(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】中電圧地中ケーブルシステムのための伝送ケーブルジョイント
(51)【国際特許分類】
H02G 15/117 20060101AFI20240419BHJP
H02H 9/08 20060101ALI20240419BHJP
H01F 38/30 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H02G15/117
H02H9/08
H01F38/30
(21)【出願番号】P 2021536417
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 FI2019050618
(87)【国際公開番号】W WO2020043955
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】521088435
【氏名又は名称】タンメルファスト オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サールニ、アッテ
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02753846(FR,A1)
【文献】特開平06-225449(JP,A)
【文献】特開平07-322487(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02881002(FR,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02530804(EP,A1)
【文献】特開昭62-031321(JP,A)
【文献】実開昭63-100918(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00-15/196
H02G 1/14
H02G 9/00
H01F 38/30
H02H 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中電圧地中ケーブルシステムのための伝送ケーブルジョイント(100)であって、少なくとも、
ケーシング(104)と、
接続端子(122a、122b、122c)と、を備え、
前記ケーシングが、前記ケーブルジョイントの部品(120、122a、122b、122c)を包含
するように構成され、
前記接続端子が前記ケーブルジョイントの前記部品に属し、前記接続端子が、ケーブルが互いに連結されるように、中電圧伝送ケーブル(101、102)のワイヤ(103a、103b、103c)を連結するように構成され、
前記ケーブルジョイントがさらに、前記連結されたケーブル(101、102)が静電容量地絡電流を生成したときにこうした電流を制限するために前記接続端子と接続されている、
前記ケーブルジョイントの部品に属するインダクタンス部品(120)を備えることを特徴とする、伝送ケーブルジョイント(100)。
【請求項2】
前記ケーシングが接地ポイント(126)として作用する
ように構成される、請求項1に記載のケーブルジョイント。
【請求項3】
前記インダクタンス部品が、前記ケーブルに並列に連結され、前記ケーシングへの内部接続(124)を有する、請求項1または2に記載のケーブルジョイント。
【請求項4】
前記インダクタンス部品が、その中性点側から前記ケーシングに接続されたZN変圧器(128)を備える、請求項3に記載のケーブルジョイント。
【請求項5】
前記ケーシングが、少なくとも前記接続端子、前記インダクタンス部品、および固体接続を包含する、請求項1~4のいずれか
一項に記載のケーブルジョイント。
【請求項6】
前記ケーシングが、ボルトフランジ(108)を有する二つのケーシング部品(106、107)を備え、前記ケーシング部品がボルトによって前記ボルトフランジを通して互いに取り付けられる、請求項1~5のいずれか
一項に記載のケーブルジョイント。
【請求項7】
前記ケーシングが、それに対して各中電圧伝送ケーブル(101、102)が連結されるケーブル開口部(114、115)と、各ケーブル開口部(114、115)のための防水シール(116)とを備える、請求項1~6のいずれか
一項に記載のケーブルジョイント。
【請求項8】
前記ケーシングが、可搬型ケーブルジョイントを運搬するための少なくとも一つのハンドルバー(118、119)を備える、請求項1~7のいずれか
一項に記載のケーブルジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は概して、中電圧地中ケーブルシステムのための伝送ケーブルジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
