(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】車両用ルームミラー
(51)【国際特許分類】
B60R 1/28 20220101AFI20240419BHJP
【FI】
B60R1/28 200
(21)【出願番号】P 2020172254
(22)【出願日】2020-10-13
(62)【分割の表示】P 2019212783の分割
【原出願日】2014-09-29
【審査請求日】2020-11-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391001848
【氏名又は名称】株式会社ユピテル
(72)【発明者】
【氏名】尾野 久雄
【合議体】
【審判長】中村 則夫
【審判官】一ノ瀬 覚
【審判官】久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0830649(KR,B1)
【文献】登録実用新案第3151687(JP,U)
【文献】特開2012-136192(JP,A)
【文献】特開2003-276507(JP,A)
【文献】特開2003-312360(JP,A)
【文献】特開2007-253705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00 - 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ルームミラーであって、
車両に装備された既存のルームミラーの鏡面側に覆い被せて装着される筐体と、
前記筐体に設けられ、前記車両の前方側を撮影するための撮影手段、および前記車両の後方側を撮影するための撮影手段と、
を有し、
前記前方側の撮影方向と前記後方側の撮影方向と
で撮影方向を調整するための調整手段を共有し、運転者による前記鏡面の調整に関わらず、前記前方側の撮影方向と前記後方側の撮影方向とを連動させて変更可能である
車両用ルームミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に設置される車両用ルームミラー等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の運転環境を撮影して記録するドライブレコーダが利用されている。車両の進行方向前方を撮影するためのドライブレコーダは、一般的に車両のフロントガラスの上部に設置される。運転者の視界を少しでも広く確保できるよう、ルームミラーにカメラを埋め込んだルームミラー型のドライブレコーダも提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
ドライブレコーダによる撮影画像は、車両が事故に巻き込まれたり事故を起こした際、事故原因を究明するために有用である。事故原因を究明する際には、進行方向前方の画像のみならず、運転者の状況や後方の状況の解析も有用である。そこで、上記の特許文献1のルームミラー型ドライブレコーダは、進行方向前方側の画像に加えて、後方側の画像を記録できるように複数のカメラを備えている。各カメラは、車両前方を撮影できるほか、後方側を撮影できるように撮影方向を変更できるようになっている。
【0004】
例えば運転者を撮影できるようにカメラを設定すれば、運転者が運転する様子を記録できる。例えば運送会社やタクシー会社等は、従業員である運転者の運転状況を直接管理することが難しい一方、運転の様子を記録しておけば事後的な管理や指導が可能となり、安全性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の後方側を撮影可能なルームミラー型ドライブレコーダでは、次のような問題がある。すなわち、例えば従業員である運転者にとっては、ドライブレコーダが自分を監視するためのカメラとなり不快感を感じるおそれがある。また、例えば運転者自らドライブレコーダを取り付けた場合には、同乗者が自分の方を向いているカメラがあることから同様の不快感を感じるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、後方側を撮影するカメラを備える車両用ルームミラーであって、乗員が感じるおそれがある不快感を抑制できる車両用ルームミラー等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)運転者が後方を確認するために車室内に設けられる車両用ルームミラーであって、
後方側を撮影するための後方撮像手段と、
車両の乗員側からの視線を遮って前記後方撮像手段を目立たなくする遮蔽手段と、
前記後方撮像手段の撮影方向を調整するための調整手段と、を備えている車両用ルームミラーとすると良い。
【0009】
この車両用ルームミラーは、視線を遮って前記後方撮像手段を目立たなくする遮蔽手段を備えている。後方撮像手段を目立たなくすれば、車両の乗員が後方撮像手段の存在に気付く可能性が低くなり、不快感が生じるおそれを抑制できる。
【0010】
車両用ルームミラーの場合、運転者の視点高さ等に応じて鏡面の向きが適宜調整される。仮に後方撮像手段の撮影方向が固定されていると、運転者によって撮影方向が変動してしまい目的の撮影画像を取得できなくなるおそれがある。本発明の車両用ルームミラーは後方撮像手段の撮影方向を調整するための調整手段を備えているため、運転者毎の鏡面の向き調整等に依存することなく目的の撮影画像を取得できる。
【0011】
しかも、鏡面の向きは、鏡面を介して運転者が真後ろを見ることができるよう運転者の方へ傾けるのが一般的である一方、撮影対象の方向に向けられる撮影方向については、鏡面の向きと異なる方向に設定される場合がある。そのため、特に、撮影対象となった乗員にとっては、鏡面の向きに対して撮影方向がずれていることが極めて容易に認識されて不快感を生じやすいという問題があるが、このようにすれば、このような車両用ルームミラー固有の問題を解決できる。
【0012】
このように、上記のような構成を採用すれば、乗員が感じるおそれがある不快感を抑制しながら後方側を撮影可能である。
【0013】
また上記のように構成すれば、乗員から気付かれるおそれを抑制しつつ、目的の撮影画像を取得できる。例えばリアウィンドウ等を通した車外を撮影する場合であれば、自分が撮られているのではないかという乗員側の無用な心配を抑制しながら、車両外部の画像を取得できる。例えば、車両の管理者等が運転者を撮影したい場合であれば、自分が撮られているという不快感を抑制しながら運転者の撮影画像を取得できる。
【0014】
遮蔽手段は、「視線を遮る」構成として、例えば、後方撮像手段の撮影方向を乗員が認識しにくくする構成とするとよく、特に後方撮像手段の撮影方向を乗員が認識できないようにする構成とするとよい。視線を遮る態様としては、例えば後方撮像手段の少なくとも一部が乗員から見えにくい態様とするとよく、望ましくは、後方撮像手段の全体が乗員から見えにくい態様とするとよい。特に見えにくい態様としては見えない態様とするとよい。遮蔽手段は、例えば、後方撮像手段の少なくとも一部を乗員から見えなくする手段とするとよく、望ましくは、後方撮像手段の撮影方向を乗員から認識できないように視線を遮る手段とするとよい。乗員としては特に後方撮像手段の撮影対象となる乗員とするとよい。
【0015】
また、例えば、遮蔽手段は、後方撮像手段の撮影方向を遮蔽する構成であって、遮蔽手段を介して遮蔽手段の先の映像を取得可能な構成とするとよい。例えば、遮蔽手段は後方撮像手段の撮影方向に設けた外部から認識しにくいスリットやスリット群として構成するとよい。また遮蔽手段は少なくとも撮影方向について透光性を有しかつ後方撮像手段を乗員から認識しにくくする手段とするとよい。例えば次の(2)のような構成とするとよい。
後方撮像手段は例えば少なくともルームミラーの鏡面よりも後ろ側を含む領域を撮影する構成とするとよい。後方撮像手段は、前方まで含んで撮影する構成としてもよいし、調整手段により前方のみを撮影できる状態へ調整可能な構成としてもよい。
【0016】
(2)遮蔽手段は、透光性を有する鏡面であって、車両用ルームミラーの鏡面の少なくとも一部を形成するハーフミラーによって構成され、
前記後方撮像手段は、該ハーフミラーを介して撮影する構成とすると良い。
【0017】
鏡面の少なくとも一部を形成する前記ハーフミラーを利用すれば、車両用ルームミラーの本来の機能を実現するための鏡面によって前記後方撮像手段を目立たなくでき、乗員に違和感を与えるおそれが少なくなる。また、例えば前記後方撮像手段を構成するための光学レンズ等を鏡面の外に配置する必要性を抑制できるため、車両用ルームミラーの大型化を回避でき、運転者の前方視認性を良好に維持できる。
