(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】放電ユニット、及び空気清浄機
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20240419BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20240419BHJP
B03C 3/02 20060101ALI20240419BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20240419BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20240419BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H05H1/24
A61L9/015
B03C3/02 B
B03C3/40 A
B03C3/41 Z
H01T19/04
(21)【出願番号】P 2019100104
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 竜司
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 啓
(72)【発明者】
【氏名】茂木 完治
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】安藤 達哉
【審判官】松川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/042992(WO,A1)
【文献】特開2000-185243(JP,A)
【文献】特開2003-243200(JP,A)
【文献】特開平10-244182(JP,A)
【文献】特開2007-328970(JP,A)
【文献】特開2005-300111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00- 1/54
H01T 19/04
A61L 9/00- 9/22
B03C 3/00- 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(53)と、前記電源(53)に接続される放電電極(52)及び対向電極(57)とを有し、前記電源(53)から放電電極(52)及び対向電極(57)に直流電圧が印加されることでストリーマ放電を行う放電装置(51)と、
前記放電装置(51)の対向電極(57)に光を照射する照射装置(70)と、
を備え、
前記照射装置(70)は、前記対向電極(57)に光を照射しない第1状態と、
前記対向電極(57)の仕事関数よりも大きいエネルギーの光を前記対向電極(57)に照射する第2状態とに切り換えられ、
前記放電装置(51)は、前記第1状態及び第2状態ともに前記放電電極(52)と前記対向電極(57)とへ直流電圧を印加
し、
前記第1状態では、ストリーマ放電が行われ、
前記第2状態では、グロー放電が行われる
ことを特徴とする放電ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記放電電極(52)に通電する放電安定部材(58)をさらに備える
ことを特徴とする放電ユニット。
【請求項3】
請求項2において、
前記放電安定部材(58)を支持する絶縁部(60)をさらに備え、
前記絶縁部(60)は、前記対向電極(57)と前記照射装置(70)との間に配置されると共に、前記照射装置(70)から照射される光が通る切り欠き部(67)を有する
ことを特徴とする放電ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
前記対向電極(57)は、亜鉛、アルミニウム、スズ又はチタンのいずれかで構成されることを特徴とする放電ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずか1つにおいて、
前記照射装置(70)は、前記対向電極(57)に紫外光を照射することを特徴とする放電ユニット。
【請求項6】
空気を浄化する空気清浄機であって、
請求項1乃至5のいずれか1つの放電ユニットを備えていることを特徴とする空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放電ユニット、及び該放電ユニットを備えた空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放電を行う放電装置が知られており、空気清浄機等に搭載されている。特許文献1の放電装置は、電源ユニットと、該電源ユニットから電圧が印加される放電電極及び対向電極と、前記放電電極を挟んで前記対向電極と反対側に配置され、前記放電電極と同じ極性となるように構成されるスタビライザを有している。
