IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図1
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図2
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図3
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図4
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図5
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図6
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図7
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図8
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図9
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図10
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図11
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図12
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図13
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図14
  • 特許-エネルギ移動回路、及び蓄電システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】エネルギ移動回路、及び蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240419BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240419BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021522722
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2020017888
(87)【国際公開番号】W WO2020241144
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019097418
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】倉貫 正明
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-294322(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152086(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/8567(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタと、
直列接続されたn(nは2以上の整数)個のセルと前記インダクタ間に設けられ、前記n個のセルのいずれか1個あるいは直列接続される複数個のセルからなる選択セルの両端と、前記インダクタの両端を導通させることが可能なセル選択回路と、
前記セル選択回路がいずれのセルも選択していない状態で、前記インダクタを含む閉ループを形成するためのクランプスイッチを有するクランプ回路と、
前記セル選択回路と前記クランプ回路を制御する制御部と、を備え、
前記セル選択回路は、
前記インダクタの一端に接続される第1配線と、
前記インダクタの他端に接続される第2配線と、
前記選択セルの両端の一方を前記第1配線に選択的に接続する複数の第1配線側スイッチと、
前記選択セルの両端の他方を前記第2配線に選択的に接続する少なくとも1個の第2配線側スイッチと、を含み、
前記クランプスイッチは、並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記第1配線側スイッチは、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記第2配線側スイッチは、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記制御部は、
前記n個のセルの内の放電対象の前記選択セルである放電セルから前記インダクタに電流が流れるように、前記放電セルの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記放電セルの両側のノードに前記インダクタの両端が接続される放電経路を形成し、前記インダクタに流れる電流を増加させるインダクタ電流増加状態、
前記インダクタの両端間にクランプ電流が流れるように、前記放電セルの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記インダクタの両端間が前記クランプスイッチを介して接続されるクランプ経路を生成し、前記インダクタに流れる電流を前記クランプ経路で循環させるクランプ状態、
前記n個のセルの内の充電対象の前記選択セルである充電セルに前記インダクタから電流が流れるように、前記充電セルの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記充電セルの両側のノードに前記インダクタの両端が接続される充電経路を生成し、前記インダクタに流れる電流を減少させるインダクタ電流減少状態の順に制御し、
前記クランプ状態は、前記クランプ経路を形成する複数のスイッチング素子のうち、少なくとも1個のスイッチング素子をオフ状態にして当該スイッチング素子に並列のダイオードを経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子をターンオンして前記複数のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2クランプ状態を有し、
前記制御部は、
前記インダクタ電流増加状態において、前記放電経路を形成する複数のスイッチング素子の全てをオン状態にした後に、次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記クランプスイッチを形成する複数のスイッチング素子のうちの一部のスイッチング素子をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成することを特徴とするエネルギ移動回路。
【請求項2】
前記セル選択回路は、
前記直列接続されたn個のセルの各ノード(n+1)の内、奇数ノードと前記第1配線との間にそれぞれ接続される複数の第1配線側スイッチと、
前記直列接続されたn個のセルの各ノード(n+1)の内、偶数ノードと前記第2配線との間にそれぞれ接続される少なくとも1個の第2配線側スイッチと、を含み、
前記クランプ回路は、互いに直列に接続された第1クランプスイッチ及び第2クランプスイッチと、互いに直列に接続された第3クランプスイッチ及び第4クランプスイッチとを備え、
前記インダクタは、前記第1クランプスイッチ及び前記第2クランプスイッチ間のノードと前記第3クランプスイッチ及び前記第4クランプスイッチ間のノードとの間に接続され、
前記第1クランプスイッチ及び前記第3クランプスイッチの前記インダクタに接続されていない一端は、前記第1配線に接続され、
前記第2クランプスイッチ及び前記第4クランプスイッチの前記インダクタに接続されていない一端は、前記第2配線に接続され、
前記クランプ回路は、前記インダクタと前記第1クランプスイッチ、前記第2クランプスイッチ、前記第3クランプスイッチ及び前記第4クランプスイッチとによりフルブリッジ接続されたことを特徴とする請求項1に記載のエネルギ移動回路。
【請求項3】
前記セル選択回路は、
前記直列接続されたn個のセルの各ノードと、前記第1配線間にそれぞれ接続される(n+1)個の第1配線側スイッチと、
前記直列接続されたn個のセルの各ノードと、前記第2配線間にそれぞれ接続される(n+1)個の第2配線側スイッチと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギ移動回路。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2クランプ状態の終了後、前記充電経路を形成する8個のスイッチング素子のうち、前記第1配線側スイッチ又は前記第2配線側スイッチを構成する1個のスイッチング素子と、前記クランプスイッチを構成する1個のスイッチング素子の2個のスイッチング素子をオフ状態にして当該2個のスイッチング素子に並列のダイオードを経由して充電電流を流す第1充電状態、当該オフ状態の2個のスイッチング素子をターンオンして前記8個のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2充電状態の順に切り替えることを特徴とする請求項2に記載のエネルギ移動回路。
【請求項5】
前記制御部は、
前記インダクタ電流増加状態の終了後、前記クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子のうち、1個のスイッチング素子をオフ状態にして当該スイッチング素子に並列のダイオードを経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子をターンオンして前記4個のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2クランプ状態の順に切り替え、
前記第2クランプ状態の終了後、前記クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子のうち、前記オフ状態にする1個のスイッチング素子と、当該スイッチング素子と逆向きに直列に接続された1個のスイッチング素子の2個のスイッチング素子をターンオフし、前記第1充電状態から前記第2充電状態に切り替えるタイミングより遅延したタイミングで且つ次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記ターンオフした2個のスイッチング素子の1個をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成することを特徴とする請求項4に記載のエネルギ移動回路。
【請求項6】
前記n個のセルのそれぞれの電圧を検出する電圧検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記電圧検出部により検出された前記n個のセルの電圧をもとに、前記n個のセル間の均等化処理を実行する請求項1から5のいずれか1項に記載のエネルギ移動回路。
【請求項7】
前記制御部は、前記電圧検出部により検出された前記n個のセルの電圧をもとに、前記n個のセルの目標電圧または目標容量を決定し、前記目標電圧または目標容量より高いセルを放電対象のセルに決定し、前記目標電圧または目標容量より低いセルを充電対象のセルに決定することを特徴とする請求項6に記載のエネルギ移動回路。
【請求項8】
直列接続されたn(nは2以上の整数)個のセルと、
請求項1から7のいずれか1項に記載のエネルギ移動回路と、
を備えることを特徴とする蓄電システム。
【請求項9】
インダクタと、
直列接続されたm(mは2以上の整数)個のモジュールと前記インダクタ間に設けられ、前記m個のモジュールのいずれか1個あるいは直列接続される複数個のモジュールからなる選択モジュールの両端と、前記インダクタの両端を導通させることが可能なモジュール選択回路と、
前記モジュール選択回路がいずれのモジュールも選択していない状態で、前記インダクタを含む閉ループを形成するためのクランプスイッチを有するクランプ回路と、
前記モジュール選択回路と前記クランプ回路を制御する制御部と、を備え、
前記モジュール選択回路は、
前記インダクタの一端に接続される第1配線と、
前記インダクタの他端に接続される第2配線と、
前記選択モジュールの両端の一方を前記第1配線に選択的に接続する複数の第1配線側スイッチと、
前記選択モジュールの両端の他方を前記第2配線に選択的に接続する少なくとも1個の第2配線側スイッチと、を含み、
前記クランプスイッチは、並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記第1配線側スイッチは、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記第2配線側スイッチは、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記制御部は、
前記m個のモジュールの内の放電対象の前記選択モジュールである放電モジュールから前記インダクタに電流が流れるように、前記放電モジュールの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記放電モジュールの両側のノードに前記インダクタの両端が接続される放電経路を形成し、前記インダクタに流れる電流を増加させるインダクタ電流増加状態、
