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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/06 20150101AFI20240419BHJP
   A63B 53/02 20150101ALI20240419BHJP
   A63B 53/04 20150101ALI20240419BHJP
   A63B 60/02 20150101ALI20240419BHJP
   A63B 60/42 20150101ALI20240419BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240419BHJP
【FI】
A63B53/06 D
A63B53/02
A63B53/04 H
A63B60/02
A63B60/42
A63B102:32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023133260
(22)【出願日】2023-08-18
(62)【分割の表示】P 2022024435の分割
【原出願日】2022-02-21
(65)【公開番号】P2023144092
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2023-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517101137
【氏名又は名称】有限会社渥美文次商店
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渥美 和也
【審査官】遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】特許第5814677(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0178307(US,A1)
【文献】米国特許第5683308(US,A)
【文献】特許第6010523(JP,B2)
【文献】特開2004-121770(JP,A)
【文献】特許第5716592(JP,B2)
【文献】特許第6392009(JP,B2)
【文献】特許第5345763(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0054255(KR,A)
【文献】実用新案登録第2576341(JP,Y2)
【文献】実開昭60-153168(JP,U)
【文献】特許第6786524(JP,B2)
【文献】特表2000-511069(JP,A)
【文献】特開2003-230646(JP,A)
【文献】特開2006-326273(JP,A)
【文献】特許第6149835(JP,B2)
【文献】特開2014-8290(JP,A)
【文献】特表2021-533890(JP,A)
【文献】国際公開第2021/178652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00 - 53/14
A63B 60/00 - 60/64
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールを打撃する打撃面を有するヘッドと、
軸状に形成されるシャフトと、
前記シャフトの一端部と前記ヘッドとを接続するホーゼルと、
前記シャフトの他端部に取り付けられて使用者に把持されるグリップとを備え、
前記シャフトの前記一端部と前記ホーゼルとは、二箇所の屈曲部を介して、前記打撃面に向かう方向であり且つ前記シャフトの延在する上下方向に対して直交する方向である前後方向に互いにずれたクランク状に配置されており、
前記ホーゼルのヘッド接続側部分に設けられ前記上下方向に伸縮して前記グリップを基準として前記ヘッドの前記上下方向の位置を調節する第1伸縮機構及び前記シャフトの前記一端部側に設けられ前記前後方向に伸縮して前記一端部を基準として前記ホーゼル及び前記ホーゼルに接続された前記ヘッドの前記前後方向の位置を調節する第2伸縮機構が内蔵されていることを特徴とする、ゴルフクラブ。
【請求項2】
前記ホーゼルと前記ヘッドとの接続箇所に設けられ前記ヘッドに対する前記ホーゼルの水平方向の位置あるいは前記ホーゼルに対する前記ヘッドの水平方向の位置を調節する第1スライド機構が内蔵されていることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記シャフトの前記一端部側に設けられ記上下方向に伸縮して前記グリップを基準として前記ヘッドの前記上下方向の位置を調節する第3伸縮機構が内蔵されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
前記シャフト及び前記グリップに亘り内蔵された振動伝達部材を備え、
前記振動伝達部材の端部を取り付ける取付部材が、前記シャフトの内部で、その取付位置を、前記シャフトの長さ方向に調節自在に設けられたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
前記振動伝達部材がワイヤ、紐、ロッド部材、線状の弾性部材のいずれかで構成されたことを特徴とする、請求項4に記載のゴルフクラブ。
【請求項6】
前記振動伝達部材の中間部に、前記ヘッドが受ける振動を増幅して伝達する質量部材を備えていることを特徴とする、請求項4に記載のゴルフクラブ。
【請求項7】
前記質量部材が、その取付位置を前記シャフトの長さ方向に調節自在に設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールを打撃するためのゴルフクラブ及びゴルフクラブに着脱自在に設けられるゴルフクラブ用インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウッド,アイアン,ハイブリッド,ユーティリティ,パターなどのゴルフクラブにおいて、グリップが設けられたシャフトとヘッドとをホーゼルで接続したものが知られている。ホーゼルは、例えばシャフトやヘッドに対して着脱可能に固定される。このような構造により、シャフトやヘッドの交換が容易となる(特許文献1,2参照)。
また、ホーゼルを有していないゴルフクラブ、即ちグリップ付きシャフトとヘッドとを接続したゴルフクラブも、従来から一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-058337号公報
【文献】特開2014-036894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホーゼル付きゴルフクラブの場合、ゴルフボールを打撃したときにヘッドで生じる振動は、シャフトを介してグリップを把持する使用者(ゴルファー)の掌へと伝達され、ゴルフクラブの打感の一部として認識される。一方、シャフトとヘッドとの間に介装されるホーゼルは、このような振動の伝達を阻害するように作用しうる。そのため、ホーゼルが形成されたゴルフクラブでは、ホーゼルのないゴルフクラブと比較して、良好な打感が得られにくいという課題がある。なお、打感とは、ゴルフボールの打撃に際して使用者が抱く感触やショット感を意味する。一般的な打感には、物理的な振動だけでなく、打ち心地や節度感や達成感といった感覚的な操作の心地よさ(フィーリング)も含まれる。
また、ホーゼルを有しないゴルフクラブにおいても、何らかの工夫をしなければ、良好な打感が得られにくいとの課題もある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、打感を改善できるようにしたゴルフクラブ及びゴルフクラブ用インサートを提供することである。また、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は、以下に開示する態様又は適用例として実現できる。開示のゴルフクラブ及びゴルフクラブ用インサートは、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
(1)開示のゴルフクラブは、ゴルフボールを打撃する打撃面を有するヘッドと、軸状に形成されるシャフトと、前記シャフトの一端部と前記ヘッドとを接続するホーゼルと、前記シャフトの他端部に設けられて使用者に把持されるグリップとを備え、前記ホーゼルが、取り替えできない状態で前記ヘッド及び前記シャフトと一体に形成される。
【0007】
(2)前記ホーゼルが、前記打撃面に対して平行な面方向に延伸し一定の厚みを有する板状に形成されることが好ましい。
(3)前記ホーゼルが、矩形の平板状に形成されることが好ましい。
(4)前記ホーゼルが、前記打撃面に垂直な縦断面において前記打撃面に近い側が内側になるように湾曲した曲げ板状に形成されることが好ましい。
【0008】
(5)前記ホーゼルが、前記打撃面で生じる振動を検出する振動センサーを内蔵することが好ましい。
(6)前記ホーゼルが、中空に形成された第一空洞部を内部に有することが好ましい。なお、ホーゼル内の反響音をホーゼルの外部に伝達するための開口部を形成することが好ましい。
【0009】
(7)前記シャフトが、前記第一空洞部と連通する中空に形成された第二空洞部を内部に有することが好ましい。
(8)前記グリップが、前記第二空洞部と連通する中空に形成された第三空洞部を内部に有することが好ましい。
(9)前記グリップが、前記シャフトと一体に形成されることが好ましい。
【0010】
(10)前記グリップが、前記振動センサーで検出された情報に基づいて振動する振動装置又は音を発するスピーカを内蔵することが好ましい。
(11)長尺状に形成されて一端部を前記ヘッドに固定され、前記第二空洞部及び前記第三空洞部に内蔵されるとともに、前記打撃面で生じる振動を前記グリップに伝達する振動伝達部材と、前記第三空洞部の内部に設けられ、前記振動伝達部材の他端部と前記グリップとを連結する取付部材とを備えることが好ましい。
【0011】
(12)前記取付部材が、その位置を前記グリップの延在方向に調節可能に設けられることが好ましい。
(13)前記振動伝達部材が、ワイヤ、紐、ロッド部材、線状弾性部材のいずれかで構成されることが好ましい。
(14)前記取付部材が、前記グリップの延在方向に対して交差する方向に展開される膜状に形成されることが好ましい。
【0012】
(15)前記振動伝達部材が、振動を増幅するための質量部材を有することが好ましい。
(16)前記ヘッドが、前記第一空洞部と連通する中空に形成された第四空洞部を内部に有することが好ましい。
(17)前記第四空洞部の内部に設けられ、前記打撃面で生じる振動を前記振動伝達部材に伝達する補助振動伝達部材を備えることが好ましい。
【0013】
(18)前記ヘッドが、前記ヘッドの重心位置を変更するためのウェイト部材を有することが好ましい。
(19)前記ウェイト部材を移動させる駆動源を備え、前記ウェイト部材が、前記ヘッドの上面に凹設される中空円柱状の凹部の内側に設けられ、前記駆動源が、前記凹部の内周面に沿って前記ウェイト部材を回転駆動することが好ましい。
【0014】