【0003】
前記放電装置では、電圧が印加された放電電極の電圧と前記スタビライザの電圧との電圧差を調節することで、ストリーマ放電とグロー放電とを切り替えることができる。具体的に、前記放電装置は、前記電圧差を所定値以下に調節されることでストリーマ放電を行い、前記電圧差を所定値以上に調節されることでグロー放電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の放電装置は、前記電圧差の調整によりストリーマ放電とグロー放電とを切り換えている。しかし、本願発明者は、他の方法によりストリーマ放電とグロー放電とを切り換える装置を創出した。
【0006】
本開示の目的は、ストリーマ放電とグロー放電と切り替えることができる放電ユニット、及び該放電ユニットを備える空気清浄機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、電源(53)と、前記電源(53)に接続される放電電極(52)及び対向電極(57)とを有し、前記電源(53)から前記放電電極(52)及び前記対向電極(57)に直流電圧が印加されることでストリーマ放電を行う放電装置(51)と、前記放電装置(51)の前記対向電極(57)に光を照射する照射装置(70)とを備え、前記照射装置(70)は、前記対向電極(57)に光を照射しない第1状態と、対向電極(57)の仕事関数よりも大きい光を前記対向電極(57)に照射する第2状態と、に切り換えられることを特徴とする放電ユニットである。
【0008】
第1の態様では、放電装置(51)は、放電電極(52)から対向電極(57)に向けてストリーマ放電を行うように構成されている。照射装置(70)から光を照射しない第1状態では、放電装置(51)はストリーマ放電を行う。第2状態では、照射装置(70)から対向電極(57)の仕事関数よりも大きいエネルギーの光が、対向電極(57)に照射される。このことにより第2状態では、放電装置(51)はグロー放電を行う。第2状態では、対向電極(57)において光電効果が生じ、ストリーマ放電が不安定になると推察できる。従って、照射装置(70)が第1状態と第2状態とに切り換わることで、放電装置(51)はストリーマ放電とグロー放電とを切り換えることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において前記対向電極(57)は、亜鉛、アルミニウム、スズまたはチタンのいずれかで構成されることを特徴とする放電ユニットである。
【0010】
第2の態様では、対向電極(57)を構成する亜鉛、アルミニウム、スズまたはチタンはいずれも仕事関数が比較的小さい。このため、照射装置(70)から照射される光のエネルギーは、対向電極(57)の仕事関数よりも大きくなりやすい。
【0011】
このことにより、照射装置(70)を第1状態から第2状態にすると、放電装置(51)はストリーマ放電からグロー放電に切り換えることができる。
【0012】
第3の態様は、第1又は第2の態様において前記照射装置(70)は、前記対向電極(57)に紫外光を照射することを特徴とする放電ユニットである。
【0013】
第3の態様では、照射装置(70)から照射される紫外光のエネルギーは比較的大きい。そのため、照射装置(70)から照射される光のエネルギーは、対向電極(57)の仕事関数よりも大きくなりやすい。
【0014】
このことにより、照射装置(70)を第1状態から第2状態にすると、放電装置(51)はストリーマ放電からグロー放電に切り換えることができる。
【0015】
第4の態様は、第1乃至第3の態様のいずれか1つの放電ユニット(50)を備えていることを特徴とする空気清浄機である。
【0016】
第4の態様では、空気清浄機(1)の放電ユニット(50)において、ストリーマ放電とグロー放電とが切り換えて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気清浄機の概略の構成図である。
【
図2】
図2は、対向電極を透明で表わした、実施形態に係る放電装置の平面図である。
【
図3】
図3は、照射装置が第1状態であるときの
図2のIII-III線断面図である。
【
図5】
図5は、第2状態の
図2のIII-III線断面図である。
【
図7】
図7は、放電ユニットの第1状態と第2状態とのV-I特性を表わしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0019】
本発明に係る放電ユニット(50)は、住宅等の室内に適用される空気清浄機(1)に適用される。
【0020】
《空気清浄機の全体構成》