前記インダクタの両端間にクランプ電流が流れるように、前記放電モジュールの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記インダクタの両端間が前記クランプスイッチを介して接続されるクランプ経路を生成し、前記インダクタに流れる電流を前記クランプ経路で循環させるクランプ状態、
前記m個のモジュールの内の充電対象の前記選択モジュールである充電モジュールに前記インダクタから電流が流れるように、前記充電モジュールの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記充電モジュールの両側のノードに前記インダクタの両端が接続される充電経路を生成し、前記インダクタに流れる電流を減少させるインダクタ電流減少状態の順に制御し、
前記クランプ状態は、前記クランプ経路を形成する複数のスイッチング素子のうち、少なくとも1個のスイッチング素子をオフ状態にして当該スイッチング素子に並列のダイオードを経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子をターンオンして前記複数のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2クランプ状態を有し、
前記制御部は、
前記インダクタ電流増加状態において、前記放電経路を形成する複数のスイッチング素子の全てをオン状態にした後に、次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記クランプスイッチを形成する複数のスイッチング素子のうちの一部のスイッチング素子をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成することを特徴とするエネルギ移動回路。
【請求項10】
前記モジュール選択回路は、
前記直列接続されたm個のモジュールの各ノード(m+1)の内、奇数ノードと前記第1配線との間にそれぞれ接続される複数の第1配線側スイッチと、
前記直列接続されたm個のモジュールの各ノード(m+1)の内、偶数ノードと前記第2配線との間にそれぞれ接続される少なくとも1個の第2配線側スイッチと、を含み、
前記クランプ回路は、互いに直列に接続された第1クランプスイッチ及び第2クランプスイッチと、互いに直列に接続された第3クランプスイッチ及び第4クランプスイッチとを備え、
前記インダクタは、前記第1クランプスイッチ及び前記第2クランプスイッチ間のノードと前記第3クランプスイッチ及び前記第4クランプスイッチ間のノードとの間に接続され、
前記第1クランプスイッチ及び前記第3クランプスイッチの前記インダクタに接続されていない一端は、前記第1配線に接続され、
前記第2クランプスイッチ及び前記第4クランプスイッチの前記インダクタに接続されていない一端は、前記第2配線に接続され、
前記クランプ回路は、前記インダクタと前記第1クランプスイッチ、前記第2クランプスイッチ、前記第3クランプスイッチ及び前記第4クランプスイッチとによりフルブリッジ接続されたことを特徴とする請求項9に記載のエネルギ移動回路。
【請求項11】
前記モジュール選択回路は、
前記直列接続されたm個のモジュールの各ノードと、前記第1配線間にそれぞれ接続される(m+1)個の第1配線側スイッチと、
前記直列接続されたm個のモジュールの各ノードと、前記第2配線間にそれぞれ接続される(m+1)個の第2配線側スイッチと、を含むことを特徴とする請求項9に記載のエネルギ移動回路。
【請求項12】
前記制御部は、
前記第2クランプ状態の終了後、前記充電経路を形成する8個のスイッチング素子のうち、前記第1配線側スイッチ又は前記第2配線側スイッチを構成する1個のスイッチング素子と、前記クランプスイッチを構成する1個のスイッチング素子の2個のスイッチング素子をオフ状態にして当該2個のスイッチング素子に並列のダイオードを経由して充電電流を流す第1充電状態、当該オフ状態の2個のスイッチング素子をターンオンして前記8個のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2充電状態の順に切り替えることを特徴とする請求項10に記載のエネルギ移動回路。
【請求項13】
前記制御部は、
前記インダクタ電流増加状態の終了後、前記クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子のうち、1個のスイッチング素子をオフ状態にして当該スイッチング素子に並列のダイオードを経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子をターンオンして前記4個のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2クランプ状態の順に切り替え、
前記第2クランプ状態の終了後、前記クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子のうち、前記オフ状態にする1個のスイッチング素子と、当該スイッチング素子と逆向きに直列に接続された1個のスイッチング素子の2個のスイッチング素子をターンオフし、前記第1充電状態から前記第2充電状態に切り替えるタイミングより遅延したタイミングで且つ次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記ターンオフした2個のスイッチング素子の1個をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成することを特徴とする請求項12に記載のエネルギ移動回路。
【請求項14】
前記m個のモジュールのそれぞれの電圧を検出する電圧検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記電圧検出部により検出された前記m個のモジュールの電圧をもとに、前記m個のモジュール間の均等化処理を実行する請求項9から13のいずれか1項に記載のエネルギ移動回路。
【請求項15】
前記制御部は、前記電圧検出部により検出された前記m個のモジュールの電圧をもとに、前記m個のモジュールの目標電圧または目標容量を決定し、前記目標電圧または目標容量より高いモジュールを放電対象のモジュールに決定し、前記目標電圧または目標容量より低いモジュールを充電対象のモジュールに決定することを特徴とする請求項14に記載のエネルギ移動回路。
【請求項16】
前記m個のモジュールは、それぞれ、
直列接続された複数のセルと、
前記複数のセルのそれぞれのセル電圧を検出するセル電圧検出部と、
前記セル電圧検出部により検出されるセル電圧に基づいて同一モジュール内の複数のセル電圧を均等化するセル用均等化回路と、を含み、
前記セル用均等化回路は、前記制御部と通信により互いに連携して動作し、前記m個のモジュール間の均等化処理が実行された後、前記複数のセル間の均等化処理を実行することを特徴とする請求項14に記載のエネルギ移動回路。
【請求項17】
直列接続されたm(mは2以上の整数)個のモジュールと、
請求項9から16のいずれか1項に記載のエネルギ移動回路と、
を備えることを特徴とする蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続された複数のセルやモジュール間のエネルギを移動するエネルギ移動回路、及び蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池が様々な用途で使用されている。例えば、EV(Electric Vehicle)、HEV (Hybrid Electric Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)の走行用モータに電力を供給することを目的とする車載(電動自転車を含む)用途、ピークシフト、バックアップを目的とした蓄電用途、系統の周波数安定化を目的としたFR(Frequency Regulation)用途などに使用されている。
【0003】
一般的に、リチウムイオン電池などの二次電池では電力効率の維持および安全性担保の観点から、直列接続された複数のセル間において容量を均等化する均等化処理が実行される。均等化処理にはパッシブ方式とアクティブ方式がある。パッシブ方式は、直列接続された複数のセルにそれぞれ放電抵抗を接続し、最も電圧が低いセルの電圧に、他のセルの電圧を合わせるように他のセルを放電して、複数のセル間の容量を揃える方式である。アクティブ方式は、直列接続された複数のセル間でエネルギ移動を行うことにより、複数のセル間の容量を揃える方式である。アクティブ方式のほうが電力損失が少なく、発熱量を抑えることができるが、現在、回路構成がシンプルで低コストなパッシブ方式が主流となっている。
【0004】
近年、特に車載用途において、電池パックのエネルギ容量と出力が増加してきている。即ち、電池パック内の各セルの容量と、セルの直列数が増加してきている。それに伴い、複数のセル間において不均衡となっているエネルギ量が増大してきている。従って、均等化処理により、複数のセル間の不均衡を解消するために必要な時間も増大してきている。
【0005】
これに対して、特に車載用途において、均等化処理に必要な時間の短縮が求められている。大きなエネルギ不均衡を短時間で解消するには、大電流を流して均等化する必要がある。パッシブ方式では、電圧が高いセルの容量を抵抗で消費させることによりエネルギ不均衡を解消させるため、抵抗に流す電流が大きくなると発熱量も大きくなる。上述のように、セルの直列数が増加してくると、基板上に、抵抗発熱に対する放熱面積を確保することが難しくなってくる。
【0006】
そこで、エネルギを熱に変換して消費させるのではなく、エネルギを容量が少ないセルに移動させるアクティブ方式の必要性が高まっている。アクティブ方式の均等化回路の構成として、2つのセルの中点と、2つのセルに並列接続された2つのスイッチの中点との間にインダクタを接続する構成がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
上記回路構成は、隣接する2つのセル間でエネルギ移動を行うための回路であるが、3つ以上のセルを直列接続させ、任意の2つのセル間でエネルギ移動可能な構成とする場合、回路構成が複雑化する。複数のセルの1つを任意に選択できるセル選択回路を設けるか、上記回路構成を直列に複数並べてバケツリレー的にエネルギを移動させる必要がある。前者の場合、セル選択回路を構成するための配線やスイッチの数が増加する。後者の場合、セルの直列数に応じてインダクタの数が増加する。
【0008】
また、2つのセル間でエネルギ移動を行う際、対応する複数のスイッチのオン/オフタイミングのばらつきにより、セルの外部短絡やスイッチの耐圧オーバーが発生することがあった。
【0009】
これに対して、インダクタの励磁状態からアクティブクランプ状態に遷移する間と、アクティブクランプ状態から減磁状態に遷移する間に、スイッチのボディーダイオードを経由して電流を流す期間を挿入する制御が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平7-322516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者の検討により、上記制御を採用した回路において、スイッチの制御タイミングによっては、インダクタ電流とインダクタの両端電圧に異常なスパイクが発生することが判明した。このスパイク電圧によるノイズは、スイッチの駆動信号に影響を与え、スイッチを誤動作させる可能性がある。また、このスパイク電圧により、スイッチに耐圧オーバーが発生する可能性がある。
【0012】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、信頼性が高く安全な、インダクタを用いたエネルギ移動回路を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のエネルギ移動回路は、インダクタと、直列接続されたn(nは2以上の整数)個のセルと前記インダクタ間に設けられ、前記n個のセルのいずれか1個あるいは直列接続される複数個のセルからなる選択セルの両端と、前記インダクタの両端を導通させることが可能なセル選択回路と、前記セル選択回路がいずれのセルも選択していない状態で、前記インダクタを含む閉ループを形成するためのクランプスイッチを有するクランプ回路と、前記セル選択回路と前記クランプ回路を制御する制御部と、を備える。前記セル選択回路は、前記インダクタの一端に接続される第1配線と、前記インダクタの他端に接続される第2配線と、前記選択セルの両端の一方を前記第1配線に選択的に接続する複数の第1配線側スイッチと、前記選択セルの両端の他方を前記第2配線に選択的に接続する少なくとも1個の第2配線側スイッチと、を含む。前記クランプスイッチは、並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、前記第1配線側スイッチは、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、前記第2配線側スイッチは、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成される。前記制御部は、前記n個のセルの内の放電対象の前記選択セルである放電セルから前記インダクタに電流が流れるように、前記放電セルの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記放電セルの両側のノードに前記インダクタの両端が接続される放電経路を形成し、前記インダクタに流れる電流を増加させるインダクタ電流増加状態、前記インダクタの両端間にクランプ電流が流れるように、前記放電セルの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記インダクタの両端間が前記クランプスイッチを介して接続されるクランプ経路を生成し、前記インダクタに流れる電流を前記クランプ経路で循環させるクランプ状態、前記n個のセルの内の充電対象の前記選択セルである充電セルに前記インダクタから電流が流れるように、前記充電セルの両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチと前記第2配線側スイッチ、並びに前記クランプスイッチの導通状態を制御して前記充電セルの両側のノードに前記インダクタの両端が接続される充電経路を生成し、前記インダクタに流れる電流を減少させるインダクタ電流減少状態の順に制御する。前記クランプ状態は、前記クランプ経路を形成する複数のスイッチング素子のうち、少なくとも1個のスイッチング素子をオフ状態にして当該スイッチング素子に並列のダイオードを経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子をターンオンして前記複数のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2クランプ状態を有する。前記制御部は、前記インダクタ電流増加状態において、前記放電経路を形成する複数のスイッチング素子の全てをオン状態にした後に、次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記クランプスイッチを形成する複数のスイッチング素子のうちの一部のスイッチング素子をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、信頼性が高く安全な、インダクタを用いたエネルギ移動回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例に係る蓄電システムの構成を示す図である。
