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特許7475085治療的組成物に対する細菌株の感受性プロファイルを決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】治療的組成物に対する細菌株の感受性プロファイルを決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G16B 40/00 20190101AFI20240419BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240419BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240419BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240419BHJP
【FI】
G16B40/00
A61K35/76
A61P31/04
A61P17/00 101
A61P17/02
A61K45/00
C12Q1/68
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023005263
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2020512827の分割
【原出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2023052444
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】62/554,529
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/597,151
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/673,162
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517317347
【氏名又は名称】アダプティブ ファージ セラピューティクス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Adaptive Phage Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カール メリル
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0190603(US,A1)
【文献】Diogo Manuel Carvalho Leite, et al.,Computational Prediction of Host-Pathogen Interactions Through Omics Data Analysis and Machine Learning,Bioinformatics and Biomedical engineering [online],2017年04月01日,vol.10209,abstract,[検索日:2022年7月11日], <URL:https://link.springer/com/chapter/10.1007/978-3-319-56154-7_33>
【文献】丹治 保典,大腸菌O157:H7の迅速かつ高感度な検出新手法,BIO INDUSTRY 9月号,第20巻,島 健太郎,2003年09月08日,第30-36ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16B 5/00 - 99/00
C12Q 1/68
A61K 35/76
A61P 31/04
A61P 17/00
A61P 17/02
A61K 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的組成物機械学習モデルを生成するための、コンピュータによる方法であって、前記方法は、
(a)コンピュータデータベースシステム内の複数の細菌株からのデータをコンパイルする工程であって、前記データは、複数の細菌株のゲノム配列データ、および、複数の治療的組成物から実験的に得られた前記細菌株の実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイルを含み、各治療的組成物が少なくとも1つのファージを含む、コンパイルする工程;
(b)コンピュータシステム上の複数の細菌株の前記ゲノム配列データおよび前記実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイルを少なくとも用いて、各細菌株について治療的組成物-宿主特異性の予測プロファイルを生成するために機械学習モデルを訓練する工程であって、前記機械学習モデルの訓練が、類似または同一の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する細菌株間で共有される共通のゲノム配列パターンを識別することにより、前記治療的組成物-宿主感受性プロファイルを用いて、前記ゲノム配列データに対して特徴検出を行うことを含む、訓練する工程;および
(c)クエリー細菌ゲノム配列または部分配列を受信し、かつ前記訓練された機械学習モデルにより生成される予測プロファイルを用いて、前記クエリー細菌ゲノム配列または部分配列に対して感受性であると推定される少なくとも1つの治療的組成物を選択するように構成された治療的組成物機械学習モデルとして、前記コンピュータシステムにより、前記訓練された機械学習モデルを、記憶する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記特徴検出が、
前記治療的組成物に対する宿主の感受性と相関する、類似または同一の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する細菌株間で共有される共通のゲノム配列パターンを識別すること;および/または
前記治療的組成物に対する宿主の耐性と相関する、類似または同一の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する細菌株間で共有される共通のゲノム配列パターンを識別すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記訓練された機械学習モデルに基づいて、前記クエリー細菌ゲノム配列または部分配列に対して感受性であると推定された前記少なくとも1つの治療的組成物が、少なくとも1つのファージを、1つもしくはそれを超える抗生物質、殺菌剤、治療用分子と組み合わせて含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法であって、
工程(a)において、前記データが複数のファージ株のゲノム配列データをさらに含み;
工程(b)において、機械学習モデルの訓練が、複数のファージ株の前記ゲノム配列データをさらに用い、前記特徴検出が、
前記治療的組成物に対する宿主の感受性と相関する、類似または同一の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有するファージ株間で共有される共通のゲノム配列パターンを識別すること;および/または
前記治療的組成物に対する宿主の耐性と相関する、類似または同一の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有するファージ株間で共有される共通のゲノム配列パターンを識別すること
をさらに含む、方法。
【請求項5】
前記機械学習モデルが、深層ニューラルネットワーク学習または人工ニューラルネットワーク解析を含むニューラルネットワーク解析、あるいは、ベイズ分析、ガウス解析、回帰分析および/または木解析などの古典的モデルを組み込んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記機械学習モデルを更新することをさらに含み、
(1)複数の細菌株の追加のゲノム配列データ;および
(2)複数の治療的組成物から実験的に得られた追加の細菌株の実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイル
を受信すること、ならびに
前記機械学習モデルを再訓練すること
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記訓練された機械学習モデルへの入力として提供された前記クエリー細菌ゲノム配列または部分配列から生成されたプロファイルマッチスコアに基づいて1つもしくはそれを超える治療的組成物を選択すること
をさらに含み、より高いプロファイルマッチスコアが、より高い治療的組成物感受性を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数の治療的組成物が選択され、前記選択された治療的組成物の各々が、異なる宿主域を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数の治療的組成物が選択され、広い宿主域を有する治療的組成物と狭い宿主域を有する治療的組成物との混合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記選択された治療的組成物が、互いに相乗的に作用する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記選択された治療的組成物が、
(a)細菌増殖の遅れ;
(b)ファージ耐性菌の増殖が見られないこと;
(c)病原性が低いこと;
(d)1つまたはそれを超える薬物に対して感受性を取り戻すこと;および/または
(e)被験体内の増殖に対して適応度の低下を示すこと
から選択される活性を有する、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記治療的組成物が、患者における細菌感染症または汚染を処置するために選択され、処置される前記細菌感染症または前記汚染が、創傷感染症、術後感染症および全身性菌血症からなる群より選択される、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌感染症および/または汚染が、「ESKAPE」病原体(Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter sp)から選択される細菌によって引き起こされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の細菌株のうちの細菌株、および/または、前記クエリー細菌ゲノム配列または部分配列の少なくとも1つが、
a)多剤耐性菌;
b)被験体において感染を引き起こす臨床分離菌;
c)被験体において感染を引き起こす臨床分離菌であり、多剤耐性であるもの;
d)真のヒト感染症から得られるもの;または
e)多様な起源から得られるもの
である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細菌感染症が、
a)多剤耐性菌;
b)被験体において感染を引き起こす臨床分離菌;
c)被験体において感染を引き起こす臨床分離菌であり、多剤耐性であるもの;
d)真のヒト感染症から得られるもの;または
e)多様な起源から得られるもの
である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記多様な起源が、土壌、水処理設備、生下水、海水、湖、河川、小川、据付けの汚水溜、動物およびヒトの腸、ならびに糞便からなる群より選択される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
1つまたはそれを超えるプロセッサー;メモリー;および1つまたはそれを超えるプログラムを備えるシステムであって、前記1つまたはそれを超えるプログラムは、前記メモリーに記憶されており、かつ前記1つまたはそれを超えるプロセッサーによって実行されるように構成されており、前記1つまたはそれを超えるプログラムは、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法を行うための命令を含む、システム。
【請求項18】
機械学習モデルを用いることにより入力として提供されたクエリー細菌ゲノム配列または部分配列から生成されたプロファイルマッチスコアに基づいて少なくとも1つのファージを含む少なくとも1つの治療的組成物を選択するようにコンピュータに命令するコンピュータプログラムであって、前記機械学習モデルが、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法に従って作製される、コンピュータプログラム。
【請求項19】
クエリー細菌ゲノム配列または部分配列に対する治療的組成物-宿主感受性を予測するための、請求項1に記載の機械学習モデルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ファージ、抗生物質および/または他の殺菌性化合物を含む治療的組成物に対する細菌の感受性を予測するために有用な無細胞法およびキットに関する。治療的組成物間の相乗的(Synergist)殺菌活性も、本明細書中に記載される無細胞法およびキットを用いて予測できる。
【背景技術】
【0002】
関連技術の論議
以下の考察において、ある特定の論文および方法が、背景および導入の目的で説明される。従来技術の「自認」として解釈されるべきものは、本明細書中に何も含まれていない。本出願人は、本明細書中で参照される論文および方法が、該当する法による規定の下では従来技術を構成しないことを、適切な場合に実証する権利を明確に留保する。
【0003】
多剤耐性(MDR)菌が、憂慮すべき速度で出現してきている。現在、米国において毎年少なくとも200万例の感染が、MDR生物によって引き起こされており、およそ23,000例の死亡数に至っていると推定されている。さらに、遺伝子操作および合成生物学もまた、さらなる高病原性微生物を作出し得ると考えられている。
【0004】
例えば、Staphylococcus aureusは、皮膚・軟部組織感染症(SSTI)、肺炎、壊死性筋膜炎および血流感染症を引き起こし得るグラム陽性菌である。メチシリン耐性S.aureus(「MRSA」)は、80,000例を超える侵襲性感染症、12,000例に迫る関連死に関わっており、院内感染の一番の原因であるので、MRSAは、臨床現場において大いに懸念されているMDR生物である。さらに、世界保健機関(WHO)は、MRSAを国際的に懸念される生物として識別している。
【0005】
病原性微生物が急速に発生し、広がるという潜在的な脅威および抗菌薬耐性が発生する潜在的な脅威があることを考えて、細菌感染症に対する別の臨床処置が開発中である。MDR感染症に対するそのような処置となり得るものの1つは、ファージの使用を必要とする。バクテリオファージ(「ファージ」)は、特定の細菌宿主内で複製し、その特定の細菌宿主を殺滅できる、ウイルスの多様な集合である。20世紀初頭にファージが初めて単離された後、ファージを抗菌剤として利用する可能性が検討され、ファージは、いくつかの国で抗菌剤として臨床で使用され、いくらかの成功を収めた。にもかかわらず、ファージによる治療は、ペニシリンの発見後、米国ではほぼ断念されていたが、最近になってやっと、ファージ治療薬への関心が復活してきた。
【0006】
ファージの治療的使用の成功は、感染症に関連する分離菌を殺滅できるかまたはその分離菌の増殖を阻害できるファージ株を投与できるかに左右される。さらに、細菌の変異率およびファージ株に関連する狭い宿主域を考えれば、当初の標的細菌宿主が、変異するかまたは排除されて、自然に、抗菌剤として使用された当初のファージに耐性である1つまたはそれを超える新興細菌株に取って代わられると、病初では抗菌剤として有効なファージ株も、臨床処置中にたちまち有効でなくなる可能性がある。
【0007】
