(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用複合分離膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240419BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240419BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240419BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240419BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20240419BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240419BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240419BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240419BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20240419BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/443 M
H01M50/403 D
H01M50/446
H01M50/411
(21)【出願番号】P 2022512776
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 KR2020011233
(87)【国際公開番号】W WO2021034159
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0102872
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522070514
【氏名又は名称】ジー‐マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】G‐MATERIALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】#703, 649, ORI‐RO, GWANGMYEONG‐SI, GYEONGGI‐DO 14303, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イム,チャン・スプ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ギョン・ナン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,スン・ヨン
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235601(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/099149(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169845(WO,A1)
【文献】特表2016-521433(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108987649(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0308565(US,A1)
【文献】国際公開第2008/029922(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
C08J 9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材、
無機物を含有して前記多孔性高分子基材の上面に形成される耐熱コーティング層、前記多孔性高分子基材と耐熱コーティング層を接着させるためのバインダー;および
界面活性剤を含み、
前記バインダーは、有機-無機複合ゾル
および改造された有機高分
子を含
み、
前記改造された有機高分子は、有機高分子をマレイン酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸などカルボン酸と反応させて生成されたものとこの改造された有機高分子にナノサイズのシリカ、ベーマイトなど無機物を反応させたハイブリッドゾルを含むことを特徴とするリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項2】
前記バインダーは、無機物100重量部に対して1~10重量部で使用されることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項3】
前記有機高分子は、ポリビニルアルコール(PVA)、またはポリエチレングリコール(PEG)であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項4】
有機高分子100重量部に対するカルボン酸は5~30であり、改造された有機高分子100重量部に対する無機物は1~20であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項5】
