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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023218216
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2023-12-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398054845
【氏名又は名称】株式会社プロテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山本 満明
(72)【発明者】
【氏名】石井 太一
(72)【発明者】
【氏名】清野 雄貴
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101699(JP,A)
【文献】特開2008-121264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0224021(US,A1)
【文献】特開2022-040717(JP,A)
【文献】特開2017-141568(JP,A)
【文献】特開2012-036576(JP,A)
【文献】特開2014-109181(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013220(JP,U)
【文献】特開2014-109182(JP,A)
【文献】特開2022-076584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を隔てて立設した複数の支柱と、隣り合う支柱の間に設けた撓み変形量が非常に少ない剛性阻止面とを備え、該剛性阻止面を通じて崩落物を捕捉する防護柵であって、
前記剛性阻止面が支柱に外装したスペーサ機能を有する複数の連結装置と、
隣り合う支柱の間に連結装置を介して架設した複数の横梁とを具備し、
上下に隣り合う前記横梁の間に崩落物の一部の透過を許容する横向きスリットを形成し、
多段的に形成した前記複数の横向きスリットを通じて前記剛性阻止面を透過型の剛性阻止面として形成したことを特徴とする、
防護柵。
【請求項2】
前記連結装置が支柱に外装して連結可能なソケット部と、該ソケット部の外周面に横向きに突設し、横梁の端部を収容して連結可能な受筒とを具備することを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記連結装置のソケット部と受筒の底面が同一レベルの連続面として形成し、ソケット部と受筒の上面が階段状に段差を有していることを特徴とする、請求項2に記載の防護柵。
【請求項4】
前記横梁の端部と連結装置の受筒との間を横向きの支軸で枢支してピン接合としたことを特徴とする、請求項2に記載の防護柵。
【請求項5】
前記ソケット部の高さが受筒の高さのほぼ1/2の寸法関係にあることを特徴とする、請求項2に記載の防護柵。
【請求項6】
複数の連結装置の上下の向きを交互に変えて支柱に取り付けたことを特徴とする、請求項2に記載の防護柵。
【請求項7】
前記横梁の側面に連続した帯面を形成したことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項8】
隣り合う支柱の間に前記複数の横梁を着脱自在に架設したことを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【請求項9】
前記横梁がコンクリート充填鋼管製であることを特徴とする、請求項1に記載の防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は崩落土砂、雪崩、落石等の崩落物を捕捉する防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防護面の下半部における崩落土砂の捕捉性を高める防護柵が開示されている。
この防護柵は、地上部に帯状を呈するコンクリート製の壁体を設け、支柱の下部をこの壁体に貫通させつつ、地中にも貫入させて支柱を立設し、壁体から上方に突出した支柱の地上部に防護ネットを取り付けた構造になっている。
この防護柵は、防護面の下半部に形成した壁体で以て崩落土砂を受け止めて捕捉する際に、支柱を支持杭として機能させる。
さらに防護面の上半部に形成した防護ネットで以て落石等を捕捉し得るようになっている。
【0003】
特許文献2には、壁体を複数の土塊ブロックで構成することが開示されている。
土塊ブロックは、袋体に土砂等の中詰材を充満させて立方形に製作した土塊物である。
