(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】光学フィルタ、赤外線センサ及び発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240419BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G02B5/22
G01J1/02 H
(21)【出願番号】P 2023500797
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005316
(87)【国際公開番号】W WO2022176769
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2021025009
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 達郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏希
(72)【発明者】
【氏名】栗副 直樹
(72)【発明者】
【氏名】澤 亮介
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195183(WO,A1)
【文献】特開2004-240289(JP,A)
【文献】特開昭63-073203(JP,A)
【文献】特開2015-196622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G01J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に対する溶解度が0.4g/100g-H
2O以下である無機物質によって構成されたマトリックスと、
前記マトリックス内に分散された波長選択吸収材料と、
を備える光学フィルタであって、
前記光学フィルタは0.8μm~20μmの対象波長帯域におけるいずれかの帯域の波長を有する光成分を吸収し、
空気中で100℃から10℃/分の速度で加熱した場合において、前記波長選択吸収材料の質量減少率が10質量%となる温度は900℃以下であり、
前記マトリックスの真密度に対する前記光学フィルタの見掛け密度は70%以上であり、
前記対象波長帯域において、前記光学フィルタの厚さ1mmあたりの直線透過率が30%以上である波長帯域幅は50nm以上である、光学フィルタ。
【請求項2】
前記質量減少率が10質量%となる温度は600℃以下である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記質量減少率が10質量%となる温度は300℃以下である、請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記マトリックスを構成する無機物質は、フッ化物、酸化物及び酸化水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
3μm~10μmの対象波長帯域において、前記直線透過率が30%以上である波長帯域幅は300nm以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
3μm~10μmの対象波長帯域において、前記直線透過率が1%以下である波長帯域幅は300nm以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
3μm~10μmの対象波長帯域において、前記直線透過率が30%以上である波長帯域幅は300nm以上であり、前記直線透過率が1%以下である波長帯域幅は300nm以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記無機物質はフッ化リチウムを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記無機物質はフッ化物を含み、前記波長選択吸収材料はフッ素樹脂を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
8μm~20μmの波長帯域全体において、前記直線透過率は10%以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の光学フィルタを備える、赤外線センサ。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の光学フィルタを備える、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタ、赤外線センサ及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線センサは、例えば炎センサ又は人感センサに使用されている。このような赤外線センサは、炎又は人などから発せられる特定の波長を有する赤外線を受光することで炎又は人の存在を検知している。しかしながら、赤外線センサは、上記検知対象以外の物から発せられ、上記検知対象とは異なる波長の光成分も検知する。したがって、ノイズの原因となる光成分を除去するため、赤外線センサには、特定波長の赤外線のみを選択的に透過する光学フィルタが用いられている。
【0003】
このような光学フィルタとして、特許文献1には、樹脂と、樹脂中に均一分散され、赤外線に対して特定の波長帯域のみを選択的に透過する無機化合物粒子とを含む、粒子分散型複合赤外線バンドパスフィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
従来技術では、樹脂と無機化合物粒子との組み合わせを選択することにより、透過波長帯域の選択範囲が広いバンドパスフィルタを容易に製造することを特徴としている。しかしながら、樹脂は紫外線に曝されたりすることによって劣化することが知られている。そのため、従来のバンドパスフィルタでは、時間の経過によって光学特性が変化するおそれがあり、使用場所などが限定されるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、無機物質によって構成されたマトリックスを備える耐久性に優れた光学フィルタ、赤外線センサ及び発光装置を提供することにある。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る光学フィルタは、水に対する溶解度が0.4g/100g-H2O以下である無機物質によって構成されたマトリックスと、マトリックス内に分散された波長選択吸収材料とを備えている。光学フィルタは、0.8μm~20μmの対象波長帯域におけるいずれかの帯域の波長を有する光成分を吸収する。空気中で100℃から10℃/分の速度で加熱した場合において、波長選択吸収材料の質量減少率が10質量%となる温度は900℃以下である。マトリックスの真密度に対する光学フィルタの見掛け密度は70%以上である。対象波長帯域において、光学フィルタの厚さ1mmあたりの直線透過率が30%以上である波長帯域幅は50nm以上である。
【0008】
本発明の第二の態様に係る赤外線センサは、上記光学フィルタを備える。
【0009】
本発明の第三の態様に係る発光装置は、上記光学フィルタを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る赤外線センサの一例を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、実施例1及び参考例1に係る試験サンプルを透過法で測定した赤外線スペクトルである。