細菌株に対するファージ敏感性をスクリーニングするための経験的な検査手法が開発されてきた。しかしながら、これらの手法は、時間のかかる手法であり、特定の各細菌株に対する細菌の成長曲線を得ることに依存している。例えば、ファージ株(stains)は、現在、液体培養物または寒天培地上で生育した菌叢のいずれかを用いて、個々のファージ株を特定の患者の分離菌に対して試験することによって、細菌を溶解(殺滅)する能力または細菌増殖を阻害する能力についてスクリーニングされる。この必要な増殖を速めることはできず、数時間、場合によっては数日間のスクリーニングの後でしか、敏感性の結果は生成されない。この敏感性の結果の入手が遅れると、全身性細菌感染症に罹患している患者に対して処置の遅れおよび合併症につながり得る。
【0008】
したがって、細菌培養物の増殖に頼らない、特定のファージ株に対する細菌の敏感性を予測するための迅速なスクリーニング方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
この要旨は、下記の詳細な説明においてさらに説明される一連の構想を簡単に紹介するために提供される。この要旨は、特許請求される主題の重要な特徴または不可欠な特徴を識別するとも意図されていないし、特許請求される主題の範囲を限定するために用いられるとも意図されていない。特許請求される主題の他の特徴、詳細、有用性および利点は、添付の図面に図示された態様および添付の請求項において定義された態様を含む、以下に記載される詳細な説明から明らかになるだろう。
【0010】
本発明は、治療的組成物(例えば、1つもしくはそれを超えるファージ株、1つもしくはそれを超える抗生物質および/または1つもしくはそれを超える他の殺菌性化合物、あるいはそれらの任意の組み合わせ)に対する細菌の感受性を迅速に予測するための無細胞ベースのキットおよび方法に関する。例えば、本発明は、処理速度と、ファージ株が特定の分離菌に首尾よく感染する能力との両方を改善し、それによって、細菌の増殖曲線に頼らなくてすむことになる。訓練された機械学習治療的組成物モデル(1つもしくはそれを超えるファージモデル、細菌宿主モデル、抗生物質モデルおよび/または他の殺菌性化合物モデルを含む)が生成されると、特定のファージ、抗生物質および/もしくは治療的処置またはそれらの任意の組み合わせに対する臨床的に予測される細菌感受性の結果の迅速な生成が可能になる。
【0011】
機械学習モデルを生成するために使用され得る好ましい細菌株としては、ESKAPE病原体、例えば、salmellonellaの菌株、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter spが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の方法およびキットは、機械学習を使用することによって、特定のファージ、抗生物質および/または他の殺菌性化合物(これらの治療的組成物の組み合わせを含む)によって殺滅または阻害される細菌の敏感性を予測する、特定の細菌およびいくつかの実施形態では特定のファージにおけるゲノムパターンが識別され得るという発見に基づく。耐性の表現型とは対照的に感受性の表現型と相関するこれらのゲノム配列パターンを用いることにより、その後テストされるクエリー細菌が、治療的組成物(特定のファージ株、抗生物質および/もしくは他の殺菌性化合物ならびに/またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない)に対して感受性または耐性であるかを予測することもできる。好ましい実施形態において、細菌のゲノムにおけるおよび/またはファージのゲノムと組み合わされる、これらの「予測ゲノムパターン」は、診断ツールとして機能でき、ファージ株に対する細菌の感受性および/または耐性が予測される。さらに、これらの予測ゲノムパターンを用いることにより、治療的組成物間、好ましくは、ファージ株、抗生物質および/または他の殺菌性化合物の間の相乗的な組み合わせを識別することもできる。1つの実施形態において、機械学習およびパターン認識を種々の細菌株のファージ-細菌トレーニングセットにファージ株のセットと組み合わせて適用することによって、クエリー細菌ゲノムをファージ-宿主トレーニングセットと比較することができ、細胞培養物の増殖を必要とすることなく、ファージ株に対する感受性の予測を行うことができる。この類似のアプローチを任意の治療的組成物(例えば、抗生物質または他の殺菌性化合物)に対して用いることにより、細胞培養物の増殖を必要とすることなく、治療的組成物(それらの組み合わせを含む)に対する細菌株の感受性を予測することもできる。
【0012】
大まかには、複数の治療的組成物に対する実験的に得られた細菌宿主感受性プロファイルとともに、複数(例えば、100個または数百個)の異なる細菌株のゲノムを配列決定し、生成された配列データを、当該分野で公知の、コンピュータによって実行される機械学習および/またはパターン認識ソフトウェアを用いて解析し、比較して、細菌ゲノム間の同一性のパターンを分類し、識別する。次いで、これらの同一性のパターンを、感受性か耐性か相乗的な治療的組成物宿主表現型と相関させる。好ましくは、人工知能を使用するプログラム(ベイズ機械学習および/またはニューラルネットワークなどのツールを使用するプログラム(例えば、ゲノム内のパターンの検索)を含む)を用いることにより、感受性/耐性/相乗的な治療的組成物宿主プロファイルと相関する同一性および/または高類似性の領域を分類することができる。教師あり学習法と教師なし学習法の両方を用いることができる。
【0013】
1つの例では、複数(例えば、100個または数百個)の異なる細菌株のゲノムを、好ましい実施形態では複数のファージ株に対する実験的に得られた細菌のファージ-宿主感受性プロファイルとともにファージ株のゲノムと組み合わせて配列決定し、生成された配列データを、当該分野で公知の、コンピュータによって実行される機械学習および/またはパターン認識ソフトウェアを用いて解析し、比較して、細菌ゲノム間およびファージゲノム間の同一性のパターンを分類し、識別する。次いで、これらの同一性のパターンを、感受性か耐性か相乗的なファージ-宿主表現型と相関させる。好ましくは、人工知能を使用するプログラム(ベイズ機械学習および/またはニューラルネットワークなどのツールを使用するプログラム(例えば、ゲノム内のパターンの検索)を含む)を用いることにより、感受性/耐性/相乗的な宿主-ファージプロファイルと相関する同一性および/または高類似性の領域を分類することができる。これらのモデルを他の治療的組成物(例えば、抗生物質および/または他の殺菌性化合物)に対して生成された宿主モデルと組み合わせることにより、最も有効な治療可能性を有し得る組み合わせを識別することができる。教師あり学習法と教師なし学習法の両方を用いることができる。
【0014】
例えば、細菌株間で共通のゲノムパターンを識別する際、図1Aに示されているブロック130は、コンピュータによる方法を用いて、機械学習モデル(例えば、統計学的方法、教師あり学習、強化学習、教師なし学習、特徴検出、人工知能法、ニューラルネットワークモデル、バイオインフォマティクス法など)を訓練する。いくつかの実施形態において、そのモデルは、細菌株間および/もしくはファージ株間、または治療的組成物に対して感受性を有する細菌株間における、ゲノム配列内の共通のパターンおよび非類似のパターンを認識するように訓練される。次いで、ブロック150および160に示されているように、これらの類似の配列および非類似の配列を標識するファージ-宿主感受性データでこれらのパターンを特徴付けることにより、ファージ-宿主機械学習モデルを生成する。いくつかの実施形態では、ファージ-宿主感受性配列も蓄えられ得る(ブロック180)。
【0015】
ゲノムパターンを識別するため、治療的組成物感受性データ(例えば、ファージ-宿主感受性データ、抗生物質-宿主感受性データ、殺菌剤-宿主感受性データおよび/または組み合わせの感受性データ)を特徴付けるため、ならびに/またはファージ、抗生物質、殺菌剤および組み合わせを含む感受性の治療的組成物を選択するため(ブロック130、140、150、160、170、180に説明されているような)の、コンピュータによる方法は、追加的または代替的に、これらの工程を行う際に他の任意の好適なアルゴリズムを利用できる。例えば、それらのアルゴリズムは、教師あり学習(例えば、ロジスティック回帰の使用、誤差逆伝播ニューラルネットワークの使用)、教師なし学習(例えば、Aprioriアルゴリズムの使用、K-平均クラスタリングの使用)、半教師あり学習、強化学習(例えば、Q学習アルゴリズムの使用、時間差学習の使用)および他の任意の好適な学習スタイルのうちのいずれか1つまたはそれを超えるものを含む学習スタイルによって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、教師あり学習法は、入力として配列を使用し、治療薬感受性データ(例えば、ファージ-宿主感受性データ、抗生物質-宿主感受性データ、殺菌剤-宿主感受性データおよび/または組み合わせの感受性データ)を出力データ(ターゲット)として使用する。いくつかの実施形態において、半教師あり学習法は、配列の教師なし学習(例えば、クラスタリング)に続く、ファージ-宿主感受性データを用いた特徴検出を含み得る。その配列データは、複数の細菌株の配列データであってもよいし、複数の細菌株と複数のファージ株との両方の配列データであってもよい。さらに、アルゴリズムは、回帰アルゴリズム(例えば、通常の最小二乗法、ロジスティック回帰、段階的回帰、多変量適応回帰スプライン、局所的に推定された散布図の平滑化など)、実例ベースの方法(例えば、k-最近隣法、学習ベクトル量子化、自己組織化マップなど)、正則化法(例えば、リッジ回帰、LASSO(least absolute shrinkage and selection operator)、エラスティックネットなど)、決定木学習法(例えば、分類木と回帰木、ID3(iterative dichotomiser 3)、C4.5、CHAID(chi-squared automatic interaction detection)、決定株、ランダムフォレスト、多変量適応回帰スプライン、勾配ブースティングマシンなど)、ベイズ法(例えば、ナイーブベイズ、AODE(averaged one-dependence estimators)、ベイジアンビリーフネットワークなど)、カーネル法(例えば、サポートベクターマシン、放射基底関数、線形判別分析など)、クラスタリング法(例えば、k-平均クラスタリング、期待値最大化など)、相関ルール学習アルゴリズム(例えば、Aprioriアルゴリズム、Eclatアルゴリズムなど)、人工ニューラルネットワークモデル(例えば、パーセプトロン法、誤差逆伝播法、ホップフィールドネットワーク法、自己組織化マップ法、学習ベクトル量子化法など)、深層学習アルゴリズム(例えば、制限ボルツマンマシン、ディープビリーフネットワーク法、畳み込みネットワーク法、積層オートエンコーダー法など)、次元縮退法(例えば、主成分分析、部分最小二乗回帰、サモンマッピング、多次元尺度構成法、射影追跡など)、アンサンブル法(例えば、ブースティング、ブートストラップ集約、AdaBoost、積層一般化(stacked generalization)、勾配ブースティングマシン法、ランダムフォレスト法など)および任意の好適な形態のアルゴリズムのうちのいずれか1つまたはそれを超えるものを実行し得る。いくつかの実施形態において、機械学習法は、特定のゲノム配列を明示的に識別することなく、または少なくとも、特定のゲノム配列を明示的に出力することなく、サンプル中に存在する細菌を殺滅または阻害すると推定される、ファージ、抗生物質、殺菌剤、他の治療用分子または組み合わせを含む1つまたはそれを超える治療的組成物を識別するように訓練される。つまり、そのような機械学習法および分類器は、配列データに対して訓練され得、配列データを利用し得る一方で、分類決定をもたらす特定の配列は、すぐには明らかにならないことがあり、内部モデルに記憶され得るか、または入力された配列を分類するために上記方法が使用する重みおよび/もしくはパラメータの内部セットとして記憶され得る。いくつかの実施形態において、機械学習法は、標的細菌の配列データを入力として受信し、1つまたはそれを超える治療的組成物、および標的細菌に対する各治療的組成物の特異性の推定値(治療特異性)を出力する。これには、ファージ、および標的細菌に対する各ファージの特異性の推定値(ファージ-宿主特異性)、抗生物質、および標的細菌に対する各抗生物質の特異性の推定値(抗生物質-宿主特異性)、殺菌剤、および標的細菌に対する各殺菌剤の特異性の推定値(殺菌剤-宿主特異性)、または組み合わせ、および標的細菌に対する組み合わせの特異性の推定値が含まれ得る。いくつかの実施形態において、機械学習モデルは、特定のゲノム配列を明示的に識別することなく、複数の内部の階層型分類器および/または好適な訓練データに対して訓練されたニューラルネットを用いて、サンプルを分類する深層学習システムである。深層学習の分類器は、通常、大量の訓練データを必要とする。したがって、いくつかの実施形態において、深層学習の分類器は、追加の臨床サンプルおよびアウトカムを受信するにつれて、長い時間をかけて発展または洗練される。いくつかの実施形態において、機械学習法は、入力された細菌配列に対するファージの有効性または特異性の確率的推定値を生成し得る。
【0016】
いったん治療的組成物機械学習モデルが生成されると、クエリー細菌を処理することにより、ウェットの検査データを全く必要とせずに、治療特異性(例えば、ファージ-宿主特異性、抗生物質特異性、殺菌剤特異性および/または組み合わせの特異性)を予測することができる。次いで、クエリー細菌に特異的であると識別された治療的組成物(例えば、ファージ、抗生物質、殺菌剤、治療用分子または組み合わせ)を、治療薬または汚染除去剤として使用できる。さらに好ましい実施形態では、複数の治療的組成物(例えば、1つもしくはそれを超えるファージ株、1つもしくはそれを超える抗生物質、1つもしくはそれを超える殺菌剤および/または1つもしくはそれを超える治療用分子)が、本明細書中に記載される方法において識別され得、それを用いることにより、細菌感染症または細菌汚染を処置するために使用できるカクテルを生成することができる。好ましい実施形態において、そのカクテル中の複数の治療的組成物(例えば、複数のファージ株、またはファージ、抗生物質、殺菌剤および/もしくは治療用分子の様々な組み合わせ)は、異なる特異性パターンを有し、そのおかげで、細菌のファージ耐性の発生率の低下が助けられ得る。
【0017】
さらに好ましい実施形態において、類似性および/または同一性のパターン(「予測パターン」、または「ファージ宿主感受性配列」、「抗生物質-宿主感受性配列」および「殺菌剤-宿主感受性配列」を含む治療的組成物感受性配列とも総称される)を用いることにより、細菌株が少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つの主要な治療的-宿主感受性プロファイル群(例えば、ファージ-宿主感受性プロファイル群、抗生物質-宿主感受性プロファイル群、他の殺菌性化合物-宿主感受性プロファイル群および/または相乗的な治療用分子-宿主感受性プロファイル群)に分類される。
【0018】
さらに好ましい実施形態において、様々な感受性プロファイルを有する、感受性群のいくつかまたはすべてから選択される治療的組成物の混合物を含むカクテルが、生成され得る。これらのカクテルを用いることにより、細菌感染症または細菌汚染を処置することができる。好ましい実施形態において、治療的組成物の選択は、そのカクテルに対して細菌が耐性を発生させることに対する耐性を高め得る。
【0019】
好ましい実施形態において、細菌ゲノムおよび/またはファージゲノムは、当業者に公知の迅速な配列決定法を用いて配列決定される。そのような手法の例としては、高速ナノポアゲノムシーケンシングが挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
好ましくは、上記方法は、特定の治療的-宿主感受性プロファイルを有すると識別された株を感受性に従って亜分類するさらなる工程を含む。したがって、例えば、ファージ、抗生物質、殺菌剤または組み合わせに対して感受性、非感受性または中間感受性であると識別された細菌株は、ファージ、抗生物質、殺菌剤または組み合わせに対する感受性に従って、亜分類され得、さらに分類され得る。
【0021】
1つの実施形態において、治療的組成物機械学習モデルを生成するための、コンピュータによる方法が記載され、その方法は、
(a)コンピュータデータベースシステム内の複数の細菌株のデータをコンパイルする工程(ここで、そのデータは、複数の細菌株のゲノム配列データを含む);
