(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】LIDARのリターンに対するDVEの影響を低減するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/95 20060101AFI20240419BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G01S17/95
G02F1/01 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019147696
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500461860
【氏名又は名称】オーロラ フライト サイエンシズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, ジェウ
(72)【発明者】
【氏名】パデュアーノ, ジェームズ ディー.
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0268096(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0323932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0030542(US,A1)
【文献】高橋 徹 他,位相回復に用いるフーリエ反復法の改善,光学=Japanese journal of optics:publication of the Optical Society of Japan,第32巻第1号,日本,日本光学会,2003年,第39-45頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G02F 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪視程環境(DVE)下で運航する航空ビークル(102)用のLIDARシステム(110)であって、
デジタル信号プロセッサと、
コヒーレント光線を放射するように構成されたレーザ源(201)と、
前記デジタル信号プロセッサに連結され、前記コヒーレント光線を変調するように構成された空間光変調器であって、前記空間光変調器と標的物(114)との間に配置されたDVE媒質(112、231)の干渉縞に対する位相共役光を生成するように構成された空間光変調器と、
前記空間光変調器からの前記コヒーレント光線を前記標的物(114)に向けるように構成された光学レンズ(200)であって、前記コヒーレント光線は前記DVE媒質(112、231)に反射して散乱光子を生み出し、前記標的物(114)に反射して反射光子を生み出す、光学レンズ(200)と、
前記散乱光子及び前記反射光子を収集する第2の光学レンズ(200)と、
前記デジタル信号プロセッサに操作可能に連結され、前記散乱光子及び前記反射光子を検出するように構成された検出器アレイと、を備え、
前記デジタル信号プロセッサが、前記DVE媒質(112、231)の現在の散乱特性を特定するため、
前記標的物(114)がないことが分かっている距離から開始して、複数の共役光を繰り返して走査するように構成されている、LIDARシステム(110)。
【請求項2】
前記複数の共役光を繰り返して走査するステップが、フィーナップの位相回復法を用いる、請求項1に記載のLIDARシステム(110)。
【請求項3】
前記LIDARシステム(110)が、走査のための所定の時間が推定距離における前記DVE媒質(112、231)の無相関時間を超過するまで、連続してより長い推定距離でプローブするように構成されている、請求項1に記載のLIDARシステム(110)。
【請求項4】
前記レーザ源(201)が、光学フェーズドアレイ(202)を介して前記コヒーレント光線を放射するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のLIDARシステム(110)。
【請求項5】
前記検出器アレイが、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)アレイである、請求項1から4のいずれか一項に記載のLIDARシステム(110)。
【請求項6】
前記デジタル信号プロセッサは、前記航空ビークル(102)の飛行制御システムと通信するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のLIDARシステム(110)。
【請求項7】
悪視程環境(DVE)下で運航する航空ビークル(102)用のLIDARシステム(110)を操作する方法であって、
レーザ源(201)からコヒーレント光線を放射するステップと、
空間光変調器を介して前記コヒーレント光線を変調するステップであって、前記空間光変調器が、前記空間光変調器と標的物(114)との間に配置されたDVE媒質(112、231)の干渉パターンに対する位相共役光を生成するように構成された、コヒーレント光線を変調するステップと、
前記空間光変調器からの前記コヒーレント光線を、光学レンズを介して前記標的物(114)に向けるステップであって、前記コヒーレント光線が前記DVE媒質(112、231)に反射して散乱光子を生み出し、前記標的物(114)に反射して反射光子を生み出す、前記コヒーレント光線を前記標的物(114)に向けるステップと、