【
図7】
図7は、実施例2~実施例6及び参考例2に係る試験サンプルを透過法で測定した赤外線スペクトルである。
【
図8】
図8は、
図7の一部を拡大した赤外線スペクトルである。
【
図9】
図9は、実施例2、実施例7及び参考例2に係る試験サンプルを透過法で測定した赤外線スペクトルである。
【
図11】
図11は、PTFE粉末及びPVDF粉末をATR法によって測定した赤外線スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係る光学フィルタ、赤外線センサ、発光装置及び光学フィルタの製造方法について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0012】
[光学フィルタ]
本実施形態の光学フィルタ1は、
図1に示すように、マトリックス10と、波長選択吸収材料20とを備えている。
【0013】
マトリックス10は無機物質によって構成されている。そのため、樹脂を使用した場合と比較し、マトリックス10が時間の経過によって劣化しにくく、赤外線の透過性の高い光学フィルタ1を得ることができる。
【0014】
マトリックス10を構成する無機物質の水に対する溶解度は0.4(g/100g-H2O)以下である。無機物質の水に対する溶解度が上記の値以下であることにより、高湿環境下又は水中環境下であっても、光学フィルタ1を安定的に使用することができる。なお、溶解度は、1atmかつ25℃の条件で測定したものである。溶解度の単位である「g/100g-H2O」は、100gの水に溶解する無機物質の質量を意味する。
【0015】
マトリックス10を構成する無機物質は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属及び半金属からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を含有している。本明細書において、アルカリ土類金属は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムに加えて、ベリリウム及びマグネシウムを包含する。卑金属は、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、カドミウム、インジウム、すず、水銀、タリウム、鉛、ビスマス及びポロニウムを包含する。半金属は、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルを包含する。この中でも、無機物質は、リチウムなどのアルカリ金属、亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を含有していることが好ましい。これらの金属元素を含有する無機物質は、後述するように、加圧加熱法により、無機物質に由来する結合部12を容易に形成することが可能となる。
【0016】
マトリックス10を構成する無機物質は、例えば、上記金属元素のフッ化物、酸化物、窒化物、水酸化物、酸化水酸化物、硫化物、ホウ化物、炭化物及びハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物を含有することが好ましい。無機物質は、上記化合物を主成分として含有することがより好ましい。なお、主成分とは、無機物質が上記化合物を50mol%以上含有することを意味する。無機物質は、上記化合物を80mol%以上含有することが好ましく、90mol%以上含有することがより好ましい。なお、上述の金属元素の酸化物は、金属元素に酸素のみが結合した化合物に加え、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩及びホウ酸塩を包含していてもよい。また、マトリックス10を構成する無機物質は、上記金属元素を含む複合アニオン化合物であってもよい。複合アニオン化合物は、単一化合物中に複数のアニオンを含む物質であり、例として酸フッ化物、酸塩化物、酸窒化物を挙げることができる。
【0017】
なお、マトリックス10を構成する無機物質は、フッ化物、酸化物及び酸化水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような無機物質は、水に対する溶解度が低いことから、高湿環境下又は水中環境下であっても、光学フィルタ1を安定的に使用することができる。フッ化物の例としては、フッ化マグネシウム及びフッ化リチウムなどが挙げられる。例えば無機物質がフッ化リチウムを含む場合、10μm以下の波長帯域における光の透過性が高く、緻密性の高い光学フィルタ1を提供することができる。また、酸化物の例としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化セリウム及び酸化イットリウムなどが挙げられる。
【0018】
図2に示すように、マトリックス10は、複数の無機粒子11を含んでいてもよい。複数の無機粒子11の各々は互いに結合している。無機粒子11同士は、点接触の状態であってもよく、無機粒子11の表面同士が接触した面接触の状態であってもよい。また、マトリックス10は、複数の無機粒子11の各々を結合する結合部12を含んでいてもよい。隣接する無機粒子11が結合部12を介して結合することにより、無機粒子11同士が三次元的に結合するため、機械的強度の高い光学フィルタ1を得ることができる。結合部12は、無機粒子11と直接接触していることが好ましい。また、結合部12は、複数の無機粒子11の各々の表面の少なくとも一部を覆っていることが好ましく、複数の無機粒子11の各々の表面全体を覆っていることがより好ましい。これにより、無機粒子11と結合部12が強固に結合することから、緻密性及び機械的強度に優れた光学フィルタ1を得ることができる。結合部12は、隣接する無機粒子11の間に加えて、無機粒子11と波長選択吸収材料20との間、及び、隣接する波長選択吸収材料20の間に存在していてもよい。
【0019】
無機粒子11は、上述したようなマトリックス10を構成する無機物質と同様の無機物質により構成されていてもよい。
【0020】
無機粒子11を構成する無機物質は、結晶質であってもよく、非晶質であってもよい。無機粒子11を構成する無機物質は、ガスバリア性又は耐久性の観点からは、結晶質であることが好ましい。また、無機粒子11を構成する無機物質は、光透過率の観点からは、非晶質であることが好ましい。なお、無機物質が結晶質である場合、無機粒子11は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属及び半金属からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を含有する結晶質の無機粒子であることがより好ましい。
【0021】
また、無機粒子11は、ガスバリア性又は耐久性の観点から、上記金属元素の酸化物、窒化物、水酸化物、酸化水酸化物、硫化物、ホウ化物、炭化物及びハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する結晶質の粒子であることが好ましい。無機粒子11は、上記金属元素の酸化物、窒化物、水酸化物、酸化水酸化物、硫化物、ホウ化物、炭化物及びハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする結晶質の無機粒子であることがより好ましい。無機粒子11は、上記金属元素の酸化物、窒化物、水酸化物、酸化水酸化物、硫化物、ホウ化物、炭化物及びハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを80mol%以上含有することが好ましく、90mol%以上含有することがより好ましく、95mol%以上含有することがさらに好ましい。なお、無機物質は単結晶であってもよく、多結晶であってもよい。
