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特許7475052親水性/疎水性薬学的組成物、ならびにその産生法および使用法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】親水性/疎水性薬学的組成物、ならびにその産生法および使用法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/80 20060101AFI20240419BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240419BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240419BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A61K31/80
A61K33/00
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/34
A61P17/02
A61P29/00
A61P13/02 105
A61P13/10
A61P11/04
A61P1/02
A61P1/00
A61P1/18
A61P15/00
A61P19/00
A61P27/02
A61P31/12
A61P17/10
A61P31/04
A61P33/02
A61K9/02
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/14
A61K47/24
A61K47/22
A61K45/00
A61K31/167
A61K31/5415
A61K31/513
A61K31/4164
A61K31/496
A61K31/575
A61K31/351
A61K38/12
A61K38/48
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2020562846
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019052021
(87)【国際公開番号】W WO2019145546
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】18000067.1
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520281756
【氏名又は名称】パテレン・ヘルス・ケア・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ゲラシュチェンコ,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】チェプリアカ,オレクシー
(72)【発明者】
【氏名】トーシュ,アンドレアス
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535790(JP,A)
【文献】特開昭60-210256(JP,A)
【文献】特開2015-021111(JP,A)
【文献】Journal of Colloid and Interface Science ,2007年,308,142-156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 33/44
A61P 1/00- 43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A61K 38/00- 38/58
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(a)~(c):
(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤を提供し;
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し;そして
(c)高分散シリカ粒子と、工程(b)で得た産物を混合し、
それによって粉末型の組成物を得る
を含む、粉末型の組成物を産生する方法。
【請求項2】
陽イオン性表面活性剤が、エトニウム、デカメトキシン、オクテニジン二塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、ミラミスチン、塩化ベンゼトニウム、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物が、抗微生物物質、組織増殖活性を持つ物質、リドカイン、フェノチアジン誘導体、タンパク質分解酵素、およびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる剤をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
組成物が、(a)メトロニダゾール、(b)フルオロキノロン、例えばシプロフロキサシン、(c)フシジン酸、(d)ムピロシン、(e)バシトラシン、(f)チロスリシン、(g)銀化合物、(h)ホウ素化合物、およびその組み合わせからなる群より選択される、抗微生物物質を含む、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
工程(b)における一次粒子またはその凝集体の形成が、ベーン(vane)を含む気密性高速ミキサーを用いてそれぞれの構成要素を混合することによって達成される、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
工程(b)における一次粒子またはその凝集体の形成が、それぞれの構成要素をミリングすることによって達成される、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
工程(b)が
(i)ミリング前に、それぞれ、高分散シリカまたは疎水性シリカの重量に基づいて、10~100重量%の量でエタノールおよび/または水を添加し;そして
(ii)ミリング後に組成物を乾燥させる
工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ボールミルまたは振動ミルを用いてミリングを実行する、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
工程(c)が、ベーンを含む気密性高速ミキサーを用いて実行される、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
工程(b)において、陽イオン性表面活性剤を、疎水性シリカ粒子の表面上に機械化学的に固定する、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
組成物が、組成物総重量に基づいて、
21.0~75.0重量%の高分散シリカ、
16.0~70.0重量%の疎水性シリカ、
0.1~4.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
高分散シリカおよび疎水性シリカの総計が、組成物総重量の65~99.9重量%に相当する、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
高分散シリカが、フュームドシリカ、沈殿シリカ、コロイド状無水シリカ、シリカゲル、Syloid、Aerosil、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
疎水性シリカが、フュームド疎水性シリカまたは沈殿疎水性シリカである、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
疎水性シリカが、その表面に化学結合した疎水性基を有する高分散シリカである、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
疎水性シリカが、その表面に結合したアルキルまたはポリジメチルシロキサン基を有する高分散シリカである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
疎水性シリカが30~250g/Lの突き固め密度を有する、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
疎水性シリカが15~300m/gのBET表面積を有する、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
陽イオン性表面活性剤が、モノまたはビス四級アンモニウム化合物より選択される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
陽イオン性表面活性剤が、エトニウム、デカメトキシン、オクテニジン二塩酸塩、塩化
ベンザルコニウム、ミラミスチン、塩化ベンゼトニウム、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
組成物が、抗微生物物質、組織増殖活性を持つ物質、リドカイン、フェノチアジン誘導体、タンパク質分解酵素、およびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
高分散シリカ、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤を含み、該陽イオン性表面活性剤が、疎水性シリカ粒子の表面上に機械化学的に固定されている、粉末型の組成物。
【請求項23】
組成物が、組成物総重量に基づいて、
21.0~75.0重量%の高分散シリカ、
16.0~70.0重量%の疎水性シリカ、
0.1~4.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
高分散シリカおよび疎水性シリカの総計が、組成物総重量の65~99.9重量%に相当する、請求項22または23記載の組成物。
【請求項25】
高分散シリカが、フュームドシリカ、沈殿シリカ、コロイド状無水シリカ、シリカゲル、Syloid、Aerosil、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項22~24のいずれか一項記載の組成物。
【請求項26】
疎水性シリカが、フュームド疎水性シリカまたは沈殿疎水性シリカである、請求項22~25のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
疎水性シリカが、その表面に化学結合した疎水性基を有する高分散シリカである、請求項22~26のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
疎水性シリカが、その表面に結合したアルキルまたはポリジメチルシロキサン基を有する高分散シリカである、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
疎水性シリカが30~250g/Lの突き固め密度を有する、請求項22~28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
疎水性シリカが15~300m/gのBET表面積を有する、請求項22~29のいずれか一項記載の組成物。
【請求項31】
陽イオン性表面活性剤が、モノまたはビス四級アンモニウム化合物より選択される、請求項22~30のいずれか一項記載の組成物。
【請求項32】
陽イオン性表面活性剤が、エトニウム、デカメトキシン、オクテニジン二塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、ミラミスチン、塩化ベンゼトニウム、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
組成物が、抗微生物物質、組織増殖活性を持つ物質、リドカイン、フェノチアジン誘導体、タンパク質分解酵素、およびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる剤をさらに含む、請求項22~32のいずれか一項記載の組成物。
【請求項34】
請求項22~33のいずれか一項記載の組成物であるかまたは該組成物を含む、薬学的
調製物。
【請求項35】
粉末、懸濁物、ゲル、ヒドロゲル、軟膏、点滴剤、または座薬型である、請求項34記載の薬学的調製物。
【請求項36】
水性組成物総重量に基づいて、少なくとも2重量%の量で請求項22~33のいずれか一項記載の組成物を含む、水性組成物。
【請求項37】
請求項34または35記載の薬学的調製物を含む、ドレッシング、パケット、またはカプセルからなる群より選択される、医学的物品。
【請求項38】
化膿性創傷および壊死性創傷の治療における使用のための、請求項22~33のいずれか一項記載の組成物または請求項34または35記載の薬学的調製物。
【請求項39】
感染火傷表面、腐敗性壊死性蜂窩織炎および顎顔面領域における水癌、癌手術後の喉頭または咽喉頭摘出中の創傷、喉、口腔および/または歯の炎症性疾患、咽頭炎、扁桃炎、歯肉炎および口内炎、歯周炎、歯科適用およびウルトラフォレシス(ultraphoresis)、直腸、大腸および腹腔臓器の疾患、腹膜炎、腹腔内および膵臓由来膿瘍、膵臓壊死後の合併症、腹膜外蜂窩織炎、子宮および子宮付属器、膀胱、胸膜、骨および他の内臓の炎症性疾患、骨髄炎、淋菌、トリコモナスおよび他の感染によって引き起こされる尿道炎、眼の前面の疾患、外傷性手術における瘻孔、食中毒、急性腸閉塞およびウイルスによる中毒、皮膚の創傷および膿痂疹性疾患、ざ瘡、顔における毛包炎および毛瘡、および/または化粧品の不合理な適用によって誘発される疾患、痔疾、直腸炎、肛門直腸膿瘍、肛門裂傷、婦人科手術後の創傷、非特異的トリコモナスおよび真菌膣炎、膣炎、外陰炎、子宮炎、子宮傍組織炎、卵管炎、感染性下痢、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性グラム陰性細菌、腸内細菌科(enterobacteriaceae)、および非発酵性細菌によって引き起こされる感染の治療における使用のための、請求項22~33のいずれか一項記載の組成物または請求項34または35記載の薬学的調製物。
【請求項40】
尿管または膀胱の慢性炎症の治療における使用のための、請求項36の水性組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲の吸着性、高い抗炎症性および創傷治癒能を有し、病原性微生物によって引き起こされる疾患、特に化膿性創傷の治療のための実用的薬剤の様々な分野に使用することができる、高分散シリカおよび疎水性シリカに基づく新規組成物に関する。
【発明の概要】
【0002】
特に高齢者における、感染した潰瘍および創傷の治癒は、現代の外科において深刻な問題である。臨床診療は、現代の抗微生物剤のみを用いることによる化膿性炎症性疾患および化膿性創傷の治療が常に望ましい結果を導くわけではないことを示す。抗生物質の誤った使用は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)を含む病原性微生物の耐性(院内)株の出現に寄与しており、こうした株は一般に、現代医学に関する深刻な問題である[Huang SS, Platt R., “Risk of methicillin-resistant Staphylococcus aureus infection after previous infection or colonization”, Clin. Infect. Dis., 2003, vol. 36, p. 281-285; Kaye K, Anderson D, Choi Yら, “The deadly toll of invasive methicillin-resistant Staphylococcus aureus infection in community hospitals”, Clin. Infect. Dis., 2008, vol. 46, p. 1568-1577]。