図2図2(a)-(h)は、実施例に係る蓄電システムの均等化処理の基本動作シーケンス例を説明するための回路図である。
図3図3(a)-(c)は、実施例に係る蓄電システムの均等化処理の具体例を説明するための図である。
図4図4(a)-(b)は、第1スイッチを2つのNチャンネルMOSFETで構成する場合の回路構成例を示す図である。
図5】実施例に係る蓄電システムのスイッチに、図4(a)の構成例に示す双方向スイッチが使用された場合の回路構成例を示す図である。
図6図6(a)-(b)は、図5に示した蓄電システムの回路構成例において、2つのセル間のエネルギ移動に使用される経路を抜き出した図である。
図7図7(a)-(b)は、図6(a)-(b)に示した蓄電システムの回路構成例において、2つのセル間のエネルギ移動中に、オン/オフ状態が変化しないスイッチを省略して描いた図である。
図8図8(a)は、図7(a)に示した蓄電システムの回路構成例を、統一的に説明するために整理して描いた図であり、図8(b)は図8(a)のバリエーションを示した図である。
図9図9(a)-(e)は、図8(a)に示した蓄電システムの比較例に係る制御における回路状態を示す図である(その1)。
図10図10(a)-(e)は、図8(a)に示した蓄電システムの比較例に係る制御における回路状態を示す図である(その2)。
図11図8(a)に示した蓄電システムの比較例に係る制御において、8個のスイッチング素子のスイッチングパターンと、インダクタの両端電圧の推移と、インダクタの電流を示す図である。
図12図12(a)-(c)は、図8に示した蓄電システムの実施例に係る制御における回路状態を示す図である。
図13図8(a)に示した蓄電システムの実施例に係る制御において、8個のスイッチング素子のスイッチングパターンと、インダクタの両端電圧の推移と、インダクタの電流を示す図である。
図14】別の実施例に係る蓄電システムの構成を示す図である。
図15】さらに別の実施例に係る蓄電システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、実施例に係る蓄電システム1の構成を示す図である。蓄電システム1は、均等化回路10及び蓄電部20を備える。蓄電部20は、直列接続されたn(nは2以上の整数)個のセルを含む。図1では、4つのセルC1-C4が直列接続された例を描いている。なお、直列接続されるセル数は、蓄電システム1に要求される電圧仕様に応じて変わる。
【0017】
各セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等の充放電可能な蓄電素子を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。
【0018】
均等化回路10は、電圧検出部14、セル選択回路11、エネルギ保持回路12及び制御部13を含む。電圧検出部14は、直列接続されたn(図1では4)個のセルの各電圧を検出する。具体的には電圧検出部14は、直列接続されたn個のセルの各ノードと、(n+1)本の電圧線で接続され、隣接する2本の電圧線間の電圧をそれぞれ検出することにより、各セルの電圧を検出する。電圧検出部14は例えば、汎用のアナログフロントエンドICまたはASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成することができる。電圧検出部14は、検出した各セルの電圧をデジタル値に変換し、制御部13に出力する。
【0019】
セル選択回路11は、直列接続されたn個のセルと、エネルギ保持回路12に含まれるインダクタL1との間に設けられ、n個のセルの内から選択されたセルの両端と、インダクタL1の両端を導通させることができる回路である。セル選択回路11は、インダクタL1の第1端に接続される第1配線W1、インダクタL1の第2端に接続される第2配線W2、複数の第1配線側スイッチ、及び少なくとも1個の第2配線側スイッチを有する。
【0020】
複数の第1配線側スイッチは、直列接続されたn個のセルの各ノード(n+1)の内、奇数ノードと第1配線W1との間にそれぞれ接続される。少なくとも1個の第2配線側スイッチは、直列接続されたn個のセルの各ノード(n+1)の内、偶数ノードと第2配線W2との間にそれぞれ接続される。
【0021】
図1に示す例ではn=4、ノード数=5であり、セル選択回路11は、3個の第1配線側スイッチ、及び2個の第2配線側スイッチを有する。図1では、第1スイッチS1、第5スイッチS5及び第9スイッチS9が第1配線側スイッチであり、第4スイッチS4及び第8スイッチS8が第2配線側スイッチである。
【0022】
エネルギ保持回路12(クランプ回路ともいう)は、インダクタL1、第1クランプスイッチSc1、第2クランプスイッチSc2、第3クランプスイッチSc3及び第4クランプスイッチSc4を含む。第1クランプスイッチSc1、第2クランプスイッチSc2、第3クランプスイッチSc3及び第4クランプスイッチSc4はフルブリッジ回路を構成している。具体的には、第1クランプスイッチSc1及び第2クランプスイッチSc2が直列に接続された第1アームと、第3クランプスイッチSc3及び第4クランプスイッチSc4が直列に接続された第2アームが、第1配線W1と第2配線W2間に並列に接続される。インダクタL1は、第1クランプスイッチSc1と第2クランプスイッチSc2間のノードと、第3クランプスイッチSc3と第4クランプスイッチSc4間のノードとの間に接続される。
【0023】
第1クランプスイッチSc1-第4クランプスイッチSc4は、インダクタL1の両端をエネルギ保持回路12内で導通させることができる。具体的には、セル選択回路11がいずれのセルも選択していない状態で、第1クランプスイッチSc1及び第3クランプスイッチSc3を導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第4クランプスイッチSc4を非導通状態、または第1クランプスイッチSc1及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第4クランプスイッチSc4を導通状態に制御することにより、エネルギ保持回路12内において、インダクタL1を含む閉ループを形成することができる。
【0024】
また、第1クランプスイッチSc1-第4クランプスイッチSc4は、インダクタL1に流れる電流の向きを切り替えることができる。具体的には、セル選択回路11がいずれかのセルを選択している状態で、第1クランプスイッチSc1及び第4クランプスイッチSc4を導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態に制御するか、第1クランプスイッチSc1及び第4クランプスイッチSc4を非導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を導通状態に制御するかにより、インダクタL1に流れる電流の向きを切り替えることができる。
【0025】
制御部13は、電圧検出部14により検出されたn個のセルの電圧をもとに、直列接続されたn個のセル間の均等化処理を実行する。制御部13は例えば、マイクロコンピュータで構成することができる。なお制御部13と電圧検出部14は、ワンチップに統合されて構成されてもよい。
【0026】
本実施例では制御部13は、アクティブセルバランス方式により直列接続されたn個のセル間の均等化処理を実行する。本実施例に係るアクティブセルバランス方式では、直列接続されたn個のセル間において、あるセル(放電対象のセル)から、別のセル(充電対象のセル)にエネルギ移動を行うことにより、あるセルと別のセルの容量を均等化する。このエネルギ移動を繰り返すことにより、直列接続されたn個のセル間の容量を均等化する。
【0027】
まず制御部13は、第1クランプスイッチSc1及び第4クランプスイッチSc4を導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態に制御する、又は第1クランプスイッチSc1及び第4クランプスイッチSc4を非導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を導通状態に制御するとともに、セル選択回路11を制御してn個のセルの内の放電対象とするセルの両端とインダクタL1の両端を所定時間、導通させて放電経路を生成する。この放電経路が生成された状態において、放電対象のセルとインダクタL1との間で電流が流れ、放電対象のセルからインダクタL1に電流が流れる状態(インダクタ増加状態ともいう)が発生し、インダクタL1にエネルギが蓄積される。
【0028】
次に制御部13は、セル選択回路11を制御してn個のセルとインダクタL1を電気的に遮断するとともに、第1クランプスイッチSc1及び第3クランプスイッチSc3を導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第4クランプスイッチSc4を非導通状態、または第1クランプスイッチSc1及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第4クランプスイッチSc4を導通状態に制御してクランプ経路を生成する。このクランプ状態では、上記閉ループに循環電流が流れ、エネルギ保持回路12内で、インダクタ電流がアクティブクランプされる。
【0029】
次に制御部13は、第1クランプスイッチSc1及び第4クランプスイッチSc4を導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態に制御する、又は第1クランプスイッチSc1及び第4クランプスイッチSc4を非導通状態かつ第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を導通状態に制御するとともに、セル選択回路11を制御してn個のセルの内の充電対象とするセルの両端とインダクタL1の両端を所定時間、導通させて充電経路を生成する。この充電経路が生成された状態において、充電対象のセルとインダクタL1との間で電流が流れ、エネルギ保持回路12内にアクティブクランプされているインダクタ電流が、充電対象のセルに流れる状態(インダクタ電流減少状態ともいう)が発生する。以上により、あるセルから別のセルへのエネルギ移動が完了する。
【0030】
図2(a)-(h)は、実施例に係る蓄電システム1の均等化処理の基本動作シーケンス例を説明するための回路図である。本基本動作シーケンス例では説明を簡略化するために、セルの直列数を2としている。図2(a)に示す第1状態では、制御部13は、第1スイッチS1、第1クランプスイッチSc1、第4クランプスイッチSc4及び第4スイッチS4を導通状態に制御し、第5スイッチS5、第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態に制御して放電経路を生成する。この放電状態では、第1セルC1からインダクタL1に電流が流れ、第1セルC1から放電されたエネルギがインダクタL1に蓄積される。
【0031】
図2(b)に示す第2状態では、制御部13は、第2クランプスイッチSc2及び第4クランプスイッチSc4を導通状態に制御し、第1スイッチS1、第4スイッチS4、第5スイッチS5、第1クランプスイッチSc1及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態に制御してクランプ経路を生成する。このクランプ状態では、インダクタL1に蓄積されたエネルギが、インダクタ電流として閉ループ内を流れ、アクティブクランプされる。
【0032】