(20)開示のゴルフクラブは、シャフトと、前記シャフトの一端部に設けられてゴルフボールの打撃面を有するヘッドと、前記シャフトの他端部に設けられるグリップとを具備するゴルフクラブであって、前記シャフトが、中空に形成されたシャフト空洞部を内部に有するとともに、前記グリップが、前記シャフト空洞部と連通する中空に形成されたグリップ空洞部を内部に有し、長尺状に形成されて一端部を前記ヘッドに固定され、前記シャフト空洞部及び前記グリップ空洞部に内蔵されるとともに、前記打撃面で生じる振動を前記グリップに伝達する振動伝達部材と、前記グリップ空洞部の内部に設けられ、前記振動伝達部材の他端部と前記グリップとを連結する取付部材とを備える。
【0015】
(21)前記取付部材が、その位置を前記グリップの延在方向に調節可能に設けられることが好ましい。
(22)前記振動伝達部材が、ワイヤ、紐、ロッド部材、線状弾性部材のいずれかで構成されることが好ましい。
(23)前記取付部材が、前記グリップの延在方向に対して交差する方向に展開される膜状に形成されることが好ましい。
(24)前記振動伝達部材が、振動を増幅するための質量部材を有することが好ましい。
【0016】
(25)前記ヘッドが、前記シャフト空洞部と連通する中空に形成されたヘッド空洞部を内部に有し、前記ヘッド空洞部の内部に設けられ、前記打撃面で生じる振動を前記振動伝達部材に伝達する補助振動伝達部材を備えることが好ましい。
(26)開示のゴルフクラブは、シャフトと、前記シャフトの一端部に設けられてゴルフボールの打撃面を有するヘッドと、前記シャフトの他端部に設けられるグリップとを具備するゴルフクラブであって、前記シャフトが、中空に形成されたシャフト空洞部を内部に有するとともに、前記グリップが、前記シャフト空洞部と連通する中空に形成されたグリップ空洞部を内部に有し、長尺状に形成されて一端部を前記ヘッドに固定され、前記シャフト空洞部及び前記グリップ空洞部に内蔵されるとともに、前記打撃面で生じる振動を前記グリップに伝達する振動伝達部材と、前記グリップ空洞部の内部に設けられ、前記振動伝達部材の他端部と前記グリップとを連結する取付部材とを備え、前記振動伝達部材が磁性体を含有して構成され、前記振動伝達部材で伝達される振動を検知して電気的に変換する第1ピックアップが前記振動伝達部材に近接して設けられる。
【0017】
(27)前記取付部材が、その位置を前記グリップの延在方向に調節可能に設けられることが好ましい。
(28)前記取付部材が、前記グリップの延在方向に対して交差する方向に展開される膜状に形成されることが好ましい。
(29)前記振動伝達部材が、振動を増幅するための質量部材を有することが好ましい。
【0018】
(30)前記ヘッドが、前記シャフト空洞部と連通する中空に形成されたヘッド空洞部を内部に有し、前記ヘッド空洞部の内部に設けられ、前記打撃面で生じる振動を前記振動伝達部材に伝達する補助振動伝達部材を備え、前記補助振動伝達部材が磁性体を含有して構成され、前記補助振動伝達部材で伝達される振動を検知して電気信号に変換する第2ピックアップが前記補助振動伝達部材に近接して設けられたことが好ましい。
【0019】
(31)前記第1ピックアップで検知された電気信号を増幅する第1増幅器がゴルフクラブの内部又は外部に設けられていることが好ましい。
(32)前記第2ピックアップで検知された電気信号を増幅する第2増幅器がゴルフクラブの内部又は外部に設けられることが好ましい。
【0020】
(33)開示のゴルフクラブは、シャフトと、前記シャフトの一端部に設けられてゴルフボールの打撃面を有するヘッドと、前記シャフトの他端部に設けられるグリップとを具備するゴルフクラブであって、前記打撃面に設けられ、前記ゴルフボールとの衝突により面振動するとともに前記ゴルフボールに反力を与える面状に形成された面振動部材からなるインサートを備える。
【0021】
(34)前記面振動部材が、フレームの内側に紐をネット状に編み込んでなるネット部材を有することが好ましい。
(35)前記紐が、天然繊維,合成繊維,弾性繊維の少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
(36)前記面振動部材が、前記打撃面に貼り付けられる膜部材を有することが好ましい。
【0022】
(37)前記膜部材が、金属板,樹脂板,ラバー膜及び皮革膜の少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
(38)前記面振動部材が、前記ヘッドに対して着脱可能に設けられることが好ましい。
(39)前記ヘッドが、内部を中空に形成されてなるヘッド空洞部を有することが好ましい。
(40)前記ヘッドが、前記ヘッド空洞部の内部に張設されるとともに接続ワイヤを介して前記面振動部材に接続されるヘッド内ワイヤを有することが好ましい。
【0023】
(41)前記シャフトが、内部を中空に形成されてなるシャフト空洞部を有することが好ましい。
(42)前記ヘッドが、前記シャフト空洞部の内部に張設されるとともに前記ヘッド内ワイヤに連結されるシャフト内ワイヤを有することが好ましい。
(43)前記シャフト内ワイヤが、前記グリップと前記ヘッド内ワイヤとを連結するように張設されて、前記面振動部材の振動を前記グリップに伝達することが好ましい。
【0024】
(44)開示のゴルフクラブは、ゴルフボールを打撃する打撃面を有するヘッドと、軸状に形成されるシャフトと、前記シャフトの一端部と前記ヘッドとを接続するホーゼルと、前記シャフトの他端部に設けられて使用者に把持されるグリップとを備え、前記のヘッドとホーゼルとの間に、フィン又は板部材を備える。
(45)開示のゴルフクラブは、ゴルフボールを打撃する打撃面を有するヘッドと、軸状に形成されるシャフトと、前記シャフトの他端部に設けられて使用者に把持されるグリップとを備え、前記のヘッドとシャフトの一端部との間に、フィン又は板部材を備える。
【0025】
(46)上記のフィン又は板部材の頂面に面状又は鎖状に照明部材が配置されていることが好ましい。
(47)上記ヘッドの上面にフィンが立設されていることが好ましい。
(48)上記のフィンの頂面に面状又は鎖状に照明部材が配置されていることが好ましい。
【0026】
(49)上記ヘッドの上面に、電気式表示部材が設けられることが好ましい。
(50)上記表示部材が外部からの指示により上記ゴルフボールの打ち出し方向および上記ゴルフボールが上記打撃面に当たったときの衝撃データのうちの少なくとも1つの情報を表示しうる液晶ディスプレイであることが好ましい。
(51)上記ゴルフボールの打ち出しの際に、リズムを知らせるリズムボックス機能を有するコントローラと、上記コントローラのリズムボックス機能および合成音声生成機能のいずれか一方の機能により生成されたリズム音および合成音声のうちの一方を出力するスピーカとが設けられることが好ましい。
(52)前記ヘッドの下面に、使用者の体格や打撃フォームに適したアダプターが着脱自在に装着させることが好ましい。
【0027】
(53)開示のゴルフクラブ用インサートは、シャフトと前記シャフトの一端部に設けられてゴルフボールの打撃面を有するヘッドと前記シャフトの他端部に設けられるグリップとを具備するゴルフクラブにおける前記打撃面に着脱自在に設けられるインサートであって、前記ゴルフボールとの衝突により面振動するとともに前記ゴルフボールに反力を与える面状に形成された面振動部材を有する。
(54)このインサートの前記面振動部材が、フレームの内側に紐をネット状に編み込んでなるネット部材を有することが好ましい。
【0028】
(55)このインサートの前記紐が、天然繊維,合成繊維,弾性繊維の少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
(56)このインサートの前記面振動部材が、前記打撃面に貼り付けられる膜部材を有することが好ましい。
(57)このインサートの前記膜部材が、金属板,樹脂板,ラバー膜及び皮革膜の少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
(58)このインサートの前記面振動部材が、上記ヘッドに釣り構造により設けられる銅鑼構造を有する振動部材として構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
開示のゴルフクラブによれば、ホーゼルをヘッドとシャフトとの間に取り替えできない状態で一体に設けることで、ゴルフボールを打撃したときにヘッドで生じる振動を効率よくシャフトに伝達することができ、打感を改善できる。
【0030】
また、開示のゴルフクラブによれば、ホーゼルを設けなくても、ゴルフクラブに種々の工夫を施すことにより、ゴルフボールを打撃したときにヘッドで生じる振動を効率よくシャフトに伝達することができ、打感を改善できる。
【0031】
また、開示のゴルフクラブ用インサートによれば、ホーゼルを有しないゴルフクラブにおいて、本インサートをヘッド打撃面に設けることにより、打撃したときにヘッドで生じる振動を効率よくシャフトに伝達することができ、打感を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】(A)は第1実施形態としてのゴルフクラブを例示する斜視図、(B)は第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための側面図である。
図2】(A)~(C)は第1実施形態としてのゴルフクラブのヘッドの種類を説明するための斜視図である。
図3】(A)~(F)は第1実施形態としてのゴルフクラブのホーゼルの変形例を説明するための斜視図である。
図4】(A)~(D)は第1実施形態としてのゴルフクラブのホーゼルの変形例を説明するための斜視図である。
図5】(A)~(E)は第1実施形態としてのゴルフクラブのホーゼルの変形例を説明するための側面図である。
図6】(A),(B)は第1実施形態としてのゴルフクラブの内部構造を例示する断面図である。
図7】(A),(B)は第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図8】(A),(B)は第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図9】(A),(B)は第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図10】第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図11】第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図12】第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図13】第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図14】(A),(B)は第1実施形態としてのゴルフクラブのヘッドの変形例を説明するための斜視図である。
図15】第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための斜視図である。
図16】(A)~(E)は第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための斜視図である。
図17】(A)~(H)は第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための上面図である。
図18】(A),(B)は第1実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図19】第2実施形態としてのゴルフクラブを例示するための断面図である。
