(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/54 20060101AFI20240419BHJP
B29C 65/64 20060101ALI20240419BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
B29C65/54
B29C65/64
B32B7/12
(21)【出願番号】P 2023117848
(22)【出願日】2023-07-19
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513045127
【氏名又は名称】株式会社大北製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大北 幸史
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大輝
(72)【発明者】
【氏名】大北 浩司
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/105506(WO,A1)
【文献】特表2005-539126(JP,A)
【文献】特開昭49-102726(JP,A)
【文献】特開2014-168804(JP,A)
【文献】特開2012-148334(JP,A)
【文献】特開2017-170692(JP,A)
【文献】特開2023-096782(JP,A)
【文献】特表2005-538872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる第1部材と、樹
脂からなる第2部材とが電着塗装被膜からなる接着層を介して接合されてなり、
前記第1部材と前記第2部材との間は前記接着層により気密封止されており、
前記第2部材と前記接着層との間には、前記第2部材を構成する第1の樹脂材料と、前記接着層を構成する第2の樹脂材料とが互いに相溶してなる相溶層が形成されており、
前記接着層による前記第1部材と前記第2部材との間の気密性は、Heリーク量が1×10
-10Pa・m
3/sec以下である、接合体
の製造方法であって、
電着塗装により前記第1部材の表面に析出膜を形成して該析出膜を水洗した後、前記接着層の硬化温度未満の温度に加熱して水分を揮発させて未硬化状態の前記接着層を形成する接着層形成工程と、
前記未硬化状態の前記接着層と加熱して流動性を持たせた前記第2部材の形成材料の一部とを相溶させることにより、前記第1部材に前記第2部材を接合する接合工程と、
前記接合工程の後、前記接着層形成工程での加熱温度以上かつ前記接着層の硬化温度未満の温度に加熱する再加熱工程と、を含む、接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第2部材を形成する第1の樹脂材料は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、
前記接着層を形成する第2の樹脂材料は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂である、請求項1に記載の接合体の
製造方法。
【請求項3】
前記第2の樹脂材料は、電解活性型電着塗料である、請求項
2に記載の接合体
の製造方法。
【請求項4】
金属からなる第1部材と、金属からなる第2部材とが電着塗装被膜からなる接着層を介して接合されてなり、
前記第1部材と前記第2部材との間は前記接着層により気密封止されており、
前記接着層は、前記第1部材に形成された電着塗装被膜からなる第1の接着層と、前記第2部材に形成された電着塗装被膜からなる第2の接着層とが互いに相溶して形成されており、
前記接着層による前記第1部材と前記第2部材との間の気密性は、Heリーク量が1×10
-10
Pa・m
3
/sec以下である接合体の製造方法であって、
電着塗装により前記第1部材及び前記第2部材の表面に析出膜を形成して該析出膜を水洗した後、前記第1の接着層及び前記第2の接着層の硬化温度未満の温度に加熱して水分を揮発させて未硬化状態の前記第1の接着層及び前記第2の接着層を形成する接着層形成工程と、
前記未硬化状態の前記第1の接着層及び前記第2の接着層とを相溶させることにより、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合工程と、
前記接合工程の後、前記接着層形成工程での加熱温度以上かつ前記第1の接着層及び前記第2の接着層の硬化温度未満の温度に加熱する再加熱工程と、を含む、接合体の製造方法。
【請求項5】
前記第1部材における前記接着層を形成する前記電着塗装被膜により被覆される部分は、表面粗さRaが5.0μm以下である領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1部材は凹凸部又は溝部を有しており、前記第2部材は前記凹凸部または前記溝部に入り込んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記凹凸部又は前記溝部は前記接着層を形成する前記電着塗装被膜により被覆される部分に形成されており、前記凹凸部又は前記溝部の開口幅は、100μm以上である、請求項6に記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
前記第1部材は貫通孔を有しており、前記第2部材は前記貫通孔に入り込んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【請求項9】