【0022】
複数の無機粒子11の平均粒子径は、50nm以上50μm以下であることが好ましい。無機粒子11の平均粒子径が50μm以下であることにより、光学フィルタ1の光の透過率が高くなる。また、無機粒子11の平均粒子径がこの範囲内であることにより、無機粒子11同士が強固に結合し、光学フィルタ1の強度を高めることができる。また、無機粒子11の平均粒子径がこの範囲内であることにより、後述するように、光学フィルタ1の内部に存在する気孔の割合が30%以下となることから、光学フィルタ1の強度を高めることが可能となる。複数の無機粒子11の平均粒子径は、光学フィルタ1の光の透過率を向上させる観点から、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「平均粒子径」の値としては、特に言及のない限り、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用する。
【0023】
無機粒子11の形状は特に限定されないが、例えば球状とすることができる。また、無機粒子11は、ウィスカー状(針状)の粒子、又は鱗片状の粒子であってもよい。ウィスカー状粒子又は鱗片状粒子は、球状粒子と比べて他の粒子との接触性が高まるため、光学フィルタ1全体の強度を高めることが可能となる。
【0024】
結合部12は、非晶質の無機化合物を含むことが好ましい。具体的には、結合部12は、非晶質の無機化合物のみからなる部位であってもよく、非晶質の無機化合物と結晶質の無機化合物とが混在してなる部位であってもよい。また、結合部12は、非晶質の無機化合物の内部に結晶質の無機化合物が分散した部位であってもよい。非晶質の無機化合物と結晶質の無機化合物とが混在している場合、非晶質の無機化合物と結晶質の無機化合物とは、同じ化学組成を有していてもよく、互いに異なる化学組成を有していてもよい。
【0025】
無機粒子11及び結合部12は同じ金属元素を含有し、当該金属元素はアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属及び半金属からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。すなわち、無機粒子11を構成する無機化合物と、結合部12を構成する非晶質の無機化合物は、少なくとも同じ金属元素を含有していることが好ましい。また、無機粒子11を構成する無機化合物と、結合部12を構成する非晶質の無機化合物は化学組成が同じであってもよく、化学組成が異なっていてもよい。
【0026】
波長選択吸収材料20は、マトリックス10内に分散されている。波長選択吸収材料20は、隣接する無機粒子11間に存在していてもよく、結合部12内に存在していてもよい。波長選択吸収材料20がマトリックス10内に分散されていることにより、光の入射角に対する依存性が低く、入射角が大きい場合であっても光透過性の高い光学フィルタ1を得ることができる。すなわち、光学フィルタ1に対して斜め方向から光が照射された場合であっても、光学フィルタ1は、特定の光成分を吸収し、その他の光成分を透過することができる。また、マトリックス10を構成する無機物質のガスバリア性は、樹脂よりも高いため、波長選択吸収材料20をマトリックス10内に分散させることにより、波長選択吸収材料20の酸化を抑制することができる。そのため、空気中で不安定な酸化剤及び還元剤などの材料も波長選択吸収材料20として使用することができる。
【0027】
なお、屈折率が異なる複数の誘電体が積層された多層膜を基板の表面に設けた干渉フィルタでは、光の入射する角度によって透過波長が変化するおそれがあるため、干渉フィルタの入射面に対して垂直方向に光を透過することが推奨されている。一方、本実施形態に係る光学フィルタ1は、波長選択吸収材料20がマトリックス10に分散されている。そのため、透過波長が入射角度に依存しにくく、光学フィルタ1の表面に対して斜め方向から光を入射しても透過波長への影響が小さい。そのため、本実施形態に係る光学フィルタ1によれば、干渉フィルタでは使用することができなかった用途へも展開できる可能性がある。
【0028】
また、カラーガラスフィルタでは、ガラスに特定の波長を有する光成分を吸収する吸収材を分散させているため、透過波長が入射角度に依存しにくい。しかしながら、カラーガラスフィルタでは、ガラスを吸収材に分散させるための成形温度が高い。そのため、このような成形温度に耐えられる材料しか採用することができず、設計自由度が低い。一方、本実施形態に係る光学フィルタ1は、後述するように、加圧加熱法により波長選択吸収材料20をマトリックス10内に分散させることができるため、低温で光学フィルタ1を製造することができる。
【0029】
空気中で100℃から10℃/分の速度で加熱した場合において、波長選択吸収材料20の質量減少率が10質量%となる温度は900℃以下である。光学フィルタ1は、低温で光学フィルタ1を製造することができるため、波長選択吸収材料20が耐熱性の低い化合物、又は空気中で不安定な酸化剤及び還元剤などの材料であっても、波長選択吸収材料20をマトリックス10内に分散させることができる。質量減少率が10質量%となる温度は600℃以下であってもよく、300℃以下であってもよい。また、質量減少率が10質量%となる温度は、100℃以上であってもよい。なお、質量減少率は、TG(熱重量測定)によって測定することができる。
【0030】
波長選択吸収材料20は、0.8μm~20μmの対象波長帯域におけるいずれかの帯域の波長を有する光成分を吸収してもよい。波長選択吸収材料20がこのような光成分を吸収することにより、光学フィルタ1を例えば赤外線センサなどに用いた場合に、ノイズとなる光成分を除去することができる。なお、対象波長帯域は、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、7μm以上であってもよく、8μm以上であってもよい。また、対象波長帯域は、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、6μm以下であってもよい。
【0031】
波長選択吸収材料20は、無機化合物、有機化合物及びこれらの化合物が有する水素を重水素に置換した重水素置換体からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでいてもよい。無機化合物は、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、次亜リン酸カルシウムのような次亜リン酸塩及びホウ酸からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでいてもよい。有機化合物は、フッ素樹脂、アゾ系金属錯体、トリアリールメタン系化合物、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ジチオラート錯体系色素、ジインモニウム塩系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物及びメラミンなどのアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでいてもよい。フッ素樹脂は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、及びエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでいてもよい。また、フッ素樹脂はポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。これらのフッ素樹脂は汎用的に用いられているため、容易に入手することができる。