第2の光学レンズ(200)を介して前記散乱光子及び前記反射光子を収集するステップと、
検出器アレイを介して前記散乱光子及び前記反射光子を検出するステップと、
前記DVE媒質(112、231)の現在の散乱特性を特定するため、
前記標的物(114)がないことが分かっている距離から開始して、複数の共役光を繰り返して走査するステップとを含む、
方法。
【請求項8】
走査のための所定の時間が推定距離における前記DVE媒質(112、231)の無相関時間を超過するまで、連続してより長い推定距離でプローブするステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記検出器アレイ及び前記空間光変調器が、それぞれデジタル信号プロセッサに連結されており、前記デジタル信号プロセッサが、前記航空ビークル(102)の飛行制御システムと通信するように構成されている、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記デジタル信号プロセッサを介して前記LIDARシステム(110)から受信したデータに応じて、着陸ゾーンを特定するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記光学レンズ(200)が、参照光を生成するビームスプリッタを含む方法であって、前記方法が、前記参照光を前記散乱光子または前記反射光子と比較するステップをさらに含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記航空ビークル(102)が前記DVE媒質(112、231)を通って航行する際に、前記航空ビークル(102)の位置と姿勢を追尾するステップをさらに含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
諸態様は独立請求項に規定されており、諸態様のオプションの特徴は、従属請求項に規定されている。
【0002】
本開示は、飛行制御のためのシステム、方法、及び機器の分野に関し、具体的には、悪視程環境(DVE)における飛行中の、地形または障害物の感知のためのシステム、方法、及び機器に関する。一態様においては、本開示は、空間光変調器(SLM)付きのLIDARを適用して、放射光プロファイルをDVEからの後方散乱に適合的にマッチさせ、それによって、対象の地形または障害物からの信号リターンを改善し、DVEにおけるより長距離の検出を可能にするための、新たで新規なシステム及び方法について記載している。
【背景技術】
【0003】
時として「lidar」「LiDAR」または「レーザスキャナ」と呼ばれるLIDARは、「光(light)」と「レーダー(radar)」という語の組み合わせであるが、「光検出と測距(Light Detection and Ranging)」または「光画像、検出、及び測距(Light Imaging, Detection, and Ranging)」のアクロニムであるとも考えられ得る。LIDARは、概して、レーザ光線が標的物に向けられており、この標的物までの距離を特定するためにレーザ光線の反射リターンが測定される、測距技法を指す。レーザ光線を走査することによって、リターンが、環境の正確な3Dモデルへと取りまとめられ得る。LIDARは、将来的な利用(例えばマップ作成)の目的で地形の正確な3Dマップを生成するためと、衝突回避のためにリアルタイムで地形及び物体を検出するための、両方の点で航空分野において有用である。
【0004】
対象の物体は、レーザ光線といったコヒーレントな光線の反射体として比較的良好ではなく、したがって、LIDAR計器への光のリターンは、しばしば「後方散乱」と呼ばれる、散乱した反射の形態を採り得る。LIDAR計器の検出器へと戻る散乱光は、標的物からのリターンを表す。澄んだ空気は固体表面と比べるとレーザ光をずっと少ししか散乱させないので、後方散乱エネルギーのピークの到着時刻は、LIDARが向けられた標的物までの距離を特定するのに用いられ得る。(標的物に向かう途中であれ標的物から戻る途中であれ)典型的には空気中の分子との相互作用によって反射するために真っ直ぐではない経路をたどる光は、標的物への直接経路の応答と干渉する。それにもかかわらず、澄んだ空気中ではLIDARは非常に良好に機能し、比較的長距離からの、地表の高解像度画像を生成するのに用いられ得る。
【0005】
しかし、空気または「媒質」が、使用されるレーザの周波数において光をさらに散乱させる傾向がある煙、水、埃などの分子といったさらなる媒質を含有しているときには、LIDARの正確性は低下する。このように、悪視程環境(DVE)を生じさせる、雨や埃、重度の汚染または霧といった条件もまた、LIDARの有効距離を著しく低下させる。なぜならば、媒質からの後方散乱が標的物によって反射された光子と区別できなくなる地点まで、DVE下にある距離の長さに伴って、後方散乱するリターンの背景強度が急速に増大するからである。これは、レーザ光線が媒質を通って往復することで、背景の後方散乱が大きく増大するのと標的物によって反射され得るレーザ照射の量が大きく低減するのと、どちらの理由にもよる。DVE中に着陸しなければならない自律航空ビークルの操縦、またはDVE状況における操縦士の視覚の補助といったリアルタイムのシナリオでは、こうした機能の喪失は、DVE環境における運航の持続に対する障害となる。