図20】第2実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図21】第2実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図22】第2実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図23】第3実施形態としてのゴルフクラブの分解斜視図である。
図24】第3実施形態としてのゴルフクラブのネット部材の斜視図である。
図25】第3実施形態としてのゴルフクラブの断面図である。
図26】第3実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図27】第4実施形態としてのゴルフクラブを例示する斜視図である。
図28】(A),(B)は第4実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明する斜視図である。
図29】第5実施形態としてのゴルフクラブを説明するための断面図である。
図30】第5実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図31】第5実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図32】第5実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図33】第5実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図34】第5実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図35】第5実施形態としてのゴルフクラブの変形例を説明するための断面図である。
図36】第5実施形態としてのゴルフクラブに適用される処理ブロック図である。
図37】(A)は第6実施形態としてのゴルフクラブを示す部分斜視図で、(B)は第6実施形態としてのゴルフクラブの変形例を示す部分斜視図である。
図38】第6実施形態としてのゴルフクラブに適用される処理ブロック図である。
図39】(A),(B)は第1~6実施形態の変形例としてのゴルフクラブを説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[I.第1実施形態の説明]
[1.基本構造]
図1(A)は、第1実施形態としてのゴルフクラブ1(パター)を例示する斜視図である。このゴルフクラブ1は、ヘッド3,ホーゼル4,シャフト5,グリップ6を備える。ヘッド3の側面には、ゴルフボールを打撃する打撃面2(フェイス)が設けられる。なお、図1(B)に示すように、ホーゼル4とヘッド3とは打撃面2と面一になる(同一平面を形成する)ように設けてもよい。以下のホーゼル4とヘッド3との種々の設け方の例においても、ホーゼル4及びヘッド3が図1(B)に示すように打撃面2と面一となるように設けられてもよいことはいうまでもない。
図2(A)~(C)は、パターのヘッド3の種類を例示する斜視図である。ヘッド3の形状は、図2(A)に示すようなピン型であってもよいし、図2(B)に示すようなマレット型であってもよく、図2(C)に示すようなネオマレット型であってもよい。
【0034】
シャフト5は軸状(細長い棒状)に形成され、その一端部(図1中の下端部)がホーゼル4を介してヘッド3に接続される。シャフト5の断面形状は円形状であってもよいし、楕円形状であってもよく、多角形状であってもよい。また、使用者に把持される部位となるグリップ6は、シャフト5の他端部(図1中の上端部)に設けられる。シャフト5と同様に、グリップ6の断面形状は円形状であってもよいし、楕円形状であってもよく、多角形状であってもよい。
【0035】
ホーゼル4は、打撃面2に対して平行な面方向に延伸し、一定の厚みを有する板状に形成される。ホーゼル4は、例えば取り替えできない状態でヘッド3及びシャフト5と一体に形成される。シャフト5は、図3(A)に示すように、ホーゼル4の端面に接続されてもよいし、図3(B)に示すように、ホーゼル4の板面に接続されてもよい。また、ホーゼル4の厚み(板厚方向の寸法)は、シャフト5の太さとは無関係に設定されうる。ホーゼル4の厚みに比してシャフト5が太い場合には、図3(C)に示すように、シャフト5の下端部の断面積が小さくなるように加工してもよい。
【0036】
ホーゼル4を正面から見たときの幅寸法についても、シャフト5の太さとは無関係に設定されうる。例えば、図3(D)に示すように、ホーゼル4の幅寸法をシャフト5の太さと同程度の寸法に設定してもよい。また、シャフト5に接続される上端部のみで幅寸法が小さくなるような形状のホーゼル4を形成してもよい。この場合、図3(E)に示すように、ホーゼル4の上端部の幅寸法をシャフト5の太さと同程度の寸法に設定してもよい。あるいは、図3(F)に示すように、ホーゼル4の上端部をシャフト5よりも細くしてもよい。
【0037】
ヘッド3に固定されるホーゼル4の向きは、打撃面2に対して平行な面方向に延伸するように設定される。例えば、図4(A)に示すように、打撃面2に対して平行にホーゼル4を配置してもよい。あるいは、図4(B)に示すように、平板状のホーゼル4を斜めに倒して(例えば上部を打撃面2に向かって倒した姿勢で)配置してもよい。また、ホーゼル4に固定されるシャフト5の下端部の形状は、図4(A)に示すように、クランク形状にしてもよいし、直線状にしてもよく、あるいはベント形状(曲がり形状)にしてもよい。
【0038】
ホーゼル4の形状は、平板状に形成してもよいし、曲げ板状に形成してもよい。平板状にする場合、図4(A)に示すように、矩形の平板状に形成してもよいし、多角形(三角形や五角形)の平板状に形成してもよい。また、曲げ板状に形成する場合、図4(C)に示すように、打撃面2に垂直な縦断面において打撃面2に近い側が内側になるように湾曲させてもよいし、打撃面2に近い側が外側になるように湾曲させてもよい。図4(C)に示すゴルフクラブ1の側面図を図5(A)に例示する。
【0039】
また、ホーゼル4の形状は、不等四辺形の平板状に形成してもよい。図4(D)及び図5(B)は、馬蹄の側面形状を模した不等四辺形の平板状に形成されたホーゼル4を示す図である。図5(B)に示すホーゼル4の不等四辺形は、ヘッド3の上面に接する下辺51と、第一側辺52及び第二側辺53と、下辺51に対して非平行である上辺54とを有する。第一側辺52は、下辺51に対して40度以上かつ50度未満の角度Aをなすように形成される。また、第二側辺53は、下辺51に対して120度以上かつ130度未満の角度Bをなすように形成される。
【0040】
なお、図5(C)に示すように、シャフト5に伸縮機構55,56を内蔵させてもよい。一方の伸縮機構55は、シャフト5の延在方向(図中の上下方向)に伸縮可能な機構であり、グリップ6を基準としてヘッド3の上下方向の位置を調節するための機構である。同様に、他方の伸縮機構56は、伸縮機構55に直交する方向(図中の左右方向)に伸縮可能な機構であり、ヘッド3の左右方向の位置を調節するための機構である。また、ホーゼル4に伸縮機構57を内蔵させてもよい。伸縮機構57は、図中の上下方向に伸縮可能な機構であり、ヘッド3の上下方向の位置を調節するための機構である。
【0041】
さらに、ホーゼル4とヘッド3との接続箇所にスライド機構58を内蔵させてもよい。スライド機構58は、ヘッド3に対するホーゼル4の水平方向の位置(あるいは、ホーゼル4に対するヘッド3の水平方向の位置)を調節するための機構である。スライド機構58によるスライド方向は、図中の左右方向であってもよいし、紙面に垂直な方向であってもよい。もちろん、前述したように、ホーゼル4及びヘッド3の位置は、図5(D)に示すように打撃面2と面一になるように調節することもできる。また、ホーゼル4及びヘッド3の位置は、図5(E)に示すように打撃面2とは反対側の面2′(この面2′も打撃面2となりうる)と面一になるように調節することもできる。さらに、以下の実施形態においても、打撃面2とは反対側の面も打撃面として使用できる。
【0042】
上記の通り、一定の厚みで面状のホーゼル4を打撃面2に対して平行に延伸させることで、打撃面2の振動がホーゼル4の面振動(膜振動)に変換される。これにより、振動が効率よくシャフト5及びグリップ6へと伝達され、正確かつ繊細な振動を使用者に実感させることができる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。
【0043】
ヘッド3,ホーゼル4,シャフト5,グリップ6は、一体に形成されてもよい。なお、グリップ6は、他の部材3~5に対して別体に形成されてもよい。図6(A),(B)は、ヘッド3,ホーゼル4,シャフト5が一体に形成されたゴルフクラブ1の断面図である。このようなゴルフクラブ1は、例えば鋳造によって形成してもよいし、別体に形成された個々のパーツを溶接や溶着によってシームレスに接合することで形成してもよい。即ち、ホーゼル4は、取り替えできない状態でヘッド3及びシャフト5と一体に形成されてもよい。
【0044】
ヘッド3,ホーゼル4,シャフト5,グリップ6の各々の内部は、中空(内部に空洞がある状態)に形成されてもよいし、中実(内部に空洞がない状態)に形成されてもよい。図7(A),(B)は、ヘッド3,ホーゼル4,シャフト5の内部に中空が形成されたゴルフクラブ1の断面図である。ここでは、ホーゼル4が、中空に形成されたホーゼル空洞部8(第一空洞部)を内部に有する。同様に、シャフト5は、中空に形成されたシャフト空洞部9(第二空洞部)を内部に有し、ヘッド3は、中空に形成されたヘッド空洞部7(第四空洞部)を内部に有する。ヘッド空洞部7及びシャフト空洞部9の各々は、ホーゼル空洞部8と連通している。
【0045】
図8(A),(B)は、ホーゼル4の内部が中空に形成され、ヘッド3及びシャフト5の内部が中実に形成されたゴルフクラブ1の断面図である。また、図9(A),(B)は、ホーゼル4及びシャフト5の内部が中空に形成され、ヘッド3の内部が中実に形成されたゴルフクラブ1の断面図である。空洞は、ヘッド3,ホーゼル4,シャフト5,グリップ6のいずれにも形成されうる。
【0046】
ヘッド3,ホーゼル4,シャフト5,グリップ6等の内部に空洞を設けることで、打撃面2の振動が空洞内の空気の振動にも変換される。これにより、打撃面2の振動を物理的な振動だけでなく音響として使用者に伝達することができる。つまり、使用者は打撃面の振動を音響として確認でき、打感を改善できる。また、図7(B),図8(B),図9(B)に破線で示すように、ホーゼル空洞部8の内部空間とホーゼル4の外部とを連通する開口部11を形成してもよいし、ヘッド3の内部空間と外部とを連通するヘッド開口部12を形成してもよい。これにより、使用者の耳に入る音を大きくすることができ、打感をさらに改善できる。開口部11及びヘッド開口部12の位置は、打撃面2が形成される側(正面)でもよいし、反対側(裏面)でもよく、あるいは側面でもよい。なお、開口部11,12はいずれか一つだけでもよく、あるいは、開口部11,12が存在しなくても(開口部11,12を形成しなくても)よい。
【0047】
[2.振動伝達部材]
