(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用固体電解質及びその製造方法、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20240419BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240419BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20240419BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240419BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/08
H01B13/00 Z
H01B1/06 A
(21)【出願番号】P 2020080743
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】301029388
【氏名又は名称】時空化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武 志俊
(72)【発明者】
【氏名】官 国清
(72)【発明者】
【氏名】謝 正坤
(72)【発明者】
【氏名】関 和治
(72)【発明者】
【氏名】阿布 里提
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/016342(WO,A1)
【文献】特開2016-152082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、H01B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状複合酸化物と、リチウム塩を含むイオン液体とを含有し、
前記層状複合酸化物は、アルミニウム
及びリチウムの複合酸化物で形成され、
前記層状複合酸化物は、層状複水酸化物の結晶構造を有する、リチウムイオン電池用固体電解質。
【請求項2】
前記複合酸化物の含有割合が、層状複合酸化物、リチウム塩及びイオン液体の総質量に対して10~60質量%である、請求項
1に記載のリチウムイオン電池用固体電解質。
【請求項3】
アルミニウム源と、
リチウム源と、水とを含む原料をアルカリ剤の存在下、加熱処理する工程1と、
前記加熱処理で得られた生成物を焼成処理して焼成物を得る工程2と、
前記焼成物と、リチウム塩及びイオン液体を含む溶液とを混合して乾燥処理することで固体電解質を得る工程3と
を備え
、
前記工程1で得られる生成物及び前記工程2で得られる焼成物はいずれも層状の結晶構造を有し、前記工程3で得られた固体電解質は、層状複水酸化物の結晶構造を有する層状複合酸化物である、リチウムイオン電池用固体電解質の製造方法。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載のリチウムイオン電池用固体電解質を備える、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用固体電解質及びその製造方法、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電気自動車等の幅広い分野で活用されており、産業界においてもはや欠かすことのできない電池である。現在のリチウムイオン電池では、例えば、低質量密度(例えば、0.59g・cm-3)を有し、また、高い電気化学ポテンシャル(例えば、標準水素電極に対して-3.04V)を有する材料で形成された金属アノードを備えている。これにより、リチウムイオン電池に優れた理論比容量(例えば、3860mAh・g-1)を提供することが可能となる。
【0003】
一方で、リチウムイオン電池を大規模に利用する場合は、発火、爆発等のおそれがあり、危険性が潜んでいることも近年では懸念されている。具体的に、リチウム金属アノードは、界面での液体有機電解質と反応しやすいことから、バッテリーのいわゆる「熱暴走」による燃焼及び爆発が引き起こされるおそれがある。また、リチウム樹状突起の成長等によってもリチウムイオン電池安全性が低下する可能性もあり、安全性に関しては種々の深刻な問題が潜在しているといえる。
【0004】