施工方法としては、地面に複数の土塊ブロックを積み上げて壁体を形成した後に、支柱の下部を複数の土塊ブロックを貫通させつつ、地中にも貫入させて支柱を立設し、壁体から上方に突出した支柱の地上部に防護ネットを取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-101699号公報
【文献】特開2008-121264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
壁体を具備した防護柵にはつぎのような改善すべき点がある。
<1>コンクリート製の壁体を構築するためには、重機類を使用しなければならず、施工コストが高くつく。
<2>壁体の設置面に勾配や不均一の傾斜がある現場では、コンクリート製の壁体が設置面の勾配や傾斜に追従できない。
そのため、設置面を平らに整地する必要があるため、壁体の構築に多くの時間と労力を要する。
<3>壁体が遮水機能を有するため、防護柵の裾部に大量の水が溜まる問題と捕捉土砂の排出がし難いといった問題を内包する。
<4>壁体がコンクリート製であるため、受撃によって壁体が亀裂や損傷が生じると、壁体の交換コストが高くつく。
【0006】
本発明の目的は以上の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、受撃時に崩落物の透過を許容しつつ、曲げ変形量が小さな阻止面を形成した防護柵を提供することにある。
さらに本発明の目的は、既述した問題点を解消できる防護柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、間隔を隔てて立設した複数の支柱と、隣り合う支柱の間に設けた撓み変形量が非常に少ない剛性阻止面とを備え、該剛性阻止面を通じて崩落物を捕捉する防護柵であって、前記剛性阻止面が支柱に外装したスペーサ機能を有する複数の連結装置と、隣り合う支柱の間に連結装置を介して架設した複数の横梁とを具備し、上下に隣り合う前記横梁の間に崩落物の一部の透過を許容する横向きスリットを形成し、多段的に形成した前記複数の横向きスリットを通じて前記剛性阻止面を透過型の剛性阻止面として形成した。
本発明の他の形態において、前記連結装置が支柱に外装して連結可能なソケット部と、該ソケット部の外周面に横向きに突設し、横梁の端部を収容して連結可能な受筒とを具備する。
本発明の他の形態において、前記連結装置のソケット部と受筒の底面が同一レベルの連続面として形成し、ソケット部と受筒の上面が階段状に段差を有していることを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記横梁の端部と連結装置の受筒との間を横向きの支軸で枢支してピン接合とする。
本発明の他の形態において、前記ソケット部の高さが受筒の高さのほぼ1/2の寸法関係にある。
本発明の他の形態において、複数の連結装置の上下の向きを交互に変えて支柱に取り付ける。
本発明の他の形態において、前記横梁の側面に連続した帯面を形成する。
本発明の他の形態において、隣り合う支柱の間に前記複数の横梁を着脱自在に架設する。
本発明の他の形態において、前記横梁がコンクリート充填鋼管製である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくとも次の一つの効果を奏する。
<1>剛性阻止面が複数の横スリットを有する透過構造を呈するため、受撃時に崩落物が横スリットを透過する際に崩落物の運動エネルギーを効率よく減衰できる。
そのため、透過型の剛性阻止面の荷重負担が軽減されるだけでなく、透過型の剛性阻止面を支持する支柱の荷重負担も軽減することができる。
<2>剛性阻止面の横スリットの開口寸法を選択することで、透過型の剛性阻止面による緩衝性能を調整することができる。
<3>剛性阻止面が透過構造を呈するため、阻止面の上流側に崩落物が堆積してあっても雨水を下流側に自然排水することができる。
そのため、防護柵に特別な排水処理施設を設ける必要がない。
<4>横梁の端部と支柱との間を、支柱を中心として回動可能で、かつ、ピン接合として、支柱に対して横梁を横方向および上下方向へ向けて回動可能に連結できる。
そのため、防護柵を任意の曲率でカーブさせて設置したり、防護柵の設置面に不均一の勾配や傾斜があっても、設置面の勾配や傾斜の影響を受けずに横梁を設置したりすることができる。
<5>透過型の剛性阻止面を構成する横梁を着脱可能に構成することで、透過型の剛性阻止面の上流側に堆積した崩落土砂等の崩落物を効率よく撤去できるだけでなく、受撃により損傷した横梁のみを新たなものと交換できて補修が容易である。
<6>横梁は作業員が運搬可能であるので、重機類を用いずに横梁を人力だけで組み付けて透過型の剛性阻止面を容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一部を省略した本発明の実施例1に係る防護柵の正面図
図2図1に示した防護柵の横断面図
図3】横梁と連結装置の説明図で、(A)は横梁と連結装置の斜視図、(B)は横梁の断面図
