(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】圧電センサを用いた繊維構造体
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20240419BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20240419BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20240419BHJP
D04C 1/02 20060101ALI20240419BHJP
D04C 1/12 20060101ALI20240419BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240419BHJP
H10N 30/857 20230101ALI20240419BHJP
【FI】
G01L1/16 B
D02G3/04
D02G3/36
D04C1/02
D04C1/12
H10N30/30
H10N30/857
(21)【出願番号】P 2019065180
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 慧
(72)【発明者】
【氏名】迫部 唯行
(72)【発明者】
【氏名】室谷 浩紀
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】九鬼 一慶
【審判官】濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-73997(JP,A)
【文献】特開2017-183432(JP,A)
【文献】特表2018-521501(JP,A)
【文献】特開2017-26396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
G01L 5/00
H01L 41/113
D02G 3/38
D02G 3/44
D03D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維構造体を構成するための構成繊維
としての複数本のマルチフィラメントと、ワイヤ状の圧電センサとを含み、
前記ワイヤ状の圧電センサが芯部に配されるとともに前記構成繊維
としての複数本のマルチフィラメントが前記ワイヤ状の圧電センサの外周を覆った組紐の形態の紐状に形成され、
前記構成繊維
としての複数本のマルチフィラメントが、前記繊維構造体の強度
の大部分を担っていることを特徴とする圧電センサを用いた繊維構造体。
【請求項2】
繊維構造体を構成するための構成繊維
としての複数本のマルチフィラメントと、ワイヤ状の圧電センサとを含み、
前記ワイヤ状の圧電センサの周囲を構成繊維
としての複数本のマルチフィラメントが合撚りして覆った形態の紐状に形成され、
前記構成繊維
としての複数本のマルチフィラメントが、前記繊維構造体の強度
の大部分を担っていることを特徴とする圧電センサを用いた繊維構造体。
【請求項3】
熱処理後の繊維製品に、請求項1または2に記載の繊維構造体が、前記熱処理の影響を受けていない状態で組み込まれていることを特徴とする繊維構造体を用いた繊維製品。
【請求項4】
熱処理によって繊維製品を製造し、
前記熱処理によって製造された繊維製品に、請求項1または2記載の繊維構造体を組み込むことを特徴とする繊維構造体を用いた繊維製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電センサを用いた繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電センサの一種として、ケーブル状あるいはワイヤー状に形成されたものが知られている(特許文献1、2)。これらの圧電センサは、線状の導電体の周囲に圧電物質の層を配置することで、その圧電効果を発揮させるようにしたものである。
【0003】
これらの圧電センサは、上記のようにケーブル状あるいはワイヤー状に形成されていることから、繊維製品に取り込んだ形態で利用することが可能であると見込まれる。たとえば特許文献1に記載されたケーブル状圧電センサは、その直径が0.1~1.5mmであることが好ましいとされ、このため特許文献1では、「衣服に縫い込んだり織物を形成して用いることができる」と記載されている(特許文献1、段落0049,0050)。特許文献2には、繊維製品への応用に関する記載は存在しない。しかし、特許文献2の圧電ワイヤーはその線径が1.0mm以下であることにより(特許文献2、段落0007)特許文献1のものと同様の繊維製品への応用は、不可能ではないと判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-351664号公報