この観点から、リチウムイオン電池に用いられるための材料は最近でも盛んに研究が進められており、その一つとして、固体電解質(SSE)が注目されている。例えば、特許文献1には、硫化物固体電解質材料により、イオン導電率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等に開示されるような硫化物系固体電解質は、有毒の硫化水素ガスを発生するおそれがあり、安全性等の観点から課題があるものであった。一方で、近年ではイオン液体を用いて電池の性能を向上させることも考案されているものの、リチウムイオン電池に対する要求性能はますます高まっており、必ずしも満足いく性能をもたらすものではなかった。この観点から、高いイオン導電率を有し、優れた電気化学安定性を有する電解質の開発が強く望まれていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高いイオン導電率と、優れた電気化学安定性を有し、リチウムイオン電池に高い安定性をもたらすことができる固体電解質及びその製造方法、並びに前記固体電解質を備えるリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミニウムを少なくとも含む金属の層状複水酸化物の結晶構造を有する層状複合酸化物を使用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
層状複合酸化物と、リチウム塩を含むイオン液体とを含有し、
前記層状複合酸化物は、アルミニウムと、金属M(アルミニウムを除く)とを含む金属の酸化物で形成され、
前記層状複合酸化物は、層状複水酸化物の結晶構造を有する、リチウムイオン電池用固体電解質。
項2
前記アルミニウム以外の金属MがLi、Mg、Zn及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、項1に記載のリチウムイオン電池用固体電解質。
項3
前記層状複合酸化物の含有割合が、層状複合酸化物、リチウム塩及びイオン液体の総質量に対して10~60質量%である、項1又は2に記載のリチウムイオン電池用固体電解質。
項4
アルミニウム源と、金属M源(前記アルミニウム源は除く)と、水とを含む原料をアルカリ剤の存在下、加熱処理する工程1と、
前記加熱処理で得られた生成物を焼成処理して焼成物を得る工程2と、
前記焼成物と、リチウム塩及びイオン液体を含む溶液とを混合して乾燥処理することで固体電解質を得る工程3と
を備える、リチウムイオン電池用固体電解質の製造方法。
項5
前記工程1で得られる生成物及び前記工程2で得られる焼成物はいずれも層状の結晶構造を有する、項4に記載の製造方法。
項6
前記アルミニウム以外の金属MがLi、Mg、Zn及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、項4又は5に記載の製造方法。
項7
項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用固体電解質を備える、リチウムイオン電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明の固体電解質は、高いイオン導電率と、優れた電気化学安定性を有し、リチウムイオン電池に高い安定性をもたらすことができる。従って、本発明の固体電解質は、リチウムイオン電池用の電解質として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1~3で得た固体電解質のX線回折測定(XRD)結果である。
【
図2】(a)は比較例1で得た液体電解質を備える電池、(b)は実施例2で得られた固体電解質を備える電池の安定性試験の結果である。
【
図3】実施例で得られた各電解質のイオン伝導率の測定結果を示している。
【
図4】(a)は比較例1で得られた液体電解質、(b)は実施例2で得られた固体電解質の電気化学安定性試験の結果を示している。
【
図5】実施例2で得られた固体電解質を有する電池の特性評価の結果である。
【
図6】層状複水酸化物の層状構造と、固体電解質におけるリチウムイオンの移動機構を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0013】
1.固体電解質
本発明の固体電解質は、層状複合酸化物と、リチウム塩を含むイオン液体とを含有し、前記層状複合酸化物は、アルミニウムと、金属M(アルミニウムを除く)とを含む金属の酸化物で形成される。特に、前記層状複合酸化物は、層状複水酸化物の結晶構造を有することに特徴を有する。
【0014】
本発明の固体電解質は、高いイオン導電率と、優れた電気化学安定性を有し、また、リチウムイオン電池に組み込むことで、リチウムイオン電池に高い安定性をもたらすことができる。
【0015】
(層状複合酸化物)
層状複合酸化物は、少なくとも2種の金属を含む酸化物であって、特に、層状に形成された構造を有する。層状複合酸化物は、例えば、層状複水酸化物を酸化(例えば焼成)することで形成される化合物である。一般に、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide;LDH)は、金属水酸化物(金属複水酸化物)の層間に、交換可能な陰イオンを有する構造を有することが知られている。本発明の固体電解質において、層状複合酸化物は、層状複水酸化物の酸化物を含むが、層状複合酸化物の結晶構造は、層状複水酸化物の結晶構造と同じく、金属酸化物の層間に、交換可能な陰イオンを有する構造を有する。本発明の固体電解質中の層状複合酸化物の結晶構造が、複水酸化物の結晶構造と同じであるか否かは、X線回折測定(XRD測定)から得られるスペクトルのピーク位置から判断できる。具体的には、固体電解質のXRD測定から得られるスペクトル(XRDピーク)と、対照である複水酸化物のXRDピークとを対比することで、層状複合酸化物の結晶構造が、複水酸化物の結晶構造と同じであるか否かを判断できる。特に、対照である複水酸化物は、層状構造であることによって特定の位置にピークを有するので、このピークを固体電解質における層状複合酸化物が有しているか否かによって、複水酸化物の結晶構造と同じであるか否かを容易に判断することができる。
