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特許7475099チアミン誘導体を含む移植片対宿主疾患予防又は治療用薬学的組成物
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  • 特許-チアミン誘導体を含む移植片対宿主疾患予防又は治療用薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】チアミン誘導体を含む移植片対宿主疾患予防又は治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20240419BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240419BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240419BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K31/505
A61P37/06
A23L33/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023517854
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 KR2021012578
(87)【国際公開番号】W WO2022060079
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0120568
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510229201
【氏名又は名称】キョンブク ナショナル ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コーオペレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リ,イン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,チャン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジェ-ハン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/044136(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0050878(KR,A)
【文献】Hematology,2018年,Vol.2018, No.1,pp.228-235
【文献】Clinical Lymphoma Myeloma and Leukemia,2014年,Vol.14, No.S3,pp.S111-S113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示されるチアミン(Thiamine)誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩(salts)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含むことを特徴とする、移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)予防又は治療用薬学的組成物:
(化学式1)
【化1】
Rは、
【化2】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【請求項2】
チアミン(Thiamine)誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩(salts)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)予防又は治療用薬学的組成物であって、
チアミン誘導体は、フルスルチアミン(fursultiamine)又はアリチアミン(allithiamine)であることを特徴とする、移植片対宿主疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項3】
チアミン誘導体は、フルスルチアミン(fursultiamine)である、請求項1又は2に記載の移植片対宿主疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項4】
移植片対宿主疾患は、放射線照射後に造血幹細胞移植を進行した癌患者に発生するものである、請求項1又は2に記載の移植片対宿主疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項5】
下記化学式1で表示されるチアミン(Thiamine)誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩(salts)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含むことを特徴とする、移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)改善用食品組成物:
(化学式1)
【化4】
Rは、
【化5】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【請求項6】
チアミン(Thiamine)誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩(salts)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)改善用食品組成物であって、
チアミン誘導体は、フルスルチアミン(fursultiamine)又はアリチアミン(allithiamine)であることを特徴とする、移植片対宿主疾患改善用食品組成物。
【請求項7】
チアミン誘導体は、フルスルチアミン(fursultiamine)である、請求項5又は6に記載移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)改善用食品組成物。
【請求項8】