【0032】
波長選択吸収材料20の平均粒子径は、500nm以下であってもよい。波長選択吸収材料20の平均粒子径が500nm以下である場合、光の散乱を抑制することができる。波長選択吸収材料20の平均粒子径の下限は特に限定されないが、波長選択吸収材料20の平均粒子径は1nm以上であってもよい。波長選択吸収材料20の平均粒子径は10nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。また、波長選択吸収材料20の平均粒子径は400nm以下であってもよく、300nm以下であってもよい。
【0033】
マトリックス10を構成する材料と波長選択吸収材料20を構成する材料との屈折率差は0.1以下であってもよい。屈折率差が0.1以下である場合、光の散乱を抑制することができる。屈折率差の下限は特に限定されず、屈折率差は0以上であればよい。屈折率差は0.01以上であってもよく、0.02以上であってもよい。また、屈折率差は0.08以下であってもよく、0.04以下であってもよい。
【0034】
マトリックス10の真密度に対する光学フィルタ1の見掛け密度(以下、「相対密度」ともいう)は70%以上である。相対密度が70%以上であることにより、光学フィルタ1が緻密になり、光学フィルタ1を透過する光量が多くなる。また、相対密度が70%以上であることにより、光学フィルタ1が緻密になり、強度が高まる。そのため、光学フィルタ1の機械加工性を向上させることが可能となる。また、気孔を起点として、光学フィルタ1にひび割れが発生することが抑制されるため、光学フィルタ1の曲げ強さを高めることが可能となる。光学フィルタ1の相対密度は、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0035】
光学フィルタ1の断面における気孔率は30%以下であることが好ましい。すなわち、光学フィルタ1の断面を観察した場合、単位面積あたりの気孔の割合の平均値が30%以下であることが好ましい。気孔率が30%以下の場合、光学フィルタ1を透過する光量が多くなる。また、気孔率が30%以下の場合、光学フィルタ1が緻密になり、強度が高まる。そのため、光学フィルタ1の機械加工性を向上させることが可能となる。また、気孔率が30%以下の場合には、気孔を起点として、光学フィルタ1にひび割れが発生することが抑制されるため、光学フィルタ1の曲げ強さを高めることが可能となる。なお、光学フィルタ1の断面における気孔率は20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。光学フィルタ1の断面における気孔率が小さいほど、気孔を起点としたひび割れが抑制されるため、光学フィルタ1の強度を高めることが可能となる。
【0036】
本明細書において、気孔率は次のように求めることができる。まず、光学フィルタ1の断面を観察し、マトリックス10及び気孔を判別する。そして、単位面積と当該単位面積中の気孔の面積とを測定し、単位面積あたりの気孔の割合を求め、その値を気孔率とする。なお、光学フィルタ1の断面に対し、単位面積あたりの気孔の割合を複数箇所で求めた後、単位面積あたりの気孔の割合の平均値を気孔率とすることがより好ましい。光学フィルタ1の断面を観察する際には、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いることができる。また、単位面積と当該単位面積中の気孔の面積は、顕微鏡で観察した画像を二値化することにより測定してもよい。
【0037】
光学フィルタ1の内部に存在する気孔の大きさは特に限定されないが、可能な限り小さい方が好ましい。気孔の大きさが小さいことにより、気孔を起点としたひび割れが抑制されるため、光学フィルタ1の強度を高め、光学フィルタ1の機械加工性を向上させることが可能となる。また、気孔の大きさが小さいことにより、光散乱が抑制されるため、透過率を高めることができる。なお、光学フィルタ1の気孔の大きさは、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。光学フィルタ1の内部に存在する気孔の大きさは、上述の気孔率と同様に、光学フィルタ1の断面を顕微鏡で観察することにより、求めることができる。
【0038】
光学フィルタ1において、複数の無機粒子11の体積割合は30%以上であることが好ましい。この場合、得られる光学フィルタ1は、無機粒子11の特性を活用しやすい構造体となる。光学フィルタ1において、複数の無機粒子11の体積割合は、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。無機粒子11の体積割合は結合部12の体積割合よりも大きいことが好ましい。
【0039】
光学フィルタ1における波長選択吸収材料20の体積割合は、光学フィルタ1の透過特性などにもよるが、0.1体積%以上30体積%以下であることが好ましい。波長選択吸収材料20の体積割合が0.1体積%以上であることにより、光学フィルタ1で吸収される光の量を向上させることができる。また、波長選択吸収材料20の体積割合が30体積%以下であることにより、光学フィルタ1の機械的特性を向上させることができる。波長選択吸収材料20の体積割合は0.2体積%以上であることがより好ましく、0.5体積%以上であることがさらに好ましい。また、波長選択吸収材料20の体積割合は15体積%以下であることがより好ましく、10体積%以下であることがさらに好ましく、5体積%以下であることが特に好ましい。
【0040】
光学フィルタ1は、0.8μm~20μmの対象波長帯域におけるいずれかの帯域の波長を有する光成分を吸収する。光学フィルタ1がこのような光成分を吸収することにより、光学フィルタ1を例えばセンサなどに用いた場合に、ノイズとなる光成分を光学フィルタ1によって除去することができる。なお、対象波長帯域は、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。また、対象波長帯域は、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、6μm以下であってもよい。
【0041】
0.8μm~20μmの対象波長帯域において、光学フィルタ1の厚さ1mmあたりの直線透過率が30%以上である波長帯域幅は50nm以上である。光学フィルタ1がこのような特性を有することにより、対象波長帯域において、一部の光成分をカットしつつ、一部の光成分を透過することができる。これにより、光学フィルタ1を例えば赤外線センサなどに用いた場合に、ノイズとなる光成分を光学フィルタ1によって除去し、検知したい光成分を赤外線センサに到達させることができる。したがって、ノイズが少なく、感度の高い赤外線センサを得ることができる。なお、直線透過率が30%以上となる波長帯域幅は100nm以上であってもよく、300nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。また、直線透過率が30%以上となる波長帯域幅は5000nm以下であってもよく、3000nm以下であってもよく、1000nm以下であってもよい。また、直線透過率は35%以上であってもよく、40%以上であってもよい。直線透過率の上限は特に限定されず、例えば100%である。