【0006】
このように、DVEを克服するためのLIDARの現行の技法で達成できるよりも、より良い物体検出と解像度をもって、DVE環境下で稼働し続ける、LIDARシステムの必要性が存在している。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、特に、雨、灯火管制、低照度、及びこれらと同様の条件下といったDVE下におけるより高い任務遂行能力を可能にする、悪視程環境下における光集束(LIFT-DVE)のLIDARシステムについて記載している。例えば、LIDARシステムは、DVE内で散乱を起こす媒質の衝撃を低下させ、DVE内においてまたはDVEを越えて標的物の視覚化を可能にするために、放射されたレーザ波面を補正する、空間光変調器(SLM)を、光源において含んでいてよい。
【0008】
第1の態様によると、悪視程環境(DVE)下で運航する航空ビークル用のLIDARシステムは、コヒーレント光線を放射するように構成されたレーザ源と、当該コヒーレント光線を変調するための空間光変調器であって、当該空間光変調器と標的物との間に配置されたDVE媒質の干渉パターンに対する位相共役光を発生させるように構成された空間光変調器と、空間光変調器からの当該コヒーレント光線をフィルタリングする光学レンズであって、コヒーレント光線を標的物に向けるように構成されており、コヒーレント光線はDVE媒質に反射して散乱光子を生み出し、標的物に反射して反射光子を生み出す、光学レンズと、散乱光子及び反射光子を収集する第2の光学レンズと、散乱光子及び反射光子を検出する検出器アレイとを備える。
【0009】
ある態様では、LIDARシステムは、当該DVE媒質の現在の散乱特性を特定するため、複数の共役光を繰り返して走査するように構成されている。
【0010】
ある態様では、LIDARは、当該DVE媒質の現在の散乱状態を特定するため、あらゆる可能な共役光を繰り返して走査する。
【0011】
ある態様では、複数の共役光を繰り返して走査するステップは、フィーナップ(Fienup)再構成技法を用いる。
【0012】
ある態様では、LIDARシステムは、走査のための所定の時間が推定距離における当該DVE媒質の脱相関時間を超過するまで、連続してより長い推定距離でプローブするように構成されている。
【0013】
ある態様では、レーザ源は、光学フェーズドアレイを介してコヒーレント光線を放射するように構成されている。
【0014】
ある態様では、検出器アレイは、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)アレイである。
【0015】
ある態様では、検出器アレイ及び空間光変調器は、それぞれデジタル信号プロセッサに操作可能に連結されており、このデジタル信号プロセッサは、航空ビークルの飛行制御システムと通信するように構成されている。
【0016】
ある態様では、飛行制御システムは、デジタル信号プロセッサを介してLIDARシステムから受信したデータに応じて、着陸ゾーンを特定するように構成されている。
【0017】
ある態様では、光学レンズは、散乱光子または反射光子の比較の対象となり得る参照光を生成する、ビームスプリッタを含む。
【0018】
ある態様では、デジタル信号プロセッサは、航空ビークルがDVE媒質を通って航行する際に、この航空ビークルの位置と姿勢を追尾するように構成されている。
【0019】
ある態様では、デジタル信号プロセッサは、少なくとも部分的に、飛行制御システムから受信した情報に基づいて、位置と姿勢を追尾するように構成されている。
【0020】
第2の態様によると、悪視程環境(DVE)下で運航する航空ビークル用のLIDARシステムを操作する方法は、レーザ源からコヒーレント光線を放射するステップと、空間光変調器を介して当該コヒーレント光線を変調するステップであって、当該空間光変調器が、当該空間光変調器と標的物との間に配置されたDVE媒質の干渉パターンに対する位相共役光を発生させるように構成された、コヒーレント光線を変調するステップと、光学レンズを介して空間光変調器からの当該コヒーレント光線をフィルタリングするステップと、コヒーレント光線を標的物に向けるステップであって、コヒーレント光線がDVE媒質に反射して散乱光子を生み出し、標的物に反射して反射光子を生み出す、コヒーレント光線を標的物に向けるステップと、第2の光学レンズを介して散乱光子及び反射光子を収集するステップと、検出器アレイを介して散乱光子及び反射光子を検出するステップとを含む。
【0021】
ある態様では、方法は、当該DVE媒質の現在の散乱特性を特定するため、複数の共役光を繰り返して走査するステップをさらに含む。
【0022】
ある態様では、方法は、当該DVE媒質の現在の散乱特性を特定するため、あらゆる可能な共役光を繰り返して走査するステップをさらに含む。
【0023】
ある態様では、複数の共役光を繰り返して走査するステップは、フィーナップ(Fienup)再構成技法を用いる。
【0024】
ある態様では、方法は、走査のための所定の時間が推定距離における当該DVE媒質の脱相関時間を超過するまで、連続してより長い推定距離でプローブするステップをさらに含む。