移植片対宿主疾患は、放射線照射後に造血幹細胞移植を進行した癌患者に発生するものである、請求項5又は6に記載の移植片対宿主疾患改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、科学技術情報通信部の支援下で課題固有番号1711111722、課題番号2017R1A2B3006406としてなされたものであり、当該課題の研究管理専門機関は韓国研究財団、研究事業名は「個人基礎研究(科学技術情報通信部)(R&D)」、研究課題名は「ミトコンドリア関連小胞体膜(Mitochondria-Associated ER Membrane;MAM)相互作用及びピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(Pyruvate Dehydrogenase Kinase,PDK)活性調節を用いた慢性炎症・代謝症候群の新しい治療機転」、主管機関はキョンブク大学校、研究期間は2020.03.01~2021.02.28である。
【0002】
本特許出願は、2020年9月18日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2020-0120568号に対して優先権を主張し、該特許出願の開示事項は本明細書に参照によって組み込まれる。
【0003】
本発明は、チアミン誘導体を含む移植片対宿主疾患予防、治療又は改善用組成物に関し、より詳細には、フルスルチアミンを含む移植片対宿主疾患予防、治療又は改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)は、移植した骨髄の機能性免疫細胞が受容者を「異種」と認識して免疫学的攻撃を起こす場合に該当する同種骨髄移植(Allogenic bone marrow transplant;allo-BMT)の一般的な合併症である。これは、供与者Tリンパ球の免疫活性化から発生する受容者組織損傷を特徴とする病理学的状態である。供与者T細胞は一般に胃腸システム、肝及び皮膚において外部宿主細胞に対する反応を示すが、このような現象は、幹細胞移植を受ける患者の40~60%で発生する。
【0005】
一般に、急性GVHDは移植後100日以内に発生し、慢性GVHDは移植後100日後に発生する。患者の略40%において急性と慢性のいずれかの形態でGVHDが誘発される。
【0006】
急性GVHDは、同種供与体T細胞の調節されていない活性化、移動及び増殖の他、GVHD標的器官における炎症誘発性サイトカインの生産によって誘発される。
【0007】
これに対し、慢性GVHDの病因は、病原性T-及びB-細胞相互作用及び濾胞性Tヘルパー細胞(T follicular helper;Tfh)を含む様々な免疫細胞類型の生成に関連する。血漿細胞分化及び自己抗体生産も疾病・病理に寄与することが立証された。
【0008】
全般的に、GVHDは、幹細胞移植が行われた後に発生し、少数の患者だけが幹細胞移植を受けるという点からすれば希少疾患である。しかし、幹細胞移植を受けた患者のGVHDの発生率は35~50%と高い。GVHDの発生は、毎年合計5,500件程度と推算される。
【0009】
GVHD市場は2026年まで次第に約6億6,800万ドルへと上昇し、2019~2026年の期間に年平均売上高は4,000,000USDと、CAGR 6.05%を記録すると予想される。このような市場価値上昇は、患者の健康への認識及び関心が高まったことに起因する。
【0010】
一方、全世界自己免疫疾患治療剤市場は2017年基準で約45兆ウォンに達し、来る2025年までは約61兆ウォン規模に成長する見込みである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者らは、移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)を誘導したマウスモデルにフルスルチアミンを投与したとき、体重減少の緩和、肝及び大腸炎症細胞浸潤程度の減少、同種異系CD4IFNgT細胞生成抑制の効果に優れていることを確認した。
【0012】
そこで、本発明の目的は、下記化学式1で表示されるチアミン(Thiamine)誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩(salts)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む移植片対宿主疾患予防又は治療用薬学的組成物を提供することである:
【0013】
(化学式1)
【化1】
【0014】
Rは、
【化2】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0015】
本発明の他の目的は、下記化学式1で表示されるチアミン誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む移植片対宿主疾患改善用食品組成物を提供することである:
【0016】
(化学式1)
【化3】
【0017】
Rは、
【化4】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、チアミン誘導体の移植片対宿主疾患予防、治療又は改善用途に関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、チアミン(Thiamine)誘導体を含む移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)予防、治療又は改善用組成物に関し、本発明によれば、フルスルチアミンを移植片対宿主疾患の予防、治療又は改善用途に利用可能である。
【0020】
本発明者らは、移植片対宿主疾患動物モデルにフルスルチアミンを経口投与した場合に、体重減少の緩和、肝及び大腸炎症細胞浸潤程度の減少、同種異系CD4IFNg細胞生成抑制の効果を示すことを確認した。
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本発明の一態様は、下記化学式1で表示されるチアミン(Thiamine)誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩(salts)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)予防又は治療用薬学的組成物である:
【0023】
(化学式1)
【化5】
【0024】
Rは、
【化6】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0025】
Rは、
【化7】
であってよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