(b)コンピュータシステムのCPU上および記憶装置上の複数の細菌株のゲノム配列データを少なくとも用いて、機械学習モデルを訓練する工程;および
(c)クエリー細菌ゲノムを受信するように構成されており、かつ訓練された機械学習モデルに基づいて、細菌ゲノムに対して感受性であると推定される少なくとも1つの治療的組成物を選択するように設定された治療的組成物機械学習モデルを記憶する工程を含む。
【0022】
訓練された機械学習モデルに基づいて細菌ゲノムに対して感受性であると推定される少なくとも1つの治療的組成物は、訓練された機械学習モデルに基づいて細菌ゲノムに対して感受性であると推定される、1つまたはそれを超えるファージ、抗生物質、殺菌剤、治療用分子または組み合わせを含み得る。
【0023】
1つの実施形態において、少なくとも1つの治療的組成物は、少なくとも1つのファージを含み、
工程(a)において、上記データは、複数のファージ株のゲノム配列データをさらに含み;
工程(b)において、機械学習モデルを訓練することは、コンピュータシステムのCPU上および記憶装置上の複数の細菌株のゲノム配列データおよび複数のファージ株のゲノム配列データを少なくとも使用し;
工程(c)において、クエリー細菌ゲノムを受信するように設定された治療的組成物機械学習モデルは、訓練された機械学習モデルに基づいて細菌ゲノムに対して感受性であると推定される少なくとも1つのファージを選択するように構成されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、機械学習モデルは、治療的組成物感受性配列を生成する。これらは、ファージ-宿主感受性配列、抗生物質-宿主感受性配列、殺菌剤-宿主感受性配列または他の治療用分子-宿主感受性配列であり得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、複数の治療薬から実験的に得られた細菌株の実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイルを受信する工程をさらに含み、治療的組成物感受性配列を生成する工程は、治療的組成物-宿主感受性プロファイルを用いて特徴検出を行うことを含み、この特徴検出は、
(1)類似または同一の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する細菌株間で共有される共通のゲノム配列パターンを識別すること;および/または
(2)非類似の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する細菌株間で共有される非類似のゲノム配列パターンを識別すること
を含み;
モデルを訓練する工程は、治療的組成物感受性配列と治療的組成物-宿主感受性プロファイルとを結び付けることによって各細菌株を特徴付けること、および各細菌株に対する治療的組成物-宿主特異性についての予測プロファイルを生成することをさらに含む。
【0025】
1つの実施形態において、上記方法は、複数の細菌に対する追加のゲノム配列データおよび治療的組成物-宿主感受性プロファイルを受信する工程および機械学習モデルを洗練させる工程をさらに含む。1つの実施形態において、その機械学習モデルは、教師なしプロセスにおいて訓練される。
【0026】
1つの実施形態において、治療的組成物機械学習モデルを生成するための、コンピュータによる方法が記載され、その方法は、
(a)コンピュータデータベースシステム内の複数の細菌株のデータをコンパイルする工程(ここで、そのデータは、(1)複数の細菌株のゲノム配列データ;および(2)複数の治療薬から実験的に得られた細菌株の実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイルを含む);
(b)コンピュータシステムのCPU上および記憶装置上の複数の細菌株のゲノム配列データおよび実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイルを用いて、機械学習モデルを訓練する工程;
(c)クエリー細菌ゲノムを受信するように構成されており、かつ訓練された機械学習モデルに基づいて、細菌ゲノムに対して感受性であると推定される、1つまたはそれを超えるファージ、抗生物質、殺菌剤、治療用分子または組み合わせを含む少なくとも治療的な組成物を選択するように設定された治療的組成物機械学習モデルを記憶する工程を含む。
【0027】
上記少なくとも治療的な組成物は、少なくとも1つのファージ、少なくとも1つの抗生物質、少なくとも1つの殺菌剤または組み合わせを含み得る。上記治療的組成物-宿主感受性プロファイルは、ファージ-宿主感受性プロファイル、抗生物質-宿主感受性プロファイル、殺菌剤-宿主感受性プロファイルまたは他の治療用分子-宿主感受性プロファイルであり得る。これらは、実験的に得られた複数のファージ、抗生物質、殺菌剤、治療用分子などであり得る。
【0028】
好ましい実施形態において、細菌ゲノムおよび/またはファージゲノムは、当業者に公知の迅速な配列決定法を用いて配列決定される。そのような手法の例としては、高速ナノポアゲノムシーケンシングが挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
好ましい実施形態において、機械学習およびパターン認識解析は、ニューラルネットワーク解析(深層ニューラルネットワーク学習または人工ニューラルネットワーク解析を含む)または古典的モデル(例えば、ベイズ分析、ガウス解析、回帰分析および/または木解析)を組み込んでいる。
【0030】
さらに好ましい実施形態において、実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性データは、プラークアッセイを行うことによって生成される。好ましい実施形態において、プラークのハローのサイズ、暗さ、鮮明さおよび/または存在が、計測される。他の好ましい実施形態では、実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性データは、蛍光アッセイ、吸収アッセイおよび透過アッセイからなる群より選択される測光アッセイを用いて生成される。
【0031】
1つの実施形態において、機械学習モデルは、(1)複数の細菌株の追加のゲノム配列データ;および(2)複数の治療的組成物から実験的に得られた追加の細菌株の実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイルを受信することによって更新される。受信された情報を用いることにより、機械学習モデルが再訓練(または更新)される。
【0032】
クエリー細菌の治療的組成物-宿主感受性を予測するための、コンピュータによって実行される方法であって、その方法は、(a)本明細書中に記載されるファージ-宿主機械学習モデルを受信する工程、(b)クエリー細菌のゲノム配列データを受信する工程;および(c)訓練後の機械学習モデルに基づいて、クエリー細菌の治療的組成物-宿主感受性を予測する工程を含む。いくつかの実施形態において、機械学習モデルは、教師なしプロセス、教師ありプロセスにおいて訓練され、かつ/またはニューラルネットワーク解析(深層ニューラルネットワーク学習または人工ニューラルネットワーク解析を含む)もしくは古典的モデル(例えば、ベイズ分析、ガウス解析、回帰分析および/または木解析)を組み込んでいる。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、治療的組成物は、治療的組成物-宿主機械学習モデルへの入力として提供されたクエリー細菌ゲノムから生成されたプロファイルマッチスコアに基づいて少なくとも1つの治療的組成物を選択する工程を含む方法によって選択され、ここで、より高いプロファイルマッチスコアが、より高い治療的組成物-宿主感受性を表す。この方法において使用される機械学習およびパターン認識は、ニューラルネットワーク解析(深層ニューラルネットワーク学習または人工ニューラルネットワーク解析を含む)または古典的モデル(例えば、ベイズ分析、ガウス解析、回帰分析および/または木解析)を組み込んでいる。
【0034】
複数のファージ(および/または複数の他の治療的組成物)の選択、ならびに選択されたファージ(および他の治療的組成物)の、薬学的に許容され得る組成物としての製剤化が企図される。
【0035】
好ましい実施形態において、選択された治療的組成物の組成物は、異なる宿主域を有する治療的組成物を含み、広い宿主域を有する治療的組成物と狭い宿主域を有する治療的組成物との混合物を含み、かつ/または互いに相乗的に作用する。
【0036】
本明細書中に記載される治療的組成物は、細菌に対していくつかの活性を有し得、それらとしては、(a)細菌増殖の遅れ;(b)ファージ耐性菌の増殖が見られないこと;(c)病原性が低いこと;(d)1つまたはそれを超える薬物に対して感受性を取り戻すこと;および/または(e)被験体内の増殖に対して適応度の低下を示すことが挙げられるがこれらに限定されない
【0037】
本明細書中に記載される治療的組成物を含む組成物、ならびに細菌感染症を有する被験体または環境汚染を、本明細書中に記載されるような組成物を用いて処置する方法が、好ましい実施形態である。好ましい実施形態において、処置される細菌感染症または細菌汚染は、創傷感染症、術後感染症および全身性菌血症からなる群より選択される。さらに好ましい実施形態において、細菌感染症/細菌汚染は、「ESKAPE」病原体(Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter sp)によって引き起こされる感染から選択される。
【0038】
さらなる実施形態において、本明細書中に記載されるシステムは、1つまたはそれを超えるプロセッサー;メモリー;および1つまたはそれを超えるプログラムを備え、ここで、その1つまたはそれを超えるプログラムは、メモリーに記憶されており、かつ1つまたはそれを超えるプロセッサーによって実行されるように構成されており、1つまたはそれを超えるプログラムは、本明細書中に記載される方法のいずれかを行うための命令を含む。好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるような方法または組成物の、複数の細菌株のうちの細菌株、クエリー細菌ゲノムおよび/または細菌感染症は、a)多剤耐性菌;b)被験体において感染を引き起こす臨床分離菌;c)被験体において感染を引き起こす臨床分離菌であり、多剤耐性であるもの;d)真のヒト感染症から得られるもの;またはe)多様な起源から得られるものから選択される。その多様な起源は、好ましい実施形態において、土壌、水処理設備、生下水、海水、湖、河川、小川、据付けの汚水溜、動物およびヒトの腸、ならびに糞便からなる群より選択され得る。
【0039】
また、記載されたように、本明細書中に記載される方法のいずれかに従って生成された治療的組成物-宿主機械学習モデル、ならびにクエリー細菌に対する治療的組成物-宿主感受性を予測するためのそのような治療的組成物-宿主機械学習モデルの使用。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の目的および特徴は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば、より理解できる。
【0041】
図1A図1Aは、複数の細菌株の治療的組成物-宿主トレーニングセットを生成する流れ図を提供している。
【0042】
図1B図1Bは、機械学習モジュールが訓練されるのを説明している流れ図を提供している。
【0043】
図1C図1Cは、教師なし機械学習モジュール、および追加のデータが利用可能になるにつれてモデルが更新されるのを説明している流れ図を提供している。
【0044】
図1D図1Dは、機械学習モデルを生成するためのトレーニングセット、バリデーションセットおよびテストセットが関わる教師あり機械学習の繰り返しを例証している流れ図を提供している。
【0045】
図2図2Aは、図1A~1Dに従って生成された治療的組成物-宿主トレーニングセットを用いてクエリー細菌に対する治療的組成物-宿主特異性プロファイルを予測する流れ図である。図2Aは、治療的組成物のさらなる選択の工程も示している。
【0046】
図3図3は、本明細書中に記載される方法およびシステムに有用な例示的な機械学習モデルを説明している。
【0047】
図4A図4Aは、本明細書中に記載される方法およびシステムにおいて使用するための複数の内部層を含む深層学習モデルの例示的な構造を説明している。
【0048】
図4B図4Bは、本明細書中に記載される方法およびシステムにおいて使用するための深層学習モデルにおける層内のニューロン間の接続を説明している。
【0049】
様々な図面において似た参照番号および呼称は、似たエレメントを示している。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
以下の定義は、以下に記載される説明において使用される特定の用語に対して提供される。
【0051】
定義
本明細書および請求項において使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の言及を含む。例えば、用語「細胞」は、細胞の混合物をはじめとした、複数の細胞を含む。用語「核酸分子」は、複数の核酸分子を含む。「ファージカクテル」は、少なくとも1つのファージカクテル、ならびに複数のファージカクテル、すなわち、1つより多いファージカクテルを意味し得る。当業者が理解するように、用語「ファージ」は、単一のファージまたは1つより多いファージのことを指すために使用され得る。
【0052】
本発明は、本発明の構成要素ならびに本明細書中に記載される他の成分またはエレメントを「含み」得る(オープンエンド)か、またはそれらから「本質的になり」得る。本明細書中で使用されるとき、「含む(comprising)」は、記載のエレメント、またはそれらと構造もしくは機能が等価なもの、および記載されていない他の任意のエレメントを意味する。用語「有する」および「含む(including)」も、文脈が他のことを示唆しない限り、オープンエンドと解釈されるべきである。本明細書中で使用されるとき、「~から本質的になる」は、本発明が、請求項に記載される成分に加えて、成分を含み得ることを意味するが、それらのさらなる成分が、特許請求される発明の基本的な新規の特徴を実質的に変化させない場合に限り、それを意味する。
【0053】
本明細書中で使用されるとき、「被験体」は、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトである。哺乳動物としては、ネズミ科動物、サルのような動物、ヒト、家畜、競技用動物およびペットが挙げられるが、これらに限定されない。他の好ましい実施形態では、「被験体」は、げっ歯類動物(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科動物(例えば、マウス)、イヌ科動物(例えば、イヌ)、ネコ科動物(例えば、ネコ)、ウマ科動物(例えば、ウマ)、霊長類、サルのような動物(例えば、サルまたは類人猿)、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)または類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)である。他の実施形態では、ヒトにおける治療効果を実証するためのモデルとして慣習的に使用される非ヒト哺乳動物、特に、哺乳動物(例えば、ネズミ科動物、霊長類、ブタ、イヌ科動物またはウサギ動物)が、使用されることがある。好ましくは、「被験体」は、細菌感染症、特に、多剤耐性菌によって引き起こされる感染症に罹患している可能性がある任意の生物、例えば、任意の動物またはヒトを包含する。
【0054】
本明細書中で理解されるように、「それを必要とする被験体」は、多剤耐性細菌感染症を含むがこれに限定されない細菌感染症に罹患している任意のヒトまたは動物を含む。実際に、本発明の方法は、特定の病原性種を標的化するために使用され得ることが本明細書中で企図されるが、本方法は、本質的にすべてのヒトおよび/または動物の病原菌(多剤耐性病原菌を含むがこれに限定されない)に対しても使用できる。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法を用いることによって、当業者は、多くの異なる臨床的に妥当な病原菌(多剤耐性(MDR)病原菌を含む)に対する個別化された治療的組成物(例えば、ファージおよび/またはファージ/抗生物質カクテル)をデザインおよび作製することができる。