【0003】
感染した潰瘍および創傷の再生プロセスおよび治癒の強度は、これらから膿および壊死組織が除去される速度に大きく依存する。この目的のため、アップリケ吸着(applique sorption)、すなわち粉末型の吸着剤を粉末ドレッシングとして創傷に適用する、吸着アップリケ治療としても知られる創傷治癒の方法を用いてもよい。アップリケ吸着は、一種の吸着消毒法であり、吸着性調製物の表面と直接接触する創傷液および創傷腔の微生物細胞、細菌毒素および毒性代謝産物を除去することによって、創傷治癒を加速させ、そして皮膚および粘膜の完全性を回復する[Sorbents and Their Clinical Applications (C. Giordano監修), New-York-London, Academic Press, 1980; Cooney, D.O., “Activated charcoal in medical applications.”, Marcel Dekker, Inc., New York-Basel-Hong Kong, 1995]。創傷治癒の第一相における重要な療法要因はまた、脱水、すなわち創傷腔および病巣周辺組織からの液体の吸収にも見られる。
【0004】
活性炭に基づく創傷材料の局所治療のための吸着調製物として、合成および天然起源の多様な膨張性ポリマー、ならびにシリコン吸着剤、例えばシリカおよびシリコーン化合物由来の吸着剤が提唱されてきている。
【0005】
創傷治癒のための炭素調製物の中でも、Actisorb Plus(Johnson& Johnson)は特に周知であり、これはコロイド状銀でコーティングされた活性炭繊維である。Actisorb Plusは、銀により、非特異的抗微生物効果を有し、そして炭素吸着剤は、創傷内容物中に集積する病原性代謝産物を吸収可能である。該調製物は主に、表在性創傷および皮膚欠損、例えば静脈性潰瘍の治癒のために用いられる[Furr J.R., Russell A.D., Turner T.D., Andrews A., “Antibacterial activity of Actisorb Plus, Actisorb and silver nitrate”, J. Hosp. Infect., 1994, vol. 27(3), p. 201-208]。しかし、ナノメートル孔サイズを有する活性炭は、大きなタンパク質分子を吸収することはできず、これには細菌毒素および組織分解産物が含まれる。
【0006】
固定メトロニダゾール[Rutkovskiy E.A., Shtofin S.G., Lubarskiy M.S., Yakushenko V.K., ”Grounding for application of sorption lymphogenous methods in healing of anorectal abscess”, Lecture on IV Republican scientific practical Conference with participation of international proctologists “Functional and inflectional diseases of large intestine: surgical and therapeutic aspects. New in coloproctology” (6-7 Sept 2001) -Minsk- 2001. p. 78-79]または酵素(ニゲダーゼ(nigedase)およびヒアルロニダーゼ)を含む複合吸着剤SUMS-1(活性炭+酸化アルミニウム)による、化膿性創傷の吸着アップリケ治療法が提唱されてきている。その顕著な多孔構造により、活性炭吸着剤は、低分子量および中程度の分子量の物質を吸収する。メトロニダゾールは、通常、肛門直腸膿瘍に見られる嫌気性マイクロフローラに対して高い感受性を示す。しかし、SUMS-1は、その構造により、限定された吸着能、低い水吸収および病原性タンパク質吸収速度しか持たず、したがって、抗炎症特性は持たない。創傷治癒の第一相における表面吸着適用可能消毒のためのニゲダーゼおよびヒアルロニダーゼ作用期間は短く(16時間未満)、その結果、線維素溶解および壊死溶解(necrolytic)効果は短くなり、療法の有効性が減少し、そして治療の期間が増加する[Lubarskiy M.S., Letyagin A.Y., Gabitov V.H., Semko V.V., Povazhenko A.A., “Sorption mineral carbon preparations in purulent-septic surgery”, Russian Academy of Medical Sciences. Institute of Clinical and Experimental lymphology -Bishkek, Novosibirsk, St. Petersburg, 1994]。
【0007】
創傷に適用した際の炭素吸着剤の不都合な点は、創傷上に適用した2~3時間後、これらが外皮(crust)を形成し始め、これが創傷からの流出を妨げ、そして吸着プロセスが非常に減退することである。顆粒の一部は組織内に導入され、そして除去不能である。顆粒表面は細胞およびタンパク質分子の断片でコーティングされ、これもまた吸着活性を減少させる[Alimov M. M., Experience in application carbon sorbent in treatment complicated soft tissue wounds/ Alimov M. M., Bahtiyarov O. R., Batyrov D. Sh. Sorption methods of detoxification and immune correction in Surgery: Collection of treatises. -Tashkent, 1984, p. 173-174]。
【0008】
創傷ドレッシングは、特に重大な組織喪失がありうる慢性創傷において、創傷を清浄に、そして汚染を免れるように保ち、そしてまた創傷治癒を促進するように設計されている。例えば:ヒドロコロイドドレッシング、ヒドロゲル、アルギン酸ドレッシングおよびその他[Skorkowska-Telichowska K., Czemplik M., Kulma A., Szopa J., “The local treatment and available dressings designed for chronic wounds”, J. Amer. Acad. Dermatol., 2013, vol. 68(4), p. 117-126]。
【0009】
「Gelevin」は、吸着の活性機構を伴う排出吸着剤の基剤であり、そしてグルタルアルデヒドと架橋されたポリビニルアルコールを含む。該ポリマーは、化膿性創傷に関して14~16g/gの不可逆的吸着能を生じる構造を有する。化膿性創傷に対する多数の病原性効果を減少させるため、化学療法創傷クレンジングを提供する生物活性排出吸着剤を含む固定化調製物(Diotevin、Anilodiotevin)が有望である。これらは創傷薬剤、例えば抗生物質、消毒剤、タンパク質分解酵素、局所麻酔剤の持続放出のための条件を生じる。多量に滲出している創傷にこれらを適用し、そして創傷と接触させると、これらは、膨張して、そしてざらざらした、容易に除去可能なゲルとなる、生物学的に活性である吸着剤を放出する。調製物の放出は、1日以内に起こり、そして投与した調製物の約60%が最初の1時間で創傷内に吸収される。抗微生物剤、例えばDioxidineは、創傷中のグラム陽性、グラム陰性および嫌気性マイクロフローラの抑制を提供しうる。タンパク質分解酵素(コラゲナーゼ、テリリチン(terrylitine))は、壊死組織の溶解に寄与する。しかし、膨張した吸着顆粒を、複雑な構造を有し、深いポケットおよび腔を持つ創傷から注意深く除去しないと、適用可能吸着療法における合併症がある。創傷の縁が閉じ、そして外来の物体に相当する吸着顆粒が多量に被包されると、化膿プロセスの再発または瘻孔の形成が導かれうる[Goryunov S.V., Romashov D.V., Butivshchenko, I.A.; Abramov M.博士により改訂, “Purulent surgery: Atlas”, BINOM. Laboratory of science, 2004, p. 504-506]。
【0010】
やはり吸着剤の中で、病原体ならびに低分子量および中程度の分子量の代謝産物の能動吸着による局所創傷消毒を提供するメチシリン酸-ポリメチルシロキサンのキセロゲルが知られる。創傷滲出液は、粉末化された吸着剤の毛細ネットを通じて「排出」され、そして有機物質はその顆粒内に吸収される。創傷のpHを上昇させることにより、特異的抗生物質の作用もまた増強する。アップリケ吸着のため、表面上に固定された抗生物質を伴いまたは伴わず、ポリメチルシロキサンを用いてもよい。例示的な調製物は、ポリメチルシロキサン表面がゲンタマイシンによって修飾されたImosgentおよびGentaxanである[Znamenskiy V.A., Vozianov A.F., Vozianova Zh.M.ら, Application of therapeutic preventive preparation produced on the silica based sorbents. Methodological recommendations, Kiev, 1994, p. 14.]。しかし、疎水性物質の場合、滲出物は吸収されず、そして包帯の下で迅速に広がり、これが皮膚解離および創傷における炎症プロセスの活性化を促進する[Baksa J., “Selection of wound dressings”, J. Orvisi Hetilap., 2000, vol. 141(47), p. 2549-2554]。
【0011】
親水性高分散シリカ(HDS)を創傷治癒の第一相で用いてもよい。その消毒作用は、微生物酵素、内毒素および外毒素ならびに微生物を含む、病原性タンパク質物質を吸収する能力(最大800mg/g)による。シリカ表面は、水分子に結合可能なヒドロキシル基で覆われ、したがって、該表面は、炎症プロセスの一部としての浮腫の除去に必須である、組織に対する顕著な脱水効果を生じる。しかし、シリカはその表面上に疎水性基を欠くため、親油性および疎水性毒性代謝産物を吸収しない。いくつかの場合、純粋なHDSは、過剰な脱水能を有し、これは組織の望ましくない過剰乾燥を引き起こす。HDSは、直接的な抗微生物作用を示さないが、HDSの存在下では、抗生物質に対する病原性生物の感受性が増加することが見出された[Blitz J.P.およびGun’ko V.M. (監修), Surface Chemistry in Biomedical and Environmental Science, Springer, 2006, p. 191-204]。
【0012】
注目に値するのは、創傷において広範囲の物質および病原性微生物の吸着を提供する、親水性および疎水性吸着剤の組み合わせである。親水性および疎水性吸着剤の組み合わせを通じて、これらの産物は、選択的吸着および管理された排出効果を通じ、清浄な創傷を提供可能である。
【0013】
エトニウムのような表面活性物質と混合した高分散シリカおよびポリメチルシロキサン(PMS)を含む複合創傷治癒調製物「Flotoxan」および「Metroxan」[ウクライナ特許UA 32088 A、Wound healing preparation ”Flotoxan” and way of its preparation, Shevchenko Y.M., Gerashchenko I.I.,およびVil’tsanyuk O.A.;ならびにUA 33629 A、Preparation for wound healing, Gerashchenko, I.I., Cheplyaka, O.M., Vil’tsanyuk, O.A., Burkovskiy M.I.,およびZheliba M.D]。これらの調製物は、比「シリカ/PMS」に依存する管理された脱水効果、ならびにタンパク質、細菌およびその毒素、中程度の分子量の代謝産物を吸収し、そしてこれらを保持し、それによって創傷表面を通じた、言及した物質の再吸収を防止する能力である、十分な抗微生物活性を有する。また、調製物は嫌気性微生物に対する抗微生物活性を持つ構成要素を含有しないが、調製物によるプロテアーゼ活性の活性化により、創傷の内容物はタンパク質分解特性を示す。
【0014】
本発明の目的は、化膿性創傷および他の化膿炎症性疾患、例えば慢性化膿肉芽腫性炎症、および化膿壊死性炎症の治療のための吸着性および消毒効果を有する、普遍的親水性-疎水性組成物を生成することによって、前述の欠点を排除することである。本発明記載の組成物は、創傷治癒の相に応じて多様でありうる。これは、脱水能を変化させ、例えば好気性および嫌気性微生物に対する、広範囲の抗微生物活性を有する化合物を添加することによって、達成可能である。さらに、生存していない(non-vital)組織に対して壊死溶解効果を示し、若い組織に対して再生効果を増進させ、そして/または局所麻酔効果を提供する、さらなる化合物を添加してもよい。本発明記載の組成物を用いることによって、創傷治癒の多様な段階において、異なる性質の創傷のより有効な治療が達成可能であり、こうした創傷には:滲出性創傷、慢性褥瘡、静脈性下肢潰瘍、糖尿病性/神経障害性潰瘍、壊死組織を伴う真菌性(fungating)、癌性または悪性病変および創傷が含まれる。
【0015】
したがって、本発明は、第一の側面において、以下の工程(a)~(c):
(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤を提供し;
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し;そして
(c)高分散シリカ粒子と、工程(b)で得た産物を混合し、
それによって粉末型の組成物を得る
を含む、粉末型の組成物を産生する方法を提供する。
【0016】
第二の側面において、本発明は、高分散シリカ、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤を含む、粉末型の組成物を提供する。
本発明はまた、本発明の第二の側面記載の粉末型の組成物を含む薬学的調製物も提供する。
【0017】
本発明は、第三の側面において、以下の工程:
(a)疎水性シリカ粒子および陽イオン性表面活性剤を提供し;そして
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し、
それによって粉末型の組成物を得る
を含む、粉末型の組成物を産生する方法を提供する。
【0018】
第四の側面において、本発明は、第三の側面記載の方法によって得られうる、粉末型の組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、本発明は、第一の側面において、以下の工程(a)~(c):
(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤を提供し;
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し;そして
(c)高分散シリカ粒子と、工程(b)で得た産物を混合し、
それによって粉末型の組成物を得る
を含む、粉末型の組成物を産生する方法を提供する。
【0020】
本発明の第一の側面の方法において、方法から得られうる組成物は、好ましくは、組成物総重量に基づいて、
21.0~75.0重量%の高分散シリカ、
16.0~70.0重量%の疎水性シリカ、および