図2(c)に示す第3状態では、制御部13は、第4クランプスイッチSc4、第4スイッチS4、第5スイッチS5及び第1クランプスイッチSc1を導通状態に制御し、第1スイッチS1、第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態に制御して充電経路を生成する。この充電状態では、閉ループ内にアクティブクランプされているインダクタ電流が第2セルC2に流れ、第2セルC2が充電される。
【0033】
図2(d)に示す第4状態では、制御部13は、第1スイッチS1、第4スイッチS4、第5スイッチS5、及び第1クランプスイッチSc1-第4クランプスイッチSc4を非導通状態に制御する。この状態は、第1セルC1から第2セルC2へのエネルギ移動が完了した状態である。ここまでで完結すれば、インダクタL1の電流が反転しないモード(転流しないモード)の説明となる。なお、第2セルC2の充電完了と同時に第2セルC2からの放電が開始する場合(転流モード)では、図2(d)に示す第4状態は省略され、図2(c)から、転流の瞬間にインダクタL1の電流が0となり、インダクタL1の電流が反転する図2(e)に至る。
【0034】
図2(e)に示す第5状態では、制御部13は、第4スイッチS4、第2クランプスイッチSc2、第3クランプスイッチSc3及び第5スイッチS5を導通状態に制御し、第1スイッチS1、第1クランプスイッチSc1及び第4クランプスイッチSc4を非導通状態に制御して放電経路を生成する。この放電状態では、第2セルC2からインダクタL1に電流が流れ、第2セルC2から放電されたエネルギがインダクタL1に蓄積される。
【0035】
図2(f)に示す第6状態では、制御部13は、第1クランプスイッチSc1及び第3クランプスイッチSc3を導通状態に制御し、第1スイッチS1、第4スイッチS4、第5スイッチS5、第2クランプスイッチSc2及び第3クランプスイッチSc3を非導通状態に制御してクランプ経路を生成する。このクランプ状態では、インダクタL1に蓄積されたエネルギが、インダクタ電流として閉ループ内を流れ、アクティブクランプされる。
【0036】
図2(g)に示す第7状態では、制御部13は、第3クランプスイッチSc3、第1スイッチS1、第4スイッチS4及び第2クランプスイッチSc2を導通状態に制御し、第5スイッチS5、第1クランプスイッチSc1及び第4クランプスイッチSc4を非導通状態に制御して充電経路を生成する。この充電状態では、閉ループ内にアクティブクランプされているインダクタ電流が第1セルC1に流れ、第1セルC1が充電される。
【0037】
図2(h)に示す第8状態では、制御部13は、第1スイッチS1、第4スイッチS4、第5スイッチS5、及び第1クランプスイッチSc1-第4クランプスイッチSc4を非導通状態に制御する。この状態は、第2セルC2から第1セルC1へのエネルギ移動が完了した状態である。
【0038】
第2状態または第6状態において、閉ループ内にインダクタ電流がアクティブクランプされることにより、インダクタ電流の連続性が確保されるため、セル選択回路11の安全かつ確実なスイッチ切替が可能となる。
【0039】
図3(a)-(c)は、実施例に係る蓄電システム1の均等化処理の具体例を説明するための図である。本具体例では、4つのセルC1-C4が直列接続されている例を想定する。図3(a)は、均等化処理の開始前の第1セルC1-第4セルC4の電圧の状態を模式的に示す図である。制御部13は、電圧検出部14により検出された第1セルC1-第4セルC4の電圧の平均値を算出し、算出した平均値を均等化目標電圧(以下、単に目標電圧という)に設定する。
【0040】
制御部13は、目標電圧より電圧が高いセルから、目標電圧より電圧が低いセルへエネルギを移動させる。例えば、目標電圧より電圧が高いセルの内、最も電圧が高いセル(図3(a)では第1セルC1)から、目標電圧より電圧が低いセルの内、最も電圧が低いセル(図3(a)では第4セルC4)にエネルギを移動させる。
【0041】
制御部13は、移動元のセル(放電対象のセル)の電圧が目標電圧以上となる範囲で、かつ移動先のセル(充電対象のセル)の電圧が目標電圧以下となる範囲で、エネルギ移動量を決定する。制御部13は、決定したエネルギ移動量と、設計にもとづく放電電流及び充電電流に基づき、移動元のセルの放電時間と移動先のセルの充電時間を決定する。エネルギ保持回路12にアクティブクランプされている間に消費されるエネルギ量は無視できると仮定すると、基本的に移動元のセルの放電時間と移動先のセルの充電時間は同じになる。
【0042】
図3(b)は、移動元のセルである第1セルC1から、移動先のセルである第4セルC4へのエネルギ移動が完了した状態を示している。制御部13は上述した処理を再び、実行する。具体的には、目標電圧より電圧が高いセルの内、最も電圧が高いセル(図3(b)では第3セルC3)から、目標電圧より電圧が低いセルの内、最も電圧が低いセル(図3(b)では第2セルC2)にエネルギを移動させる。
【0043】
図3(c)は、移動元のセルである第3セルC3から、移動先のセルである第2セルC2へのエネルギ移動が完了した状態を示している。以上により、直列接続された第1セルC1-第4セルC4の均等化処理が完了する。
【0044】
図3(a)-(c)に示した具体例では、はじめに、直列接続された複数のセルの電圧の平均値を算出し、目標値を設定した。この点、目標値を設定しないアルゴリズムも可能である。制御部13は各時点において、直列接続された複数のセルの電圧の内、最も電圧が高いセルから最も電圧が低いセルへエネルギを移動させることにより、当該2つのセルの電圧を均等化する。制御部13は、この処理を、直列接続された複数のセルの電圧が全て均等化されるまで繰り返し実行する。
【0045】
また上記具体例では、均等化目標値として電圧を使用する例を説明したが、電圧の代わりに、実容量、放電可能容量または充電可能容量を使用してもよい。
【0046】
セル選択回路11に含まれる複数のスイッチ及びエネルギ保持回路12に含まれる4つのクランプスイッチには、比較的スイッチング速度が速く、比較的低コストなMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用することが有力である。NチャンネルMOSFETでは、ソースからドレイン方向に寄生ダイオード(ボディダイオード)が形成される。従って、ソース端子とドレイン端子の両方から電流が流入する可能性がある用途では、2つのMOSFETを逆向きに直列接続して双方向スイッチとして使用することが一般的である。
【0047】
図4(a)-(b)は、第1スイッチS1を2つのNチャンネルMOSFETで構成する場合の回路構成例を示す図である。図4(a)は、2つのNチャンネルMOSFETのソース端子同士を接続して双方向スイッチを構成する例を示している。この場合、直列の2つのボディダイオードのアノード同士が向き合うことになるため、双方向スイッチの両端間にボディダイオードを介して電流が流れることが阻止される。
【0048】
図4(b)は、2つのNチャンネルMOSFETのドレイン端子同士を接続して双方向スイッチを構成する例を示している。この場合、直列の2つのボディダイオードのカソード同士が向き合うことになるため、双方向スイッチの両端間にボディダイオードを介して電流が流れることが阻止される。
【0049】
図4(a)の構成例と図4(b)の構成例を比較すると、図4(a)の構成例の方が、2つのNチャンネルMOSFETのゲートドライバの電源回路(DC/DCコンバータ)を共通化できるメリットがある。図4(a)の構成例では2つのNチャンネルMOSFETのソース電位が共通であるため、2つのゲートドライバの電源電圧を共通化することができる。従って、2つのゲートドライバに電源電圧を供給する電源回路(DC/DCコンバータ)も共通化できる。これにより、コスト及び回路面積を削減することができる。一方、図4(b)の構成例では、2つのNチャンネルMOSFETのソース電位を共通化できないため、2つのゲートドライバに電源電圧を供給する電源回路(DC/DCコンバータ)を別々に設ける必要がある。
【0050】
図5は、実施例に係る蓄電システム1のスイッチに、図4(a)の構成例に示す双方向スイッチが使用された場合の回路構成例を示す図である。図5では、第1スイッチS1、第4スイッチS4、第5スイッチS5、第8スイッチS8、第9スイッチS9、第1クランプスイッチSc1、第2クランプスイッチSc2、第3クランプスイッチSc3及び第4クランプスイッチSc4にそれぞれ、図4(a)の構成例に示す双方向スイッチが使用されている。
【0051】
図6(a)-(b)は、図5に示した蓄電システム1の回路構成例において、2つのセル間のエネルギ移動に使用される経路を抜き出した図である。図6(a)は、第1セルC1と第2セルC2間のエネルギ移動に使用される経路を抜き出した図である。第1セルC1と第2セルC2間のエネルギ移動では、第8スイッチS8を通る経路と第9スイッチS9を通る経路は使用されない。図6(b)は、第1セルC1と第4セルC4間のエネルギ移動に使用される経路を抜き出した図である。第1セルC1と第4セルC4間のエネルギ移動では、第5スイッチS5を通る経路は使用されない。
【0052】
図7(a)-(b)は、図6(a)-(b)に示した蓄電システム1の回路構成例において、2つのセル間のエネルギ移動中に、オン/オフ状態が変化しないスイッチを省略して描いた図である。図7(a)は、第1セルC1と第2セルC2間のエネルギ移動中に、オン/オフ状態が変化しないスイッチを省略して描いた図である。第1セルC1と第2セルC2間のエネルギ移動では、第4スイッチS4及び第4クランプスイッチSc4は常時オン状態となるため単なる結線として描いており、第3クランプスイッチSc3は常時オフ状態となるため結線自体を省略して描いている。図7(a)において、第1セルC1からインダクタL1へエネルギ移動を行う際には、第1スイッチS1及び第1クランプスイッチSc1をオン状態にすると共に、第5スイッチS5及び第2クランプスイッチSc2をオフ状態にする。この状態では、第1セルC1からインダクタL1へ電流が流れるため、第1セルC1からインダクタL1へエネルギが移動する。このエネルギ移動によりインダクタL1にエネルギが蓄えられ、第1クランプスイッチSc1をオフ状態にすると共に、第2クランプスイッチSc2をオン状態にすることでインダクタL1のクランプ状態が形成される。次に、インダクタL1から第2セルC2へエネルギ移動を行う際には、第5スイッチS5及び第1クランプスイッチSc1をオン状態にすると共に、第1スイッチS1及び第2クランプスイッチSc2をオフ状態にする。この状態にすることでインダクタL1のエネルギを保持するクランプ状態で蓄えられたエネルギがインダクタL1から第2セルC2へ移動する。インダクタL1に流れる電流が0になる時に、第8スイッチS8、第9スイッチS9をオフすればエネルギ移動が完了する。
【0053】
図7(b)は、第1セルC1と第4セルC4間のエネルギ移動中に、オン/オフ状態が変化しないスイッチを省略して描いた図である。図7(b)において、第1セルC1からインダクタL1へエネルギ移動を行う際には第1スイッチS1、第4スイッチS4及び第2クランプスイッチSc2をオン状態にすると共に、第8スイッチS8、第9スイッチS9及び第1クランプスイッチSc1をオフ状態にする。この状態では、第1セルC1からインダクタL1へ電流が流れるため、第1セルC1からインダクタL1へエネルギが移動する。このエネルギ移動によりインダクタL1にエネルギが蓄えられ、第2クランプスイッチSc2をオフ状態にすると共に、第1クランプスイッチSc1をオン状態にすることでインダクタL1のクランプ状態が形成される。次に、インダクタL1から第1セルC4へエネルギ移動を行う際には、第8スイッチS8、第9スイッチS9及び第2クランプスイッチSc2をオン状態にすると共に、第1スイッチS1、第4スイッチS4及び第1クランプスイッチSc1をオフ状態にする。この状態にすることでインダクタL1のエネルギを保持するクランプ状態で蓄えられたエネルギがインダクタL1から第4セルC4へ移動する。インダクタL1に流れる電流が0になる時に、第8スイッチS8、第9スイッチS9をオフすればエネルギ移動が完了する。図7(a)及び図7(b)の説明はインダクタL1の電流が反転しないモード(転流しないモード)で記述したが、図2の説明で示した通り、転流モードで動作してもよい。以下、図9図10では転流モードを前提とした動作の説明を行う。
【0054】
図8(a)-(b)は、放電対象セルから充電対象セルへエネルギ移動させる際の放電経路および充電経路が形成される蓄電システム1の回路構成例を、統一的に説明するために整理して描いた図である。図8(a)に示す蓄電システム1の回路構成例では、8個のスイッチング素子Q1-Q8が使用される。上側セルCaの正極端子に、第1ボディダイオードD1を有する第1スイッチング素子Q1と、第2ボディダイオードD2を有する第2スイッチング素子Q2が逆向きに直列に接続された1対の第1スイッチング素子群が接続される。下側セルCbの負極端子に、第3ボディダイオードD3を有する第3スイッチング素子Q3と、第4ボディダイオードD4を有する第4スイッチング素子Q4が逆向きに直列に接続された1対の第2スイッチング素子群が接続される。
【0055】
インダクタL1の第1端は、上側セルCaの負極端子と、下側セルCbの正極端子が接続される。インダクタL1の両端間に、第5ボディダイオードD5を有する第5スイッチング素子Q5と、第6ボディダイオードD6を有する第6スイッチング素子Q6が逆向きに直列に接続された1対の第3スイッチング素子群が接続される。インダクタL1の第2端と、第1スイッチング素子群と第2スイッチング素子群との接続点との間に、第7ボディダイオードD7を有する第7スイッチング素子Q7と、第8ボディダイオードD8を有る第8スイッチング素子Q8が逆向きに直列に接続された1対の第4スイッチング素子群が接続される。