電力市場法は、架空電線路から地中の配線伝送路へと移行するトレンドにつながる、エネルギー配給の信頼性に関する配電会社に対するより厳しい要求の高まりを規定および管理している。
【0003】
地中配線には多くの利点があるものの、障害中に大幅に増大する地絡電流という一つの大きな欠点がある。地中ケーブルは従来の架空電線路と比較して、約40倍の静電容量地絡電流を生成するため、地中配線における地絡電流を制限するための補償部品およびシステムを開発することに対する要求がある。
【0004】
地絡電流を制限するための一つの解決法は、誘導電流が導電電流と反対の位相角のものである場合に、したがって、値が正しい場合にそれらがRCL回路において互いに打ち消しうる、調整可能なピーターセン(アーク抑制)コイルである。したがって、ピーターセンコイルは一般的に、ステーションにおける主変圧器の中性点に、またはアース変圧器、すなわち、ZN変圧器を通して人工中性点に接続される。
【0005】
しかしながら、その欠点は、このコイルが高価であり、そして適切に動作させるには、複雑な電子装置および調整システムを必要とする大きな部品であることである。これらの調整システムは、一般的に、SCADA(監視制御とデータ取得)制御アーキテクチャと互換性がある必要がある。
【0006】
さらなる欠点は、ピーターセンコイルは大きな熱損失を生成するため、別個のハウジングを必要とする可能性があることであり、これは当然、部品の総コストを増大させる。
【0007】
さらなる欠点は、一般的に、ブスバーにピーターセンコイルが一つだけ取り付けられるが、これは、部品をクリティカルにし、障害中の配電の信頼性を低下させ、危険なレベルの接地電圧のために、ステーション全体をリルートさせる必要があることである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一つの目的は、従来技術の欠点を取り除き、そして地中中電圧(MV)ケーブルシステムにおける地絡電流を制限して伝送路ケーブルを連結する、安価で単純な部品を提供することである。
【0009】
本発明の一つの目的は、独立請求項による伝送ケーブルジョイントによって遂行される。
【0010】
一つの実施形態は、少なくともケーシングと、伝送ケーブルのワイヤを連結するための接続端子とを備える、MV地中ケーブルシステムのための伝送ケーブルジョイントである。接続端子は、ケーシングによって遮蔽され、連結されたケーブルが静電容量地絡電流を生成するときにこうした電流を制限するインダクタンス部品と接続されている。
【0011】
さらなる実施形態は従属請求項に定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
実施形態は、以下の図面を参照して示される。
【0013】
【
図1a】
図1aは、上から見たケーブルジョイントを示す。
【
図1b】
図1bは、ケーブルジョイントの側面図を示す。
【
図1c】
図1cは、ケーブルジョイントの接続図を示す。
【
図2】
図2は、異なるMV伝送ケーブルの地絡電流を示している表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
現今、例えば、距離または障害物のために、ステーションから次の変圧器まで一つの連続的なケーブル101、102の穴を掘ることは不可能であることが多いため、MV伝送ケーブル101、102は、グリッド内のあらゆる場所で使用される従来技術の伝送ジョイントと一緒に連結される。
【0015】
図1aおよび1bは、MV伝送ケーブル101、102を互いに連結する可搬型伝送ケーブルジョイント100を示す。ケーブルジョイント100は、穴を掘って地中に取り付けるのに適しており、地中MV伝送路のケーブルシステムにおいてフィーダーケーブル101およびロードケーブル102を連結するのに使用される。
【0016】
MV伝送ケーブル101、102は、通常1~100kVケーブル、例えば、10、15、20、または30kVケーブルであり、それぞれケーブルワイヤ103a、103b、103cを備える。
【0017】
各ケーブル101、102は、一定の量の静電容量電流を生成するが、
図2の表は、10、15、20、および30kVのケーブル101、102のいくつかの典型的な値を示している。電流は、ケーブル101、102の構造により基本的にコンデンサとなっているため、静電容量である。
【0018】
ケーブルジョイント100は、その構造内に包含することによってケーブルジョイント100のその他の部品120、122a、122b、122c、124、128を遮蔽するケーシング(カスケット)104を備える。
【0019】