0.1~4.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0021】
本出願において、方法から得られうる組成物の内容に言及する場合、別に言及しない限り、それぞれの構成要素が、方法開始時、それぞれの量で提供されるべきであり、そして方法において列挙される工程で使用されるべきであることが理解される。特に、上記態様において、第一の側面の方法は、以下の工程(a)~(c):
(a)組成物総重量に基づいて、21.0~75.0重量%の量の高分散シリカ粒子、16.0~70.0重量%の量の疎水性シリカ粒子、および0.1~4.0重量%の量の陽イオン性表面活性剤を提供し;
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し;そして
(c)高分散シリカ粒子と、工程(b)で得た産物を混合し、
それによって粉末型の組成物を得る
を含む。
【0022】
本発明の第一の側面の方法において、方法から得られうる組成物は、より好ましくは、組成物総重量に基づいて、
21.0~75.0重量%の高分散シリカ、
16.0~70.0重量%の疎水性シリカ、および
0.05~4.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0023】
さらにより好ましくは、本発明の第一の側面の方法から得られうる組成物は、組成物総重量に基づいて、
35.0~70.0重量%の高分散シリカ、
20.0~45.0重量%の疎水性シリカ、および
0.05~2.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0024】
最も好ましくは、本発明の第一の側面の方法から得られうる組成物は、組成物総重量に基づいて、
35.0~70.0重量%の高分散シリカ、
20.0~45.0重量%の疎水性シリカ、および
0.8~2.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0025】
陽イオン性表面活性剤および疎水性シリカの比に関しては、本発明の第一の側面の方法から得られうる組成物は、好ましくは、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤の総重量に基づいて:
90.0~99.9重量%の疎水性シリカ、および
0.1~10重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0026】
より好ましくは、本発明の第一の側面の方法から得られうる組成物は、好ましくは、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤の総重量に基づいて:
90.0~99.8重量%の疎水性シリカ、および
0.2~10重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0027】
さらにより好ましくは、本発明の第一の側面の方法から得られうる組成物は、好ましくは、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤の総重量に基づいて:
95.0~99.0重量%の疎水性シリカ、および
0.5~5.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0028】
上述のような本発明の第一の側面の方法から得られうる組成物が、抗微生物物質、組織増殖活性を持つ物質、リドカイン、フェノチアジン誘導体、タンパク質分解酵素、およびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる剤をさらに含むことがさらに好ましい。
【0029】
より好ましくは、第一の側面の方法から得られうる組成物は、組成物総重量に基づいて、(高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤に加えて)以下のさらなる剤:
0.5~10.0重量%の少なくとも1つの抗微生物物質、
0.01~10.0重量%の組織増殖活性を持つ少なくとも1つの物質、
0.01~5.0重量%のリドカイン、
0.01~5.0重量%の少なくとも1つのフェノチアジン誘導体、および
0.01~3.0重量%の少なくとも1つのタンパク質分解酵素
の少なくとも1つを含む。
【0030】
さらにより好ましくは、第一の側面の方法から得られうる組成物は、組成物総重量に基づいて:
21.0~75.0重量%の高分散シリカ、
16.0~70.0重量%の疎水性シリカ、および
0.05~4.0重量%(好ましくは、0.1~4.0重量%)の陽イオン性表面活性剤を;そして
以下のさらなる剤:
0.5~10.0重量%の抗微生物物質、
0.01~10.0重量%の組織増殖活性を持つ少なくとも1つの物質、
0.01~5.0重量%のリドカイン、
0.01~5.0重量%の少なくとも1つのフェノチアジン誘導体、および
0.01~3.0重量%の少なくとも1つのタンパク質分解酵素
の少なくとも1つを含む。
【0031】
最も好ましくは、第一の側面の方法から得られうる組成物は、組成物総重量に基づいて:
35.0~70.0重量%の高分散シリカ、
20.0~45.0重量%の疎水性シリカ、および
0.05~2.0重量%(好ましくは0.8~2.0重量%)の陽イオン性表面活性剤を;そして
以下のさらなる剤:
0.5~10.0重量%の抗微生物物質、
0.01~10.0重量%の組織増殖活性を持つ少なくとも1つの物質、
0.01~5.0重量%のリドカイン、
0.01~5.0重量%の少なくとも1つのフェノチアジン誘導体、および
0.01~3.0重量%の少なくとも1つのタンパク質分解酵素
の少なくとも1つを含む。
【0032】
少なくとも1つのさらなる剤から、抗微生物物質が好ましい。本発明において、抗微生物物質は陽イオン性表面活性剤とは異なる。
本発明の第一の側面の方法において、少なくとも1つのさらなる剤を使用する場合、方法は、好ましくは、以下の工程(a)~(c):
(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、陽イオン性表面活性剤および少なくとも1つのさらなる剤を提供し;
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し;
(b2)高分散シリカ粒子と少なくとも1つのさらなる剤を混合し;そして
(c)工程(b)および(b2)で得た産物を混合する
を含む。
【0033】
工程(b2)を行う場合、工程(b)および(b2)を、任意の順序で連続して、または同時に行ってもよい。
より好ましくは、方法は、以下の工程(a)~(c):
(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、陽イオン性表面活性剤および少なくとも1つのさらなる剤を提供し;
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し;
(b2)高分散シリカ粒子の少量の部分と少なくとも1つのさらなる剤を混合し;そして
(c)高分散シリカ粒子の大部分と、工程(b)および(b2)で得た産物を混合する
を含む。
【0034】
さらにより好ましくは、方法は、以下の工程(a)~(c):
(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、陽イオン性表面活性剤および少なくとも1つのさらなる剤を提供し;
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し;
(b2)少量の部分の高分散シリカ粒子を用いて、表面上に少なくとも1つのさらなる剤を所持する一次高分散シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し;そして
(c)大部分の高分散シリカ粒子と、工程(b)および(b2)で得た産物を混合する
を含む。
【0035】
上述の方法において、高分散シリカ粒子の少量の部分を工程(b2)で使用し、そして高分散シリカ粒子の大部分を工程(c)で使用する場合、高分散シリカ粒子の大部分は、組成物中に含まれる高分散シリカの総重量の好ましくは70~95重量%、より好ましくは80~90重量%、最も好ましくは85~89重量%に相当し、そして残りの高分散シリカ粒子が工程(b2)で使用される少量の部分の高分散シリカ粒子を形成する。
【0036】
本発明の第一の側面の方法において、工程(b)における一次粒子またはその凝集体の形成は、好ましくは、ベーン(vane)を含む気密性高速ミキサーを用いてそれぞれの構成要素を混合することによって達成される。
【0037】
より好ましくは、工程(b)および(b2)における一次粒子またはその凝集体の形成は、ベーンを含む気密性高速ミキサーを用いてそれぞれの構成要素を混合することによって達成される。
【0038】
工程(b)および/または工程(b2)が、それぞれの構成要素を混合することによって行われる場合、方法は、好ましくは:
(i)混合前または混合中に、それぞれ、高分散シリカまたは疎水性シリカの重量に基づいて、10~100重量%の量でエタノールおよび/または水を添加し;そして
(ii)混合後に組成物を乾燥させる
工程をさらに含む。
【0039】
工程(b)および/または(b2)で、それぞれ、高分散シリカまたは疎水性シリカの重量に基づいて、エタノールおよび/または水を、10~100重量%、好ましくは10~60重量%、最も好ましくは25~50重量%の量で添加することによって、表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体の形成、ならびに/あるいは表面上に少なくとも1つのさらなる剤を所持する一次高分散シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体の形成を増強してもよい。本発明において、「エタノールおよび/または水」の量に言及した場合、エタノールまたは水のいずれかを単独で用いてもよく、これは、量が、エタノールまたは水の量、それぞれを指すことを意味する。エタノールおよび水の両方を組み合わせて使用する場合、量は、エタノールおよび水の総量を指す。
【0040】
本発明の第一の側面の方法において、工程(b)における一次粒子またはその凝集体の形成は、最も好ましくは、それぞれの構成要素をミリングすることによって達成される。この場合、方法が工程(b2)を含むならば、工程(b2)における一次粒子またはその凝集体の形成は、ベーンを含む気密性高速ミキサーを用いてそれぞれの構成要素を混合することによって達成されてもよい。しかし、工程(b2)における一次粒子またはその凝集体の形成もまた、それぞれの構成要素をミリングすることによって達成されることが好ましい。
【0041】
工程(b)および/または工程(b2)がそれぞれの構成要素をミリングすることによって行われる場合、方法は、好ましくは:
(i)ミリング前に、それぞれ、高分散シリカまたは疎水性シリカの重量に基づいて、10~100重量%の量でエタノールおよび/または水を添加し;そして
(ii)ミリング後に組成物を乾燥させる
工程をさらに含む。
【0042】
工程(b)および/または工程(b2)で、それぞれ、高分散シリカまたは疎水性シリカの重量に基づいて、エタノールおよび/または水を、10~100重量%、好ましくは10~60重量%、最も好ましくは25~50重量%の量で添加することによって、表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体の形成、ならびに/あるいは表面上に少なくとも1つのさらなる剤を所持する一次高分散シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体の形成を増強してもよい。
【0043】
本発明の第一の側面の方法において、工程(b)および(b2)における一次粒子またはその凝集体の形成は、最も好ましくは、それぞれの構成要素をミリングすることによって達成される。好ましくは、ミリングは、ボールミルまたは振動ミルを用いて実行される。2リットルのドラム体積を有するボールミルを工程(b)で用いる場合、好ましくは、ミリングの時間は30~60分間であり、そしてドラム回転速度は0.5~2回転/秒である。2リットルのドラム体積を有するボールミルを工程(b2)で用いる場合、好ましくは、ミリングの時間は20~60分間であり、そしてドラム回転速度は0.5~2回転/秒である。例えば5、10、または50リットルの、より高いドラム体積を有するボールミルに関しては、ミリングの時間はより長く、例えば60~120分間であってもよい。したがって、工程(b)において、10リットルのドラム体積を有するボールミルを用いる場合、好ましくは、ミリングの時間は30~90分間であり、そしてドラム回転速度は0.5~2回転/秒である。
【0044】
上述の方法において、工程(c)は、好ましくは、ベーンを含む気密性高速ミキサーを用いて行われる。混合時間は、好ましくは、細かく分散した、視覚的に均一の粉末調製物を得るために十分でなければならない。好ましくは、混合時間は、5~20分間、より好ましくは約10分間である。
【0045】
本発明の第一の側面記載の上述の方法の好ましい態様において、陽イオン性表面活性剤は、工程(b)において、疎水性シリカ粒子上に機械化学的に固定される。方法が工程(b2)を含む場合、工程(b2)において、少なくとも1つのさらなる物質も好ましくはまた、高分散シリカ粒子の表面上に機械化学的に固定される。
【0046】
機械化学的固定(または機械化学的に開始された固定)は、活性成分などの物質が、機械化学的技術によって、キャリアー物質の表面に適用され、そして/または付着(固定)されるプロセスである。
【0047】
本発明にしたがって、用語「機械化学的に固定された」は、活性成分が、固形キャリアー物質の粒子表面上に存在することを意味する。キャリアー物質は、本発明で用いる吸着剤の1つ、すなわち疎水性シリカ粒子または高分散シリカである。例えば、「陽イオン性表面活性剤が、疎水性シリカ粒子上に機械化学的に固定されている」ことへの言及は、表面活性剤(活性成分)が、疎水性シリカ粒子(固形キャリアー物質)の表面上に存在することを意味する。同様に、「抗微生物物質が、高分散シリカ上に機械化学的に固定されている」ことへの言及は、抗微生物物質(活性成分)が、高分散シリカ粒子(固形キャリアー物質)の表面上に存在することを意味する。好ましくは、活性成分は、ナノメートルサイズのキャリアー物質粒子表面上に分子の層を形成する。それによって、活性成分の総面積は増加する。したがって、「機械化学的固定」の場合、その薬理学的活性を発揮するために準備ができている活性成分分子の総量は、活性成分のより大きな粒子を含有する組成物において、より高い。
【0048】
機械化学的固定には、2つの側面、すなわち(1)機械的プロセス(ビーティング、摩擦、超音波等)によって開始される物理化学的プロセスまたは化学的反応である、機械化学プロセス;および(2)固定が含まれる。したがって、機械化学的固定は、機械的プロセスの補助で、キャリアー物質粒子の表面上への活性成分の物理化学的固定を生じ、該プロセスにおいて、構成要素に対して衝撃力および摩擦力が発揮されて、構成要素は機械化学的に互いの上に固定される。
【0049】
キャリアー物質粒子上の活性成分の均一な固定に必要な特定の期間、機械化学的固定を行う。プロセスの時間が短すぎる場合、結果は、成分の粉砕された粒子の単純な混合物でありうる。
【0050】
本発明の第一の側面記載の上述の方法において、工程(b2)で使用される高分散シリカ粒子の少量の部分は、組成物中に含まれる高分散シリカの総重量の、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~20重量%、最も好ましくは11~15重量%に相当する。好ましくは、残りの高分散シリカ粒子は、工程(c)で使用される高分散シリカ粒子の大部分を形成し、これは、組成物中に含まれる高分散シリカの総重量の好ましくは70~95重量%、より好ましくは80~90重量%、最も好ましくは85~89重量%に相当する。