前記有機高分子と有機-無機複合ゾルは1:0.5~2の重量比で混合されることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項6】
前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤であり、無機物100重量部に対して0.1~5重量部で含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項7】
前記非イオン性界面活性剤は、フッ素系、またはシロキサン系のうちの1種以上を含むことを特徴とする、請求項
6に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項8】
前記多孔性高分子基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエチレンナフタレンからなる群より選択された1種であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項9】
前記耐熱コーティング層を形成する無機物は、ベーマイト、チタン酸バリウム、アルミナ、シリカ、ジルコニアおよび酸化チタンからなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項10】
前記無機物は、平均粒径が30~500nmである大きい粒子と4~20nmである小さい粒子が1:0~0.3の重量比で混合されることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用複合分離膜。
【請求項11】
(A)無機物粉末を蒸留水に分散させ
て分散物を得る段階;
(B)前記分散物にバインダーを添加して攪拌することによって混合物を製造する段階;
(C)前記混合物に界面活性剤を添加してコーティング用スラリーを製造する段階;および
(D)多孔性高分子基材に前記コーティング用スラリーをコーティングさせた後、室温で乾燥した後、高温乾燥して耐熱コーティング層を形成する段階;を含み、
前記バインダーは、有機-無機複合ゾル
および改造された有機高分
子を含
み、
前記改造された有機高分子は、有機高分子をマレイン酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸などカルボン酸と反応させて生成されたものとこの改造された有機高分子にナノサイズのシリカ、ベーマイトなど無機物を反応させたハイブリッドゾルを含むことを特徴とするリチウム二次電池用複合分離膜の製造方法。
【請求項12】
前記(A)段階で無機物の濃度は5~45重量%であることを特徴とする、請求項
11に記載のリチウム二次電池用複合分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い通気度および低い熱収縮率を示すリチウム二次電池用複合分離膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近は二次電池の高容量、高出力の傾向に合わせて分離膜の高強度、高透過度、熱的安定性および充放電時の二次電池の電気的安全性のための分離膜の特性向上に対する要求が一層高まっている。
【0003】
リチウム二次電池の場合、電池製造過程と使用中の安全性向上のために高い機械的強度が要求され、容量および出力向上のために高い通気性および高い熱安定性が要求される。例えば、二次電池の分離膜において熱安定の問題は非常に重要であるが、分離膜の熱安定性が低下すれば、電池内の温度上昇により発生する分離膜の損傷あるいは変形による電極間短絡が発生することがあり、電池の過熱あるいは火災の危険性が増加する。また二次電池の活用範囲がハイブリッド用自動車などへ拡大しつつ、過充電による電池の安全性確保が重要な要求事項になっており、過充電による発熱で分離膜が収縮して短絡につながることを防止するために分離膜の高耐熱性が要求されている。
【0004】
このような特性と関連して両極間の短絡を防止する分離膜の役割が重要視されている。これによって、分離膜の低い熱収縮、高い穿孔強度などの特性が要求され、その他にも高容量および高出力電池への発展により継続して優れた通気性と薄い厚さが要求されている。
【0005】
このような二次電池において一般に使用される分離膜は、ポリオレフィン系高分子フィルムである。前記ポリオレフィン分離膜は、高温で熱収縮が激しく、機械的強度がぜい弱であるため、電池の温度が急激に上がる場合、分離膜の周縁が収縮して正極と負極が互いに当接するようになって短絡が発生することによって発熱、発火、爆発につながることがある。
【0006】
電池の安全性改善のための最も簡単な方法として分離膜の厚さを増加させる方法があるが、分離膜の厚さ増加により機械的強度などが向上する反面、電池容量および出力が低下し、電池の小型化にも適さない。
【0007】
このような短所を補完するために、多孔性ポリエチレン基材に無機酸化物、主にアルミナのコーティング層を被覆して耐熱性と機械的強度を高める方法が使用されている。前記方法にはアルミナ粉末を少量のポリビニルアルコール(PVA)のような有機バインダーを使用して基材にコーティング層を作った後、基材との接着力を向上させるために原子層蒸着法(<20nm)でナノサイズのアルミナを被覆する方法(大韓民国公開特許第10-2016-134046号)が開示されており、耐熱層上に接着層(PMMA)を積層させる方法も開示されている(大韓民国公開特許第10-2016-0109669号)。
【0008】