図1に示すように、空気清浄機(1)はケーシング(10)を有する。ケーシング(10)は、その側面が開口された2つの吸込口(11,11)と1つの吹出口(12)とを有している。吸込口(11,11)はケーシング(10)の前側の側面に向かい合うようにそれぞれ形成されている。吹出口(12)は、ケーシング(10)の後ろ側の側面に形成されている。ケーシング(10)の内部には吸込口(11,11)と吹出口(12)とを連通する空気通路(13)が形成されている。吸込口(11,11)から吸い込まれた室内の空気は、
図1の白抜きの矢印で示すように、空気通路(13)を通って吹出口(12)から再び室内に吹き出される。
【0021】
空気通路(13)には、放電ユニット(50,50)、プレフィルタ(14)、集塵部(20)、脱臭フィルタ(15)及びファン(16)が配置されている。
【0022】
放電ユニット(50,50)は吸込口(11,11)にそれぞれ設置される。放電ユニット(50,50)は放電装置(51,51)及び照射装置(70,70)を備える。照射装置(70,70)は、放電装置(51,51)に向かって光を照射する。放電装置(51,51)はそれぞれ、対向電極(57)が照射装置(70)により光が照射されていない第1状態のときにストリーマ放電を行い、対向電極(57)が照射装置(70)により光が照射される第2状態のときにグロー放電を行う(詳細は後述する)。
【0023】
プレフィルタ(14)は、シート状または板状に形成される。プレフィルタ(14)は、放電ユニット(50)を通って空気通路(13)に流入した空気に含まれる塵埃を物理的に捕集する。
【0024】
集塵部(20)は、プレフィルタ(14)の空気の流れの下流側に配置される。集塵部(20)は、複数の高圧電極(21)と複数の集塵電極(22)とを有している。高圧電極(21)及び集塵電極(22)はそれぞれ板状の電極で構成される。高圧電極(21)及び集塵電極(22)はそれぞれの平面部が互いに向かい合うように交互に配置される。高圧電極(21)及び集塵電極(22)は空気の流れと略平行に設置される。高圧電極(21)及び集塵電極(22)は、高圧電源(図示省略)に接続される。例えば、高圧電極(21)はプラス電位となり、集塵電極(22)はゼロ電位となっている。高圧電極(21)と集塵電極(22)との間には、イオン化された塵埃を捕集するための電界が形成される。
【0025】
脱臭フィルタ(15)は、集塵部(20)の空気の流れの下流側に配置される。脱臭フィルタ(15)は、例えばハニカム構造の基材の表面に触媒を担持させたものである。この触媒には、マンガン系の触媒や貴金属系の触媒が用いられる。脱臭フィルタ(15)には、空気中の有害成分や臭気成分を吸着する吸着剤(例えば活性炭)が担持される。
【0026】
ファン(16)は、脱臭フィルタ(15)の空気の流れの下流側に配置される。ファン(16)は、室内の空気を吸込口(11,11)から吸込み、放電ユニット(50,50)を経由して、空気通路(13)内のプレフィルタ(14)、集塵部(20)、脱臭フィルタ(15)の順に送り込む。ファン(16)は、脱臭フィルタ(15)を通った空気を再び室内に送り出す。
【0027】
《放電ユニットの構成》
放電ユニット(50)の構成について、
図2~
図6を参照しながら説明する。
【0028】
放電ユニット(50)は、放電装置(51)と照射装置(70)とを有している。
【0029】
〈放電装置〉
放電装置(51)は、絶縁部(60)と、電源(53)と、放電電極(52,52,52)と、対向電極(57)と、導電性部材(56)とを有している。
【0030】
-絶縁部-
絶縁部(60)は合成樹脂等の絶縁材料で構成される。絶縁部(60)は薄板状の基台(61)と、基台(61)の表面に配置される円柱形状の4つの第1支柱(63,63,…)及び2つの第2支柱(65,65)とを有する。
【0031】
基台(61)には、切り欠き部(67)が形成される。切り欠き部(67)は、基台(61)の長辺側の側面の中央部に形成される。これにより、基台(61)はほぼU字型に形成される。
【0032】
第1支柱(63,63,…)は基台(61)の4隅にそれぞれ配置される。第1支柱(63,63,…)の頂面には対向電極(57)が固定される。
【0033】
第2支柱(65,65)は、第1支柱(63,63,…)の内側にあって、基台(61)の中央寄りに配置される。第2支柱(65,65)の高さ位置は、第1支柱(63,63,…)の高さ位置よりも低い。第2支柱(65,65)の頂面には、導電性部材(56)が固定されている。
【0034】
-電源-