【0042】
0.8μm~20μmの対象波長帯域において、光学フィルタ1の厚さ1mmあたりの直線透過率が1%以下である波長帯域幅は50nm以上であることが好ましい。光学フィルタ1がこのような特性を有することにより、光学フィルタ1を例えば赤外線センサなどに用いた場合に、ノイズとなる光成分を大幅にカットすることができる。したがって、ノイズが少なく、感度の高い赤外線センサを得ることができる。なお、直線透過率が1%以下となる波長帯域幅は100nm以上であってもよく、300nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。直線透過率が1%以下となる波長帯域幅は10000nm以下であってもよく、5000nm以下であってもよく、3000nm以下であってもよく、1000nm以下であってもよい。また、直線透過率は0.5%以下であってもよく、0.2%以下であってもよい。直線透過率の下限は特に限定されず、例えば0%である。
【0043】
具体的には、3μm~10μmの対象波長帯域において、直線透過率が30%以上である波長帯域幅は300nm以上であることが好ましい。また、3μm~10μmの対象波長帯域において、直線透過率が1%以下である波長帯域幅は300nm以上であることが好ましい。また、3μm~10μmの対象波長帯域において、直線透過率が30%以上である波長帯域幅は300nm以上であり、直線透過率が1%以下である波長帯域幅は300nm以上であることも好ましい。これらのような光学フィルタ1は、このような光学フィルタ1は、バンドパスフィルタ又はバンドカットフィルタとして有用である。
【0044】
また、光学フィルタ1において、8μm~20μmの波長帯域全体における直線透過率は10%以下であってもよい。このような光学フィルタ1は、長波長帯域の波長をカットするフィルタとして用いることができる。このようなフィルタは長波長領域のノイズを低減することができるため、例えば赤外センサに用いた場合に、誤検知を抑制することができる。また、このような広い波長帯域をカットすることにより、赤外線センサなどの機器の設計自由度を高くすることができる。8μm~20μmの波長帯域全体における直線透過率は8%以下であってもよく、5%以下であってもよく、2%以下であってもよく、1%以下であってもよい。
【0045】
また、光学フィルタ1において、7μm~20μmの波長帯域全体における直線透過率は10%以下であってもよい。これにより、上記のような長波長帯域の波長をさらにカットする光学フィルタ1を提供することができる。7μm~20μmの波長帯域全体における直線透過率は9%以下であってもよく、6%以下であってもよく、4%以下であってもよく、1%以下であってもよい。
【0046】
無機物質はフッ化物を含み、波長選択吸収材料20はフッ素樹脂を含んでいてもよい。これにより、例えば上記のような長波長帯域の波長をカットする光学フィルタ1を提供することができる。フッ素樹脂はC-F結合を有し、8μm~9μmの波長帯域における光を吸収するため、フッ化物のマトリックス10と組み合わせることにより、例えば上記のような長波長帯域の特定波長をカットする光学フィルタ1を提供することができる。フッ化物は上述したものを用いることができ、例えばフッ化リチウムであってもよい。また、フッ素樹脂は上述したものを用いることができ、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。また、PVDFは8μm~9μmの波長帯域の光成分を吸収することから、フッ素樹脂はPVDFであってもよい。
【0047】
直線透過率は、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)装置で透過法によって光学フィルタ1を測定することで得ることができる。赤外線透過スペクトルの直線透過率は、厚さ1mmにおける直線透過率となるように、ランベルト・ベールの法則に基づいて換算される。また、波長帯域幅は、対象波長帯域において、直線透過率が所定の値以上又は以下となる波長帯域幅を測定することによって得ることができる。波長帯域幅は、直線透過率が連続して所定の値以上又は以下となる波長帯域幅であってもよく、直線透過率が連続的及び断続的に所定の値以上又は以下となる波長帯域幅の合計波長帯域幅であってもよい。すなわち、波長帯域幅は、対象波長帯域において、直線透過率が所定の値以上となる合計波長帯域幅、又は所定の値以下となる合計波長帯域幅である。したがって、直線透過率が断続的に所定の値以上又は以下となる場合、直線透過率が所定の値以上又は以下となる波長帯域は対象波長帯域においてそれぞれ離れていてもよい。なお、波長帯域幅は、直線透過率が連続して所定の値以上又は以下となる波長帯域幅であることが好ましい。具体的には、対象波長帯域において、光学フィルタ1の厚さ1mmあたりの直線透過率が連続して30%以上である波長帯域幅は50nm以上であってもよい。また、対象波長帯域において、直線透過率が連続して1%以下である波長帯域幅は300nm以上であってもよい。
【0048】
光学フィルタ1の厚みtは特に限定されないが、例えば100μm以上とすることができる。本実施形態の光学フィルタ1は、後述するように、加圧加熱法により形成される。そのため、厚みの大きな光学フィルタ1を容易に得ることができる。なお、光学フィルタ1の厚みは500μm以上とすることができ、1mm以上とすることができ、1cm以上とすることもできる。光学フィルタ1の厚みの上限は特に限定されないが、例えば50cmとすることができる。
【0049】
以上のように、光学フィルタ1は、水に対する溶解度が0.4(g/100g-H2O)以下である無機物質によって構成されたマトリックス10と、マトリックス10内に分散された波長選択吸収材料20とを備えている。光学フィルタ1は、0.8μm~20μmの対象波長帯域におけるいずれかの帯域の波長を有する光成分を吸収する。空気中で100℃から10℃/分の速度で加熱した場合において、波長選択吸収材料20の質量減少率が10質量%となる温度は900℃以下である。マトリックス10の真密度に対する光学フィルタ1の見掛け密度は70%以上である。対象波長帯域において、光学フィルタ1の厚さ1mmあたりの直線透過率が30%以上である波長帯域幅は50nm以上である。上述したように、光学フィルタ1は、無機物質によって構成されたマトリックス10を備えているため、耐久性に優れている。
【0050】
また、マトリックス10は、樹脂と比較してガスバリア性が高い無機物質によって構成されており、波長選択吸収材料20はマトリックス10内に分散されている。また、光学フィルタ1の見掛け密度に対するマトリックス10の相対密度も高く、緻密である。そのため、本実施形態に係る光学フィルタ1は、波長選択吸収材料20を外部空間に存在する空気などから保護することができる。したがって、これまで利用することができなかったような、酸素又は水に対して安定性が低い材料を波長選択吸収材料20として使用することができる可能性がある。
【0051】
[赤外線センサ]