【0056】
第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2で構成される第1スイッチング素子群は、図7(a)の第1スイッチS1に対応する。第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4で構成される第2スイッチング素子群は、図7(a)の第5スイッチS5に対応する。第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6で構成される第3スイッチング素子群は、図7(a)の第2クランプスイッチSc2に対応する。第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8で構成される第4スイッチング素子群は、図7(a)の第1クランプスイッチSc1に対応する。以上のように構成される図8(a)に示した蓄電システム1は、10個のステップを1サイクルとして制御される。
【0057】
図8(b)に示す蓄電システム1の回路構成例も、8個のスイッチング素子Q1-Q8が使用される。図8(b)に示す回路構成例は、図8(a)に示す回路構成例と比較し、インダクタL1と第3スイッチング素子群(第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6)の並列回路と、第4スイッチング素子群(第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8)の位置が入れ替わった構成である。
【0058】
以下に説明する制御において、図8(a)に示す回路構成例を使用して説明する。
【0059】
図9(a)-(e)と図10(a)-(e)は、図8(a)に示した蓄電システム1の比較例に係る全10ステップの制御における回路状態をインダクタL1の電流ILに対応させて示す2枚の図である(合計10ステップの状態遷移)。図11は、図8(a)に示した蓄電システム1の比較例に係る制御において、8個のスイッチング素子Q1-Q8のスイッチングパターンと、インダクタL1の両端電圧VLの推移と、インダクタL1の電流ILを示す図である。なお、インダクタL1の電流ILは図9(a)に示す矢印方向を正、矢印の逆方向を負で表す。
【0060】
図9(b)に示すように状態(1)では、制御部13は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8をオン状態に制御し、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4及び第6スイッチング素子Q6をオフ状態に制御する。第5スイッチング素子Q5をオン状態に制御しているのは、次のクランプ期間の準備である。
【0061】
図9(c)に示すように状態(2)では、制御部13は、状態(1)のスイッチングパターンを維持する。状態(2)では、上側セルCaからインダクタL1に放電電流が流れる。
【0062】
図9(d)に示すように状態(3)では、制御部13は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8をターンオフする。状態(3)では、インダクタL1→第5スイッチング素子Q5→第6ボディダイオードD6→インダクタL1で形成されるクランプ経路に電流が流れる。
【0063】
図9(e)に示すように状態(4)では、制御部13は、第5スイッチング素子Q5をターンオフするとともに、次の充電期間の準備として、第3スイッチング素子Q3及び第8スイッチング素子Q8をターンオンする。状態(4)では、インダクタL1→第5スイッチング素子Q5→第6スイッチング素子Q6→インダクタL1で形成されるクランプ経路に電流が流れる。
【0064】
状態(3)に示したクランプ経路と、状態(4)に示したクランプ経路を比較すると、前者では電流が第6ボディダイオードD6を通るため、第6ボディダイオードD6の順方向降下電圧Vfに対応する損失が発生する。従って、エネルギロスを減らすために状態(3)から状態(4)に切り替える。
【0065】
状態(3)を設けるのは、放電状態からクランプ状態に円滑かつ安全に遷移するためである。例えば、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のターンオンと、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8のターンオフを同時に実行する場合、スイッチングタイミングのずれにより、上側セルCaに外部短絡が発生する可能性や、第1スイッチング素子Q1又は第8スイッチング素子Q8に耐圧破壊が発生する可能性がある。
【0066】
具体的には、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8が全てオン状態となる状態が出現した場合、上側セルCaが外部短絡することになる。また、第5スイッチS5及び第6スイッチS6がオフ状態で、第1スイッチング素子Q1のターンオフが、第2スイッチング素子Q2、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8のターンオフより早かった場合、第1スイッチング素子Q1に耐圧破壊が発生することになる。また、第8スイッチング素子Q8のターンオフが、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2及び第7スイッチング素子Q7のターンオフより早かった場合、第8スイッチング素子Q8に耐圧破壊が発生することになる。これに対して状態(3)では、第6ボディダイオードD6が導通するため、セルの外部短絡やスイッチング素子の耐圧破壊を防止することができる。
【0067】
図10(a)に示すように状態(5)では、制御部13は、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6をターンオフする。状態(5)では、インダクタL1→下側セルCb→第3スイッチング素子Q3→第4ボディダイオードD4→第8スイッチング素子Q8→第7ボディダイオードD7→インダクタL1で形成される経路に充電電流が流れる。
【0068】
図10(b)に示すように状態(6)では、制御部13は、第4スイッチング素子Q4及び第7スイッチング素子Q7をターンオンする。状態(6)では、インダクタL1→下側セルCb→第3スイッチング素子Q3→第4スイッチング素子Q4→第8スイッチング素子Q8→第7スイッチング素子Q7→インダクタL1で形成される経路に充電電流が流れる。図10(a)に示した経路と図10(b)に示した経路を比較すると、前者では電流が第4ボディダイオードD4及び第7ボディダイオードD7を通るため、第4ボディダイオードD4の順方向降下電圧Vfに対応する合計2Vfの損失と第7ボディダイオードD7の順方向降下電圧Vfに対応する損失が発生する。従って、エネルギロスを減らすために状態(5)から状態(6)に切り替える。
【0069】
状態(5)を設けるのは、クランプ状態から充電状態に円滑かつ安全に遷移するためである。例えば、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のターンオフと、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8のターンオンを同時に実行する場合、スイッチングタイミングのずれにより、下側セルCbに外部短絡が発生する可能性や、第3スイッチング素子Q3又は第8スイッチング素子Q8に耐圧破壊が発生する可能性がある。これに対して状態(5)では、第4ボディダイオードD4及び第7ボディダイオードD7が導通するため、セルの外部短絡やスイッチング素子の耐圧破壊を防止することができる。
【0070】
状態(6)において、インダクタL1から下側セルCbに放出するエネルギがなくなると、電流の向きが反転し、下側セルCbからインダクタL1に放電電流が流れ始める。
【0071】
図10(c)に示すように状態(7)では、制御部13は、次のクランプ期間の準備として、第6スイッチング素子Q6をターンオンする。
【0072】
図10(d)に示すように状態(8)では、制御部13は、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8をターンオフする。状態(8)では、インダクタL1→第6スイッチング素子Q6→第5ボディダイオードD5→インダクタL1で形成されるクランプ経路に電流が流れる。
【0073】
図10(e)に示すように状態(9)では、制御部13は、第5スイッチング素子Q5をターンオンするとともに、次の充電期間の準備として、第2スイッチング素子Q2及び第7スイッチング素子Q7をターンオンする。状態(9)では、インダクタL1→第5スイッチング素子Q5→第6スイッチング素子Q6→インダクタL1で形成されるクランプ経路に電流が流れる。
【0074】
状態(8)に示したクランプ経路と、状態(9)に示したクランプ経路を比較すると、前者では電流が第5ボディダイオードD5を通るため、第5ボディダイオードD5の順方向降下電圧Vfに対応する損失が発生する。従って、エネルギロスを減らすために状態(8)から状態(9)に切り替える。
【0075】
状態(8)を設けるのは、放電状態からクランプ状態に円滑かつ安全に遷移するためである。例えば、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のターンオンと、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8のターンオフを同時に実行する場合、スイッチングタイミングのずれにより、下側セルCbに外部短絡が発生する可能性や、第4スイッチング素子Q4又は第7スイッチング素子Q7に耐圧破壊が発生する可能性がある。これに対して状態(8)では、第6ボディダイオードD6が導通するため、セルの外部短絡やスイッチング素子の耐圧破壊を防止することができる。
【0076】
図9(a)に示すように状態(10)では、制御部13は、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6をターンオフする。状態(10)では、インダクタL1→第7スイッチング素子Q7→第8ボディダイオードD8→第2スイッチング素子Q2→第1ボディダイオードD1→上側セルCa→インダクタL1で形成される経路に充電電流が流れる。
【0077】
図9(b)に示すように状態(1)では、制御部13は、第2スイッチング素子Q2及び第7スイッチング素子Q7をターンオンするとともに、次のクランプ期間の準備として、第5スイッチング素子Q5をターンオンする。状態(1)では、インダクタL1→第7スイッチング素子Q7→第8スイッチング素子Q8→第2スイッチング素子Q2→第1スイッチング素子Q1→上側セルCa→インダクタL1で形成される経路に充電電流が流れる。図9(a)に示した経路と図9(b)に示した経路を比較すると、前者では電流が第1ボディダイオードD1及び第8ボディダイオードD8を通るため、第1ボディダイオードD1の順方向降下電圧Vfに対応する合計2Vfの損失と第8ボディダイオードD8の順方向降下電圧Vfに対応する損失が発生する。従って、エネルギロスを減らすために状態(10)から状態(1)に切り替える。
【0078】
状態(10)を設けるのは、クランプ状態から充電状態に円滑かつ安全に遷移するためである。例えば、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6のターンオフと、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8のターンオンを同時に実行する場合、スイッチングタイミングのずれにより、上側セルCaに外部短絡が発生する可能性や、第1スイッチング素子Q1又は第8スイッチング素子Q8に耐圧破壊が発生する可能性がある。これに対して状態(10)では、第1ボディダイオードD1及び第8ボディダイオードD8が導通するため、セルの外部短絡やスイッチング素子の耐圧破壊を防止することができる。
【0079】
状態(1)において、インダクタL1から上側セルCaに放出するエネルギがなくなると、電流の向きが反転し、上側セルCaからインダクタL1に放電電流が流れ始める。
【0080】
以上に説明したサイクルにおいて、状態(10)→状態(1)→状態(2)の期間には、インダクタL1の電流は正の傾きで変化する。状態(3)→状態(4)の期間には、インダクタL1に循環電流が流れる。状態(3)ではボディダイオードの順方向降下電圧Vfに対応する損失分、インダクタL1に蓄積されたエネルギが減少する。状態(3)ではインダクタL1に蓄積されたエネルギが維持される。
【0081】
状態(5)→状態(6)→状態(7)の期間には、インダクタL1の電流は負の傾きで変化する。状態(8)→状態(9)の期間には、インダクタL1に循環電流が流れる。状態(8)ではボディダイオードの順方向降下電圧Vfに対応する損失分、インダクタL1に蓄積されたエネルギが減少する。状態(9)ではインダクタL1に蓄積されたエネルギが維持される。
【0082】
図11に示すように、各状態のインダクタL1の両端電圧VLは以下のようになる。Vbはセル電圧であり、図11に示す例では4Vとしている。Vfはボディダイオードの順方向降下電圧であり、図11に示す例では0.75Vとしている。
