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  • 特許-酸素を含有するナノ粒子を含む水 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】酸素を含有するナノ粒子を含む水
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20230101AFI20240419BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20240419BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20240419BHJP
   C01G 49/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C02F1/68 520B
B01F23/20
C02F1/68 510Z
C02F1/68 530A
B82Y30/00
C01G49/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020009559
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021115507
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正好
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-167365(JP,A)
【文献】特開2005-245817(JP,A)
【文献】特開2016-221479(JP,A)
【文献】特開2003-245662(JP,A)
【文献】特開2008-272739(JP,A)
【文献】特開2003-334548(JP,A)
【文献】特開2005-246294(JP,A)
【文献】特開2009-226386(JP,A)
【文献】特開2018-90514(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0046720(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66 - 1/68
B01F 21/00 - 25/90
29/00 - 33/87
B01J 13/02 - 13/22
C01G 49/00 - 49/08
B82Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子間力顕微鏡による観察において表面の少なくとも一部に高さが2nm以下の凹凸構造を持つことが認められ、粒径が50nm以下であり、内包ガスとして酸素を含有する、ナノ粒子を含み、酸を添加すると水酸基ラジカルを発生させる、水。
【請求項2】
電気伝導度が300μS/cm未満である水に、2価の鉄イオンを濃度が1~100ppbとなるように添加した水中に、酸素を含む気体または酸素からなる気体を供給し、粒径が50μm以下であるマイクロバブルを発生させことによる、請求項1記載の水の製造方法。
【請求項3】
2価の鉄イオンを、塩化鉄(II)、硫酸化鉄(II)、硝酸鉄(II)から選択される少なくとも1種の形態で添加する請求項2記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を含有するナノ粒子を含む水に関する。より詳細には、ナノ粒子が、気液界面を有する気泡(ナノバブル)とは異なる、水に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素を含有するナノバブルを含む水(酸素ナノバブル水)が、生物に対して酸素による生理活性効果を高める作用を有することは、例えば特許文献1から当業者によく知られており、本発明者の高橋によって見出された知見である。また、高橋は、特許文献1において、酸素ナノバブル水を製造する方法として、電解質イオンを混入した電気伝導度が3mS/cm以上の水溶液に、酸素を供給し、粒径が10~50μmであるマイクロバブルを発生させ、これに物理的刺激を加えて縮小させることによる方法を提案している。マイクロバブルは、微小な気泡の特性として、水中で縮小し、その際に表面の電荷を濃縮する。気泡の表面は、集まった水に由来する水酸化物イオン(OH)により、マイナスに帯電している。気泡の縮小は、水中における効率的な気体の溶解と緩やかな上昇速度に起因している。マイクロバブルは、球形の気泡であり、二層流旋回方式や加圧溶解方式と呼ばれる方法によって発生させることができる。発生された気泡は水に取り囲まれた存在であり、その表面(気液界面)には表面張力が作用する。表面張力はその面積を小さくするように作用する力である。球形をしたマイクロバブルの場合、表面を小さくする力は結果的に内部の気体を圧縮する力となる。その結果、気泡の内部は加圧される。気体は圧力が高いほど、周りの水に効果的に溶解する。内部の気体が溶解することによりもともと小さなマイクロバブルはさらに縮小していき、ついには水の中で消滅する。しかしながら、マイクロバブルを発生させる水が、電解質イオンを混入することで所定の電気伝導度(例えば300μm以上)を有する場合、気泡の縮小によって表面の電荷が濃縮されると、その対イオンとなる電解質イオンもあわせて濃縮される。その結果、濃縮された電解質イオンが、気泡を取り囲む殻のように働き、気泡の内部の気体が水に溶解することを抑制して気泡のさらなる縮小を阻害することで、気泡が長寿命化し、50~500nm程度の大きさのナノバブルとして存在するようになる。
【0003】