反面、無機物粒子を互いに連結させ、PE基材に接着させるための高耐熱性有機バインダーに対する開発研究が多く行われているが、PVDFのような高耐熱性の高分子をアセトンのような有機溶媒に溶かした後、アルミナ粉末と混合してPE基材にコーティングする方法(大韓民国公開特許第10-2017-0016904号)、水系としてはPVA、アクリル系、セルロース系、ラテックス系バインダーのうちの一部を混合したバインダーを利用したアルミナスラリーを多孔性PE基材にコーティングする方法(大韓民国公開特許第10-2017-0116817号)、およびPEワックス、PVDFエマルジョン、高分子ビードを添加して物性を向上させる方法(大韓民国登録特許第10-1838654号)が開示されている。
【0009】
近年は分離膜の厚さを減らし、気孔度を高めるためにアルミナの代わりに板状のベーマイトを使用する研究が行われているが、前記ベーマイトはアルミナより比重と硬度が低いため、破損の危険が少ないという利点がある。
【0010】
したがって、アルミナの代わりにベーマイトを使用して通気性が高く、熱収縮が低い分離膜が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0134046号公報
【文献】韓国公開特許第10-2016-0109669号公報
【文献】韓国公開特許第10-2017-0016904号公報
【文献】韓国公開特許第10-2017-0116817号公報
【文献】韓国登録特許第10-1838654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高い通気度および低い熱収縮率を示すリチウム二次電池用複合分離膜を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、前記リチウム二次電池用複合分離膜を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための本発明のリチウム二次電池用複合分離膜は、多孔性高分子基材;無機物を含有して前記多孔性高分子基材の上面に形成される耐熱コーティング層;および前記多孔性高分子基材と耐熱コーティング層を接着させるための、有機-無機複合ゾルと有機高分子が混合された複合バインダー、または有機高分子バインダー、ぬれ性と接着力を向上させる界面活性剤;を含むことができる。
【0015】
前記バインダーは、無機物100重量部に対して1~10重量部で使用され得る。
【0016】
前記複合バインダーを構成する有機-無機複合ゾルと有機高分子は1:0.1~2の重量比に混合され得る。
【0017】
前記有機-無機複合ゾルは、(a)ベーマイト粉末を蒸留水に分散後、酸を添加して攪拌することによってアルミナゾルを形成する段階;(b)前記形成されたアルミナゾルとエポキシシランを混合して加熱させた後、アルキルシランを混合して加熱させる段階;および(c)前記加熱された混合物を冷ました後、室温でイットリウム塩を添加して攪拌することによって有機-無機複合ゾルを形成する段階;を含む過程を通じて製造され得る。
【0018】
前記有機高分子は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアルコール/マレイン酸(PVA/MA;PM)、PMを少量のナノシリカまたはアルミナでハイブリッドしたものであって、それぞれPMs、PMaと称するゾル、またはポリエチレングリコール(PEG)であり得る。
【0019】
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であり、無機物100重量部に対して0.1~5重量部を含む。
【0020】
前記多孔性高分子基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエチレンナフタレンからなる群より選択された1種であり得る。
【0021】
前記耐熱コーティング層を形成する無機物は、ベーマイト、チタン酸バリウム、アルミナ、シリカ、ジルコニアおよび酸化チタンからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0022】
前記無機物の平均粒径は、4~500nmであり得、好ましくは平均粒径が30~500nmである大きい粒子と4~20nmである小さい粒子が1:0.05~0.3の重量比で混合され得る。
【0023】
前記耐熱コーティング層の厚さは0.5~10μmであり得る。
【0024】
また、本発明の他の目的を達成するための本発明のリチウム二次電池用複合分離膜を製造する方法は、(A)無機物粉末を蒸留水に分散させる段階;(B)前記分散物にバインダーを添加して攪拌することによって混合物を製造する段階;(C)前記混合物に界面活性剤を添加してコーティング用スラリーを製造する段階;および(D)多孔性高分子基材に前記コーティング用スラリーをコーティングさせた後、室温で乾燥した後、高温乾燥して複合膜を形成する段階;を含むことができる。
【0025】
前記(A)段階で無機物の濃度は5~45重量%であり得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明のリチウム二次電池用複合分離膜は、有機-無機複合ゾルと有機高分子が混合された複合バインダー、または有機高分子バインダーを非イオン性界面活性剤と共に使用することによって高い通気度および低い熱収縮率を示す。なお、バインダーとして使用される有機高分子の含有量が少なくて電気抵抗の増加が小さくなり、有機-無機複合ゾルの乾燥時に生成される微細気孔が通気度および表面積を増加させて電解質の含浸に役立つ。
【0027】