ゴルフクラブ1の内部には、振動伝達部材20を内蔵させてもよい。図10は、振動伝達部材20が内蔵されたゴルフクラブ1の内部構造を例示する断面図である。このゴルフクラブ1の内部には、ホーゼル空洞部8及びシャフト空洞部9だけでなく、グリップ空洞部10が設けられる。グリップ空洞部10は、グリップ6の内部に形成された中空(第三中空部)であり、シャフト空洞部9と連通している。グリップ6の上端部は、グリップ上端部プレート21によって閉塞されている。
【0048】
振動伝達部材20とは、打撃面2で生じる振動をグリップ6に伝達する部材である。振動伝達部材20は、長尺状に形成されて、ホーゼル空洞部8,シャフト空洞部9,グリップ空洞部10の内部に設けられる。振動伝達部材20の具体例としては、ワイヤ(例えば鋼線やピアノ線といったワイヤ),紐(例えば各種繊維を編み込んでなる紐),ロッド部材(例えば棒状の金属や木材から形成されたロッド部材),線状弾性部材(例えばゴムや樹脂で形成された線状弾性部材),長尺状のコイルバネ等が挙げられる。
【0049】
振動伝達部材20の一端部(図10中の下端部)は、固定具22を介してヘッド3に固定される。一方、振動伝達部材20の他端部(図10の上端部)は、グリップ内プレート23及びグリップ内固定具24(取付部材)を介してグリップ6の内周面に取り付けられる。振動伝達部材20には、図10に示すように、振動を増幅するためのおもりとなる質量部材26を取り付けてもよい。質量部材26の位置は、振動伝達部材20に対して固定されてもよいし、可動(固定位置を調節可能)であってもよい。また、例えば使用者の好みに応じて質量部材26を追加できるようにしてもよい。
【0050】
ヘッド3の打撃面で生じた振動は、ホーゼル4及びシャフト5を介してグリップ6に伝達されるだけでなく、振動伝達部材20を介してグリップ6に伝達される。このように、振動伝達部材20をシャフト5に内蔵させることで、振動の伝達経路を増加させることができ、ヘッド3の打撃面で生じる振動を減衰させずに効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。
【0051】
振動伝達部材20の他端部(図10の上端部)に設けられるグリップ内プレート23及びグリップ内固定具24(取付部材)は、図示しない電動式あるいは手動式の調節機構により、グリップ6の延在方向の位置を調節可能に設けられてもよい。これにより、振動伝達部材20の張力を調節できるようになり、振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。また、グリップ内プレート23は、グリップ6の延在方向に対して交差する方向(例えばグリップ6の延在方向に直交する方向)に展開される膜状に形成されてもよい。グリップ内プレート23を膜状にすることで、グリップ内プレート23を面振動(膜振動)させることができ、振動伝達効率を向上させることができる。
【0052】
図11は、振動伝達部材20及び補助振動伝達部材30が内蔵されたゴルフクラブ1の内部構造を例示する断面図である。このゴルフクラブ1のヘッド3の内部にはヘッド空洞部7が設けられ、その内部に補助振動伝達部材30が取り付けられる。補助振動伝達部材30は、打撃面2で生じる振動を振動伝達部材20に伝達する部材である。補助振動伝達部材30の具体例としては、振動伝達部材20と同様に、ワイヤ,紐,ロッド部材,線状弾性部材,長尺状のコイルバネ等が挙げられる。
【0053】
補助振動伝達部材30のうちヘッド先端部31(図11中の左側)の端部は、ヘッド先端側固定具33を介してヘッド3の内周面に取り付けられる。また、ヘッド基端部32(図11中の右側)の端部は、ヘッド基端側固定具34を介してヘッド3の内周面に取り付けられる。補助振動伝達部材30の中間部分は、ヘッド内プレート35及びヘッド内固定具36を介してヘッド3の内周面に取り付けられる。また、補助振動伝達部材30及びヘッド内固定具36は、結束部37で結束される。ヘッド内プレート35には、補助振動伝達部材30が遊挿される孔が穿孔される。ヘッド内プレート35の位置は、例えば打撃面2の近傍に設定される。
【0054】
振動伝達部材20の一端部(図11中の下端部)は、接続金具27を介して補助振動伝達部材30に固定される。振動伝達部材20の他端部(図11中の上端部)は、図10に示すような構造にしてもよいし、グリップ上端側固定具28を介してグリップ上端部プレート21に固定してもよい。図11に示す例では、振動伝達部材20の中間部分が、グリップ内プレート23及びグリップ内固定具24を介してグリップ6の内周面に取り付けられている。また、振動伝達部材20及びグリップ内固定具24は、結束部25で結束される。グリップ内プレート23には、振動伝達部材20が遊挿される孔が穿孔されている。グリップ内プレート23及びグリップ内固定具24のペアは、2組設けられている。
【0055】
ヘッド3の打撃面で生じた振動は、ホーゼル4及びシャフト5を介してグリップ6に伝達されるだけでなく、補助振動伝達部材30及び振動伝達部材20を介してグリップ6に伝達される。このように、補助振動伝達部材30をヘッド3に内蔵させることで、振動伝達部材20に伝達される振動を増幅させることができ、その振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。
【0056】
図12は、振動伝達部材20及び補助振動伝達部材30のペアが3組設けられたゴルフクラブ1の内部構造を例示する断面図である。このように、複数の振動伝達部材20及び補助振動伝達部材30を設けることで、ヘッド3の打撃面で生じた振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。
【0057】
図13は、振動伝達部材20の他端部(図13中の上端部)の位置をグリップ6の延在方向に調節可能にするための構造例を示す断面図である。ここでは、振動伝達部材20がワイヤ,紐,線状弾性部材,長尺状のコイルバネのいずれかで構成される。振動伝達部材20の他端部にはモータ43及び巻き取り装置44が設けられる。モータ43には、ピニオン42が回転可能に取り付けられる。
【0058】
また、グリップ空洞部10の内周面には、ピニオン42に噛合するラック41が固定される。ピニオン42は、図示しない付勢部材(例えばばねやゴム)により、ラック41に対して上方へ付勢される。モータ43を回転させて巻き取り装置44で振動伝達部材20の他端部を巻き取ることで、ピニオン42をラック41に沿って下方へ移動する。また、モータ43を巻き戻すことで、ピニオン42をラック41に沿って上方へ移動する。このような構成により、振動が伝達される位置を容易にグリップ6の延在方向に調節できるようになり、振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。
【0059】
なお、モータ43に代えて、手動で動作する巻き取り装置44を用いてもよい。巻き取り装置44は、例えばプラスドライバーやマイナスドライバー等の治具を用いて、外部から回転させられるように設けられてもよい。この場合、手動で巻き取り装置44を回転させて振動伝達部材20の他端部を巻き取ることで、ピニオン42をラック41に沿って下方へ移動する。また、巻き取り装置44を逆方向に巻き戻すことで、ピニオン42をラック41に沿って上方へ移動する。このような構成により、振動が伝達される位置を手動で手軽にグリップ6の延在方向に調節できるようになり、振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。
【0060】
[3.ヘッド]
図14(A),(B)は、ヘッド3の変形例を説明するための斜視図である。これらの図に示すように、ヘッド3には、ヘッド3の重心位置を変更するためのウェイト部材61を内蔵させてもよい。この場合、ウェイト部材61の取り付け状態(位置や角度)を調節可能にすることで、重心位置を変更できるようにしてもよい。また、ウェイト部材61の取り付け状態は、使用者が手動で調節できるようにしてもよいし、ウェイト部材61を移動させるためのウェイト用モータ62(駆動源)を設けてもよい。
【0061】
図14(A)は、ヘッド3の上面に2組のウェイト部材61及びウェイト用モータ62を内蔵させたものを示す斜視図である。ウェイト部材61は、ヘッド3を構成する素材とは異なる密度の素材からなり、ヘッド3の上面に凹設された中空円柱状の凹部の内側に設けられる。また、ウェイト用モータ62は、凹部の内周面に沿ってウェイト部材61を回転方向に移動させることで、各々のウェイト部材61の位置を変更する。このような構成により、ウェイト部材61の位置を容易に変更してヘッド3の重心を移動させることができ、良好な打感を提供できる。
【0062】
図14(B)は、ヘッド3の上面に凹設された直線状の凹部の内側にウェイト部材61が設けられたものを示す斜視図である。ウェイト用モータ62は、凹部の内周面に沿ってウェイト部材61をスライド移動させることで、各々のウェイト部材61の位置を変更する。このような構成においても、ウェイト部材61の位置を容易に変更してヘッド3の重心を移動させることができ、良好な打感を提供できる。
【0063】
[4.効果]
(1)本件のゴルフクラブ1は、ヘッド3とシャフト5とホーゼル4とグリップ6とを備える。ヘッド3は、ゴルフボールを打撃する打撃面2を有する。シャフト5は、軸状に形成される。ホーゼル4は、取り替えできない状態でシャフト5の一端部とヘッド3とを一体に接続する。グリップ6は、シャフト5の他端部に設けられて使用者に把持される。このように、ホーゼル4を取り替えできない状態でヘッド3及びシャフト5と一体に形成することで、ホーゼル4を通過する振動の減衰を抑制でき、振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、打感をさらに改善できる。
【0064】
(2)ホーゼル4は、打撃面2に対して平行な面方向に延伸し一定の厚みを有する板状に形成される。このように、一定の厚みで面状のホーゼル4を打撃面2に対して平行に延伸させることで、打撃面2の振動がホーゼル4の面振動(膜振動)に変換される。これにより、振動が効率よくシャフト5及びグリップ6へと伝達され、正確かつ繊細な振動を使用者に実感させることができる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。
【0065】
(3)本件のホーゼル4は、例えば図2(A)~(C),図3(A)~(F),図4(A)~(B)に示すように、矩形の平板状に形成されうる。このように、ホーゼル4を矩形の平板状に形成することで、簡素な構成で振動の伝達効率を向上させることができる。したがって、打感をさらに改善できる。
【0066】
(4)本件のホーゼル4は、例えば図4(C),図5(A)に示すように、打撃面2に垂直な縦断面において打撃面2に近い側が内側になるように湾曲した曲げ板状に形成されうる。このような形状により、振動伝達効率を向上させつつ、上面視におけるシャフト5とホーゼル4との接続位置を打撃面に近づけることができる。したがって、良好な打感を提供できる。なお、ゴルフボールが打撃面2に接触したときのゴルフボールの位置を、シャフト5の延長線上に配置することも可能である。
【0067】
なお、本件のホーゼル4は、例えば図4(D),図5(B)に示すように、馬蹄の側面形状を模した不等四辺形の平板状にも形成されうる。この不等四辺形は、ヘッド3の上面に接する下辺51と、下辺51に対して40度以上かつ50度未満の角度をなす第一側辺52と、下辺51に対して120度以上かつ130度未満の角度をなす第二側辺53と、第一側辺52と第二側辺53とを接続し下辺51に対して非平行である上辺54とを有する。このように、ホーゼル4の形状として、馬蹄の側面形状を模した不等四辺形の平面状を採用することで、ホーゼル4の強度や剛性を確保しつつ良好な打感を提供できる。