【0018】
調整手段としては、後方撮像手段が特に左右方向に首振り可能となる構成とするとよい。また調整手段を目立たなくする調整手段用遮蔽手段も備える構成とするとよい。調整手段用遮蔽手段も遮蔽手段(以下撮像手段用遮蔽手段ともいう)と同様に構成するとよい。また調整手段は次の(3)のようにするとよい。
【0019】
(3)調整手段は、前記後方撮像手段の撮影方向を水平方向及び垂直方向に変更可能である構成とすると良い。
この場合には、目的の撮影画像を取得するために撮影方向を上下左右に変更できれば、例えば、運転者等の乗員を撮影したい場合にも、乗員の頭越しに車両後方を撮影したい場合にも、適切に対応可能となり、目的の撮影画像を簡単に取得できる。なお、調整手段は、車両用ルームミラーの筐体内部に取付けた構成とするとよい。すなわち特許文献1のように外部に取り付けるのではなく、車両用ルームミラーの筐体の内部に取り付けるとよい。
【0020】
車両用ルームミラーの方向が調整可能である場合には、車両用ルームミラーの上下方向と重力加速度の方向とにずれが生じるなど、車両用ルームミラーを基準とした座標軸と重力加速度の方向を基準とした座標軸とにずれが生じる。水平方向や垂直方向は車両用ルームミラーを基準とした座標軸に対して水平方向、垂直方向としてもよいが、特に重力加速度の方向を基準とした座標軸に対して水平方向、垂直方向とするとよい。このようにすれば車両用ルームミラーの向きによらず撮影対象の傾きを抑えた映像を撮影できる。重力加速度の方向を基準とした座標軸に対して水平方向、垂直方向とする構成としては、例えば一般的に車両用ルームミラーが重力加速度方向に対してどの程度ずれていることが多いかに基づいて、そのずれの角度分、予め調整可能な方向を設定するようにしてもよいが、特に調整手段は、所定の軸を中心に回転可能かつ当該回転によって後方撮像手段の撮影方向が変化する構成とすると良い。所定の軸としては、特に後方撮像手段の撮影方向を備えるとよい。このようにすれば、ルームミラーの調整による水平、垂直方向の変動を打ち消して、撮像された映像の垂直方向を重力方向と合わせることなども容易に可能となり、画面上で映像を確認した際に画面の四辺または水準線に対して映像が傾いていて見にくくなることを防止でき、映像の内容の評価を誤ったりする可能性を低くすることができる。
【0021】
(4)後方撮像手段は、凸球状の外周面を有する球状部を凹球状の内周面によって摺動可能に保持するボールジョイント機構を介在して車両用ルームミラーの本体側に保持されており、当該ボールジョイント機構を利用して前記撮影方向を調整可能である構成とすると良い。
【0022】
この場合には、比較的簡単な構成により撮影方向の変更機構を実現できる。さらに、ボールジョイント機構であれば、垂直方向に変更するための機構と、水平方向に変更するための機構と、の両方を同時に実現できるので、例えばそれぞれの機構を独立して設ける場合と比べて、小型化、低コストかを実現できる。例えば、撮像手段は撮影方向を含む一部を開口した球形状の筐体に入れ、当該筐体を車両用ルームミラーの筐体に入れて、撮像手段の撮影方向を調整出来る様に撮像手段を入れた筐体ごと動かせる様に取り付ける構成とするとよい。特に一種のボールジョイント的構造とするとよい。このようにすることで比較的自由に角度を変えることができる。特に、後方撮像手段はボールジョイントの内部に設けるとよい。
【0023】
撮影方向を変更するための操作部は、例えば、車両用ルームミラーの筐体の裏側(ミラーと反対面側)から調整可能に構成するとよい。一度後方撮像手段を所定の撮影方向を向くように鏡面と撮影方向との角度に調整したとしても、運転者の体格や座席の位置により車両用ルームミラーを再調整する必要があるので、それに合わせ鏡面に対する後方撮像手段の角度を調整した方が望ましい。また、使い方によっては、撮影方向は、後方正面を中心にするより車両用ルームミラーで死角になるのを補える様な角度にした方がよい場合もある。このように撮像手段の撮影方向の調整を車両用ルームミラーの裏側から行える様にすれば、運転者や同乗者に調整機構が見えず外観的によい。
【0024】
(5)前記撮影方向を変更するための操作部が側面に配設されている構成とすると良い。
前記操作部が背面側であると、乗員側から見えなくなるので撮影方向を変更する操作が難しくなるおそれがある。一方、前記操作部を前面側に設けようとすると車両用ルームミラーの大型化を招来し、前方視認性が損なわれるおそれがある。そこで、前記操作部を側面に設ける場合であれば、運転者等が手を伸ばして比較的容易に前記撮影方向を変更できると共に、車両用ルームミラーの大型化を回避して前方視認性を良好に維持できる。
【0025】
(6)運転者が後方を確認するために車室内に装備された既存のルームミラーの鏡面側に覆い被せて後付けで装着する車両用ルームミラーであって、
前記撮影方向を変更するための操作部が、車両用ルームミラーの背面のうち、既存のルームミラーへの装着時に当該既存のルームミラーに対面しない部分に設けられている構成とするとよい。
【0026】
既存のルームミラーに覆い被せる後付けタイプの車両用ルームミラーであっても、上記のように既存のルームミラーに対面しない部分に前記操作部を配置すれば、既存のルームミラーから取り外すことなく前記操作部の操作が可能となる、撮影方向を変更する必要が生じたとき、その都度、既存のルームミラーから取り外すことなく簡単に撮影方向を変更できる。
【0027】
(7)運転者が後方を確認するために車室内に装備された既存のルームミラーの鏡面側に覆い被せて後付けで装着する車両用ルームミラーであって、
前記撮影方向を変更するための操作部が、既存のルームミラーに対面する背面のうち、既存のルームミラーの外周側から操作可能な位置に設けられている構成とするとよい。
【0028】
既存のルームミラーに覆い被せる後付けタイプの車両用ルームミラーであっても、上記のように既存のルームミラーの外周側から操作可能な位置に前記操作部を配置すれば、既存のルームミラーから取り外すことなく前記操作部の操作が可能となる、撮影方向を変更する必要が生じたとき、その都度、既存のルームミラーから取り外すことなく簡単に撮影方向を変更できる。
【0029】
操作部は、例えば道具を用いて後方撮像手段の撮影方向を調整する構成としてもよい。例えばドライバ等の棒状の物体を差し込む孔を設けておき当該孔に当該物体を差し込んで調整する構成としてもよい。しかしながら特に指で撮影方向を調整する構成とするとよい。例えば、操作部には突起部を設け、当該突起部に指を当てて撮影方向を調整する構成とするとよい。特に後方撮像手段を収納する筐体の後方撮像手段のレンズ面と反対方向に突起を出し、車両用ルームミラーの筐体裏側に孔をあけ、孔から突起が触れられる様に構成し、突起を動かす事により後方撮像手段の撮影方向の角度調整を可能とする構成とするとよい。突起をつけておく事により、特別な道具なしに指先で比較的容易に角度調整できる。
【0030】
車両用ルームミラーの筐体内に撮像手段及び、撮像手段によって撮影された映像を録画する回路を入れ、その車両用ルームミラーを車両の既存ルームミラーにかぶせて取り付けられる構造を有する構成とするとよい。このようにすれば車両に後付けする場合、車両の既存ルームミラーを交換するより簡単に取付けられる。
車両の既存ルームミラーへ取り付ける車両用ルームミラーの構成においては、この後付けする車両用ルームミラーの筐体内に撮像手段を設ける一方、調整手段については、既存ルームミラーの外側に出る部分を備えるとよい。このようにすれば、取り付けた車両用ルームミラーをいちいち取り外すことなく調整できるようになる。
【0031】
(8)前記後方撮像手段が取得した撮影画像を記憶媒体に記憶させるための制御手段を有し、当該制御手段は、車両側から電源供給を受けている間、撮影時点が古い撮影画像を消去することで記憶領域を確保しながら新たな撮影画像を記憶させる動作を繰り返し実行する構成とするとよい。
この場合には、ルームミラー型のドライブレコーダを実現できる。ドライブレコーダとしての機能をルームミラーに具備させれば、運転者の視界を広く確保しながらドライブレコーダ機能を実現できるとともに、車両の乗員が後方撮像手段の存在に気付く可能性が低くなり、撮影されていることを意識しない状態の自然な姿の乗員の状態を記録できる。
【0032】
(9)車両の前方側の車外空間を撮影する前方撮像手段を備えている構成とするとよい。
この場合には、本発明の車両用ルームミラーとは別に前方用のカメラ等をフロントガラス等に設置することなく、前方側の撮影画像を取得できる。この車両用ルームミラーを利用すれば、煩雑な設置状況を招来するおそれ少なく、後方側の撮影画像と前方側の撮影画像との両方を取得できる。