【0055】
本明細書中で理解されるように、薬学的組成物の「有効量」とは、被験体において治療的に有益な応答を誘発するのに適した組成物の量、例えば、被験体における病原菌を除菌するのに適した組成物の量のことを指す。そのような応答としては、例えば、細菌感染症に関連する1つまたはそれを超える(one of more)病理学的症状の予防、回復、処置、阻害および/または低減が挙げられ得る。
【0056】
本明細書中で使用される用語「用量」または「投与量」とは、被験体への投与に適した物理的に不連続な単位のことを指し、各投与量は、所望の応答をもたらすように計算された所定の量の医薬品有効成分を含む。
【0057】
用語「約」または「およそ」は、当業者が決定する特定の値に対して許容され得る範囲内であることを意味するが、その許容され得る範囲は、その値がどのように計測または決定されるか、例えば、計測システムの限界に部分的に左右される。例えば、「約」は、所与の値の最大20%、好ましくは、最大10%、より好ましくは、最大5%、より好ましくは、なおも最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に、生体系または生物学的プロセスに関しては、その用語は、ある値の1桁以内、好ましくは、5倍以内、より好ましくは、2倍以内を意味し得る。別段述べられない限り、用語「約」は、特定の値に対して許容され得る誤差範囲内(例えば、±1~20%、好ましくは、±1~10%、より好ましくは、±1~5%)を意味する。なおもさらなる実施形態において、「約」は、+/-5%を意味すると理解されるべきである。
【0058】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間に存在する各値、およびその述べられた範囲内の他の任意の述べられた値またはその述べられた範囲内に存在する値は、本発明に包含されると理解される。これらのより狭い範囲の上限および下限は、独立して、そのより狭い範囲内に含められてよく、述べられた範囲内の任意の具体的に除外される限度次第で、それらもまた本発明に包含される。述べられた範囲が、一方または両方の限界を含む場合、それらの含められる両方の限界のどちらかを排除した範囲も、本発明に含められる。
【0059】
本明細書に記載されるすべての範囲が終点を含み、その終点は、2つの値の「間の」範囲を記載する終点を含む。「約」、「概して」、「実質的に」、「およそ」などの用語は、それが絶対的なものではなく、従来技術と読めないように用語または値を修飾していると解釈されるべきである。そのような用語は、それらの用語が当業者によって理解されているようにそれらが修飾する状況および用語によって定義される。これには、最低限でも、値を測定するために用いられる所与の手法に対する、予想される実験誤差、方法誤差および機器誤差の程度が含まれる。
【0060】
本明細書中で使用される場合、2つまたはそれを超える項目のリストにおいて使用されるときの用語「および/または」は、列挙された特性のうちのいずれか1つが存在し得ること、または列挙された特性のうちの2つまたはそれを超えるものの任意の組み合わせが存在し得ることを意味する。例えば、ある組成物が、A、Bおよび/またはCという特性を含むと記載される場合、その組成物は、Aという特徴のみを;Bのみを;Cのみを;AおよびBを組み合わせて;AおよびCを組み合わせて;BおよびCを組み合わせて;またはA、BおよびCを組み合わせて、含み得る。
【0061】
本明細書中で使用されるとき、「治療的組成物」は、細菌に感染するため、細菌を殺滅するため、または細菌の増殖を阻害するために使用され得る任意の分子である。そのような治療的組成物の例としては、ファージ、抗生物質、殺菌性化合物、および殺菌活性を有する他の治療用分子(例えば、小分子または生物製剤)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
用語「感受性」または「感受性プロファイル」は、治療的組成物による感染および/または殺滅および/または増殖阻害に対して感受性である細菌株を意味する。例えば、用語「ファージ感受性」または「ファージ感受性プロファイル」は、ファージによる感染および/もしくは殺滅、ならびに/または増殖阻害に対して感受性である細菌株を意味する。
【0063】
用語「非感受性」または「耐性(resistant)」または「耐性(resistance)」または「耐性プロファイル」は、治療的組成物による感染および/または殺滅および/または増殖阻害に対して非感受性、好ましくは、高度に非感受性である細菌株を意味すると理解される。例えば、用語「ファージ非感受性」または「ファージ耐性(phage resistant)」または「ファージ耐性(phage resistance)」または「ファージ耐性プロファイル」は、ファージによる感染および/もしくは殺滅、ならびに/または増殖阻害に対して非感受性、好ましくは、高度に非感受性である細菌株を意味すると理解される。
【0064】
用語「中間感受性」は、治療的組成物による感染および/または殺滅および/または増殖阻害に対して、治療的組成物に対する感受性株の感受性と非感受性株の感受性との中間である感受性を示す細菌株を意味すると理解される。例えば、用語「中間ファージ感受性」は、ファージによる感染および/または殺滅および/または増殖阻害に対して、ファージ感受性株の感受性とファージ非感受性株の感受性との中間である感受性を示す細菌株を意味すると理解される。
【0065】
本明細書中で使用されるとき、「予測パターン」、「治療的組成物-宿主感受性配列」または「ファージ-宿主感受性配列」は、トレーニングセットを構成している複数の細菌株および/または複数のファージ株において、細菌の「感受性プロファイル」、「耐性プロファイル」または「中間感受性プロファイル」と相関すると識別されたゲノムパターンである。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、「治療的組成物-宿主特異性プロファイル」は、「治療的組成物-宿主感受性プロファイル」と交換可能に使用され、複数の異なる治療的組成物に対する細菌の感受性または耐性に関するデータを含む。例えば、「ファージ-宿主特異性プロファイル」は、「ファージ-宿主感受性プロファイル」と交換可能に使用され、複数の異なるファージに対する細菌の感受性または耐性に関するデータを含む。治療的組成物-宿主特異性プロファイルは、実験的に得ることができる(例えば、治療的組成物-宿主トレーニングセットに使用される)か、または本明細書中に記載されるような方法を行うことによって予測される(ブロック220を参照のこと)。
【0067】
本明細書中で使用される「治療的組成物カクテル」、「治療的に有効な組成物カクテル」または同様の用語は、細菌感染症の処置を必要とする被験体に投与されたとき、細菌感染症に対する臨床上有益な処置を提供し得る複数の治療的組成物(例えば、1つまたはそれを超えるファージ、抗生物質または殺菌剤から構成されるもの)を含む組成物のことを指すと理解される。いくつかの実施形態において、「治療用ファージカクテル」、「治療的に有効なファージカクテル」、「ファージカクテル」とは、複数のファージを含む組成物のことを指す。好ましくは、治療的に有効な治療的組成物カクテルは、感染性の親細菌株、ならびにその親細菌株が排除された後に増殖し得る新興の耐性細菌株に感染することができる。
【0068】
本明細書中で使用されるとき、用語「組成物」は、本明細書中に開示されるような「治療的組成物カクテル」、例えば、「ファージカクテル」、「抗生物質カクテル」および/または「他の殺菌性化合物カクテル」(ならびにファージ、抗生物質および殺菌剤の組み合わせ)を包含し、それらとしては、複数の精製されたファージなどの複数の治療的組成物を含む薬学的組成物が挙げられるが、これに限定されない。「薬学的組成物」は、当業者によく知られており、通常、種々の従来の薬学的に許容され得る賦形剤、キャリア、緩衝剤および/または希釈剤から選択される不活性成分と組み合わせて製剤化される医薬品有効成分を含む。用語「薬学的に許容され得る」は、生体系(例えば、細胞、細胞培養物、組織または生物)と適合する無毒性材料のことを指すために使用される。薬学的に許容され得る賦形剤、キャリア、緩衝剤および/または希釈剤の例は、当業者によく知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(最新版),Mack Publishing Company,Easton,Paに見られる。例えば、薬学的に許容され得る賦形剤としては、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、結合剤、安定剤、記憶剤、増量剤、吸着剤、消毒剤、洗浄剤、糖アルコール、ゲル化添加物または増粘添加物、香味剤および着色剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容され得るキャリアとしては、高分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸重合体、アミノ酸共重合体、トレハロース、脂質凝集物(例えば、油滴またはリポソーム)および不活性なウイルス粒子が挙げられる。薬学的に許容され得る希釈剤としては、水、食塩水およびグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書中に記載されるカクテルおよび組成物を用いて処置される細菌には、被験体に健康上の脅威をもたらす任意の病原菌が含まれる。これらの細菌としては、「ESKAPE」病原体(Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter sp)が挙げられるがこれらに限定されず、これらは、実際には院内のものであることが多く、重篤な局所感染症および全身感染症を引き起こし得る。ESKAPE病原体のうち、A.baumanniiは、病院の集中治療室で容易に広がる、莢膜を有するグラム陰性の日和見病原体である。多くのA.baumannii臨床分離株も、利用可能な処置の選択肢を厳しく制限するMDRであり、外傷における感染症が処置不能になると、治癒にかかる時間が長くなることが多く、大規模な外科的デブリードマン、場合によっては、さらなるまたは完全な肢切断が必要となる。さらに好ましい細菌株としては、G.mellonellaが挙げられる。
【0070】
当業者は、本明細書中に記載される方法の対象となる細菌には、以下に限定されないが多剤耐性細菌株が含まれることを認識する。本明細書中で理解されるように、用語「多剤耐性(multidrug resistant)」、「多剤耐性(multiple drug resistant)」、「多剤耐性(multiple drug resistance)」(MDR)および同様の用語は、本明細書中で交換可能に使用されてよく、当業者によく知られており、すなわち、多剤耐性菌は、複数の抗菌薬、例えば、抗生物質に対して耐性を示す生物である。
【0071】
好ましい実施形態において、MDR細菌の例は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)である。
【0072】
本明細書中で理解されるように、用語「多様な起源」には、細菌が生育する可能性がある任意の場所を含むがこれに限定されない環境にファージが見られ得る多種多様の異なる場所が含まれる。実際に、ファージは、環境に広く溢れており、新しいファージの単離は非常に単純明快である。そのようなファージの単離の成功に影響する主な要素は、宿主として役立つ臨床的に妥当な病原菌のしっかりとした集団を利用できること、および多様な環境サンプリング位置に接近できることである。
【0073】
スクリーニング方法を用いることにより、ファージ-宿主トレーニングセットの生成に使用される目的の病原菌に特異的な溶菌性ファージを迅速に単離し、増幅することができ、それらの治療可能性を検討することができる。考えられる起源としては、例えば、環境中の天然の起源(例えば、土壌、海水、動物の腸(例えば、ヒトの腸))、ならびに人工の起源(例えば、未処理の下水および排水処理設備からの水)が挙げられる。感染患者由来の臨床サンプルも、ファージの起源として役立ち得る。1つの実施形態において、ファージの多様な起源は、土壌、排水処理設備からの水、生下水、海水ならびに動物およびヒトの腸からなる群より選択され得る。さらに、ファージは、世界中の、例えば、米国内外の、種々の多様な地点のどこからでも調達される可能性がある。好ましくは、ファージは、土壌、水処理設備、生下水、海水、湖、河川、小川、据付けの汚水溜、動物およびヒトの腸もしくは糞便、有機基質、バイオフィルムまたは医療/病院の起源をはじめとした多様な環境起源から単離され得る。
【0074】
本明細書中で理解されるように、「独特であって重複する細菌宿主域」という概念は、治療的組成物にとって特定の細菌宿主域のことを指す。ファージの場合、「独特であって重複する細菌宿主域」という概念は、所与のファージにとって特定のものであるが、異なるファージの独特の宿主域と重複することがある、細菌宿主域のことを指す。例えば、その概念は、ベン図の一群に似ており、各サークルが、個々のファージの宿主域(または他の治療的組成物宿主域)を表し得、その宿主域は、1つまたはそれを超える他のファージ(または他の治療的組成物)の宿主域と交わり得る。
【0075】
本明細書中で使用されるとき、用語「精製された」とは、生物学的材料、例えば、トキシン(例えば、エンドトキシン)、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質もしくは細胞内のオルガネラ、および/またはカクテルの有効性を干渉し得る他の不純物、例えば、金属もしくは他の微量元素を含むがこれらに限定されない望まれない物質を組成物中に実質的に含まない調製物のことを指す。本明細書中で使用されるとき、「高力価および高純度」および「超高力価および超高純度」のような用語は、当業者によく知られている純度および力価の程度のことを指す。
【0076】
本明細書中で使用されるとき、用語「決定」は、多種多様の行為を包含する。例えば、「決定」には、計算、コンピューティング、処理、導出、検討、調査(例えば、表、データベースまたは別のデータ構造の調査)、確認などが含まれ得る。また、「決定」には、受信(例えば、情報の受信)、アクセス(例えば、メモリー内のデータへのアクセス)などが含まれ得る。また、「決定」には、分解、選択、選定、確立などが含まれ得る。
【0077】
治療的組成物に対する細菌の感受性/耐性プロファイル
特定の治療用分子に対する「細菌宿主域」の決定とは、治療的組成物に対して感受性である細菌株か耐性である細菌株かを識別するプロセスのことを指す。細菌宿主域を決定するためのスクリーニングは、当業者によく知られている従来の方法(および実施例に記載されているような方法)を用いて行われ得、それらの方法としては、ロボット工学および他のハイスループットな方法を用いるアッセイが挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
治療的組成物は、狭い宿主域を有する(例えば、5未満の細菌株に対して殺菌活性を有する)分子と比べて、広い宿主域を有する(例えば、10を超える細菌株に対して殺菌活性を有することができる)として分類され得る。抗生物質は、例えば、広域抗生物質か狭域抗生物質として分類される。
【0079】
ヒトに対する広域抗生物質の例としては、アミノグリコシド系(ストレプトマイシンを除く)、アンピシリン、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチン)、カルバペネム系(例えば、イミペネム)、ピペラシリン/タゾバクタム、キノロン系(例えば、シプロフロキサシン)、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール、チカルシリンおよびトリメトプリム/スルファメトキサゾール(バクトリム)が挙げられるが、これらに限定されない。獣医学的使用のための広域抗生物質の例としては、コアモキシクラブ(co-amoxiclav)(小動物の場合);ペニシリンおよびストレプトマイシンおよびオキシテトラサイクリン(家畜の場合);ペニシリンおよび強化スルホンアミド(ウマの場合)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