また、粒度が大きい粉末と小さい粉末を適切な比率で混合して使用すれば低いスラリー濃度でも優れた特性を得ることができ、少量の非イオン性界面活性剤の使用によりぬれ性、接着力、耐熱性の向上に役立つことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例2により製造された複合分離膜の表面をSEMで撮影した写真である。
【
図2】本発明の実施例6により製造された複合分離膜の表面をSEMで撮影した写真である。
【
図3】本発明の実施例2、実施例4および実施例5の電池サイクル特性をセルガード2400分離膜を使用したものの特性と比較したグラフである。
【
図4】本発明の実施例15により製造された複合分離膜の表面をSEMで撮影した写真である。
【
図5】本発明の実施例16により製造された複合分離膜の表面をSEMで撮影した写真である。
【
図6】本発明の実施例11、実施例14および実施例15の電池サイクル特性をセルガード2400分離膜を使用したものの特性と比較したグラフである。
【
図7】本発明の実施例16、実施例17および実施例18の電池サイクル特性をセルガード2400分離膜を使用したものの特性と比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、高い通気度および低い熱収縮率を示すリチウム二次電池用複合分離膜およびその製造方法に関する。
【0030】
従来の複合分離膜は、有機高分子のみをバインダーとして使用して無機物をコーティング層として形成したが、このように製造された複合分離膜は、バインダーとして有機高分子またはエマルジョンを使用することによって通気度が悪くなり、二次電池の電気抵抗を増加させるという問題がある。
【0031】
本発明では、有機-無機複合ゾルと有機高分子と共に使用した複合バインダーを使用することで有機高分子の含有量が減ることによって前記のような問題点を解決した。
【0032】
また本発明では、水溶性有機高分子バインダーが有する水分に不安定な短所を改善するために改造した;PVAとマレイン酸を反応させたPM溶液、このPM溶液のコーティング接着力と耐水分性を強化させるために、ナノサイズのシリカ、またはベーマイトとのハイブリッドゾルで製造してそれぞれPMs、PMaと称して導入した。この改造された有機高分子バインダーも有機高分子の含有量が減ったものであって、前記のような問題点を解決した。
【0033】
本発明では、適正な界面活性剤を導入することによってバインダーの耐熱性および接着性を大幅に向上させることができた。
【0034】
発明の実施のための形態
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリチウム二次電池用複合分離膜は、多孔性高分子基材、無機物を含有して前記多孔性高分子基材の上面に形成される耐熱コーティング層、および前記多孔性高分子基材と耐熱コーティング層を接着させるために有機-無機複合ゾルと有機高分子が混合された複合バインダー、または有機高分子バインダー、および非イオン性界面活性剤を含む。
【0035】
バインダー
前記バインダーは、有機-無機複合ゾルと有機高分子が混合された複合バインダーと有機高分子バインダーを称する。
【0036】
前記複合バインダーは、乾燥後に水分に溶けず、耐熱コーティング層を形成する無機物と多孔性高分子基材を優れた接着力で結合させ、これによって高い通気度および高耐熱性を有する耐熱コーティング層が形成された複合分離膜を提供するものであって、無機物100重量部に対して1~10重量部、好ましくは2~6重量部で使用される。
【0037】
複合バインダーの含有量が前記好ましい範囲の下限値未満である場合には、接着力が低下し、高温で熱収縮率が低くないこともあり、前記上限値超過である場合には、気孔を埋めて通気度が悪くなり、熱収縮率も大いに低くならないことがあり、電気抵抗が増えて好ましくない。
【0038】
本発明のバインダーは、非イオン性界面活性剤が必須の添加剤として添加された時に耐熱性が増加することを示す。
【0039】
本発明に使用される有機高分子バインダーは、柔軟性と接着力を向上させるものであって、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアルコール/マレイン酸(PVA/MA;PM)またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。水溶性であるPVAは、水分に敏感であるため、このようなぜい弱性を改善するために、マレイン酸と反応させて製造した溶液は乾燥時にPVAに比べて耐湿性が大幅に向上することをみることができる。この時、PVAとMAの重量比は1:0.1~0.4が好ましい。この範囲を逸脱すれば耐湿性が弱いか不透明であり、不均一な膜を形成する。このPMバインダーの耐湿性を高めるために、ナノサイズのシリカ、ベーマイトと反応させてハイブリッドゾルを製造してそれぞれPMs、PMaと称した。PMsやPMaバインダーは、乾燥時に水に溶けない膜を形成する長所があり、高耐湿性を提供する。この改造されたPMs、PMaの製造時に使用されるナノ無機物の量は、PMに対して0.01~0.2重量比である。前記下限値より低ければ耐湿性が落ち、前記上限値より高ければ反応しなかったナノ粒子が沈殿で落ちて均一な膜を形成することができない。マレイン酸以外にPVAと反応できるクエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸などジカルボン酸群より選択された1種以上が挙げられる。
【0040】
前記有機高分子バインダーと複合バインダーは1:0~5の重量比、好ましくは1:0~3の重量比で混合される。有機高分子バインダーを基準として複合ゾルの含有量が前記好ましい範囲を満足しない場合には通気度および耐熱性が共に低下することがある。