【0016】
本発明の固体電解質が含む層状複合酸化物は、アルミニウムを少なくとも含む金属の層状複合酸化物であって、層状構造の層間にリチウムイオン電解質のアニオンが固定化された構造を有し得る。
【0017】
層状複合酸化物は、アルミニウムと、金属Mとを含む金属の複合酸化物である。ここで、金属Mは、アルミニウム以外の金属である。
【0018】
金属Mの種類は、層状複合酸化物を形成することができる限りは特に限定されず、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の各種の金属を適用することができる。中でも金属Mは、Li、Mg、Zn及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。この場合、アルミニウムと層状複合酸化物を形成しやすく、得られる固体電解質は、高いイオン導電率を有しやすく、電気化学安定性も向上しやすい。特に、金属Mは、Liを含むことが好ましい。金属Mは1種単独で用いても良いし、異なる2種以上を併用することもできる。
【0019】
層状複合酸化物は、アルミニウム及び金属Mを含む限り、本発明の効果が阻害されない範囲で他の金属を含むこともできる。層状複合酸化物に含まれる金属は、アルミニウム及び金属Mのみであってもよい。
【0020】
特に好ましい層状複合酸化物は、アルミニウム及びリチウムの複合酸化物である。
【0021】
層状複合酸化物において、アルミニウムと金属Mとの含有割合は特に限定されない。例えば、層状複合酸化物中に含まれるアルミニウムと金属Mとのモル比(アルミニウム:金属M)は10:1~0.1:1とすることができ、8:1~1:1であることが好ましく、6:1~1:1であることがより好ましく、4:1~2:1であることが特に好ましい。
【0022】
(リチウム塩を含むイオン液体)
本発明の固体電解質は、層状複合酸化物に加えて、リチウム塩を含むイオン液体をさらに含有する。
【0023】
リチウム塩の種類は特に限定されず、各種のリチウム塩を挙げることができ、例えば、リチウムイオン電池に用いられている公知のリチウム塩を広く適用することができる。具体的にリチウム塩としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFIL)及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等の各種のリチウムイミド塩の他、リチウムビスオキサレートボラート(LiBOB)、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiSbF6等を挙げることができる。これらのリチウム塩は、固体電解質に単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0024】
リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFIL)であることが特に好ましい。
【0025】
イオン液体の種類は特に限定されず、各種のイオン液体を挙げることができ、例えば、リチウムイオン電池に用いられている公知のイオン液体を広く適用することができる。具体的にイオン液体としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI-TFSI)、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TMBATFSI)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(EMI-FSI)、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13-TFSI)、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DEME-TFSI)、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボラート(DEME-BF4)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(EMI-BF4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BMI-TFSI)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(BMI-BF4)、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムテトラフルオロボラート(PP13-BF4)、1-メチル-1-プロピルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PY13-TFSI)、1-メチル-1-プロピルピロリジウムテトラフルオロボラート(PY13-BF4)等を挙げることができる。これらのイオン液体は、固体電解質に単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0026】
イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI-TFSI)であることが特に好ましい。
【0027】
(固体電解質)
固体電解質は、前述のように、層状複合酸化物と、リチウム塩を含むイオン液体とを含有する。一実施態様において固体電解質は、層状複合酸化物の層間に、リチウム塩のアニオン及び/又はイオン液体のアニオンが挿入されるように存在し、また、斯かる層間には、リチウムイオンも存在し得る。必ずしも限定的な解釈を望むものではないが、リチウムイオンは層間を自由に往復することが可能であり、これにより、アニオンの干渉が回避されると推察される。この結果、本発明の固体電解質は、リチウムイオン移動経路を提供することだけではなく、固体電解質のイオン伝導率を高めることが可能となり、かつ、電気化学的安定性も高まるものと考えられる。
【0028】
固体電解質において、層状複合酸化物の含有割合は特に限定されない。例えば、固体電解質において、層状複合酸化物の含有割合は、層状複合酸化物、リチウム塩及びイオン液体の総質量に対して10~60質量%とすることができる。この場合、固体電解質は、より高いイオン伝導率を有することができ、また、液状になるのを防止することができる。層状複合酸化物の含有割合は、層状複合酸化物、リチウム塩及びイオン液体の総質量に対して20~50質量%であることが好ましく、28~40質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
固体電解質において、リチウム塩及びイオン液体の含有割合は特に限定されない。例えば、固体電解質において、リチウム塩及びイオン液体の含有割合は、層状複合酸化物、リチウム塩及びイオン液体の総質量に対して40~90質量%とすることができる。この場合、固体電解質は、より高いイオン伝導率を有することができ、また、液状になるのを防止することができる。リチウム塩及びイオン液体の含有割合は、層状複合酸化物、リチウム塩及びイオン液体の総質量に対して50~80質量%であることが好ましく、60~72質量%であることがさらに好ましい。また、リチウム塩のイオン液中における濃度は、例えば、0.5~5mol・L-1とすることができる。
【0030】
本発明の固体電解質はイオン液体を含むものであるが、電解質自体は固体状、もしくはゲル状であり、液体状ではない。層状複水酸化物と、リチウム塩及びイオン液体との量を適宜調整することで、固体状又はゲル状にすることができる。従って、本発明の固体電解質は正確にいうならば、「擬固体電解質」である。
【0031】
本発明の固体電解質は、上記のように構成されることで、高いイオン導電率と、優れた電気化学安定性を有し、また、リチウムイオン電池に組み込むことで、リチウムイオン電池に高い安定性をもたらすことができる。従って、本発明の固体電解質は、リチウムイオン電池用の電解質として好適である。
【0032】
本発明の固体電解質を製造する方法は特に限定されず、例えば、種々の製造方法を採用することができる。例えば、後記する工程1、工程2及び工程3を備える製造方法によって製造することができる。
【0033】
2.リチウムイオン電池用固体電解質の製造方法
本発明のリチウムイオン電池用固体電解質の製造方法は、下記の工程1~3を備えることができる。
工程1:アルミニウム源と、金属M源(前記アルミニウム源は除く)と、水とを含む原料をアルカリ剤の存在下、加熱処理する工程。
工程2:前記加熱処理で得られた生成物を焼成処理して焼成物を得る工程。
工程3:前記焼成物と、リチウム塩及びイオン液体を含む溶液とを混合して乾燥処理することで固体電解質を得る工程。
【0034】
上記工程1~3を備える製造方法により、例えば、前述の本発明の固体電解質を製造することができる。
【0035】
(工程1)
工程1では、アルミニウム源と、金属M源(前記アルミニウム源は除く)と、水とを含む原料をアルカリ剤の存在下で加熱処理する。これにより得られる生成物は、アルミニウムと金属Mとを含む複水酸化物を含む。具体的に工程1は、いわゆる水熱合成によって、複水酸化物を製造する工程である。
【0036】
アルミニウム源は生成物である複水酸化物を形成する金属にアルミニウムをもたらすための出発原料である。アルミニウム源は、アルミニウム単体であってもよいし、アルミニウムを含む化合物であってもよい。アルミニウムを含む化合物は水和物であってもよい。
【0037】