治療用分子-宿主感受性プロファイルを生成するときに考慮され得る殺菌活性の例としては、溶解および/または細菌増殖の遅れが挙げられる。
【0081】
さらに好ましい実施形態において、殺菌活性は、(a)濁度として少なくとも0.1、少なくとも0.125、少なくとも0.15、少なくとも0.175、少なくとも0.2または0.1~0.2OD600吸光度差という細菌増殖の遅れ;(b)少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または4~6時間、細菌増殖が見られないこと;(c)宿主域迅速試験(Host Range Quick Test)において少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または4~6時間にわたる処置の後に生存細菌の増殖曲線が低下すること;または(d)宿主域迅速試験で処置された細菌のOmnilogバイオアッセイを用いたときの、テトラゾリウム色素に基づいた、活性細菌の代謝からの色の変化における、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200または50~200という呼吸の相対単位の妨害または遅れによって計測され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、機械学習モデルの構築において、機械学習モデルを訓練するためのトレーニングセット、バリデーションセットおよびテストセットに対して、同じ種の病原菌を使用することができる。異なる実施形態では、宿主機械学習モデルを訓練するためのトレーニングセット、バリデーションセットおよびテストセットに対して、異なる種の病原菌を使用することができる。さらなる実施形態では、臨床的、遺伝子型的および/または代謝的に多様な株の病原菌を含む細菌株を、機械学習モデルを生成するために使用することができる。代謝的に多様な株の例としては、抗生物質耐性、様々な糖を利用する能力、様々な炭素源を利用する能力、様々な塩の上で成長する能力、酸素の存在下もしくは非存在下において成長する能力、または細菌の運動性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記モデルは、複数の細菌株におけるゲノム領域を、治療的組成物プロファイルに対して「感受性」か「耐性」と相関関係にあると識別し(「予測パターン」)、この情報を用いることにより、クエリー細菌内の予測パターンの有無に基づいて、クエリー細菌が治療的組成物に対して感受性であるか耐性であるかを予測することができる。1つの実施形態において、臨床サンプルが、細菌感染症に罹患している被験体から採取される。通常、その被験体は、MDR細菌に感染しているが必ずしもそうではない。1つの実施形態において、クエリー細菌の全ゲノムが、好ましくは、高速の配列決定方法を用いて、配列決定される。いくつかの実施形態において、上記モデルは、ゲノム領域を明示的に出力することがあり、重みまたはパラメータ(治療的組成物-宿主感受性配列)を関連付けるが、他の実施形態では、その情報は、そのモデルの中に(例えば、階層型ニューラルネットまたは分類器に)隠されるかまたは組み入れられることがある。例えば、複数の内側の階層型分類器および/または階層型ニューラルネットを含む深層学習機械学習モデル(および方法)を利用することができる。いくつかのモデルでは、ゲノム領域は、そのモデルにおける重みおよびつながりに効果的に隠されることがある。
【0084】
ブロック200に記載されているような配列データの処理によって、クエリー細菌に対する治療的組成物-宿主特異性が予測される。他の実施形態では、細菌の感受性/耐性プロファイルを決定するために、細菌のゲノム全体を配列決定するのではなく、予測パターンを増幅および/または配列決定し得る。
【0085】
本明細書中で使用されるとき、「細菌のゲノム」の「配列決定」は、細菌のゲノム全体の完全な配列決定と、「予測パターン」の一部として識別された目的の重要な領域の配列決定との両方を包含する。好ましい実施形態において、完全な(または>99%などの実質的に完全な)細菌ゲノム。細菌ゲノムにおける60%または80%もの遺伝子が、他のファージ感染症を防ぐ遺伝子および機構を含んでいると推定されている。したがって、機械学習モデルによって識別され得るがゆえに使用され得る遺伝子および特徴の数を増加させて、予測性能を改善するために、好ましくは、完全な細菌ゲノム、あるいは実質的な部分(例えば、60%、70%、80%、90%またはそれを超える部分)が、配列決定される。さらに好ましい実施形態では、細菌のゲノムの遺伝子コード領域が、配列決定される。さらに好ましい実施形態では、下記の表1に列挙される遺伝子が、配列決定される。さらに好ましい実施形態では、本開示の方法によって予測パターンを含むと識別された領域が、配列決定される。
【0086】
いったん機械学習モデルが生成されると、クエリー細菌に対して殺菌活性を有し得る治療的組成物が速やかに識別され得る(クエリー細菌のゲノムを治療的組成物-ファージ機械学習モデルと比較することによって)。このクエリー細菌の治療的組成物-宿主プロファイルを識別できることは、細胞培養に頼らないので、速く行うことができ、より迅速な形式で、切望される治療を被験体に提供できる。さらに、追加の臨床データおよび/または追加の配列データが明らかになると、上記モデルを再訓練し、洗練させることができる。
【0087】
ファージに対する細菌の感受性/耐性プロファイル
ファージの「細菌宿主域」の決定とは、所与のファージによる感染を受けやすい細菌株を識別するプロセスのことを指す。所与のファージの宿主域は、特定の株のレベルに特異的である。ファージの細菌宿主域を決定するためのスクリーニングは、当業者によく知られている(および実施例に記載されているような)従来の方法を用いて行われ得、それらの方法としては、ロボット工学および他のハイスループットな方法を用いるアッセイが挙げられるがこれらに限定されない。
【0088】
広い宿主域を有する(例えば、10を超える細菌株に感染することができる)ファージは、一般に、前記ファージに対するレセプターが、それらの細菌株の間で共通していることを示唆する。狭い宿主域(例えば、5未満の細菌株にしか感染できない)は、ユニークなレセプターを示唆し得る。
【0089】
細菌の「ファージ-宿主感受性プロファイル」の決定は、ファージの細菌宿主域を解析するために使用されるアッセイと同じタイプのアッセイに頼っている。ここでは、目標は、細菌に感染できるおよび/または細菌を溶解できる複数の異なるファージ(「感受性プロファイル」)と、細菌に感染できないおよび/または細菌を溶解できない複数の異なるファージ(「耐性プロファイル」)とを分類するために、それらのファージに対して1つの細菌株をスクリーニングすることである。
【0090】
ファージ-宿主感受性プロファイルを生成する際に考慮され得る殺菌活性の例としては、溶解、細菌増殖の遅れ、またはファージ耐性菌の増殖が見られないことが挙げられる。さらに好ましい実施形態において、殺菌活性は、プラークアッセイによって計測され得る。プラークアッセイから得ることができるデータとしては、プラークのサイズ、暗さおよび/もしくは鮮明さ、ならびに/またはプラーク周囲にハローが存在することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
さらに好ましい実施形態において、殺菌活性は、(a)細菌サンプル上に明瞭なポイントプラークを生成し得るファージ;(b)迅速画線法を用いたときプレート上で溶菌特性を示すファージ;(c)小または大バッチアッセイを用いたとき、濁度として少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5または0.1~0.5OD600吸光度差という細菌溶解;(d)静菌性ファージ感染における濁度として少なくとも0.1、少なくとも0.125、少なくとも0.15、少なくとも0.175、少なくとも0.2または0.1~0.2OD600吸光度差という細菌増殖の遅れ;(e)感染後少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または4~6時間、ファージ耐性菌の増殖が見られないこと;(f)宿主域迅速試験において少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または4~6時間にわたるファージ感染の後に生存細菌の増殖曲線が低下すること;または(g)宿主域迅速試験からのファージ感染細菌のOmnilogバイオアッセイを用いたときの、テトラゾリウム色素に基づいた、活性細菌の代謝からの色の変化における、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200または50~200という呼吸の相対単位の妨害または遅れによって計測され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、ファージ-宿主機械学習モデルの構築において、ファージ-宿主機械学習モデルを訓練するためのトレーニングセット、バリデーションセットおよびテストセットに対して、同じ種の病原菌を使用することができる。異なる実施形態では、ファージ-宿主機械学習モデルを訓練するためのトレーニングセット、バリデーションセットおよびテストセットに対して、異なる種の病原菌を使用することができる。さらなる実施形態では、臨床的、遺伝子型的および/または代謝的に多様な株の病原菌を含む細菌株を、機械学習モデルを生成するために使用することができる。代謝的に多様な株の例としては、抗生物質耐性、様々な糖を利用する能力、様々な炭素源を利用する能力、様々な塩の上で生育する能力、酸素の存在下もしくは非存在下において成長する能力、または細菌の運動性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
いくつかの実施形態において、上記モデルは、複数の細菌株および/または複数のファージ株および/またはそれらの組み合わせにおけるゲノム領域を、「感受性」ファージ-宿主プロファイルか「耐性」ファージ-宿主プロファイルと相関関係にあると識別し(「予測パターン」)、この情報を用いることにより、クエリー細菌内の予測パターンの有無に基づいて、クエリー細菌がファージに対して感受性であるか耐性であるかを予測することができる。1つの実施形態において、臨床サンプルが、細菌感染症に罹患している被験体から採取される。通常、その被験体は、MDR細菌に感染しているが必ずしもそうではない。1つの実施形態において、クエリー細菌の全ゲノムが、好ましくは、高速の配列決定方法を用いて、配列決定される。いくつかの実施形態において、上記モデルは、ゲノム領域を明示的に出力することがあり、重みまたはパラメータ(ファージ-宿主感受性配列)を関連付けるが、他の実施形態では、その情報は、そのモデルの中に(例えば、階層型ニューラルネットまたは分類器に)隠されるかまたは組み入れられることがある。
【0094】
ブロック200に記載されているような配列データの処理によって、クエリー細菌に対するファージ-宿主特異性が予測される。他の実施形態では、感染性細菌の感受性/耐性プロファイルを決定するために、細菌のゲノム全体を配列決定するのではなく、予測パターンを増幅および/または配列決定し得る。
【0095】
本明細書中で使用されるとき、「細菌のゲノム」および/または「ファージのゲノム」の「配列決定」は、細菌/ファージゲノム全体の完全な配列決定と、「予測パターン」の一部として識別された目的の重要な領域の配列決定との両方を包含する。好ましい実施形態において、細菌/ファージのゲノムのゲノム全体、または少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%もしくは少なくとも60%が、配列決定される。さらに好ましい実施形態では、細菌のゲノムの遺伝子コード領域が、配列決定される。さらに好ましい実施形態では、下記の表1に列挙される遺伝子が、配列決定される。さらに好ましい実施形態では、本開示の方法によって予測パターンを含むと識別された領域が、配列決定される。
【0096】
いったん機械学習モデルが生成されると、クエリー細菌への感染およびその殺滅が可能であり得るファージが速やかに識別され得る(クエリー細菌のゲノムを宿主-ファージ機械学習モデルと比較することによって)。このクエリー細菌のファージ-宿主プロファイルを識別できることは、細胞培養に頼らないので、速く行うことができ、より迅速な形式で、切望される治療を被験体に提供できる。
【0097】
機械学習モデル
図1Aでは、少なくとも1つのプロセッサーおよびプロセスを行うための命令が記憶されたメモリーを有する電子デバイスによって行われ得る例示的な方法を含む本発明の1つの実施形態が説明されている。その方法は、複数の細菌株のゲノム配列に対するゲノム配列データ(100)を受信するコンピュータ(120)を含む。いくつかの実施形態において、その配列データは、複数の細菌株と複数のファージ株の両方のゲノム配列も含んでいることがある。いくつかの実施形態では、複数の細菌株に対する治療的組成物-宿主感受性プロファイルデータ(例えば、ファージ-宿主感受性プロファイルデータ、抗生物質宿主感受性プロファイル、殺菌剤-宿主感受性プロファイルおよび/または組み合わせの感受性プロファイル)(110)も提供される。(130)において、機械学習モデルが、入力データ(例えば、データセット100およびデータセット110)に基づいて訓練される。他の実施形態では、135の矢印によって示されているように、訓練工程130が繰り返し行われる。得られる出力は、深層学習モデルを含む機械学習モデル(180)である。これは、配列および重みを含む人間可読の出力またはパラメータ(例えば、治療的組成物-宿主感受性配列のセット(例えば、ファージ-宿主感受性配列、抗生物質-宿主感受性配列および/または殺菌剤-宿主感受性配列)(180))を含む計算モデルであり得るか、またはその計算モデルは、入力配列を与えられて、出力される感受性推定値を単に生成する、隠れモデル、階層型モデルまたは複合モデルにおける隠れモデルであり得る。
【0098】
図1Bでは、どのように機械学習モデル(130)が訓練されて、治療的組成物-宿主特異性(例えば、ファージ-宿主特異性、抗生物質-宿主特異性、殺菌剤-宿主特異性および/または組み合わせの特異性)についての予測プロファイルを生成する(170)のかという1つの実施形態が説明されている。詳細には、治療的組成物-宿主感受性プロファイル(例えば、ファージ-宿主感受性プロファイル、抗生物質-宿主感受性プロファイル、殺菌剤-宿主感受性プロファイルおよび/または組み合わせの感受性プロファイル)と配列パターンを関連付けることによって、複数の細菌株を特徴付ける(140)。これは、類似および非類似の治療的組成物-宿主感受性プロファイルに対する、類似および非類似のゲノム配列パターンを識別すること(150および160)によって達成される。工程170では、治療的組成物-宿主特異性についての予測プロファイルが、各細菌株に対して出力される。しかしながら、いくつかの実施形態では、治療的組成物-宿主特異性についての予測プロファイルを出力する(工程170)のではなく、予測プロファイルは、訓練された機械学習モデルによって、例えば、様々な内部重みおよびモデルパラメータとして、内部に記憶される。
【0099】
図1Cは、教師なし機械学習モジュール、および追加のデータが、ある実施形態に従って利用可能になったときのモデルの更新を説明している流れ図を提供している。この実施形態において、(a)複数の細菌株のゲノム配列または(b)複数の細菌株と複数のファージ株との両方のゲノム配列に対するものであり得るゲノム配列データ(100)が、教師なしモデルを用いて当てはめられる。例えば、そのデータは、クラスター化され得るか、ニューラルネットワーク(階層型ニューラルネットワークを含む)に当てはめられ得るか、または潜在変数モデルを使用してファージ宿主感受性配列を生成し得る。いくつかの実施形態において、治療的組成物-宿主感受性プロファイル(例えば、ファージ-宿主感受性プロファイル、抗生物質-宿主感受性プロファイル、殺菌剤-宿主感受性プロファイルおよび/または組み合わせの感受性プロファイル)を用いることにより、特徴検出が支援され得る(182)。図1Cは、プロセスを更新するモデルも示している。例えば、追加のゲノム配列データが利用可能になると、この配列データは、モデルを再度当てはめるおよび洗練させるようにそのモデルに提供される。例えば、この追加のデータは、モデルが最後に生成された後、長期間(例えば、12ヶ月間)にわたって得られた患者コホートのクエリー細菌のセットであり得る。追加のデータによるモデルの洗練は、本明細書中に記載される任意の機械学習モデルに対して行われ得る。