前記貫通孔の直径は、前記第1部材の厚さ以上である、請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記相溶層の厚さは、1.0~25μmの範囲内である、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品、電気・電子製品、その他の工業製品など、主に軽量化の視点から金属素材から樹脂に置き換えが進んでいる。近年では単に樹脂への置き換えだけでなく、利用目的に合わせ金属材料の特性と樹脂部材の特徴を活かした接合体が使われるようになってきている。
【0003】
このような接合体では、金属と樹脂という異種材料同士の接合となるため、両者の接着性が十分には得られないおそれがある。そこで、接着性を高める手法が種々検討されている。例えば、特許文献1に開示の構成では、金属部材における樹脂部材との接合面をレーザ光を照射して微細で不規則な凹凸を形成し、当該接合面において溶融した樹脂部材の形成材料を当該凹凸に入り込ませることにより、金属部材と樹脂部材とを直接接合して両者の接着性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、レーザ光を照射して形成される凹凸は、微細で不規則な形状であるため、樹脂部材が凹凸の最深部まで到達せずに金属部材と樹脂部材との間に空間部が形成されることがある。そして、当該空間部が外部と連通することで金属部材と樹脂部材との間の気密性は低下することとなる。そのため、金属部材と樹脂部材との間の接着性は担保できたとしても、より高い気密性が要求される場合には当該要求を満たすことができない。そのため、高い接着性と高い気密性との両立を図るには改良の余地がある。
【0006】
また、金属同士の接合において両者を電気的に絶縁させた状態とする場合には、両者の間に絶縁層を介在させる必要がある。このような場合にも異種材料同士の接合となるため、上述の場合と同様に高い接着性と高い気密性との両立を図るには改良の余地がある。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、接着性と気密性に優れた接合体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、金属からなる第1部材と、樹脂又は金属からなる第2部材とが電着塗装被膜からなる接着層を介して接合されてなる接合体であって、
前記第1部材と前記第2部材との間は前記接着層により気密封止されており、
前記接着層による前記第1部材と前記第2部材との間の気密性は、Heリーク量が1×10-10Pa・m3/sec以下である、接合体にある。
【0009】
本発明の他の態様は、金属からなる第1部材と、樹脂からなる第2部材とが電着塗装被膜からなる接着層を介して接合されてなる接合体の製造方法であって、
電着塗装により前記第1部材の表面に析出膜を形成して該析出膜を水洗した後、前記接着層の硬化温度未満の温度に加熱して水分を揮発させて未硬化状態の前記接着層を形成する接着層形成工程と、
前記未硬化状態の前記接着層と前記第2部材の形成材料の一部とを相溶させることにより、前記第1部材に前記第2部材を接合する接合工程と、を含む、接合体の製造方法にある。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、金属からなる第1部材と、金属からなる第2部材とが電着塗装被膜からなる接着層を介して接合されてなる接合体の製造方法であって、
電着塗装により前記第1部材及び前記第2部材の表面に析出膜を形成して該析出膜を水洗した後、前記第1の接着層及び前記第2の接着層の硬化温度未満の温度に加熱して水分を揮発させて未硬化状態の前記第1の接着層及び前記第2の接着層を形成する接着層形成工程と、
前記未硬化状態の前記第1の接着層及び前記第2の接着層とを相溶させることにより、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合工程と、を含む、接合体の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
前記一の態様の接合体によれば、接着層は電着塗装被膜からなるため、第1部材と第2部材の両者に対して優れた接着性を有するものとすることができる。そして、当該接着層を介して第1部材と第2部材とが接合されるとともに、当該接着層により両者の間が気密封止されることにより、Heリーク量が1×10-10Pa・m3/sec以下という極めて高い気密性を呈する。これにより、当該接合体は極めて高い気密性を担保することができる。
【0012】
前記他の態様の接合体の製造方法によれば、半硬化状態の接着層と樹脂からなる第2部材の一部を相溶させることにより第1部材に第2部材を接合することができ、上述の通り、当該接着層により両者の間が気密封止されることにより、Heリーク量が1×10-10Pa・m3/sec以下という極めて高い気密性を呈することができる。
【0013】
前記さらに他の態様の接合体の製造方法によれば、半硬化状態の第1の接着層と半硬化状態の第2の接着層とを相溶させることにより第1部材に第2部材を接合することができ、上述の通り、当該接着層により両者の間が気密封止されることにより、Heリーク量が1×10-10Pa・m3/sec以下という極めて高い気密性を呈することができる。
【0014】
以上のごとく、本発明によれば、接着性と気密性に優れた接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1における、(a)接合体の上面図、(b)Ib-Ib線位置断面図、(c)接合体の斜視図。
【
図5】実施例1における、接合体の製造方法を説明するための概念図。
【
図6】変形例1における、接合体の製造方法を説明するための概念図。
【
図7】(a)変形例2における接合体の斜視図、(b)変形例3における接合体の斜視図。
【