【文献】特開2017-183570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、上記のようにケーブル状圧電センサの繊維製品への適用の可能性は示唆されているようであるが、実際に適用できるか否かについては実証されていない。すなわち、特許文献1には上述のようにケーブル状圧電センサの直径として0.1~1.5mmが好ましいとの記載があるものの、実施例では直径1.3mmのものしか作製できておらず、それよりも細径のものが実際に作製できるのか否かについては実証されていない。現実的には、直径が1.3mmもあると、普通の布帛を構成する繊維に比べて極端に太いため、普通の布帛に織り込んだり編み込んだりすることは不可能である。また直径1.3mmであると、衣服に縫い付けることは不可能ではないが、そのための特別の工程を必要としてしまう。
【0006】
特許文献2では、その実施例において、線径0.02~1.0mmの圧電ワイヤーが得られたことが記載されている。この範囲の線径であれば、普通の布帛に織り込んだり編み込んだりすることが不可能であるとはいえない。しかし、織物や編物を製造する際には、その製造工程である織編工程において、その構成繊維すなわち織編の対象となる繊維に多様な力が作用する。この点において、特許文献2に記載の圧電ワイヤーが上記した織編工程において織編装置から受ける力に堪え得るものであるか否かは不明である。
【0007】
また通常の合成繊維すなわち合成樹脂を原料とした繊維を用いた繊維製品の製造工程においては、形態の安定化などのために熱処理を施すことが一般的であり、その処理温度は樹脂が軟化する以上の高温、たとえば100℃以上の高温であることが通例である。しかし、特許文献2に記載の圧電ワイヤーでは、高分子圧電体層にβ型ポリフッ化ビニリデン系共重合体が用いられており(特許文献2、段落0007)、このβ型ポリフッ化ビニリデン系共重合体は、その耐熱温度が85℃程度でしかない(特許文献2、段落0007)。このように耐熱温度の低い圧電ワイヤーを取り込んで一般の布帛構成繊維と一緒に繊維製品の製造工程に用いた場合には、上述の強度上の問題点が内在することに加えて、上記した通常の織編製品を得るときの熱処理工程を実施することができないという問題点が存在する。
【0008】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、ワイヤ状の圧電センサを実際の繊維製品に確実に用いることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明の圧電センサを用いた繊維構造体は、
繊維構造体を構成するための構成繊維としての複数本のマルチフィラメントと、ワイヤ状の圧電センサとを含み、
前記ワイヤ状の圧電センサが芯部に配されるとともに前記構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが前記ワイヤ状の圧電センサの外周を覆った組紐の形態の紐状に形成され、
前記構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが、前記繊維構造体の強度の大部分を担っていることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の、圧電センサを用いた繊維構造体は、
繊維構造体を構成するための構成繊維としての複数本のマルチフィラメントと、ワイヤ状の圧電センサとを含み、
前記ワイヤ状の圧電センサの周囲を構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが合撚りして覆った形態の紐状に形成され、
前記構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが、前記繊維構造体の強度の大部分を担っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電センサを用いた繊維構造体は、繊維構造体を構成するための構成繊維としての複数本のマルチフィラメントと、ワイヤ状の圧電センサとを含み、ワイヤ状の圧電センサが芯部に配されるとともに構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが前記ワイヤ状の圧電センサの外周を覆った組紐の形態の紐状に形成され、前記構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが、前記繊維構造体の強度の大部分を担っているか、または、繊維構造体を構成するための構成繊維としての複数本のマルチフィラメントと、ワイヤ状の圧電センサとを含み、ワイヤ状の圧電センサの周囲を構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが合撚りして覆った形態の紐状に形成され、前記構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが、前記繊維構造体の強度の大部分を担っているため、ワイヤ状の圧電センサには大きな力が作用することがないという利点がある。