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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】軽量化された航空機タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/20 20060101AFI20240419BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20240419BHJP
   B60C 9/13 20060101ALI20240419BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20240419BHJP
   D02G 3/48 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
B60C9/20 D
B60C9/20 C
B60C9/20 F
B60C9/00 C
B60C9/00 D
B60C9/00 G
B60C9/13
B60C9/22 G
D02G3/48
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2016166773
(22)【出願日】2016-08-29
(65)【公開番号】P2017047891
(43)【公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-05-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】62/212105
(32)【優先日】2015-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン エリザベス ショー
(72)【発明者】
【氏名】フランク アンソニー クミシク
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド ジェームス ライター
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】磯貝 香苗
【審判官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/035940(WO,A1)
【文献】特開2012-1206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤにおいて、ベルト補強構造が、
複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、
複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、
前記複数のコードの第2のストリップは、前記複数のコードの第1のストリップよりも少ないEPI(Ends Per Inch)を有し、
前記ジグザグベルト補強構造は前記低角度ベルトの半径方向外側に位置しており、
前記第1のストリップの補強コードとして、アラミド、またはアラミドとナイロンとを混ぜた混成コードが用いられ、
前記第2のストリップは、第1の補強コードと、弾性係数がより小さい補強コードとを含む複合ストリップであり、
前記第1の補強コードは、アラミド、POK、または、アラミドおよびナイロンによって作られた混成コードまたはハイブリッドコードからなり、前記弾性係数がより小さい補強コードよりも弾性係数が大きい材料を有し、前記弾性係数がより小さい補強コードよりも横方向内側に位置し、
前記弾性係数がより小さい補強コードはナイロンまたはナイロン6,6を含むことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記複数のコードの第1のストリップは、前記複数のコードの第2のストリップとは異なる補強材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記複数のコードの第1のストリップは、ナイロンとアラミドの混成コードから形成されることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1のストリップは、EPIが18であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第2のストリップは、EPIが16であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1のストリップは、らせん状に巻かれていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第2のストリップは、アラミドとナイロンとの混成によって形成された前記第1の補強コードと、ナイロンによって形成された前記弾性係数がより小さい補強コードとを有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記複数のコードの第1のストリップは、9本の補強コードを有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記複数のコードの第2のストリップは、8本の補強コードを有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1の補強コードは、80%破断時の接線弾性係数が5000MPAよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