状態(10):VL=Vb+2Vf
状態(1)、(2):VL=Vb
状態(3):VL=-Vf
状態(4):VL=0
状態(5):VL=-Vb-2Vf
状態(6)、(7):VL=-Vb
状態(8):VL=+Vf
状態(9):VL=0
【0083】
図11に示すように、各状態におけるインダクタL1の電流変化ΔILは以下のようになる。Lはインダクタンスであり、(tn-t(n-1))は第n状態に滞在する時間である。
状態(10):ΔIL=(2Vb+2Vf)*(t10-t9)/L
状態(1):ΔIL=2Vb*(t1-t10)/L
状態(2):ΔIL=2Vb*(t2-t1)/L
状態(3):ΔIL=-Vf*(t3-t2)/L
状態(4):ΔIL=0*(t4-t3)/L
状態(5):ΔIL=(-2Vb-2Vf)*(t5-t4)/L
状態(6):ΔIL=-2Vb*(t6-t5)/L
状態(7):ΔIL=-2Vb*(t7-t6)/L
状態(8):ΔIL=Vf*(t8-t7)/L
状態(9):ΔIL=0*(t9-t8)/L
【0084】
なお図11では便宜的に各状態を等間隔で描いているが、各状態の時間は任意に設定可能である。例えばクランプ期間(状態(3)、(4)、(8)、(9))は、他の期間(状態(1)、(2)、(5)、(6)、(7)、(10))より短く設定されてもよい。また、ボディダイオードに電流が流れている期間は、ボディダイオードに電流が流れていない期間より短く設定されてもよい。例えば、状態(3)の期間は状態(4)の期間より短く設定されてもよい。この場合、ボディダイオードを電流が通ることによる損失を、より減らすことができる。インダクタL1の電流ILの0Aを境に正側の領域において、放電対象セルの正のエネルギ移動量および充電対象セルの負のエネルギ移動量が示され、インダクタL1の電流ILの0Aを境に負側の領域において、放電対象セルの負のエネルギ移動量および充電対象セルの正のエネルギ移動量が示されるので、各状態の時間を適切に設定することにより放電対象セルと充電対象セルとの均等化処理が実行される。
【0085】
図11に示すように状態(10)から状態(1)に切り替わる際に、即ち、インダクタL1の両端電圧VLがVb+2VfからVbに変化する際に、意図しないスパイク電圧が発生する。図11に示すインダクタL1の両端電圧VLは、実験により得られた実際の波形を模式的な波形に書き換えたものであるが、状態(10)から状態(1)に切り替わる際にスパイクが発生することは実験により確認されている。
【0086】
このスパイク電圧により、スイッチング素子が破壊に至る可能性がある。スイッチング素子に使用されるMOSFETは、ゲート電圧によりオン/オフが制御される素子であるが、ドレイン-ソース間電圧Vdsが急峻に変化すると(dV/dtが高くなると)、ドレイン-ゲート間の接合容量に電流が流れる。この電流により、MOSFETのドレイン-ソース間に寄生するNPNトランジスタがオンして、MOSFETの素子破壊に至る可能性がある。
【0087】
また、上記スパイク電圧により発生するノイズが、制御部13からスイッチング素子Q1-Q8のゲートに供給される駆動信号のハイ/ローを反転させ、均等化回路10を誤動作させる可能性がある。以下、このスパイク電圧を抑制する方法について説明する。
【0088】
図12(a)-(c)は、図8(a)に示した蓄電システム1の実施例に係る制御における回路状態をインダクタL1の電流ILに対応させて示す図である。図13は、図8(a)に示した蓄電システム1の実施例に係る制御において、図9図10に示す10ステップの切替順序のうち、図9(a)-(c)を図12(a)-(c)に置き換えた8個のスイッチング素子Q1-Q8のスイッチングパターンと、インダクタL1の両端電圧VLの推移と、インダクタL1の電流ILを示す図である。なお、図9(a)-(c)と図12(a)-(c)の違いは図9(b)と図12(b)における第5スイッチング素子Q5の状態の違いのみとなる。
【0089】
図12(b)に示すように実施例に係る状態(1)では、制御部13は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8をオン状態に制御し、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6をオフ状態に制御する。
【0090】
図12(c)に示すよう実施例に係る状態(2)では、制御部13は、次のクランプ期間の準備として、第5スイッチング素子Q5をターンオンする。実施例に係るその他の状態(3)-(10)は、図9(d)-(e)、図10(a)-(e)、図9(a)に示した比較例に係る状態(3)-(10)と同様である。
【0091】
このように本実施例では、次のクランプ期間の準備として、第5スイッチング素子Q5をターンオンするタイミングを遅延させる。図13に示すように本実施例では、状態(10)から状態(1)に切り替わる際に、スパイク電圧が発生しない。図13に示すインダクタL1の両端電圧VLは、実験により得られた実際の波形を模式的な波形に書き換えたものであるが、状態(10)から状態(1)に切り替わる際に、図11に示したようなスパイクが発生しないことが実験により確認されている。
【0092】
以上説明したように本実施例によれば、次のクランプ期間の準備として、クランプスイッチとして使用される双方向スイッチの片側を構成する第5スイッチング素子Q5をターンオンするタイミングを遅延させることにより、意図しないスパイクが発生することを抑制することができる。これにより、信頼性が高く安全な均等化回路10を実現することができる。
【0093】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に容易に理解されるところである。
【0094】
図6(a)-(b)では、第1セルC1と第2セルC2間のエネルギ移動、及び第1セルC1と第4セルC4間のエネルギ移動について説明した。この点、上記実施例は、任意の2つのセル間のエネルギ移動全般に適用可能である。図6(a)-(b)は、図1に示す蓄電システム1のセル選択回路11の第1配線側スイッチ、第2配線側スイッチ、及びエネルギ保持回路12の第1クランプスイッチSc1-第4クランプスイッチSc4の構成に対応しており、第1配線側スイッチ、第2配線側スイッチ、及び第1クランプスイッチSc1-第4クランプスイッチSc4の各スイッチはそれぞれ2個のスイッチング素子で構成されている。そして、選択セルとインダクタL1との間でエネルギ移動を行う経路(放電経路及び充電経路)は、所定の1個の第1配線側スイッチ、所定の1個の第2配線側スイッチ、及び第1クランプスイッチSc1-第4クランプスイッチSc4のうちの所定の2個のクランプスイッチの合計4個のスイッチ、すなわち、8個のスイッチング素子により放電経路、充電経路ともに形成される。また、インダクタL1に蓄えられたエネルギを保持するためのクランプ経路は第1クランプスイッチSc1-第4クランプスイッチSc4の所定の2個のクランプスイッチ、すなわち、4個のスイッチング素子により形成される。
【0095】
放電経路を形成する期間は、8個のスイッチング素子のうち、4個のクランプスイッチのたすき掛けの位置にある2対4個のスイッチング素子と、第1配線側スイッチ及び第2配線側スイッチを構成する1対2個のスイッチング素子の合計8個のスイッチング素子がオン状態に制御される。充電経路を形成する期間は、充電経路を形成する期間と同様に8個のスイッチング素子のうち、クランプスイッチを構成する2対4個のスイッチング素子と、第1配線側スイッチ及び第2配線側スイッチを構成する1対2個のスイッチング素子の合計8個のスイッチング素子がオン状態に制御される。クランプ経路を形成する期間は、4個のクランプスイッチにある、8個のスイッチング素子のうち、2対4個のスイッチング素子がオン状態に制御される。
【0096】
制御部13は、放電状態の終了後、クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子のうち、少なくとも1個のスイッチング素子をオフ状態にして当該スイッチング素子のボディダイオードを経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態(上記実施例では、状態(3)、(8))、当該オフ状態のスイッチング素子をターンオンして当該4個のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2クランプ状態(上記実施例では、状態(4)、(9))の順に切り替える。
【0097】
なお、第1クランプ状態において、クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子のうち、同じ方向のボディダイオードを有する2個のスイッチング素子をターンオフしてもよい。この場合、損失は大きくなるが、安全性はさらに向上する。
【0098】
制御部13は、第2クランプ状態の終了後、充電経路を形成する8個のスイッチング素子のうち、少なくとも1つのスイッチング素子をオフ状態にして当該スイッチング素子のボディダイオードを経由して充電電流を流す第1充電状態(上記実施例では、状態(5)、(10))、当該オフ状態のスイッチング素子をターンオンして当該8個のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2充電状態(上記実施例では、状態(6)、(1))の順に切り替える。
【0099】
上記実施例では、第1充電状態において、第1配線側スイッチ又は第2配線側スイッチを構成する1個のスイッチング素子と、クランプスイッチを構成する1個のスイッチング素子の2個のスイッチング素子をオフ状態にしたが、いずれか一方のスイッチング素子のみをオフ状態にしてもよい。この場合、スイッチング素子の耐圧破壊に対する安全性は低下するが、損失は小さくなる。
【0100】
制御部13は、第2クランプ状態の終了後、クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子のうち、2個または4個のスイッチング素子をターンオフする。上記実施例では、一対の2個のスイッチング素子(第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6)をターンオフしたが、クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子の全てをターンオフしてもよい。
【0101】
その後、制御部13は、第1充電状態から第2充電状態に切り替えるタイミングより遅延したタイミングで且つ次の第1クランプ状態に切り替える前に、当該ターンオフした2個または4個のスイッチング素子の半分をターンオンして第1クランプ状態のクランプ経路を生成する。
【0102】
上記実施例では、第1充電状態から第2充電状態に切り替えるタイミング(状態(10))より遅延したタイミングで且つ次の第1クランプ状態(状態(3))に切り替える前のタイミングとして、状態(1)から状態(2)に切り替えるタイミングを採用した。この点、状態(1)の途中のタイミングを採用してもよいし、状態(2)の途中のタイミングを採用してもよい。
【0103】
上述した実施例では、スイッチング素子としてMOSFETを使用する例を説明した。この点、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の寄生ダイオードが形成されない半導体スイッチング素子を用いてもよい。その場合、寄生ダイオードの代わりに外付けダイオードを半導体スイッチング素子に対して並列接続する。順方向降下電圧Vfが低いダイオードを使用するほど、損失を小さくすることができ、効率が向上する。
【0104】
また上述した実施例では、直列接続された複数のセル間をアクティブ方式により均等化する例を説明した。この点、実施例に係る均等化回路を用いて、直列接続された複数のモジュール間を均等化することもできる。本明細書内の「セル」を「モジュール」に適宜、読み替えればよい。
【0105】
図14は、別の実施例に係る蓄電システムの構成を示す図である。図14は、直列接続された複数のモジュール間を均等化処理する均等化回路を備える蓄電システムの一実施例を示している。図14において、複数のモジュールは図1に示した蓄電システム1と同様にそれぞれセル用均等化回路及び複数のセルが直列接続される蓄電部を備えている。第1モジュールM1はセル用均等化回路10A及び蓄電部20Aを備え、第2モジュールM2はセル用均等化回路10B及び蓄電部20Bを備え、第3モジュールM3はセル用均等化回路10C及び蓄電部20Cを備え、第4モジュールM4はセル用均等化回路10D及び蓄電部20Dを備えている。
【0106】
モジュール用均等化回路10Mは、電圧検出部14M、モジュール選択回路11M、エネルギ保持回路12M及び制御部13Mを含む。
【0107】
本実施例では制御部13Mは、アクティブモジュールバランス方式により直列接続されたm個のモジュール間の均等化処理を実行する。本実施例に係るアクティブモジュールバランス方式では、直列接続されたm個のモジュール間において、あるモジュール(放電対象のモジュール)から、別のモジュール(充電対象のモジュール)にエネルギ移動を行うことにより、あるモジュールと別のモジュールの容量を均等化する。このエネルギ移動を繰り返すことにより、直列接続されたm個のモジュール間の容量を均等化する。
【0108】