【0033】
(10)車両用ルームミラーが備える鏡面の少なくとも一部が透光性を有する鏡面であるハーフミラーによって形成されていると共に、前記後方撮像手段は該ハーフミラーを介して撮影するように構成され、
ハーフミラーを介して撮影する後方撮像手段の撮影画像の明るさと、ハーフミラーを介在することなく撮影する前方撮像手段の撮影画像の明るさと、の差を抑制するための明るさ調整手段を備えている構成とするとよい。
【0034】
入射した光の一部を反射し一部を透過するという光学特性を有するハーフミラーを介して撮影した場合、撮影画像の明るさが損なわれる傾向にある。そのため、ハーフミラーを介在した前記後方撮像手段の撮影画像と、ハーフミラーを介在しない前記前方撮像手段の撮影画像との間には、明るさの差が生じる可能性が高い。前記明るさ調整手段を設ければ、明るさの差を抑制でき、例えば後方撮像手段による撮影画像と前方撮像手段による撮影画像とを並べて表示したり切り換え表示したときの違和感を抑制できる。
【0035】
(11)前記前方撮像手段による撮影方向を調整するための調整手段を備えている構成とするとよい。
この場合には、運転者による鏡面の調整方向に関わらず目的の前方方向を撮影できるようになる。
【0036】
(12)前記後方撮像手段と前記前方撮像手段との間で調整手段が共用されており、後方撮像手段の撮影方向と前方撮像手段の撮影方向とを連動させて変更可能である構成とするとよい。
【0037】
例えば前方撮像手段により車両の進行方向を撮影し、後方撮像手段により車両の進行方向に沿う後方を撮影する場合、前方撮像手段の撮影方向と後方撮像手段の撮影方向とは180度の逆向きとなる。前方撮像手段と後方撮像手段との間で前記調整手段を共用すれば、撮影方向を調整するための手間が少なくなる。このように、前方撮像手段の撮影方向と後方撮像手段の撮影方向とは予め設定された角度関係を保って調整手段により撮影方向を連動して変更可能に構成すると特によい。
【0038】
(13)画像情報を表示するための画像表示手段を設けると共に、前記後方撮像手段に対する前記画像表示手段の光の映り込みを抑制するための手段を備えている構成とするとよい。
画像表示手段が画像情報を表示する画面の光が前記後方撮像手段に映り込むと、品質の高い撮影画像を取得できなくなる。上記のように後方撮像手段に対する光の映り込みを抑制するための手段を設ければ、前記画像表示手段を設けた場合であっても前記後方撮像手段による撮影画像の劣化を未然に抑制できる。特に、後方撮像手段の撮影方向及び画像表示手段の表示方向はいずれも車室側を向く構成とすると顕著な効果を発揮する。
また、例えば、画像情報を表示するための画像表示手段を、後方撮像手段を内蔵したミラーの筐体の外部に設け、画像表示手段による光の映り込みを抑制した車両用ルームミラーとする構成とするとよい。特に、画像情報を表示するための画像表示手段を、後方撮像手段を内蔵したミラーの筐体の外部に設け、画像表示手段は折り畳み式の構造、またはスライド式で必要時に取り出せる構造でミラーの筐体に取付けられている構造の、画像表示手段による光の映り込みを抑制した車両用ルームミラーとするとよい。このようにすれば後方撮像手段によって撮影された映像を見たいときだけ画像表示手段で確認することができ、それ以外のときには画像表示手段を目立たない位置等にしまうことができる。また、画像情報を表示する外部の画像表示手段と、後方撮影用カメラを内蔵したルームミラーとの画像情報の伝送を無線通信により行う車両用ルームミラーとするとよく、外部の画像表示手段はスマートフォン(多機能型携帯電話)等とするとよく、無線通信は、例えばWi-Fiとして、例えばスマートフォンに後方撮像手段で撮像した映像を送信して、スマートフォンで受信した映像を表示する等によって行うとよい。
(14)前記後方撮像手段による撮像範囲の少なくとも一部を照らす照明手段と、車両の乗員側からの視線を遮って前記照明手段を目立たなくする照明遮蔽手段とを備える構成とするとよい。
後方撮像手段に高感度赤外カメラを用いれば照明手段は必要ない構成とすることができる。しかしながら、(14)のようにすれば、例えば一般的なカメラを用いたとしても、例えば夜間等、後方撮像手段での撮像のための十分な明るさがない状況であっても、照明手段によって照らされた範囲をより明瞭に撮像することが可能となる。例えば後方撮像手段が、車内を撮影する場合には、撮影範囲を車内の乗員の少なくとも一部が撮影されるよう設定するとよい。
照明手段は、例えば、目立たない様に人が視認しにくい光を発する手段を用いるとよい。特に後方撮像手段は可視光領域から赤外領域にかけて感度特性を有するものを用い、照明手段は、赤外LEDを用いるとよい。
照明遮蔽手段は、板状またはレンズ状の物とするとよい。特に照明手段の照射方向を覆う物とするとよい。照明手段が赤外光を発する構成とした場合には、赤外光を通すフィルター特性を持つ板状またはレンズ状の物で覆う構成とするとよい。
(15)前記照明遮蔽手段は、前記遮蔽手段とするとよい。遮蔽手段と照明遮蔽手段は同一の部材を兼用するとよく、特に、遮蔽手段と照明遮蔽手段は同一の部材とするとよい。
例えば、照明手段として赤外LEDを用い、遮蔽手段及び照明遮蔽手段は、同一部材のハーフミラーの内部に、後方撮像手段としてのカメラ等を一緒に入れるとよく、このようにすれば、外部から目立たず、照明と撮像がされていることを撮影の対象者等が認識しにくくなる。
(16)前記後方撮像手段によって撮像された映像に前記照明遮蔽手段による反射光が入射することを抑制する入射抑制手段を備えるとよい。
例えば、遮蔽手段と照明遮蔽手段は同一の部材を兼用し、例えば当該部材をハーフミラーとすると、照明手段の照明光が当該ハーフミラーによる反射光として後方撮像手段に入射してしまい撮像範囲の映像が、当該ハーフミラーによる反射光によって得られず正常な撮影ができないという問題が発生することを見出した。この問題は、特に(15)の構成を備える場合に顕著に発生する。
そこで、上記(16)のようにすれば、照明遮蔽手段による反射光により後方撮像手段の撮像範囲の映像が正常に撮影できる。
入射抑制手段は、照明遮蔽手段による反射光が入射することを抑制する構成であればどのような構成でもよいが、特に、照明手段から照明遮蔽手段の間の空間と、後方撮像手段から遮蔽手段の間の空間とを光学的に仕切る構造を備えるとよい。例えば両者の空間の間に遮蔽板等を設けるとよい。また両者の間の空間を照明遮蔽手段による反射光が入射しにくい距離以上に離す構造とするとよい。
(17)前記照明遮蔽手段は、前記遮蔽手段の外に配置するとよい。
特に、照明遮蔽手段は遮蔽手段とは別体として構成するとよい。
(18)前記照明遮蔽手段は、当該車両用ルームミラーが備える操作部、または、当該車両用ルームミラーが備える操作部に見えるダミー部材、の少なくともいずれか一方を備えるとよい。
このようにすれば、照明手段の存在を撮影対象の者などに特に認識されにくくなる。
上記(14)から(18)の構成例としては例えば次のようにするとよい。
1.照明用赤外LEDをミラーの外に配置し、ミラーと赤外LEDの間に仕切りを設ける。
2.赤外LEDをカモフラージュする為、赤外LEDの前に赤外光を通すフィルター特性を持つ板状またはレンズ状の物で覆う。
3.上記板状またはレンズ状の物と上記ミラーとの間に仕切りを設ける。
4.上記ミラーの外側に操作ボタンまたは操作ボタンのダミーを、赤外光を透過する樹脂等で作り、設け、ボタンの後ろから赤外光を発する様にする。
【0039】
(19)上記の調整手段にかえて、または、調整手段とともに、前記後方撮像手段を固定する固定手段を備える車両用ルームミラーとするとよい。
固定手段は、後方撮像手段を筐体に対して固定できる構造とするとよく、例えばカメラを備えた基板をネジ止め等で固定したりするとよい。
調整手段にかえて前記後方撮像手段を固定する固定手段を備える構成は、運転者が後方を確認するために車室内に設けられる車両用ルームミラーであって、後方側を撮影するための後方撮像手段と、車両の乗員側からの視線を遮って前記後方撮像手段を目立たなくする遮蔽手段と、を備えている車両用ルームミラーである。
例えば、上述した構成では、調整手段を備える構成としたが調整手段を備えず、撮像手段を車両用ルームミラーの筐体内に収納し、鏡面の法線方向(鏡面に対する垂直方向)に対して撮像手段の撮影方向(例えばカメラの光軸)をずらした角度で撮像手段を取付けた構成としてもよい。車両用ルームミラーは、運転者が後方を確認出来る様に鏡面の角度を調整する。その場合、鏡面の法線方向を撮影方向として後方撮像手段を取付けると、後方撮像手段は後方正面を向かない。このようにすれば、これを補正して後方正面も撮影することができる。
【0040】