【0068】
(5)本件のホーゼル4は、例えば図7図9に示すように、中空に形成されたホーゼル空洞部8(第一空洞部)を内部に有しうる。このようなホーゼル空洞部8をホーゼル4の内部に形成することで、ホーゼル空洞部8で音響を発生させることができる。これにより、使用者は打撃面2の振動を音響として確認できるようになり、打感をさらに改善できる。また、ホーゼル空洞部8の反響音をホーゼル4の外部に伝達するための開口部11を形成すれば、使用者に聞こえる音響を大きくすることができ、打感をさらに改善できるほか、打音を十分に確認することができる。
【0069】
(6)本件のシャフト5は、例えば図7図9に示すように、ホーゼル空洞部8(第一空洞部)と連通する中空に形成されたシャフト空洞部9(第二空洞部)を内部に有しうる。このようなシャフト空洞部9をシャフト5内に形成することで、シャフト空洞部9でも振動を反響させることができ、使用者に聞こえる音響を大きくすることができる。したがって、打感及び打音をさらに改善できる。
【0070】
(7)本件のグリップ6は、例えば図10図13に示すように、シャフト空洞部9(第二空洞部)と連通する中空に形成されたグリップ空洞部10(第三空洞部)を内部に有しうる。このようなグリップ空洞部10をグリップ6内に形成することで、グリップ空洞部10でも振動を反響させることができ、使用者に聞こえる音響を大きくすることができる。したがって、打感及び打音をさらに改善できる。
【0071】
(8)本件のグリップ6は、例えば図10図13に示すように、シャフト5と一体に形成されうる。仮にシャフト5とグリップ6とが別体の部材である場合には、振動がこれらの継ぎ目部分を通過するときに減衰し、グリップ6に伝達される振動が減少するおそれがある。このような課題に対し、シャフト5及びグリップ6を一体に形成することで、振動を効率よくグリップ6へと伝達できるようになる。したがって、打感をさらに改善できる。
【0072】
(9)本件のゴルフクラブ1には、例えば図10に示すように、打撃面2で生じる振動をグリップ6に伝達する振動伝達部材20が適用されうる。振動伝達部材20は長尺状に形成され、その一端部がヘッド3に固定されるとともに、シャフト空洞部9(第二空洞部)及びグリップ空洞部10(第三空洞部)に内蔵される。また、グリップ空洞部10(第三空洞部)の内部には、振動伝達部材20の他端部とグリップ6とを連結するグリップ内プレート23及びグリップ内固定具24(取付部材)が適用されうる。このように、振動伝達部材20をシャフト5及びグリップ6に内蔵させることで、ヘッド3の打撃面2で生じる振動を減衰させずに効率よくグリップ6へと伝達でき、打感をさらに改善できる。
【0073】
(10)例えば図13に示すように、振動伝達部材20の他端部とグリップ6とを連結する取付部材(図13中のピニオン42,モータ43,巻き取り装置44あるいは手動で動作する巻き取り装置44)は、その位置をグリップ6の延在方向に調節可能に設けられてもよい。このような構成により、振動伝達部材20の振動が伝達される位置を調節できるようになり、振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、打感をさらに改善できる。
なお、図10に示すグリップ内プレート23及びグリップ内固定具24(取付部材)は、図示しない調節機構により、グリップ6の延在方向の位置を調節可能に設けられてもよい。これにより、振動伝達部材20の張力を調節できるようになり、振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。
【0074】
(11)本件の振動伝達部材20は、ワイヤ、紐、ロッド部材、線状弾性部材のいずれかで構成されうる。これにより、簡素な構成で振動伝達部材20を実現することができ、容易に振動伝達効率を向上させることができる。したがって、打感をさらに改善できる。
【0075】
(12)また、本件のグリップ内プレート23(取付部材)は、グリップ6の延在方向に対して交差する方向に展開される膜状に形成されうる。グリップ内プレート23(取付部材)を膜状にすることで、面振動(膜振動)させることができ、振動伝達効率を向上させることができる。したがって、打感をさらに改善できる。
【0076】
(13)本件の振動伝達部材20には、図10図11に示すように、振動を増幅するためのおもりとなる質量部材26を取り付けてもよい。質量部材26を設けることで、振動伝達部材20の振動を容易に増幅でき、あるいは、振動の減衰を抑制でき、振動伝達効率を向上させることができる。したがって、打感をさらに改善できる。
【0077】
(14)本件のヘッド3は、ホーゼル空洞部8(第一空洞部)と連通する中空に形成されたヘッド空洞部7(第四空洞部)を内部に有しうる。このようなヘッド空洞部7をヘッド3内に形成することで、ヘッド空洞部7でも振動を反響させることができ、使用者に聞こえる音響を大きくすることができる。したがって、打感をさらに改善できる。
【0078】
(15)本件のゴルフクラブ1には、例えば図11図12に示すように、打撃面2で生じる振動を振動伝達部材20に伝達する補助振動伝達部材30が適用されうる。補助振動伝達部材30は、ヘッド空洞部7(第四空洞部)の内部に設けられる。このように、補助振動伝達部材30をヘッド3に内蔵させることで、ヘッド3の打撃面2で生じる振動を減衰させずに効率よく振動伝達部材20へと伝達でき、打感をさらに改善できる。
【0079】
(16)本件のヘッド3には、図14(A),(B)に示すように、ヘッド3の重心位置を変更するためのウェイト部材61が適用されうる。このようなウェイト部材61の取り付け位置や取り付け角度を変更することで、ヘッド3の重心を容易に移動させることができ、良好な打感を提供できる。
【0080】
(17)なお、図14(A)に示すように、ウェイト部材61を移動させる駆動源としてウェイト用モータ62を設けてもよい。この場合、ウェイト部材61は、例えばヘッド3の上面に凹設される中空円柱状の凹部の内側に設けられる。また、ウェイト用モータ62は、凹部の内周面に沿ってウェイト部材61を回転駆動する。このような構成により、ウェイト用モータ62を用いて容易にヘッド3の重心を調節できる。したがって、打感をさらに改善できる。
【0081】
[5.変形例]
上記の第1実施形態に係る実施例はあくまでも例示に過ぎず、この実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。第1実施形態に係る実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0082】
例えば、図15に示すように、打撃面2で生じる振動を検出する振動センサー81をホーゼル4に内蔵させてもよい。振動センサー81は、ホーゼル4の外表面に取り付けてもよいし、内蔵させてもよい。ホーゼル4の内部にホーゼル空洞部8が形成されている場合には、その内部に振動センサー81を配置してもよい。振動センサー81で振動を検出することで、振動発生源(打撃面2)の近傍における振動の大きさや波形を客観的に捉えることができ、打感をさらに改善できる。また、振動の大きさや波形を分析でき、その分析結果を活用することでゴルフの練習効果を高めることができる。振動センサー81で検出された情報は、例えば無線接続や有線接続により、図示しないコンピュータに伝達されるようにしてもよい。
【0083】
また、振動センサー81で検出された振動の情報に基づいて振動する振動装置82をグリップ6に内蔵させてもよい。グリップ6の内部にグリップ空洞部10が形成されている場合には、その内部に振動装置82を配置してもよい。振動装置82は、例えば振動センサー81で検出された振動をそのまま増幅して出力するように機能させてもよい。振動装置82で振動を増幅することで、使用者に実際に伝わる振動を大きくすることができ、打感をさらに改善できる。
【0084】
また、振動センサー81で検出された振動の情報に基づいて音を発するスピーカ82Aをグリップ6に内蔵させてもよい。グリップ6の内部にグリップ空洞部10が形成されている場合には、その内部に増幅器を含むスピーカ82Aを配置してもよい。スピーカ82Aは、例えば振動センサー81で検出された振動をそのまま音として増幅して出力するように機能させてもよい。これにより、ゴルフクラブの1つの打撃面でゴルフボールを打ち出すと、そのときの振動が振動センサー81で検出されて、音としてスピーカ82Aから聴こえるようになる。このとき、中空のシャフト5がスピーカボックスとしての機能を発揮し、振動に関する音を拡声して出力する。その結果、ゴルフクラブ1は一種の電子楽器として機能しうる。
もちろん、振動装置82とスピーカ82Aとの両方をグリップ6に取り付けてもよい。
【0085】
また、図16(A),(B)に示すように、ヘッド3の上面に薄板状のフィン13を立設してもよい。フィン13は、ヘッド3やホーゼル4に生じた振動を増幅するように機能する薄板状又は中空板状の部位である。フィン13の数は、ヘッド3やホーゼル4のサイズに応じて適宜設定すればよく、一枚でもよいし二枚以上でもよい。また、シャフト5が接続されるホーゼル4の位置を基準として、打撃面2に近い側にフィン13を配置してもよいし、打撃面2から離れた側にフィン13を配置してもよい。
【0086】
なお、図16(A),(B)に示すように、フィン13の高さをホーゼル4と同じ(又はほぼ同じ)高さに設定してもよい。あるいは、図16(C),(D),(E)に示すように、フィン13の高さをホーゼル4と相違させてもよいし、例えばホーゼル4の半分程度に設定してもよい。このように、ホーゼル4及びフィン13のサイズ(厚み,高さ,奥行き)の大小関係は、適宜設定することができる。また、ホーゼル4の近傍に配置されるフィン13は、ホーゼル4と一体に形成してもよいし、別体に形成してもよい。
【0087】
また、フィン13の頂面13Aに、例えばLEDや蛍光材料を含む照明部材13Bを配置することもできる。あるいは、ホーゼル4の頂面4Aに、照明部材13Bと同様の照明部材4Bを配置してもよい。照明部材4B,13Bは、例えば一つでも複数でもよく、面状に配置してもよいし、列状や鎖状に配置してもよい。このようにすれば、暗闇での練習の際にも、ヘッド3の軌道を十分に確認できる。なお、照明部材4Bは省略することもできる。
【0088】
また、フィン13の形状として、図17(A),(B),(C)に示すように、上面視で湾曲形状(三日月形状)のものや、図17(D),(E),(F)に示すように、上面視で波形形状でのものを使用することもできる。もちろん、フィン13の形状としては、湾曲形状や波形形状のものを組み合わせて使用することもでき、さらに上面視で他の形状のものを使用することもできる。このような形状のフィン13を使用する場合には、ホーゼル4も同時に、湾曲形状や波形形状のもの等にすることも可能である。そして、上面視で湾曲形状や波形形状でものにすることで、ゆらぎ効果が生じ、使用者にバランス感を与えることができる。
【0089】