以上の通り、本発明者の高橋のこれまでの精力的な研究によって、酸素ナノバブル水の実態が解明されつつある。しかしながら、酸素ナノバブル水については未だ明らかでないことも多く、さらなる研究が必要な状況にあると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-246294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸素ナノバブル水とは異なる、酸素を含有するナノ粒子を含む水を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、酸素ナノバブル水を製造する新たな方法の研究過程において、酸素を含有するマイクロバブルを発生させる水に微量の2価の鉄イオン(Fe2+)を存在させると、気液界面を有する気泡(ナノバブル)とは異なるナノ粒子を含む水が得られることを見出した。
【0007】
以上の知見に基づいてなされた本発明は、請求項1記載の通り、原子間力顕微鏡による観察において表面の少なくとも一部に高さが2nm以下の凹凸構造を持つことが認められ、粒径が50nm以下であり、内包ガスとして酸素を含有する、ナノ粒子を含み、酸を添加すると水酸基ラジカルを発生させる、水である。
また、本発明は、請求項2記載の通り、電気伝導度が300μS/cm未満である水に、2価の鉄イオンを濃度が1~100ppbとなるように添加した水中に、酸素を含む気体または酸素からなる気体を供給し、粒径が50μm以下であるマイクロバブルを発生させことによる、請求項1記載の水の製造方法である。
また、請求項3記載の製造方法は、請求項2記載の製造方法において、2価の鉄イオンを、塩化鉄(II)、硫酸化鉄(II)、硝酸鉄(II)から選択される少なくとも1種の形態で添加する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸素ナノバブル水とは異なる、酸素を含有するナノ粒子を含む水を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水の原子間力顕微鏡による観察画像である。
図2】同、ナノ粒子の断面解析(Z軸方向)の結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明が提供する、酸素ナノバブル水とは異なる、酸素を含有するナノ粒子を含む水は、原子間力顕微鏡による観察において表面の少なくとも一部に高さが2nm以下の凹凸構造を持つことが認められ、粒径が50nm以下であり、酸素を含有する、ナノ粒子を含み、酸を添加すると水酸基ラジカルを発生させる、水である。
【0011】
本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水の最大の特徴は、酸素を含有するナノ粒子が、原子間力顕微鏡による観察において表面の少なくとも一部に高さが2nm以下の凹凸構造を持つことが認められることにある。表面が気液界面であるナノバブルはこのような表面構造を持ちえないので、このナノ粒子はナノバブルと一線を画すものであることから、本発明者はこのナノ粒子を「ナノキャビティ」と命名している(以下、このナノ粒子をナノキャビティと称することもある)。
【0012】
本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水は、電気伝導度が300μS/cm未満である水に、2価の鉄イオンを濃度が1~100ppbとなるように添加した水中に、酸素を含む乃至からなる気体を供給し、粒径が50μm以下であるマイクロバブルを発生させ、発生したマイクロバブルが縮小することによって製造することができる。
【0013】
電気伝導度が300μS/cm未満である水としては、例えば電気伝導度が3μS/cm以下である純水を好適に用いることができるが、水道水や地下水を用いてもよい。水のpHは、後述する2価の鉄イオンの添加の前後を通して調整してもしなくてもよく、例えば6~8であってよいが、7~8が望ましい。
【0014】
2価の鉄イオンは、塩化鉄(II)、硫酸化鉄(II)、硝酸鉄(II)などの形態で添加することができる。
【0015】
酸素を含む気体としては、例えば酸素濃度が約20%である空気を用いることができ、酸素からなる気体としては、例えば純酸素を用いることができる。
【0016】
水中に粒径が50μm以下である酸素を含有するマイクロバブルを発生させる方法は、公知の方法であってよく、例えば、自体公知の二相流旋回方式や加圧溶解方式によるマイクロバブル発生装置を利用して発生させることができる。二相流旋回方式を採用する場合、回転子などを利用して半径が10cm以下の渦流を強制的に生じせしめ、壁面などの障害物や相対速度の異なる流体に酸素を含んだ気液混合物を打ち当てることにより、渦流中に獲得した酸素を含んだ気体成分を渦の消失とともに分散させることで、所望の酸素を含有するマイクロバブルを大量に発生させることができる。また、加圧溶解方式を採用する場合、2気圧以上の高圧下で酸素を含んだ気体を水中に溶解させた後、これを大気圧に開放することにより生じた酸素を含んだ溶解気体の過飽和条件から酸素を含んだ気泡を発生させることができる。この場合、圧力の開放部位において、水流と障害物を利用して半径が1mm以下の渦を多数発生させ、渦流の中心域における水の分子揺動を起因として多量の気相の核(気泡核)を形成させるとともに、過飽和条件に伴ってこれらの気泡核に向かって水中の酸素を含んだ気体成分を拡散させ、気泡核を成長させることにより、所望の酸素を含有するマイクロバブルを大量に発生させることができる。こうして発生させたマイクロバブルは、粒径が50μm以下で、レーザー光遮断方式の液中パーティクルカウンターによる計測において5~15μmに粒径のピークを有しており、そのピークの領域におけるマイクロバブルの個数は1000個/mL以上である(必要であれば特開2000-51107号公報や特開2003-265938号公報などを参照のこと)。