アルミニウムを含む化合物としては、例えば、アルミニウムの塩化物、アルミニウムのハロゲン化物、アルミニウムの無機酸塩、アルミニウムの有機酸塩等を広く使用することができる。アルミニウムの無機酸塩としては、アルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びリン酸水素塩等からなる群より選ばれる1種以上を挙げることができる。アルミニウムの無機酸塩は、異なる2種以上のアニオンを含むこともできる。アルミニウムの有機酸塩としては、アルミニウムの酢酸塩、シュウ酸塩、蟻酸塩、コハク酸塩等からなる群より選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0038】
アルミニウム源はアルミニウムを含む化合物であることが好ましく、アルミニウムの無機酸塩であることがより好ましく、中でも、アルミニウムの硝酸塩であることが特に好ましい。
【0039】
金属M源は生成物である複水酸化物を形成する金属に金属Mをもたらすための出発原料である。ここで、金属Mは、アルミニウム以外の金属である限りは特に限定されず、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の各種の金属を適用することができる。中でも金属Mは、Li、Mg、Zn及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。この場合、アルミニウムと層状複水酸化物を形成しやすく、得られる固体電解質は、高いイオン導電率を有しやすく、電気化学安定性も向上しやすい。特に、金属Mは、Liを含むことが好ましい。金属Mは1種単独で用いても良いし、異なる2種以上を併用することもできる。
【0040】
金属M源は、金属M単体であってもよいし、金属Mを含む化合物であってもよい。金属Mを含む化合物は水和物であってもよい。
【0041】
金属Mを含む化合物としては、例えば、金属Mの塩化物、金属Mのハロゲン化物、金属Mの無機酸塩、金属Mの有機酸塩等を広く使用することができる。金属Mの無機酸塩としては、金属Mの硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びリン酸水素塩等からなる群より選ばれる1種以上を挙げることができる。金属Mの無機酸塩は、異なる2種以上のアニオンを含むこともできる。金属Mの有機酸塩としては、金属Mの酢酸塩、シュウ酸塩、蟻酸塩、コハク酸塩等からなる群より選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0042】
金属M源は金属Mを含む化合物であることが好ましく、金属Mの無機酸塩であることがより好ましく、中でも、金属Mの硝酸塩であることが特に好ましい。
【0043】
工程1で使用する原料は、アルミニウム源と、金属M源と、水とを含む。原料に含まれるアルミニウムと金属Mとの含有割合は特に限定されない。例えば、原料中に含まれるアルミニウムと金属Mとのモル比(アルミニウム:金属M)は10:1~0.1:1とすることができ、8:1~1:1であることが好ましく、6:1~1:1であることがより好ましく、4:1~2:1であることが特に好ましい。
【0044】
また、原料に含まれるアルミニウム源及び金属M源の濃度も特に限定されず、アルミニウム源の濃度は、例えば、0.1~5M(好ましくは、0.5~1M)とすることができ、金属M源の濃度は、例えば、0.01~1M(好ましくは、0.1~0.5M)とすることができる。
【0045】
工程1で使用するアルカリ剤の種類も特に限定されず。例えば、公知のアルカリを広く使用することができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を挙げることができる。アルカリの使用量も特に限定されず、例えば、原料のpHが7以上、好ましくは10以上となるようにアルカリの使用量を調節することができる。
【0046】
工程1において、加熱処理の条件は特に限定されない。前述のように、工程1では水熱合成を行うので、例えば、公知の水熱合成の条件と同様とすることができる。具体的に、加熱処理において、加熱温度は、例えば、70~150℃とすることができ、好ましくは80~130℃であり、より好ましくは90~120℃である。加熱時間も特に限定されず、例えば、3~24時間とすることができる。加熱処理をするために使用する反応容器も特に限定されず、例えば、公知の耐圧溶液を広く使用することができる。水熱合成における容器内の圧力も適宜設定することができる。
【0047】
上記加熱処理により、生成物は、例えば、沈殿物として得られるので、適宜の方法により、生成物を分離及び精製することができる。
【0048】
工程1で得られる生成物は、アルミニウム及び金属Mの複水酸化物を含む。
【0049】
(工程2)
工程2は、前記工程1の加熱処理で得られた生成物を焼成処理して焼成物を得るための工程である。焼成処理の方法は特に限定されず、例えば、公知の焼成方法を広く採用することができる。
【0050】