【0025】
ある態様では、レーザ源は、光学フェーズドアレイを介してコヒーレント光線を放射するように構成されている。
【0026】
ある態様では、検出器アレイは、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)アレイである。
【0027】
ある態様では、検出器アレイ及び空間光変調器は、それぞれデジタル信号プロセッサに操作可能に連結されており、このデジタル信号プロセッサは、航空ビークルの飛行制御システムと通信するように構成されている。
【0028】
ある態様では、方法は、デジタル信号プロセッサを介してLIDARシステムから受信したデータに応じて、着陸ゾーンを特定するステップをさらに含む。
【0029】
ある態様では、光学レンズは、参照光を生成するビームスプリッタを含んでおり、方法は、参照光を散乱光子または反射光子と比較するステップをさらに含む。
【0030】
ある態様では、方法は、航空ビークルがDVE媒質を通って航行する際に、航空ビークルの位置と姿勢を追尾するステップをさらに含む。
【0031】
ある態様では、位置と姿勢の追尾は、少なくとも部分的に、飛行制御システムから受信した情報に基づいている。
【0032】
第3の態様によると、悪視程環境(DVE)下で運航する航空ビークル用のLIDARシステムは、デジタル信号プロセッサと、コヒーレント光線を放射するように構成されたレーザ源と、デジタル信号プロセッサに操作可能に連結され且つ当該コヒーレント光線を変調するように構成された空間光変調器であって、当該空間光変調器と標的物との間に配置されたDVE媒質の干渉パターンに対する位相共役光を発生させるように構成されており、LIDARシステムが、コヒーレント光線を標的物に向けるように構成されており、それによってコヒーレント光線がDVE媒質に反射して散乱光子を生み出し、標的物に反射して反射光子を生み出す、空間光変調器と、デジタル信号プロセッサに操作可能に連結され且つ散乱光子及び反射光子を検出するように構成された検出器アレイであって、航空ビークルがDVE媒質を通って航行する際に、デジタル信号プロセッサが航空ビークルの位置と姿勢を追尾するように構成されている、検出器アレイと、を備える。
【0033】
ある態様では、デジタル信号プロセッサは、航空ビークルの飛行制御システムと通信するように構成されている。
【0034】
ある態様では、デジタル信号プロセッサは、少なくとも部分的に、飛行制御システムから受信した情報に基づいて、位置と姿勢を追尾するように構成されている。
【0035】
ある態様では、LIDARシステムは、当該DVE媒質の現在の散乱状態を特定するため、複数の共役光を繰り返して走査するように構成されている。
【0036】
ある態様では、LIDARは、当該DVE媒質の現在の散乱状態を特定するため、あらゆる可能な共役光を繰り返して走査する。
【0037】
ある態様では、複数の共役光を繰り返して走査する工程は、フィーナップ(Fienup)再構成技法を用いる。
【0038】
ある態様では、LIDARシステムは、走査のための所定の時間が推定距離における当該DVE媒質の脱相関時間を超過するまで、連続してより長い推定距離でプローブするように構成されている。
【0039】
ある態様では、レーザ源は、光学フェーズドアレイを介してコヒーレント光線を放射するように構成されている。
【0040】
ある態様では、検出器アレイは、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)アレイである。
【0041】
ある態様では、飛行制御システムは、デジタル信号プロセッサを介してLIDARシステムから受信したデータに応じて、着陸ゾーンを特定するように構成されている。
【0042】
本開示のこれらの及びその他の利点は、以下の説明及び添付の図面を参照することによって、容易に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】LIDARシステムを装備した航空ビークルを有する航空システムを示す。
【
図2a】例示のLIDARシステム用の、例示の光学経路を示す。
【
図2b】例示のLIDARシステム用のシステム構成のブロック図を示す。
【
図3】耐DVE性LIDARシステム用の例示の操作方法のフロー図を示す。
【
図4】
図4は、航空ビークルの状態推定を特定するためのブロック図を示す。
【
図5】フィーナップ再構成を実施する例示のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の好適な実施形態を、添付の図面に関連して以下で説明する。図面における構成要素は必ずしも正確な縮尺で描かれておらず、むしろ本実施形態の原理を明確に説明することに重点が置かれている。例えば、ある要素のサイズは、説明を簡明かつ簡便にするため、誇張されていてよい。さらに、図面全体を通して、同一または同様の部品を指すのに、可能な限り同じ参照番号が使用されている。以下の記載では、周知の機能または構造は、不必要な詳細によって本発明を不明瞭にしかねないため、詳細には記載されない。本明細書中のいかなる文言も、特許請求されていない全ての要素が本実施形態の実施にとって必須であることを表すと解釈すべきではない。本開示に関しては、以下の用語及び定義を用いる。
【0045】