チアミン誘導体は、フルスルチアミン(fursultiamine)、アリチアミン(allithiamine)及びベンフォチアミン(benfotiamine)からなる群から選ばれる1種以上であってよく、例えば、フルスルチアミンであってよいが、これに限定されるものではない。
【0027】
移植片対宿主疾患は、幹細胞又は免疫細胞、例えば、造血幹細胞移植を受けた患者に発生するものであり得る。
【0028】
例えば、移植片対宿主疾患は、放射線照射後に造血幹細胞移植を進行した癌患者に発生するものであり得るが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明の薬学的組成物は、チアミン誘導体の薬学的有効量及び/又は薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物として利用されてよい。
【0030】
本明細書において用語「薬学的有効量」は、上述したチアミン誘導体の効能又は活性を達成するのに十分な量を意味する。
【0031】
本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、製剤時に一般に用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むか、これに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0032】
本発明に係る薬学的組成物は、ヒトを含む哺乳動物に様々な経路で投与されてよい。投与方式は一般に用いられるいかなる方式であってもよく、例えば、経口、皮膚、静脈、筋肉、皮下などの経路で投与されてよく、好ましくは経口で投与されてよい。
【0033】
本発明の薬学的組成物の適度の投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、通常の熟練した医師は所望の治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方できる。例えば、本発明の薬学的組成物は、毎日50~100mg/kg、例えば、50mg/kg処方されてよい。投与量が50mg/kg未満であると治療効果が見られず、100mg/kgを超えると、体重が減少して治療効果が低下することがあった。
【0034】
本発明の薬学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量形態で製造されたり又は多回容量容器内に内入して製造されてよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又はゲル(例えば、ヒドロゲル)の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含んでもよい。
【0035】
本発明の他の態様は、下記化学式1で表示されるチアミン誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む移植片対宿主疾患改善用食品組成物である:
【0036】
(化学式1)
【化8】
【0037】
Rは、
【化9】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0038】
Rは、
【化10】
であってよいが、これに限定されるものではない。
【0039】
チアミン誘導体は、フルスルチアミン、アリチアミン及びベンフォチアミンからなる群から選ばれる1種以上であってよく、例えば、フルスルチアミンであってよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
移植片対宿主疾患は、幹細胞又は免疫細胞、例えば、造血幹細胞移植を受けた患者に発生するものであり得る。
【0041】
本発明の食品組成物を食品添加物として用いる場合に、該食品組成物をそのまま添加するか、他の食品又は食品成分と併せて使用することができ、通常の方法によって適切に使用可能である。
【0042】
前記食品の種類には特に限定はない。前記物質を添加可能な食品の例には、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スネック食品類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常の意味のいかなる食品も含む。
【0043】
前記飲料は、様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有してよい。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライド、及びデキストリン、シクロデキストリンのような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用することができる。前記天然炭水化物の比率は当業者の選択によって適宜決定されてよい。
【0044】
上記の他にも、本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有してよい。その他、本発明の食品組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。このような成分は独立に又は組み合わせて使用可能である。このような添加剤の比率も当業者によって適宜選択されてよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明は、チアミン(Thiamine)誘導体を含む移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)予防、治療又は改善用組成物に関し、前記薬学的組成物の有効成分であるフルスルチアミン(fursultiamine)は、移植片対宿主疾患患者に見られる体重減少の緩和、肝及び大腸炎症細胞浸潤程度の減少、同種異系CD4IFNgT細胞生成の効果的抑制が可能であり、よって、これを効果的に移植片対宿主疾患の予防、治療又は改善に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の実施例によってマウス細胞を用いた混合リンパ球反応の誘導実験においてチアミン(Thiamine)誘導体のCD4IFNgT細胞(cell)生成抑制効果を確認したグラフである。
【0047】
図2A】本発明の実施例に係る移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)モデルマウスの構築及びフルスルチアミン(fursultiamine)投与過程を示す模式図である。
【0048】
図2B】本発明の実施例に係る移植片対宿主疾患モデルマウスの体重変化を示すグラフである。
【0049】