次に、本実施形態に係る赤外線センサ100について
図3を用いて説明する。赤外線センサ100は、
図3に示すように、上述した光学フィルタ1を備えている。また、赤外線センサ100は、赤外線検出素子110と、IC素子120と、基板130と、金属ケース150とを備えている。
【0052】
赤外線検出素子110とIC素子120とはダイボンド材131によって基板130に実装されている。赤外線検出素子110とIC素子120とはワイヤ140によって相互に電気的に接続されている。また、赤外線検出素子110は、ワイヤ140によって基板130の図示せぬ電気回路配線に接続されている。
【0053】
赤外線検出素子110は、赤外線を受光し、受光した赤外線の熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、受光した赤外線の量に応じた電気信号をIC素子120に出力する。赤外線検出素子110は、焦電素子、サーモパイル型の赤外線検出素子若しくはボロメータ型の赤外線検出素子のような熱型赤外線検出素子、又は量子型赤外線検出素子を用いることができる。
【0054】
IC素子120は、赤外線検出素子110から出力された電気信号を増幅する増幅回路と、増幅回路で増幅された電気信号が閾値を超えた場合に炎が存在すると判定する判定回路とを含んでいる。
【0055】
金属ケース150は基板130に取り付けられている。金属ケース150は赤外線検出素子110及びIC素子120の周囲を取り囲んでおり、基板130及び金属ケース150によって赤外線検出素子110及びIC素子120は密封されている。金属ケース150は、上壁151と側壁152とを含んでいる。上壁151には開口部が設けられており、開口部は光学フィルタ1によって覆われている。光学フィルタ1は、赤外線検出素子110と対向するように配置されており、光学フィルタ1を通過した赤外線を受光するように赤外線検出素子110は基板130に設けられている。側壁152は上壁151の縁部と基板130の縁部とを接続している。
【0056】
炎などから発せられた赤外線は光学フィルタ1を通過し、赤外線検出素子110によって受光される。赤外線検出素子110は、赤外線の受光量に応じた電気信号をIC素子120に出力する。IC素子120は、上記電気信号に応じて炎が存在するか判定する。このようにして、赤外線センサ100は、炎から発せられる赤外線を利用して炎を検知することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、炎を検知するための炎センサに赤外線センサ100を用いる例について説明したが、赤外線センサ100の用途はこのような形態に限定されない。赤外線センサ100は、人感センサ、生体センサ、防犯センサ、ガスセンサ、非接触温度計、固体撮像装置又はカメラモジュールなどにも用いることもできる。
【0058】
[発光装置]
次に、本実施形態に係る発光装置200について
図4を用いて説明する。発光装置200は、
図4に示すように、上述の光学フィルタ1を備えている。また、発光装置200は光学フィルタ1に赤外線を含む光を照射する光源210を備えている。光源210は、LED、キセノンランプ、レーザーダイオード及びこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0059】
発光装置200は光学フィルタ1を備えているため、光源210から照射される赤外線の一部を光学フィルタ1でカットすることができる。そのため、本実施形態に係る発光装置200によれば、特定の波長を有する光を照射することができる。発光装置200は、例えば、検査用発光装置、監視カメラ用発光装置、脱毛用発光装置、赤外線硬化型樹脂を硬化するための発光装置などに用いることができる。
【0060】
[光学フィルタの製造方法]
次に、本実施形態に係る光学フィルタ1の製造方法について説明する。光学フィルタ1は、無機物質の粒子と波長選択吸収材料との混合物を、溶媒を含んだ状態で加圧して加熱することにより製造することができる。このような加圧加熱法を用いることにより、無機物質の一部が溶出して無機物質同士が互いに結合するため、波長選択吸収材料20が内部に分散した光学フィルタ1を形成することができる。
【0061】
具体的には、まず、無機物質の粉末と波長選択吸収材料の粉末を混合して混合粉末を調製する。無機物質の粉末と波長選択吸収材料の粉末の混合方法は特に限定されず、乾式又は湿式で行うことができる。また、無機物質の粉末と波長選択吸収材料の粉末は空気中で混合してもよく、不活性雰囲気下で混合してもよい。当該混合物の調製方法としては、まず、波長選択吸収材料と溶媒とを混合する。波長選択吸収材料は溶媒に溶解させてもよく、溶解させなくてもよい。そして、波長選択吸収材料と溶媒との混合物に、無機物質の粉末を添加することにより、無機物質と波長選択吸収材料と溶媒とを含む混合物を調製してもよい。
【0062】
次に、混合粉末に溶媒を添加する。溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、混合粉末を加圧及び加熱した際に、無機物質の一部を溶解することが可能なものを用いることができる。また、溶媒としては、無機物質と反応して、当該無機物質とは異なる無機物質を生成することが可能なものを用いることができる。このような溶媒としては、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、水、アルコール、ケトン及びエステルからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。酸性水溶液としては、pH1~3の水溶液を用いることができる。アルカリ性水溶液としては、pH10~14の水溶液を用いることができる。酸性水溶液としては、有機酸の水溶液を用いることが好ましい。また、アルコールとしては、炭素数が1~12のアルコールを用いることが好ましい。
【0063】
次いで、無機物質と波長選択吸収材料と溶媒とを含む混合物を、金型の内部に充填する。当該混合物を金型に充填した後、必要に応じて金型を加熱してもよい。そして、金型の内部の混合物に圧力を加えることにより、金型の内部が高圧状態となる。この際、無機物質及び波長選択吸収材料が緻密化すると同時に、無機物質の粒子同士が互いに結合する。
【0064】
ここで、溶媒として、無機物質の一部を溶解するものを用いた場合、高圧状態では、無機物質を構成する無機化合物が溶媒に溶解する。溶解した無機化合物は、無機物質と波長選択吸収材料との間の空隙、無機物質の間の空隙、及び波長選択吸収材料の間の空隙に浸入する。そして、この状態で混合物中の溶媒を除去することにより、無機物質と波長選択吸収材料との間、無機物質の間及び波長選択吸収材料の間に、無機物質に由来する連結部が形成される。また、溶媒として、無機物質と反応して、当該無機物質とは異なる無機物質を生成するものを用いた場合、高圧状態では、無機物質を構成する無機化合物が溶媒と反応する。そして、反応により生成した他の無機物質が、無機物質と波長選択吸収材料との間の空隙、無機物質の間の空隙、及び波長選択吸収材料の間の空隙に充填され、他の無機物質に由来する連結部が形成される。
【0065】