【0100】
図1Dは、ある実施形態に従って機械学習モデルを生成するために、トレーニングセット、バリデーションセットおよびテストセットが関わる教師あり機械学習の繰り返しを説明している流れ図を提供している。この例では、まず、モデルアルゴリズムを選択する(例えば、分類器またはニューラルネット)。次に、各々がゲノム配列データ100および治療的組成物-宿主感受性プロファイル110をラベル(標的または出力)として使用する、トレーニングセット132、バリデーションセット133およびテストセット134を定義する。ゲノム配列データおよび治療的組成物-宿主感受性プロファイル110を使用してモデルをトレーニングセット132に当てはめることにより136、いくつかの予め定義された基準に従ってそのデータを最も当てはめる、モデルの重みおよび/またはパラメータが決定される。次いで、バリデーションセット137を用いて、例えば、入力された検証ゲノム配列を提供し、関連付けられたファージ-宿主感受性プロファイルとモデルの結果を比較することによって、当てはめられたモデルを検証する。次いで、そのモデルを調整し138(例えば、誤差逆伝播法を用いて)、当てはめおよび検証の工程を再度行う。この当てはめの繰り返しを、バリデーションセットにおいて満足のいく成績が得られるまで行う。いったん満足のいく成績が得られると、テストセット134を用いて、モデルの性能をテストし139、最終的なモデルを確保し、出力性能を記憶する。
【0101】
図2では、どのようにして、生成された機械学習モデル(180)を用いることにより、クエリー細菌に対する治療的組成物-宿主特異性の予測(例えば、ファージ-宿主特異性、抗生物質特異性、殺菌剤特異性および/または組み合わせの特異性)(200)、ならびに治療的組成物(例えば、ファージ、抗生物質、殺菌剤および/または組み合わせ)の選択(230)を行うことができるのかが説明されている。クエリー細菌のゲノム配列(190)が、訓練された機械学習モデル(130)に入力として提供される。いくつかの実施形態において、機械学習モデルは、クエリー細菌のゲノム配列(190)を機械学習モデル(130)と比較し、処理することにより、治療的組成物-宿主機械学習モデルと比べて類似および/または非類似の配列パターンを識別する(210)。次いで、クエリー細菌に対する特異性予測が行われる(220)。これらは、プロファイルマッチスコアの形態であり得、ここで、より高いプロファイルマッチスコアは、より高い治療的組成物-宿主感受性を表す。他の実施形態では、感受性確率が、各ファージ-宿主対に対して推定され得、出力され得る。(200)のプロセスによって、細菌感染症または細菌汚染を処置するために使用されるクエリー細菌に特異的であると識別された治療的組成物(例えば、ファージ、抗生物質、殺菌剤および/または組み合わせ)を選択するように、さらなる工程が取られ得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、訓練されたモデルは、識別された類似性配列または治療的組成物-宿主感受性配列を出力するのではなく、治療的組成物-宿主特異性の情報または学習した共通のゲノム配列パターンを内部に記憶し得る(工程210)。これらの実施形態において、訓練された機械学習モデルは、入力されたゲノム配列を内部で処理し、クエリー細菌に対する予測を直接出力する220。つまり、クエリー細菌のゲノム配列190が、クエリー細菌に対する治療的組成物-宿主特異性の予測を推定する(220)訓練されたモデルへの入力として提供され、どれだけ正確にそのモデルがこれらの推定を生成するかは、人間の調査にとっては明らかでない形態で隠されるかまたは記憶される。
【0102】
図3は、本明細書中に記載されるプロセスのうちのいずれか1つを行うように設定された例示的なコンピューティングシステムを描いている。この文脈において、そのコンピューティングシステムは、例えば、プロセッサー、メモリー、ストレージおよび入力/出力デバイス(例えば、モニター、キーボード、ディスクドライブ、インターネット接続など)を備え得る。しかしながら、そのコンピューティングシステムは、上記プロセスのうちのいくつかまたはすべての態様を行うための回路または他の専門のハードウェアを備え得る。いくつかの操作設定において、そのコンピューティングシステムは、1つまたはそれを超えるユニットを備えるシステムとして構成され得、それらのユニットの各々は、ソフトウェア、ハードウェアまたはそれらのいくつかの組み合わせにおいて、上記プロセスのいくつかの態様を行うように構成されている。そのコンピュータシステムは、クラウドベースのコンピューティングシステムを含む分散型システムであり得る。
【0103】
詳細には、図3は、本明細書中に記載されるプロセスを行うために使用され得るいくつかのコンポーネントを備えるコンピューティングシステム(300)を描いている。例えば、入出力(「I/O」)インターフェース330、1つまたはそれを超える中央処理装置(「CPU」)(340)およびメモリー部(350)。I/Oインターフェース(330)は、入力デバイスおよび出力デバイス(例えば、ディスプレイ(320)、キーボード(310)、ディスクストレージユニット(390)およびメディアドライブユニット(360))に接続されている。メディアドライブユニット(360)は、プログラム(380)および/またはデータを含み得るコンピュータ可読媒体(370)の読み出し/書き出しが可能である。I/Oインターフェースは、予め定義された通信プロトコル(例えば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、IEEE 802.15、IEEE 802.11、TCP/IP、UDPなど)を用いて別のデバイスにおける等価な通信モジュールと通信するためのネットワークインターフェースおよび/または通信モジュールを備え得る。
【0104】
本明細書中に記載されるプロセスの結果に基づく少なくともいくつかの値が、その後の使用のために確保され得る。さらに、非一時的コンピュータ可読媒体を用いることにより、上に記載されたプロセスのいずれか1つを、コンピュータを用いて行うための、1つまたはそれを超えるコンピュータプログラムを記憶する(例えば、有形的に組み入れる)ことができる。そのコンピュータプログラムは、例えば、汎用のプログラミング言語(例えば、Pascal、C、C++、Java(登録商標)、Python、JSON、Perl、MATLAB(登録商標)、Rなど)またはいくつかの専門の用途特異的な言語で記述され得る。一連の機械学習および深層学習ソフトウェアライブラリー(例えば、TensorFlow、サイキット-ラーン、Theano、Apache Spark MLlib、Amazon Machine Learning、Deeplearning4jなど)も使用することができる。図4Aでは、本明細書中に記載される方法およびシステムにおいて使用するための複数の内部層(402~414)を含む深層学習モデルの例示的な構造が説明されている。例えば、深層学習モデルは、入力層401、および整流線形ユニット(ReLU)の活性化を有する畳み込みフィルターのセット(整流器活性化関数としても知られる)402~414、および出力層415を有する畳み込みニューラルネットワークモデルであり得る。他の実施形態では、上に記載されたような他の深層学習モデルが使用され得る。図4Bでは、本明細書中に記載される方法およびシステムにおいて使用するための深層学習モデルの層におけるニューロン間のつながりが説明されている。例えば、第1層421における第1のニューロンセットは、第2層422における第2のニューロンセットにつながっている。そしてこれらが、第3層423における第3のニューロンセットにつながっている。各つながりに対して(すなわち、各矢印に対して)重みが適用される。訓練プロセスにおいて、それらの入力がモデルによって処理され、予測を既知の結果(教師あり学習)またはベンチマークと比較することなどによって、損失(または費用または誤差)関数が性能を推定する。次いで、個々の層に対する重みが、例えば誤差逆伝播法を用いて、変更され得、入力が再処理され、損失関数が再計算される。この訓練プロセスは、許容され得る性能が達成されるまで繰り返される。さらに、追加のデータ(例えば、特定の細菌に対する特定のファージまたは治療的組成物の使用による臨床結果)が得られると、モデルは、洗練され得、再訓練され得る。
【0105】
本明細書中に記載される方法のうちのいずれかを行うための、コンピュータが実行可能な命令を含む非一時的コンピュータ可読記録媒体も提供される。1つまたはそれを超えるプロセッサー、メモリーおよび1つまたはそれを超えるプログラムを備えるコンピュータシステムがさらに提供され、ここで、その1つまたはそれを超えるプログラムは、そのメモリーに記憶されていて、1つまたはそれを超えるプロセッサーによって実行されるように構成されており、1つまたはそれを超えるプログラムは、本明細書中に記載される方法のうちのいずれかを行うための命令を含んでいる。
【0106】
組成物および処置方法
別の態様において、本発明は、ブロック200として記載されるプロセスにおいて識別されるファージ、抗生物質および/または殺菌剤を含む治療的組成物(「カクテル」)(ファージ、抗生物質および/または殺菌剤の混合物)に関する。特定の実施形態において、その組成物は、自然界では見られない超高力価および超高純度の治療的に有効なファージカクテルである。さらに、本明細書中に記載される方法は、被験体の特定の細菌感染症に対して個別化されたファージカクテルを製剤化するために用いられ得るが、そのカクテルは、機械学習システムによって認識および定義された感染性のパターンを有する同じまたは非常によく似た細菌株に感染した他の個体を処置するためにも使用され得ることが本明細書中で企図される。したがって、本方法は、広い治療用途を有するファージカクテルを生成するために使用され得る。
【0107】
さらに、別の態様において、本発明は、ブロック200として記載されるプロセスにおいて識別される治療用分子(例えば、抗生物質または他の殺菌性化合物(混合物を含む))を含む治療的組成物に関する。好ましい実施形態において、その治療的組成物は、互いに相乗的に作用し、例えば、1つまたはそれを超える抗生物質および/または他の殺菌性化合物と併用して投与されるファージカクテルは、互いに相乗的に作用する。
【0108】
当業者が理解するように、薬学的組成物に含められる薬学的に許容され得るさらなる構成要素のタイプおよび量は、例えば、所望の投与経路、ならびに組成物の所望の物理的状態、溶解度、安定性およびインビボでの放出速度に応じて、変化し得る。
【0109】
本明細書中で企図されるように、ファージカクテル、および特にファージカクテルの薬学的組成物は、被験体への投与に適した重量または体積の単位の中に、ある量のファージを含む。被験体に投与される組成物の体積(投与量単位)は、投与方法に依存し、当業者は認識可能である。例えば、注射剤の場合、投与される体積は、通常、0.1~1.0ml、例えば、およそ0.5mlであり得、注射製品において、エンドトキシンの最大許容レベルは、70kgの人の場合、5EU/kg/時または350EU/時である。
【0110】
静脈内、皮膚、皮下または他の注射による投与の場合、薬学的製剤は、通常、好適なpHおよび安定性の非経口的に許容され得る水溶液の形態であり、等張性ビヒクル、ならびに薬学的に許容され得る安定剤、記憶剤、緩衝剤、酸化防止剤または当業者によく知られている他の添加物を含み得る。
【0111】
処置方法
本発明の方法に従って生成される治療的組成物(例えば、ファージカクテル)を用いることにより、被験体における細菌感染症または環境における細菌汚染を処置することができる。そのような処置方法は、それを必要とする被験体に、有効量の本明細書中に記載される組成物(例えば、ファージカクテル)を投与する工程を含む。
【0112】
活性な化合物または作用物質の適切な投与量は、患者ごとに異なり得ることが認識されるだろう。最適な投与量の決定には、一般に、治療効果のレベルと、投与の任意のリスクまたは有害な副作用とのバランスを取ることが必要である。選択される投与量レベルは、投与経路、投与時間、活性な化合物の排出速度、併用して使用される他の薬物、化合物および/または材料、ならびに患者の齢、性別、体重、症状、全般的な健康状態および以前の病歴を含むがこれらに限定されない種々の因子に依存する。活性な化合物の数および投与経路は、最終的には医師の裁量であるが、通常、投与量は、実質的な害のあるまたは有害な副作用を引き起こさずに、治療部位において、活性な化合物の濃度を達成するような量である。
【0113】
一般に、活性な化合物または作用物質の好適な用量は、体重1kgあたり約約1μgまたはそれ未満から約100μgまたはそれを超える量の範囲内である。一般的な指標として、本発明のファージカクテルの好適な量は、1投与量あたり約0.1μg~約10mgの量であり得る。
【0114】
さらに、本明細書中に記載される治療的組成物(ファージカクテルを含む、および/または1つもしくはそれを超える抗生物質と併用される)は、種々の剤形で投与され得る。これらとしては、例えば、液体調製物および懸濁液(非経口投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、鼻腔内(例えば、エアロゾル)投与または静脈内投与(例えば、注射剤の投与)のための調製物を含む)、例えば、選択されたpHに緩衝され得る、滅菌された等張性水溶液、懸濁液、エマルジョンまたは粘稠性組成物が挙げられる。特定の実施形態において、ファージカクテルは、注射剤(筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射または経皮注射による送達用の注射可能な組成物を含むがこれらに限定されない)として被験体に投与されることが本明細書中で企図される。そのような組成物は、当業者によく知られている種々の薬学的賦形剤、キャリアまたは希釈剤を用いて製剤化され得る。
【0115】
別の特定の実施形態において、本明細書中に記載されるファージカクテルを含む治療的組成物は、経口的に投与され得る。本発明の方法に従った投与のための経口製剤としては、種々の剤形、例えば、液剤、散剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カプレット剤、徐放製剤、または持効性であるか、もしくは液体充填物、例えば、ゼラチンで覆われた液体を有することにより、そのゼラチンが腸への送達のために胃で溶解する、調製物が挙げられ得る。そのような製剤は、本明細書中に記載される種々の薬学的に許容され得る賦形剤を含み得、それらの賦形剤としては、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースおよび炭酸マグネシウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0116】
特定の実施形態において、経口投与用の組成物は、液体製剤であり得ることが、本明細書中で企図される。そのような製剤は、例えば胃の内面と長時間接触させることによって、活性な作用物質の粘膜送達を容易にする、高い粘度を有する組成物を生成し得る、薬学的に許容され得る増粘剤を含み得る。そのような粘稠性の組成物は、従来の方法を用いて、また、薬学的賦形剤および試薬、例えば、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびカルボマーを用いて、当業者によって生成され得る。
【0117】
経鼻投与または呼吸(粘膜)投与に適した他の剤形、例えば、スクイーズスプレーディスペンサー、ポンプディスペンサーまたはエアロゾルディスペンサーの形態の剤形が、本明細書中で企図される。直腸送達または経腟送達に適した剤形も、本明細書中で企図される。また、本発明の構築物、コンジュゲートおよび組成物は、凍結乾燥され得、従来の方法による再水和を用いてまたは用いずに被験体に送達され得る。
【0118】