例えば、上述した(1)から(19)の各々の項に記載の各構成要素は任意に組み合わせて機器を構成するとよい。特に、少なくとも(1)または(19)の構成要素のいずれかを備える構成とするとよい。より望ましくは、上述した(1)から(19)の各項に記載の構成要素の組み合わせを具備する構成とするとよく、各項に記載の構成を単独で構成することもできるが、特に(1)から(19)のいずれかの2以上の構成を組み合わせて機器を構成すると優れた効果を発揮する。特に(1)の構成を備える組み合わせとするとよい。
構成例としては例えば次のようにするとよい。
運転者が後方を確認するために車室内に設けられたルームミラーであって、
車の前方を撮影する第1の撮像手段と、
車室内及び後方を撮影する第2の撮像手段と
両方の撮像手段で撮影された画像を録画する録画手段を持ち、
少なくとも第2の撮像手段は前記ルームミラーの筐体内部に配置し、
乗員及びリアウインドからの車外の状況の両方を撮影出来る様に撮影画角及び
設置確度を設定し、
車両の乗員側からの視線を遮って前記第2の撮像手段を目立たなくする遮蔽手段と、
を備えている車両用ルームミラー。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】実施例1における、ルームミラーを正面側から見込む斜視図。
【
図2】実施例1における、ルームミラーを背面側から見込む斜視図。
【
図3】実施例1における、既存のルームミラーへの取付け手順を示す説明図。
【
図4】実施例1における、ルームミラーの組立構造を示す説明図。
【
図5】実施例1における、電子基板を収容するケースを示す斜視図。
【
図6】実施例1における、カメラ保持部の構造を示す説明図。
【
図7】実施例1における、カメラ保持部の断面構造を示す断面図。
【
図8】実施例1における、前方カメラを示す正面図及び側面図。
【
図9】実施例1における、後方カメラを示す正面図及び側面図。
【
図10】実施例1における、前方カメラのカメラ軸の調整手段の説明図。
【
図11】実施例1における、後方カメラのカメラ軸の調整手段の説明図。
【
図12】実施例1における、電子基板を示す正面図。
【
図13】実施例1における、シガープラグコードによる電力供給状態を示す説明図。
【
図14】実施例1における、microSDカードに記録された画像データをPCで閲覧する方法の説明図。
【
図15】実施例1における、その他のカメラ保持部の断面構造を示す断面図。
【
図16】実施例1における、その他のカメラの調整手段を示す説明図。
【
図17】実施例2における、ルームミラーその1を背面側から見込む斜視図。
【
図18】実施例2における、ルームミラーその2を背面側から見込む斜視図。
【
図19】実施例2における、ルームミラーその2の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
図1及び
図2に例示する車両用ルームミラー1は、
図3に示すように車両に装備されたルームミラーに被せて装着する後付のルームミラーである。この車両用ルームミラー1は、進行方向前方を撮影する前方カメラ25(
図8を参照して後述する。)、後方側を撮影する後方撮像手段の一例である後方カメラ21(
図9)、画像表示手段の一例である液晶ディスプレイ30(
図4)等を備える電子機器であり、画像の記録機能(録画機能)や表示機能等を有している。なお、以下の説明では、本願発明の車両用ルームミラーを単にルームミラー1といい、車両に元々装備されたルームミラーについては既存ミラーという。
【0043】
図1及び
図2にごとく、装着されたときに運転者に面するルームミラー1の正面には鏡面160が形成され、左側の端部には、操作や設定のための操作ボタン171が配置された操作エリア170が設けられている。鏡面160では、液晶ディスプレイ30の画面領域(
図1中の破線領域165)が向かって左側に配置され、後方カメラ21のレンズ領域(同破線領域161)が向かって右側に配置されている。破線領域161、165を除く鏡面160は、入射した光を100%近く反射する一方、破線領域161、165については、入射した光のうちの一部を反射し、一部を透過するハーフミラーとしての特性を備える領域となっている。特に、破線領域161のハーフミラーは、乗員側からの視線を遮って後方カメラ21を目立たなくする遮蔽手段の一例をなしている。
【0044】
右ハンドル車両の運転者側となる右側の端部の背面側には、後方カメラ21を保持するカメラ保持部130が立設されている。
図7を参照して後述するが、カメラ保持部130の先端には前方カメラ25が収容され、付け根側には後方カメラ21が収容されている。ルームミラー1の反対側の端部の側面(
図2参照)には、電源供給のための電源端子37及びmicroSDカードを挿入するためのスロット35が配置されている。
【0045】
ルームミラー1の背面側の中央には、既存ミラーに取り付けるためのフック141、142が立設されている(
図2参照)。フックは、全部で4箇所設けられ、上下一対のフック141、142がルームミラー1の中央を挟むようにして左右に配置されている。ルームミラー1の背面に固定された下側のフック142に対して、上側のフック141が上下方向にスライド可能となっている。上側のフック141は、図示しない弾性部材によって下側のフック142に向けて付勢され、ルームミラー1の取外し状態では、下側のフック142との間隔を最も狭くするように位置する。
【0046】
既存ミラー81にルームミラー1を装着するに当たっては、
図3(A)に例示するように、上側のフック141を既存ミラー81の上部に引っ掛けた状態でルームミラー1を下方に引き下げることでフック141をスライドさせ、上下のフック141、142間の距離を拡大させる。このように上下のフック141、142を押し拡げた状態で、下側のフック142を既存ミラー81の下側に回し込み、その後、下側のフック142が既存ミラー81の下縁に押し付くまで、ルームミラー1を上側に押し上げる。
【0047】
このとき、弾性部材による付勢力が作用する上側のフック141は、既存ミラー81の上縁に押し当たる状態を維持しながら下側のフック142との間隔を縮小するようにスライドする。これにより同図(B)のように、上下のフック141、142により既存ミラー81を挟み込むことで、ルームミラー1を取付けでき、上記の付勢力によりこの取付状態が保持される。なお、同図では、背面側に突出するカメラ保持部130の図示を省略してある。
【0048】
ルームミラー1は、
図4のごとく、横長形状の筐体10に電子基板3を収容して構成されている。筐体10は、運転者に面する正面側のカバー15と、車両の進行方向に当たる背面側のケース11と、の組合せによる2分割の構造になっている。
【0049】
カバー15は、板状のミラー16を収容する凹み158が正面側に形成されていると共に、その凹み158を取り囲む外周枠159が形成された樹脂製の部材である。凹み158の底面には、
図1の破線領域161、165に対応するよう、貫通孔152あるいは貫通窓155が形成されている。
図4中、左側の貫通窓155は、内部に収容された液晶ディスプレイ30の表示画面に対応する位置に開口する窓である。右側の貫通孔152は、内部に収容された後方カメラ21のレンズ213(
図9)に対応する位置に開口する孔である。この貫通孔152は、ケース11側の後述する連通孔112に対応する位置に設けられている。
【0050】
ケース11は、カバー15と同様、樹脂製の部材であり、カバー15を組み合わせたときの内部空間に電子基板3を収容可能に構成されている。ケース11の内部では、カメラ保持部130の付け根に当たる空間を区切る仕切り115が設けられている。電子基板3は、この仕切り115で区切られた反対側に配置される(
図5参照)。なお、図示は省略するが、カバー15側にも対応する仕切りが設けられている。ケース11にカバー15を組み合わせたときには、両方の仕切りが合致し筐体10の内部空間を区切る隔壁(
図7中の符合107)のように機能する。
【0051】
ケース11の背面側に立設されたカメラ保持部130は、
図6のごとく、その立設方向に沿って左右に半割したような分割構造となっている。カメラ保持部130は、ケース11と一体的に樹脂成形された受け部130Aと、嵌込部品であるカメラカバー130Bと、を組み合わせて形成されている。カメラ保持部130の外周面側には、受け部130Aとカメラカバー130Bとの合わせ面に沿うような溝130Tが形成されている。この溝130Tは、後方カメラ21の制御ケーブル21C、及び前方カメラ25の制御ケーブル25Cを収容するための溝である。溝130Tは、カメラ保持部130の立設方向の中間辺りに穿孔された孔130Hと、ケース11の背面に開口するように穿孔された孔11Hと、を連通させるように形成されている。溝130Tは、カバー130Cで覆うことができる。カバー130Cを装着すれば、外観的な美観を向上できると共に、制御ケーブル21C、25Cを保護できる。