【0051】
工程(b2)において、高分散シリカ上の抗微生物物質の機械化学的固定を、高分散シリカの少量の部分のみを用いて行ってもよく、これは、機械化学的固定の間、高分散シリカは圧縮され、それによって吸着特性が減少するためである。したがって、高分散シリカの大部分は、工程(b2)において用いられないが、工程(b)で得た機械化学的固定産物とともに、工程(c)で機械化学的に混合される。
【0052】
工程(b2)において、高分散シリカの重量に対する、抗微生物物質の重量の重量比は、好ましくは2:1~1:4、より好ましくは1.7:1~1:3、さらにより好ましくは1.5:1~1:2、そして最も好ましくは1.2:1~1:1.5の範囲である。重量比が言及した範囲内である場合、高分散シリカ粒子の表面積は十分に大きく、したがって抗微生物物質は、別個の分子の薄い均一な層として、粒子表面上で固定されてもよく、これは容易に放出されて、抗微生物作用を提供可能である。
【0053】
物質の混合を提供可能であり、そしてミリングしようとする物質上に衝撃力および摩擦力を発揮可能である限り、任意のミルによって、機械化学的固定のプロセスを行ってもよい。あるいは、ミキサー、好ましくはベーンを含む高速ミキサーを使用してもよい。ボールミルを用いる利点は迅速な固定であり、一方、ミキサーを用いると、このプロセスはより時間が掛かる。
【0054】
機械化学的固定を行うために適した例示的なミルは、ボールミルまたはロッドミルなどの回転(tumbling)ミル;攪拌ボールミル、軌道周回(planetary)ミル、円錐ミル、遠心分離ミル、VSIミル、ジェット流ミル、ジェットミル、ピンミル、振動ミル、およびベーンを含むミキサー、すなわちブレードまたはパドルを含むミキサーである。機械化学的固定を行うために適していないものは、例えば水圧であり、これは水圧が、ミリングされる物質の均一な割り付けを提供不能であるためである。振動ミル、遠心分離ミル、ジェット流ミル、および軌道周回ミルは、より高い生産性のため、好ましい。好ましくは、機械化学的固定を、ボールミルまたは振動ミルを用いて行ってもよい。2~10リットルのドラム内部体積を有する例示的なボールミルが、ウクライナの工場、「SlavCeramicRefractory」、スラビャンスク(www.sko.com.ua/melnici-sharovye.html)によって生産されている。
【0055】
ボールミルを用いる場合、回転速度は、ボールがミルドラム内で落ち、そして/または転げまわるように選択すべきである。それによって、ボールはミリングしている物質に対して、摩擦力に加えて衝撃力を発揮することも可能である。回転速度が低すぎると、ボールは単にミル内を転がるだけであり、そして衝撃力を発揮しないであろう。その結果、キャリアー物質上への活性剤の均一な固定を伴わず、大まかにブレンドされた混合物となる可能性もある。速度が高すぎれば、ボールは遠心力によってドラムの壁に押し付けられ、したがって衝撃力もまた摩擦力も発揮されないであろう。
【0056】
より好ましくは、機械化学的固定を、1回転/秒の回転速度、すなわち60rpmで、20~60分間、2リットルの内部体積を有する磁製ドラムを用いたボールミル中で行ってもよい。例えば5、10、または50リットルの、より高いドラム体積を有するボールミルに関しては、ミリングの時間はより長く、例えば60~120分間であってもよい。したがって、工程(b)において、10リットルのドラム体積を有するボールミルを用いる場合、好ましくは、ミリングの時間は30~90分間であり、そしてドラム回転速度は0.5~2回転/秒である。ミリング期間が長すぎる場合、キャリアー物質(高分散シリカまたは疎水性シリカ)の圧縮は増加し、これはその吸着品質の部分的な喪失につながりうる。
【0057】
本発明の組成物は、キャリアー物質上の活性成分の「機械化学的固定」によって、改善された治癒特性を示す。
機械化学的固定が起きた事実は、X線粉末回折、赤外分光法、ならびにプロセス前および後のダイアグラムによる他の種類の分析によって試験されてもよい。
【0058】
第二の側面において、本発明は、高分散シリカ、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤を含む、粉末型の組成物を提供する。
本発明の第二の側面の組成物は、好ましくは、組成物総重量に基づいて:
21.0~75.0重量%の高分散シリカ、
16.0~70.0重量%の疎水性シリカ、および
0.05~4.0重量%(好ましくは0.1~4.0重量%)の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0059】
より好ましくは、本発明の第二の側面の組成物は、組成物総重量に基づいて:
35.0~70.0重量%の高分散シリカ、
20.0~45.0重量%の疎水性シリカ、および
0.05~2.0重量%(好ましくは0.8~2.0重量%)の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0060】
陽イオン性表面活性剤および疎水性シリカの比に関しては、本発明の第二の側面の組成物は、好ましくは、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤の総重量に基づいて:
90.0~99.8重量%の疎水性シリカ、および
0.1~10重量%(好ましくは0.2~10.0重量%)の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0061】
より好ましくは、本発明の第二の側面の組成物は、好ましくは、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤の総重量に基づいて:
95.0~99.0重量%の疎水性シリカ、および
0.5~5.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0062】
本発明の第一および第二の側面において、高分散シリカおよび疎水性シリカの総計は、組成物総重量の65~99.9重量%、好ましくは90~99.5重量%に相当する。
第二の側面の好ましい態様において、本発明は、高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤を含む粉末型の組成物であって、少なくとも重量25%、好ましくは重量25~80%、より好ましくは重量40~80%、最も好ましくは重量40~60%の陽イオン性表面活性剤が、表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体に存在する、前記組成物を提供する。
【0063】
本発明において、多くの調製物において、薬剤としてならびに賦形剤として臨床使用のために認可されている、高分散シリカ(SiO)を用いる[Blitz J.P.およびGun’ko V.M. (監修) Surface Chemistry in Biomedical and Environmental Science, Springer, 2006, p. 191-204]。高分散シリカは、米国(「二酸化ケイ素」)、英国および欧州薬局方(「シリカ、コロイド状無水性」)に記載される。本発明記載の高分散シリカには、フュームドシリカ、沈殿シリカ、コロイド状無水シリカ、シリカゲル、Syloid(登録商標)、Aerosil(登録商標)、あるいは他のタイプの多孔性または非孔性高分散シリカが含まれる。好ましくは、高分散シリカは、フュームドシリカ、コロイド状無水シリカ、またはシリカゲルである。高分散シリカは、好ましくは、組成物総重量に基づいて、重量21.0~75.0%、好ましくは重量35.0~70.0%の量で、本発明の組成物中に含まれる。本発明で使用されるべき高分散シリカの粒子サイズは、好ましくは2~200nm、より好ましくは4~150nm、より好ましくは5~50nm、最も好ましくは5~20nmである。好ましくは、高分散シリカの粒子サイズは100nmを超えない。本発明で使用されるべき高分散シリカの水含量は、高分散シリカの総重量に基づいて、好ましくは3重量パーセントを超えず、より好ましくは1重量%を超えず、最も好ましくは0.5重量%未満である。
【0064】
高分散シリカは、以下の反応スキーム:
SiCl+2 HO→SiO+4 HCl
にしたがった、四塩化ケイ素SiClの高温加水分解によって得ることができる。
【0065】
産物は、通常、高い化学純度によって特徴づけられ、すなわち、SiOの含量は99.9%未満ではない。高分散シリカの表面積は、合成条件に応じ、そして150から最大380m/gmの範囲であってもよい。
【0066】
医学的吸着剤、例えば本発明の組成物の調製のため、好ましくは300±30m/gmの表面積を持つフュームドシリカを用いる。
フュームドシリカにおいて、一次球体非孔性粒子は、通常、5~20nmの粒子サイズを有し、そして3Dポリマー(SiO、式中、n=10~10であり、ここでシリカ原子および酸素がシロキサン結合≡Si-O-Si≡によって連結され、そしてSi原子が四面体配置を示し、4つの酸素原子が中央のSi原子を取り巻く、前記3Dポリマーによって示されてもよい。水素結合、静電およびファンデルワールス力により、そして水の吸着された分子の補助を伴い、一次粒子は、約100~200nmのサイズを有する凝集体に一体化し、これは続いて、1μmより大きい粒子サイズを有する凝集体を形成する。
【0067】
上記プロセスによって得られる高分散シリカは無定形個体であり、すなわち長距離秩序の結晶構造を持たない。高分散シリカの表面は、以下に示すようにヒドロキシル基で覆われ、これがエンテロ吸着性(enterosorbent)、すなわち高親水性、タンパク質吸着活性、および微生物を吸着する能力としてのシリカの特性を定義する。
【0068】
【化1】
【0069】
現在、医学適用のためなどの高分散シリカの世界的な主な生産者はEvonik Industriesである。本発明の第一および第二の側面で使用可能な例示的な高分散シリカは、Evonik IndustriesによるAerosil(登録商標)300およびState Enterprise “Kalush Test Experimental Plant of Institute of Surface Chemistry of National Academy of Sciences of Ukraine”によるA-300である。
【0070】
本発明の第一および第二の側面において、高分散シリカは、好ましくは、フュームドシリカ、沈殿シリカ、コロイド状無水シリカ、シリカゲル、Syloid(登録商標)、Aerosil(登録商標)、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0071】
本発明において、用語「高分散シリカ」は、本来的に親水性であり、そして水によって容易に湿るシリカを指す。疎水性シリカは、用語「高分散シリカ」には含まれない。
高分散シリカとは対照的に、疎水性シリカは水によっては湿らない。これらの疎水性シリカは、水と比較してより高い密度であるにもかかわらず、水表面に浮かぶ。したがって、疎水性シリカ自体の治癒特性は減少する。その表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子を形成することによって、生じる表面活性剤に覆われた疎水性シリカ粒子の表面は、より親水性になり、そしてより優れた吸着特性を提供可能である。この効果は、疎水性シリカ粒子表面上に陽イオン性表面活性剤を機械化学的に固定することによって、さらにより増強されることも可能であり、これは好ましくは、構成要素をミリングすることによって達成可能である。ミリングは、好ましくは、ボールミルを用いて行われる。
【0072】
本発明において、疎水性シリカは、好ましくはフュームド疎水性シリカまたは沈殿疎水性シリカであり、より好ましくはフュームド疎水性シリカである。
好ましくは、疎水性シリカは、その表面上に化学結合した疎水性基を有する高分散シリカである。より好ましくは、疎水性シリカは、その表面上に結合したアルキルまたはポリジメチルシロキサン基、好ましくはメチル基を有する高分散シリカである。疎水性シリカは、好ましくは、ジメチルジクロロシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリジメチルシロキサン、オルガノシラン、ヘキサメチルジシラザン、アミノシラン、ヘキサデシルシラン、メタクリルシラン、シリコーン油およびその組み合わせからなる群より選択される表面処理剤、好ましくはジメチルジクロロシランを用いた、高分散シリカの表面修飾によって得られうる。高分散シリカは、好ましくは、これらの剤のいずれによって修飾された表面でもない。
【0073】
表面修飾に関して、疎水性シリカは、好ましくは、0.45~7.0重量%、好ましくは0.5~4.0重量%、最も好ましくは0.6~2.0重量%の炭素含量を有する。
疎水性シリカの疎水性は、メタノール湿潤性試験によって特徴づけられてもよい。好ましくは、疎水性シリカは、20~80重量%、好ましくは30~60重量%のメタノール湿潤性を有する。一方、高分散シリカは、好ましくは、60重量%を超えない、より好ましくは5重量%を超えないメタノール湿潤性を有する。
【0074】
本発明で使用する疎水性シリカは、非常に低い密度を有する。特に、疎水性シリカは、好ましくは30~250g/L、好ましくは40~150g/L、最も好ましくは45~70g/Lの突き固め(tamped)密度を有する。さらに、疎水性シリカは、好ましくは15~300m/g、より好ましくは50~250m/g、最も好ましくは70~250m/gの高いBET表面積を有する。高い表面積を考慮すると、疎水性シリカは多量の体液を吸収可能である。
【0075】
フュームド疎水性シリカは、商標名Aerosil(登録商標)の元に、Evonik Industriesから商業的に入手可能であり、例えばAerosil(登録商標)R 972、R 972 Pharma、R 974、R 976、R 976S、R 104、R 106、R 202、R 208、RY 300、RY 51、R 805、R 812、R 812 S、R 8200、RX 50、NAX 50、RX 200、RX 300、NX 90S; NX 90 G、NX 130、R 504、RA 200 H、RA 200HS、NA 50H、R 816、R 709、R 711、R 7200、RY 50、NY 50、NY 50 L、RY 200、RY 200L、RY 200S、およびNA 50Yがある。さらに、沈殿疎水性シリカは、Evonik Industriesから、Sipernat(登録商標)D 10およびD 17として入手可能である。本発明において、好ましくは、Aerosil(登録商標)R 972、R 972 Pharma、R 974、およびR 976より選択される親水性シリカを使用し、最も好ましくはAerosil(登録商標)R 972またはR 972 Pharmaを使用する。
【0076】
疎水性シリカ粒子、例えばAerosil(登録商標)R 972は、ポリメチルシロキサン(PMS)とは対照的に、絶対疎水性表面を有する。その結果、疎水性シリカ粒子は、水溶液から親油性物質(例えばアミノ酸トリプトファン)を吸着可能である。
【0077】
本発明の第一および第二の側面で用いる陽イオン性表面活性剤は、好ましくは、モノまたはビス四級アンモニウム化合物より選択される。より好ましくは、陽イオン性表面活性剤は、エトニウム、デカメトキシン、オクテニジン二塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、ミラミスチン、およびその組み合わせからなる群より選択される。最も好ましくは、陽イオン性表面活性剤は塩化ベンザルコニウムである。塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムとしてもまた知られる塩化ベンザルコニウムは、以下の式(1):