図8】変形例4における(a)接合体の斜視図、(b)接合体の縦断面図。
【
図9】変形例5における(a)接合体の斜視図、(b)接合体の縦断面図。
【
図10】(a)変形例6における接合体の縦断面図、(b)変形例7における接合体の縦断面図、(c)変形例8における接合体の縦断面図。
【
図11】実施例2における、接合体の縦断面一部拡大図。
【
図12】実施例3における、(a)接合体の斜視図、(b)接合体の縦断面図。
【
図13】実施例4における、(a)密閉容器の斜視図、(b)密閉容器の一部拡大図、(c)密閉容器の縦断面一部図。
【
図14】変形例9における、(a)密閉容器の斜視図、(b)密閉容器の一部拡大図、(c)密閉容器の縦断面一部図。
【
図15】変形例10における、(a)密閉容器の斜視図、(b)密閉容器の一部拡大図、(c)密閉容器の縦断面一部拡大図。
【
図16】実施例5における、(a)密閉容器の斜視図、(b)密閉容器の一部拡大図、(c)密閉容器の縦断面一部拡大図。
【
図17】変形例11における、(a)密閉容器の斜視図、(b)密閉容器の一部拡大図、(c)密閉容器の縦断面一部拡大図。
【
図19】(a)実施例6における、接合体の製造方法を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記第1部材における前記接着層を形成する前記電着塗装被膜により被覆される部分は、表面粗さRaが5.0μm以下である領域を含むことが好ましい。この場合は、第1部材における電着塗装被膜により被覆される部分は比較的平滑な面となるため、第1部材における接着層を形成する電着塗装被膜の形成材料が密着しやすくなる。そのため、接着層と第1部材表面との間に空気が入り込むことが防止され、第1部材と第2部材との間の気密性を一層高めることができる。
【0017】
前記第2部材は樹脂からなり、前記第2部材と前記接着層との間には、前記第2部材を構成する第1の樹脂材料と、前記接着層を構成する第2の樹脂材料とが互いに相溶してなる相溶層が形成されていることが好ましい。これにより、第2部材と接着層との接着性及び気密性を一層向上することができる。
【0018】
前記相溶層の厚さは、1.0~25μmの範囲内であることが好ましい。この場合は、相溶層が樹脂部材と接着層との接着性及び気密性を維持するのに十分な厚さとなる。
【0019】
前記第2部材を形成する第1の樹脂材料は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、前記接着層を形成する第2の樹脂材料は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂であることが好ましい。この場合には、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックを第1の樹脂材料とすることにより、第2部材の絶縁性、耐熱性、耐薬品性、機械特性を向上できる。第2の樹脂材料として採用したエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂は、熱溶融されたエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックと濡れ性がよく互いになじみやすく、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して親和性及び相溶性の高い表面特性を有する。また、これらの材料は耐熱性に優れるため、成型時に熱溶融したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックによる熱劣化も生じにくい。従って、第1の樹脂材料及び第2の樹脂材料を上述のごとく採用することにより、第1部材と接着層との間及び第2部材と接着層との間に十分な密着性が得られる。また、第2部材と接着層とは樹脂同士のため互いに十分な密着性が得られる。その結果、第1部材と第2部材との間の気密性を一層向上させることができる。
【0020】
なお、本明細書では、エンジニアリングプラスチックとは、耐熱温度が100℃以上であって、いわゆる汎用プラスチックよりも引張強度及び弾性率が優れた樹脂材料を指す。また、スーパーエンジニアリングプラスチックとは、エンジニアリングプラスチックのうち耐熱温度が150℃以上の樹脂材料を指す。
【0021】
前記第2の樹脂材料は、電解活性型電着塗料であることが好ましい。この場合、接着層の硬化は電解活性型の硬化系となるため、接着層の硬化性と安定性の両立が図られ、第1部材と第2部材との間の接着性及び気密性の一層の向上が図られる。
【0022】
前記第1部材は凹凸部又は溝部を有しており、前記第2部材は前記凹凸部または前記溝部に入り込んでいることが好ましい。この場合は、凹凸部または溝部に入り込んだ第2部材が第1部材に対するアンカーとなるとともに両者の接合部の面積を大きくすることができるため、第1部材と第2部材との接合強度を向上することができる。
【0023】
前記凹凸部又は前記溝部は前記接着層を形成する前記電着塗装被膜により被覆される部分に形成されており、前記凹凸部又は前記溝部の開口幅は、100μm以上であることが好ましい。この場合には、接着層の形成材料が濡れ性の低い樹脂材料であっても凹凸部又は溝部に入りやすくなるため、第1部材と第2部材との間の気密性を一層高めることができる。
【0024】
前記金属部材は貫通孔を有しており、前記樹脂部材は前記貫通孔に入り込んでいることが好ましい。この場合には、貫通孔に入り込んだ樹脂部材が、金属部材に対するアンカーとなるため、金属部材と樹脂部材との接合強度を向上することができる。
【0025】
前記貫通孔の直径は、前記金属部材の厚さ以上であることが好ましい。この場合、貫通孔内に樹脂部材の形成材料を入り込ませやすくなり、金属部材と樹脂部材との接合強度を向上することができる。