電源(53)は、3つの放電電極(52,52,52)と対向電極(57)とに接続される。電源(53)は、両電極(57,52,52,…)に高圧の直流電圧(例えば、約60kV)を供給する。電源(53)は、高圧の直流電源で構成される。電源(53)の正極側には放電電極が接続され、電源(53)の負極側には対向電極(57)が接続される。電源(53)の負極側は設置される。これにより、各放電電極(52)は陽極の電極を構成し、対向電極(57)はアース電極を構成する。各放電電極(52)を陰極の電極としてもよい。
【0035】
-放電電極-
放電電極(52,52,…)は、金属材料で構成される。本実施形態の各放電電極(52)は、直線に延びる線状又は細長い棒状に形成される。各放電電極(52)の基端は、後述の各支持部(59)における端部(59a)に固定される。
【0036】
-対向電極-
対向電極(57)は、金属材料で構成される。本実施形態の対向電極(57)は、アルミニウムで構成される。対向電極(57)は、平面の板状に形成され、各放電電極(52)と平行になるように第1支柱(63,63,…)の頂面に設置される。
【0037】
-導電性部材-
導電性部材(56)は、導電性の樹脂材料である。導電性部材(56)は、庇部(58)と、3つの支持部(59,59,59)とを構成している。
【0038】
庇部(58)は、放電安定部材である。庇部(58)は、矩形の薄板状に形成されている。庇部(58)は、放電電極(52,52,52)を挟んで対向電極(57)と平行になるように第2支柱(65,65)の頂面に固定されている。庇部(58)は、支持部(59)を介して放電電極(52,52,52)に通電する。
【0039】
各支持部(59)は、各放電電極(52)を支持する部材である。各支持部(59)は、庇部(58)上に立設された四角形の薄板からなる。各支持部(59)は、その板面が庇部(58)の長手方向と平行となるように並んで設けられている。
【0040】
〈照射装置〉
照射装置(70)は、基台(61)の裏側に配置される。換言すると、照射装置(70)は、基台(61)を挟んで対向電極(57)と対向する位置に配置される。照射装置(70)は、照射部(71)と、照射装置(70)のON/OFFを操作する照射操作部(図示せず)とを備える。
【0041】
照射部(71)は、紫外光を照射する。照射部(71)は、放電装置(51)側に向くように照射装置(70)に設けられる。
【0042】
照射操作部により照射装置(70)がONになると、照射部(71)から放出された紫外光は、基台(61)の切り欠き部(67)を通って、対向電極(57)に照射される。
【0043】
-放電ユニットの動作-
放電ユニット(50)は、第1動作と第2動作とを切り換えて行う。
【0044】
〈第1動作〉
第1動作では、放電装置(51)がON状態であり、かつ照射装置(70)がOFF状態(第1状態となる。この第1動作では、放電装置(51)において、電源(53)から各放電電極(52)と対向電極(57)とに直流電圧が印加される。これにより、各放電電極(52)から対向電極(57)に向かってストリーマ放電が行われる。ストリーマ放電が行われると、活性種(高速電子、イオン、ラジカル、オゾン等)が生成される。
【0045】
〈第2動作〉
第2動作では、放電装置(51)がON状態であり、かつ照射装置(70)がOFF状態(第2状態)となる。この第2動作では、第1状態において、照射装置(70)から対向電極(57)に紫外光が照射される。これにより、各放電電極(52)ではグロー放電が行われる。グロー放電が行われると、放電電極(52,52,52)の周囲には、空気中の塵埃を捕捉するための電界が形成される。
【0046】
〈第1動作と第2動作の検証結果〉
2つの放電の切り換えを検証した結果について
図7を参照しながら説明する。
【0047】
図7の実線X1は、第1動作時(
図3及び
図4に示す状態)のV-I特性を示す。各放電電極(52)の電圧が高くなると、実線X1の放電電流が大きくなっている。
【0048】
通常、ストリーマ放電を表わすV-I特性として、放電電極の電圧が高くなると放電電流が上昇する傾向がある。これは、放電電極から対向電極に向けて放電が行われることに起因する。これにより、第1動作ではストリーマ放電が行われていることがわかる。
【0049】
図7の実線X2は、第2動作時(
図5及び
図6に示す状態)のV-I特性を示す。各放電電極(52)の電圧が高くなっても、放電電流は実線X1と比して低い状態を維持している。
【0050】
グロー放電を表わすV-I特性として、放電電極の電圧を高くしても、放電電流は低い状態を維持する傾向がある。これにより、第2動作では、グロー放電が行われていることがわかる。
【0051】
対向電極(57)を構成するアルミ二ウムの仕事関数は、照射装置(70)が照射する紫外光のエネルギーよりも小さい。対向電極(57)が紫外光に照射されると、対向電極(57)において光電効果が生じ、ストリーマ放電が不安定になる。そのため、第2動作では、グロー放電が行われると推察される。