【0078】
【化2】
【0079】
式中、nは5~24の間、好ましくは8~18の間であり、そしてより好ましくは、nは8、10、12、14、16および18からなる群より選択される
によって特徴づけられることも可能である。さらに、塩化ベンザルコニウムは、好ましくは、式(1)の塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物である。例示的な塩化ベンザルコニウムは、塩化ミリスタルコニウム(n=14)である。
【0080】
本発明記載の陽イオン性表面活性剤は、モノ四級またはビス四級アンモニウム化合物あるいは一級および二級アミンの塩である。好ましくは、陽イオン性表面活性剤は、モノ四級またはビス四級アンモニウム化合物である。本発明にしたがって、モノ四級アンモニウム化合物は1つの四級アンモニウム基を有する化合物であり、そしてビス四級アンモニウム化合物は2つの四級アンモニウム基を有する化合物である。四級アンモニウム基は、窒素原子に付着した4つの有機基を有する陽イオン基である。四級アンモニウム化合物の塩は、好ましくは塩化物、臭化物またはヨウ化物である。以下において、陽イオン性表面活性剤の特定の陰イオンに言及する場合、この陰イオンは、それぞれの陽イオン性表面活性剤とともに用いられるありうる陰イオンの単なる例であると見なされる。モノ四級またはビス四級アンモニウム化合物は、高い抗微生物特性を持つ調製物として知られる。
【0081】
陽イオン性表面活性剤は、組成物総重量に基づいて、好ましくは重量0.05~4.0%、より好ましくは重量0.05~4.0%、より好ましくは重量0.1~4.0%、さらにより好ましくは重量0.4~3.0%、最も好ましくは重量0.8~2.0%の量で、本発明の組成物中に含まれる。本発明の組成物は単一の陽イオン性表面活性剤を含んでもよいし、あるいは2つまたはそれより多い異なる陽イオン性表面活性剤を含んでもよい。
【0082】
例示的なモノ四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セタルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、セトリミド、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ミリスタミドプロピルジメチルベンズアンモニウム(ミラミスチン(登録商標))、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、および臭化ドミフェンである。特に好ましいモノ四級アンモニウム化合物は塩化ベンザルコニウムである。塩化ベンザルコニウムは、広域抗微生物活性によって特徴づけられる。これは、消毒剤、抗真菌剤、抗原生動物剤、保存剤および殺精子剤として用いられる[Fleck С. A., “Palliative Dilemmas: Wound Odour”, Wound Care Canada, 2006, vol. 4, No. 3, p. 10-13]。
【0083】
好ましいビス四級アンモニウム化合物は、エトニウムおよびデカメトキシンである。デカメトキシンは、グラム陽性細菌、真菌およびウイルスに対して最も活性である[Moroz V.M., Paliy G.K., Sobolev V.O.ら Comparison study of antimicrobial activity of antiseptics; News of Vinnitsa State Medical University, 2002, vol. 2, p. 315-320]。確立されているのは、単核食作用系細胞を活性化させる能力である。エトニウムの適用域は、デカメトキシンの域と同様である[Gridina T.L., Paliy G.K., Lositskiy V.P., Fedchuk A.S., “Results of the studies of different mechanisms of antiviral activity of decamethoxin and ethonium”, Biomedical and Biosocial Anthropology, 2008; vol. 11, p. 43-45]。オクテニジン二塩酸塩は、MRSAに対して高い活性を有する最新の消毒剤である[Huebner N.O., Siebert J., Kramer A., “Octenidine dihydrochloride, a modern antiseptic for skin, mucous membranes and wounds”, Skin Pharmacol. Physiol., 2010, vol. 23(5), p. 244]
好ましくは塩化ベンザルコニウムである陽イオン性表面活性剤の分子は、共有結合を形成することなく、疎水性力によって、疎水性シリカ表面と相互作用し、そしてメチルおよびメチレン基の間の引力によって達成される。その結果、陽イオン性表面活性剤分子は、連続層で、疎水性シリカ粒子表面を覆う。この引力は、陽イオン性表面活性剤が親水化剤(hydrophilizator)として作用する水性媒体中で増強される。
【0084】
好ましい二級アミンは、オクテニジン二塩酸塩である。その抗微生物作用は四級アンモニウム化合物と類似であるが、活性域は幾分広い。
抗微生物効果に加えて、本発明の第二の側面の組成物中の陽イオン性表面活性剤は、疎水性シリカ粒子の疎水性表面を親水化する界面活性剤として作用し、疎水性シリカの疎水性表面の湿潤化を促進する。したがって、滲出物が吸収されず、そして包帯の下で迅速に広がり、これが皮膚解離および創傷における炎症プロセスの活性化を促進する、疎水性シリカの問題は克服されている。さらに、そのミセル触媒作用効果により、陽イオン性表面活性剤は、タンパク質分解酵素の活性を有意に改善する(相乗効果)。
【0085】
本発明の第二の側面記載の組成物は、好ましくは、抗微生物物質、組織増殖活性を持つ物質、リドカイン、フェノチアジン誘導体、タンパク質分解酵素、およびその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる剤をさらに含む。
【0086】
より好ましくは、第二の側面の組成物は、組成物総重量に基づいて、(高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤に加えて)以下のさらなる剤:
0.5~10.0重量%の少なくとも1つの抗微生物物質、
0.01~10.0重量%の組織増殖活性を持つ少なくとも1つの物質、
0.01~5.0重量%のリドカイン、
0.01~5.0重量%の少なくとも1つのフェノチアジン誘導体、および
0.01~3.0重量%の少なくとも1つのタンパク質分解酵素
の少なくとも1つを含む。
【0087】
さらにより好ましくは、第二の側面の組成物は、組成物総重量に基づいて:
21.0~75.0重量%の高分散シリカ、
16.0~70.0重量%の疎水性シリカ、および
0.05~4.0重量%(好ましくは0.1~4.0重量%)の陽イオン性表面活性剤を;そして
以下のさらなる剤:
0.5~10.0重量%の抗微生物物質、
0.01~10.0重量%の組織増殖活性を持つ少なくとも1つの物質、
0.01~5.0重量%のリドカイン、
0.01~5.0重量%の少なくとも1つのフェノチアジン誘導体、および
0.01~3.0重量%の少なくとも1つのタンパク質分解酵素
の少なくとも1つを含む。
【0088】
最も好ましくは、第二の側面の組成物は、組成物総重量に基づいて、
35.0~70.0重量%の高分散シリカ、
20.0~45.0重量%の疎水性シリカ、および
0.05~2.0重量%(好ましくは0.8~2.0重量%)の陽イオン性表面活性剤を;そして
以下のさらなる剤:
0.5~10.0重量%の抗微生物物質、
0.01~10.0重量%の組織増殖活性を持つ少なくとも1つの物質、
0.01~5.0重量%のリドカイン、
0.01~5.0重量%の少なくとも1つのフェノチアジン誘導体、および
0.01~3.0重量%の少なくとも1つのタンパク質分解酵素
の少なくとも1つを含む。
【0089】
本発明の第一の側面の粉末型の組成物を産生する上述の方法において、そして本発明の第二の側面の組成物において、少なくとも1つのさらなる剤として、抗微生物物質を使用することが好ましい。
【0090】
本発明で用いてもよい抗微生物物質は、微生物を殺すかまたはその増殖を阻害することが可能な化合物である。例えば、抗微生物化合物は、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、および他の微生物に対して活性であってもよい。抗微生物化合物は、特定のクラスの微生物に関して選択的でもまた非選択的でもよい。
【0091】
抗微生物物質は、組成物総重量に基づいて、重量0.5~10.0%、好ましくは重量1.5~8.0%の量で、本発明の組成物中に含まれる。本発明で用いられる抗微生物物質は、単一の物質でもよいし、あるいは2つまたはそれより多い物質の混合物でもよい。
【0092】
抗微生物物質は、以下のクラスの化合物に属する1つまたはそれより多い化合物から選択されてもよく、これには、テトラサイクリン(例えばミノサイクリン)、リファマイシン(例えばリファンピシン)、マクロライド(例えばエリスロマイシン)、ペニシリン(例えばナフシリン)、セファロスポリン(例えばセファゾリン)、他のベータラクタム抗生物質(例えばイミペネム、アズトレオナム、カルバセフェム類、カルバペネム類)、アミノ配糖体(例えばゲンタマイシン)、クロラムフェニコール、スルホンアミド(例えばスルファメトキサゾール)、糖ペプチド(例えばバンコマイシン)、キノロン(例えばシプロフロキサシン)、フシジン酸、ニトロイミダゾール(例えばメトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール)、チアゾール(thyazoles)(例えばニタゾール(nithazole))、ムピロシン、ポリエン(例えばアンホテリシンB)、アゾール(例えばフルコナゾール)、ベータラクタマーゼ阻害剤(例えばスルバクタム)およびオキサゾリジノン(例えばリネゾリド)が含まれる。ベータラクタム抗生物質は、好ましくは、β-ラクタマーゼ阻害剤、例えばクラブラン酸またはその塩、スルバクタム、あるいはタゾバクタムと組み合わせられる。特に好ましい組み合わせは、アモキシシリンおよびクラブラン酸カリウムを含む組成物である。
【0093】
抗微生物物質は、好ましくは、以下の物質の1つより選択される:(a)メトロニダゾール、(b)フルオロキノロン、例えばシプロフロキサシン、(c)フシジン酸、(d)ムピロシン、(e)バシトラシン、(f)チロスリシン、(g)銀化合物、(h)ホウ素化合物、およびその組み合わせ。
【0094】
好ましくは、本発明で用いる抗微生物物質は、上述の陽イオン性表面活性剤を含まず、すなわち陽イオン性表面活性剤は、好ましくは、用語「抗微生物物質」の意味から排除される。
【0095】
より好ましくは、本発明において使用するための抗微生物物質は、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、フシジン酸、ムピロシン、バシトラシン、チロスリシン、金属含有抗微生物剤、抗嫌気性または抗MRSA活性を持つホウ素または他の物質の化合物、例えばペニシリン、アモキシシリン、オキサシリン、ゲンタマイシン、リネゾリド、エリスロマイシン、クリンダマイシン、モキシフロキサシン、コ-トリモキサゾール、テトラサイクリン、バンコマイシン、テイコプラニン、リファンピシン、ホスホマイシン、チゲサイクリン、ダプトマイシンである。
【0096】
本発明において使用するためにさらにより好ましい抗微生物物質は、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、フシジン酸、ムピロシン、バシトラシン、チロスリシン、ならびに銀および/またはホウ素を含む化合物である。
【0097】
好ましい抗微生物物質は、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、フシジン酸、ムピロシン、バシトラシン、チロスリシン、銀化合物、ホウ素化合物、あるいは抗嫌気性または抗MRSA活性を持つ他の物質である。
【0098】
メトロニダゾール(1-(β-ヒドロキシエチル)-3-メチル-5-ニトロイミダゾール)の抗微生物作用域には、単純生物、嫌気性グラム陰性細菌、バクテロイド(B.フラジリス(B. Fragilis)を含む)、フゾバクテリウム、嫌気性グラム陽性桿菌(クロストリジウム属(Clostridium)を含む)、嫌気性グラム陽性球菌(ペプトコッカス属(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus))が含まれる。メトロニダゾールは、長期間治癒しない創傷の治療において、皮膚および軟組織、骨および関節の嫌気性感染のために示される[Gary R., Woo K.Y., “Local Wound Care for Malignant and Palliative Wounds”, Advances in Skin & Wound Care: The Journal for Prevention and Healing, 2010, vol. 23, No. 9, p. 417-428]。
【0099】
シプロフロキサシンは、グラム陰性およびグラム陽性両方の大部分のタイプの微生物に対して、高レベルの活性を所持するフルオロキノロンの代表である。シプロフロキサシンは、点滴剤(drop)および軟膏中で、眼および創傷の炎症性疾患の局所治療のために用いられる[Donaldson P.M., Pallett A.P., Carroll M.P., “Ciprofloxacin in general practice”, BMJ. (Clinical Research監修), May 1994, vol. 308, p. 1437]。
【0100】
フシジン酸、バクトロバン(ムピロシン)、バシトラシン、チロスリシンもまた、MRSAに対して高い活性を持つ抗微生物物質である。
フシジン酸(化学式C3148・0.5HO)は、抗細菌、静菌効果を有し、そして細菌タンパク質合成を阻害する。フシジン酸は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSAを含む)および表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)(MRSEを含む)の大部分の株を含むブドウ球菌属(Staphylococcus)種に対して有効であり、そしてコリネバクテリウム属(Corynebacterium)種、クラドスポリウム属(Cladosporium)種に対して活性を有する[Lemaire S., Van Bambeke F., Pierard D., Appelbaum P.C., Tulkens P.M., “Activity of Fusidic Acid Against Extracellular and Intracellular Staphylococcus aureus: Influence of pH and Comparison With Linezolid and Clindamycin”, CID, 2011, vol. 52 (Suppl. 7), p. S493-503]。
【0101】