【0026】
前記接合体の製造方法において、前記接着層形成工程では、前記未硬化状態の前記接着層を形成した後、再加熱することが好ましい。この場合は、接着層と樹脂部材との接着性を一層向上することができる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
前記接合体の実施例について、
図1~3を用いて以下に説明する。
本実施例1の接合体1は、第1部材10と第2部材20とが電着塗装被膜からなる接着層30を介して接合されてなる。そして、第1部材10と第2部材20との間は接着層30により気密封止されている。さらに、接着層30による第1部材10と第2部材20との間の気密性は、Heリーク量が1×10
-10Pa・m
3/sec以下である。
【0028】
以下、実施例1の接合体1について詳述する。
実施例1では、金属からなる第1部材10と樹脂からなる第2部材20とを用いる。そして、
図1(a)~(c)に示すように、金属からなる第1部材10が樹脂からなる第2部材20を貫通した状態となっている。実施例1において第2部材20は所定厚さの板状であるが、
図1(c)に示すように、外形は特定していない。なお、本実施例1では、第2部材20の面方向の一つである横方向をX、第2部材20の面方向の一つであって横方向Xに直交する縦方向をY、第2部材20の厚さ方向であって横方向Xと縦方向Yとに直交する高さ方向をZとする。
【0029】
1.第1部材10
第1部材10は金属からなり、銅製、アルミニウム合金製などとすることができ、本例では銅製である。また、本例では第1部材10は円柱形をなしているがこれに限定されない。
図1(b)に示すように、第1部材10の外表面において、第2部材20の貫通孔21内に位置する部位を含む高さ方向Zの中央領域は、後述の接着層30が接着される接合面11となっている。
【0030】
接合面11の一部又は全域は、接着層30と接合面11との間の気密性を担保する気密領域12が含まれる。気密領域12は平滑性が比較的高い面となっている。気密領域12は、表面粗さRaを所定値以下とすることが好ましく、例えば、5.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下とすることができる。本例では、接合面11の全域を気密領域12としている。
【0031】
2.接着層30
次に、接着層30について詳述する。
図1(a)~(c)に示すように、接着層30は、第1部材10において気密領域12を含む接合面11に設けられている。接着層30は電着塗装により形成された樹脂被膜である。接着層30は、後述する第2部材20を構成する樹脂材料よりも、第1部材10への密着性が高いものが採用される。例えば、接着層30の形成材料として、カチオン電着塗料である熱硬化性のエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂を採用することができ、本例では、熱硬化性のエポキシ樹脂として電解活性型電着塗料を採用している。これにより、気密領域12において、接着層30は第2部材20と第1部材10との間を気密封止して、気体の通過を防止するように構成されている。接着層30による気密性の詳細は後述する。
【0032】
図2に示すように、接着層30の厚さT0の平均値である平均厚さは、10~80μmの範囲内とすることができ、好ましくは20~50μmの範囲内であり、本例では平均厚さを30μmとしている。接着層30の平均厚さが10μm未満である場合は塗りむらや塗り残しが生じたりするため好ましくない。また、接着層30の平均厚さが80μmを超える場合は、層形成に過度の時間がかかるおそれがあり現実的でない。
【0033】
3.第2部材20
次に、第2部材20について詳述する。本実施例1では第2部材は樹脂からなる。第2部材20の形状は限定されないが、本実施例1では
図1(b)に示すように、板状としている。第2部材20を構成する樹脂材料としては、後述するインサート成形が可能なように熱可塑性の樹脂部材であることが好ましく、インサート成形時に高温に曝されることに鑑みて、耐熱温度が150℃以上であることが好ましい。また、第2部材20の樹脂材料と接着層30の形成材料との相溶性及び接着性を確保する観点から、両者の溶解性パラメータ(SP値)を近い値とすることが好ましい。例えば、接着層30の形成材料としてSP値11程度のエポキシ樹脂や、SP値13.6程度のポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂などを採用する場合を考慮して、第2部材20の樹脂材料として溶解性パラメータ(SP値)が9.5~15の範囲内のものを採用とすることができる。
【0034】
例えば、第2部材20を形成する樹脂材料としては、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂などのエンジニアリングプラスチックや、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリアミド・イミド(PAI)樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックを採用することができる。本例では、第2部材20を形成する樹脂材料としてPPS樹脂を採用している。
【0035】
図3に示すように、第2部材20と接着層30との間には、両者の樹脂部材が互いに相溶してなる相溶層40が形成される。なお、実際には、相溶層40と第2部材20及び接着層30との境界は不明瞭となっているが、本実施例では、相溶層40と第2部材20との境界41は第2部材20において変質が観察される部分のうち横方向Xにおいて接着層30にもっと近い部分と定義し、相溶層40と接着層30との境界42は接着層30において接着層30の変質が観察される部分のうち横方向Xにおいて第2部材20にもっと近い部分と定義する。