また繊維構造体を構成するための構成繊維とワイヤ状の圧電センサとを含んで紐状に形成されているため、すなわち通常の繊維製品と同様の形態であるため、熱処理後の他の繊維製品と容易に一体化することができ、このため本発明の繊維構造体を熱処理に供することなしに繊維製品を得ることができるという利点もある。
【0012】
本発明の圧電センサを用いた繊維構造体によれば、ワイヤ状の圧電センサが芯部に配されるとともに構成繊維としての複数本のマルチフィラメントがワイヤ状の圧電センサの外周を覆った組紐の形態の紐状に形成されているか、または、ワイヤ状の圧電センサの周囲を構成繊維としての複数本のマルチフィラメントが合撚りして覆った形態の紐状に形成されており、このためワイヤ状の圧電センサの外周が構成繊維により覆われていることによって、圧電センサが繊維構造体の外周に露出しておらず、このような構成とすることで、圧電センサに断線などの事故が発生することを確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の圧電センサを用いた繊維構造体は、繊維構造体を構成するための構成繊維と、ワイヤ状の圧電センサとを含む。
【0014】
このうち、繊維構造体を構成するための構成繊維としては、通常の繊維構造体を構成するために一般に用いられているポリマーを使った合成繊維を、好ましく用いることができる。そのような繊維としては、ポリエステル繊維やポリアミド繊維などを挙げることができる。繊維の繊度などの諸物性は、一緒に用いるワイヤ状の圧電センサの物性や、紐状に構成される繊維構造体に求められる物性などに応じて、適宜に設定することができる。
【0015】
ワイヤ状の圧電センサとしては、特許文献2に記載されたものや、特許文献1に記載されたものを好適に用いることができる。特に特許文献2に記載されたものは、上述のように特許文献1に記載されたものと比べて線径が細いため、繊維構造体を構成するための構成繊維と一緒に紐状体を形成する点で有利である。
【0016】
繊維構造体は、繊維構造体を構成するための構成繊維とワイヤ状の圧電センサとを含んで紐状に形成されている。この紐状の繊維構造体の具体的な形態としては、任意のものを挙げることができる。なかでも、ワイヤ状の圧電センサに断線などの事故が発生するのを効果的に防止するために、ワイヤ状の圧電センサの外周が構成繊維によって覆われていることによって、圧電センサが繊維構造体の外周に露出していないことが好適である。このための具体的な構成としては、たとえば、ワイヤ状の圧電センサが芯部に配された組紐の形態であることが特に好ましい。このような構造の繊維構造体は、製紐工程によって容易に得ることができ、しかもそのときに芯部に配されるワイヤ状の圧電センサに大きな応力が作用することが無く、さらに組紐の形態とするときに高温での熱処理は必要ないという利点がある。そのほかにも、たとえばワイヤ状の圧電センサの周囲を構成繊維としての複数の糸条が合撚りして覆った形態も好ましい。この場合も、紐状に構成するときにワイヤ状の圧電センサに大きな応力が作用することが無く、また紐状に構成するときに高温での熱処理が必要ないという利点がある。さらには、たとえばワイヤ状の圧電センサの周囲を構成繊維としての糸条がらせん状に巻き付くことによりカバリングされた形態も好ましい。この場合も、紐状に構成するときにワイヤ状の圧電センサに大きな応力が作用することが無く、また紐状に構成するときに高温での熱処理が必要ないという利点がある。
【0017】
本発明の圧電センサを用いた繊維構造体は、ワイヤ状の圧電センサ以外の構成繊維を含んで紐状に形成されているため、すなわち通常の細長い繊維製品、たとえば、ヤーン、ストランド、コード、紐、ロープ等の繊維製品と同様の形態であるため、熱処理後の他の繊維製品に組み込むことによって容易に一体化することができる。このため、本発明の繊維構造体を熱処理に供することなしに、最終的な繊維製品を得ることができる。
【0018】