【0041】
前記複合バインダーは、多孔性高分子基材と無機物の接着力を向上させ、乾燥後に水分に敏感でないようにし、有機高分子バインダーと共に使用時に高い通気度および高耐熱性を有する耐熱コーティング層が形成された複合分離膜を形成させることができる。
【0042】
前記有機-無機複合ゾルは、(a)ベーマイト粉末を蒸留水に分散後、酸を添加して攪拌することによってアルミナゾルを形成する段階;(b)前記形成されたアルミナゾルとエポキシシランを混合して加熱させた後、アルキルシランを混合して加熱させる段階;および(c)前記加熱された混合物を冷ました後、室温でイットリウム塩を添加して攪拌することによって有機-無機複合ゾルを形成する段階;を含む過程を通じて製造される。
【0043】
前記(a)段階では、ベーマイト粉末を蒸留水に分散後、酸を添加して室温(23~27℃)で3~10時間攪拌してアルミナゾルを形成するか、または50~80℃で加熱して反応時間を短縮することができる。
【0044】
前記酸は、ベーマイト粉末100重量部に対して5~20重量部で添加されて前記ベーマイト粉末をペプタイズさせるものであって、酸の含有量が前記範囲を逸脱する場合には適したアルミナゾルが形成されないことがある。
【0045】
前記酸は、ベーマイト粉末をペプタイズさせることができるものであれば特に限定されないが、好ましくは硝酸、酢酸、塩酸、リン酸、ギ酸および有機酸からなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0046】
前記ベーマイト粉末と酸を混合して攪拌時、温度および時間が前記下限値未満である場合には望むアルミナゾルを形成することができないが、前記上限値超過である場合には沈殿が発生するアルミナゾルに変性され得る。適切に製造されたアルミナゾルは安定しており、チキソトロピーを有する。
【0047】
前記(b)段階では、前記形成されたアルミナゾルとエポキシシランを酸(酸溶液)で混合して50~80℃で2~5時間加熱させた後、同一の温度でアルキルシランを混合してさらに3~4時間加熱させる。
【0048】
エポキシシラン100重量部に対してアルミナゾルをベーマイト10~40重量部で酸で混合した後に加熱させて反応を行う。前記範囲を逸脱する場合には接着力が弱く、乾燥時に透明な膜が形成されないことがある。
【0049】
前記エポキシシランとしては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、GPS)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)またはメルカプトプロピルトリメトキシシラン(McPTMS)が挙げられる。
【0050】
また、前記酸は、エポキシシラン100重量部に対して0.5~3重量部で添加され、使用する酸の種類と量により生成されるアルミナ-エポキシシランゾルの粘度、pH、接着力、チキソトロピーが変わる。
【0051】
前記アルミナゾルとエポキシシランの反応時、温度および時間が前記範囲を逸脱する場合にもまたアルミナ-エポキシシランゾルの粘度とpH、接着力、チキソトロピーが変わる。
【0052】
前記アルキルシランは、有機-無機複合ゾルの粘度、接着力を向上させるために使用されるものであって、アルミナ-エポキシシランゾル100重量部に対して3~8重量部で混合される。アルキルシランの含有量が前記範囲を逸脱する場合には有機-無機複合ゾルの接着力が向上できないこともある。
【0053】
前記アルキルシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランおよび3-(メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシランからなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0054】
前記アルキルシランを添加後、反応温度および時間が前記範囲を逸脱する場合にもまた有機-無機複合ゾルの粘度、pH、接着力、チキソトロピーが変わる。
【0055】
前記(c)段階では、前記加熱された混合物を攪拌しながら徐々に冷ました後、室温でイットリウム塩を添加して改質することによって接着力をより向上させ、安定した有機-無機複合ゾルが形成される。
【0056】
本発明で添加剤としては、耐熱性向上のために非イオン性界面活性剤を無機物100重量部に対して0.1~5重量部、好ましくは0.1~2.5重量部で使用する。非イオン性界面活性剤の含有量が前記好ましい範囲の下限値未満である場合には耐熱性が向上できないことがあり、前記上限値超過である場合には通気度の低下を誘発することがある。
【0057】
前記非イオン性界面活性剤としては、ジエチレングリコールペルフルオロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールペルフルオロペンチルエーテル、ジエチレングリコールペルフルオロブチルエーテル、ジエチレングリコールペルフルオロプロピルエーテル、ジエチレングリコールペルフルオロエチルエーテル、トリエチレングリコールペルフルオロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールペルフルオロペンチルエーテル、トリエチレングリコールペルフルオロブチルエーテルおよびトリエチレングリコールペルフルオロプロピルエーテルからなる群より選択されたフッ素系非イオン性界面活性剤;またはジメチルシロキサン、メチルセチルオキシシロキサン、オクチルトリメチルシロキサンおよびドデカメチルシクロシロキサンからなる群より選択されたポリシロキサン系非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0058】