記弾性係数がより小さい補強コードは、80%破断時の接線弾性係数が5000MPAよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記第1の補強コードは、80%破断時の接線弾性係数が35000MPAよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記第1の補強コードは、アラミドとナイロンの混成コードによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記第1の補強コードは、アラミドによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記弾性係数がより小さい補強コードは、ナイロンによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
前記第2のストリップは、合計で9本の補強コードを有し、2本の弾性係数がより小さい補強コードの間に7本の第1の補強コードが配置されることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
前記第1のストリップは、幅が0.5インチ(1.27cm)であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
前記第1のストリップは、厚さが0.062インチ(0.15748cm)であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項19】
前記第2のストリップは、厚さが0.065インチ(0.1651cm)であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項20】
前記第1のストリップは、3000/2アラミド1680/1ナイロンの構成を有する1本または2本以上の補強コードによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤに関し、特には、航空機で使用されるような高速高荷重タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
高速適用の空気入りタイヤは、タイヤがフットプリントの領域に出入りする際にタイヤのクラウン領域において著しくたわむ。この問題は、離陸時および着陸時にタイヤの速度が200mphを超えることがある航空機タイヤにおいて特に深刻である。
【0003】
タイヤが非常に高い速度で回転すると、クラウン領域は、角加速度および角速度が高いために寸法が大きくなる傾向にあり、トレッド領域が半径方向外側に引かれる傾向にある。このような力は、フットプリント領域として知られているタイヤの小さい領域でのみ支持されている車両の荷重によって打ち消される。
【0004】
現在のタイヤ設計では、高速高荷重性能を有する軽量の航空機タイヤが推進されている。従来技術としては、特許文献1に開示されたような、航空機タイヤにおいてジグザグベルト層を使用するものが知られている。ジグザグベルト層は、ベルトパッケージの外側側縁部における切断されたベルト縁部をなくせるという利点を有する。また、ジグザグベルト層の本来柔軟であるため、コーナリングフォースを向上させる働きをする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5427167号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ジグザグベルト層を備えるタイヤは、ベルト縁部に過度に多くの層が形成され、それにより耐久性が低下することがある。さらに、一般的に、積載量と重量との間にはトレードオフの問題がある。したがって、高速高荷重耐久性および軽量の各要件を満たすことが可能な、改善された航空機タイヤが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つまたは2つ以上の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、複数のコードの第2のストリップは、複数のコードの第1のストリップよりも少ないEPI(Ends Per Inch)を有し、複数の補強コードの第1のストリップは、9本の補強コードを有する空気入りタイヤを提供する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、複数のコードの第2のストリップは、複数のコードの第1のストリップよりも少ないEPIを有し、複数の補強コードの第2のストリップは、8本の補強コードを有する空気入りタイヤを提供する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、複数のコードの第2のストリップは、第1の補強コードおよび第2の補強コードによって形成され、第1の補強コードは、第2のコードよりも大きい弾性係数の材料によって形成され、第1のコードは、80%破断時の接線弾性係数が5000MPAよりも大きい空気入りタイヤを提供する。