【0017】
本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を製造するに際しての要点は、電気伝導度が300μS/cm未満である水への2価の鉄イオンの添加は、1~100ppbという極めて低濃度になるように行わなければならないところにある。2価の鉄イオンの添加がこれよりも少なくても多くても、目的とするナノキャビティが形成されて水中で安定に維持されない。その理由を、本発明者は次のように考えている。上述したように、ナノキャビティは、ナノバブルが持ちえない、表面の少なくとも一部に高さが2nm以下の凹凸構造を持つが、この特異な表面は、2価の鉄イオンが、酸素を含有するマイクロバブルが縮小する際に酸素から生成するオゾンによって酸化されて生成した3価の鉄イオンの水酸化物(Fe(OH))を主体とする固相からなり、この固相が、その内側に内包ガスとして存在する酸素を取り囲む殻として働くことで、ナノキャビティが形成されていると推察される。それを裏付ける事実としては、酸を加えると、この固相が溶解して消失することで、気泡の縮小が進行し、やがて水の中で消滅する際、マイクロバブルの消滅時と同様に、水酸基ラジカルを発生させることや、供給する酸素にオゾンを加えると、2価の鉄イオンの3価の鉄イオンへの酸化が促進されて、形成されるナノキャビティが増加することで、水酸基ラジカルの発生量も増加することが挙げられる。この固相は、マイクロバブルの縮小とともに徐々に形作られ、粒径が50nm以下で堅固なものとなり、ナノキャビティを安定化させる。2価の鉄イオンの添加量が、その濃度が1ppbになる量よりも少ないと、この固相が十分に形作られるに足る3価の鉄イオンが供給されず、その濃度が100ppbになる量よりも多いと、3価の鉄イオンの水酸化物が過剰に生成されることで、ナノキャビティが形成されても形成されたナノキャビティが集塊して沈殿物となってしまい、水中に存在しなくなる(従ってナノキャビティが形成されて水中で安定に維持されるためには他の電解質イオンが多量に存在することも望ましくないので2価の鉄イオンを添加する水の電気伝導度を300μS/cm未満としている)。
【0018】
なお、2価の鉄イオンを添加する電気伝導度が300μS/cm未満である水に、アミノ酸、カルボン酸、アミンなどの有機化合物を加えてもよい。こうした有機化合物を、例えば濃度が0.1~100μMとなるように加えることで、2価の鉄イオンの3価の鉄イオンへの酸化が促進され、形成されるナノキャビティを増加させることができる。
【0019】
本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水は、酸素ナノバブル水が有する生物に対して酸素による生理活性効果を高める作用と同様の作用を有することに加え、ナノ粒子が表面の少なくとも一部に高さが2nm以下の凹凸構造を持つことで、酸素ナノバブル水が持ちえない作用として、有機物(それは組織や細胞を含めた生物や微生物であっても分子レベルでの物質などであってもよい)に対する求核的な作用を有することが期待できる。こうしたサブナノサイズの構造においては、原子核に近い電子による遮蔽効果(電子遮蔽効果)が強まる傾向にあるため、固相の表面付近に存在する電子は、原子核からの束縛から解放されて比較的に自由に挙動することができるので、求電子性を有する有機物に対して求核的に作用することが考えられる。
【実施例
【0020】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0021】
実施例1:
容積が15Lのガラス製容器に、電気伝導度が0.06μS/cmである超純水を10L入れ、そこに塩化鉄(II)を濃度が0.5μM(2価の鉄イオンとして約25ppb)となるように添加した。この液中に、加圧溶解型のマイクロバブル発生装置を用い、粒径が15~50μmのマイクロバブルを10分間発生させた。装置は内部の水を循環させながら駆動させた。装置には純酸素を約1.0L/分で供給した。装置の駆動を停止し、一昼夜、室内環境下で自然放置することでマイクロバブルを縮小させた後、1.2μmのメンブレンフィルターでろ過処理を行い、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水(pH:約7)を得た。
【0022】
ろ過後の水2μLを、プラスに帯電させた3-アミノプロピルトリエトキシシランで表面コートしたマイカ基板上に滴下し、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。結果を図1に示す。図1から明らかなように、水中に、粒径が最大で30nm程度の粒子(ナノキャビティ)が、基板に吸着するように集積して存在することを確認することができた。よって、このナノキャビティは、pHが約7の水中で、ナノバブルと同様に、マイナスに帯電していることがわかった。また、原子間力顕微鏡による観察において、このナノキャビティは、表面の少なくとも一部に高さが2nm以下の凹凸構造を持つことが認められた(高さが1nm以下の凹凸構造も多数存在した)。このナノキャビティが表面に有する高さが2nm以下の凹凸構造は、このナノキャビティの断面解析(Z軸方向)からも確認することができた(図2)。なお、原子間力顕微鏡による観察条件は次の通りとした。
(観察条件)
装置 :高速原子間力顕微鏡NanoExplorer(生体分子計測研究所社)
観察環境 :室温(21℃)
カンチレバー:BL-AC10DS-A2(オリンパス社)