【0052】
ケース11本体側の受け部130Aには、
図6及び
図7に示す通り、先端側と付け根側との2箇所に略半球状の収容形状131A、135Aが形成されている。なお、
図7は、カメラ保持部130の立設方向に沿うルームミラー1の断面構造を示している。
カメラカバー130B側にも、ケース11側と同様の略半球状の収容形状(図示略)が形成され、受け部130Aに対してカメラカバー130Bを組み合わせたときには、カメラ保持部130の先端側と付け根側との2箇所に、略球状の空間をなす収容部131、135が形成される。
【0053】
先端側の収容部135は、カメラ保持部130の先端の開口部136を介して外部(進行方向前方側)と連通している。付け根側の収容部131は、ケース11の底面の連通孔112を介して、筐体10の内部空間に連通している。先端側の収容部135には
図8の前方カメラ25が収容され、付け根側の収容部131には
図9の後方カメラ21が収容される。カメラカバー130Bの外周面のうち、収容部131の外周に当たる部分には、後方カメラ21の撮影方向を調整するための調整孔132が設けられている。
【0054】
図8の前方カメラ25は、略球状のホルダ250に撮像素子を含むカメラユニットを収容したカメラである。レンズ253を保持する略円柱外形状のレンズ筒252が外周面の1箇所から突出し、反対側からは図示しない制御ケーブルが延設されている。
図9の後方カメラ21は、前方カメラ25と同様、略球形状のホルダ210にカメラユニットを収容したカメラである。前方カメラ25との相違点は、撮影方向の調整手段を構成する操作部の一例である調整ノブ215を備える点である。この調整ノブ215は、撮影方向に当たるレンズ213の光軸方向に対して略直交方向に突出している。
【0055】
前方カメラ25は、カメラ保持部130の先端に設けられた開口部136にレンズ筒252が位置する状態で組み付けられる(
図7参照。)。後方カメラ21は、カメラカバー130Bの外周面に設けられた調整孔132に調整ノブ215が位置すると共に、ケース11の連通孔112にレンズ213が位置する状態で組み付けられる(
図5及び
図7参照。)。なお、ルームミラー1では、調整ノブ215と調整孔132との組合せが、後方カメラ21の撮影方向(カメラの軸)を調整する調整手段の一例をなしている。
【0056】
後方カメラ21は、ケース11の連通孔112、カバー15の貫通孔152、ミラー16の破線領域161を介して後方を撮影する(
図7参照。)。なお、破線領域161は、透明ガラス163の裏面に反射膜165、166を積層したミラー16において、周囲の完全に近い反射膜165とは異なり、後方カメラ21により後方を撮像可能な程度の透光性を備える反射膜166が積層されてハーフミラーの性状を呈する領域である。
【0057】
図7~
図9のごとく、カメラ保持部130の各収容部131、135の内周面の曲率半径は、対応するカメラ21、25の略球状のホルダ210、250の半径とほぼ一致している。但し、カメラカバー130Bでは、略半球状の各収容形状の深さがホルダ210、250の半径に対して若干浅くなっている。受け部130Aの所定位置に各カメラ21、25を位置させた状態でカメラカバー130Bを嵌め込めば、カメラ保持部130の内周面から各カメラ21、25の外周面に押圧力が生じ、この押圧力により各カメラ21、25の撮影方向を適度に、すなわち指先等で操作が加わらない状態では動かず指先等で操作力を加えた際に動く程度で、固定できる。
【0058】
前方カメラ25は、
図10のごとく、カメラ保持部130の先端の開口部136内のレンズ筒252の位置を変更するよう指先等で操作することで、撮影方向を上下方向、左右方向に調整可能である。さらに、レンズ筒252をつまんで回転させれば、撮影方向に当たるカメラ軸回りに回転でき、撮影画像の傾きを調整できる。
【0059】
後方カメラ21は、
図11のごとく、カメラ保持部130の外周側面に開口する調整孔132内の調整ノブ215の位置を変更するよう指先等で操作することで、撮影方向を上下方向、左右方向に調整可能である。調整ノブ215を進行方向に当たる前後に操作すれば撮影方向を左右に調整できる。調整ノブ215を回転させれば、撮影方向を上下に調整できる。調整ノブ215を上下に操作すれば、撮影画像の傾きを調整できる。
そして、上記のように各カメラ21、25は、カメラ保持部130の内周面からの押圧力によって上記のように適度に固定されるので、調整後の撮影方向を確実性高く保持できる。
【0060】
後方カメラ21及び前方カメラ25を保持するカメラ保持部130では、2つのカメラ21、25とにより挟まれた中間的な部分に内部空間130Rが形成される。各カメラ21、25の制御ケーブル21C、25Cは、この内部空間130Rに位置するよう、各カメラ21、25の背面側すなわちレンズとは反対側に当たる部分に接続されている。制御ケーブル21C、25Cは、各カメラ21、25の撮影方向の変動を許容できる程度に、柔軟性を有し、かつ、内部空間130R内で弛みを持たせてある。制御ケーブル21C、25Cは、カメラ保持部130に穿孔された孔130Hを介して外周側に取り出され、溝130T及び孔11Hを経由して筐体10の内部に至っている。
【0061】
ルームミラー1が備える
図12の電子基板3は、両面実装の基板である。ルームミラー1の正面側に当たる実装面(同
図A)には、液晶ディスプレイ30、操作ボタン171(
図1)に対応するチップスイッチ36等が配置されている。背面側に当たる実装面(同
図B)には、CPU・ROM・RAM・RTC(計時部)等を備えるマイコン32等からなる電子回路、カードコネクタ350、プラグコネクタ370等が配置されている。前方カメラ25及び後方カメラ21は、制御ケーブル25C、21Cを介して電子基板3と電気的に接続される。各カメラ21、25は、これらの制御ケーブル21C、25Cを介して給電されて動作し、制御ケーブル21C、25Cを介して出力信号を出力する。
【0062】
カードコネクタ350は、スロット35に挿入されたmicroSDカードを保持するコネクタである。カードコネクタ350は、電子的な記憶媒体の一例であるmicroSDカードを保持し、電子基板3に対する電気的な接続状態を実現する。
プラグコネクタ370は、電源端子37の構成部品である。プラグコネクタ370は、シガープラグの先端に設けられたプラグ45(
図13参照)に対応する仕様のコネクタである。
【0063】
マイコン32のROMには、前方カメラ25及び後方カメラ21により取得された画像データをmicroSDカードに記録する画像処理プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。マイコン32のCPUは、これらのプログラムを読み出して実行することで、画像データの連続記録や録画した画像データの表示などの各種の機能を実現する。
【0064】
ドライブレコーダ機能を備えるルームミラー1は、例えば
図13のようにシガープラグコード4等の電源コードを介して車両側から電源供給を受けて動作する。シガープラグコード4は、車両のイグニッションスイッチがオンになったときなどに電力供給が開始される車両側のシガーソケット83に接続するためのシガープラグ40を有する電源コードである。シガープラグコード4のプラグ45が電源プラグ37に接続された状態であれば、イグニッションスイッチがオンに切り換えられたときにルームミラー1への電力供給が開始され、ルームミラー1の動作が開始される。
【0065】
例えば画像データを連続記録する動作モードが設定された場合であれば、マイコン32は、古い画像データを消去することでmicroSDカード上で記録領域を確保しながら新しい画像データを記録し、これにより現在を基点とした過去の所定期間に渡る画像データをmicroSDカードに記録する。さらに、画像データを記録しながら液晶ディスプレイ30に表示することも可能である。
【0066】
microSDカード304に記録された画像データは、ルームミラー1での再生表示のほか、カードリーダ機能を有するか、あるいはカードリーダ51が外部接続されたパソコン5を利用して再生可能である(
図14)。パソコン5で再生画像を閲覧するためには、microSDカード304をルームミラー1から取り出してパソコン5に外部接続されたカードリーダ51等にセットする。続いて予めパソコン5にインストールされた所定の画像閲覧アプリケーションを起動し、そのアプリケーション画面(図示略)上でファイル読出し操作を実行すれば、再生画像の閲覧が可能になる。