以上の複数のモジュール間の均等化処理とは別に各モジュール内の直列接続された複数のセル間の均等化処理が行われる。各モジュール内の直列接続された複数のセル間の均等化処理は、複数のモジュール間の均等化処理と多重的に実行する構成であってもよい。この場合、モジュール用均等化回路10Mとセル用均等化回路10A~10Dとは通信により互いに連携して動作される。モジュール間の均等化処理は、セル間の均等化処理よりも優先して実行されることが好ましく、モジュール間の均等化処理が完了した後に、セル間の均等化処理を完了させることによりモジュール間の均等化処理を実行したことにより発生する各セルの電圧差を解消できる。
【0109】
図15は、さらに別の実施例に係る蓄電システムの構成を示す図である。図15に示す実施例では、セル選択回路11は、インダクタL1の第1端に接続される第1配線W1、インダクタL1の第2端に接続される第2配線W2、(n+1)個の第1配線側スイッチ、及び(n+1)個の第2配線側スイッチを有する。(n+1)個の第1配線側スイッチは、直列接続されたn個のセルの各ノードと、第1配線W1との間にそれぞれ接続される。(n+1)個の第2配線側スイッチは、直列接続されたn個のセルの各ノードと、第2配線W2との間にそれぞれ接続される。
【0110】
エネルギ保持回路12(クランプ回路ともいう)は、インダクタL1及びクランプスイッチScを含む。クランプスイッチScは、インダクタL1の両端をエネルギ保持回路12内で導通させるためのスイッチである。エネルギ保持回路12は、セル選択回路11がいずれのセルも選択していない状態で、インダクタL1を含む閉ループを形成することができる。即ち、クランプスイッチScがオン状態に制御されると、インダクタL1とクランプスイッチScを含む閉ループ、すなわちクランプ経路が形成される。図15に示す実施例では、選択セルとインダクタL1との間でエネルギ移動を行う経路(放電経路及び充電経路)は、所定の1個の第1配線側スイッチ及び所定の1個の第2配線側スイッチにより形成される。ただし、エネルギ保持回路12はインダクタL1に流す電流の向きを切り替える機能を有していないので、放電経路及び充電経路はインダクタL1に流す電流の向きに応じて導通状態に切り替える第1配線側スイッチ及び第2配線側スイッチを選択して形成される。
【0111】
制御部13は、第2クランプ状態の終了後、放電経路を形成する複数のスイッチング素子の全てをオン状態にした後に、次の第1クランプ状態に切り替える前に、クランプスイッチScを形成する2個のスイッチング素子のうちの1個のスイッチング素子をターンオンして第1クランプ状態のクランプ経路を生成する。
【0112】
また上述した実施例では、アクティブセルバランス方式の均等化回路を説明したが、複数のセルまたはモジュール間の均等化を目的としないエネルギ移動にも適用可能である。例えば、2つのモジュール間の温度が大きく異なる場合、保存劣化を抑制するために、温度が高いモジュールのエネルギの少なくとも一部を、温度が低いモジュールに移動させてもよい。
【0113】
また上述した実施例では、1つのセルから別の1つのセルへのエネルギ移動を説明したが、直列接続された複数のセルから、別の直列接続された複数のセルへのエネルギ移動も可能である。また、1つのセルから、別の直列接続された複数のセルへのエネルギ移動、及び直列接続された複数のセルから、別の1つのセルへのエネルギも可能である。モジュールについても同様である。
【0114】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0115】
[項目1]
インダクタ(L1)と、
直列接続されたn(nは2以上の整数)個のセル(C1-C4)と前記インダクタ(L1)間に設けられ、前記n個のセル(C1-C4)のいずれか1個あるいは直列接続される複数個のセルからなる選択セルの両端と、前記インダクタ(L1)の両端を導通させることが可能なセル選択回路(11)と、
前記セル選択回路(11)がいずれのセル(C1-C4)も選択していない状態で、前記インダクタ(L1)を含む閉ループを形成するためのクランプスイッチ(Sc1-Sc4、またはSc)を有するクランプ回路(12)と、
前記セル選択回路(11)と前記クランプ回路(12)を制御する制御部(13)と、を備え、
前記セル選択回路(11)は、
前記インダクタ(L1)の一端に接続される第1配線(W1)と、
前記インダクタ(L1)の他端に接続される第2配線(W2)と、
前記選択セルの両端の一方を前記第1配線(W1)に選択的に接続する複数の第1配線側スイッチ(S1、S5、S9、またはS1、S3、S5、S7、S9)と、
前記選択セルの両端の他方を前記第2配線(W2)に選択的に接続する少なくとも1個の第2配線側スイッチ(S4、S8、またはS2、S4、S6、S8、S10)と、を含み、
前記クランプスイッチ(Sc2、またはSc)は、並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記第1配線側スイッチ(S1)は、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記第2配線側スイッチ(S4)は、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記制御部(13)は、
前記n個のセル(C1-C4)の内の放電対象の前記選択セルである放電セル(C1)から前記インダクタ(L1)に電流が流れるように、前記放電セル(C1)の両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチ(S1)と前記第2配線側スイッチ(S4)、並びに前記クランプスイッチ(Sc1-Sc4、またはSc)の導通状態を制御して前記放電セル(C1)の両側のノードに前記インダクタ(L1)の両端が接続される放電経路を形成し、前記インダクタ(L1)に流れる電流を増加させるインダクタ電流増加状態、
前記インダクタ(L1)の両端間にクランプ電流が流れるように、前記放電セル(C1)の両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチ(S1)と前記第2配線側スイッチ(S4)、並びに前記クランプスイッチ(Sc1-Sc4、またはSc)の導通状態を制御して前記インダクタ(L1)の両端間が前記クランプスイッチ(Sc1、Sc4)を介して接続されるクランプ経路を生成し、前記インダクタ(L1)に流れる電流を前記クランプ経路で循環させるクランプ状態、
前記n個のセルの内(C1-C4)の充電対象の前記選択セルである充電セル(C2)に前記インダクタ(L1)から電流が流れるように、前記充電セル(C2)の両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチ(S5)と前記第2配線側スイッチ(S4)、並びに前記クランプスイッチ(Sc1-Sc4、またはSc)の導通状態を制御して前記充電セル(C2)の両側のノードに前記インダクタ(L1)の両端が接続される充電経路を生成し、前記インダクタ(L1)に流れる電流を減少させるインダクタ電流減少状態の順に制御し、
前記クランプ状態は、前記クランプ経路を形成する複数のスイッチング素子のうち、少なくとも1個のスイッチング素子をオフ状態にして当該スイッチング素子に並列のダイオードを経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子をターンオンして前記複数のスイッチング素子の全てをオン状態にする第2クランプ状態を有し、
前記制御部(13)は、
前記インダクタ電流増加状態において、前記放電経路を形成する複数のスイッチング素子の全てをオン状態にした後に、次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記クランプスイッチを形成する複数のスイッチング素子のうちの一部のスイッチング素子をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成することを特徴とするエネルギ移動回路(10)。
これによれば、信頼性が高く安全なエネルギ移動回路(10)を実現することができる。
[項目2]
前記セル選択回路(11)は、
前記直列接続されたn個のセル(C1-C4)の各ノード(n+1)の内、奇数ノードと前記第1配線(W1)との間にそれぞれ接続される複数の第1配線側スイッチ(S1、S5、S9)と、
前記直列接続されたn個のセル(C1-C4)の各ノード(n+1)の内、偶数ノードと前記第2配線(W2)との間にそれぞれ接続される少なくとも1個の第2配線側スイッチ(S4、S8)と、を含み、
前記クランプ回路(12)は、互いに直列に接続された第1クランプスイッチ(Sc1)及び第2クランプスイッチ(Sc2)と、互いに直列に接続された第3クランプスイッチ(Sc3)及び第4クランプスイッチ(Sc4)とを備え、
前記インダクタ(L1)は、前記第1クランプスイッチ(Sc1)及び前記第2クランプスイッチ(Sc2)間のノードと前記第3クランプスイッチ(Sc3)及び前記第4クランプスイッチ(Sc4)間のノードとの間に接続され、
前記第1クランプスイッチ(Sc1)及び前記第3クランプスイッチ(Sc3)の前記インダクタ(L1)に接続されていない一端は、前記第1配線(W1)に接続され、
前記第2クランプスイッチ(Sc2)及び前記第4クランプスイッチ(Sc4)の前記インダクタ(L1)に接続されていない一端は、前記第2配線(W2)に接続され、
前記クランプ回路(12)は、前記インダクタ(L1)と前記第1クランプスイッチ(Sc1)、前記第2クランプスイッチ(Sc2)、前記第3クランプスイッチ(Sc3)及び前記第4クランプスイッチ(Sc4)とによりフルブリッジ接続されたことを特徴とする項目1に記載のエネルギ移動回路(10)。
これによれば、信頼性が高く安全な、フルブリッジ回路で構成されたクランプ回路(12)を有するエネルギ移動回路(10)を実現することができる。
[項目3]
前記セル選択回路(11)は、
前記直列接続されたn個のセル(C1-C4)の各ノードと、前記第1配線(W1)間にそれぞれ接続される(n+1)個の第1配線側スイッチ(S1、S3、S5、S7、S9)と、
前記直列接続されたn個のセル(C1-C4)の各ノードと、前記第2配線(W2)間にそれぞれ接続される(n+1)個の第2配線側スイッチ(S2、S4、S6、S8、S10)と、を含むことを特徴とする項目1に記載のエネルギ移動回路(10)。
これによれば、クランプ回路(12)に使用されるクランプスイッチ(Sc)を1個で構成することができる。即ち、2個のスイッチング素子で構成することができる。
[項目4]
前記制御部(13)は、
前記第2クランプ状態の終了後、前記充電経路を形成する8個のスイッチング素子(Q1、Q2、Q7、Q8、S4、Sc4)のうち、前記第1配線側スイッチ(S1)又は前記第2配線側スイッチを構成する1個のスイッチング素子(Q1)と、前記クランプスイッチ(Sc1)を構成する1個のスイッチング素子(Q8)の2個のスイッチング素子(Q1、Q8)をオフ状態にして当該2個のスイッチング素子(Q1、Q8)に並列のボディダイオード(D1、D8)を経由して充電電流を流す第1充電状態、当該オフ状態の2個のスイッチング素子(Q1、Q8)をターンオンして前記8個のスイッチング素子(Q1、Q2、Q7、Q8、S4、Sc4)の全てをオン状態にする第2充電状態の順に切り替えることを特徴とする項目2に記載のエネルギ移動回路(10)。
これによれば、クランプ状態から充電状態に安全に切り替えることができる。
[項目5]
前記制御部(13)は、
前記インダクタ電流増加状態の終了後、前記クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子(Q5、Q6、Sc4)のうち、1個のスイッチング素子(Q6)をオフ状態にして当該スイッチング素子(Q6)に並列のダイオード(D6)を経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子(Q6)をターンオンして前記4個のスイッチング素子(Q5、Q6、Sc4)の全てをオン状態にする第2クランプ状態の順に切り替え、
前記第2クランプ状態の終了後、前記クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子(Q5、Q6、Sc4)のうち、前記オフ状態にする1個のスイッチング素子(Q6)と、当該スイッチング素子(Q6)と逆向きに直列に接続された1個のスイッチング素子(Q5)の2個のスイッチング素子(Q5、Q6)をターンオフし、前記第1充電状態から前記第2充電状態に切り替えるタイミングより遅延したタイミングで且つ次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記ターンオフした2個のスイッチング素子(Q5、Q6)の1個(Q5)をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成することを特徴とする項目4に記載のエネルギ移動回路(10)。
これによれば、第1クランプ状態のクランプ経路を準備する際に、スパイクが発生することを抑制することができる。
[項目6]
前記n個のセル(C1-C4)のそれぞれの電圧を検出する電圧検出部(14)をさらに備え、
前記制御部(13)は、前記電圧検出部(14)により検出された前記n個のセル(C1-C4)の電圧をもとに、前記n個のセル(C1-C4)間の均等化処理を実行する項目1から5のいずれか1項に記載のエネルギ移動回路(10)。
これによれば、エネルギ移動を利用した均等化回路を実現することができる。
[項目7]
前記制御部(13)は、前記電圧検出部(14)により検出された前記n個のセル(C1-C4)の電圧をもとに、前記n個のセル(C1-C4)の目標電圧または目標容量を決定し、前記目標電圧または目標容量より高いセルを放電対象のセルに決定し、前記目標電圧または目標容量より低いセルを充電対象のセルに決定することを特徴とする項目6に記載のエネルギ移動回路(10)。