図4】支柱に連結装置を外装した防護柵の平面図
図5】連結装置を積み重ねた防護柵の側面図
図6A】防護柵の施工方法の説明図
図6B】透過型の剛性阻止面の組立方法の説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0011】
[実施例1]
<1>防護柵の概要
本発明に係る防護柵は、雪崩対策用、崩落土砂対策用または落石対策用の防護柵である。
図1,2に例示した防護柵について説明すると、この防護柵は、所定の間隔を隔てて設置面Gに立設した複数の支柱10と、複数の支柱10間に形成した透過型の剛性阻止面30とを具備する。
【0012】
<2>支柱
支柱10は中間支柱と端末支柱を含む。
支柱10は設置面Gに埋設する埋設部11と、地表に突出する地上部12とを有する。
埋設部11と地上部12の長さは、設置現場や剛性阻止面30の高さ寸法等に応じて適宜の寸法を選択する。
【0013】
<2.1>支柱の例示
支柱10としては、例えば、鋼管、H鋼、コラム、モルタル充填鋼管等の公知の支柱構造体を使用できる。
本例では、支柱10の断面形が円形を呈する形態について説明する。
【0014】
<2.2>支柱の埋設部
本例では、支柱10の埋設部11を地盤に削孔した建込孔14に建て込み、モルタル等の固結材15を充填する形態を示しているが、支柱10の埋設部11をコンクリート基礎に埋め込んで立設してもよい。
【0015】
<2.3>支柱の地上部
【0016】
支柱10の地上部12側には透過型の剛性阻止面30を形成する。
地上部12は、透過型の剛性阻止面30を設ける部位であり、その外周面は突起物のない平滑面として形成する。
【0017】
<3>透過型の剛性阻止面
透過型の剛性阻止面30は、主に崩落土砂を対象とした撓み変形量が非常に少ない高剛性の阻止面であり、その阻止面の一部には複数の横向きスリット32を多段的に形成している。
剛性阻止面30の全体の高さは、予想される崩落土砂の崩落量等に応じて適宜選択する。
【0018】
図2,3を参照して透過型の剛性阻止面30の一例について説明する。
透過型の剛性阻止面30は、所定の間隔を隔てて横列した高剛性の横梁31の集合体で構成する。
本例では、スペーサ機能を有する連結装置20を介して横梁31の端部を支柱10の地上部12に対して着脱自在で、且つ上下方向に向けて回動可能に連結する形態について説明する。
【0019】
<3.1>連結装置
連結装置20は支柱10と横梁31との間を連結するための連結具であり、その側面形状が略L字形を呈している。
連結装置20は支柱10に対して水平方向へ向けた回動と上下方向へ向けた揺動が可能である。
【0020】
図2に例示した連結装置20について説明すると、連結装置20は、支柱10に外装して連結可能な環状のソケット部21と、ソケット部21の外周面に横向きに突設し、横梁31の端部を収容して連結可能な受筒23とを具備する。
ソケット部21と受筒23の底面26は同一レベルの連続面として形成し、ソケット部21と受筒23の上面は階段状に段差を有している。
【0021】
<3.1.1>ソケット部
ソケット部21は上下に貫通した連結孔22を有する。
連結孔22は支柱10に対して回動可能である。
ソケット部21を支柱10に対して回動可能に構成するのは、図3に示すように支柱10を中心として左右に隣り合う横梁31,31の配設角度(交差角度)を防護柵の形成方向に合わせて調整するためである。
【0022】
ソケット部21は連続した一体構造でもよいが、ソケット部21を複数の分割体で構成し、円弧状を呈する各分割体の両端をボルト等で連結して環状に組み立ててもよい。
ソケット部21を分割式に構成した場合は、支柱10の側面から連結装置20を組み付けすることができる。
【0023】
<3.1.2>受筒
ソケット部21の外周面の一部には、受筒23を横向きに一体に設ける。
ソケット部21と受筒23の固着手段としては、例えば溶接、接着ボルト止め等を採用できる。
受筒23は横梁31の端部を収容して回動可能にピン結合するための受部材であり、その側面には支軸25を貫挿するための横長の長孔24が設けてある。
【0024】
<3.1.3>ソケット部と受筒の高さの関係
図4に示すように、ソケット部21の高さを受筒23の高さのほぼ1/2の寸法関係にある。
ソケット部21と受筒23の高さの寸法関係を上記のようにしたのは、同一の支柱10に連結装置20を多段的に積み上げる際に連結装置20の上下の向きを交互に変えることで、隣り合うスパンにおける横梁31を同一の水平レベルに揃えて横架するためである。
【0025】
<3.2>横梁
横梁31は隣り合う支柱10間(1スパン間)に横架可能な全長を有する曲げ耐力の大きな高剛性の部材である。
横梁31の側面には連続した帯面31aを形成している。帯面31aが各種の崩落物の捕捉面(受撃面)として機能する。