また、図17(G),(H)に示すように、上面視においてヘッド3の振り方向(実線矢印又は破線矢印参照)と一致するようにヘッド3の長手方向を形成してもよいし、ヘッド3の上面にU字形のフィン13を設けてもよい。フィン13の数は、一つでもよいし複数個でもよい。フィン13の向きは、上面視でU字形状が打撃面2の方向に開くような向きに設定されることが好ましい。なお、ホーゼル4及びヘッド3の位置は、図17(C),(F),(H)に示すように、打撃面2と面一にすることもできる。
【0090】
図18(A),(B)は、図16(A)に示すゴルフクラブ1の内部構造を例示する断面図である。ヘッド3の上面にフィン13を設けることで、容易に振動を増幅させることができる。また、複数のフィン13(これらのフィン13としては、上面視で直線状のもの,曲線状のもの,波形形状のもの等いずれも可)を設けた場合には、それらの間で振動が共鳴してさらに増幅されうる。したがって、良好な打感や打音を使用者に提供でき、上記の実施例と同様の作用効果を奏する構造を提供できる。
【0091】
[II.第2実施形態の説明]
第2実施形態は、前記の第1実施形態と異なり、ホーゼル4を有しないゴルフクラブ1に関するものである。第2実施形態のゴルフクラブ1は、シャフト5及びグリップ6が中空に形成され、これらの中空部に振動伝達部材20が設けられる。
【0092】
即ち、ホーゼル4を有しないゴルフクラブ1の内部に、振動伝達部材20を内蔵させている。図19は、振動伝達部材20が内蔵されたゴルフクラブ1の内部構造を例示する断面図である。このゴルフクラブ1の内部には、シャフト空洞部9(第二中空部)だけでなく、グリップ空洞部10(第三中空部)が設けられる。グリップ空洞部10は、グリップ6の内部に形成された中空であり、シャフト空洞部9と連通している。グリップ6の上端部は、グリップ上端部プレート21によって閉塞されている。
【0093】
振動伝達部材20とは、打撃面2で生じる振動をグリップ6に伝達する部材である。振動伝達部材20は、長尺状に形成されて、シャフト空洞部9及びグリップ空洞部10の内部に設けられる。振動伝達部材20の具体例としては、ワイヤ(例えば鋼線やピアノ線といったワイヤ),紐(例えば各種繊維を編み込んでなる紐),ロッド部材(例えば棒状の金属や木材から形成されたロッド部材),線状弾性部材(例えばゴムや樹脂で形成された線状弾性部材),長尺状コイルバネ等が挙げられる。
【0094】
振動伝達部材20の一端部(図19中の下端部)は、固定具22を介してヘッド3に固定される。一方、振動伝達部材20の他端部(図19の上端部)は、グリップ内プレート23及びグリップ内固定具24(取付部材)を介してグリップ6の内周面に取り付けられる。振動伝達部材20には、図19に示すように、振動を増幅するためのおもりとなる質量部材26を取り付けてもよい。質量部材26の位置は、振動伝達部材20に対して固定されてもよいし、可動(固定位置を調節可能)であってもよい。また、例えば使用者の好みに応じて質量部材26を追加,変更,交換できるようにしてもよい。
【0095】
ヘッド3の打撃面で生じた振動は、シャフト5を介してグリップ6に伝達されるだけでなく、振動伝達部材20を介してグリップ6に伝達される。このように、振動伝達部材20をシャフト5に内蔵させることで、振動の伝達経路を増加させることができ、ヘッド3の打撃面で生じる振動を減衰させずに効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。
【0096】
振動伝達部材20の他端部(図19の上端部)に設けられるグリップ内プレート23及びグリップ内固定具24(取付部材)は、図示しない電動又は手動の調節機構により、グリップ6の延在方向の位置を調節可能に設けられてもよい。これにより、振動伝達部材20の張力を調節できるようになり、振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。また、グリップ内プレート23は、グリップ6の延在方向に対して交差する方向(例えばグリップ6の延在方向に直交する方向)に展開される膜状に形成されてもよい。グリップ内プレート23を膜状にすることで、グリップ内プレート23を面振動(膜振動)させることができ、振動伝達効率を向上させることができる。
【0097】
図20は、振動伝達部材20及び補助振動伝達部材30が内蔵されたゴルフクラブ1の内部構造を例示する断面図である。このゴルフクラブ1のヘッド3の内部にはヘッド空洞部7(第四空洞部)が設けられ、その内部に補助振動伝達部材30が取り付けられる。補助振動伝達部材30は、打撃面2で生じる振動を振動伝達部材20に伝達する部材である。補助振動伝達部材30の具体例としては、振動伝達部材20と同様に、ワイヤ,紐,ロッド部材,線状弾性部材,長尺状コイルバネ等が挙げられる。
【0098】
補助振動伝達部材30のうちヘッド先端部31(図20中の左側)の端部は、ヘッド先端側固定具33を介してヘッド3の内周面に取り付けられる。また、ヘッド基端部32(図20中の右側)の端部は、ヘッド基端側固定具34を介してヘッド3の内周面に取り付けられる。補助振動伝達部材30の中間部分は、ヘッド内プレート35及びヘッド内固定具36を介してヘッド3の内周面に取り付けられる。また、補助振動伝達部材30及びヘッド内固定具36は、結束部37で結束される。ヘッド内プレート35には、補助振動伝達部材30が遊挿される孔が穿孔される。ヘッド内プレート35の位置は、例えば打撃面2の近傍に設定される。
【0099】
振動伝達部材20の一端部(図20中の下端部)は、接続金具27を介して補助振動伝達部材30に固定される。振動伝達部材20の他端部(図20中の上端部)は、図19に示すような構造にしてもよいし、図20に示すような構造にしてもよく、グリップ上端側固定具28を介してグリップ上端部プレート21に固定してもよい。図20に示す例では、振動伝達部材20の中間部分が、グリップ内プレート23及びグリップ内固定具24を介してグリップ6の内周面に取り付けられている。また、振動伝達部材20及びグリップ内固定具24は、結束部25で結束される。グリップ内プレート23には、振動伝達部材20が遊挿される孔が穿孔されている。グリップ内プレート23及びグリップ内固定具24のペアは、2組設けられている。
【0100】
ヘッド3の打撃面で生じた振動は、シャフト5を介してグリップ6に伝達されるだけでなく、補助振動伝達部材30及び振動伝達部材20を介してグリップ6に伝達される。このように、補助振動伝達部材30をヘッド3に内蔵させることで、振動伝達部材20に伝達される振動を増幅させることができ、その振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。
【0101】
図21は、振動伝達部材20及び補助振動伝達部材30のペアが3組設けられたゴルフクラブ1の内部構造を例示する断面図である。このように、複数の振動伝達部材20及び補助振動伝達部材30を設けることで、ヘッド3の打撃面で生じた振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。
【0102】
図22は、振動伝達部材20の他端部(図22中の上端部)の位置をグリップ6の延在方向に調節可能にするための構造例を示す断面図である。ここでは、振動伝達部材20がワイヤ,紐,線状弾性部材のいずれかで構成される。振動伝達部材20の他端部にはモータ43及び巻き取り装置44が設けられる。モータ43には、ピニオン42が回転可能に取り付けられる。
【0103】
また、グリップ空洞部10の内周面には、ピニオン42に噛合するラック41が固定される。ピニオン42は、図示しない付勢部材(例えばばねやゴム)により、ラック41に対して上方へ付勢される。モータ43を回転させて巻き取り装置44で振動伝達部材20の他端部を巻き取ることで、ピニオン42がラック41に沿って下方へ移動する。また、モータ43を巻き戻すことで、ピニオン42がラック41に沿って上方へ移動する。
【0104】
なお、モータ43に代えて、手動で動作する巻き取り装置44を用いてもよい。巻き取り装置44は、例えばプラスドライバーやマイナスドライバー等の治具を用いて、外部から回転させられるように設けられてもよい。この場合、手動で巻き取り装置44を回転させて振動伝達部材20の他端部を巻き取ることで、ピニオン42をラック41に沿って下方へ移動する。また、巻き取り装置44を逆方向に巻き戻すことで、ピニオン42をラック41に沿って上方へ移動する。このような構成により、振動が伝達される位置を手動で手軽にグリップ6の延在方向に調節できるようになり、振動を効率よくグリップ6へと伝達できる。
【0105】
[III.第3実施形態の説明]
第3実施形態は、ヘッド3の打撃面2に設けられるインサートに特徴を有するゴルフクラブ1に関するものである。図23に示すように、このゴルフクラブ1は、ヘッド3,シャフト5,グリップ6を備える。
【0106】
ヘッド3の側面には、ゴルフボールを打撃する打撃面(フェイス)2が設けられている。打撃面2には、ゴルフボールとの衝突により面振動するとともにゴルフボールに反力を与える面状に形成された面振動部材15からなるインサートを備える。これにより、小さな力で効率よくボールに反力を与えて飛距離を伸ばすことができる。面振動により打感を改善できる。
【0107】
面振動部材15は、例えば図24に示すように、フレーム18の内側に紐19をネット状に編み込んでなるネット部材16を有するとともに、ネット部材16の全面を覆って打撃面2に貼り付けられる膜部材17を有する。このネット部材16は、例えばテニスラケット構造と同様の構造を有している。これにより、効率よくボールに反力を与えることができる。なお、ネット部材16,膜部材17の各々は、ヘッド3の打撃面2に対して個別に着脱自在であることが好ましい。
【0108】
ネット部材16を構成する紐19としては、天然繊維〔ガット(牛,羊の腸)〕,合成繊維(ナイロン繊維,ポリエステル繊維),弾性繊維(天然ゴム繊維,合成ゴム繊維)の少なくともいずれか一つを含み、膜部材17としては、金属板,樹脂板,ラバー膜及び皮革膜の少なくともいずれか一つを含む。これにより、既存の紐(テニス用ストリングやゴムベルトなど)を流用することで、安価にネット部材を実現できるとともに、既存の膜製品(太鼓膜や卓球ラケットのラバー膜など)を流用することで、安価に膜部材を実現できる。さらに、ネット部材16と膜部材17を一体に形成し、卓球用ラケットの打面構造と同様の構造にしたり、ネット部材16として太鼓の皮を枠材に張り渡したりすることもできる。また、インサートを金属製とすることも可能である。この場合、グレーチングの蓋のようにインサートを格子状に形成してもよい。
【0109】
なお、インサートの構造を銅鑼構造に類似するものにしてもよい。即ち、インサートの打撃面2を釣り構造にして、ゴルフボールがこの銅鑼構造の打撃面2に当たると、銅鑼のような音が出るようになる。
ネット部材16として太鼓の皮を枠材に張り渡したり、インサート打撃面2を銅鑼構造にした場合は、太鼓の皮の振動や銅鑼構造のインサートの振動を検出する振動センサーを例えばゴルフクラブのヘッド内又はインサートと一体若しくは近接した場所に設け、太鼓の皮の振動や銅鑼構造のインサートの振動を増幅して、スピーカでこの振動を音として出力することもできる。
【0110】
面振動部材15は、ヘッド3に対して着脱可能に設けられる。これにより、使用者の好みに応じて外したり取り付けたりできる。また、面振動部材15を既存のゴルフクラブに装着できる。また、第1実施形態中のヘッド空洞部7と同様に、ヘッド3の内部を中空に形成してなるヘッド空洞部7を設けてもよい。例えば、図23図25に示すように、ヘッド本体部14の内部にヘッド空洞部7を形成し、その側面に開口部を設けてもよい。面振動部材15(ネット部材16,膜部材17)は、ヘッド本体部14の開口部を覆うように取り付けられる。これにより、面振動部材15の面振動をヘッド空洞部7の内部で反響させて打感を改善できる。