図3においては、各境界41、42は、上記定義に基づいて破線で示した。
【0036】
図3に示すように、相溶層40の厚さT1は、横方向Xにおける境界41、42との最大幅であるとして定義する。相溶層40の厚さT1は、1.0~25μmの範囲内であることが好ましい。相溶層40の厚さT1が上記範囲の最小値よりも薄い場合は第2部材20と接着層30との接着性が低下する恐れがある。また、相溶層40の厚さT1が上記範囲の最大値よりも大きい場合は相溶層40の形成に時間がかり、生産性が低下する恐れがある。
【0037】
4.評価試験
以下に、本例の接合体1における接着層30による気密性について詳述する。上述のように、接着層30による気密性の評価は、Heリーク試験により行う。Heリーク試験は、内部真空法(吹き付け法)により行った。すなわち、
図4に示すように、実施例1又は比較例の試験体WをHeリーク試験治具100にセットした後、Heボンベ102に貯留されたHeガスをHeスプレイガン103により吹き付けて、モニタ101aを備えるHeリークディテクタ101(アルバック社製、型番 HELIOT 904)を使用し、矢印104で示すように真空引きして試験体Wを通過したHeのリーク量を検出した。そして、Heのリーク量の合格基準は1.0×10
-10Pa・m
3/sec以下とした。
【0038】
本例の気密試験では、試料として本実施例1の接合体1と、比較例として接着層30を用いずに第1部材10の外周面に、第2部材20を溶融して接合した接合体を用いた。
【0039】
また、以下の引張強度試験により、接着層30による接着性の評価を行った。引張強度試験は、電子式引張試験機(米倉製作所社製、型番 CATY-1005Z)を用いて、接合体1及び上記比較例の接合体において、第1部材10と第2部材20とをそれぞれチャックし、第1部材10を軸方向Yに25.4mm/minの引張速度で破断するまで引っ張り、ピーク荷重を測定した。下記表1にHeリーク試験及び引張強度試験の結果を示す。
【0040】
【0041】
表1に示すように、比較例の接合体におけるHeリーク量は、2.0×10-7Pa・m3/sec程度であったが、本実施例1の接合体1におけるHeリーク量は1.0×10-10Pa・m3/sec以下であった。これにより、本実施例1の接合体1では極めて高い気密性を呈することが確認できた。また、比較例の接合体における引張強度に対して、本実施例1の接合体1における引張強度は十分高い値であり、本実施例1の接合体1では高い接着性を呈することが確認できた。
【0042】
5.製造方法
以下に、本例の接合体1の製造方法について説明する。
【0043】
図5(a)に示すように、第1部材10を用意し、接着層形成工程S1を行う。接着層形成工程S1では、第1部材10において気密領域12を含む接合面11に接着層30を形成する。本例の接着層形成工程S1では、電着塗装により、水溶性化された熱硬化性のエポキシ樹脂を第1部材10に付着させて当該エポキシ樹脂の硬化温度未満の温度環境で加熱して水分を揮発させて乾燥し、半硬化状態の接着層30を形成する。なお、第1部材10の外表面のうち接合面11以外の両端領域にマスキングを施して電着塗装を行うことにより、接合面11にのみ接着層30が形成されるようにしている。
【0044】
本例における接着層形成工程S1での電着塗装は以下のように行う。まず、第1部材10の表面に対して洗浄及び脱脂を行う。その後、20%の固形分濃度のカチオン型エポキシ樹脂系の電解活性型電着塗料(株式会社日本ペイント社製、型番インシュリード3030)を20%の固形分濃度に調整したものを電着塗装用の浴槽に満たす。そして、当該浴槽中に上記洗浄及び脱脂後の第1部材10を浸漬し、印加電圧200Vで3分間通電させる。その後、第1部材10を浴槽から取り出して水洗いし、乾燥炉で上記電解活性型電着塗料の硬化温度以下の130℃で20分乾燥させる。これにより、水分を揮発させて平均厚さ50μmの半硬化状態のエポキシ樹脂被膜(析出膜)からなる接着層30を形成することができる。
【0045】
その後、
図5(b)及び
図5(c)に示す接合工程S2において、インサート成形を行う。接合工程S2におけるインサート成形では、まず、
図5(b)に示すように上側金型51と下側金型52の2つに分割された金型を用意する。上側金型51は第1部材10の上側部分の外形に沿った凹部52aを有しており、下側金型52は第1部材10の下側部分と第2部材20の外形に沿った凹部52aを有している。そして、
図5(c)に示すように、上側金型51と下側金型52との間に半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる接着層30が設けられた第1部材10を、上側金型51と下側金型52との間にセットする。その後、加熱して流動性を持たせたPPS樹脂を上側金型51と下側金型52との間に流し込んで第2部材20を形成する。本例では、330℃に加熱して溶融させて流動性を持たせた。これにより、第1部材10と第2部材20との間の接着層30を介して第1部材10と第2部材20とを互いに接合させて、
図1に示す接合体1が形成される。
【0046】
本実施例では、
図1に示す接合体1の形成後、再加熱する。当該再加熱の目標温度は、例えば、上記乾燥時の温度以上とすることができる。加熱時間は例えば、90~250分の範囲内とすることができる。
【0047】
6.作用効果
次に、本例の接合体1における作用効果について、詳述する。