これによれば、セル(C1-C4)間のエネルギ移動によるアクティブセルバランスを実現することができる。
[項目8]
直列接続されたn(nは2以上の整数)個のセル(C1-C4)と、
項目1から7のいずれか1項に記載のエネルギ移動回路(10)と、
を備えることを特徴とする蓄電システム(1)。
これによれば、信頼性が高く安全なエネルギ移動回路(10)を実現した蓄電システム(1)を構築することができる。
[項目9]
インダクタ(L1M)と、
直列接続されたm(mは2以上の整数)個のモジュール(M1-M4)と前記インダクタ(L1M)間に設けられ、前記m個のモジュール(M1-M4)のいずれか1個あるいは直列接続される複数個のモジュールからなる選択モジュールの両端と、前記インダクタ(L1M)の両端を導通させることが可能なモジュール選択回路(11M)と、
前記モジュール選択回路(11M)がいずれのモジュール(M1-M4)も選択していない状態で、前記インダクタ(L1M)を含む閉ループを形成するためのクランプスイッチ(Sc1M-Sc4M)を有するクランプ回路(12M)と、
前記モジュール選択回路(11M)と前記クランプ回路(12M)を制御する制御部(13M)と、を備え、
前記モジュール選択回路(11M)は、
前記インダクタ(L1M)の一端に接続される第1配線(W1M)と、
前記インダクタ(L1M)の他端に接続される第2配線(W2M)と、
前記選択モジュールの両端の一方を前記第1配線(W1M)に選択的に接続する複数の第1配線側スイッチ(S1M、S5M、S9M)と、
前記選択モジュールの両端の他方を前記第2配線(W2M)に選択的に接続する少なくとも1個の第2配線側スイッチ(S4M、S8M)と、を含み、
前記クランプスイッチ(Sc2M)は、並列に接続/形成されるダイオード(D5、D6)を有するスイッチング素子(Q5、Q6)が前記ダイオード(D5、D6)を逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記第1配線側スイッチ(S1M)は、それぞれ並列に接続/形成されるダイオード(D1、D2)を有するスイッチング素子(Q1、Q2)が前記ダイオード(D1、D2)を逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記第2配線側スイッチ(S4)は、それぞれ並列に接続/形成されるダイオードを有するスイッチング素子が前記ダイオードを逆向きにして2個直列に接続されて形成され、
前記制御部(13M)は、
前記m個のモジュール(M1-M4)の内の放電対象の前記選択モジュールである放電モジュール(M1)から前記インダクタ(L1M)に電流が流れるように、前記放電モジュール(M1)の両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチ(S1M)と前記第2配線側スイッチ(S4M)、並びに前記クランプスイッチ(Sc1-Sc4)の導通状態を制御して前記放電モジュール(M1)の両側のノードに前記インダクタ(L1M)の両端が接続される放電経路を形成し、前記インダクタ(L1M)に流れる電流を増加させるインダクタ電流増加状態、
前記インダクタ(L1M)の両端間にクランプ電流が流れるように、前記放電モジュール(M1)の両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチ(S1M)と前記第2配線側スイッチ(S4M)、並びに前記クランプスイッチ(Sc1M-Sc4M)の導通状態を制御して前記インダクタ(L1M)の両端間が前記クランプスイッチ(Sc1M、Sc4M)を介して接続されるクランプ経路を生成し、前記インダクタ(L1M)に流れる電流を前記クランプ経路で循環させるクランプ状態、
前記m個のモジュールの内(M1-M4)の充電対象の前記選択モジュールである充電モジュール(M2)に前記インダクタ(L1M)から電流が流れるように、前記充電モジュール(M2)の両側のノードに接続された前記第1配線側スイッチ(S5M)と前記第2配線側スイッチ(S4M)、並びに前記クランプスイッチ(Sc1M-Sc4M)の導通状態を制御して前記充電モジュール(M2)の両側のノードに前記インダクタ(L1M)の両端が接続される充電経路を生成し、前記インダクタ(L1M)に流れる電流を減少させるインダクタ電流減少状態の順に制御し、
前記クランプ状態は、前記クランプ経路を形成する複数のスイッチング素子(Q5、Q6)のうち、少なくとも1個のスイッチング素子(Q6)をオフ状態にして当該スイッチング素子(Q6)に並列のダイオード(D6)を経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子(Q6)をターンオンして前記複数のスイッチング素子(Q5、Q6)の全てをオン状態にする第2クランプ状態を有し、
前記制御部(13M)は、
前記インダクタ電流増加状態において、前記放電経路を形成する複数のスイッチング素子(Q1、Q2、Q7、Q8)の全てをオン状態にした後に、次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記クランプスイッチ(Sc2M)を形成する複数のスイッチング素子(Q5、Q6)のうちの一部のスイッチング素子(Q5)をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成することを特徴とするエネルギ移動回路(10M)。
これによれば、信頼性が高く安全なエネルギ移動回路(10M)を実現することができる。
[項目10]
前記モジュール選択回路(11M)は、
前記直列接続されたm個のモジュール(M1-M4)の各ノード(n+1)の内、奇数ノードと前記第1配線(W1M)との間にそれぞれ接続される複数の第1配線側スイッチ(S1M、S5M、S9M)と、
前記直列接続されたm個のモジュール(M1-M4)の各ノード(n+1)の内、偶数ノードと前記第2配線(W2M)との間にそれぞれ接続される少なくとも1個の第2配線側スイッチ(S4M、S8M)と、を含み、
前記クランプ回路(12M)は、互いに直列に接続された第1クランプスイッチ(Sc1M)及び第2クランプスイッチ(Sc2M)と、互いに直列に接続された第3クランプスイッチ(Sc3M)及び第4クランプスイッチ(Sc4M)とを備え、
前記インダクタ(L1M)は、前記第1クランプスイッチ(Sc1M)及び前記第2クランプスイッチ(Sc2M)間のノードと前記第3クランプスイッチ(Sc3M)及び前記第4クランプスイッチ(Sc4M)間のノードとの間に接続され、
前記第1クランプスイッチ(Sc1M)及び前記第3クランプスイッチ(Sc3M)の前記インダクタ(L1M)に接続されていない一端は、前記第1配線(W1M)に接続され、
前記第2クランプスイッチ(Sc2M)及び前記第4クランプスイッチ(Sc4M)の前記インダクタ(L1M)に接続されていない一端は、前記第2配線(W2M)に接続され、
前記クランプ回路(12M)は、前記インダクタ(L1M)と前記第1クランプスイッチ(Sc1M)、前記第2クランプスイッチ(Sc2M)、前記第3クランプスイッチ(Sc3M)及び前記第4クランプスイッチ(Sc4M)とによりフルブリッジ接続されたことを特徴とする項目9に記載のエネルギ移動回路(10M)。
これによれば、信頼性が高く安全な、フルブリッジ回路で構成されたクランプ回路(12)を有するエネルギ移動回路(10M)を実現することができる。
[項目11]
前記モジュール選択回路(11M)は、
前記直列接続されたm個のモジュール(M1-M4)の各ノードと、前記第1配線(W1M)間にそれぞれ接続される(m+1)個の第1配線側スイッチ(S1M、S3M、S5M、S7M、S9M)と、
前記直列接続されたm個のモジュール(M1-M4)の各ノードと、前記第2配線(W2M)間にそれぞれ接続される(m+1)個の第2配線側スイッチ(S2M、S4M、S6M、S8M、S10M)と、を含むことを特徴とする項目9に記載のエネルギ移動回路(10M)。
これによれば、クランプ回路(12M)に使用されるクランプスイッチ(ScM)を1個で構成することができる。即ち、2個のスイッチング素子で構成することができる。
[項目12]
前記制御部(13M)は、
前記第2クランプ状態の終了後、前記充電経路を形成する8個のスイッチング素子(Q1、Q2、Q7、Q8、S4M、Sc4M)のうち、前記第1配線側スイッチ(S1M)又は前記第2配線側スイッチを構成する1個のスイッチング素子(Q1)と、前記クランプスイッチ(Sc1M)を構成する1個のスイッチング素子(Q8)の2個のスイッチング素子(Q1、Q8)をオフ状態にして当該2個のスイッチング素子(Q1、Q8)に並列のダイオード(D1、D8)を経由して充電電流を流す第1充電状態、当該オフ状態の2個のスイッチング素子(Q1、Q8)をターンオンして前記8個のスイッチング素子(Q1、Q2、Q7、Q8、S4M、Sc4M)の全てをオン状態にする第2充電状態の順に切り替えることを特徴とする項目10に記載のエネルギ移動回路(10M)。
これによれば、クランプ状態から充電状態に安全に切り替えることができる。
[項目13]
前記制御部(13M)は、
前記インダクタ電流増加状態の終了後、前記クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子(Q5、Q6、Sc4M)のうち、1個のスイッチング素子(Q6)をオフ状態にして当該スイッチング素子(Q6)に並列のダイオード(D6)を経由してクランプ電流を流す第1クランプ状態、当該オフ状態のスイッチング素子(Q6)をターンオンして前記4個のスイッチング素子(Q5、Q6、Sc4M)の全てをオン状態にする第2クランプ状態の順に切り替え、
前記第2クランプ状態の終了後、前記クランプ経路を形成する4個のスイッチング素子(Q5、Q6、Sc4M)のうち、前記オフ状態にする1個のスイッチング素子(Q6)と、当該スイッチング素子(Q6)と逆向きに直列に接続された1個のスイッチング素子(Q5)の2個のスイッチング素子(Q5、Q6)をターンオフし、前記第1充電状態から前記第2充電状態に切り替えるタイミングより遅延したタイミングで且つ次の前記第1クランプ状態に切り替える前に、前記ターンオフした2個のスイッチング素子(Q5、Q6)の1個(Q5)をターンオンして前記第1クランプ状態の前記クランプ経路を生成することを特徴とする項目12に記載のエネルギ移動回路(10M)。
これによれば、第1クランプ状態のクランプ経路を準備する際に、スパイクが発生することを抑制することができる。
[項目14]
前記m個のモジュール(M1-M4)のそれぞれの電圧を検出する電圧検出部(14M)をさらに備え、
前記制御部(13M)は、前記電圧検出部(14M)により検出された前記m個のモジュール(M1-M4)の電圧をもとに、前記m個のモジュール(M1-M4)間の均等化処理を実行する項目9から13のいずれか1項に記載のエネルギ移動回路(10M)。
これによれば、エネルギ移動を利用した均等化回路を実現することができる。
[項目15]
前記制御部(13M)は、前記電圧検出部(14M)により検出された前記m個のモジュール(M1-M4)の電圧をもとに、前記m個のモジュール(M1-M4)の目標電圧または目標容量を決定し、前記目標電圧または目標容量より高いモジュールを放電対象のモジュールに決定し、前記目標電圧または目標容量より低いモジュールを充電対象のモジュールに決定することを特徴とする項目14に記載のエネルギ移動回路(10M)。
これによれば、モジュール(M1-M4)間のエネルギ移動によるアクティブモジュールバランスを実現することができる。
[項目16]
前記m個のモジュール(M1-M4)は、それぞれ、
直列接続された複数のセル(C1-C4)と、
前記複数のセル(C1-C4)のそれぞれのセル電圧を検出するセル電圧検出部(14)と、
前記セル電圧検出部(14)により検出されるセル電圧に基づいて同一モジュール(M1-M4)内の複数のセル電圧を均等化するセル用均等化回路(10A-10D)と、を含み、
前記セル用均等化回路(10A-10D)は、前記制御部(13M)と通信により互いに連携して動作し、前記m個のモジュール(M1-M4)間の均等化処理が実行された後、前記複数のセル(C1-C4)間の均等化処理を実行することを特徴とする項目14に記載のエネルギ移動回路(10M)。
これによれば、モジュール(M1-M4)間のエネルギ移動によるアクティブモジュールバランスと、セル(C1-C4)間のエネルギ移動によるアクティブセルバランスを併用して、効率的に全てのセルの均等化を実現することができる。
[項目17]
直列接続されたm(mは2以上の整数)個のモジュール(M1-M4)と、
項目9から16のいずれか1項に記載のエネルギ移動回路(10M)と、
を備えることを特徴とする蓄電システム(1M)。
これによれば、信頼性が高く安全なエネルギ移動回路(10M)を実現した蓄電システム(1M)を構築することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 蓄電システム、 10 均等化回路、 11 セル選択回路、 12 エネルギ保持回路、 13 制御部、 14 電圧検出部、 20 蓄電部、 C1-C4,Ca,Cb セル、 L1 インダクタ、 W1 第1配線、 W2 第2配線、 S1-S10 スイッチ、 Sc1-Sc4 クランプスイッチ、 Q1-Q8 スイッチング素子、 D1-D8 ボディダイオード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15