【0067】
以上のように構成されたルームミラー1では、鏡面160のうちハーフミラーの特性を備える破線領域161の裏側に後方カメラ21が配置されている。このルームミラー1では、鏡面160によって乗員側からの視線が遮られて後方カメラ21が目立たなくなっている。特に、鏡面160の少なくとも一部を形成するハーフミラーを利用すれば、ルームミラー1の本来の機能を実現するための鏡面160によって後方カメラ21を目立たなくでき、乗員側の違和感を抑制できる。また、例えば後方カメラ21のレンズ等を鏡面160の外周側に配置する必要性を抑制できるので、ルームミラー21の大型化を回避でき、運転者の前方視認性を良好に維持できる。
【0068】
鏡面160の向きは、車両側に設けられた方向調整機構を利用して既存ミラー81の方向を調整することで運転者が真後ろを見ることができるよう運転者の方へ傾けられる一方、撮影対象の方向に向けられるべき撮影方向については、鏡面160の向きと異なる方向に設定される場合がある。そのため、特に、撮影対象となった乗員にとっては、鏡面160の向きに対して撮影方向がずれていることが極めて容易に認識されて不快感を生じやすいという問題がある。これに対して本例のルームミラー1では、後方カメラ21が目立たないように配設されているので、上記のようなルームミラー固有の問題を解決でき、乗員の不快感を未然に抑制できる。
【0069】
後方カメラ21を目立たないように配設すれば、乗員から気付かれるおそれを抑制しつつ目的の撮影画像を取得できる。例えばリアウィンドウ等を通した車外を撮影する場合であれば、自分が撮られているのではないかという乗員側の無用な心配を抑制しながら、車両外部の画像を取得できる。一方、例えばタクシーやトラックやバス等の運転者を撮影したい場合であれば、自分が撮られているという不快感を抑制しながら運転者の撮影画像を取得できる。
【0070】
本例のルームミラー1では、後方カメラ21を目立たなくする遮蔽手段として、撮像手段の撮影方向を遮蔽する構成であって、遮蔽手段を介して遮蔽手段の先の映像を取得可能な構成の一例であるハーフミラーを採用している。これに代えて、例えば、外部から認識しにくいスリットやスリット群として遮蔽手段を構成することも良い。
【0071】
一般にルームミラーの場合、運転者の視点高さ等に応じて鏡面160の向きが適宜調整される。仮に後方カメラ21の撮影方向(カメラの軸)が固定されていると、鏡面160の調整に応じて撮影方向が変動してしまい目的の撮影画像を取得できなくなるおそれがある。これに対して本例のルームミラー1は、後方カメラ21の撮影方向を調整可能であるため、運転者毎の鏡面の向き調整等に依存することなく目的の撮影画像を取得できる。
【0072】
本例のルームミラー1では、後方カメラ21の撮影方向を水平方向(左右方向)及び垂直方向(上下方向)に変更可能である。このように目的の撮影画像を取得するために撮影方向を上下左右に変更できれば、車両の乗員を撮影したい場合にも、乗員の頭越しに車両後方を撮影したい場合にも、適切に対応可能となり、目的の撮影画像を比較的簡単に取得できる。なお、ルームミラー1の鏡面160の向きを調整可能である場合には、ルームミラー1の上下方向と重力加速度の方向とにずれが生じるなど、ルームミラー1を基準とした座標軸と重力加速度の方向を基準とした座標軸とにずれが生じる。水平方向や垂直方向はルームミラー1を基準とした座標軸に対して水平方向、垂直方向としてもよいが、特に重力加速度の方向を基準とした座標軸に対して水平方向、垂直方向とするとよい。このようにすればルームミラー1の向きによらず撮影対象の傾きを抑えた画像を撮影できる。
【0073】
本例のルームミラー1では、略球状のホルダ210、250にカメラユニットを収容したカメラ21、25が略球形状の収容部131、135に収容されている。各カメラ21、25は、収容部131、135内でホルダ210、250ごと向きを調整でき、これにより、カメラ21、25の撮影方向を調整できる。このようにボールジョイント機構を採用すれば、各カメラ21、25の撮影方向を自由に変更できる。鏡面160が適宜調整されることを考慮すると、カメラ21、25の調整では、上下方向に加えて、左右方向の首振りが重要になってくるが、上記のボールジョイント機構によれば、簡単にカメラの調整が可能になる。さらに、ボールジョイント機構であれば、レンズの光軸を中心としたカメラ21、25の回転も可能であるので、撮影画像の傾きの調整も可能である。
【0074】
カメラの撮影方向の調整手段について、上記のようなボールジョイント機構を採用すれば、比較的自由に各カメラ21、25の撮影方向を調整できる。さらに、垂直方向に変更するための機構と、水平方向に変更するための機構と、の両方を同時に実現できるので、例えばそれぞれの機構を独立して設ける場合と比べて、小型化、低コスト化を実現できる。特に、後方カメラ21については、カメラ保持部130の外周側面から突出する調整ノブ215を動かすことで撮影方向を調整できる。このような調整ノブ215を設ければ、特別な道具を必要とすることなく、指先等で簡単に角度調整できるようになる。
【0075】
ルームミラー1では、撮影方向を変更するための操作部の一例をなす調整ノブ215が、鏡面160の反対側に当たる背面側に配置されている。後方カメラ21を所定の撮影方向を向くように鏡面160と撮影方向との角度を調整したとしても、運転者の体格や座席の位置によりルームミラー1を再調整する必要があるので、それに合わせ鏡面160に対する後方カメラ21の角度を調整した方が望ましい。また、使い方によっては、撮影方向は、後方正面を中心にするよりルームミラー1の死角を補える様な角度にした方がよい場合もある。後方カメラ21の撮影方向の調整をルームミラー1の背面側で行える様にすれば、乗員側から調整機構が見え難くなって外観的に良い。
【0076】
さらに本例のルームミラー1では、鏡面160の背面側において、後方カメラ21の撮影方向の調整手段が運転席側に配置されている。例えばタクシー等に本例のルームミラー1を設置する場合を考えてみると、タクシーの客にとって常に撮影されていることは気持ちの良いものではない。例えば一般車であっても、室内撮影は同乗者の不快感を誘発する可能性が高い。したがって、ハーフミラーの裏側に後方カメラ21を配置して目立たなくし、さらに、調整手段を鏡面160の背面側に配置すれば、後方カメラ21の存在を気づかせないようにでき、例えばタクシーの乗客や一般車の同乗者等の不快感を未然に抑制するために有効である。
【0077】
調整ノブ215等の操作部を筐体10の裏面に配置すると、乗員側から見えなくなるので撮影方向を変更する操作が難しくなるおそれがある。一方、調整ノブ215等の操作部を前面側に設けると車両用ルームミラーの大型化を招来し、前方視認性が損なわれるおそれがある。操作部を側面側に設ける場合であれば、運転者等が手を伸ばして比較的容易に後方カメラ21の撮影方向を変更できると共に、ルームミラー1の大型化を回避して前方視認性を良好に維持できる。
【0078】
ドライブレコーダ機能を備えるルームミラー1は、既存ミラーに覆い被せて取付け可能である。このように車両側に後付が可能であれば、既存ミラーを交換するより簡単に取付けできる。さらに、ルームミラー1では、後方カメラ21の撮影方向を調整するための操作部をなす調整ノブ215が、既存ミラーへの取付状態であっても指先等で調整できるように配置されている。このように調整ノブ215を配置すれば、ルームミラー1を既存ミラーから取り外すことなく後方カメラ21の撮影方向を調整できる。
【0079】
ルームミラー1では、後方カメラ21の撮影方向及び液晶ディスプレイ30の表示方向がいずれも車室側を向いている。一般に、液晶ディスプレイ30が画像情報を表示する際の光が後方カメラ21に入射すると、品質の高い撮影画像を取得できなくなるおそれが生じる。そこで、本例のルームミラー1では、後方カメラ21に対する光の映り込みを抑制するための構成の一例として、運転者側から向かって左側に液晶ディスプレイ30を配置すると共に、向かって右側に後方カメラ21を配置し、さらに筐体10内部に隔壁107(
図7参照。)を設けてある。このような構成を採用すれば、液晶ディスプレイ30等の画像表示手段を設けた場合であっても後方カメラ21による撮影画像の劣化を未然に抑制できる。
【0080】
ルームミラー1は、後方カメラ21のみならず、前方カメラ25を備えている。そのため、ルームミラー1とは別に前方用のカメラ等をフロントガラス等に設置することなく、前方側の撮影画像を取得できる。ルームミラー1を利用すれば、煩雑な設置状況を招来することなく、後方側の撮影画像と前方側の撮影画像との両方を取得できる。