焼成温度は、例えば、300~700℃とすることができ、400~600℃とすることが好ましく、450~580℃とすることがさらに好ましい。焼成時間は、焼成温度によって適宜選択すればよく、例えば、1~10時間とすることができる。焼成処理を行う際の昇温速度も特に限定されない。
【0051】
焼成処理は、空気中及び不活性ガス雰囲気中のいずれで行ってもよい。好ましくは、空気中で焼成を行うことである。焼成は、例えば、市販の加熱炉等の公知の加熱装置を使用することができる。
【0052】
上記焼成によって、工程1で得られた複水酸化物は、複合酸化物へと変化し得る。
【0053】
(工程3)
工程3は、前記工程2で得られた焼成物と、リチウム塩及びイオン液体を含む溶液とを混合して乾燥処理することで固体電解質を得るための工程である。
【0054】
工程3で使用するリチウム塩及びイオン液体は、前述の固体電解質に含まれるリチウム塩及びイオン液体と同様の種類を例示することができる。
【0055】
工程3では、リチウム塩及びイオン液体を含む溶液と、工程2で得られた焼成物とを混合することで混合物を得て、この混合物を乾燥処理することで固体電解質を得ることができる。
【0056】
リチウム塩及びイオン液体を含む溶液は、例えば、リチウム塩及びイオン液体が溶解した水溶液を挙げることができる。リチウム塩及びイオン液体を含む溶液において、リチウム塩の濃度は、例えば、0.1~50質量%とすることができ、0.25~40質量%とすることが好ましい。また、リチウム塩及びイオン液体を含む溶液において、イオン液体の濃度は、例えば、0.1~50質量%とすることができ、1~40質量%とすることが好ましい。リチウム塩及びイオン液体を含む溶液において、リチウム塩及びイオン液体の総質量に対しイオン液体は50~99質量%とすることができ、60~95質量%とすることが好ましい。
【0057】
リチウム塩及びイオン液体を含む溶液を調製する方法は特に限定されず、例えば、リチウム塩及びイオン液体と水とを混合した後、加熱を施してもよい。この場合、例えば、加熱温度は50~150℃とすることができる。この加熱は、真空中で行うこともできる。
【0058】
リチウム塩及びイオン液体を含む溶液と、焼成物とを混合する方法も特に限定されず、公知の混合手段を広く採用することができる。リチウム塩及びイオン液体を含む溶液と、焼成物との混合割合も特に限定されず、例えば、焼成物100質量部あたり、リチウム塩及びイオン液体の総質量が50~500質量部とすることが好ましく、80~300質量部であることが好ましく、100~250質量部であることがさらに好ましい。この場合、得られる固体電解質は、高いイオン導電率と、優れた電気化学安定性を有しやすい。
【0059】
リチウム塩及びイオン液体を含む溶液と、焼成物とを混合した混合物を調製した後、必要に応じて混合物の加熱処理を行ってもよい。例えば、混合物を50~150℃の範囲に加熱処理することができる。
【0060】
リチウム塩及びイオン液体を含む溶液と、焼成物とを混合して得られた混合物は、乾燥処理することで、イオン液体以外の溶媒が蒸発し、これにより、固体電解質が得られる。この場合の乾燥処理の温度も特に限定されず、適宜の条件で行うことができる。
【0061】
工程3では、焼成物である複合酸化物と、リチウム塩及びイオン液体とが混合されることで、複合酸化物の結晶構造は、複水酸化物の結晶構造へと回復する(いわゆる記憶効果。後記する
図6も参照)。工程2で複水酸化物が焼成されることで、複合酸化物が形成されるが、工程3でリチウム塩及びイオン液体と混合されることで、記憶効果が発現する結果、複合酸化物の結晶性が複水酸化物の結晶構造へと回復するものと推測される。
【0062】
固体電解質の製造方法では、前記工程1、工程2及び工程3以外の工程を備えることもできる。
【0063】
3.リチウムイオン電池
本発明のリチウムイオン電池は、前述の本発明の固体電解質を電解質として備える。また、本発明のリチウムイオン電池は、前記工程1~3を備える製造方法で得られた固体電解質を電解質として備えることもできる。
【0064】
本発明のリチウムイオン電池は、前記固体電解質を備える限り、その他の構成は、例えば、公知のリチウムイオン電池と同様とすることができる。
【0065】
例えば、陰極(カソード)は、活物質、導電剤、バインダ等を含むスラリーを集電体に塗布した後、成形することで作成することができる。スラリーに含まれる成分は、公知のリチウムイオン電池を製作するために使用するスラリーと同様とできる。
【0066】
活物質としては、例えば、LiFePO4、LiFeO2、LiMnPO4、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4などが挙げられる。導電剤としては、スーパーP(導電性カーボンブラック)の他、アセチレンカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、活性炭等の各種炭素材料を挙げることができる。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。スラリーに含まれる溶媒も特に制限されず、例えば、N-メチル-2-ピロリドン等を挙げることができる。