帯面31aの縦幅(高さ)寸法は、崩落物の種類や崩落量等に応じて適宜選択する。
具体的には、斜面の高さ、斜面の勾配、支柱間距離等を基に算出した崩落物による衝撃力に耐え得るように、横梁31の強度や帯面31aの縦幅(高さ)寸法を設計する。
横梁31の端部近くには、横梁31を貫通した横孔33が形成してある。
【0026】
横梁31としては、例えば、H鋼、鋼管、コラム、モルタル充填鋼管等を使用できる。
実用上は、図2(B)に示すように、断面コラムを呈する鋼管31b内にH鋼等の補強鋼材31cを挿入した後にモルタル等の固結材31dを充填したモルタル充填鋼管が望ましい。
【0027】
<3.3>連結装置と横梁との間のピン接合
横梁31の端部は、連結装置20の受筒23に内挿された後に、長穴24と横孔33に支軸25を挿通して連結する。
図4に示すように、横梁31は横向きの支軸35を中心とした揺動が可能であり、支柱10に対して横梁31を傾倒させて横架することができる。
【0028】
<3.4>横向きスリット
図1に示すように、上下に隣り合う横梁31,31の間には横向きスリット32を形成する。
横向きスリット32は、排水機能だけでなく、崩落物の緩衝機能を併有する。
横向きスリット32の幅寸法(間隔)は、斜面の勾配角度や崩落物の種類等の現場環境を考慮して適宜選択する。
【0029】
実用上、横向きスリット32の幅寸法は、横梁31の幅寸法(帯面31aの縦幅寸法)の約0.5~2倍程度が好ましい。
横梁31の幅寸法が横梁31の幅寸法の0.5より狭いと、崩落物の透過性が極端に悪く何って緩衝効果が悪化し、横梁31の幅寸法が横梁31の幅寸法の2倍を超えると崩落物が透過し易くなって緩衝効果が著しく低下する。
【0030】
[防護柵の構築方法]
つぎに防護柵の構築方法について説明する。
【0031】
<1>支柱の立設
図6Aを参照して説明すると、設置面Gに建込孔14を削孔した後、立設予定の支柱10の埋設部11を建込孔14に建て込んで立設する。
モルタル等の固結材15は、支柱10の建込前に建込孔14に予め充填しておいてもよいし、支柱10の建込後に充填してもよい。
【0032】
<2>透過型の剛性阻止面の形成
つぎの工程を経て隣り合う支柱10間に透過型の剛性阻止面30を形成する。
【0033】
<2.1>連結装置の設置
図6Bを参照して説明する。L字形を呈する複数の連結装置20のソケット部21を各支柱10に外装して設置する。
支柱10に対して複数の連結装置10を多段的に設置する際、連結装置20の上下の向きを交互に変えて設置する。
すなわち、上下の向きを交互に変えて複数の連結装置10を設置することで、各連結装置20のソケット部21が互いに向き合い、さらに各連結装置20の底面26が互いに向かい合う。
その結果、支柱10に対して横向きに張り出した左右一対の受筒23が同一の高さとなる。
【0034】
<2.2>横梁の設置
以下の要領で左右に隣り合う連結装置10の間に横梁31を掛け渡して透過型の剛性阻止面30を構築する。
各横梁31の端部を連結装置20の受筒21に挿し込み、横梁31の横孔33と連結装置20の受筒21の長孔24に支軸25を挿し込んで連結する。
支柱10に対して連結装置20の上下の向きを交互に変えて設置したことで、各連結装置20の受筒23の上下間隔が等しくなる。
そのため、隣り合う支柱10間に互いの平行性を保った状態で複数の横梁31を架設することができる。
【0035】
支柱10に対して連結装置20を積み重ねて設置する際、連結装置20のソケット部21と受筒23の間に高低差があるため、隣り合う支柱10の間に連結装置20を介して多段的に横梁31を横架すると、上下の横梁31の間に横向きスリット32が形成される。
横向きスリット32は連結装置20のスペーサ機能により形成される。
【0036】
このように、本発明では、隣り合う支柱10の地上部12の間に複数の横梁31を高さ方向に間隔を隔てて横架することで、透過性の剛性阻止面30を形成することができる。
【0037】
また、横梁31の端部と支柱10との間が連結装置20を介して支柱10を中心として回動自在に連結してあるので、防護柵を構成する複数の横梁31を任意の曲率にカーブさせて設置することができる。
さらに、横梁31の端部と支柱10との連結部を上下方向へ向けて回動可能に枢支してあるため、設置面Gに不均一の勾配や傾斜があっても、設置面Gの勾配や傾斜に追従させて横梁31を設置することができる。
そのため、設置面Gを事前に整地する必要がなくなる。
さらに、横梁31は作業員が運搬可能であることから、重機類用いずに横梁31を人力だけで設置して透過型の剛性阻止面30を容易に構築することができる。
【0038】
[防護柵の捕捉機能]
つぎに防護柵の捕捉機能について説明する。
【0039】
<1>透過型の剛性阻止面による崩落物の捕捉作用
図2を参照して透過型の剛性阻止面30による崩落土砂等の崩落物Wの捕捉作用について説明する。