本明細書で使用する場合、ある値(または値の範囲)を修飾または表現する際の「約」及び「およそ」という文言は、その値または値の範囲に合理的に近接していることを意味する。したがって、本明細書に記載の実施形態は、記載された値及び値の範囲のみに限定されず、合理的な範囲で実際に可能なずれを含むものである。本明細書で使用する場合、回路または装置は、その回路または装置がある機能を実施するのに必要なハードウェア及び(必要な場合には)コードを備えているときにはいつも、その機能の実施が(例えばユーザが行うことができる設定によって)無効にされているか有効にされているかに関わらず、その機能を実施するために「操作可能」である。
【0046】
本明細書で使用する場合、「航空ビークル」という用語と「航空機」という用語は、限定しないが、従来型の滑走路の離着陸が可能な航空機と、垂直離着陸が可能な(「VTOL」)航空機との両方を含む、飛行可能な機械を指す。VTOL航空機は、固定翼航空機(例えばハリアージェット)、回転翼機(例えばヘリコプタ)、及び/または、ティルトローター/ティルトウイング航空機を含み得る。
【0047】
本明細書で使用する場合、「及び/または」とは、「及び/または」で接続されたリスト中の項目のうちの1つ以上を意味する。一例として、「x及び/またはy」とは、要素が3個の集合{(x)、(y)、(x、y)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x及び/またはy」は、「x及びyのうちの1つまたは両方」を意味する。別の例として、「x、y及び/またはz」とは、要素が7個の集合{(x)、(y)、(z)、(x、y)、(x、z)、(y、z)、(x、y、z)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x、y及び/またはz」は、「x、y及びzのうちの1つ以上」を意味する。本明細書で使用する場合、「例示的な」とは、非限定的な実施例、事例、または例示の役割を果たすことを意味する。本明細書で使用する場合、「例えば(e.g.,及びfor example)」は、1つ以上の非限定的な実施例、事例、または例示のリストを開始するものである。
【0048】
本明細書で使用する場合、「回路(circuits及びcircuitry)」とは、物理的な電子構成要素(即ちハードウェア)並びに、ハードウェアの設定を行うことができるか、ハードウェアによって実行されることができるか、または別様にハードウェアに関連付けられていることができる、任意のソフトウェア及び/またはファームウェア(コード)を指す。例えば、本明細書で使用する場合、特定のプロセッサ及びメモリは、コードの1つ以上の行の第1のセットを実行するときには第1の「回路」を備えていてよく、コードの1つ以上の行の第2のセットを実行するときには第2の「回路」を備えていてよい。
【0049】
本明細書で使用する場合、「通信する」及び「通信している」という用語は、(1)データを起点から終点まで送信もしくは別様に伝達すること、及び/または(2)終点に伝達するために、通信用の媒体、システム、チャネル、ネットワーク、装置、配線、ケーブル、ファイバー、回路、及び/またはリンクへとデータを送達することを指す。
【0050】
本明細書で使用する場合、「連結された」「~に連結された」及び「~と連結された」という用語は、(i)直接、または1つ以上の他の装置、機器、ファイル、回路、要素、機能、操作、処理、プログラム、媒体、構成要素、ネットワーク、システム、サブシステム、もしくは手段を通じた接続、(ii)直接、または1つ以上の他の装置、機器、ファイル、回路、要素、機能、操作、処理、プログラム、媒体、構成要素、ネットワーク、システム、サブシステム、もしくは手段を通じた通信関係、及び/または、(iii)装置、機器、ファイル、回路、要素、機能、操作、処理、プログラム、媒体、構成要素、ネットワーク、システム、サブシステム、もしくは手段のうちの1つ以上の操作が、これらのうちの任意の1つ以上の他のものの操作に全面的または部分的に依存する、機能的関係、のうちの任意の1つ以上からなる、2つ以上の装置、機器、ファイル、回路、要素、機能、操作、処理、プログラム、媒体、構成要素、ネットワーク、システム、サブシステム、及び/または手段の間の関係を、それぞれ意味する。
【0051】
本明細書で使用する場合、「データベース」という用語は、関連データの組織化された一群を意味するものであり、データまたはその組織化された一群が表されている態様は問わない。例えば、関連データの組織化された一群は、テーブル、マップ、グリッド、パケット、データグラム、フレーム、ファイル、電子メール、メッセージ、ドキュメント、レポート、リスト、または任意の他の形式で表現されるデータのうちの1つ以上の形式であってよい。
【0052】
本明細書で使用する場合、「ネットワーク」という用語は、インターネットを含む、あらゆる種類のネットワークとインターネットワークの両方を含み、特定のネットワーク及びインターネットワークには何ら限定されない。
【0053】