耐熱コーティング層
本発明の耐熱コーティング層は、無機物で製造された層であって、二次電池内で化学的、電気的に安定した無機物を使用する。
【0059】
前記無機物の平均粒径は4~500nm、好ましくは4~100nmであり、より好ましくは平均粒径が30~500nmである大きい粒子と4~20nmである小さい粒子が1:0.05~0.3重量比で混合したものである。
【0060】
大きい粒子と小さい粒子の混合比が前記範囲を逸脱する場合には通気度が低くなり、熱収縮率が高くなる。
【0061】
また、無機物の平均粒径が前記好ましい範囲の下限値未満である場合には熱収縮率が低くなるが、通気度が大幅に低下することがあり、前記上限値超過である場合には通気度は良くなるが、粒子が大きくて接着力が弱くなり、熱収縮率が低下することがある。
【0062】
本発明で使用した無機物としては、ベーマイト、アルミナ、シリカ、チタン酸バリウム、ジルコニアおよび酸化チタンからなる群より選択された1種以上が挙げられ、好ましくは低い積層高さと、配列と積層による小さい気孔が多く形成され得る数十nmサイズの板状型ベーマイトが挙げられる。
【0063】
前記耐熱コーティング層の厚さは0.3~10μm、好ましくは0.5~5μmである。耐熱コーティング層の厚さが前記好ましい範囲の下限値未満である場合には望む効果を発揮することができず、前記上限値超過である場合にはイオン伝導度が低くなって電池容量が小さくなる。
【0064】
前記耐熱コーティング層を形成する方法は、ディップコーティング、バーコーティング、グラビアコーティング、スリットコーティングなどの通常の方法を使用することができる。
【0065】
多孔性高分子基材
本発明で使用した多孔性高分子基材は、気孔率が30~60%である多孔性延伸フィルムであって、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィドおよびポリエチレンナフタレンからなる群より選択された1種が挙げられる。
【0066】
また、本発明は、リチウム二次電池用複合分離膜を製造する方法を提供することができる。
【0067】
本発明のリチウム二次電池用複合分離膜を製造する方法は、(A)無機物粉末を蒸留水に分散させる段階;(B)前記分散物にバインダーを添加しながら攪拌して混合物を製造する段階;(C)前記混合物に界面活性剤を添加してスラリーを製造する段階;および(D)多孔性高分子基材に前記スラリーをコーティングさせた後、室温で乾燥した後、90~110℃の高温で乾燥して複合分離膜を形成する段階;を含む。
【0068】
前記(A)段階で蒸留水に分散した無機物の濃度は5~45重量%、好ましくは10~35重量%であり、無機物の濃度が前記好ましい範囲の下限値未満である場合には熱収縮率が低下することがあり、前記上限値超過である場合にはコーティングが均一に行われず、性能が低下することがある。
【0069】
特に、スラリー内の無機物濃度が10~40重量%、好ましくは10~35重量%である場合には通気度が高く、低い熱収縮を示す。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者に明白であり、このような変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0071】
製造例1.有機-無機複合ゾルの製造
アルミナゾルは、ベーマイト粉末30gを蒸留水260mlに攪拌しながら添加してスラリーを製造した後、酢酸3.3gを添加して室温で1時間攪拌した後、70℃で加熱して2時間反応させた後、室温で冷ました後、全体重量が300gになるように蒸留水を添加して10重量部のアルミナゾルを合成した。
【0072】
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)130gに5重量%酢酸容液39gを添加しながら室温で1時間攪拌した後、70℃で加熱しながら前記製造されたアルミナゾル377.2gを添加して4時間加熱させた。反応が終了すると5重量%酢酸容液2.71gを添加した後、加熱しながらメチルトリエトキシシラン21.79gを滴下添加し、さらに4時間加熱した。前記加熱された混合物を常温で冷ました後、Y(NO3)3・6H2O 2.74gを添加して攪拌することによって有機-無機複合ゾルを製造した。
【0073】
製造例2.有機高分子バインダーPM(PVA/MA)の製造
PVA(鹸化度>88%、平均分子量<200,000)粉末を蒸留水に5~10重量%になるように分散した後、約90℃で加熱して透明な溶液を製造する。このPVA溶液にマレイン酸を重量比で8:2になるように添加した後、加熱して澄んだ溶液(PM)を製造した。
【0074】
このPM溶液にエタノールに薄めたTEOS(tetraethoxysilane)をPVA量に対してシリカで5または10重量%になるように添加してシリカが分散されたPMs溶液を製造した。
【0075】
TEOSの代わりに約4、5nmのベーマイト粉末を10重量%になるように使用してPMa溶液を製造した。
【0076】
実施例1.