ムピロシン(バクトロバン(登録商標))は、細菌タンパク質合成を阻害する抗微生物物質である。ムピロシンは、MRSAを含む黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染に対して有効な殺細菌剤である[Sutherland R., Boon R.J., Griffin K.E.ら, “Antibacterial Activity of Mupirocin (Pseudomonic Acid), a New Antibiotic for Topical Use”, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 1985,vol. 27(4), p. 495-498]。
【0102】
バシトラシンは、細菌、枯草菌(B. subtilis)の株によって産生される抗生物質であり、多くの微生物に対して有効である。典型的には、皮膚、眼または鼻の疾患の治療における外部適用のために用いられるが、経口で、注射によって、または腸消毒剤として投与されてもよい。バシトラシンは、食品産業において、E700と称される[欧州薬局方5.0., 2005, p. 1045-1047]。
【0103】
チロスリシンは、グラム陽性細菌に対して局所的に有効である、バチルス・ブレビス(Bacillus Brevis)由来の環状ポリペプチド抗生物質である。チロスリシンは、グラミシジンを含有する[Tyrosur(登録商標) Gel-investigation on Wound Healing Efficacy (2010). Clinicaltrials.gov 識別子: NCT01227759. 最新アップデート、2010年10月25日 米国国立衛生研究所、国立医学図書館および保健社会福祉省。http://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT01227759?term=tyrothricinより入手可能]。
【0104】
金属含有抗微生物剤の例は、銀、亜鉛、および銅であり、そして塩、例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、および過ヨウ素酸塩、キャリアーとの複合体、ならびに他の型を含む、その組み合わせ型である。
【0105】
銀を含む化合物は、創傷治療、特に火傷のための多様な医薬型で広く用いられてもよい。銀の例示的な化合物は、硝酸銀、コロイド状銀、およびナノサイズ化銀である。
銀化合物は、組成物総重量に基づいて、好ましくは重量最大5.0%まで、好ましくは重量0.01~3.0%の量で、本発明の組成物中に含まれる。
【0106】
本発明において使用するためのホウ素含有抗微生物剤の例は、ホウ酸アルカリ金属、ホウ酸アルカリ土類金属、ホウ酸アミン、ホウ酸、およびホウ酸エステルである。これらのホウ素化合物のうち、ホウ酸金属類が好ましい。これらは、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸ケイ酸(silicate borate)カルシウム、ホウ酸ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ケイ酸アルミニウム、ハイドロボラサイト、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸銅、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸鉄およびホウ酸亜鉛を含む。
【0107】
ホウ素含有抗微生物剤、例えば四ホウ酸ナトリウムは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して特異的な抗細菌活性を所持する。いくつかの組成物における四ホウ酸ナトリウムの別の機能は、創傷内容物のpHを酸性値(炎症によって引き起こされる)から正常に、すなわち7.0未満でない値に変えることである。
【0108】
ホウ素を含む化合物は、組成物総重量に基づいて、好ましくは重量最大5.0%、好ましくは重量0.01~3.0%の量で、本発明の組成物中に含まれる。
本発明にしたがって、組織増殖活性を有する物質は、細胞増殖を促進可能であり、それによって創傷修復を加速可能である物質である。組織増殖活性を有する物質の好ましい例は、亜鉛化合物、メチルウラシル、および増殖因子、例えば上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF、例えばニワトリ胚線維芽細胞由来増殖因子(CDGF))である。より好ましくは、組織増殖活性を有する物質は、メチルウラシルおよび亜鉛化合物である。
【0109】
組織増殖活性を有する物質は、好ましくは、組成物総重量に基づいて、好ましくは重量最大10.0%、好ましくは重量0.01~5.0%の量で、本発明の組成物中に含まれる。
【0110】
亜鉛は結合組織の生合成に必須の要素であるため、亜鉛を含む化合物は、創傷治癒のより後の段階で回復プロセスに関与する。さらに、これらの化合物は、中程度の抗微生物活性を示す[Bradley M., Cullum N., Nelson E.A.ら, “Systematic reviews of wound care management: (2) Dressings and topical agents used in the healing of chronic wounds”, Health Technol. Assess., 1999, vol. 3(17 Pt 2), p. 1-35]。亜鉛化合物の例には、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、ヒアルロン酸亜鉛が含まれる。
【0111】
メチルウラシルは、その組織増殖効果に関してよく知られる。メチルウラシルは、核酸の合成を刺激し、そしてしたがって、細胞の生成を加速する。
局所麻酔剤は、直接麻酔活性に加えて、免疫学的特性を有する。リドカインは、接着、化学走性、食作用、ならびに好中球およびマクロファージによるスーパーオキシド陰イオンおよび過酸化水素の産生を阻害する。局所麻酔剤は、好中球およびマクロファージにおける自然免疫に関する機能を阻害しうる[Azuma Y., Ohura K., “Immunological modulation by lidocaine-epinephrine and prilocaine-felypressin on the functions related to natural immunity in neutrophils and macrophages”, Current drug targets. Immune, endocrine and metabolic disorders, 2004, vol. 4(1), p. 29-36]。リドカインは、軟膏「Oflocaine-Darnytsia」に含まれる。さらに、顕著な疼痛がある場合、リドカインを本発明の組成物に添加してもよい。リドカインは、本発明の組成物総重量に基づいて、最大5重量%、好ましくは最大4重量%、より好ましくは0.1~3重量%の量で、本発明の粉末組成物中に含まれてもよい。本出願において、「リドカイン」に言及する場合、リドカインの薬学的に許容されうる塩には、特に、リドカイン塩酸塩が含まれる。
【0112】
本明細書において「フェノチアジン誘導体」とも称される、本発明記載のフェノチアジンは、神経遮断性抗精神病薬剤のクラスである。本発明で使用するために好ましいフェノチアジンは、クロルプロマジンである。フェノチアジン、例えばクロルプロマジンは、創傷マクロファージの食作用活性に対する予期せぬ刺激効果を、本発明の組成物に提供する[Cheplyaka O.M., ”Complex therapy of patients suffering with anorectal abscess”, Dissertation of PhD, Vinnitsa, 2006, p. 21]。フェノチアジンは、本発明の組成物の総重量に基づいて、最大5重量%、好ましくは最大3重量%の量で、本発明の粉末組成物中に含まれてもよい。クロルプロマジンは、本発明の組成物の総重量に基づいて、好ましくは最大2重量%、より好ましくは最大1.5重量%の量で、本発明の粉末組成物中に含まれてもよい。
【0113】
本発明記載のタンパク質分解酵素は、タンパク質分解を行う、すなわちタンパク質を形成するポリペプチド鎖において、ともにアミノ酸を連結するペプチド結合の加水分解によって、タンパク質異化を開始する酵素である。タンパク質分解酵素の例には、トリプシン、ケモトリプシン(chemotrypsin)、テリリチン、微生物コラゲナーゼ、例えばクロストリジウムコラゲナーゼ、ならびに植物または真菌由来のプロテアーゼ、例えばパパイン、ブロメラインおよびアスペラーゼ(asperase)が含まれる。
【0114】
除去前に分解させる必要がある多量の壊死組織を伴う創傷の治療の場合には、タンパク質分解酵素を添加してもよい。手術において、「ソフトな」壊死溶解活性を持つ酵素、例えばトリプシンおよびケモトリプシン、ならびに微生物性のより強い酵素、例えばテリリチンおよびコラゲナーゼを利用する。タンパク質分解酵素は、本発明の組成物の総重量に基づいて、最大3重量%、好ましくは最大2重量%の量で、本発明の粉末組成物中に含まれてもよい。
【0115】
第二の側面の組成物は、ポリメチルシロキサンを含有しないことが好ましい。したがって、ポリメチルシロキサンが、本発明の第一の側面の方法においてまったく使用されないこともまた好ましい。
【0116】
本発明にしたがって、ポリメチルシロキサンは、一般式(CHSiO1,5を有する細かく粉砕された疎水性粉末である。ポリメチルシロキサンは、メチルケイ酸のキセロゲルである。ポリメチルシロキサンは、したがって、ポリジメチルシロキサン(PDMS)とは異なる。
【0117】
本発明の第二の側面において、陽イオン性表面活性剤は、好ましくは、疎水性シリカ粒子の表面上に機械化学的に固定されている。
第二の側面のより好ましい態様において、本発明は、高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤を含む粉末型の組成物であって、少なくとも25重量%、好ましくは25~80重量%、より好ましくは40~80重量%、最も好ましくは40~60重量%の陽イオン性表面活性剤が、表面上に機械化学的に固定された陽イオン性表面活性剤を有する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体に存在する、前記組成物を提供する。
【0118】
本発明の第二の側面の組成物を調製する方法は、特に制限されない。しかし、上述のような本発明の第二の側面記載の粉末型の組成物が、本発明の第一の側面の方法によって得られうることが特に好ましい。
【0119】
本発明の第二の側面の組成物の粒子サイズは、好ましくは10~2,000nm、より好ましくは50~1,000nm、さらにより好ましくは100~500nmである。組成物が凝集体を含有する場合、この粒子サイズは、凝集体を形成する一次粒子のサイズを指す。凝集体のサイズは、2μm~500μm、好ましくは5μm~250μm、より好ましくは20~100μmの範囲であってもよい。本発明にしたがって、凝集体は、弱い物理的相互作用によってともに保持される一次粒子のクラスターである。
【0120】
本発明の組成物の総水含量は、組成物総重量に基づいて、好ましくは3重量%より高くなく、より好ましくは1重量%より高くなく、最も好ましくは0.5重量%未満である。
本発明の組成物は、粉末型である。組成物総重量のおよそ90重量%、好ましくは65~99.9重量%、より好ましくは90~99.5重量%の総含量の吸着剤、高分散シリカおよび疎水性シリカは、組成物の粉末基剤を形成する。高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤は、常に存在する組成物成分である一方、他の成分(すなわち抗微生物物質、組織増殖活性を有する物質、リドカイン、フェノチアジン誘導体、およびタンパク質分解酵素)は、必要があれば基剤に添加されてもよい。その結果、治療の目的に応じて、広範囲の内容物を含む組成物を調製してもよい。さらに、治療の目的に応じて、粉末組成物を適切な媒体中に分散させることによって、異なる液体型およびソフトな型を得てもよい(懸濁物、ゲル、軟膏、点滴剤およびその他)。組成物を賦形剤と混合し、そしてこれを圧縮することによって、錠剤を得てもよい。最後に、内部または外部使用のため、多様な医薬物品の任意の前述の型(ドレッシング、パケット、カプセルおよびその他)中に組成物を含むことが可能である。
【0121】
創傷治療のための本発明の組成物の有効性は、大部分、その吸着特性による。大きな創傷は、かなりの量の液体を生じる。創傷表面からの滲出物の除去は、体内への壊死組織の毒性分解産物の再吸収を防止するために必要である。
【0122】
壊死溶解特性は、脱水性(dehydrative)、吸着性および抗微生物活性とともに、本発明の組成物を、化膿性創傷の局所治療のために「選択される調製物」としている。これは、特に、腐敗性感染を併発した肛門直腸膿瘍での化膿性創傷の場合に当てはまる。壊死組織の拒絶および分解を加速させる組成物の使用は、繰り返される外科介入中の壊死部切除術を回避することを可能にし、そしてドレッシングを含むいくつかの医学的操作を減少させる。
【0123】
化膿性病巣の解剖学的位置の性質およびサイズ、ならびに炎症性プロセスの期間により、慣用的な外科技術によっては適切な衛生処理を行うことが困難である、化膿性病変領域の治療において、壊死組織への組成物の高い接着は、特に重要である。後腹膜蜂窩織炎が、膵臓壊死の背景にある場合、該組成物を用いると、排出期間を1.8倍減少させることも可能である。壊死組織の拒絶および溶解を加速させるためのこの組成物の使用によって、化膿性病巣における完全に通常通りの壊死部切除術が可能になる。したがって、化膿性滲出物の断片化および液体性の増進により、排出を通じた溶解組織の除去が単純になる。
【0124】
糖尿病足症候群の混合型における肢の組み合わせ病変は、化膿性壊死プロセスの限界決定機構の弱体化を導く、疾患の特徴を引き起こし、これによって、これらの患者において切断が非常に高リスクであることが説明できる。糖尿病足症候群の混合型は、不十分な動脈の修正に成功した場合であっても、感染が長期化することによって特徴づけられる。これはしばしば、創傷修復プロセスの遅延、骨および軟組織の再発性壊死病変、ならびにメチシリン耐性ブドウ球菌の創傷混入として現れる。本発明の組成物による化膿性炎症のクリアランスは、足の支持機能の保持を伴う再建形成術の実行を可能にする。
【0125】
喉頭、中咽頭および下咽頭の悪性腫瘍の外科治療における組成物の使用は、唾液の作用をブロックするが、唾液作用は頸部組織の溶解特性を示し、そして口腔および咽頭からのマイクロフローラの伝播に寄与し、それによって創傷合併症、例えば咽頭瘻孔、皮弁壊死、創傷化膿、およびその結果の大量出血の出現を伴う頸部血管侵食、内部頸静脈および頸動脈侵食の頻繁な発生により、術後の創傷の治癒期間を増加させる。該組成物は、放射線療法および化学療法の場合であってさえ、効果的に、壊死組織由来の創傷をきれいにする。該調製物を用いると、多剤耐性創傷マイクロフローラの場合であっても、消毒および全身抗生物質療法に関する必要性が排除される。
【0126】
調製物の使用は、菌血症および敗血症、蜂巣炎、骨髄炎、敗血性関節炎、および洞管または膿瘍を含む、褥瘡の感染性合併症の量を有意に減少させることを可能にする。
本発明はまた、本発明の第二の側面記載の粉末型の組成物、または本発明の第一の側面の組成物の前述の任意の調製法のいずれかによって得られうる粉末型の組成物であるか、またはこうした組成物を含む、薬学的調製物も提供する。したがって、薬学的調製物は、本発明記載の粉末型の組成物であってもよく、すなわち薬学的調製物は、本発明の第二の側面記載の粉末型の組成物からなってもよい。
【0127】
あるいは、薬学的調製物は、本発明の第二の側面記載の粉末型の組成物に加えて、さらなる添加物も含んでもよい。薬学的調製物は、好ましくは、粉末、懸濁物、ゲル、ヒドロゲル、軟膏、点滴剤、または座薬型であり、より好ましくは粉末または懸濁物である。
【0128】