本明細書中で理解されるように、本明細書中に記載されるファージカクテルを含むかつ/または抗生物質もしくは他の殺菌性化合物と併用される治療的組成物を被験体に投与する方法は、種々のレジメンによって、すなわち、その被験体にとって臨床的に意味のある利益を提供するのに十分な量および様式で、ならびにそのような十分な時間にわたって、行われ得る。本発明とともに使用するのに適した投与レジメンは、従来の方法に従って当業者によって決定され得る。例えば、有効量が、単回用量、数日間にわたって投与される一連の複数回量、または単回用量の後のブースト量として被験体に投与され得ることが本明細書中で企図される。
【0119】
管理レジメン、例えば、投与される量、処置の数、および単位用量あたりの有効量などは、担当医の判断に依存し、被験体依存的である。この点において考慮されるべき因子としては、被験体の身体的状態および臨床的状態、投与経路、意図される処置目標、ならびにファージカクテルを含む治療的組成物の効力、安定性および毒性が挙げられる。当業者が理解するように、「ブースト量」は、最初の投与量と同じ投与量を含んでもよいし、異なる投与量を含んでもよい。実際に、被験体において所望の応答をもたらすために一連の用量が投与されるとき、当業者は、その場合、「有効量」が、1回より多く投与される投与量を含み得ることを認識するだろう。
【0120】
本明細書中の本発明は、実施形態を参照して説明されてきたが、本明細書中に提供されるこれらの実施形態および例は、本発明の原理および用途を単に例証するものであることが理解されるべきである。ゆえに、それらの例証的な実施形態および例に対して数多くの改変が行われ得ること、および添付の請求項によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の取り合わせも考案され得ることが理解されるべきである。本明細書に引用されたすべての特許出願、特許、文献および参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【実施例
【0121】
これより本発明は、以下の実施例を参照してさらに説明される。この後の説明は、単に例示目的であり、本発明の範囲内に入っている限りは、詳細に対して改変を行ってよいことが認識されるだろう。
【0122】
実施例1:環境起源からのファージの単離/特徴付け
粉末状のTSB培地(Becton,Dickinson and Company)を、3%w/vという最終濃度になるように生下水と混合し得る。種々の細菌株を対数期まで生育し得、1mLの各株を、TSB-下水混合物の100mLアリコートに加え、37℃、250rpmで一晩インキュベートし得る。翌日、1mLの感染したTSB-下水混合物を収集し、8,000×gで5分間遠心して、細胞および残屑をペレットにする。上清を、滅菌された0.22μm Spin-X(登録商標)遠心管フィルター(Coming,NY)に移し、6,000×gで遠心して、残りの細菌を除去する。濾液の10μLアリコートを、細菌株の100μLの指数増殖培養物と混合し、37℃で20分間インキュベートし、50℃に調節された2.5mLの溶融した上層寒天(0.6%寒天)と混合し、TSB寒天プレート(1.5%TSB寒天)の上に注ぐ。プレートを37℃で一晩インキュベートし、その後、ファージプラークを個別に収集し、例えばSambrookらが記載した標準的な手順を用いて、適切な分離菌に対して3回精製する。
【0123】
所望であれば、高力価ファージストックを、当業者に公知の標準的な手順によって、対応する宿主細菌において、増殖および増幅できる。ファージの大量調製物を、塩化セシウム密度遠心分離によって精製し得、0.22μmフィルター(Millipore Corporation,Billerica,MA)で濾過し得る。
【0124】
例えば、当該分野で周知であるように、塩化セシウム勾配によってファージを精製し得る。ここでは、生成された精製ファージ懸濁液(1ml)を、10%ポリエチレングリコール8000(Sigma-Aldrich)および0.5M塩化ナトリウムを用いて4℃で一晩、沈殿させ得る。続いて、その懸濁液を17,700gで15分間遠心し得、上清を除去し得る。あるいは、ファージ懸濁液を透析し得る。PEG/塩によって誘導された沈殿物を、0.5mlのTE緩衝液(pH9.0)に再懸濁し、20ulの20mg/mlプロテイナーゼKで56℃にて20分間処理した後、2%という最終濃度のSDSで65℃にて20分間処理する。次いで、この混合物を、少なくとも2回、フェノール/クロロホルム(25:24:1フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール,Sigma Aldrich)処理し、次いで、水相を、2.5体積の氷冷96%エタノールおよび0.1体積の酢酸ナトリウム(pH4.8)を用いて沈殿させる。遠心分離の後、ペレットを70%エタノールで洗浄し、100ulのTE緩衝液(pH8.0)に再懸濁する。次いで、ファージストックを4℃で無期限に記憶し得る。10倍の段階希釈物をプレーティングし、プラーク形成単位(PFU)を計算することによって、ファージ力価を評価し得る。
【0125】
他のファージ精製方法としては、オクタノールまたはブタノールを用いた分配分離が挙げられるが、これに限定されない。この手法において、ファージは、通常、水相にとどまり、エンドトキシンは、アルコール相によって吸収される傾向がある。
【0126】
実施例2:ファージ-宿主感受性プロファイルを生成するために使用されるアッセイ
本開示の方法を行うために、類似または同一のファージ-宿主感受性プロファイルを有する複数の異なる細菌株のゲノムを比較する必要がある。ある細菌のファージ-宿主感受性プロファイルがすでに知られている場合、以下のアッセイは、行う必要がない。しかしながら、ある細菌のファージ-宿主感受性プロファイルが不明である場合、以下のアッセイのいずれかを用いて、そのようなプロファイルを決定するかまたは実験的に得ることができる。
【0127】
細菌の感受性/耐性プロファイルを決定する1つの方法は、自動化された間接的な液体溶解アッセイに頼る。簡潔には、細菌株の一晩培養物を、1%v/vテトラゾリウム色素と混合されたTSBを含む96ウェルプレートのウェルに接種する。次いで、ファージを各ウェルに加え、プレートを、OmniLog(商標)システム(Biolog,InC,Hayward,CA)において37℃で一晩インキュベートした。Henry,Bacteriophage 2:3,159-167(2012)を参照のこと。テトラゾリウム色素は、細菌細胞の呼吸を間接的に計測する。呼吸は、テトラゾリウム色素の還元を引き起こし、その結果、色が紫色に変化する。各ウェルの色の強度を、細菌増殖の相対単位として定量する。宿主域の決定の場合、細菌を1ウェルあたり10コロニー形成単位(CFU)で接種し、10MOIとなるように、1ウェルあたり10プラーク形成単位(PFU)の濃度でファージを加える。カクテルの相乗作用研究の場合、細菌を1ウェルあたり10CFUで接種し得、100MOIとなるように、1ウェルあたり10PFUの濃度でファージを加え得る。
【0128】
第2のアッセイを用いることによっても、細菌の感受性/耐性プロファイルを決定することができる。このアッセイでは、希釈列スポットプレートアッセイを用いて、プラーク形成を観察する。詳細には、細菌の50μLの一晩培養物を用いて、55℃に調節された5mLの溶融上層寒天に個々に接種する。次いで、接種された寒天を、短時間ボルテックスすることによって完全に混合し、次いで、正方形のLB寒天プレートに広げる。上層寒天をおよそ45分間、固化させ、その時点において、各ファージの10倍希釈物における1010~10PFUの4μLアリコートをその表面上にスポットする。スポットを上層寒天に十分に吸収させた後、プレートを37℃で24時間インキュベートした。次いで、プラーク形成を評価し得る。
【0129】
時間-殺滅実験を用いることによっても、細菌の定量的な感受性/耐性プロファイルを提供することができる。ここでは、細菌の一晩培養物を、およそ1×10CFU/mLという最終濃度となるように新鮮なLBブロスで1:1000希釈する。次いで、20mLアリコートを250mLエルレンマイヤーフラスコに移し、200rpmで2時間振盪しながら37℃においてインキュベートする。次いで、サンプルに2×1011PFU/mLのファージまたは等体積の滅菌されたリン酸緩衝食塩水(PBS)を負荷し、インキュベーションに戻す。0、2、4および24時間後に100μLアリコートを採取し、PBSで段階希釈し、LB寒天にプレーティングする。プレートを37℃で24時間インキュベートし、プラーク形成を評価する。
【0130】
ファージ曝露に起因する細菌の変化は、ラマン分光法を用いてモニターすることもできる。ここでは、各サンプルをLB寒天プレートから得て、スペクトル収集のためにそれを直接、使い捨ての計量皿に移す。830nm Raman PhA Tシステム(Kaiser Optical Systems,InC,Ann Arbor,MI,USA)を用いて、ラマンスペクトルを収集することができる。時間-殺滅アッセイサンプルの場合は、3mmスポットサイズのレンズおよび100秒間の総捕捉時間を用いて、ならびに1mmスポットサイズのレンズおよび100秒間の総捕捉時間を用いて、スペクトルを収集する。次いで、6次多項式を用いるベースライン除去および1445cm-1ラマン振動バンドに対する強度正規化によって、スペクトルを前処理した後、解析する。
【0131】
感受性/耐性プロファイルを生成するときに考慮され得る殺菌活性の他の例としては、溶解、細菌増殖の遅れまたはファージ耐性菌の増殖が見られないことが挙げられる。さらに好ましい実施形態において、殺菌活性は、(a)細菌サンプル上に明瞭なポイントプラークを生成し得るファージ;(b)迅速画線法を用いたときプレート上で溶菌特性を示すファージ;(c)小または大バッチアッセイを用いたとき、濁度として少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5または0.1~0.5OD600吸光度差という細菌溶解;(d)静菌性ファージ感染における濁度として少なくとも0.1、少なくとも0.125、少なくとも0.15、少なくとも0.175、少なくとも0.2または0.1~0.2OD600吸光度差という細菌増殖の遅れ;(e)感染後少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または4~6時間、ファージ耐性菌の増殖が見られないこと;(f)宿主域迅速試験において少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間または4~6時間にわたるファージ感染の後に生存細菌の増殖曲線が低下すること;または(g)宿主域迅速試験からのファージ感染細菌のOmnilogバイオアッセイを用いたときの、テトラゾリウム色素に基づいた、活性細菌の代謝からの色の変化における、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200または50~200という呼吸の相対単位の妨害または遅れによって計測され得る。
【0132】
これらのアッセイを用いると、多様な細菌株セットに対して複数のファージを試験して、ファージ-宿主感受性プロファイルを生成することができる。このプロファイルは、ファージが細菌に感染する能力に基づき得、また、例えば、各ファージが液体中の細菌宿主の増殖を予防し得る時間の長さ(ホールドタイム)および/またはプラークの鮮明さ/濁度にも基づき得る。いったんファージ-宿主感受性プロファイルが、複数の細菌株に対して実験的に生成されると、それらの細菌株は、本明細書中に記載されるようなプロセスを用いて、類似のプロファイルを示す群にカテゴリー化され得る。
【0133】
この実施例に記載されているアッセイは、本明細書中に記載されるように使用される他の殺菌性化合物をスクリーニングするように容易に改変され得る。
【0134】
実施例3:ゲノムの配列決定、アセンブリおよびアノテーション
ファージおよび/または細菌のゲノムを、標準的な配列決定法を用いて配列決定し、当該分野で周知であるようなコンティグ解析を用いてアセンブルすることができる。例えば、ファージまたは細菌から単離された5ugのDNAを抽出し、配列決定受託施設に発送し得る。454FLX装置においてパイロシークエンス技術を用いて、40~65倍の配列決定カバレッジ(coverage)を得る。454FLX装置によって生成されたファイルをGSアセンブラー(454,Branford,Conn.)でアセンブルして、コンセンサス配列を生成する。正確なアセンブリ、二本鎖形成、およびホモポリヌクレオチド区域内で生じている残りの塩基矛盾の解明を保証するために、ゲノム配列の品質改善には、ゲノム全体で15~25個のPCR産物の配列決定が必要であり得る。タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を、当該分野で公知の標準的なプログラム(例えば、BLASTP)を用いて予測した後、手作業での評価および必要に応じて訂正を行うことができる。
【0135】
実施例4:クエリー細菌のファージ-宿主プロファイルの予測
実施例4および5は、細菌およびファージの間のヌクレオチド配列のパターンの識別を対象にしているが、同じアプローチが、任意の治療的組成物(例えば、抗生物質および/または他の殺菌性化合物(または治療用分子))に対する感受性か耐性を反映するゲノムパターン細菌を識別するために容易に改変され得る。
【0136】
本開示の方法は、臨床的に単離された細菌株に対する有効な抗菌剤としてそのファージが役立つ能力を有する、特定のファージの認識を容易にするゲノム配列パターンを発見するコンピュータAIニューラルネットワーク解析の能力に基づく。この目標を達成するために、本発明者らは、機械学習(例えば、ニューラルネットワーク解析)を使用して、(a)細菌または(b)細菌およびファージのゲノムにおけるヌクレオチド配列のパターンを検索することにより、特定のファージが、臨床分離細菌株を殺滅すること、その中で複製すること、それを溶解すること、またはその増殖を阻害することによって、抗菌剤として作用できるか否かを予測する。そのようなコンピュータベースの予測は、感染症を処置するためのファージを見つけ出すために必要な時間を有意に短縮し得る。
【0137】
このアプローチは、コンピュータを使用して、ある特定の細菌株に影響するファージまたはその逆(vis versa)の関連を見つけ出すこれまでの試みと異なる。以前のアプローチは、既知の攻撃的および防御的なファージおよび細菌系(細菌株におけるファージレセプター部位を含む)またはヌクレオチド相同性に基づく一致(ref6~7)を検索していた。しかしながら、そのような一致は、40億年間にわたって発展してきたファージ-細菌の相互作用の攻撃的ツールと防御的ツールとの間の相互作用の複雑さに起因して、信頼できる臨床上の指針を提供する可能性は低い(参考文献1~7)。
【0138】
細菌がファージから自身を守るように進化した機構の発見およびファージが生み出した対抗手段は、現在、集中的な研究活動の対象となっている。これまで明らかにされた機構は、数多くあるが、複雑であることが多い。それらには、最近解明された、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-Casファージ免疫機構から防御するために、ファージが特定のタンパク質を使用することが含まれる。例えば、Sampsonらによるレビュー“Revenge of The Phages:Defeating Bacterial Defense” Nat.Rev.Microbiol.11:675-687,2013から下記に転載される表1は、細菌の防御、およびそれらに打ち勝つために進化したファージの機構のいくつかを概説している。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0139】
地球上には1031種類のファージおよび1030種類の細菌が存在すると推定されていることを考えると、表1は、細菌の防御機構の兵器庫およびこれらの機構に対するファージの応答に関する本発明者らの記述のほんの最初の部分に過ぎない。この発見レベルでさえ、本発明者らは、細菌の防御が、重層的であることが多く、各細菌株は、これらの防御機構のうちの1つより多い防御機構を組み込んでいる可能性があることに気づかざるを得ない。
【0140】