ケーシング104は、ボルトフランジ108を有する下部ケーシング部品106および上部ケーシング部品107を備える。ケーシング部品106、107の形状は、互いに取り付けられたケーシング部品106、107が、ケーシング104内部にその他の部品120、122a、122b、122c、124、128を配置することを可能にする空間110を形成するようなものである。ケーシング部品106、107の取り付けは、取り付け手段、例えば、ボルトまたはネジによって、ボルトフランジ108を通して実行される。
【0020】
各ケーシング部品106、107は、ケーシング部品106、107が互いに取り付けられたときに、これらのセクションが各ケーブル101、102を連結させるためのケーブル開口部114、115を両端部112、113に形成するようなセクションをその両端112、113に有する。各開口部114、115は、ケーブル101、102の接続が遮蔽されるように、ケーブル101、102がそれを通してケーシング104内部の空間110の中に突出することを可能にする。開口部114、115は、防水シール116によってシールされると同時に、ケーシング構造をシールするために、ケーシング部品106、107の間に別の防水シールが形成される。
【0021】
ケーシング104は可搬型であるため、そのような測定値、すなわち、一人または二人で運搬することができる寸法および重量を有する。したがって、ケーシング104は、少なくとも一つのハンドルバー118、119、例えば、ハンドルバー118が端部112または113にある、または端部112に一つのハンドルバー118、および端部113に一つのハンドルバー119が存在するような、一つまたは二つのハンドルバー118、119を装備する。
【0022】
ケーブルジョイント100はまた、連結されたケーブル101、102が障害中に静電容量地絡電流を生成するときにこうした電流を制限(最小化)するためのインダクタンス(MV)部品120と、ケーブル101、102のワイヤ103a、103b、103cを連結するための接続端子(ポイント)122a、122b、122cとを備える。
【0023】
これらの部品120、122a、122b、122cは、それらがケーシング104によって遮蔽されるように、ケーシング104内部の空間110内に配置される。接続端子122a、122b、122cは、ケーブル101、102と並列に連結されたインダクタンス部品120と接続している。
【0024】
ステーション/フィーダーからのケーブル(配線)101は、ケーブル102がロードを続けるとき、一次(フィーダー)側接続端子122a、122b、122cに接続される。
図1a~1cによると、各ケーブル101、102のワイヤ103a、103b、103cは、フィーダー側およびロード側の両方でそれぞれ、ワイヤ103aが端子122aに接続され、ワイヤ103bが端子122bに接続され、ワイヤ103cが端子122cに接続されるように接続される。
【0025】
インダクタンス部品120は、地絡電流を制限するインダクタンスとして作用するケーシング104への内部固体接続124、および接地ポイント126を有する。接続124ならびに少なくとも部品120、122a、122b、122cは、ケーシング104によって包含される。
【0026】
図1cは、インダクタンス部品120がどのように、巻線129を含むZN変圧器128を備えるかを示しており、ZN変圧器は、その中性点側からケーシング104に接続されている。
【0027】
ケーブルジョイント100は剛性であり、そしてケーブルジョイント100は地中で遮蔽されるため、天候および外部による影響を受けない。
【0028】
ケーブルスケールにおいて導電電流を除去する場合は正確であり、かつ比較的スケールが簡単であり、例えば、静電容量電流制限能力を
図2の表中の地絡電流値と比較するだけである。
【0029】
ケーブルジョイント100は、その単純な構造のために、オートメーション、さらなる測定装置、スケーリング後の調整、または特殊な取り付け訓練を必要としない。
【0030】
従来技術の伝送ジョイントは、インダクタンスを電線路に移動させて障害電流の静電容量部品を補償する、補償タイプのケーブルジョイント100と置換される。ZN変圧器128は、非常に小さいため、例えば、二人の人間が取り扱うことができ、例えば、20kVのケーブル101、102への接続には約2時間かかる。ケーブルジョイント100は、ケーブルジョイントとして、そして同時に補償ユニットして機能し、測定後に地中に埋められうる(コンクリート遮蔽によってもよい)。
【0031】
これに比較して、各ケーブル101、102が補償ユニットを有する場合、障害はその特定のフィーダーのみに影響を及ぼす。また、ステーション全体ではなく、ケーブル101、102の補償を対象としているためステーションは常に補償され、またケーブルジョイント100の配置に応じて、発生する障害はエネルギー配給に全く影響を及ぼさない可能性がある。
【0032】
ケーブルジョイント100は、障害中の静電容量地絡電流を制限し、ピーターセンコイルなどの高価なシステムを用いることなく、規定に従った安全な使用を可能にする。