【0067】
集電体としては、アルミニウム、チタン、白金、モリブデン、ステンレス、銅等の金属箔が挙げられる。集電体の形状は、例えば、多孔質体、箔、板、繊維からなるメッシュ等が挙げられる。
【0068】
また、陽極(アノード)としては、例えば、リチウム金属アノード等、公知の材料を広く適用することができる。
【0069】
リチウムイオン電池の大きさ及び形状は、用途に応じて適宜決定することができる。また、リチウムイオン電池を組み立てる方法も特に制限はなく、公知の組み立て方法と同様の方法でリチウムイオン電池を得ることができる。
【0070】
本発明のリチウムイオン電池は、前述の固体電解質を構成要素として備えることから、優れた安定性を有し、また、良好な容量可逆性と高いクーロン効率とを兼ね備えるものである。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
1.18gのLiNO3と22.82gのAl(NO3)3・9H2Oとを100mLの蒸留水に溶解しLiNO3-Al(NO3)3・9H2O溶液を得た。NaOH10.75gを蒸留水50mLに溶解した後、ゆっくり上記のLiNO3-Al(NO3)3・9H2O溶液に添加してpH10以上に調整し、1時間にわたって急速に攪拌した後、テフロン(登録商標)で裏打ちしたステンレス製オートクレーブに移して100℃で6時間保持することで水熱合成を行った。その後、室温まで自然冷却し、内容物の白色沈殿物を遠心分離により分離し、その後、脱イオン水および無水エタノールでそれぞれ3回連続して洗浄し、最後に60℃で24時間乾燥させることで、生成物を得た(工程1)。得られた生成物をLi-AlLDHと表記した。
【0073】
次に、得られたLi-AlLDHを、加熱炉により、昇温速度2℃/minで550℃までに昇温し、この温度で4時間保持することで焼成処理することで焼成物を得た(工程2)。一方、リチウム塩としてLiTFIL(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を、イオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI-TFSI)に溶解し、真空中、120℃で12時間加熱することで、リチウム塩及びイオン液体の水溶液(Li-IL-H2O溶液)を調製した。斯かる溶液中、リチウム塩の濃度は0.4mass%、イオン液体の濃度は1.1mass%とした。このLi-IL-H2O溶液と前記焼成物とを、焼成物の質量と、リチウム塩及びイオン液体の総質量との比Li-AlLDH:Li-ILが1:1.5となるように両者を混合し、80℃で12時間急速に攪拌することで混合物を得た。この混合物を60℃のオーブン内に12時間静置した後、真空オーブンに移して、さらに60℃で12時間乾燥処理を行った。これにより、固体電解質を得た(工程3)。得られた固体電解質を「Li-AlLDH/Li-IL(1:1.5)」と表記した。
【0074】
(実施例2)
焼成物の質量と、リチウム塩及びイオン液体の総質量との比Li-AlLDH:Li-ILが1:2.0となるように両者を混合して混合物を得たこと以外は、実施例1と同様の方法により、固体電解質を得た。得られた固体電解質を「Li-AlLDH/Li-IL(1:2.0)」と表記した。
【0075】
(実施例3)
焼成物の質量と、リチウム塩及びイオン液体の総質量との比Li-AlLDH:Li-ILが1:2.5となるように両者を混合して混合物を得たこと以外は、実施例1と同様の方法により、固体電解質を得た。得られた固体電解質を「Li-AlLDH/Li-IL(1:2.5)」と表記した。
【0076】
(比較例1)
リチウム塩としてLiTFIL(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を、イオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI-TFSI)に溶解し、真空中、120℃で12時間加熱することで、リチウム塩及びイオン液体の混合物を液体電解質として調製した。この液体電解質中、リチウム塩:イオン液体(質量比)は1:2.65とした。
【0077】
(電池の製作)
LiFePO4、導電性添加剤(superP)、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる材料を準備した。この材料において、LiFePO4:superP:PVDF=8:1:1(質量比)とした。前記材料に、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を溶媒として添加し、12時間攪拌して均一に混合した。得られたスラリーをAl集電体にコーティングし、真空中120℃で12時間乾燥させることで、陰極(カソード)を製作した。この陰極と、陽極(リチウム金属アノード)と、実施例又は比較例で得られた電解質とを用いて、公知の方法により、ブロック電池を組み立てた。