蒸留水にベーマイト(Dispal 10F-4、Sasol、平均粒径40nm)粉末を徐々に添加しながら分散させた後、前記製造例1で製造された有機-無機複合ゾルを添加して室温で60分間攪拌した後、PVAを添加して攪拌混合して耐熱コーティング層用スラリーを製造した。前記スラリーに9μm厚さの多孔性PE基材を浸漬させた後、前記PEフィルムが二つのガラス棒の間を通過しながら引き上げられる方法でコーティングした後、室温で30分以上乾燥した後、90℃オーブンでさらに30分乾燥されて高分子基材上面に耐熱コーティング層が形成された複合分離膜を製造した。
【0077】
実施例2~5.界面活性剤の使用
前記実施例1と同様に実施するが、耐熱コーティング層用スラリーにフッ素系非イオン性界面活性剤を添加して複合分離膜を製造した。実施例2により製造された複合分離膜をSEMで撮影した(
図1)。
【0078】
実施例6.ベーマイト分散液の使用
前記実施例2と同様に実施するが、ベーマイト粉末の代わりにベーマイト分散液(20重量% alumina dispersion、平均粒度20nm、Condea)を使用して製造された複合分離膜をSEMで撮影した(
図2)。
【0079】
実施例7~8.ベーマイト粉末の粒子サイズによる混合
前記実施例2と同様に実施するが、平均粒径が40nmであるベーマイト粉末と平均粒径が20nmであるベーマイト分散液を混合して使用することによって複合分離膜を製造した。
【0080】
実施例9.ベーマイト粉末の粒子サイズによる混合
前記実施例2と同様に実施するが、平均粒径が40nmであるベーマイト粉末と平均粒径が4.5nmであるベーマイト粉末を混合して使用することによって複合分離膜を製造した。
【0081】
実施例10~11.反応温度の影響
前記実施例2と同様に実施して製造した実施例10の耐熱コーティング層用スラリーと、このスラリーを約70℃で17時間攪拌した実施例11のスラリーを使用して複合分離膜を製造した。
【0082】
実施例12~15.有機-無機複合ゾルとPVAの代わりに有機高分子バインダーPMを使用
前記実施例10でPVAの代わりに製造例2のPMを使用したことを除いては同様に実施して複合分離膜を製造した。実施例12は比較のために界面活性剤を使用しなかった。実施例15により製造された複合分離膜をSEMで撮影した(
図4)。
【0083】
実施例16~18.バインダーとして有機高分子バインダーPMのみを使用
前記実施例10で有機-無機複合ゾルは使用せず、有機バインダーPVAの代わりに製造例2の有機高分子バインダーPMのみを使用したことを除いては同様に実施して複合分離膜を製造した。実施例16により製造された複合分離膜をSEMで撮影した(
図5)。
【0084】
比較例1.バインダーとして有機-無機複合ゾルバインダーのみを使用
前記実施例2と同様に実施するが、耐熱コーティング層用スラリーを製造時にPVAを使用せず、有機-無機複合ゾルのみ使用して複合分離膜を製造した。
【0085】
比較例2.バインダーとして有機高分子バインダーのみを使用
前記実施例2と同様に実施するが、耐熱コーティング層用スラリーを製造時に有機-無機複合ゾルを使用せず、PVAのみを使用して複合分離膜を製造した。
【0086】
<試験例>
基材として使用された多孔性高分子基材であるPEは厚さが9μmであるフィルムであり、通気度は150秒/100mlと優れているが、130℃での熱収縮率(%)は10.8/22.0(TD/MD)と非常に高い方であり、高温で収縮が激しく起こる。
【0087】
また、前記実施例1~9により製造された耐熱コーティング層の厚さは2~6μmであり、また前記実施例10~18により製造された耐熱コーティング層の厚さは0.4~3μmである。
【0088】
試験例1.通気度および熱収縮率の測定
1-1.通気度(秒/100ml):実施例および比較例により製造された複合分離膜の気体透過度はJIS P8117の規格に準拠し、100mlの空気が分離膜1inch2の面積を通過するのにかかる時間を秒単位で記録して比較した。
【0089】
1-2.熱収縮率(%):実施例および比較例により製造された複合分離膜の130℃での熱収縮率を測定する方法は、複合分離膜を一辺が5cmである正四角形に切断して試料を作った後、試料を真ん中に置いて試料の上と下にそれぞれA4紙を1枚ずつ積層させて3または4層で積み、上下にA4用紙5枚を置いて紙の四辺をクリップで固定する。紙で囲まれた試料を130℃の熱風乾燥オーブンに30分放置した。放置後に試料を取り出して複合分離膜の収縮率(%)をTD/MD(横/縦)計算した。
【0090】
試験例2.電気化学的特性の評価
分離膜の電気化学的実験のために正極活物質としてM1C622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2O3、平均粒度=13μm)を使用して正極板製造を実施した。正極板製造方法としては、活物質(M1C622)、伝導性カーボン(Denka black)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)=80:10:10重量比でスラリーを製造し、プラネタリーミリング(Planetary milling)方法でジルコニアボール(10mm3個、5mm6個)を入れてプラネタリーミリングで1.5時間混合製造した。その後、集電体アルミ箔(Al Foil)の上にドクターブレード(Doctor blade)を使用して正極スラリー(slurry)を23μm厚さにキャスティングして正極板を製造し、その後、乾燥方法としては80℃換気扇オーブンで8時間乾燥後、80℃真空オーブンで24時間乾燥した。
【0091】