解像度 :200×200ピクセル
観察イメージ:液中ACモード形状像
【0023】
ろ過後の水から1mLをサンプリングし、これにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を濃度が20mMになるように加えた後、5,5-ジメチル-1-ピロリン N-オキシド(DMPO)を濃度が200mMになるように加え、さらに塩酸を濃度が500mMになるように加えた。得られた混合液を石英セルに吸引し、電子スピン共鳴装置(ESR)で測定したところ、1:2:2:1のピークパターンを持つ顕著なDMPO-OHの信号を確認することができた。塩酸を加える前に、メタノールを0.2mL加え、同様の測定を行ったところ、1:2:2:1のピークパターンを持つ信号を確認することができたが、そのピーク長は1/3以下になった。メタノールは、水酸基ラジカルを捕捉して失活させてしまうスカベンジャーとして作用するので、以上の結果から、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水は、酸を添加すると水酸基ラジカルを発生させることがわかった。また、ろ過後の水をペットボトルに入れて冷暗所で保管し、3か月後に同様の測定を行ったところ、1:2:2:1のピークパターンを持つ信号を確認することができ、そのピーク長は、製造直後のピーク長の90%以上であったことから、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水の優れた保存安定性を確認することができた。
【0024】
実施例2:
塩化鉄(II)を濃度が0.02μM(2価の鉄イオンとして約1ppb)となるように添加すること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例1のろ過後の水のピーク長の約1/5倍であった。
【0025】
実施例3:
塩化鉄(II)を濃度が2μM(2価の鉄イオンとして約100ppb)となるように添加すること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例1のろ過後の水のピーク長の約1/5倍であった。
【0026】
比較例1:
塩化鉄(II)を濃度が0.01μM(2価の鉄イオンとして約0.5ppb)となるように添加すること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得ようとしたが、得ることはできなかった(ろ過後の水についての電子スピン共鳴装置による測定においてDMPO-OHのピークを確認することができなかった)。
【0027】
比較例2:
塩化鉄(II)を濃度が6μM(2価の鉄イオンとして約300ppb)となるように添加すること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得ようとしたが、得ることはできなかった(ガラス容器の底部に水酸化鉄(Fe(OH))を主体とする茶色の沈殿物が顕著に認められ、この沈殿物をろ過した後の水についての電子スピン共鳴装置による測定においてDMPO-OHのピークを確認することができなかった)。
【0028】
実施例4:
マイクロバブル発生装置に供給する純酸素を、無声放電によるオゾン発生装置を介してから供給すること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例1のろ過後の水のピーク長の約1.5倍であった。
【0029】
実施例5:
マイクロバブル発生装置に供給する純酸素を空気に変更すること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例1のろ過後の水のピーク長の約1/5倍であった。
【0030】
実施例6:
塩化鉄(II)にかわりに硫酸鉄(II)を添加すること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例1のろ過後の水のピーク長とほぼ同じであった。
【0031】
実施例7:
塩化鉄(II)にかわりに硝酸鉄(II)を添加すること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例1のろ過後の水のピーク長とほぼ同じであった。
【0032】
実施例8:
超純水に予めグリシンを濃度が10μMとなるように加えておくこと以外は実施例5と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例5のろ過後の水のピーク長の約3倍であった。
【0033】
実施例9:
超純水のかわりに電気伝導度が約100μS/cmの水道水を用いること以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例1のろ過後の水のピーク長の約2/3倍であった。
【0034】
実施例10:
超純水のかわりに電気伝導度が約250μS/cmの地下水(全有機炭素量(TOC)が約0.5mg/Lで2価の鉄イオンの濃度が約50ppb)を用いることと、塩化鉄(II)を添加しないこと以外は実施例1と同様の操作を行うことで、本発明の酸素を含有するナノ粒子を含む水を得た。ろ過後の水について電子スピン共鳴装置による測定を行ったところ、DMPO-OHのピークを確認することができ、そのピーク長は、実施例1のろ過後の水のピーク長の約1/5倍であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、酸素ナノバブル水とは異なる、酸素を含有するナノ粒子を含む水を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
図1
図2