14が本体11に固定される(同S10)。
七宝13の加熱硬化後は、必要に応じて洗浄や磨きなどの仕上げを施し(同S11)、
図1(e)に示すような装身具1が完成する(同S12)。
【0022】
[他の実施形態]
図5及び
図6は本発明の装身具1の他の実施形態を示す図で、(a)は本体の一部を破断した拡大分解斜視図、(b)は(a)のI-I方向断面図、
図6は本発明の装身具のさらに別の実施形態で、本体の断面拡大図である。
図5の装身具は、円柱状の本体11の側面に凹状の孔11aを形成し、この孔11a内に七宝13を充填してカバー14を嵌め込んでいる。カバー14は、本体11の側面に沿うように円弧状に形成するのが好ましい。
図6の装身具は、本体11に貫通状の孔11a′が形成されていて、その両側からカバー14が嵌め込まれている。本体11の表と裏とでカバー14に異なるコーティング層Saや異なる文字等Sbを形成してもよいし、表と裏とでカバー14の形状(すなわち孔11a′の開口形状)を異ならせてもよい。
なお、
図6の例では、表裏両面側のカバー14を、縁部11bよりも僅かに凹ませて位置させている。
【0023】
本発明は上記のように構成されているので、表面にメッキ層や塗装層、金属蒸着層などの被覆層が形成された本体11に、七宝などの着色剤によって模様を付した装身具1、カバー14を被せることでさらに多様性を付与した装身具1を高品質かつ低コストで製造することが可能になる。
さらに予め設定された容量の着色剤を本体11の孔11a内に自動充填し、予め設定された形状に形成されたカバーを例えばエア吸引のハンド部を備えたカバー搬送装置で本体11まで搬送して孔11a内に嵌め込むようにすることで、自動生産及び大量生産が可能になり、美観と優雅性とを併せ持ち高級感のある装身具をより安価かつ低コストで製造することが可能なる。
【0024】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、上記の説明で本体11は金属であるとして説明したが、本発明は樹脂、セラミック、木、竹など金属以外の材料で形成された本体11を有する装身具にも適用が可能である。
また、着色剤も七宝13に限らず樹脂塗料や漆(人工漆を含む)など他の着色剤も使用が可能である。また、着色剤は有色に限らず無色であってもよい。なお、七宝13を用いる場合は、上記したように七宝13が接着剤として作用してカバー14を本体11に固定することができるが、カバー14を本体11に対して固定する他の手段としては、カバー14を孔又は溝の開口部分に嵌め込んで物理的に固定する手段、着色剤又は着色剤に含まれる成分を接着剤として利用する手段、カバー14の周縁及び/又は前記孔又は溝の開口周縁に接着剤を塗布して固定する手段などを挙げることができる。
さらに、本体11には有底の孔11a又は貫通状の孔11a′を形成するものとして説明したが、孔11a,11a′の代わりに溝を形成してもよい。
また、上記の説明でカバー14の表面、裏面又は表裏両面にはコーティング層Saや文字等Sbを形成するものとして説明したが、コーティング層Saや文字等Sbは必ずしもカバー14に形成する必要はなく、また、コーティング層Saのみ又は文字等Sbのみをカバー14の表面、裏面又は表裏両面に形成するものとしてもよい。
さらに装身具の一例として眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側及び時計ベルトを挙げたが、本発明はこれ以外の装身具にも広範に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の装身具の製造方法の一実施形態にかかり、装身具の製造工程を説明する図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の製造方法の手順を説明する流れ図、
図2(b)(c)(d)はカバーにコーティング層を形成する場合の本発明の別の製造方法の手順を説明する(a)のA部の部分的な流れ図
【
図3】シート部材にカバーの型取りの線を形成した部分斜視図である。
【
図4】この実施形態の装身具の構成を説明する一部を破断した分解斜視図である。
【
図5】本発明の装身具1の他の実施形態を示す図で、(a)は装身具の一部を破断した拡大分解斜視図、(b)は(a)のI-I方向断面図である。
【
図6】本発明の装身具1のさらに別の実施形態を示す図で、本体の断面拡大図である。
【
図7】本発明の従来例にかかり、装身具の製造工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
1 装身具
11 本体
11a 孔
11b 縁部
12 被覆層
13 七宝(着色剤)
14 カバー
14′ カバー型取り線
S シート状部材
Sa コーティング層(機能層)
Sb 文字等