【0052】
《運転動作》
空気清浄機(1)の運転動作について、
図1~
図6を参照しながら説明する。空気清浄機(1)は、ストリーマ放電が行われる運転(脱臭優先運転)と、グロー放電が行われる運転(集塵優先運転)とを切り換えることができる。各運転では、ファン(16)が回転し、室内の空気は空気通路(13)へ流入する。
【0053】
-脱臭優先運転-
脱臭優先運転では、放電ユニット(50)は第1動作を行う。これにより、各放電電極(52)から対向電極(57)に向かってストリーマ放電が行われる。
【0054】
吸込口(11,11)に吸い込まれた室内空気は、放電ユニットの周囲を流れる。放電装置(51)でストリーマ放電が行われると、活性種が生成される。この活性種により、空気中の有害物質(臭気成分やアレルゲン等)が分解される。
【0055】
放電ユニット(50)を通過した空気は、プレフィルタ(14)を通過する。プレフィルタ(14)では、空気中の比較的大きさ塵埃が捕集される。この空気は、集塵部(20)を通過し、脱臭フィルタ(15)を通過する。脱臭フィルタ(15)では、空気中に残存する臭気成分等が除去される。
【0056】
以上のようにして清浄化された空気は、吹出口(12)から室内へ供給される。
【0057】
-集塵優先運転-
集塵優先運転では、放電ユニット(50)は第2動作を行う。これにより、各放電電極(52)では、グロー放電が行われる。
【0058】
吸込口(11,11)に吸い込まれた室内空気は、放電ユニット(50)の周囲を流れる。放電装置(51)でグロー放電が行われると、各放電電極(52)の周囲に空気中の塵埃を帯電・イオン化するための電界が形成される。本実施形態では、この電界により、空気中の塵埃が正の電荷に帯電する。
【0059】
放電ユニット(50)を通過した空気は、プレフィルタ(14)を通過する。プレフィルタ(14)では、空気中の比較的大きな塵埃が捕集される。
【0060】
プレフィルタ(14)を通過した空気は、集塵部(20)を通過する。集塵部(20)では、正の電荷を帯びた塵埃は集塵電極(22)に引き寄せられ、集塵電極(22)の表面に付着する。これにより、空気中の小さな塵埃が捕集される。その後、この空気は脱臭フィルタ(15)を通過する。
【0061】
集塵部(20)を通過した空気は、脱臭フィルタ(15)を通過する。脱臭フィルタ(15)では、空気中に残存する臭気成分等が除去される。
【0062】
以上のようにして、清浄化された空気は、吹出口(12)から室内へ供給される。
【0063】
<実施形態の効果>
上記実施形態の放電ユニット(50)は、電源(53)と、前記電源(53)に接続される放電電極(52)及び対向電極(57)を有し、前記電源(53)から各放電電極(52,52,52)及び対向電極(57)に直流電圧が印加されることでストリーマ放電を行う放電装置(51)と、前記放電装置(51)の対向電極(57)に光を照射する照射装置(70)とを備え、前記照射装置(70)は、前記対向電極(57)に光を照射しない第1状態と、対向電極(57)の仕事関数よりも大きいエネルギーの光を前記対向電極(57)に照射する第2状態とに切り換えられる。
【0064】
本実施形態の放電装置(51)は、第1実施状態では、ストリーマ放電を行う。第2状態では、照射装置(70)から対向電極(57)の仕事関数よりも大きいエネルギーの光が、対向電極(57)に照射される。そのため、対向電極(57)では光電効果が生じる。このことより、第2状態では、対向電極(57)においてグロー放電が生じる。従って、照射装置(70)がOFF状態(第1状態)からON状態(第2状態)に切り換えることで、放電装置(51)はストリーマ放電からグロー放電に切り換えることができる。
【0065】
放電装置において、放電電極と放電安定部材との電圧差を調節することによりストリーマ放電とグロー放電とを切り換えるためには、該電圧差を調節する装置を要する。このような装置は、電圧を調整するための複雑な機構を要する。そのため、前記装置の不具合に起因してストリーマ放電とグロー放電とを切り換えできないといった問題がある。また、電圧を調整するために操作が煩雑化するといった問題も生じる。本実施形態では、照射装置(70)をOFF状態(第1状態)にすることで、放電装置(51)はストリーマ放電を行う。一方、照射装置(70)をON状態(第2状態)にすると、放電装置(51)はグロー放電に切り替わる。そのため、放電電極と放電安定部材との電圧差の調節は不要である。このことにより、ストリーマ放電とグロー放電との切り換えを簡便に行うことができる。該電圧差を調節する装置は不要であるため、前記装置の不具合に起因してストリーマ放電とグロー放電とを切り換えできないといった問題は生じない。
【0066】