薬学的組成物はまた、本発明の第二の側面記載の粉末型の組成物を、調製物総重量に基づいて、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%の量で含むヒドロゲル型で存在してもよい。本発明記載の粉末型の組成物を、創傷治療に一般的に用いられるヒドロゲル、例えばNU-GEL(登録商標)(Johnson&Johnson)、Prontosan創傷ゲル(登録商標)(B. Braun)、Purilonゲル(登録商標)(Coloplast)、URGO(登録商標)ヒドロゲル(Urgo)、Varihesive(登録商標)ヒドロゲル(ConvaTec)、Suprasorb(登録商標)G Amorphesゲル(Lohmann&Rauscher)、Askina(登録商標)ゲル(B. Braun)、CURAFIL(登録商標)(Tyco Healthcare)、Hydrosorb(登録商標)ゲル(Hartmann)、Cutimed(登録商標)ゲル(BSN medical)、Intrasiteゲル(Smith&Nephew)、NOBAGEL(登録商標)(NOBA)、Normlgel(登録商標)(Moelnlycke Health Care GmbH)、TegadermTMヒドロゲル(3M Medica)および任意の硝子体(硝子体液)の商業的調製物と混合することによって、ヒドロゲルを調製してもよい。
【0129】
本発明はまた、上述の本発明の薬学的調製物を含む、ドレッシング、パケット、またはカプセルからなる群より選択される医学的物品も提供する。
本発明の組成物または薬学的調製物、ならびに好ましくは、本発明の第二の側面記載の組成物を、化膿性創傷および壊死性創傷の治療に用いてもよい。より具体的には、組成物または薬学的調製物を、感染火傷表面、腐敗性壊死性蜂窩織炎および顎顔面領域における水癌、癌手術後の喉頭または咽喉頭摘出中の創傷、喉、口腔および/または歯の炎症性疾患、咽頭炎、扁桃炎、歯肉炎および口内炎、歯周炎、歯科適用およびウルトラフォレシス(ultraphoresis)、直腸、大腸および腹腔臓器の疾患、腹膜炎、腹腔内および膵臓由来膿瘍、膵臓壊死後の合併症、腹膜外蜂窩織炎、子宮および子宮付属器、膀胱、胸膜、骨および他の内臓の炎症性疾患、骨髄炎、淋菌、トリコモナスおよび他の感染によって引き起こされる尿道炎、眼の前面の疾患、外傷性手術における瘻孔、食中毒、急性腸閉塞およびウイルスによる中毒、皮膚の創傷および膿痂疹性疾患、ざ瘡、顔における毛包炎および毛瘡、および/または化粧品の不合理な適用によって誘発される疾患、痔疾、直腸炎、肛門直腸膿瘍、肛門裂傷、婦人科手術後の創傷、非特異的トリコモナスおよび真菌膣炎、膣炎、外陰炎、子宮炎、子宮傍組織炎、卵管炎、感染性下痢、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性グラム陰性細菌、腸内細菌科(enterobacteriaceae)、および非発酵性細菌によって引き起こされる感染の治療に用いてもよい。
【0130】
さらに、粉末型の組成物を、生じる水性組成物の総重量に基づいて、少なくとも2重量%の量で、水溶液、好ましくは塩化ナトリウムを含有する水溶液、より好ましくは等張性塩化ナトリウム溶液と混合してもよい。この水性組成物は、尿管または膀胱の感染または炎症の治療において有用である。
【0131】
本発明の第二の側面の粉末型の組成物を、感染創傷の局所治療に用いてもよい。さらに、組成物の1~4重量%を含む懸濁物を、経口で、そして胃液などの体腔洗浄のために;口腔(歯肉炎、口内炎等の場合)および鼻腔;膀胱(例えば膿尿および細菌尿中);子宮および膣(例えば子宮内膜筋層炎、細菌性膣疾患中、出産後の化膿性吸収性合併症の防止および治療のため)に用いてもよい。該組成物はまた、多様な位置の膿瘍(肺、肝臓、腹腔内等)、膵臓壊死における後腹膜蜂窩織炎、頸部の深部蜂巣炎および縦隔炎、ならびに骨盤肛門直腸膿瘍等を含む、深部創傷および病的プロセスの腔の洗浄にも適している。さらに、該組成物は、実質臓器(肝臓、腎臓等)の切除中の止血に有用である。
【0132】
本発明はまた、2つの変形で(少なくとも2つの規模で実行される)、すなわち産業規模(大規模)および薬学規模(小規模)で実行可能である、本発明の組成物を産生する方法にも関する。
【0133】
組成物の産業産生には、
(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および陽イオン性表面活性剤、ならびに随意に、抗微生物物質、および/または亜鉛の塩および/またはメチルウラシルおよび/またはリドカインおよび/またはクロルプロマジンおよび/または酸化亜鉛および/またはタンパク質分解酵素を提供し;
(b)陽イオン性表面活性剤を疎水性シリカ上に機械化学的に固定し;
(b2)随意に、抗微生物物質および/または亜鉛の塩および/またはメチルウラシルおよび/またはリドカインおよび/またはクロルプロマジンを、高分散シリカの少量の部分(組成物中に含まれる高分散シリカの総重量の5~30重量%、好ましくは10~20重量%、より好ましくは11~15重量%)上に機械化学的に固定し、そして
(c)高分散シリカの組成物中に含まれる高分散シリカの総重量の大部分(70~95重量%、好ましくは80~90重量%、より好ましくは85~89重量%)と、工程(b)および(b2)で得た産物、ならびに必要であれば、酸化亜鉛および/またはタンパク質分解酵素を、細かく分散した、視覚的に均質である粉末組成物を得るために十分な時間、混合する
工程が含まれる。工程(b)および(b2)を、任意の順序で連続して、または同時に行ってもよい。
【0134】
記載する経路には、産物の療法的有効性を改善することを可能にするいくつかの新規性が含まれる。まず第一に、疎水性シリカ上への陽イオン性表面活性剤の機械化学的固定は、シリカを疎水性から親水性に転換する。したがって、疎水性シリカは、滲出物から分離されず、そして創傷表面に付着する。次いで、シリカ粒子上への活性剤の機械化学的固定により、これらは、よりよく放出されることも可能であり、そしてその結果、活性剤の活性が増加する。これらの特性はどちらも明らかではなく、そして陽イオン性表面活性剤(抗微生物)および他の活性剤(抗微生物、回復、麻酔等)の既知の特性に基づいては予測不能であった。
【0135】
本発明の組成物を得る、より単純な方法(「薬学経路」)には、疎水性シリカ、高分散シリカ、および陽イオン性表面活性剤、ならびに随意にさらに、抗微生物物質、組織増殖活性を持つ物質、リドカイン、フェノチアジン誘導体、タンパク質分解酵素、および選択したその組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる剤を、細かく分散した、視覚的に均質である粉末組成物を得るために十分な時間、機械化学的に混合する工程が含まれる。
【0136】
本発明の好ましい態様にしたがって、方法には、(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、および塩化ベンザルコニウムを提供し、(b)ボールミル(45~90分間の混合時間、0.5~2回転/秒のドラム回転速度)または別のタイプのミルを用いて、疎水性シリカ上に塩化ベンザルコニウムを機械化学的に固定し;そして(c)工程(b)で得た産物と、高分散シリカを、ベーンを含む気密性高速ミキサー、すなわちブレードまたはパドルを含むミキサー中で、細かく分散した、視覚的に均質である粉末組成物を得るために十分な時間、例えば5~20分間、好ましくは約10分間、混合する工程が含まれる。
【0137】
本発明の第一の態様にしたがって、方法には、(a)高分散シリカ粒子、疎水性シリカ粒子、塩化ベンザルコニウム、ムピロシンおよびリドカインを提供し、(b)ボールミル(30~60分間の混合時間、0.5~2回転/秒のドラム回転速度)または別のタイプのミルを用いて、疎水性シリカ上に塩化ベンザルコニウムを機械化学的に固定し;(b2)ボールミル(30~60分間の混合時間、0.5~2回転/秒のドラム回転速度)または別のタイプのミルを用いて、高分散シリカの少量の部分上にムピロシンおよびリドカインを機械化学的に固定し;そして(c)工程(b)および(b2)で得た産物と、高分散シリカの大部分を、ベーンを含む気密性高速ミキサー中で、細かく分散した、視覚的に均質である粉末組成物を得るために十分な時間、混合する工程が含まれる。
【0138】
本発明の別の態様にしたがって、方法には、疎水性シリカ、高分散シリカ、デカメトキシン、メトロニダゾールおよび酸化亜鉛を、ベーンを含む気密性高速ミキサー中で、細かく分散した視覚的に均質である粉末組成物を得るために十分な時間、混合する工程が含まれる。高分散シリカおよび疎水性シリカ(すなわち吸着剤)の重量総計に基づいて、10~60重量%、より好ましくは25~50重量%の量で、エタノールまたは水を、混合前または混合中に添加した後、混合後に組成物を乾燥してもよい。
【0139】
直接抗微生物効果を伴わない組成物であっても、その迅速でそして確実な吸収により、微生物の病原性特性の有意な減少を導き、これはしたがって、化膿性創傷の局所治療における組成物の療法作用に関して、本発明の重要な成果を構成する。
【0140】
したがって、感染性病原体のタイプを考慮して、成分のタイプおよび量を変化させることによって、本発明の組成物の抗細菌活性域を広範囲に修飾してもよい。
提唱される組成物が多量に微生物および毒素を吸着する多目的特性を考慮すると、組成物は、創傷だけでなく、感染性病因を有する広範囲の疾患の治療に用いられてもよい。
【0141】
したがって、本発明の態様を、軟組織および内臓臓器の化膿性炎症性疾患を治療するために、ならびに以下の適用法によるヒトおよび動物の感染に用いてもよい:
-以下の型の1つにおける、創傷表面に対する組成物を含む薬学的調製物の適用-組成物を含む粉末、ゲル、軟膏、ペースト、および/または包帯または吸収パッケージ;
-直接またはドレナージの補助を伴う、懸濁物型を用いた内臓の洗い出しおよび/または灌注;
-液体型または錠剤型の組成物を含む薬学的調製物の経口使用;
-座薬型のおよび/またはプローブの補助を伴うおよび/またはガス注入による、組成物を含む薬学的調製物の直腸挿入;
-淋菌、トリコモナスおよび他の感染によって誘発された尿道炎を治癒させるための、組成物の懸濁物の尿道内(尿道を通じた)挿入。
【0142】
本発明記載の組成物の適用の配合および方法は広範囲で多様であってもよい。
例えば、上述の使用法に加えて、感染火傷表面の治療のための火傷学(combustiology)において、または腐敗性壊死性蜂窩織炎および顎顔面領域における水癌の治療のための顎顔面手術において、粉末を用いてもよい。
【0143】
唾液が創傷内に入るために合併症が生じる際の癌手術後の喉頭または咽喉頭摘出中に、粉末型の組成物を用いてもよい。直腸および大腸の疾患を治療する目的で、吸入器の補助で、粉末を直腸挿入してもよい(結腸吸収(colonosorption))。
【0144】
本発明の薬学的調製物を、アップリケとして(傷吸収(vulnerosorption))、直接または排出パイプ(drainpipe)を通じた腔の洗浄のために、経口で(腸吸収)、座薬の一種で直腸に、吸入器または排出パイプによって(結腸吸収)、そして内臓への容器を通じた送達等によって用いてもよい。
【0145】
1~4重量%の濃度の本発明の組成物の懸濁物型の薬学的調製物を、喉、口腔および/または歯の炎症性疾患中、リンスのために用いてもよい。直腸および大腸、腹腔臓器の炎症性疾患(例えば腹膜炎、腹腔内および膵臓由来膿瘍、膵臓壊死後の合併症、腹膜外蜂窩織炎)、子宮および子宮付属器、膀胱、胸膜、骨(骨髄炎)および他の内臓の炎症性疾患の治療のために、ドレナージ、プローブおよび/または任意の他の手段によって、組成物を挿入してもよい。泌尿器および性病治療においては、淋菌、トリコモナスおよび他の感染によって引き起こされる尿道炎を治癒させるため、組成物の懸濁物を、尿道内(尿道を通じて)挿入する。眼の前面の疾患の治療のため、点滴剤型の、組成物を含む薬学的調製物を用いてもよい。
【0146】
例えば、急性腸閉塞の外科治療中、腸の内転および外転部分を1~4%の懸濁物で洗い出しした後、透明な洗浄液(scourage)(リンス水)を得てもよい。腸の内転部分に吻合を課す前に、150~300mlの1~4%の組成物懸濁物を挿入して、そしてそこに放置してもよい。
【0147】
使用の別の方法は、手術中にセットされているドレナージを通じた組成物の懸濁物による術後洗い出しである。慢性骨髄炎の瘻孔型の治療のための外傷性手術において、1~4%の組成物懸濁物を瘻孔の外部孔に挿入して、炎症性変化の完全な除去を達成してもよい。
【0148】
組成物の懸濁物はまた、食中毒、急性腸閉塞および任意の他の病因、例えばウイルスによる中毒の治療中に、腸吸収材として経口で用いられてもよい。中毒の場合、1~3%の組成物懸濁物での胃および腸での洗い流しで、治療を開始し、その後、経口適用してもよい。
【0149】
皮膚の創傷および膿痂疹性疾患の局所治療のため、懸濁物よりも高い組成物濃度の薬学的調製物のソフトな型(ゲル、軟膏等)を用いてもよい。特に、ざ瘡の治療のため、薬学的調製物を組成物の15%水ゲルとして用いてもよい。顔における毛包炎および毛瘡、および/または化粧品の不合理な適用によって誘発される疾患の治療のため、軟膏型において、組成物を含む薬学的調製物を用いてもよい。
【0150】
痔疾、直腸炎、肛門直腸膿瘍、または肛門裂傷の治療のための肛門病学において、本発明の組成物を含む座薬の直腸挿入によって、薬学的調製物を用いてもよい。
また、婦人科手術を含んでもよい、手術の前および後の衛生、非特異的トリコモナスおよび真菌膣炎、膣炎、外陰炎、子宮炎、子宮傍組織炎、卵管炎のために、組成物を含む座薬を膣内に注入してもよい。
【0151】
錠剤および/または腸吸収剤型の組成物を含む、薬学的調製物を、咽頭炎、または扁桃炎の治療のために、あるいは歯肉炎および口内炎の場合は、口腔において分解されるための経口分解錠剤として、用いてもよい。
【0152】
例えば歯周炎に対する歯周組織の局所治療中の口腔病学において、適切な物質、例えば消毒溶液、チンキ剤およびハーブ抽出物と、本発明の組成物を混合することによって、即席で調製される薬学的調製物のペースト型を用いてもよい。得られるペーストを、歯科適用およびウルトラフォレシスに用いてもよい。
【0153】
粉末型および他の型の組成物を、送達またはその貯蔵寿命の延長のため、容器(カプセル)内部に入れてもよい。組成物を、ドレナージ包帯、硬膏剤および他の包帯手段に取り込んでもよい。
【0154】
薬学的調製物の上述の型を、必要な適切な賦形剤を添加することによって、即席で(懸濁物)ならびに工場産生によって(懸濁物、ゲル、軟膏、点滴剤、錠剤、容器、包帯等)産生してもよい。
【0155】
例えば、粉末組成物の懸濁物を即席で調製するため、組成物が完全に分散されるまで、組成物を、水または注射のためのI.V.液中に分散させてもよい。
軟膏を得るため、粉末組成物を、好ましくは親水性である軟膏基剤(例えば異なる分子量を持つPEG、プロキサノール、グリセリンおよびその他の混合物)中に分散させてもよい。
【0156】
ゼラチン、コラーゲン、デンプン、ペクチン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、セルロース誘導体および他のゲル形成ポリマーのヒドロゲル中に粉末組成物を分散させることによって、ゲル型を得てもよい。
【0157】
錠剤を得るため、顆粒化を行う前に、粉末組成物を、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドンおよび/または他の添加剤と混合してもよい。
カカオバター、グリセリンおよびゼラチンのアロイ、パラフィンおよびカカオバターまたは添加剤としての他の組み合わせ、ならびに必要であれば乳化剤を含む、溶融基剤中に粉末組成物を均一に分配することによって、座薬を得てもよい。
【0158】