本例の接合体によれば、接着層30は電着塗装被膜からなるため、金属からなる第1部材10と樹脂からなる第2部材20の両者に対して優れた接着性を有するものとすることができる。そして、接着層30を介して第1部材10と第2部材20とが接合されるとともに、接着層30により両者の間が気密封止されることにより、Heリーク量が1×10-10Pa・m3/sec以下という極めて高い気密性を呈する。これにより、本例の接合体1は極めて高い気密性を担保することができる。
【0048】
また、第1部材10における接着層30を形成する電着塗装被膜により被覆される部分である接合面11は、表面粗さRaが5.0μm以下である気密領域12を含む。これにより、接合面11は比較的平滑な面となるため、接着層30に形成材料が接合面11に密着しやすくなる。そのため、接着層30と第1部材10の接合面11との間に空気層が入り込むことが防止され、第1部材10と第2部材20との間の気密性を一層高めることができる。
【0049】
また、本例では、第2部材20と接着層30との間には、第2部材20を構成する第1の樹脂材料と、接着層30を構成する第2の樹脂材料とが互いに相溶してなる相溶層40が形成されている。これにより、第2部材20と接着層30との接着性及び気密性を一層向上することができる。
【0050】
また、本例では、相溶層40の厚さT1は、1.0~25μmの範囲内である。これにより、相溶層40が第2部材20と接着層30との接着性及び気密性を維持するのに十分な厚さとなる。
【0051】
また、本例では、第2部材20を形成する第1の樹脂材料は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、接着層30を形成する第2の樹脂材料は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂である。そして、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックを第1の樹脂材料とすることにより、第2部材20の絶縁性、耐熱性、耐薬品性、機械特性を向上できる。第2の樹脂材料として採用したエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂は、熱溶融されたエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックと濡れ性がよく互いになじみやすく、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して親和性及び相溶性の高い表面特性を有する。また、これらの材料は耐熱性に優れるため、成型時に熱溶融したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックによる熱劣化も生じにくい。従って、第1の樹脂材料及び第2の樹脂材料を上述のごとく採用することにより、第1部材10と接着層30との間及び第2部材20と接着層30との間に十分な密着性が得られる。また、第2部材20と接着層30とは樹脂同士のため互いに十分な密着性が得られる。その結果、第1部材10と第2部材20との間の気密性を一層向上させることができる。
【0052】
また、本例では、接着層30を形成する第2の樹脂材料は、電解活性型電着塗料である。これにより、接着層30の硬化は電解活性型の硬化系となるため、接着層30の硬化性と安定性の両立が図られ、第1部材10と第2部材20との間の接着性及び気密性の一層の向上が図られる。
【0053】
また、本例の接合体1の製造方法によれば、半硬化状態の接着層30と第2部材20の一部を相溶させることにより第1部材10に第2部材20を接合することができ、上述の通り、接着層30により両者の間が気密封止されることにより、Heリーク量が1×10-10Pa・m3/sec以下という極めて高い気密性を呈することができる。
【0054】
また、本例の接合体1の製造方法において、接着層形成工程S1では、未硬化状態の接着層30を形成した後、再加熱する。これにより、接着層30と第2部材20との接着性を一層向上することができる。
【0055】
また、接着層形成工程S1を行う前に、接合面11にレーザ加工又はエッチング加工を施して、深さ及び開口幅が100μm以上500μm以下の凹部が複数形成することにより気密領域12を設けることとしてもよい。例えば、
図6に示す変形例1のように、レーザ照射装置50によって接合面11にレーザ光を照射することにより、接合面11にレーザ加工を施して上記凹部を形成することができる。気密領域12を形成する凹部は、接着層30の形成材料が行きわたりやすい適度な大きさとなるため、接着層30と第1部材10の接合面11との間に空気層が入り込むことが防止され、第1部材10と第2部材20との間の気密性を一層高めることができる。また、凹部による第2部材20のアンカー効果を奏することができ、第1部材10と第2部材20との接着性を一層高めることができる。
【0056】
なお、本実施例1では、第1部材10の形状は円柱状としたがこれに限らず、他の形状であってもよい。例えば、
図7(a)に示す変形例2のように板状であってもよいし、
図7(b)に示す変形例3のように四角柱状であってもよい。変形例2、3においても実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0057】
また、
図8(a)及び
図8(b)に示す変形例4のように、本実施例1における円柱状の第1部材10に円盤状のフランジ部15を設けて、当該フランジ部15と第2部材20の上面とにおいても接着層30を介して接合されていてもよい。当該変形例4では、フランジ部15の下面、すなわち、フランジ部15における第2部材20に対向する面にもレーザ光照射によりエッチング処理をして気密領域12としている。変形例4においても実施例1と同様の作用効果を奏するとともに、フランジ部15により第1部材10と第2部材20との接合部を大きくすることができるため、両者の接合強度と気密性を向上することができる。なお、