【0010】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、複数のコードの第2のストリップは、第1の補強コードおよび第2の補強コードによって形成され、第1の補強コードは、第2のコードよりも大きい弾性係数の材料によって形成され、第2のコードは、80%破断時の接線弾性係数が5000MPAよりも小さい空気入りタイヤを提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、複数のコードの第2のストリップは、第1の補強コードおよび第2の補強コードによって形成され、第1の補強コードは、第2のコードよりも大きい弾性係数の材料によって形成され、第1の補強コードは、80%破断時の接線弾性係数が35000MPAよりも小さい空気入りタイヤを提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、複数のコードの第2のストリップは、第1の補強コードおよび第2の補強コードによって形成され、第1の補強コードは、第2のコードよりも大きい弾性係数の材料によって形成され、第1の補強コードは、アラミドとナイロンの混成コード(merged cord)によって形成される空気入りタイヤを提供する。
【0013】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、複数のコードの第2のストリップは、第1の補強コードおよび第2の補強コードによって形成され、第1の補強コードは、第2のコードよりも大きい弾性係数の材料によって形成され、第1の補強コードは、アラミドによって形成される空気入りタイヤを提供する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、複数のコードの第2のストリップは、第1の補強コードおよび第2の補強コードによって形成され、第1の補強コードは、第2のコードよりも大きい弾性係数の材料によって形成され、第2の補強コードは、ナイロンによって形成される空気入りタイヤを提供する。
【0015】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、ストリップは、合計で9本の補強コードを有することにより、2本の第2の補強コードの間に7本の第1の補強コードが配置される空気入りタイヤを提供する。
【0016】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、第1のストリップは、幅が0.5インチ(1.27cm)である空気入りタイヤを提供する。
【0017】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、第1のストリップは、厚さが0.062インチ(0.15748cm)である空気入りタイヤを提供する。
【0018】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、第2のストリップは、厚さが0.065インチ(0.1651cm)である空気入りタイヤを提供する。
【0019】
本発明の他の実施形態は、カーカスとベルト補強構造とを有する空気入りタイヤであって、ベルト補強構造が、複数のコードの第1のストリップを巻くことによって形成された低角度ベルトと、複数のコードの第2のストリップを巻くことによって形成されたジグザグベルト補強構造と、を有し、第1のストリップは、3000/2アラミド1680/1ナイロン構成を有する1本または2本以上の補強コードによって形成される空気入りタイヤを提供する。
【0020】
(定義)
「カーカス」は、プライ上のベルト構造、トレッド、アンダートレッドおよびサイドウォールゴムを除くが、ビードを含むタイヤ構造を意味する。
【0021】
「周方向」は、軸方向に垂直な環状トレッドの表面の周囲に沿って延びているラインまたは方向を意味する。
【0022】
「コード」は、タイヤ内のプライを構成する補強ストランドの1つを意味する。
【0023】
「赤道面(EP)」は、タイヤの回転軸に垂直であり、かつタイヤのトレッドの中心を通過する平面を意味する。
【0024】
所与のひずみまたは応力におけるコードの「弾性係数」は、所与のひずみまたは応力において算出される伸長正割弾性係数(extension secant modulus)を意味する。高弾性係数は、正割弾性係数が1000cN/texよりも大きいことを意味し、低弾性係数は、正割弾性係数が600cN/texよりも小さいことを意味する。
【0025】
「プライ」は、ゴムで被覆された互いに平行なコードの連続した層を意味する。
【0026】
「ラジアル(半径方向の)」および「半径方向に」は、半径方向においてタイヤの回転軸に向かう、またはタイヤの回転軸から離れる方向を意味する。
【0027】
「ラジアルプライタイヤ」は、ビードからビードへ延びるプライコードがタイヤの赤道面に対して65°から90°の間のコード角度で配置された、ベルトが巻かれるかまたは周方向に制限された空気入りタイヤを意味する。
【0028】
「断面幅」は、タイヤが荷重を受けずに定格圧力まで膨張させられたときにタイヤの最も広い部分において測定されるタイヤのサイドウォール間の距離である。
【0029】
所与のひずみまたは応力におけるコードの「接線弾性係数」は、コードの伸長接線弾性係数を意味する。所与の応力またはひずみにおいて、接線弾性係数は、応力ひずみ曲線の接線の勾配の値であり、「ヤング率、接線弾性係数、および曲げ弾性率に関する標準試験方法(Standard Test Method for Young’s Modulus,Tangent Modulus and Chord Modulus)」という名称のASTM E111-04によって求めることができる。
【0030】