現在のゲノム「マッチング検索」において記述できないあるタイプの相互作用の例の場合、ファージ感染に対する障壁として働き得る特定の外側多糖莢膜を進化させたある特定の大腸菌株を含む。この防御に対抗するために、ファージは、特定の外側多糖莢膜を消化する能力を有する尾部繊維に付着しているタンパク質(酵素)を進化させた。しかしながら、細菌「宿主」を保護するように進化したその特定の外側の多糖莢膜の各々を「消化する」ために、異なる酵素が必要である。細菌配列間およびウイルス配列の間の相同性に基づくゲノム「マッチング検索」は、いくつかの酵素によって細菌内で合成される、細菌の外側多糖莢膜を分解し得る酵素をコードする特定のファージタンパク質に対する遺伝子を認識する可能性は低く、今のところ間違いなく、ファージ酵素に対する配列データから特定の多糖に対するファージ酵素の特異性を予測することは可能でないだろう(Schollらによる参考文献、参考文献:8~10を参照のこと)。
【0141】
したがって、既知の攻撃的および防御的なファージ-細菌系に基づくストラテジーまたはヌクレオチド相同性に基づくマッチに対して述べられた限界は、(a)細菌ゲノムもしくは(b)細菌ゲノムおよびファージゲノムのヌクレオチド配列における予測(predicative)パターンを検索するためにまたは配列データに基づいてファージ-宿主特異性を分類もしくは識別するために機械学習/人工コンピュータ知能を用いる本明細書中に記載される方法によって克服され得る。
【0142】
例えば、コンピュータの「ニューラルネットワーク解析」または深層学習の使用は、IBMの「Watson」システムが使用するようなベイズ機械学習と組み合わされる、コンピュータベースの翻訳およびゲームプレープログラムを開発するためにGoogleが使用した「Deep Mind」法と類似の様式での、ファージおよびそれらの「宿主」細菌のゲノムの検索に近い。そのようなパターンの発見は、抗菌剤として有効であると判明した特定のファージ株の影響を受けやすいと判明した臨床分離菌のヌクレオチドパターンに対して、それらのファージ株におけるヌクレオチドパターンを「認識する」ようにコンピュータを「訓練する」ことによって、容易になり得る。そのような試みには、特定のファージ株に耐性である細菌を用いてコンピュータシステムを訓練することも必要である。
【0143】
ファージゲノムと細菌宿主ゲノムとの両方の本明細書中に記載されるようなヌクレオチド配列において予測パターンを検索するための「ニューラルネットワーク解析」または他の機械学習プラットフォームの開発は、細胞-殺滅曲線を作成する必要なく、臨床/環境用途のために特定のファージ株に対する細菌株の感受性を予測する迅速な方法についての満たされていないニーズに応えた主要な経路を提供し得る。そのようなデータセットで「十分な」訓練が行われれば、人工知能コンピュータシステムは、提供されたゲノム配列データに基づいて、どのファージが特定の細菌に首尾よく感染できるかを予測でき、ならびに感染に耐性である細菌を予測できると予想される。
参考文献:
【化1】
【化2】
【0144】
実施例5:マルチプレックスPCRによる予測領域の増幅
この実施例では、ファージ-宿主感受性プロファイルについて本明細書中に記載された方法によって識別された予測領域を包含するゲノム配列を、ブロック130に記載されているように、解析し得る。このデータを用いて、プライマーをデザインすることにより、これらの予測領域をコントロールとともに増幅することができる。マルチプレックスPCRは、異なるプライマーセットを含み得、次いで、以下の条件下にて、宿主域解析において評価された株に適用され得る:95℃、6分の後、95℃、15秒、57℃、30秒および72℃、1分を31サイクル、ならびに72℃で7分という最後の伸長工程。
【0145】
本発明は、前述の本明細書中の実施形態に限定されず、それらの実施形態は、本発明の趣旨から逸脱することなく構成および詳細が変更され得る。本明細書中で参照される任意の特許、特許出願または他の刊行物の教示全体が、本明細書中での参照により、全面的に本明細書中に示されたかのように援用される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
治療的組成物機械学習モデルを生成するための、コンピュータによる方法であって、前記方法は、
(a)コンピュータデータベースシステム内の複数の細菌株のデータをコンパイルする工程であって、ここで、前記データは、複数の細菌株のゲノム配列データを含む、工程;
(b)コンピュータシステムのCPU上および記憶装置上の複数の細菌株の前記ゲノム配列データを少なくとも用いて、機械学習モデルを訓練する工程;および
(c)クエリー細菌ゲノムを受信するように構成されており、かつ前記訓練された機械学習モデルに基づいて、前記細菌ゲノムに対して感受性であると推定される少なくとも1つの治療的組成物を選択するように設定された治療的組成物機械学習モデルを記憶する工程を含む、方法。
(項目2)
前記訓練された機械学習モデルに基づいて前記細菌ゲノムに対して感受性であると推定される前記少なくとも1つの治療的組成物が、前記訓練された機械学習モデルに基づいて前記細菌ゲノムに対して感受性であると推定される、1つまたはそれを超えるファージ、抗生物質、殺菌剤、治療用分子または組み合わせを含む、項目2において特許請求された方法。
(項目3)
前記少なくとも1つの治療的組成物が、少なくとも1つのファージを含み、
工程(a)において、前記データが、複数のファージ株のゲノム配列データをさらに含み;
工程(b)において、機械学習モデルを訓練する工程が、コンピュータシステムのCPU上および記憶装置上の複数の細菌株のゲノム配列データおよび複数のファージ株のゲノム配列データを少なくとも使用し;
工程(c)において、クエリー細菌ゲノムを受信するように設定された前記治療的組成物機械学習モデルが、前記訓練された機械学習モデルに基づいて前記細菌ゲノムに対して感受性であると推定される少なくとも1つのファージを選択するように構成されている、
項目2に記載のコンピュータによる方法。
(項目4)
前記機械学習モデルが、治療的組成物感受性配列を生成する、項目1において特許請求された方法。
(項目5)
複数の治療薬から実験的に得られた細菌株の実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイルを受信する工程をさらに含み、前記治療的組成物感受性配列の生成が、前記治療的組成物-宿主感受性プロファイルを用いて特徴検出を行うことを含み、この特徴検出は、
(1)類似または同一の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する前記細菌株間で共有される共通のゲノム配列パターンを識別すること;および/または
(2)非類似の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する前記細菌株間で共有される非類似のゲノム配列パターンを識別すること
を含み;
前記モデルを訓練する工程は、前記治療的組成物感受性配列を治療的組成物-宿主感受性プロファイルと関連付けることによって各細菌株を特徴付けることおよび各細菌株に対する治療的組成物-宿主特異性についての予測プロファイルを生成することをさらに含む、項目4において特許請求された方法。
(項目6)
複数の細菌に対する追加のゲノム配列データおよび治療的組成物-宿主感受性プロファイルを受信する工程および前記機械学習モデルを洗練させる工程をさらに含む、項目5において特許請求された方法。
(項目7)
前記機械学習モデルが、教師なしプロセスにおいて訓練される、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記機械学習モデルが、深層学習ベースのモデルである、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
治療的組成物機械学習モデルを生成するための、コンピュータによる方法であって、前記方法は、
(a)コンピュータデータベースシステム内の複数の細菌株のデータをコンパイルする工程であって、ここで、前記データは、
(1)複数の細菌株のゲノム配列データ;
および
(2)複数の治療的組成物から実験的に得られた前記細菌株の実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイル
を含む、工程;
(b)コンピュータシステムのCPU上および記憶装置上の前記複数の細菌株のゲノム配列データおよび前記実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイルを用いて、機械学習モデルを訓練する工程;
(c)クエリー細菌ゲノムを受信するように構成されており、かつ前記訓練された機械学習モデルに基づいて、前記細菌ゲノムに対して感受性であると推定される少なくとも治療的な組成物を選択するように設定された治療的組成物機械学習モデルを記憶する工程
を含む、方法。
(項目10)
前記少なくとも治療的な組成物が、少なくとも1つのファージ、少なくとも1つの抗生物質、少なくとも1つの殺菌剤または組み合わせを含む、項目9において特許請求された方法。
(項目11)
前記機械学習モデルが、教師あり学習法または強化学習法を用いて繰り返し訓練される、項目9または10において特許請求された方法。
(項目12)
前記機械学習モデルが、深層学習モデルである、項目9、10または11において特許請求された方法。
(項目13)
複数のファージ株のゲノム配列データを受信する工程をさらに含み;前記機械学習モデルが、複数のファージ株の前記受信されたゲノム配列データを用いて訓練される、項目9~12のいずれか1項において特許請求された方法。
(項目14)
(1)類似または同一の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する前記細菌株間で共有される共通のゲノム配列パターンを識別すること;および/または
(2)非類似の治療的組成物-宿主感受性プロファイルを有する前記細菌株間で共有される非類似のゲノム配列パターンを識別すること
によって、治療的組成物-宿主感受性配列を生成する工程;および
前記治療的組成物-宿主感受性配列を治療的組成物-宿主感受性プロファイルと関連付けることによって各細菌株を特徴付ける工程、および各細菌株に対する治療的組成物-宿主特異性についての予測プロファイルを生成する工程
をさらに含む、項目9~13のいずれか1項において特許請求された方法。
(項目15)
前記機械学習モデルが、深層ニューラルネットワーク学習もしくは人工ニューラルネットワーク解析を含むニューラルネットワーク解析、または古典的モデル、例えば、ベイズ分析、ガウス解析、回帰分析および/もしくは木解析を組み込んでいる、項目1~14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性データが、プラークアッセイを行うことによって生成される、項目5~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
プラークのハローのサイズ、暗さ、鮮明さおよび/または存在が、計測される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性データが、蛍光アッセイ、吸収アッセイおよび透過アッセイからなる群より選択される測光アッセイを用いて生成される、項目5~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記機械学習モデルをさらに更新する工程が、
(1)複数の細菌株の追加のゲノム配列データ;
および
(2)複数の治療的組成物から実験的に得られた前記追加の細菌株の実験的に得られた治療的組成物-宿主感受性プロファイル
を受信する工程;および
前記機械学習モデルを再訓練する工程
を含む、項目1~18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
クエリー細菌の治療的組成物-宿主感受性を予測するための、コンピュータによって実行される方法であって、前記方法は、
(a)項目1~19のいずれか1項に記載の機械学習モデルを受信する工程;
(b)前記クエリー細菌のゲノム配列データを受信する工程;
(c)前記機械学習モデルに基づいて前記クエリー細菌の治療的組成物-宿主感受性を予測する工程
を含む、方法。
(項目21)
治療的組成物を選択するための方法であって、前記方法は、項目1~17のいずれか1項に記載の機械学習モデルへの入力として提供されたクエリー細菌ゲノムから生成されたプロファイルマッチスコアに基づいて少なくとも1つの治療的組成物を選択する工程を含み、ここで、より高いプロファイルマッチスコアが、より高い治療的組成物感受性を表す、方法。
(項目22)
複数の治療的組成物が、選択される、項目20または21のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記複数の治療的組成物が、薬学的に許容され得る組成物として製剤化される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記選択された治療的組成物が、異なる宿主域を有する、項目19~23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記選択された治療的組成物が、広い宿主域を有する治療的組成物と狭い宿主域を有する治療的組成物との混合物を含む、項目19~23のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記選択された治療的組成物が、互いに相乗的に作用する、項目19~25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記治療的組成物が、
(a)細菌増殖の遅れ;
(b)ファージ耐性菌の増殖が見られないこと;
(c)病原性が低いこと;
(d)1つまたはそれを超える薬物に対して感受性を取り戻すこと;および/または
(e)被験体内の増殖に対して適応度の低下を示すこと
から選択される活性を有する、項目19~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
項目19~27のいずれか1項において選択された治療的組成物を含む、組成物。
(項目29)
細菌感染症の処置を必要とする被験体における細菌感染症または細菌汚染を処置する方法であって、有効量の項目28に記載の組成物を前記被験体に投与する工程を含む、方法。
(項目30)
処置される前記細菌感染症または細菌感染症が、創傷感染症、術後感染症および全身性菌血症からなる群より選択される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記細菌感染症および/または細菌汚染が、「ESKAPE」病原体(Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter sp)から選択される細菌によって引き起こされる、項目29または30のいずれかに記載の方法。
(項目32)
1つまたはそれを超えるプロセッサー;メモリー;および1つまたはそれを超えるプログラムを備えるシステムであって、ここで、前記1つまたはそれを超えるプログラムは、前記メモリーに記憶されており、かつ前記1つまたはそれを超えるプロセッサーによって実行されるように構成されており、前記1つまたはそれを超えるプログラムは、項目1~31のいずれかを行うための命令を含む、システム。
(項目33)
前記複数の細菌株のうちの少なくとも1つの細菌株、前記クエリー細菌ゲノムおよび/または前記細菌感染症が、
a)多剤耐性であるか;
b)被験体において感染を引き起こす臨床分離菌であるか;
c)被験体において感染を引き起こす臨床分離菌であり、かつ多剤耐性であるか;
d)真のヒト感染症から得られるか;または
e)多様な起源から得られる、
項目1~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記多様な起源が、土壌、水処理設備、生下水、海水、湖、河川、小川、据付けの汚水溜、動物およびヒトの腸、ならびに糞便からなる群より選択される、項目33に記載の方法。
(項目35)
項目1~27のいずれか1項に記載の方法に従って生成された機械学習モデル。
(項目36)
クエリー細菌に対する治療的組成物-宿主感受性を予測するための、項目35に記載の機械学習モデルの使用。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B