電気化学的セルテストは、2032形態のコインセルを商用化されている分離膜セルガード2400(ポリプロピレン、25μm)と本発明の複合分離膜を使用して組み立てた。この時、電解質は有機系電解質として1M LiPF6 in EC:DMC=1:1の体積比で使用した。セルテスト条件としては1/20C(1cycle)→1/10C(2cycle)→1/5C(5cycle)→1/2C(5cycle)→1C(5cycle)→2C(5cycle)→1/2C(30cycle)で実施され、カットオフ(cut off)電圧は3.0~4.5Vで実施した。
【0092】
【0093】
前記表1に示したように、本発明の実施例2により製造された複合分離膜は、スラリー内のベーマイト濃度が同一な実施例1の複合分離膜に比べて通気度が若干遅くなったが、収縮率は大幅に向上したことを確認した。前記スラリー内のベーマイト濃度においてベーマイトは本発明の無機物粉末を意味する。
【0094】
本発明の実施例1~9により製造された複合分離膜の中でスラリー内のベーマイト濃度が20.9重量%のコーティング液を使用した実施例3の通気度は177.8秒と高く(速く)、熱収縮率は1.68/0.88と良好であったが、スラリー内のベーマイト濃度を30.4重量%に高めた実施例5の通気度は177.9秒と実施例3と類似しているが、熱収縮率が0.42/0.00と大幅に向上したことを確認した。また、実施例4および5によりスラリー内のベーマイト濃度を20重量%(実施例4)から30重量%(実施例5)に向上させる場合には、スラリーの粘度が高くなるが、耐熱性および通気度が良くなることを確認した。これは類似するサイズの粒子が積層されながらできる気孔がスラリー濃度にほとんど影響を受けないためであると思われる。
【0095】
また、微細な粉末(平均粒度20nm)を使用した実施例6は、スラリー濃度が12.6重量%でも熱収縮率が0.58/0.00と優れていたが、通気度が563秒と大幅に悪くなったことを確認し、これは
図2に示すように微細粉末がほとんど気孔なしに積層されたものと見える。
【0096】
このような結果から、ベーマイト粉末を大きい粒子と小さい粒子を混合して使用すれば低いスラリー内のベーマイト濃度でも優れた特性を得ることができることを実施例7~9で確認した。平均粒度が4.5nmの微細粉末を少量使用した実施例9は、19.8重量%(大きい粒子17.3重量%、小さい粒子2.5重量%)のスラリー内のベーマイト濃度でも優れた熱収縮率0.54/0.00と良好な通気度220.6秒を示すことを確認した。
【0097】
反面、有機-無機複合ゾルをバインダーとして使用した比較例1および有機バインダーのみを使用した比較例2の複合分離膜は、実施例5と通気度は類似しているが、比較例1は熱収縮率が高くて有機-無機複合ゾルのみをバインダーとして単独使用できないことを確認し、比較例2はPVA有機バインダーが良好な耐熱性を示すが、PVAは電解質ぬれが良くなく、3%使用時に電気抵抗を約30%程度増加させると報告されており、単独で使用することは好ましくない。
【0098】
本発明の分離膜を使用したサイクル特性を示した
図3において、実施例2と実施例4がセルガード2400の分離膜よりも優れた特性を示すが、スラリー内のベーマイト濃度が30重量%と多く使用した実施例5は、電気化学特性が大幅に劣化することを確認した。
【0099】
一種類のベーマイト粉末(10F4、平均粒度40nm)と改造されたPVA/MA(PM、PMa、PMs)を使用して複合分離膜を製造する実施例10~18の結果を下記表2に示す。
【0100】
【0101】
表2で界面活性剤の添加は、通気度は若干落ちるが、収縮率は大幅に向上させるため、その添加は必須的であることが分かり、添加量はベーマイト量に対して0.001~0.05の重量比が好ましく、前記範囲を超過する場合、通気度と耐熱収縮率に逆効果を起こし得る。
【0102】
またPVAは、水に溶けるため、耐吸水性がないが、これを改善したPM、PMs、PMaの乾燥した膜は水に48時間浸漬して置いても全く溶けないため、耐湿性に優れていることが分かった。またアルコールにも沈殿なしに混合されるため、PVAより分離膜基材にぬれが良くて薄い耐熱コーティング層を形成することを実施例15、16から分かった。
【0103】
また実施例13~15は、基材とのぬれを向上させた有機-無機複合ゾルと有機高分子バインダーを混合した複合バインダーを使用して製造した複合分離膜は、約200秒/100mlの通気度と130℃30分で1~2%の収縮率を示す。これら複合分離膜の半電池テスト結果をセルガード2400と比較した
図6をみると、本発明の複合分離膜の放電容量が52サイクルで約83%で、セルガードの77.3%より全て優れていることをみることができる。効率にも優れていることをみることができる。
【0104】
また改造された有機高分子バインダー(PMs)のみをバインダーとして使用した実施例16~18でも、通気度、収縮率が全て優れており、これらのセルテスト結果を
図7にセルガード結果と共に比較したものでも全て放電容量と効率でセルガードより優れていることをみることができる。
【0105】
したがって、改造された有機高分子バインダーが基材に優れたぬれ性と接着力を提供できることが分かり、このようなバインダーの性能は界面活性剤の助けにより促進されると思われる。また、界面活性剤の添加は、有機-無機複合ゾルと有機高分子を混合して使用する複合バインダーでも必要であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
高容量、高性能リチウム二次電池は、高耐熱性が非常に重要である。したがって、本発明のセラミックがコーティングされた耐熱複合分離膜は、二次電池産業の発展に大きく寄与すると思われる。
【0107】
また本工程は、水系であり、単純コーティング工程であり、電池性能も向上させるため、産業競争力があると思われる。