【0078】
(評価結果)
図1は、実施例1~3で得た固体電解質のX線回折測定(XRD)結果を示している。X線回折測定には、Rigaku社製の「SmartLab」を使用し、2θ=10~100°の範囲でCu-Kα(λ=1.540Å)放射線源を使用して測定を行った。
【0079】
なお、
図1に示されているLi-AlLDHは、工程1で得られたLi及びAlの複水酸化物のXRDスペクトル、Li-AlLDOは、工程2で得られたLi及びAlの複合酸化物のXRDスペクトル、LiTFSIは、対照であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのリチウム塩のXRDスペクトルである。また、
図1の(b)は(a)の一部拡大図である。
【0080】
LiTFSIに対応したXRDピークは、リチウム塩が完全にイオン液体に溶解したため、目立ったものではなかった。Li-AlLDHが焼成した後、LDH(複水酸化物)はLDO(複合酸化物)に変化したため、結晶性の低下が認められた。しかし、Li-AlLDHは、いわゆる「記憶効果」に基づく再構成法によって、Li-ILが添加されたことで結晶性が回復していることが認められた。もっとも、回復したLi-AlLDHの格子間隔は、NO3
-(2.64Å)とTFSI-(3.26Å)との半径が類似していることから、ほとんど変化はしなかった。
【0081】
図2は、電池の安定性試験の結果を示し、(a)は比較例1で得た液体電解質を備える電池、(b)は実施例2で得られた固体電解質を備える電池の安定性試験の結果である。
【0082】
実施例2で得られた固体電解質を備える場合、Li金属との良好な適合性を有し、比較例1のLi-IL液体電解質を使用した電池と比べて、電池の安定性は大きく改善することがわかった。実施例2で得られた固体電解質では、従来は制御不能なLi樹枝状結晶の形成と成長の抑制にプラスの効果があったためであると推察される。
【0083】
図3は、各電解質のイオン伝導率の測定結果を示している。この測定は、米国VersaSTAT4 ポテンションスタットガルバノスタット電気化学ワークステーションを用い、バッテリーとしては、SUS symmetric batteryを用い、測定温度30℃、周波数1000000-10Hzの条件で行った。
【0084】
図3から、各実施例で得られた固体電解質は高いイオン伝導率を有していることがわかった。特に実施例3で得られた固体電解質は、30℃で1.07×10
-3Scm
-1のイオン伝導度を有していた(実施例1は4.45×10
-4Scm
-1、実施例2は8.54×10
-4Scm
-1)。
【0085】
図4は、比較例1で得られた液体電解質(
図4(a))及び実施例2で得られた固体電解質(
図4(b))の電気化学安定性試験の結果を示している。この測定は、米国VersaSTAT4 ポテンションスタットガルバノスタット電気化学ワークステーションを用い、バッテリーとしては、SUS/電解質/batteryを用い、測定温度40℃、電圧-1~5V、スキャン速度1mVs
-1の条件で行った。
【0086】
図4(a)(比較例1)において、-0.5~0.5V範囲のピークは、金属イオンがリチウム表面に挿入・脱離が起こっていることを表し、1/0.8V付近発生するピークはイオン液体の[EMIM]
+およびリチウム塩[TFSI]
-が共に界面で分解していることを示している。一方、実施例2のように(
図4(b))、Li-AlLDHをLi-ILのホストとして使用した場合、広い電位範囲では新しいピークが現れないため、広い電位範囲でLi金属に対して優れた安定性を有していることがわかった。
【0087】
図5は、実施例2で得られた固体電解質を有する電池の特性評価の結果を示している。この測定は、SD8バッテリーテストを用い、測定温度40℃、電圧2.5~4Vの条件で行った。
【0088】
0.1、0.3、0.5、1、0.1Cそれぞれにおいて、最初の充放電サイクルでは放電容量は151.8、146.6、138.9、107.1、143.9mAh・g-1であることがわかり、良好な容量可逆性と高いクーロン効率を有していた。
【0089】
図6には、層状複合酸化物の層状構造とそのリチウムイオンの移動機構を模式的に示している。上記実施例の結果から、層状複合酸化物の層状構造の層間にリチウムイオン電解質のアニオンが固定化されることによって、リチウムイオンが層状複合酸化物の層間に自由に往復して、アニオンの干渉が回避されたものと推察される。また、この構造は、リチウムイオンの移動経路を提供することだけではなく、固体電解質のイオン伝導率を高めるほか、固体電解質の安定性も高めるものと考えられる。
【0090】
また、前述のように、Li-AlLDHが焼成した後、LDHはLDO(複合酸化物)に変化するものの、固体電解質はLi-ILを含むことで、前記記憶効果に基づく再構成法によって、
図6に示すように結晶性が回復するものと推測される。