【0081】
なお、ハーフミラーを介して撮影する後方カメラ21と、外部に露出する前方カメラ25とでは、撮影画像の明るさに差が生じる可能性が高いので、明るさの差を抑制するための明るさ調整手段を設けると良い。各カメラ21、25の撮影画像の明るさの差を抑制できれば、例えば、液晶ディスプレイ30に並べて表示したり時間的に切り換えて表示等する際の違和感を少なくできる。調整手段としては、例えば、絞りや露光時間(シャッタースピード)など光学的な調整により画像輝度を調整する手段や、画像輝度をソフトウェア的に調整する手段等を採用すると良い。ソフトウェア的な調整手段としては、例えば、取り付け後の最初の電源投入時に、液晶ディスプレイ30の表示画面に両者の画像を並べて表示し、両画像にそれぞれ対応する明るさ調整スイッチの上下操作で両者の明暗を変化させた状態を表示し、確定スイッチがおされたときにその調整状態を記憶しておいて、その記憶された調整状態に基づいてその後の両者の明るさを調整するものや、例えば、両者の画像輝度をマイコン32のCPUが比較して、例えば随時、自動的に両者の差が小さくなるように調整するもの等が考えられる。ソフトウェア的な画像輝度の調整では、前方カメラ25の撮影画像の明るさを抑え、後方カメラ21の撮影画像の明るさを高めるように制御すると良い。
【0082】
なお、例えば前方カメラ25により車両の進行方向を撮影し、後方カメラ21により車両の進行方向に沿う後方を撮影する場合、前方カメラ25の撮影方向と後方カメラの撮影方向とは180度の逆向きとなる。例えば、
図15のように、略球状のホルダ280に2つのカメラユニットを収容し、ホルダ280の外周面のうちの対向する2箇所にレンズ281、283が配置され、略直交する方向に調整ノブ285が配設されたカメラ28を採用することも良い。このような構成のカメラ28であれば、前方カメラと後方カメラとの間で調整手段を共用できる。調整ノブ285を操作して一方のカメラを調整すれば、他方のカメラが180度逆向きの位置に調整されるので、撮影方向を調整するための手間が少なくなる。
【0083】
上記のごとくルームミラー1は、後方カメラ21の撮影方向の調整手段を備えているが、これに代えて、ルームミラー1の筐体10内に後方カメラ21を収納し、鏡面160の垂直方向に対して後方カメラ21の撮影方向を予めずらしておくことも良い。ルームミラー1については、運転者が後方を確認できる様に鏡面160の角度が調整される。その場合、鏡面160の垂直方向を撮影方向として後方カメラ21を取付けると、後方カメラ21は後方正面を向かない。上記のように後方カメラ21の撮影方向を予め適切にずらしておけば、鏡面160の傾きを補正して後方正面も撮影できる。
【0084】
前方カメラ25、後方カメラ21の区別なく2つのカメラを設け、双方とも180度回転できるように構成することも良い。2つのカメラを前方の異なる方向に向ければ、前方の2つの方向を同時に撮影できる。後方と前方とを撮影することも、例えば、車両後方の外部と車内など後方の異なる2つの方向を撮影することも可能になり、ユーザの要望に応じて自由に設定できるようになる。
【0085】
一般的に、ドライブレコーダは、前方の上下左右をなるべく広く撮影したいニーズから、例えばフロントガラスの中央上部付近に設置する場合が多い。フロントガラスの中央上部の位置は、例えば車両のルームミラー(既存ミラー)の裏側になるが、この位置に前方カメラ及び後方カメラを搭載したドライブレコーダを設置しようとすると、少なくともいずれか一方のカメラについては既存ミラーが撮影に邪魔になる。よって、2カメラを搭載したドライブレコーダについては、既存ミラーが撮影の邪魔にならないよう、既存ミラーを避けて別の位置に設置しなければならない。このような別の位置は、少なくとも前方カメラにとって必ずしも最適な位置とは言えない。一方、ルームミラー1のようなルームミラー型のドライブレコーダであれば、既存ミラーの位置を避けることなく、既存ミラーに被せて設置できる。このように既存ミラーに被せて設置すれば、前方カメラ及び後方カメラをフロントガラスの中央上部付近という最適に近い位置に設定できる。
【0086】
ルームミラー1は、前方カメラ25と後方カメラ21という2つのカメラを搭載したものであるが、カメラの搭載個数を更に増やすこともできる。例えば、側方を撮影するカメラを搭載しても良い。後方カメラ21や側方カメラで撮影した画像を液晶ディスプレイ30で表示すれば、後方・側方確認を補助する役割をルームミラー1に担わせることができる。側方カメラについても撮影方向を調整できるようにすると良い。
【0087】
本例のルームミラー1では、後方カメラ21の撮影方向を調整するための操作部として、指先等で操作できる調整ノブ215を例示している。これに代えて、例えば道具を用いて後方カメラ21の撮影方向を調整する構成としてもよい。例えばドライバやレンチ等の棒状の物体を差し込む調整孔を設けておき、その調整孔に当該物体を差し込んで調整する構成としてもよい(
図16参照。)。
【0088】
図16の例では、調整孔132を取り囲む部分についてカメラカバー130Bの肉厚を厚くして指先等では後方カメラ21に触れないようにすると共に、後方カメラ21の外周面にトルクス(登録商標)レンチ用の孔216を設けている。例えば図示しないL字状のトルクス(登録商標)レンチを孔216に差し込んで他端を適宜操作すれば、調整ノブ215を操作する場合と同様、後方カメラ21の撮影方向を調整できる。このように構成すれば、後方カメラ21の撮影方向が不用意に変更されるおそれを未然に抑制でき、所望の撮影画像を確実性高く取得できる。特に、タクシーやトラック等の管理のために運転者を撮影する場合であれば、撮影される側の運転者が勝手に撮影方向を変更してしまうような状況を未然に回避できる。また調整孔132を取り囲む部分の肉厚を厚くすれば後方カメラ21の外周面が奥まった位置になるので、例えば調整ノブ215をその外周面に設けた場合であってもその調整ノブ215の位置状態から撮影方向を推察されるおそれが小さくなる。
【0089】
(実施例2)
本例は、実施例1のルームミラー1を基にして、前方カメラを省略すると共に、後方カメラの撮影方向を調整するための調整手段の構成を変更した例である。
実施例1のルームミラーでは、操作部をなす突起部の一例である調整ノブ(
図1中の符合215)を後方カメラの撮影方向と略直交する位置に設けている。これに対して、
図17~
図19のルームミラー1では、後方カメラ21の外周面のうち撮影方向の反対側に調整用の突起部215を設けると共に、ルームミラー1の筐体10の裏側に調整孔106を開け、調整孔106から突起部215が触れられる様になっている。突起部215を動かす事により後方カメラ21の撮影方向の調整が可能である。なお、
図17及び
図18では、車両への取り付け時に、既存ミラーに対面する領域を破線810により例示している。
【0090】
図17に例示するルームミラー1は、既存ミラーよりも水平方向の寸法が大きく、既存ミラーに対面しない部分が形成されている。このルームミラー1では、既存ミラーと対面しない部分に略球状のカメラ21が収容されている。筐体10の背面側には、カメラ21を収容するためのドーム形状が形成され、その頂上部分に、カメラの撮影方向を調整するための突起部215が露出する調整孔106が設けられている。
【0091】
図18及び
図19に例示するルームミラー1では、周囲よりも筐体10が薄い溝状の凹み109が形成され、その凹み109の内側に略球状のカメラ21が収容されている。凹み109の底面には、調整孔106が設けられ、そこには、カメラ21の撮影方向を調整するための突起部215が露出している。既存ミラーに対してルームミラー1を装着した際には、既存ミラーに突起部215が対面する一方、溝状の凹み109を利用して外周側から差し入れた指先等で突起部215を操作できる。
【0092】
図17~
図19のように後方カメラ21の撮影方向を調整するための突起部215を設ければ、撮影方向を変更する必要が生じたとき、その都度、既存ミラーから取り外すことなく、指先等で簡単に撮影方向を変更できる。また、筐体10の背面側に設けた突起部215であれば、乗員側から見えないので外観的な美観を損なうおそれがほとんどない。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0093】
上述した各実施例はそれぞれ変形して組み合わせてもよい。例えば、実施例1の構造に対し、実施例2の後方カメラ21の構造をルームミラー1の右側端部に設けるようにして後方を2つのカメラで撮影できるとともに前方も撮影できる構成などとしてもよい。その他、各実施例に記載の構成要素を他の実施例に盛り込む構成としてもよく、また課題を解決するための手段等に記載した技術思想を適用した構成としてもよい。