【0111】
また、ヘッド空洞部7の内部には、ヘッド内ワイヤ(補助振動伝達部材)30を取り付けてもよい。ヘッド内ワイヤ30は、ヘッド空洞部7の内部に張設されるとともに、接続ワイヤ40を介して面振動部材15に接続される。これにより、面振動部材15の面振動をヘッド内ワイヤ30の振動として増幅させることができ、打感を改善できる。
【0112】
また、図25に示すように、第1実施形態中のシャフト空洞部9と同様に、シャフト5の内部を中空に形成してなるシャフト空洞部9を設けてもよい。このような構成により、面振動をシャフト空洞部9の内部にも反響させることができ、打感を改善できる。なお、図25に示すように、シャフト空洞部9の内部にシャフト内ワイヤ20を設けてもよい。シャフト内ワイヤ20は、シャフト空洞部9の内部に張設されるとともに、ヘッド内ワイヤ30に連結される。このような構成により、面振動部材15の面振動をシャフト内ワイヤ20の振動として増幅させることができ、打感を改善できる。
【0113】
また、図26に示すように、グリップ6とヘッド内ワイヤ30とを連結するように、シャフト内ワイヤ20を張設してもよい。言い換えれば、シャフト内ワイヤ20の上端部をグリップ6の内側に固定して、面振動部材15の振動をグリップ6に伝達するようにしてもよい。このような構成により、振動を効率よくグリップへと伝達でき、打感をさらに改善できる。
【0114】
ゴルフクラブのボール打撃に際し、インサートの打撃面2にゴルフボールが当たった場合に、打撃面2のスイートポットに当たると、チャイムや銅鑼やブザーが電子音として鳴るようにしたり、音声でそれを知らせたり、スイートスポットに当たった場合とそうでない場合とで、チャイムや銅鑼やブザーの音色が異なるようにしたり、音声を変えたりしてもよい。この場合、スイートスポットにゴルフボールが当たったことを検出するセンサーを設け、又はスイートスポットから外れたことを検出するセンサーを設け、このセンサー(又はこれらのセンサー)からの検出情報に基づき、増幅器を介してスピーカで、チャイムや銅鑼の音やブザー音として出力したり、音声として出力する。
【0115】
勿論、この第3実施形態に係るインサートヘッドを有するゴルフクラブを第1実施形態のようにホーゼルを有するゴルフクラブに適用することも可能である。即ち、ホーゼル付きゴルフクラブの打撃面のヘッドに、図23図24に示すようなインサートを取り付けることもできる。また、図25に示すように、インサートの内面側の部分と、補助振動伝達部材(ヘッド内ワイヤ30)とを直接接続することもでき、このようにすれば、インサートでの振動が直接的にヘッド内ワイヤ30に伝達され、より伝達効率が向上し、打感の改善に寄与する。
【0116】
[IV.第4実施形態の説明]
第4実施形態は、フィン又は板部材86を有するゴルフクラブ1に関するものである。図27に示すゴルフクラブ1は、ゴルフボールを打撃する打撃面2を有するヘッド3と、軸状に形成されるシャフト5と、シャフト5の一端部とヘッド3とを接続するホーゼル4と、シャフト5の他端部に設けられて使用者に把持されるグリップ6とを備える。また、ヘッド3とホーゼル4との間には、フィン又は板部材86が設けられる。
【0117】
フィン又は板部材86は平板状の部材であり、打撃面2とほぼ平行な向きでヘッド3とホーゼル4とを繋ぐように固定される。図27に示すフィン又は板部材86は、三角形の平板状に形成され、ヘッド3の上面とホーゼル4の端面との間に張設されている。図27では、フィン又は板部材86が1つのものだけを示しているが、フィン又は板部材86の数は不問であり、複数のフィン又は板部材86を設けてもよい。
【0118】
図28(A),(B)に示すゴルフクラブ1は、ホーゼル4を持たないゴルフクラブ1である。即ち、これらのゴルフクラブ1は、ゴルフボールを打撃する打撃面2を有するヘッド3と、軸状に形成されるシャフト5と、シャフト5の他端部に設けられて使用者に把持されるグリップ6とを備える。ヘッド3は、シャフト5の一端部に接続される。また、ヘッド3とシャフト5との間には、1つ(又は複数の)フィン又は板部材86が設けられる。このような構成により、ゴルフボールの打撃時にフィン又は板部材86が面振動することから打感を改善できるほか、ヘッド3のシャフト5又はホーゼル4との取付強度を補強できる。なお、図27図28(A),(B)に示すように、フィン又は板部材86の頂面86AにLEDや蛍光材料を含む照明部材86Bを配置してもよい。このようにすれば、暗闇での練習の際にも、ヘッド3の軌道を十分に確認できる。
【0119】
[V.第5実施形態の説明]
第5実施形態は、振動伝達部材20や補助振動伝達部材30を備えたゴルフクラブ1において、これらの振動を検出するピックアップ20A,30A(第1ピックアップ20A,第2ピックアップ30A)を内蔵させたものである。第1ピックアップ20Aは、振動伝達部材20の振動を検知して電気信号に変換するセンサーであり、振動伝達部材20に近接する位置に設けられる。同様に、第2ピックアップ30Aは、補助振動伝達部材30の振動を検知して電気信号に変換するセンサーであり、補助振動伝達部材30に近接する位置に設けられる。これらのピックアップ20A,30Aは、例えばエレキギターのように、振動伝達部材20,30の振動に対応する電気信号を生成する。
【0120】
図29に示すゴルフクラブ1は、ホーゼル空洞部8とシャフト空洞部9とグリップ空洞部10と振動伝達部材20と第1ピックアップ20Aとを備える。振動伝達部材20は、打撃面2で生じる振動をグリップ6に伝達する部材である。振動伝達部材20は、長尺状に形成されて、ホーゼル空洞部8,シャフト空洞部9,グリップ空洞部10の内部に設けられる。振動伝達部材20の具体例としては、ワイヤ(例えば鋼線やピアノ線といった磁性体を含有する線状部材)が使用される。振動伝達部材20の取付要領は前述の実施形態で説明したとおりである。
【0121】
また、図30に示すゴルフクラブ1は、ホーゼル空洞部8とシャフト空洞部9とグリップ空洞部10と振動伝達部材20と補助振動伝達部材30と第1ピックアップ20Aと第2ピックアップ30Aとを備える。補助振動伝達部材30は、打撃面2で生じる振動を振動伝達部材20に伝達する部材であり、ヘッド空洞部7の内部に設けられる。補助振動伝達部材30の具体例としては、振動伝達部材20と同様のワイヤ(例えば鋼線やピアノ線といった磁性体を含有する線状部材)が使用される。振動伝達部材20,30の取付要領は前述の実施形態で説明したとおりである。
【0122】
第1ピックアップ20Aで検出された電気信号は、図36に示すように、ゴルフクラブ1に内蔵される増幅器90Aで増幅されるとともに、スピーカ91Aに伝達される。また、第2ピックアップ30Aで検出された電気信号は、例えば同じ増幅器90Aで増幅されて、スピーカ91Aに伝達されることとしてもよい。あるいは、増幅器90Aとは別の増幅器90Bで増幅してもよいし、増幅後の電気信号をスピーカ91Aとは別のスピーカ91Bに伝達してもよい。スピーカ91A,91Bは、入力された電気信号を音として出力する。これにより、スピーカ91A,91Bから打音が出力される。この打音は増幅器90A,90Bの増幅特性を変更することで調節可能である。なお、必要に応じて増幅器90A,90Bの前後にフィルタを介装させて、電気信号のノイズや不要な周波数成分を除去してもよい。
【0123】
図29に示すゴルフクラブ1において、ヘッド3の打撃面2で生じた振動は、ホーゼル4及びシャフト5を介してグリップ6に伝達されるだけでなく、振動伝達部材20を介してグリップ6に伝達される。振動伝達部材20をゴルフクラブ1に内蔵させることで、打撃面2の振動を減衰させずに効率よくグリップ6へと伝達できる。したがって、良好な打感を使用者に提供でき、既存のゴルフクラブと比較して打感を改善できる。また、第1ピックアップ20Aによって振動伝達部材20の振動が検知され、この振動が電気信号に変換され、増幅器90Aで増幅された後に、スピーカ91Aから音として出力される。これにより、上記の打感とともに打音も出力されることになり、その相乗効果により使用者に良好な打感フィーリングを提供できる。
【0124】
図30に示すゴルフクラブ1においては、振動伝達部材20がホーゼル空洞部8及びシャフト空洞部9に内蔵されるだけでなく、補助振動伝達部材30がヘッド空洞部7(第四空洞部)に内蔵される。このように、補助振動伝達部材30をヘッド3に内蔵させることで、ヘッド3の打撃面2で生じる振動を減衰させずに効率よく振動伝達部材20へと伝達でき、打感をさらに改善できる。また、第2ピックアップ30Aによって補助振動伝達部材30の振動が検知され、この振動に対応する音がスピーカ91A,91Bから出力される。これにより、上記の打感とともに打音も出力されることになり、その相乗効果により使用者に良好な打感フィーリングを提供できる。
【0125】
特に、振動伝達部材20及び補助振動伝達部材30をそなえている場合、各ピックアップ20A,30Aで振動伝達部材20,補助振動伝達部材30を伝達する振動を検出して、それぞれの振動に起因する電気信号が増幅器90A,90Bで増幅され、適宜フィルタリングされて、スピーカ91A,91Bから打音として発せられる。これにより使用者に更に良好な打感フィーリングを提供できる。
【0126】
なお、スピーカ91A,91Bは共用することができ、必要に応じて増幅器90A,90Bも共用することができる。図31に示すように、振動伝達部材20や補助振動伝達部材30を複数個備えたゴルフクラブ1においては、各ピックアップ20A,30Aをそれぞれの振動伝達部材20,補助振動伝達部材30に対して別個に設けてもよいし、共用使用にしてもよい。
【0127】
また、図32に示すように、ホーゼル4を有しないゴルフクラブ1において、振動伝達部材20の近傍に第1ピックアップ20Aを設けてもよい。また、図33図35に示すように、ホーゼル4を有していないゴルフクラブ1において、振動伝達部材20の近傍に第1ピックアップ20Aを設けるとともに、補助振動伝達部材30の近傍に第2ピックアップ30Aを設けてもよい。また、図34に示すように、面振動部材15を備えたゴルフクラブ1において、面振動部材15とヘッド内ワイヤ30(補助振動伝達部材)とを接続ワイヤ40で接続するとともに、接続ワイヤ40の近傍に第3ピックアップ40Aを設けてもよい。第3ピックアップ40Aは、他のピックアップ20A,30Aと同様の機能を持つセンサーである。
すなわち、第3ピックアップ40Aで検出された電気信号は、図36に示すように、ゴルフクラブ1に内蔵される増幅器90Cで増幅されるとともに、スピーカ91Cに伝達される。
この場合も、スピーカ91A~91Cは共用することができ、必要に応じて増幅器90A~90Cも共用することができる。図34に示すように、接続ワイヤ40を複数個備えたゴルフクラブ1においては、ピックアップ40Aをそれぞれの接続ワイヤ40に対して別個に設けてもよいし、共用使用にしてもよい。
【0128】