図9(a)及び
図9(b)に示す変形例5のように、第1部材10の形状を、
図8(a)及び
図8(b)に示す変形例4における第1部材10のフランジ部15よりも上部を取り除いた形状としてもよい。当該変形例5においても変形例4と同様の作用効果を奏する。
【0058】
また、本実施例1では、第1部材10を第2部材20の貫通孔21に挿通させたが、これに限らず、
図10(a)に示す変形例6のように、板状の第1部材10と板状の第2部材20とを平行に並べて、両者が厚さ方向(高さ方向Z)に重なる領域において接着層30を介して両者を接合することとしてもよい。
【0059】
さらに、
図10(b)に示す変形例7のように、第1部材10は凹凸部13を有しており、第2部材20は凹凸部13に入り込んでいるようにしてもよい。この場合は、凹凸部13に入り込んだ第2部材20が第1部材10に対するアンカーとなるとともに両者の接合部の面積を大きくすることができるため、第1部材10と第2部材20との接合強度を向上することができる。なお、凹凸部13は、プレス加工又は機械加工により形成することができる。また、凹凸部13は溝状に形成されて溝部であってもよい。
【0060】
図10(b)に示す変形例7では、凹凸部(溝部)13の開口幅W1は、100μm以上としている。これにより、接着層30の形成材料が濡れ性の低い樹脂材料であっても凹凸部(溝部)13に入りやすくなるため、第1部材10と第2部材20との間の気密性を一層高めることができる。
【0061】
さらに、
図10(c)に示す変形例8のように、第1部材10は貫通孔14を有しており、第2部材20は貫通孔14に入り込んでいるようにしてもよい。この場合には、貫通孔14に入り込んだ第2部材20が、第1部材10に対するアンカーとなるとともに両者の接合部の面積を大きくすることができるため、第1部材10と第2部材20との接合強度を向上することができる。
【0062】
図10(c)に示す変形例8では、貫通孔14の直径Dは、第1部材10の厚さT3以上としている。これにより、貫通孔14内に第2部材20の形成材料を入り込ませやすくなり、第1部材10と第2部材20との接合強度を向上することができる。
【0063】
以上のごとく、本実施例1及び変形例2~7によれば、接着性と気密性に優れた接合体1を提供することができる。
【0064】
(実施例2)
上述の実施例1では、第1部材10における接合面11の全域に気密領域12を形成したが、本実施例2では、これに替えて、
図11に示すように、第1部材10における接合面11は、平滑度が高い気密領域12と、粗面化処理が施されて気密領域12よりも大きい表面粗さを有する粗面領域16とを含む。その他の構成は、実施例1の場合と同様であるため、実施例1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
当該実施例2では、上述の通り、第1部材10における接合面11は、気密領域12と、粗面領域16とを含むことにより、平滑度が高い気密領域12において第2部材20と第1部材10との間の気密性を高めることができるとともに、粗面領域16において第2部材20と第1部材10との間の接着性を高めることができる。これにより、接着性の向上と気密性の向上の両立を一層図ることができる。なお、本実施例2においても、実施例1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0066】
(実施例3)
実施例3の接合体1では、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、第2部材20は板状をなしているとともに貫通孔21を有しており、第1部材10は板状をなしているとともに貫通孔21を覆うように第2部材20に重なっている。そして、第1部材10と第2部材20との重なり部分において第2部材20と第1部材10とが接着層30を介して接合されており、接着層30は貫通孔21において第2部材20と第1部材10との間を気体が通過することを防止している。その他の構成は、実施例1の場合と同様であるため、実施例1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
実施例3の接合体1によれば、第1部材10により貫通孔21が閉塞された第2部材20を図示しない収容容器の蓋に用いることで、第1部材10が当該収容容器の気密性を低下させることが防止されるため、気密性に優れた収容容器を提供することができる。なお、本実施例3においても、実施例1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0068】
(実施例4)
実施例4の接合体1は、
図13(a)~
図13(c)に示すように、第2部材20は密閉容器60の一部であって、密閉容器60の開口部61を形成する筒状の樹脂筒状部25を有している。第1部材10は筒状をなしているとともに樹脂筒状部25の内側に樹脂筒状部25と同軸状に配置されている。そして、第1部材10の外周面10aには気密領域12が設けられているとともに樹脂筒状部25の内周面25aと接着層30を介して接合されており、接着層30は樹脂筒状部25の内周面25aと第1部材10の外周面10aとの間を気体が通過することを防止している。その他の構成は、実施例1及び変形例4の場合と同様であるため、これらの場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