粉末組成物の送達のための容器を、多孔不溶性または生物分解性材料(例えばゼラチン、ポリアクリル酸由来の誘導体および他の材料)から作製してもよい。外科包帯を作製するため、粉末組成物を織物素材内にプレスしてもよいし、または組成物を含む浸透可能パッケージ中に充填してもよいし、または適切なプロセスのための技術を用いることによってもよい。
【0159】
化膿性および壊死性創傷の局所治療において、本発明の組成物を用いてもよい。最新手術において、最も困難な問題の1つは、血液供給および神経支配が損なわれた状態における軟組織嫌気性感染ならびに非治癒性創傷および潰瘍の局所治療である。患者はしばしば、迅速な組織破壊、緩慢な創傷清浄化、ならびに感染性および炎症性プロセスの全身化(SIRS、敗血症)などの問題を有する。これらの問題の理由は、例えば微小循環障害(糖尿病性血管疾患、アテローム性動脈硬化症)、または免疫抑制(腫瘍学、化学療法、放射線療法等)でありうる。
【0160】
創傷治癒の第一相において、一般的に、創傷における感染の抑制、壊死組織の拒絶プロセスの活性化、および創傷液の排除とともに、微生物および組織崩壊の産物の吸収をターゲティングする薬剤を用いる。
【0161】
創傷滲出物、組織および微生物崩壊産物の吸収は、創傷治癒の第一相における創傷治療の主な目的の1つである。適用可能な吸収は、身体の吸収消毒の一種であり、これは創傷から毒素を除去することによって治癒を加速させる。
【0162】
創傷プロセスの第一相において、化膿性創傷の治療中、ナノサイズの吸着剤を含む本発明の組成物の利点は、これらがタンパク質、微生物、および毒素を不可逆的に吸収し;そして水を吸収する創傷表面によく効果を示すことである。したがって、体温で融解し、そして創傷腔の底まで流れ落ちる可能性があり、タンパク質および微生物を吸収不能であり、そして創傷滲出によって希釈されうる軟膏に比較して、本発明の組成物は、改善された特性を提供する。
【0163】
嫌気性感染および敗血症を併発した肛門直腸膿瘍患者の複雑な治療における、本発明の組成物の使用は、壊死組織からの迅速な創傷クレンジングのため、創傷治癒の第一相の期間を短縮し、創傷の微生物汚染を減少させ、入院期間および致死指標を減少させることを可能にする。
【0164】
特に、本発明の組成物を、腐敗性感染を併発した、急性骨盤直腸馬蹄型括約筋外膿瘍、骨盤直腸膿瘍、クライル手術後の創傷、仙椎領域の褥瘡、肩甲骨間領域の癰、踵骨領域の創傷、および糖尿病足症候群の治療に用いてもよい。
【0165】
さらに、本発明の組成物を、吸着剤が糞便の結合剤として作用しうる、感染性下痢の治療に用いてもよい。下痢の治療における組成物の作用は、微生物および毒素の除去により、主に、抗菌性である。したがって、組成物をカルバペネム耐性下痢の治療に用いてもよい。
【0166】
本発明の組成物をまた、MRSAによって引き起こされる感染、例えば肺炎の治療に用いてもよい。本発明の組成物を、医学的生理食塩水溶液中で希釈し、そして生じた調製物を、ネブライザーを用いて吸入することによって、肺炎を治療してもよい。
【0167】
本発明の組成物または薬学的調製物を、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性グラム陰性細菌、腸内細菌科(例えば大腸菌(escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニア(klebsiella pneumonia)、クレブシエラ・オキシトカ(klebsiella oxytoca)、エンテロバクター・クロアカ(enterobacter cloacae)、プロテウス・ミラビリス(proteus mirabilis)、モルガネラ・モルガニー(morganella morganii)、セラチア・マルセセンス(serratia marcescens)、シトロバクター・フレウンディー(citrobacter freundii))、および非発酵細菌(例えば緑膿菌、アシネトバクター・バウマニー(acinetobacter baumannii)、シュードモナス)によって引き起こされる感染の治療に用いてもよい。
【0168】
用語「粉末」は、本明細書において、そして別に定義されない限り、振盪させるかまたは傾けた際、自由に流動可能である、多数の非常に細かい粒子で構成される乾燥したバルクの固体を指す。粉末の粒子サイズは、好ましくは10~2,000nm、より好ましくは50~1,000nm、さらにより好ましくは100~500nmである。
【0169】
本発明にしたがって、粒子サイズは、粒子の体積同等直径、すなわち粒子と同じ体積を有する球体粒子の直径と定義される。粒子サイズは、光子相関分光法(PCS)によって測定可能である。PCSは、粒子サイズおよびその粒子サイズ分布(PSD)を測定するルーチンの方法である。通常、粒子の1つの正確なサイズのみを持つ理想的な粉末はない。したがって、本発明にしたがって、「100nm」などの明記される粒子サイズは、PSDから得られうる粒子の数平均サイズを意味する。
【0170】
用語「含む」は、本明細書において、そして別に定義されない限り、「本質的にからなる」の意味および「からなる」の意味を含むと理解されるものとする。したがって、用語「含む」はまた、狭い意味で「本質的にからなる」、またはさらにより狭い意味で「からなる」と理解されてもよい。用語「本質的にからなる」は、本明細書において、そして別に定義されない限り、組成物が、組成物の特性に影響を及ぼさないさらなる構成要素を含有してもよいことを意味し、ここで、好ましくは、さらなる随意の構成要素は、それぞれの組成物の総重量に関して、重量10%を超えない、好ましくは重量5%を超えない、より好ましくは重量2%を超えない、より好ましくは重量1%を超えない量で含有される。
【0171】
本発明において、一般用語としての物質、例えば「陽イオン性表面活性剤」に言及する場合、そしてこの一般用語が、明記する物質のリスト「からなる群より選択される」、例えば「エトニウム、デカメトキシン、オクテニジン二塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、ミラミスチン、およびその組み合わせからなる群より選択される」と言及される場合、本発明の組成物が、特に言及されているものを除いて、一般用語に属するいかなる他の物質も含有しないと理解されるものとする。
【0172】
用語「大部分」は、本明細書において、そして別に定義されない限り、「重量50%を超える」、好ましくは「少なくとも70重量%」を意味すると理解されるものとする。同様に、用語「少量の部分」は、本明細書において、そして別に定義されない限り、「重量50%未満」、好ましくは「重量70%を超えない」を意味する。
【0173】
本発明は、第三の側面において、以下の工程:
(a)疎水性シリカ粒子および陽イオン性表面活性剤を提供し;そして
(b)表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成し、
それによって粉末型の組成物を得る
を含む、粉末型の組成物を産生する方法を提供する。
【0174】
本発明の第三の側面の方法において、方法から得られうる組成物は、組成物総重量に基づいて:
90.0~99.9重量%の疎水性シリカ、および
0.1~10.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0175】
より好ましくは、本発明の第三の側面の方法から得られうる組成物は、組成物総重量に基づいて:
90.0~99.8重量%の疎水性シリカ、および
0.2~10.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0176】
さらにより好ましくは、本発明の第三の側面の方法から得られうる組成物は、組成物総重量に基づいて:
95.0~99.0重量%の疎水性シリカ、および
0.5~5.0重量%の陽イオン性表面活性剤
を含む。
【0177】
本発明の第三の側面において、表面上に陽イオン性表面活性剤を所持する一次疎水性シリカ粒子および/またはこれらの一次粒子の凝集体を形成する工程は、本発明の第一の側面と同じである。同様に、疎水性シリカおよび陽イオン性表面活性剤は、本発明の第一および第二の側面におけるものと同じである。これは、上述の本発明の第一および第二の側面のすべての好ましい、より好ましい、さらにより好ましい、最も好ましい、および特に好ましい態様に当てはまる。
【0178】
特に、工程(b)における一次粒子またはその凝集体の形成は、ベーンを含む気密性高速ミキサーを用いてそれぞれの構成要素を混合することによって達成されることが好ましい。最も好ましくは、工程(b)における一次粒子またはその凝集体の形成は、それぞれの構成要素をミリングすることによって達成される。どちらの場合でも、工程(b)は、好ましくは、
(i)ミリング前に、それぞれ、疎水性シリカの重量に基づいて、10~100重量%の量でエタノールおよび/または水を添加し;そして
(ii)ミリング後に組成物を乾燥させる
工程をさらに含む。
【0179】
本発明の第三の側面記載の上述の方法の好ましい態様において、陽イオン性表面活性剤は、工程(b)において、疎水性シリカ粒子上に機械化学的に固定される。機械化学的固定は、本発明の第一の側面に関して、上述する方法によって達成されてもよい。
【0180】
第四の側面において、本発明は、第三の側面記載の方法によって得られうる粉末型の組成物を提供する。第三の側面記載の方法によって得られうる粉末型の組成物は、本発明の第一の側面記載の方法の工程(b)において得られる産物に対応する。
【0181】
本発明は上記の好ましい態様に限定されず、そして多様な改変および修飾が当業者に知られるであろうことが明らかである。
【実施例
【0182】
実施例において、以下の物質を使用している。
登録商標Aerosil(登録商標)R 972 Pharmaで、Evonik Companyによってバッチ産物として供給される疎水性シリカ。登録商標Aerosil(登録商標)300でEvonik Companyによってバッチ産物として供給される高分散シリカ。陽イオン性表面活性剤として、欧州薬局方第9版にしたがって、塩化ベンザルコニウムを用いる。ゼラチンは、Aldrichより入手した。
【0183】
疎水性シリカ、高分散シリカおよび陽イオン性表面活性剤としての塩化ベンザルコニウムを含む組成物を調製するため、以下の主な装置が関与した:
ドラム体積の1/3を満たすミリング要素として磁製シリンダーを含む、10Lドラム体積のボールミル(SlavCeramic Ltd、ウクライナ・スラビャンスク)、
ベーンを含む高速ミキサー(4L体積)、および
200~250℃の最大温度の乾燥オーブン。
【0184】
加えて、ルーチンの小規模実験室装置を用い、この中には、200gまでの開放電子はかり、じょうご、スプーン、ビーカー、シリンダー等が含まれた。製造プロセスにやはり必要な他の材料は:蒸留水(ビン中で供給)、エタノール96%(欧州薬局方、第9版)、最終産物貯蔵用のプラスチックバルク容器(3L~5L体積)、およびツールの消毒のための液体手段(好ましくは塩化ベンザルコニウムを含有する)。
【0185】
疎水性(メタノール湿潤性)の度合い
滴定によって疎水性の度合いを決定する。0.2gの試料を250ml分離漏斗内に測り入れ、そして50mlの超純水を添加する。シリカは表面上に残る。次いで、メタノールをml単位でビュレットから添加する。添加中、液体中に渦が形成されないような方式で、手を円状に動かしながら分離じょうごを振盪する。この方式で、粉末が湿るまでメタノールを添加する。水表面下にすべての粉末が沈むことによって湿潤を認識する。消費されるメタノールの量をメタノールの重量%に変換し、そしてメタノール湿潤性の値として記述する。
【0186】
疎水性シリカの炭素含量
疎水性シリカ試料の炭素含量を、ISO 3262-20(第8章)にしたがって、酸素(純度99.9%またはそれより高い)中での燃焼を通じた試料中の炭素の酸化によって得て、そして生じたCOを赤外(IR)検出装置(例えば炭素決定系、LECOによるC632)によって測定する。
【0187】
BET特異的表面積
Brunauer、EmmettおよびTellerの方法(BET法)にしたがって物理的に吸着された気体の量を測定することによって、ISO9277にしたがってBET特異的表面積を決定する。生じた表面積は多点BET値であり、そしてm/gで示される。
【0188】
突き固め密度
突き固め密度を、ISO787-11にしたがって以下のように測定する:
試料ビンの底からスプーンを用いて試料を採取する。風袋を測ったシリンダー内に、じょうごを用いて粉末を入れ、200~250mlレベルまで充填し、空洞がなく、そして表面が水平であることを確認する。0.1gの正確さまで、シリンダーの総重量を測定する。シリンダーをTap-Pak体積測定装置に入れ、1250タップにセットし、そして装置を起動する。装置が止まったら、タップしたシリカの体積を、1mLまでの正確さまで測定する。以下の等式によって突き固め密度を計算する:
突き固め密度[g/L]=(試料重量[g])x1000/(試料体積[ml])
製造例
工程1において、150~200gのAerosil 300を、滅菌のため、オーブン中、180℃で30分間加熱した。冷却後、Aerosil 300を無菌プラスチックバルク容器に入れ、そして気密性に閉じた。
【0189】
工程2において、ボールミルの磁製ドラムおよびミリング装置をエタノール96%で消毒し、次いで蒸留水で洗浄し、そして乾燥させた。その後、4.28gの塩化ベンザルコニウムを20~30mlのエタノール96%に溶解した。150gのAerosil R972 Pharmaをドラム内に入れ、そして得たエタノール中の塩化ベンザルコニウム溶液を添加した。次いで、ボールミルのドラムを閉鎖し、そして内容物を1回転/秒の速度で60分間混合した。得た粉末を平面上、30~40℃の温度で乾燥させた。得た半製品を無菌プラスチックバルク容器内に入れ、そして気密性に閉じた。
【0190】
工程3において、高速ミキサーをエタノール96%で消毒し、次いで蒸留水で洗浄し、そして乾燥させた。工程1で得た100gの無菌Aerosil 300および工程2で得た半製品56.25gを、ベーンを含む気密性高速ミキサーに入れ、そして10分間攪拌した。粉末型の組成物を得た(産物P)。組成物成分の量を表1に提供する。
【0191】
製造例で使用する疎水性シリカAerosil R972 Pharmaは、約40~50重量%のメタノール湿潤性、0.6~1.2重量%の炭素含量、90~130m/gのBET特異的表面積、および約50g/Lの突き固め密度を示す。
【0192】
表1:製造例の組成物の成分量
【0193】
【表1】
【0194】
試験例:ゼラチンの吸着
25.0mlの新鮮に調製した、50ml水中のゼラチン0.3gの溶液を、100mlのすりガラス栓付き三角フラスコ中の製品P 0.200gに添加した。溶液を1時間よく振盪し、その後、20分間遠心分離して、そして上清液を、紙フィルターを通じて濾過した。5.0mlの濾液を、ビウレット試薬で25.0mlに希釈した。ゼラチン溶液(上記を参照されたい)をビウレット試薬で25.0mlまで希釈することによって、参照溶液を調製した。30分後、ブランク溶液に比較した、540~560nmの2つの溶液の吸光度(欧州薬局方、第9版、2.2.2)を、Specord M40、Carl Zeiss、ドイツ・イエナを用いて測定した。ブランク溶液を調製するため、水5.0mlをビウレット試薬で25.0mlに希釈した。
【0195】
1gの調製物あたりに吸着されるゼラチンの量を、以下の式から計算することも可能である:
【0196】
【化3】
【0197】
式中、A-参照溶液の吸光度;A-調べる溶液の吸光度;α-ゼラチン溶液1ml中のゼラチンのミリグラムでの質量;m-調べた調製物のグラムでの質量。
140mg未満ではないゼラチンが、製品P 1gあたりに吸着された。したがって、表1記載の組成物は、創傷ケア粉末として適切である。