本明細書で使用する場合、「プロセッサ」という用語は、ハードウェア、具体的に実施されたソフトウェア、またはその両方のいずれであるかに関わらず、且つプログラム可能であるか否かに関わらず、処理用の装置、機器、プログラム、回路、構成要素、システム、及びサブシステムを意味する。本明細書で使用する場合、「プロセッサ」という単語は、限定しないが、1つ以上の計算装置、配線回路、信号改変装置及びシステム、システム制御用の装置及び機械、中央処理装置、プログラム可能装置及びシステム、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途向け集積回路、システムオンチップ、個別素子及び/または回路を備えたシステム、状態機械、仮想機械、データプロセッサ、処理設備、並びにこれらの任意の組み合わせを含む。
【0054】
図1を参照すると、開示されている耐DVE性LIDARシステム110といったLIDARシステムは、航空ビークル102を航行させて1つ以上の標的物114(例えば標的物114a、114b)を特定するために使用されてよい。DVEにおけるLIDARシステムの正確性を向上させることで、航空ビークルの運航の安全性及び正確性が向上する。既存のLIDARシステムは、DVE媒質112(例えば散乱媒質または散乱体)によって後方散乱された反射リターン118を受けたときに、自らの受信器を飽和させる可能性があり、それによってLIDARシステムの精度は低下し、その一方で航空ビークル102の制御及び/または航行は困難になる。例えば、従来型のLIDARシステムが、レーザ光線116(または別のコヒーレント光線)を代わりの接地ゾーン108に向けたとすると、DVE媒質112は、反射リターン118を不正確にし得る及び/または検出させなくし得る、反射リターン118の後方散乱を起こす結果となったであろう。DVE媒質112は、例えば、雨、埃、重度の汚染、霧などであり得る。従来型のLIDARシステムは、適応ゲイン制御を実施して、認識した標的物のリターンを最大化する一方で、後方散乱のリターンに適用されたゲインを最小化することによって、DVE媒質112からのこの後方散乱に対処(またはそれを別様に軽減)しようと試みるものである。しかし、この適応ゲイン制御を、着陸や衝突回避といった飛行の重大状況においてLIDARシステムの効果的な使用を可能にするためにリアルタイムで遂行することは、困難である。
【0055】
リアルタイムの動作を提供するために、LIDARシステムは、「悪視程環境下における光集束(LIFT-DVE)システム」及び/または耐DVE性LIDARシステム110を生み出すための機能を含んでいてよく、それによって、より自律性が向上した及び/またはより制御された運航が可能になり得る。耐DVE性LIDARシステム110は、とりわけ、DVE媒質112及び/または他の障害物によってLIDAR検出器上に生じる、反射リターン118の後方散乱からのノイズのレベルを軽減することによって、自らのLIDAR構成要素(例えば検出器)に対するDVEの影響を軽減する。概して言うと、耐DVE性LIDARシステム110は、自動的にDVEを克服するLIDAR補正を行うように設計されている。DVEに対する補償をすることによって、自律飛行ビークルの運航エンベロープを拡張することが可能になる一方、非自律型ビークルの操縦者は、周辺に関するセンサ情報をより良く取得することが可能になる。耐DVE性LIDARシステム110は、航空ビークル102が地上の標的物114を追尾している着陸シナリオにおいて特に有利であるが、全飛行局面用(特にDVE条件下における物体または地形の回避を必要とする飛行経路)に構成されていてよく、全飛行局面に対して適用されてよい。
【0056】
耐DVE性LIDARシステム110は、標的物114からの後方散乱の検出とDVE媒質112から検出された後方散乱とに少なくとも部分的に基づいて、伝送されたレーザ光線116を変更または補正する、空間光変調器(SLM)付きのLIDARを提供する。即ち、SLMは、DVE媒質112からの後方散乱と標的物114からの後方散乱とを別々に特性評価することによって、予期されるDVEからの後方散乱リターンを相殺するように、耐DVE性LIDARシステム110で微調整することができる。稼働中、耐DVE性LIDARシステム110は、DVE媒質112と標的物114の両方からリターンしたLIDAR信号を検出するために、センサ(例えば、LIDAR検出器)を使用する。次に、耐DVE性LIDARシステム110は、後方散乱の影響を最小化するためにレーザ光線116に適用し得る、波面補正を決定する。この情報に基づいて、耐DVE性LIDARシステム110は、レーザ光線116のプロファイル(例えば波面)を変更または改変して、地上のリターンを最大化する一方で後方散乱を最小化するために、空間光変調器(SLM)を使用する。耐DVE性LIDARシステム110は、連続的に(例えば、動的に、リアルタイムまたは準リアルタイムで)、散乱媒質の透過行列(transmission matrix)を更新し、位相反転を実施し、条件の変化につれて標的物のリターンを最大化するための更新を行ってよい。
【0057】