実施例4の接合体1によれば、密閉容器60の開口部61の強度を向上することができるとともに、第1部材10と第2部材20との接合面11が密閉容器60の気密性を低下させることを防止でき、気密性に優れた密閉容器60を提供することができる。なお、当該密閉容器60は、水素ガスやヘリウムガスなどの分子量の小さいガスを貯留可能なボンベとして使用することができる。なお、本実施例4においても、実施例1及び変形例4の場合と同様の作用効果を奏する。
【0070】
なお、本実施例4における第1部材10を、
図14(a)~
図14(c)に示す変形例9のように、
図13(a)~
図13(c)に示すフランジ部15を有しない形状としてもよい。また、
図15(a)~
図15(c)に示す変形例10のように、筒状の第2部材20の上端面に、貫通孔を有する円盤状の第1部材10を接着層30を介して接合してもよい。変形例10では、第2部材20の上端面と対向する第1部材10の下面10cに気密領域12が形成されている。これらの変形例6及び6においても、本実施例4と同様の作用効果を奏する。
【0071】
(実施例5)
実施例5の接合体1は、
図16(a)~
図16(c)に示すように、第2部材20は、密閉容器60の一部を構成しているとともに筒状をなして密閉容器60の開口部61を形成する樹脂筒状部26を有しており、樹脂筒状部26の外側に、筒状をなす第1部材10が樹脂筒状部26と同軸状に配置されている。そして、樹脂筒状部26の外周面26aと、第1部材10の内周面10bとが接着層30を介して接合されている。そして、接着層30は樹脂筒状部26の外周面26aと第1部材10の内周面10bとの間を気体が通過することを防止している。実施例5では、第1部材10の内周面10bに気密領域12が形成されている。その他の構成は、実施例1の場合と同様であるため、実施例1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
実施例5の接合体1によっても、密閉容器60の開口部61の強度を向上することができるとともに、第1部材10と第2部材20との接合面11が密閉容器の気密性を低下させることを防止でき、気密性に優れた密閉容器60を提供することができる。
【0073】
なお、本実施例5における第1部材10を、
図17(a)~
図17(c)に示す変形例11のように、第1部材10が樹脂筒状部26の上端部を覆うように構成されていてもよい。当該変形例11においても、本実施例5と同様の作用効果を奏する。
【0074】
(実施例6)
図18に示す本実施例6は、金属からなる第2部材20を用い、当該第2部材20と金属からなる第1部材10とを接着層30を介して接合した接合体1である。本実施例6では、
図19(a)に示すように、第1部材10は、円筒状の軸部17と、軸部17の中央部に設けられた円盤状のフランジ部18とを有する。フランジ部18の裏面である接合面11には、第1の接着層31が設けられている。第1の接着層31は、上述の実施例1の接着層30と同等の構成である。
【0075】
図19(a)に示すように、第2部材20は、貫通孔21を有する板状をなしている。矢印Pで示すように、貫通孔21には第1部材10の軸部17が挿通される。第2部材20における貫通孔21の内壁と、フランジ部18とに対向する貫通孔21の周囲の領域には、第2の接着層32が設けられている。第2の接着層32は、上述の実施例1の接着層30と同等の構成である。
図19(b)及び(c)に示すように、第2部材20において第2の接着層32を形成する電着塗装被膜により被覆される部分である接合面22は上述の実施例1の接合面11と同等の構成となっており、接合面22は上述の実施例1の気密領域12と同等の構成を有する気密領域23を含む。
【0076】
本実施例6の接合体1は次のように製造される。まず、
図19(a)に示す接着層形成工程S1において、電着塗装により第1部材10及び第2部材20の表面に析出膜を形成して該析出膜を水洗した後、第1の接着層31及び第2の接着層32の硬化温度未満の温度に加熱して水分を揮発させて未硬化状態の第1の接着層31及び第2の接着層32を形成する。接着層形成工程S1での電着塗装は、上述の実施例1の場合と同様に行う。また、実施例1の場合と同様に、半硬化状態の第1の接着層31及び第2の接着層32の形成後、再加熱する。そして、矢印Pで示すように、第2部材20の貫通孔21に第1部材10の軸部17を挿通する。
【0077】
その後、
図19(b)に示すように、接合工程S2において、第2部材20の貫通孔21に第1部材10の軸部17を挿通した状態で加熱して、未硬化状態の第1の接着層31及び第2の接着層32とを相溶させることにより、第1部材10と第2部材20とを接合する。これにより、接着層30において、相溶層33が形成され、
図18に示す接合体1が形成される。
【0078】
本実施例6の接合体1によれば、第1部材10と第2部材20とは、樹脂製の電着塗装被膜からなる接着層30を介して接合されているため、互いに電気的に絶縁されているとともに、実施例1の場合と同様に、第1部材10と第2部材20との間は高い接着性と高い気密性との両立が図られている。
【0079】
本発明は上記各実施例及び各変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 接合体
10 第1部材
11 接合面
12 気密領域
13 凹凸部(溝部)
16 粗面領域
20 第2部材
30 接着層
40 相溶層
60 密閉容器
61 開口部
【要約】
【課題】接着性と気密性に優れた接合体を提供する。
【解決手段】接合体1は、第1部材10と第2部材20とが電着塗装被膜からなる接着層30を介して接合されてなるものである。そして、第1部材10と第2部材20との間は接着層30により気密封止されている。さらに、当該接合体1おいて、上記接着層30による第1部材10と第2部材20との間の気密性は、Heリーク量が1×10
-10Pa・m
3/sec以下となっている。
【選択図】
図1