本発明の、圧電センサを用いた紐状の繊維構造体は、具体的には、次のようにして最終繊維製品に組み込むことができる。すなわち、本発明の紐状の繊維構造体にてロープを構成することができ、さらに、このロープを用いて、ネット状体の少なくとも一部を構成させることができる。ネット状体の具体例としては、粗目の織物や編物、ラッセル網等が挙げられ、より具体的な用途としては、安全ネット、コンクリート剥離防止ネット、獣害防止ネット、土木用シートなどを挙げることができる。これらに応用したときには、ネットに何かが触れたことを検知することができ、たとえば安全ネットが機能したことや、コンクリート剥離防止ネットに剥離したコンクリート片が受け止められたことや、獣害防止ネットに動物が接触したことなどを、良好に検知することができる。また、ロープを用いて、土木用シートの少なくとも一部を構成させることもできる。土木用シートは、盛土や、土壁や、地盤補強の用途に供することができ、その場合にはたとえば地震時における土砂崩れの発生を確実に検知することができるなどの利点がある。また、本発明の紐状の繊維構造体を、ネット状体やシートの一部に組み込む方法としては、同繊維構造体を、ネット状体やシートを構成している糸条の一部に、巻き付けや挿入等により組み込むことが挙げられる。
【0019】
ネット状体などを構築するためのロープは、上記のように本発明の繊維構造体をそのまま利用することができるほかに、本発明の圧電センサを用いた繊維構造体を他の通常の繊維構造体(圧電センサを有しないもの)と一緒に用いた太めのロープ状体として構成することもできる。たとえば、通常の繊維構造体にて構成されたロープ状体に、それよりも細い本発明の圧電センサを用いた繊維構造体を巻き付けるなどの態様によって、上記した太めのロープ状体を得ることができる。このようなものであると、本発明の圧電センサを用いた繊維構造体を、より大きな力が掛かるであろうと予想される用途にも問題なく利用することができる。
【0020】
ロープの用途としては、テント倉庫を挙げることができる。テント倉庫は、倉庫を構成するシートをロープを使って骨組みに取り付けることによって構造物を構築しているが、このロープに、本発明の紐状の圧電センサを用いた繊維構造体を好ましく用いることができる。テント倉庫には重要物品が保管されることが多いが、台風などの際にシートにきわめて大きな力が作用した時に、そのことを検知することができる。
【実施例】
【0021】
実施例1
東邦化成社製のワイヤ状の圧電センサである0.65mmφ「PICLIAワイヤーセンサー」を芯にし、ポリエチレンテレフタレート繊維からなるマルチフィラメント糸 1100dtex192フィラメント(ユニチカ社製 E223)を4本角打ちで製紐した。これによって、圧電センサが内部に埋設されて表面には露出しない構造の、直径1mmの組紐を得た。
【0022】
得られた組紐中の「PICLIAワイヤーセンサー」をオシロスコープ(Pico Technology社製 USBオシロスコープ 商品名「PicoScope2204A」)に接続し、組紐の上端(オシロスコープと接続した側)を固定し、下端に組紐の径方向に100gの荷重を加えたところ、約50mVの電位差が検出された。これによって、組紐が感度良く力を検出して十分な大きさの電気信号を出力できることが確認された。
【0023】
実施例2
実施例1で用いたのと同じマルチフィラメント糸をS-120T/mで3本合撚し、この合撚したものをさらにS-100T/mで10本合撚して、ストランドを得た。このストランド3本を用いて、実施例1で用いたのと同じワイヤ状の圧電センサ1本の周囲をZ-40T/mで合撚し覆うことによって、直径5mmの細いロープを得た。
【0024】
得られたロープについて、実施例1と同様の評価を行ったところ、同様に約10mVの電位差が検出された。
【0025】
実施例3
実施例1で用いたのと同じマルチフィラメント糸を2本引き揃えた引き揃え糸を用いて整経し、280dtex×46本格のラッセル網を編網した。その後、熱処理(180℃×5分)を行い、15mm目合いの安全ネット用ラッセル網を得た。得られた網地の網糸部分に、実施例1で得られたワイヤ状の圧電センサを含む組紐を1本旋回させて巻き付けた。巻き付け用の組紐は、緯方向の網糸の16本に1本の割合で等間隔に設置した。
【0026】
得られたラッセル網中のワイヤ状の圧電センサを、実施例1において用いたのと同じオシロスコープに接続した。そして、周囲を固定した水平方向のラッセル網(16cm×20cm)上に500gのおもりを、高さ12cmから、圧電センサが存在する位置上に落下させた。そうしたところ、落下点に巻き付けられていた組紐において、ワイヤ状の圧電センサによって約50mVの電位差が検出された。ワイヤ状の圧電センサを含んだ組紐から12cm離れたところにおもりを落下させたときには、約10mVの電位差が検出された。このことから、網地中のどの部分においても、観測可能な大きさの電気信号を検出できることが確認された。