「ジグザグベルト補強構造」は、複数のコードからなる少なくとも2つの層、つまり、平行な複数のコードからなり、それぞれに1本から20本のコードを有し、ベルト層の側縁部同士の間を5°から30°の間の角度に延びる交互パターンをなすように配置されたリボンを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明によるタイヤの半部の第1の実施形態の概略断面図である。
図2】構造の中央におけるジグザグベルト層の概略斜視図である。
図3】ベルト層構成を示すタイヤ用の複合ベルトパッケージの半部の第1の実施形態の概略拡大断面図である。
図4】ベルト層構成を示す複合ベルトパッケージの第2の実施形態の概略拡大断面図である。
図5】ベルト補強ストリップの第1の実施形態の図である。
図6】ベルト補強ストリップの第2の実施形態の図である。
図7】タイヤの代替実施形態を示す図である。
図8】タイヤの代替実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明のラジアル航空機タイヤ10の一方の半部の断面図を示す。このタイヤは、中央周方向平面に対して対称であり、そのため、一方の半部のみが示されている。図示されたように、航空機タイヤ10は、一対のビード部12を有し、各ビード部には、ビードコア14が埋め込まれている。この航空機タイヤにおいて使用するのに適したビードコアの一例は米国特許第6571847号明細書に示されている。ビードコア14は、複数のスチールシースワイヤ15によって囲まれた中央部13にアルミニウム、アルミニウム合金、または他の軽量合金を用いることが好ましい。当業者であれば、他のビードコアが利用されてもよいことが分かるであろう。
【0033】
航空機タイヤ10は、タイヤの半径方向においてビード部12の各々から実質的に外側に延びるサイドウォール部16と、各サイドウォール部16の半径方向の外側端部の間を延びるトレッド部20とをさらに有する。このタイヤは、一方のビードから他方のビードへ延び、かつ、図1ではWBFで示されているリムフランジ幅を有するリムフランジ上に取り付けられた状態で示されている。タイヤの断面幅は、図1ではWで示されており、タイヤが荷重を受けておらず、標準圧力まで膨張したときの最も広い部分におけるタイヤの横断面幅である。さらに、航空機タイヤ10は、一方のビード部12から他方のビード部12まで円環状に延びるカーカス22によって補強されている。カーカス22は、好ましくは半径方向に向けられた内側のカーカスプライ24と外側のカーカスプライ26とで構成されている。これらのカーカスプライにおいては、通常、4つの内側のカーカスプライ24が複数の折り返し部を形成するように、ビードコア14の周りをタイヤの内側から外側に巻かれ、一方、2つの外側のカーカスプライ26が内側のカーカスプライ24の折り返し部の外側に沿って下向きにビードコア14まで延ばされている。
【0034】
この航空機タイヤは、WBF/Wの比が約0.65~0.7の範囲を有するH型タイヤであることが好ましく、WBF/Wの比は、約0.65~約0.68の範囲であることがより好ましい。
【0035】
これらのカーカスプライ24、26の各々は、任意の適切なコード、一般的には、タイヤの赤道面EPに実質的に垂直に延びる(すなわち、タイヤの半径方向に延びる)ナイロン-6,6のコードのようなナイロンコードを有してもよい。ナイロンコードは、1890デニール/2/2または1890デニール/3の構成を有することが好ましい。カーカスプライ24、26のうちの1つまたは2つ以上は、例えば、ハイブリッドコード(hybrid cord)、高エネルギーコード(high energy cord)、または混成コード(merged cord)などのアラミド・ナイロンコード構造を有してもよい。適切なコードの例は、米国特許第4893665号明細書、米国特許第4155394号明細書および米国特許第6799618号明細書に記載されている。プライコードは、破断伸び率が8%よりも高く、30%よりも低いことが好ましく、9%よりも高く、28%よりも低いことがより好ましい。
【0036】
航空機タイヤ10は、カーカス22とトレッドゴム28との間に配置されたベルトパッケージ40をさらに有する。図3は、航空機タイヤとして使用するのに適したベルトパッケージ40の一方の半部の第1の実施形態を示す。ベルトパッケージ40は、中央周方向平面に対して対称であり、したがって、ベルトパッケージの一方の半部のみが示されている。図示のようなベルトパッケージ40は、カーカス22に隣接して配置された第1のベルト層50を有する。第1のベルト層50は、好ましくは、中央周方向平面に対して10°以下の角度を形成する複数の補強コードによって形成され、より好ましくは、5°以下の角度を形成する複数の補強コードによって形成される。好ましくは、第1のベルト層50は、各コードを周方向に対して渦巻き状またはらせん状に巻くことによって作られた2本または3本以上のコードからなる第1のゴム引きストリップ41によって形成されている。第1のベルト層50は、ベルトパッケージ40の最も狭いベルト構造であり、リム幅(フランジ同士の間の幅)の約13%から約100%の範囲の幅を有する。
【0037】