【0094】
(実施例3)
本例は、実施例1あるいは実施例2を基にした変形例である。
例えば、画像情報を表示する液晶ディスプレイ30を、後方カメラ21を内蔵した筐体10の外部に設け、液晶ディスプレイ30による光の映り込みを抑制した車両用ルームミラーとすると良い。特に、この車両用ルームミラーでは、液晶ディスプレイ30が折り畳み式の構造で筐体10に取り付けられている。
このような車両用ルームミラーであれば、後方カメラ21によって撮影された映像を見たいときだけ液晶ディスプレイ30で確認することができ、それ以外のときには液晶ディスプレイ30を目立たない位置等にしまうことができる。なお、折り畳み構造に代えて、スライド式で必要時に取り出せる構造で筐体10に液晶ディスプレイ30を取り付けることもできる。
【0095】
また、画像情報を表示する外部の液晶ディスプレイ等の画像表示手段と、後方カメラ21を内蔵した本体側との画像情報の伝送を無線通信により行う車両用ルームミラーとするとよい。外部の画像表示手段はスマートフォン等とするとよく、無線通信は、例えばWi-Fiとして、例えばスマートフォンに後方撮像手段で撮像した映像を送信して、スマートフォンで受信した映像を表示する等によって行うとよい。
なお、その他の構成及び作用効果については、他の実施例と同様である。
【0096】
(実施例4)
本例は、実施例1~3のいずれかを基にした変形例である。
例えば、後方カメラ21による撮像範囲の少なくとも一部を照らす例えばLED等の照明手段と、車両の乗員側からの視線を遮って照明手段を目立たなくする照明遮蔽手段と、を備える車両用ルームミラーとすると良い。例えば後方カメラ21として高感度赤外カメラを採用すれば照明手段は必要ない構成とすることができる。しかしながら、上記のように照明手段と照明遮蔽手段とを含む構成とすれば、例えば一般的なカメラを用いたとしても、例えば夜間等、後方カメラ21による撮像のための十分な明るさがない状況であっても、照明手段によって照らされた範囲をより明瞭に撮像することが可能となる。例えば後方カメラ21により車内を撮影する場合には、撮影範囲を車内の乗員の少なくとも一部が撮影されるよう設定するとよい。
【0097】
照明手段は、例えば、目立たない様に人が視認しにくい光を発する手段を用いるとよい。特に後方カメラ21は可視光領域から赤外領域にかけて感度特性を有するものを用い、照明手段は、赤外LEDを用いるとよい。
照明遮蔽手段は、板状またはレンズ状の物とするとよい。特に照明手段の照射方向を覆う物とするとよい。照明手段が赤外光を発する構成とした場合には、赤外光を通すフィルター特性を持つ板状またはレンズ状の物で覆う構成とするとよい。
【0098】
また、照明遮蔽手段は、後方カメラ21を目立たなくする遮蔽手段とするとよい。遮蔽手段と照明遮蔽手段は同一の部材を兼用するとよく、特に、遮蔽手段と照明遮蔽手段は同一の部材とするとよい。例えば、照明手段として赤外LEDを用い、遮蔽手段及び照明遮蔽手段は、同一部材のハーフミラーの内部に、後方撮像手段である後方カメラ21等を一緒に入れるとよく、このようにすれば、外部から目立たず、照明と撮像がされていることを撮影の対象者等が認識しにくくなる。
【0099】
また、後方カメラ21によって撮像された映像に照明遮蔽手段による反射光が入射することを抑制する入射抑制手段を備えるとよい。発明者らは、例えば遮蔽手段と照明遮蔽手段が同一の部材を兼用し、例えば当該部材をハーフミラーとすると、照明手段の照明光が当該ハーフミラーによる反射光として後方カメラ21に入射してしまい撮像範囲の映像が、当該ハーフミラーによる反射光によって得られず正常な撮影ができないという問題が発生することを見出した。この問題は、特に遮蔽手段と照明遮蔽手段は同一の部材とする構成を採用した場合に顕著に発生する。
【0100】
そこで、上記のような入射抑制手段を設ければ、照明遮蔽手段による反射光により後方カメラ21の撮像範囲の映像が正常に撮影できる。
入射抑制手段は、照明遮蔽手段による反射光が入射することを抑制する構成であればどのような構成でもよいが、特に、照明手段から照明遮蔽手段の間の空間と、後方カメラ21から遮蔽手段の間の空間とを光学的に仕切る構造を備えるとよい。例えば両者の空間の間に遮蔽板等を設けるとよい。また両者の間の空間を照明遮蔽手段による反射光が入射しにくい距離以上に離す構造とするとよい。
【0101】
なお、照明遮蔽手段は、遮蔽手段の外に配置するとよい。特に、照明遮蔽手段は遮蔽手段とは別体として構成するとよい。
【0102】
照明遮蔽手段は、車両用ルームミラーが備える操作部、または、車両用ルームミラーが備える操作部に見えるダミー部材、の少なくともいずれか一方を備えるとよい。このように構成すれば、照明手段の存在を撮影対象の者などに特に認識されにくくなる。
【0103】
その他の構成及び作用効果については他の実施例と同様であるが、本例で説明した上記の構成の具体例としては例えば次のようにするとよい。
(a)照明用赤外LEDをミラーの外に配置し、ミラーと赤外LEDの間に仕切りを設けた構成。
(b)赤外LEDをカモフラージュする為、赤外LEDの前に赤外光を通すフィルター特性を持つ板状またはレンズ状の物で覆った構成。
(c)上記板状またはレンズ状の物と上記ミラーとの間に仕切りを設けた構成。
(d)上記ミラーの外側に操作ボタンまたは操作ボタンのダミーを、赤外光を透過する樹脂等で作り、設け、ボタンの後ろから赤外光を発する様にした構成。
【0104】
(実施例5)
本例は、実施例1~4のいずれかを基にした変形例である。
本例の車両用ルームミラーは、カメラの撮影方向の調整手段にかえて、または、調整手段とともに、後方カメラ21を固定する固定手段を備えている。
固定手段は、後方カメラ21を筐体10に対して固定できる構造とするとよく、例えばカメラを備えた基板をネジ止め等で固定したりするとよい。
【0105】
調整手段にかえて後方カメラ21を固定する固定手段を備える構成は、運転者が後方を確認するために車室内に設けられる車両用ルームミラーであって、後方側を撮影するための後方カメラ21と、車両の乗員側からの視線を遮って後方カメラ21を目立たなくする遮蔽手段と、を備えている車両用ルームミラーである。
【0106】
例えば、調整手段を他の実施例の構成に代えて、調整手段を備えずカメラを車両用ルームミラーの筐体内に収納し、鏡面の法線方向(鏡面に対する垂直方向)に対してカメラの撮影方向(例えばカメラの光軸)をずらした角度でカメラを取付けた構成としてもよい。車両用ルームミラーは、運転者が後方を確認出来る様に鏡面の角度を調整する。その場合、鏡面の法線方向を撮影方向として後方カメラ21を取付けると、後方カメラ21は後方正面を向かない。このようにすれば、これを補正して後方正面も撮影することができる。
なお、その他の構成及び作用効果については他の実施例と同様である。
【0107】
(実施例6)
上述した実施例中の各構成要素は任意に組み合わせて機器を構成するとよい。
例えば、いずれかの実施例において好適と説明した各構成要素は任意に組み合わせて機器を構成するとよい。特に、少なくともこれらの構成要素のいずれかを備える構成とするとよい。より望ましくは、これらの好適な構成要素の組み合わせを具備する構成とするとよく、各構成要素を単独で構成することもできるが、特に好適な構成要素のいずれかの2以上の構成を組み合わせて機器を構成すると優れた効果を発揮する。
【0108】
例えば、構成例としては例えば次のようにするとよい。
運転者が後方を確認するために車室内に設けられたルームミラーであって、
車の前方を撮影する第1の撮像手段(例えば前方カメラ)と、
車室内及び後方を撮影する第2の撮像手段(例えば後方カメラ)と
両方の撮像手段で撮影された画像を録画する録画手段を持ち、
少なくとも第2の撮像手段は前記ルームミラーの筐体内部に配置し、
乗員及びリアウインドからの車外の状況の両方を撮影出来る様に撮影画角及び
設置確度を設定し、
車両の乗員側からの視線を遮って前記第2の撮像手段を目立たなくする遮蔽手段と、
を備えている車両用ルームミラー。
【0109】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更、あるいは適宜組合せた技術を包含している。
【符号の説明】
【0110】
1 車両用ルームミラー
11ケース
130 カメラ保持部
131、135 収容部
15 カバー
16 ミラー
160 鏡面
21 後方カメラ
215 調整ノブ
25 前方カメラ
3 電子基板
30 液晶ディスプレイ