【0027】
実施例4
実施例3で得た安全ネット用ラッセル網を枠に固定するための縁ロープに、実施例1で得られた組紐1本を旋回させて設置した。
【0028】
このように枠に固定された安全ネット用ラッセル網について、実施例3と同様の評価を行った。そうしたところ、縁ロープの部分におもりを落下させた場合は約50mVの電位差が検出された。安全ネットの中央部におもりを落下させた場合は約10mVの電位差が検出された。このことから、網地中のどの部分においても観測可能な大きさの電気信号を検出できることが確認された。
【0029】
実施例5
実施例1で用いたのと同じマルチフィラメント糸を60T/mで5本合撚した糸条を用いて、3本からみ織り組織にて、織物密度が経8本/2.54cm×緯8本/2.54cm、目付200g/m2の織物を製織した。この織物に、塩ビプラスチゾル(日本ゼオン社製、ゼオン121)をディッピング法にて両面塗布し、180℃で2分間テンターにて乾燥することにより、被膜付着率を100%o.m.fとしたシートを得た。このシートの端に連結テープを縫製する際に、実施例1で得られたワイヤ状の圧電センサ入りの組紐を挿入した。これによって、樹脂加工した土木用シートを得た。
【0030】
得られた土木用シート中のワイヤ状の圧電センサを、実施例1において用いたのと同じオシロスコープに接続した。そして、上記した連結テープを用いて周囲を固定した水平方向の土木用シート上に100gのおもりを高さ15cmから落下させた。このとき、シートの縁に縫製した連結テープ上に落下させた場合は約50mVの電位差が検出された。これによって、連結テープ付近においては、観測可能な大きさの電気信号を検出できることが確認された。
【0031】
実施例6
実施例1で用いたのと同じマルチフィラメント糸をS-80T/mで撚糸し、この撚糸を用いて経密度24本/インチ、緯密度25本/インチで平織した。その後、ピンテンターにて150℃×3分間の熱処理を行うことで、経密度24本/インチ、緯密度25本/インチ、目付340g/m2の土木用シートを得た。このシートの端に連結テープを縫製する際に、実施例1で得られたワイヤ状の圧電センサを含んだ組紐を挿入することで、樹脂未加工すなわち樹脂がまだ付着されていない土木用シートを得た。
【0032】
この土木用シートについて、実施例5と同様の評価を行ったところ、縁に縫製した連結テープ上におもりを落下させた場合には約50mVの電位差が検出された。これによって、連結テープ付近においては、観測可能な大きさの電気信号を検出できることが確認された。
【0033】
実施例7
実施例1で用いたのと同じマルチフィラメント糸を2本引き揃えて整経し、ラッセル網機で編網した。
【0034】
このラッセル網地をピンテンター型熱処理装置に導入し、幅方向に張力を掛けながら160℃の雰囲気下で3分間熱処理した。その後、室温中に放置して冷却することにより、目合い10mmの角目である280dtex×60本格のネットを得た。
【0035】
得られたネットすなわち網地の網糸部分に、実施例1で得られたワイヤ状の圧電センサを含む組紐を旋回して1本巻き付けることによって、防獣ネット用ラッセル網を得た。組紐は、緯方向の網糸の16本に1本の割合で等間隔に設置した。
【0036】
得られた防獣ネット用ラッセル網に組み込まれた組紐におけるワイヤ状の圧電センサを、実施例1において用いたのと同じオシロスコープに接続した。そして、周囲を固定した水平方向のネットに500gのおもりを高さ12cmから、圧電センサが存在する位置上に落下させた。そうしたところ、落下点に巻き付けられていた組紐において、ワイヤ状の圧電センサによって約20mVの電位差が検出された。ワイヤ状の圧電センサを含んだ組紐から12cm離れたところにおもりを落下させたときには、約10mVの電位差が検出された。このことから、ネット中のどの部分においても観測可能な大きさの電気信号を検出できることが確認された。
【0037】
実施例8
実施例4で得られたのと同じネットすなわち網地であって、ワイヤ状の圧電センサを含む組紐が巻き付けられていないものを用い、この網地を固定するための縁ロープに実施例1で得られた組紐1本を旋回させて組み込み、安全ネット用ラッセル網を得た。
【0038】
この安全ネット用ラッセル網について、ラッセル網中のワイヤ状の圧電センサを、実施例1において用いたのと同じオシロスコープに接続した。そして、周囲を固定した水平方向のラッセル網(16cm×20cm)の中央部に、500gのおもりをフックを用いて引掛けたところ、約20mVの電位差が検出された。このことから、ラッセル網中のどの部分においても観測可能な大きさの電気信号を検出できることが確認された。