崩落土砂等の崩落物Wが防護柵へ向けて滑落すると、防護柵の地表部に近い透過型の剛性阻止面30に衝突する。
剛性阻止面30に作用した崩落物Wの衝撃力は、複数の横梁31の強度により支持され、剛性阻止面30の上流側の帯面31aに崩落物Wが捕捉される。
一般的に崩落時における崩落物Wの層厚(1m程度)は決まっているので、剛性阻止面30の下層部が崩落物Wの受撃部30aとして機能し、剛性阻止面30の上層部が捕捉した崩落物Wの堆積部30bとして機能する。
【0040】
<2>透過型の剛性阻止面の変形性
透過型の剛性阻止面30は、曲げ耐力の大きな高剛性の横梁31で構成されている。
そのため、各横梁31の帯面31aに大きな衝撃力が作用しても、横梁31に下流側へ向けた大きな曲げ変形が生じない。
このように本発明では、剛性阻止面30の変形量を小さく抑制できるので、近隣に道路、鉄道、住宅等の保護対象物が存在する場合であっても、保護対象物から過大に離隔して防護柵を設置する必要がなくなる。
【0041】
<3>透過型の剛性阻止面による緩衝作用
透過型の剛性阻止面30には、緩衝機能を有する複数の横向きスリット32が開設してあることから、崩落土砂等の崩落物Wが横向きスリット32を透過する際に運動エネルギーが減衰される。
そのため、透過型の剛性阻止面30を構成する横梁31の荷重負担が軽減されるだけでなく、横梁31を支持する支柱10の荷重負担も軽減される。
【0042】
<4>透過型の剛性阻止面による排水作用
剛性阻止面30が複数の横向きスリット32を具備した透過構造を呈するので、崩落物Wの崩落前においては、横向きスリット32を通じて雨水が流下して防護柵の上流側に水が溜まることがない。
また、透過型の剛性阻止面30の上流側に崩落物Wを捕捉した状態であっても、横向きスリット32を通じて下流側へ向けて自然に排水できるので、防護柵に特別な排水処理を施す必要がない。
【0043】
<5>崩落物の撤去作業
透過型の剛性阻止面30を構成する各横梁31は着脱可能な構造になっているため、支軸25を抜き取ることで、スパン単位で横梁31を簡単に撤去することができる。
そのため、透過型の剛性阻止面30の上流側に堆積した崩落土砂等の崩落物Wを容易に撤去することができる。
【0044】
<6>透過型の剛性阻止面の補修性について
透過型の剛性阻止面30を構成する複数の横梁31はスパン単位で着脱が可能である。
そのため、受撃により、一部の横梁31に変形や損傷が発生した場合は、必要最低限の横梁31を新たなものと交換することで、剛性阻止面30の補修を行うことができる。
【0045】
以上は透過型の剛性阻止面30に崩落土砂等の崩落物Wが衝突した形態について説明したが、透過型の剛性阻止面30に落石等の崩落物が衝突した場合も既述した捕捉機能を発揮する。
【0046】
[実施例2]
<1>他の防護柵
透過型の剛性阻止面30を構成する横梁31の強度は、すべて同一の組み合わせでもよいが、剛性阻止面30の高さに応じて横梁31の強度を異なる組み合わせにしてもよい。
すなわち、剛性阻止面30の下位から上位へ向けて強度を漸減させてもよい。
【0047】
図2を参照して説明すると、本例では、崩落物Wの衝撃が直接作用する阻止面30の受撃部30aは強度の高い横梁31を使用し、捕捉した崩落物Wの堆積圧が作用する阻止面30の堆積部30bは強度の低い横梁31を使用する。
横梁31の強度は、鋼管31bや補強鋼材31cの強度を選択する等して変更が可能である。
また、横梁31の強度を下げることで、横梁31を軽量化できて経済性と取扱性がよくなる。
【0048】
<2>本例の効果
本実施例にあっては、防護柵の阻止面30に作用する外力(崩落物Wの衝撃力、捕捉した崩落物Wの堆積圧力)の違いに応じた最適強度の横梁31を使用できるので、施工費の削減と施工の省力化を実現することができる。
【符号の説明】
【0049】
G・・・・・支持面
10・・・・支柱
11・・・・支柱の埋設部
12・・・・支柱の地上部
13・・・・上弦材
14・・・・建込孔
20・・・・連結装置
21・・・・ソケット部
22・・・・連結孔
23・・・・受筒
24・・・・長孔
25・・・・支軸
26・・・・底面
30・・・・透過型の剛性阻止面
30a・・・透過型の剛性阻止面の受撃部
30b・・・透過型の剛性阻止面の堆積部
31・・・・横梁
31a・・・帯面
32・・・・横向きスリット
33・・・・横孔
【要約】
【課題】受撃時に崩落物の透過を許容しつつ、曲げ変形量が小さな阻止面を形成した防護柵を提供すること。
【解決手段】複数の支柱10と複数の支柱の間に形成した剛性阻止面とを備えた防護柵であって、剛性阻止面がスペーサ機能を有する複数の連結装置20と、複数の横梁31とを具備し、上下に隣り合う横梁31の間に横向きスリット32を形成して透過型の剛性阻止面30を形成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B