無機物質と波長選択吸収材料と溶媒とを含む混合物の加熱加圧条件は、溶媒として、無機物質の一部を溶解するものを用いた場合、無機物質の表面の溶解が進行するような条件であれば特に限定されない。また、当該混合物の加熱加圧条件は、溶媒として、無機物質と反応して、当該無機物質とは異なる無機物質を生成するものを用いた場合、無機物質と溶媒との反応が進行するような条件であれば特に限定されない。例えば、無機物質と波長選択吸収材料と溶媒とを含む混合物を、50~300℃に加熱した後、10~600MPaの圧力で加圧することが好ましい。なお、無機物質と波長選択吸収材料と溶媒とを含む混合物を加熱する際の温度は、80~250℃であることがより好ましく、100~200℃であることがさらに好ましい。また、無機物質と波長選択吸収材料と溶媒とを含む混合物を加圧する際の圧力は、50~600MPaであることがより好ましい。
【0066】
そして、金型の内部から成形体を取り出すことにより、光学フィルタ1を得ることができる。なお、無機物質と波長選択吸収材料との間、無機物質の間及び波長選択吸収材料の間に形成された、無機物質に由来する連結部は、上述の結合部12であることが好ましい。
【0067】
ここで、セラミックスからなる無機部材の製造方法としては、焼結法が知られている。焼結法は、無機物質からなる固体粉末の集合体を融点よりも低い温度で加熱することにより、焼結体を得る方法である。ただ、焼結法では、例えば1000℃以上に固体粉末を加熱する。そのため、焼結法を用いて無機物質と波長選択吸収材料からなる複合部材を得ようとしても、高温での加熱により波長選択吸収材料が炭化してしまうため、複合部材が得られない。しかしながら、本実施形態の光学フィルタ1の製造方法では、無機物質の粉末と波長選択吸収材料の粉末を混合してなる混合物を、300℃以下という低温で加熱するため、波長選択吸収材料の炭化が起こり難い。そのため、無機物質からなるマトリックス10の内部に波長選択吸収材料20を安定的に分散させることができる。
【0068】
さらに、本実施形態の製造方法では、無機物質の粉末と波長選択吸収材料の粉末を混合してなる混合物を、加熱しながら加圧していることから、無機物質が凝集して緻密なマトリックス10となる。その結果、マトリックス10内部の気孔が少なくなることから、波長選択吸収材料20の酸化劣化を抑制しつつも、高い強度を有する光学フィルタ1を得ることができる。
【0069】
このように、光学フィルタ1の製造方法は、無機物質の粉末と波長選択吸収材料の粉末を混合して混合物を得る工程と、無機物質を溶解する溶媒又は無機物質と反応する溶媒を混合物に添加した後、当該混合物を加圧及び加熱する工程とを有する。または、光学フィルタ1の製造方法は、無機物質を溶解する溶媒又は無機物質と反応する溶媒に、波長選択吸収材料を混合する工程と、波長選択吸収材料を含んだ溶媒に無機物質の粉末を混合して混合物を得る工程と、当該混合物を加圧及び加熱する工程とを有する。そして、混合物の加熱加圧条件は、50~300℃の温度で、10~600MPaの圧力とすることが好ましい。本実施形態の製造方法では、このような低温条件下で光学フィルタ1を成形することから、波長選択吸収材料20の炭化を抑制して、着色されたセラミックス部材を得ることができる。なお、上記方法では、無機物質を溶解する溶媒又は無機物質と反応する溶媒を混合物に添加している。しかしながら、本実施形態に光学フィルタ1は、無機物質を溶解する溶媒又は無機物質と反応する溶媒を混合物に添加しなくてもよい。すなわち、無機物質の粉末と波長選択吸収材料の粉末を混合して得られた混合物を、加圧及び加熱して光学フィルタ1を得てもよい。例えば無機物質としてフッ化リチウムを用いた場合には、高温で塑性変形するため、塑性変形する温度以上における加圧により、緻密な光学フィルタ1を製造することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本実施形態を実施例及び参考例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[試験サンプルの調製]
(実施例1)
まず、無機粒子として、水に対する溶解度が0.134g/100mLであり、平均粒子径が5μmのフッ化リチウムの粉末(富士フィルム和光純薬株式会社、試薬特級)を準備した。また、波長選択吸収材料として、メラミンの粉末(富士フィルム和光純薬株式会社、試薬特級)を準備した。次いで、フッ化リチウム粉末とメラミン粉末とを、質量比率が99:1(体積比率が98.3:1.7)となるように、メノウ乳鉢とメノウ乳棒を用い、アセトンを加えて混合することにより、混合粉末を得た。
【0072】
次に、内部空間を有する円筒状の成形用金型(Φ10)の内部に、混合粉末を投入した。さらに、そして、当該混合粉末を、180℃、400MPa、30分の条件で加熱及び加圧した。このようにして、円柱状である本例の試験サンプルを得た。
【0073】
(参考例1)
波長選択吸収材料を添加しなかった以外は実施例1と同様に試験サンプルを作製した。すなわち、実施例1で用いたフッ化リチウム粉末を、実施例1と同様に加熱及び加圧した。
【0074】
[評価]
(直線透過率)
まず、上記のようにして得られた試験サンプルをFT-IR装置で透過法によって測定し、
図5に示す赤外線透過スペクトルを得た。なお、赤外線透過スペクトルの直線透過率は、厚さ1mmにおける直線透過率となるように、ランベルト・ベールの法則に基づいて換算されている。
【0075】
図5に示すように、実施例1の試験サンプルでは、参考例1の試験サンプルと比較し、いくつかの帯域で直線透過率が低下しており、波長選択吸収材料によって特定の波長を有する赤外線が吸収されていることが分かる。このことから、波長選択吸収材料が分解せずに試験サンプルに残存していることが分かる。
【0076】
また、
図5に示す赤外線スペクトルから、実施例1の試験サンプルの最大透過率は、波長5.71μmにおいて56%であることが分かった。また、直線透過率が最大透過率の1/2(28%)である帯域は、5.13μm~5.84μmであり、半値全幅は705nmであった。
【0077】
また、直線透過率が30%以上である帯域は、5.21μm~5.83μmの範囲であり、帯域幅は621nmであった。また、少なくとも9.60μm~10.00μmの範囲では、直線透過率が連続的に0.4%程度であり、この波長帯域幅は400nmであった。また、少なくとも6.00~7.00μmの範囲では、直線透過率が断続的に0.6%程度であった。これらの結果から、実施例1の試験サンプルは、光学フィルタとして有用であることが示唆されている。
【0078】
(TG(熱重量測定))
TGを実施することにより、メラミンの質量減少率を測定した。なお、サンプルはアルミニウム製の容器に7.1mg入れ、空気を50mL/分で流入させ、100℃から560℃まで10℃/分の加熱速度で測定した。測定により得られたTG曲線を
図6に示す。
【0079】
図6に示すように、メラミンは、240℃付近から質量の減少が開始し、279℃で質量減少率が5%となり、292℃で質量減少率が10%となった。この結果から、メラミンは、空気中で100℃から10℃/分の速度で加熱した場合において、質量減少率が10%となる温度が300℃以下であることが分かる。本例では、混合粉末を180℃、400MPa、30分の条件で加熱及び加圧しているため、メラミンのような耐熱性が低い材料であっても、無機マトリックス内に分散させることができることが分かる。
【0080】
(相対密度)
実施例1及び参考例1の試験サンプルの相対密度を測定した。具体的には、まず、試験サンプルの体積及び質量を測定し、試験サンプルの見掛け密度を算出した。次に、試験サンプルの見掛け密度を、マトリックスであるフッ化リチウムの真密度で除することにより試験サンプルの相対密度を算出した。
【0081】