耐DVE性LIDARシステム110は、DVE条件の間のパフォーマンスを向上するために自律航空ビークル102内もしくは自律航空ビークル102上に設置されていてよいか、または搭乗員の視程を向上するために有人航空ビークル102(例えば搭乗員付き航空機)内または有人航空ビークル102上に設置されていてよい。耐DVE性LIDARシステム110は、センサパッケージ(例えば、センサペイロード/センサスイート。これらがプロセッサ及び/または他の補助的ハードウェアをさらに含んでいてもよい)として航空ビークル102と一体化されていてよい。耐DVE性LIDARシステム110及び/またはセンサパッケージは、例えば、LIDARシステムで標的物114に狙いをつける/LIDARシステムを標的物114に向けるように構成されたジンバルまたは他の構造物を介して、航空ビークル102に可動式に連結されていてよい。稼働中、耐DVE性LIDARシステム110は、レーザ光線116または別のコヒーレント光線で標的物114に狙いをつけ、反射リターン118を測定して耐DVE性LIDARシステム110と標的物114との間の距離を特定する。航空ビークル102は、VTOL式航空ビークル(例えばヘリコプタ-)であるとして示されているが、航空ビークル102は、例えば固定翼式航空機といった、異なる構成であってもよい。
【0058】
標的物114は、脅威、障害物、及び/または、航空機102が着陸ゾーン104内で着陸すべき接地ゾーン(例えば、主要接地ゾーン106、代替接地ゾーン108、または適切な接地ゾーンを求めて走査する不特定のエリアなど)であってよい。この接地ゾーンは、整備済みの接地ゾーン(例えば滑走路、ヘリパッドなど)であると、未整備の接地ゾーン(例えば自然の地形または地面、野原、水域など)であるとを問わない。例えば、航空ビークル102は、運航中、少なくとも部分的に耐DVE性LIDARシステム110からの情報に基づいて、脅威及び障害物(例えば植生、地形、建物など)をうまく切り抜けて航行しながら、同時に未整備の接地ゾーンを自律的に検出して着陸を実行してよい。言い換えれば、(耐DVE性LIDARシステム110を介して行う)LIDARの走査は、適切な接地ゾーン106、108を特定するため、物体/障害物を検出するため、地形を調査するため、マッピングするため、自律飛行のため、物体検出/追尾などのために、地面(または他の地形)を調査するのに用いられてよい。例えば、LIDARの走査をしている間、耐DVE性LIDARシステム110は、レーザ光線116で標的物114a(即ち接地ゾーン106)に狙いをつけてよく、妨害されない反射リターン118を受信してよい。この反射リターン118は、接地ゾーン106を評価するのに使用されてよい。代わりに、耐DVE性LIDARシステム110は、レーザ光線116でDVE媒質112を通って標的物114b(即ち代わりの接地ゾーン108)に狙いをつけてもよく、妨害された反射リターン118を受信してもよい。この反射リターン118は、本明細書で開示されているLIFT-DVEシステム及び/または関連した技法を用いて処理されてよい。
【0059】
図2aは、DVE下においてより長い距離を提供するための、耐DVE性LIDARシステム110用の光学システム200の、例示的な光学経路を示す。レーザ光線116をDVE媒質112を通って標的物114に向けて伝送し、反射リターン118として戻すため、光学システム200は、概して、レーザ光源201、光学フェーズドアレイ(OPA)202、第1の光学素子204、SLM206、第2の光学素子208、第3の光学素子210、及び単一光子アバランシェダイオード(SPAD)アレイ212を含んでいる。第1の光学素子204、第2の光学素子208、及び第3の光学素子210のそれぞれは、これらを通過する光線を集束させ、調節し、分光し、及び/または別様に操作するための、1つ以上のレンズを備えていてよい。例示的な一実施形態では、レーザ光源201及びOPA202は、光学的SLM206によって改変され得るレーザ光線116を生成する。例えば、SLM206は、DVE媒質112を補正する及び/または明らかにするために、レーザ光線116のプロファイルを改変し得る。DVE媒質112を補正する及び/または明らかにするため、SLM206における位相変調は、DVE媒質112に起因する、検出器(例えばSPADアレイ212)が受容した光子のエネルギーと関係づけられている。後方散乱しているDVEからのエネルギーが受容されると、SLM206が、DVE媒質112からのDVE後方散乱が最小になる点まで、レーザ光線116の改変を行う。
【0060】
光学システム200の左上からスタートすると、OPA202は、レーザ光線116aを出力する。このレーザ光線116aは第1の光学素子204によってフィルタリングされ、フィルタリング済みレーザ光線116bが生み出される。バイナリスイッチング要素の行列によって規定された一連のパターンでフィルタリング済みレーザ光線116bを変調させ、それによって変調済みレーザ光線116cを生み出すために、SLM206が使用される。LIDARに空間光変調器(SLM)を加えることによって、LIDARシステム110が放射された光のプロファイルを精密に微調整し、それによって媒質からの後方散乱を相殺することが可能になる。光センサが放射器と同一場所に配置されているため、散乱媒質は、2次元行列Mとしてモデリングされ得る。SLM206を繰り返して変調することによって、散乱行列Mを決定することができ、SLM206は、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)と同様に、干渉特性を用いて、LIDARにおける媒質の後方散乱要素の位相共役にDVE内の特定の焦点距離を与えるモードへと、放射光を改変することができる。
【0061】