ベルトパッケージ40は、第1のベルト層50の半径方向外側に配置された第2のベルト層55をさらに有する。第2のベルト層55は、中央周方向平面に対して10°以下の角度を有する複数のコードによって形成される。好ましくは、第2のベルト層55は、各コードを周方向に対して渦巻き状またはらせん状に巻くことによって作られた2本または3本以上のコードからなるゴム引きストリップ41によって形成される。第2のベルト層55は、リム幅の約13%から約100%の範囲の幅を有している。第2のベルト層55は、第1のベルト層50と同じ幅を有するか、または第1のベルト層50よりもわずかに大きい幅を有することが好ましい。ベルトパッケージ40は、第3のベルト層60と第4のベルト層61とをさらに有してもよい。第3のベルト層60は、第2のベルト層55の半径方向外側に配置されており、第2のベルト層55よりも十分に広くてもよい。第4のベルト層は、第3のベルト層60の半径方向外側に配置されており、第3のベルト層60と同じ幅を有するか、または第3のベルト層60よりもわずかに大きい幅を有してもよい。第3および第4のベルト層60、61は低角度ベルトであり、通常、ベルト角度は中央周方向に対して10°以下である。第3および第4のベルト層60、61は、各コードを周方向に対して渦巻き状またはらせん状に巻くことによって作られた2本または3本以上のコードからなるゴム引きストリップ41によって形成されることが好ましい。
【0038】
ベルトパッケージ40は、少なくとも1つのジグザグベルト補強構造70をさらに有している。ジグザグベルト補強構造70は、図2に示されたように形成された、互いに織り合わされたコードの2つの層から構成されている。ジグザグベルト構造は、2本または3本以上のコードからなるゴム引きされた複合ストリップ43から形成される。複合ストリップ43は、図5に示されており、以下により詳細に説明される。複合ストリップ43は、タイヤ組立てドラム49またはコアの側縁部44および45間を交互に延びるように、概ね周方向に巻かれている。複合ストリップ43は、このようなジグザグ経路に沿って何度も巻かれ、さらに複合ストリップ43は、互いに隣接する複合ストリップ43の間に隙間が形成されないように周方向に所望の量だけずらされている。その結果、各コードは、両方の端部44、45における折り返し点において曲げ方向を変化させつつ周方向に延びる。ジグザグベルト構造の各コードは、複合ストリップ43が、上述したように周方向の360°ごと以内に、プライの両方の端部44と45の間を少なくとも1回往復する場合、通常、タイヤの赤道面EPに対して5°~30°のコード角Aで互いに交差する。各ジグザグベルト構造として形成された複数のコードの2つの層は、ベルト層に埋め込まれ、かつ分離不能であり、ベルトの外側横端部において切断された端部がない。
【0039】
図3の実施形態では、低角度ベルト50、55、60、61のうちの1つまたは2つ以上が、EPIが18である複数の補強コードのストリップによって形成されることが好ましい。複数の補強コードのストリップは、アラミド、またはアラミドとナイロンとを混ぜた混成補強コードによって形成さえることが好ましい。ストリップは、幅が0.5インチ(1.27cm)であり、9本の補強コードを有することがさらに好ましい。各ジグザグベルトストリップは、EPIが16である8本の補強コードの0.5インチ複合ストリップによって形成されることが好ましい。ジグザグベルトストリップは、寸法または厚さが0.065インチ(0.1651cm)であることがさらに好ましく、低角度ベルトは、0.062インチ(0.15748cm)の厚さを有するストリップによって形成されることがさらに好ましい。
【0040】
ベルト縁部における重なり合ったストリップの数を減らすためには、ジグザグベルトワインディングの振幅または幅を変化させることが好ましい。なお、一般的には、ジグザグベルトは、一定の振幅または幅を有するように形成されている。ベルト縁部における層の数を減らすために、ジグザグベルトの振幅(ドラム中心からドラムの軸方向端部までの距離)を変化させることができる。振幅はランダムに変化させても、パターンに従って変化させてもよい。一例では、ドラム上の第1のジグザグワインディングは、W1W2の第1の巻き線パターンを有し、この場合、W1は第1の振幅であり、W2は、第1の振幅の直後に出現する第2の振幅であり、W1はW2と等しくない。第2のワインディングが、第1のワインディング上に重ねられており、W2W1の第2のワインディングパターンを有している。各ワインディングパターンは、ドラム上のワインディングを完成するために必要なだけ繰り返される。
【0041】
ストリップ構成
複合ストリップ43は、図5に示されており、上述したベルト構造のいずれを形成するために使用されてもよいが、ジグザグベルト構造の少なくとも1つを形成するために使用されることが好ましい。複合ストリップ43は、ジグザグベルト構造の全てを形成するために使用されることがより好ましい。複合ストリップは、2本または3本以上の互いに平行な補強コードによって作られており、これらの補強コードは互いに異なっている。補強コードはゴムに埋め込まれている。より好ましくは、複合ストリップ43は、様々な材料から作られた補強物によって形成されている。ストリップの幅は、必要に応じて変更されてもよいが、約0.5インチ(変動幅は±5%)であることが好ましい。ストリップの寸法または厚さは用途に応じて変更されてもよい。この補強されたストリップがスパイラル(らせん状に巻かれた)ベルトまたは低角度ベルトに使用される場合、ストリップの寸法または厚さは0.062インチ(0.15748cm)であってもよい。この補強されたストリップがジグザグベルトに使用される場合、ストリップの厚さは低角度ベルト/スパイラルベルトよりも大きい。ジグザグベルトのストリップの厚さは、0.065インチ(0.1651cm)であることが好ましい。
【0042】