本実施形態の対向電極(57)は、仕事関数が比較的小さいアルミニウムから構成される。対向電極(57)の仕事関数は、照射装置(70)が照射する光のエネルギーよりも小さくなりやすい。そのため、第2状態では、対向電極(57)において光電効果が生じる。従って、放電装置(51)は、第2状態において、グロー放電を行うことができる。
【0067】
本実施形態の照射装置(70)は、エネルギーが比較的大きい紫外光を照射する。紫外光のエネルギーは、対向電極(57)の仕事関数よりも大きくなりやすい。そのため、対向電極(57)において光電効果が生じる。従って、放電装置(51)は、第2状態において、グロー放電を行うことができる。
【0068】
この空気清浄機(1)では、放電ユニット(50)の第1動作において、放電装置(51)がストリーマ放電を行う。ストリーマ放電が行われると、活性種(高速電子、イオン、ラジカル、オゾン等)が生成される。このことにより、空気清浄機(1)は、第1動作において脱臭優先運転を行う。一方、放電ユニット(50)の第2動作において、放電装置(51)はグロー放電を行う。グロー放電が行われると、放電電極(52)の周囲に空気中の塵埃を帯電・イオン化するための電界が形成される。このことにより、空気清浄機(1)は、第2動作において集塵優先運転を行う。従って、放電ユニット(50)を第1動作と第2動作とを切り換えることで、脱臭優先運転と集塵優先運転とを切り替えることができる。
【0069】
空気清浄機において脱臭優先運転と集塵優先運転とを切り換えるためには、ストリーマ放電とグロー放電とを切り換える必要がある。従来では、ストリーマ放電とグロー放電とを切り換えるためには、放電装置の放電電極と放電安定部材との電圧差を調節する必要があった。しかし、本開示の放電ユニット(50)では、前記電圧差を調整する必要がない。放電装置ユニット(50)の第1動作と第2動作とを切り換えることで、ストリーマ放電とグロー放電とを切り換えることができる。このことにより、空気清浄機(1)は、放電ユニット(50)を第1動作と第2動作とを切り換えることで、脱臭優先運転と集塵優先運転とを切り替えることができる。
【0070】
この空気清浄機(1)では、第2動作では対向電極(57)は照射装置(70)からの紫外光が照射される。紫外光には殺菌効果がある。そのため、第2動作において、吸込口(11,11)から空気通路(13)に流れ込む室内空気を殺菌できる。加えて、対向電極(57)の表面を紫外光により殺菌できる。
【0071】
<その他の実施形態>
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0072】
上記実施形態の第1状態では、照射装置(70)はOFF状態である。しかし、第1状態は、照射装置(70)がON状態であり、且つ照射装置(70)から発する紫外光が対向電極(57)に照射されない状態も含む。
【0073】
具体的には、第1状態は、ON状態の照射装置(70)の照射部(71)を不透光性のカバーで覆う状態を含む。この場合、前記カバーが照射部(71)を露出させるように移動することで、照射装置(70)は紫外光を対向電極(57)に照射できる。このことにより、放電ユニット(50)は第1状態から第2状態に切り換えることができる。
【0074】
あるいは、第1状態は、ON状態の照射装置(70)の照射部(71)が対向電極(57)と異なる他の部材を照射する状態を含む。この場合、照射部(71)の照射方向を対向電極(57)に向けることで、照射装置(70)は対向電極(57)に紫外光を照射できる。このことにより、放電ユニット(50)は、第1状態から第2状態に切り換えることができる。
【0075】
上記実施形態の対向電極(57)はアルミニウムから構成される。しかし、対向電極(57)は比較的小さい仕事関数の金属であればよい。例えば、対向電極(57)は、亜鉛、スズ又はチタンで構成されてもよい。このことにより、対向電極(57)の仕事関数は、照射装置(70)から照射される光のエネルギーよりも低くなりやすい。そのため、第2状態では、放電装置(51)はグロー放電を行うことができる。
【0076】
上記実施形態の照射装置(70)は紫外光を照射する。しかし、対向電極(57)を構成する金属より仕事関数の大きなエネルギーを有する波長の光を照射する照射装置(70)であってもよい。このことにより、照射装置(70)から照射される光のエネルギーは対向電極(57)の仕事関数より高くなりやすい。そのため、第2状態では、放電装置(51)はグロー放電を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示は、放電ユニット、及び該放電ユニットを備えた空気清浄機に関し有用である。
【符号の説明】
【0078】
50 放電ユニット
51 放電装置
52 放電電極
53 電源
57 対向電極
70 照射装置