これらのゴルフクラブ1においても、前述のホーゼル4を有するゴルフクラブ1で説明したものと同様の作用及び効果が得られる。もちろん、これらの例においても、スピーカ91A~91Cは共用することができ、必要に応じて増幅器90A~90Cも共用することができる。また、振動伝達部材20や補助振動伝達部材30,接続ワイヤ40を複数個備えたものでは、各ピックアップ20A,30A,40Aはそれぞれの振動伝達部材20,補助振動伝達部材30及び接続ワイヤ40につき別個に設けてもよいし、共用使用にしてもよい。
【0129】
なお、この実施形態において、増幅器90A~90Cやスピーカ91A~91Cはスマートフォンやコンピュータ(情報端末等)で代用してもよい。この場合、スピーカ91A~91Cはイヤホン形式やヘッドホン形式にして使用者の耳に装着させてもよい。また、各ピックアップ20A,30A,40Aと増幅器90A~90Cとの間の接続は、有線接続であってもよいし無線接続であってもよい。同様に、増幅器90A~90Cとスピーカ91A~91Cとの間の接続は、有線接続であってもよいし無線接続であってもよい。
【0130】
[VI.第6実施形態の説明]
第6実施形態は、ゴルフクラブ1のヘッド3の上面に、ゴルフボールの打ち出し方向を指示しうる電気式表示部材としての液晶ディスプレイ100が設けられたものである。この液晶ディスプレイ100は、例えばカラー液晶ディスプレイとして構成され、カラー画像を表示しうる。また、液晶ディスプレイ100は、図37(A)に示すように、ホーゼル4付きのゴルフクラブ1にも適用可能であり、あるいは図37(B)に示すように、ホーゼル4がないゴルフクラブ1にも適用可能である。
【0131】
液晶ディスプレイ100は、図38に示すように、コントローラ101を介して指示器102(入力装置)に接続される。指示器102で表示のための指示を与えると、コントローラ101を介して液晶ディスプレイ100にこの指示が伝えられ、液晶ディスプレイ100でゴルフボールの打ち出し方向が表示される。この実施形態において、他の構成要素は前述した実施形態のものとほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0132】
液晶ディスプレイ100による表示は、ゴルフボールの打ち出し方向を示す矢印であってもよく、複数の円が連なったものでもよい。この場合、方向を示す先端側にいくに従い、円が小さくなるようにしてもよい。このような構成により、打感の改善がはかれるほか、液晶ディスプレイ100で自在にゴルフボールの打ち出し方向を表示することができ、利便性が向上する。
【0133】
なお、指示器102やコントローラ101はスマートフォンで代用することもできる。この場合、コントローラ101と液晶ディスプレイ100との結線は無線回線を使用することが好ましい。また、指示器102に入力される指示の内容は、例えばゴルフクラブ1の使用者や指導者(トレーナー)や補助者(キャディ)が入力可能としてもよい。
【0134】
本実施形態において、ゴルフボールの打ち出し方向を液晶ディスプレイ100で表示するほか、ゴルフボールの打ち出しをする際に、そのときのリズムを知らせるリズムボックス機能を搭載することもできる。この場合、上記ゴルフボールの打ち出しの際に、リズムを知らせるリズムボックス機能および合成音声生成機能のいずれか一方の機能を有するコントローラ101と、このコントローラ101のリズムボックス機能および合成音声生成機能のいずれか一方の機能により生成されたリズム音および合成音声のうちの一方を出力するスピーカ100Aとが設けられる(図38参照)。
【0135】
さらに、ヘッド3内に1つ又は複数の衝撃センサ103を設け、打撃面2にゴルフボールが当たったときに、その衝撃データを衝撃センサ103で検出するとともにコントローラ101で収集し、その衝撃データを数値やグラフ等にして液晶ディスプレイ100に表示することもできる(図38参照)。
【0136】
また、打撃面2のスイートポットとそうでないところの打撃データの相違を検出することができるようにしておけば、ゴルフボールがスイートポットに当たったときと、そうでないときの衝撃データもコントローラ101を介して液晶ディスプレイ100に数値やグラフで表示することができる。この場合、ゴルフボールの打ち出し方向の表示後に、数値化やグラフ化された衝撃データが表示されることが好ましい。あるいは、打ち出し方向と衝撃データとを所定の周期で交互に表示させてもよい。
【0137】
[VII.その他]
図39(A),(B)は、第1~6実施形態に記載されたゴルフクラブ1の変形例を説明するための側面図である。ゴルフクラブ1のヘッド3の下面側には、複数のアダプター3A,3Bのうちの一つが着脱自在に取り付けられる。これらのアダプター3A,3Bは、例えば形状,質量,重心点等が相違する複数の種類が用意される。例えば、図39(B)に示すアダプター3Aは、図39(A)に示すアダプター3Bよりもライ角Lを増加させたい場合に使用されるものである。なお、図39(A),(B)ではホーゼル4のないゴルフクラブ1を例示しているが、ホーゼル4の有無は不問である。
【0138】
アダプター3A,3Bは、例えばゴルフクラブ1の使用者や指導者(トレーナー)がいずれか一つを選択してヘッド3の下面側に装着することが想定されている。アダプター3A,3Bは、好ましくは容易に着脱可能な係止構造(クリップ)や締結構造(ネジ)等を介してヘッド3の下面に装着される。ゴルフクラブ1の使用者の体格や打撃フォームに適したアダプター3A,3Bを使用することで、ゴルフクラブ1のスイング軌跡を適正化しやすくなり、練習効果を向上させることが可能となる。なお、ライ角Lとは、ヘッド3の打撃面2を正面から水平に眺めた状態で、水平面に対してシャフト5がなす角度のうち、シャフト5よりも使用者側の角度を意味する。
なお、図39(A),(B)の例は、上述のとおり、第1~第6実施形態に記載されたゴルフクラブのいずれにも適用することができ、その場合、アダプター3A,3B及びその取付方以外の構成は、各実施形態のものと同種であることはいうまでもない。
【0139】
第1実施形態において、図15を用いて説明した振動センサー81,振動装置82,スピーカ82Aは、第2~第6実施形態のいずれにも適用することができる。また、第1,2実施形態で示した種々の振動伝達部材20,補助振動伝達部材30は、第3,4,6実施形態のゴルフクラブに適用することも勿論可能である。また、第3実施形態で説明したインサートを前記第1,2,4~6実施形態のヘッド3の打撃面2に設けることも勿論可能である。
【0140】
また、第4実施形態と同様にして、第1~3,5,6実施形態においても、ヘッド3とシャフト5の一端部又はホーゼル4との間に、1つ又は複数のフィン又は板部材86を設けることができることはいうまでもない。さらに、上記の各第1~6実施形態では、ゴルフクラブ1の一例としてパターを例示したが、それ以外のゴルフクラブ(ウッド,ハイブリッド,ユーティリティなど)にも勿論適用できる。なお、上記の各第1~6実施形態において、同じ符号で示される部材は、それぞれ同様のものを示す。
さらに、センサーやピックアップで検出された信号が増幅器で増幅されてスピーカで出力するための回路用バッテリーは図示していないが、必要に応じゴルフクラブ内部又は外部に設けられる。
上記回路の一部をスマートフォンで兼用する場合は、スマートフォン用のバッテリーが上記回路用のバッテリーを兼用する。
【0141】
なお、図36に示す回路に、スイッチSW1(図36中に破線で示す)を介装させてもよい。スイッチSW1が介装される位置は、例えばピックアップ20A,30A,40Aと増幅器90A,90B,90Cの間、あるいは、増幅器90A,90B,90Cとスピーカ91A,91B,91Cの間に設定される。スイッチオン時には、ピックアップ20A,30A,40Aやセンサーでの検出情報に基づく音が増幅器90A,90B,90Cで増幅され、スピーカ91A,91B,91Cから出力される。一方、スイッチオフ時には、このような音が出力されない。スイッチSW1のオンオフ状態は、使用者が適宜選択できるようになっている。例えば、スイッチSW1はゴルフクラブ1の外面から操作できる位置される。あるいは、無線通信によりオンオフ状態を切り替え可能なスイッチSW1が用いられる。
【0142】
また、図38に示す回路に、切替スイッチSW2を介装し、このスイッチSW2を液晶ディスプレイ100と接続するように切り替えた場合は、液晶ディスプレイ100で打ち出し方向や数値化,グラフ化された衝撃データが表示され、スイッチSW2でスピーカ100Aと接続するように切り替えた場合は、スピーカ100Aからコントローラ101のリズムボックス機能および合成音声生成機能のいずれか一方の機能で生成されたリズム音および合成音声のうちの一方が出力され、スイッチSW2で液晶ディスプレイ100及びスピーカ100Aの両方と接続するように切り替えた場合は、液晶ディスプレイ100で打ち出し方向や数値化,グラフ化された打撃データが表示されるとともにスピーカ100Aからリズム音および合成音声のうちの一方が出力される。
【0143】
もちろん、スイッチSW2で液晶ディスプレイ100及びスピーカ100Aの両方に接続しないいわゆるオフ状態にした場合は、液晶ディスプレイ100の表示及びスピーカ100Aからのリズム音や合成音声は出力されない。
なお、図38において、液晶ディスプレイ100のみを設けた場合、スイッチSW2はオンオフスイッチでよい。
さらに、本ゴルフクラブ1は通常のゴルフクラブの製造手法とともに、あるいはこれに代えて種々の製造手法を採用することができる。
例えば、3Dプリンタを用いて製造したり、シームレス溶接手法を用いて製造したり、流し込み手法を用いて製造したり、これらの手法を適宜組み合わせて製造したりすることができる。
【符号の説明】
【0144】
1 ゴルフクラブ(パター)
2,2′ 打撃面(フェイス)
3 ヘッド
3A,3B アダプター
4 ホーゼル
4A 頂面
4B 照明部材
5 シャフト
6 グリップ
7 ヘッド空洞部(第四空洞部)
8 ホーゼル空洞部(第一空洞部)
9 シャフト空洞部(第二空洞部)
10 グリップ空洞部(第三空洞部)
11 開口部
12 ヘッド開口部
13 フィン
13A 頂面
13B 照明部材
14 ヘッド本体部
15 面振動部材
16 ネット部材
17 膜部材
18 フレーム
19 紐
20 振動伝達部材(シャフト内ワイヤ)
20A 第1ピックアップ
21 グリップ上端部プレート
22 固定具
23 グリップ内プレート(取付部材)
24 グリップ内固定具(取付部材)
25 結束部
26 質量部材
27 接続金具
28 グリップ上端側固定具
30 補助振動伝達部材(ヘッド内ワイヤ)
30A 第2ピックアップ
31 ヘッド先端部
32 ヘッド基端部
33 ヘッド先端側固定具
34 ヘッド基端側固定具
35 ヘッド内プレート
36 ヘッド内固定具
37 結束部
40 接続ワイヤ
40A 第3ピックアップ
41 ラック
42 ピニオン
43 モータ
44 巻き取り装置(取付部材)
51 下辺
52 第一側辺
53 第二側辺
54 上辺
55 伸縮機構
56 伸縮機構
57 伸縮機構
58 スライド機構
61 ウェイト部材
62 ウェイト用モータ(駆動源)
81 振動センサー
82 振動装置
82A スピーカ
86 フィン又は板部材
86A 頂面
86B 照明部材
90A,90B,90C 増幅器
91A,91B,90C スピーカ
100 液晶ディスプレイ
100A スピーカ
101 コントローラ
102 指示器
103 衝撃センサ
SW1,SW2 スイッチ
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