図5に示されている第1の実施形態では、第1のコード補強物44は、第2のコード補強物46よりも大きい接線弾性係数(tangent modulus)を有する。好ましくは、複合ストリップは、ストリップ上の横方向内側に配置された、接線弾性係数がより大きい、少なくとも2本の補強コード44と、接線弾性係数がより小さい、少なくとも2本の補強コードとを有する。好ましくは、接線弾性係数がより小さい補強コード46は、複合ストリップの横方向外側端部上に配置される。接線弾性係数がより大きい補強コード44は、80%破断時の接線弾性係数が4500MPAよりも大きく、10000MPAよりも大きくかつ31000MPAよりも小さいことが好ましい。接線弾性係数のより小さい補強コード46は、80%破断時の接線弾性係数が4500MPAよりも小さい。
【0043】
図5に示されている例では、互いに平行関係に配置された合計で8本の補強コードがある。複合ストリップ43は、幅が0.5インチである。複合ストリップ43は、EPI(Ends Per Inch)が16である。複合ストリップ43は、ストリップの各側縁部上に配置されたナイロンの補強コード46を有する。また、それらは、各側縁部に配置された2本の補強コード46を含む4本の外側補強コード46でもよい。接線弾性係数のより小さい補強コード46は、ナイロンまたはナイロン6,6のような任意の所望の材料によって形成されてもよい。弾性係数のより小さい補強コード46は、2100デニール/2/2の構成を有するナイロンであることが好ましい。図5に示された複合ストリップ43は、弾性係数がより低い補強コード46の横方向内側に設けられた6本の弾性係数が高い補強コード44を有する。各インナー補強コード44は、アラミド、POK、またはアラミドおよびナイロンによって作られた混成コードまたはハイブリッドコードなどの弾性係数のより大きい任意の材料を有する。適切なコード構成の一例は、1860dtexで6.7撚りの構成を有するポリアミド(アラミド)の2本のコードと、1860dtexで4.5撚りの構成を有する1本のナイロンコードまたはナイロン6/6コードとを含む、アラミドとナイロンの複合体を含む。全混成ケーブル撚りは6.7である。適切な高弾性係数コード構成の第2の例は、1670デニール/1/3の構成を有するポリアミドの3本のコードを含む。
【0044】
図6は、本発明に適したストリップの第2の実施形態を示している。複合ストリップ100は、ストリップ幅が0.5インチであり、9本の補強コードを有する。複合ストリップ100は、EPI(Ends Per Inch)が18である。ストリップの各横端部に配置された横方向の外側補強コード146は、80%破断時の接線弾性係数が4500MPAよりも小さい材料によって形成される。外側補強コード146は、ナイロンによって形成されることが好ましい。この複合ストリップは、弾性係数のより小さい外側補強コード146の間に配置された弾性係数のより大きい複数のコード144をさらに含んでもよい。
【0045】
図4は、本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態は、第1および第2のジグザグベルト構造80、90を含んでいる。第2のジグザグベルト構造90は、第1のジグザグベルト構造80の半径方向外側に配置されている。第2のジグザグベルト構造90は、第1のジグザグベルト構造80よりも小さい幅を有する。
【0046】
図7は、本発明の第3の実施形態を示す。第3の実施形態は、第1、第2、および第3のジグザグベルト構造92、70、60を含む。第3のジグザグベルト構造60は、半径方向において最も内側のジグザグベルトであり、第2のジグザグベルト構造70の軸方向幅よりも小さ軸方向幅を有する。第2のジグザグベルト構造70は、最も広いジグザグベルトであり、ベルト全体において最も広い。低角度ベルト50、55は各ジグザグベルトよりも著しく狭い。図8は、半径方向において最も外側のジグザグベルトが最も狭いジグザグベルトになり、ジグザグベルト構造70がジグザグベルト構造92よりも広くなるように各ジグザグベルトが配置されてもよいことを示す。半径方向において最も内側のジグザグベルト構造60が、最も広いジグザグベルトであり、全体でも最も広いベルトである。低角度ベルト50、55は、複数の補強コードの第1のストリップを使用してらせん状に巻かれ、補強コードの第1のストリップはEPIが18であり、補強コードは、アラミドとナイロンを混ぜた混成コードであることが好ましい。第1のストリップは、厚さが0.062インチである。ジグザグベルトは、複数の補強コードの第1のストリップとは異なる補強コードの第2のストリップによって形成されている。複数の補強コードの第2のストリップは、EPIが第1のストリップよりも少ないことが好ましく、EPIが16であることがより好ましい。第2のストリップの厚さは0.05インチである。第2のストリップの横方向外側端部における複数の補強コードは、ナイロンコードによって形成されることが好ましい。ナイロンコード同士の間に配置されたインナーコードは、ナイロンとアラミドを混ぜた混成コードまたはアラミドによって形成されることが好ましい。
【0047】
プライコードは、ベルトコードの破断伸び率よりも高い破断伸び率を有することがさらに好ましい。破断伸び率、線密度、および引張強度などのコード特性は、タイヤの浸漬終了時から加硫開始時までの間に得られたコードサンプルから求められる。
【0048】
本明細書における説明を考慮すれば本発明の変形実施形態が可能である。本発明を例示するためにいくつかの代表的な実施形態および詳細を示したが、当業者には、本発明の範囲から逸脱せずに様々な変更および修正を施すことが可能であることが明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8