上記のようにして相対密度を算出した結果、実施例1の試験サンプルの相対密度は89%であり、参考例1の試験サンプルの相対密度は90%であった。すなわち、実施例1の試験サンプルの気孔率は11%であり、参考例1の試験サンプルの気孔率は10%であると推定される。これらの結果から、試験サンプルの気孔率は小さく、試験サンプルは緻密な構造となっていることが理解できる。
【0082】
次に、実施例2~実施例7及び参考例2に係る試験サンプルを調製して評価した。
【0083】
[試験サンプルの調製]
(実施例2)
まず、無機粒子として、水に対する溶解度が0.134g/100mLであり、平均粒子径が1μmのフッ化リチウムの粉末を準備した。また、波長選択吸収材料として、PVDFを準備した。次いで、フッ化リチウム粉末とPVDF粉末とを、質量比率が99:1(体積比率98.5:1.5)となるように、メノウ乳鉢とメノウ乳棒を用い、アセトンを加えて混合することにより、混合粉末を得た。
【0084】
なお、フッ化リチウム粉末は次のようにして作製した。まず、8.9gのLiCl(富士フィルム和光純薬株式会社 和光特級)を35mlのイオン交換水に溶解し、LiCl溶液を調製した。また、12.2gのKF(富士フィルム和光純薬株式会社 試薬特級)を35mLのイオン交換水に溶解し、KF溶液を調製した。次に、LiCl溶液全量とKF溶液全量とを室温で混合し、マグネティックスターラーで3分間撹拌した。この撹拌液を、孔径0.1μmのメンブレンフィルタを用いて吸引ろ過し、残渣を乾燥することでフッ化リチウム粉末を得た。
【0085】
PVDFは、Sigma-Aldrich社のPVDF(averageMw~534,000 by GPC,powder)を用いた。PVDFの平均粒子径は約200nmである。なお、フッ化リチウムの屈折率が1.39であり、PVDFの屈折率が1.42であるため、フッ化リチウムとPVDFとの屈折率差は0.03である。
【0086】
次に、内部空間を有する円筒状の成形用金型(Φ12)の内部に、混合粉末を投入した。そして、当該混合粉末を、200℃、400MPa、10分の条件で加熱及び加圧した。このようにして、円柱状である本例の試験サンプルを得た。なお、試験サンプルの厚さは1053μmであった。
【0087】
(実施例3)
混合粉末におけるフッ化リチウム粉末とPVDF粉末との質量比率を98:2(体積比率97.1:2.9)とした以外は、実施例2と同様にして試験サンプルを作製した。なお、試験サンプルの厚さは1057μmであった。
【0088】
(実施例4)
混合粉末におけるフッ化リチウム粉末とPVDF粉末との質量比率を97:3(体積比率95.6:4.4)とした以外は、実施例2と同様にして試験サンプルを作製した。なお、試験サンプルの厚さは1017μmであった。
【0089】
(実施例5)
混合粉末におけるフッ化リチウム粉末とPVDF粉末との質量比率を96:4(体積比率94.2:5.8)とした以外は、実施例2と同様にして試験サンプルを作製した。なお、試験サンプルの厚さは1014μmであった。
【0090】
(実施例6)
混合粉末におけるフッ化リチウム粉末とPVDF粉末との質量比率を92:8(体積比率88.6:11.4)とした以外は、実施例2と同様にして試験サンプルを作製した。なお、試験サンプルの厚さは1064μmであった。
【0091】
(実施例7)
PVDF粉末に代え、PTFE粉末(株式会社喜多村 KTL-1N)を用いた以外は、実施例2と同様にして試験サンプルを作製した。具体的には、混合粉末におけるフッ化リチウム粉末とPTFE粉末との質量比率を99:1(体積比率98.4:1.6)とした。なお、試験サンプルの厚さは1147μmであった。
【0092】
(参考例2)
混合粉末におけるフッ化リチウム粉末とPVDF粉末との質量比率を100:0とした以外は、実施例2と同様にして試験サンプルを作製した。なお、試験サンプルの厚さは1064μmであった。
【0093】
[評価]
(直線透過率)
上記のようにして得られた試験サンプルをFT-IR装置で透過法によって測定し、
図7~
図10に示す赤外線透過スペクトルを得た。なお、赤外線透過スペクトルの直線透過率は、厚さ1mmにおける直線透過率となるように、ランベルト・ベールの法則に基づいて換算されている。
【0094】
図7~
図10に示すように、実施例2~実施例7の試験サンプルでは、参考例2の試験サンプルと比較し、いくつかの帯域で直線透過率が低下しており、波長選択吸収材料によって特定の波長を有する赤外線が吸収されていることが分かる。このことから、波長選択吸収材料が分解せずに試験サンプルに残存していることが分かる。
【0095】
また、
図7及び
図8に示すように、実施例2~実施例7の試験サンプルでは、0.8μm~20μmの対象波長帯域において、試験サンプルの厚さ1mmあたりの直線透過率が30%以上である波長帯域幅は50nm以上であった。これらの結果から、実施例2~実施例7の試験サンプルは、光学フィルタとして有用であることが示唆された。
【0096】
さらに、実施例2~実施例7の試験サンプルでは、8μm~20μmの波長帯域全体において、直線透過率は10%以下であった。そして、フッ素樹脂の添加量を多くするほど、直線透過率が小さくなることが分かった。また、フッ素樹脂としてPVDFを用いた場合、同量のPTFEを用いた場合と比較し、7μm~8μmの波長帯域の直線透過率を低下できることが分かった。これらの結果から、実施例2~実施例7の試験サンプルは、長波長帯域の波長をカットするフィルタとして有用であることが示唆された。
【0097】
実施例で用いたPTFE粉末及びPVDF粉末をFT-IR装置でATR法によって測定したところ、
図11に示すような吸収スペクトルが確認できた。PTFEは波長8μm~9μmに吸収ピークを有することが確認できた。また、PVDFは波長8μm~9μmに加え、8μm~9μm前後に複数の吸収ピークを有することが確認できた。これらの結果から、マトリックスを透過する光の一部がフッ素樹脂に吸収されることにより、8μm~20μmの波長帯域全体における直線透過率が小さくなったと考えられる。
【0098】
(TG(熱重量測定))
TGを実施することにより、PTFE及びPVDFの質量減少率を測定した。なお、サンプルはアルミニウム製の容器にPTFEを5.5mg又はPVDFを6.2mg入れ、空気を50mL/分で流入させ、30℃から600℃まで10℃/分の加熱速度で測定した。測定により得られたTG曲線を
図12に示す。測定の結果、PTFEの質量減少率が10質量%となる温度は456℃であり、PVDFの質量減少率が10質量%となる温度は400℃であった。
【0099】
(相対密度)
実施例2~実施例7及び参考例2の試験サンプルの相対密度を上記と同様に測定した。その結果、いずれの試験サンプルの相対密度も90%以上であった。このことから、試験サンプルの気孔率は小さく、試験サンプルは緻密な構造となっていることが理解できる。
【0100】
特願2021-025009号(出願日:2021年2月19日)の全内容は、ここに援用される。
【0101】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本開示によれば、無機物質によって構成されたマトリックスを備える耐久性に優れた光学フィルタ、赤外線センサ及び発光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 光学フィルタ
10 マトリックス
20 波長選択吸収材料
100 赤外線センサ
200 発光装置