図2C】本発明の実施例に係る移植片対宿主疾患モデルマウスから分離された脾臓におけるCD4T細胞の生成量変化を示すグラフである。
【0050】
図2D】本発明の実施例に係る移植片対宿主疾患モデルマウスから分離された脾臓におけるCD4IFNgT細胞の生成量変化を示すグラフである。
【0051】
図2E】本発明の実施例に係る移植片対宿主疾患モデルマウスから分離された肝及び大腸組織をH&E(Hematoxylin and eosin)染色した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
下記化学式1で表示されるチアミン(Thiamine)誘導体及びそれらの薬剤学的に許容可能な塩(salts)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)予防又は治療用薬学的組成物に関するものである:
【0053】
(化学式1)
【化11】
【0054】
Rは、
【化12】
からなる群から選ばれるいずれか一つである。
実施例
【0055】
以下、本発明を下記の実施例によってより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明を例示するためものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0056】
本明細書全体を通じて、特定物質の濃度を表すために使われる「%」は、特に断りのない限り、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、及び液体/液体は(体積/体積)%である。
【0057】
実施例1:チアミン誘導体が同種異系特異的CD4IFNgT細胞生成に及ぼす影響確認
【0058】
CD4IFNgT細胞の生成量が高いと、同種異系抗原に対してT細胞(cell)が増殖して患者の身体器官を攻撃することが類推でき、よって、移植片対宿主疾患(Graft Versus Host Disease;GVHD)in vitro検証モデルである混合リンパ球反応(Mixed lymphocyte reaction)を行ってチアミン誘導体(Thiamine derivatives)に対する同種異系特異的(allo-reactive)CD4IFNgT細胞の生成程度を流細胞分析機(Flow cytometry)で比較した。
【0059】
具体的には、BALB/cマウスを頸椎脱骨後に脾臓を摘出し、ACK溶解バッファ(lysing buffer)で赤血球溶解を行った。その後、分離された脾臓細胞を2500cGyに放射線照射した。
【0060】
BALB/cマウス由来の放射線照射された脾臓細胞(irradiated splenocytes)8×10個及びBALB/cマウス由来のCD4T細胞8x10個を混合して同系(Syngeneic)対照群を、BALB/cマウス由来の放射線照射された脾臓細胞8×10個及びC57BL6/Jマウス由来のCD4T細胞8×105個を混合して陽性(Positive)対照群を準備し、前記陽性対照群にベンフォチアミン(Benfotiamine)10、50及び100uM、アリチアミン(Allithiamine)1、5及び10uM、及びフルスルチアミン(Fursultiamine)10、50及び100uMを処理して実験群を準備した。
【0061】
その後、5日間RPMI1640(10% FBS、1%ペニシストレプトマイシン)培地において37℃で培養し、細胞を分離した後、流細胞分析によってCD4IFNgT細胞の生成程度を確認した。
【0062】
【表1】
【0063】
表1及び図1から確認できるように、ベンフォチアミンを処理した場合には、CD4IFNgT細胞の生成程度が濃度に関係なく陽性対照群と有意な差を示さなかった。これに対し、アリチアミンは5uM以上、フルスルチアミンEN50uM以上で濃度依存的に陽性対照群に比べて有意に減少する数値を示した。
【0064】
実施例2:GVHD疾病モデルにおけるフルスルチアミンによる治療効果検証
【0065】
図2Aのように、5週齢BALB/c雄マウスを1週間順化させ、800cGy全身放射線を照射した後、C57BL/6J由来骨髄細胞(Bone marrow cell)5×10個及び脾臓細胞1×10個を静脈注射(IV injection)で注入してGVHD in vivoモデル(Positive,陽性対照群)を構築した。同系対照群(Syngeneic)はこれと同じ方法で構築するが、注入される骨髄細胞としてBALB/c由来骨髄細胞を選択して行った。
【0066】
フルスルチアミン投与群(Fur50)は、GVHD in vivoモデルにフルスルチアミン塩酸塩(Fursultiamine HCl)を50mg/kgで毎日経口投与(daily oral gavage)することによって構築した。
【0067】
構築された実験群に対して体重(Weight)変化を3日ごとに測定することによってフルスルチアミンの治療効果を確認しようとした。
【0068】
図2Bから確認できるように、フルスルチアミン投与群において経口投与12日目に体重がGVHD in vivoモデルに比べて有意に回復した。
【0069】
14日目にマウスから分離された脾臓において、GVHDを誘発する主要要因であるCD4T細胞及びCD4IFNgT細胞の生成量を比較した。
【0070】
【表2】
【0071】
表2、図2C及び図2Dから確認できるように、フルスルチアミン投与によって同種異系CD4T細胞及びCD4IFNgT細胞の生成量が減少した。GVHD in vivoモデル誘導14日目にマウスから肝(liver)及び大腸(large intestine)組織を摘出して4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)に48時間固定後に、パラフィン(paraffin)に包埋(embedding)した。5μmセクション(sections)に切った後、H&E(hematoxylin and eosin)染色を行った。(bar=100um)
【0072】
図2Eから確認できるように、陽性対照群の肝組織では赤い矢印で表示された部分の免疫細胞が浸潤されることが観察されたが、フルスルチアミン投与群では免疫細胞の浸潤が減少した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、チアミン誘導体を含む移植片対宿主疾患予防、治療又は改善用組成物に関し、より詳細には、フルスルチアミンを含む移植片対宿主疾患予防、治療又は改善用組成物に関する。

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E