第2の光学素子208は、変調済みレーザ光線116cをフィルタリングして、フィルタリング済みの変調済みレーザ光116dを生み出す。この時点で、フィルタリング済みの変調済みレーザ光116dは、LIDARユニットから出てDVE媒質112に入る。DVE媒質112は、例えば、レーザ光線116(例えばフィルタリング済みの変調済みレーザ光線116d)が反射リターン118として第3の光学素子210に戻る前にレーザ光線116に散乱を生じさせる、空気と散乱要素(例えば分子、粒子など)の混合物を含んでいてよい。DVE媒質112の存在下においてさえ、伝送されたレーザ光線116(例えばフィルタリング済みの変調済みレーザ光線116d)のごく少量は、標的物114に到達してリターン光線118aとして第3の光学素子210に戻るであろう。リターン光線118aは、第3の光学素子210を通り、反射リターン118bとして検出器(例えばSPADアレイ212)まで到達する。
【0062】
図2bは、耐DVE性LIDARシステム110の、例示の航空ビークル102の他の構成要素に関連したブロック図を示す。示されるように、耐DVE性LIDARシステム110の様々な構成要素は、航空機のシステムもしくは別のコンピュータシステムに接続されているか、またはそれらと一体化されていてよい。例えば、LIDARシステム110は、直接であると間接であるとを問わず、飛行制御システム220、1つ以上の操縦メカニズム222、電源224、ISRペイロード226、通信装置228などと、操作可能に連結されていてよい。
【0063】
耐DVE性LIDARシステム110は、リモートのプロセッサであれローカルのプロセッサであれ、プロセッサと操作可能に連結されていてよい。例えば、OPA202、SLM206、及びSPADアレイ212は、デジタル信号プロセッサ(DSP)214と操作可能に連結されていてよい。次に、DSP214は、メモリ装置218及びユーザインターフェース216、並びに飛行制御システム220といった他のシステムと、操作可能に連結されていてよい。稼働中、DSP214は、リターンされたLIDAR信号と後方散乱とを特定するため、反射リターン118と関連づけられたSPADアレイ212から受信したデータを解釈する。次に、DSP214は、検出したDVEの後方散乱を低減するため、SLM206を最適化する。
【0064】
レーザ光源201は、OPA202を介してレーザ光線116を放射する、LIDAR用途で使用するのに有用な、従来型のレーザ源であってよい。レーザ光線116は、DSP214の制御下で、規則的な制御された間隔で、パルス化されていてよい。DSP214は、DSP214からのデジタル制御の下で、制御可能なバイナリ要素のN×Mの散乱行列の干渉パターンを作り出すために使用され得る、SLM206もまた制御してよい。SLM206とパルス状レーザ光線116の組み合わせは、位相共役光であって、DVE媒質112からの後方散乱パターンを相殺するであろうが、DVE媒質112が相関を失うかまたは変化するよりも前に、相殺を行う位相共役光を所与の目標の深さに関して発見することができ且つこのプロセスが繰り返されるほど十分に速く、可能な共役光の組を通じて繰り返して生成され得る、位相共役光を生成するのに十分な高解像度を提供するはずである。
【0065】
より多数のさらなる光子が、標的物114に到達したあとSPADアレイ212に到達するであろうが、それはDVE媒質112によって散乱した状態で、である。DVE下では、受容される大多数の光子は、DVE媒質112によって散乱させられた後、標的物114に到達しないであろう。利用可能な変調領域全体にわたってSLM206を走査することによって、所与の焦点深度において標的物114に直接反射された光子を離れる、DVE媒質112が生成する後方散乱の、最適な位相共役光が得られるであろう。ただしこれは、標的物114が所与の焦点深度に存在し、DVE媒質112内の移動粒子が、SLM206が走査を完了する前に最適なSLM変調との相関関係を失わない場合である。ピークを検出することが可能であり、直接経路の光子の焦点深度において標的物114を発見することと、このピークとを関連付けることが可能である。このピークの検出は、周辺エリアにわたる当該深度において繰り返すことができ、標的の地点の周囲で対象エリアの範囲が拡大される。
【0066】
耐DVE性LIDARシステム110は、ビークルが散乱媒質を通って移動し背景内の物体を検出する際に、ビークルの位置及び姿勢を追尾する方法を採用し得る。DVE媒質112内にある放射器と検出器のペアからの特定の距離において、標的の後方散乱が全く検出されなかった場合、このプロセスは、複数の距離まで、及び耐DVE性LIDARシステム110のサンプリングレートの限界まで、繰り返すことができる。このプロセスによって、LIDARが、DVE内で現在可能なよりも長い距離から標的物を検出することが可能になっている。航空ビークル102がDVE媒質112内を通って移動する際、散乱層が剥離されて、残った散乱媒質と新たな散乱行列M’が明らかになる。一態様では、SLM206にとって適切な解像度は、例えば、少なくとも4160×2464であってよい。これは、1.5ミクロンの波長のパルス状のレーザと、発光素子の間であってよい。この繰り返しは、フィーナップ再構成や機械学習ベースの非線形光線伝播法といったアルゴリズムを使用しているが、
図4及び
図5に関連して説明されるとおり、ソフトウェアのアルゴリズム中にビークルの位置と姿勢をさらに含む、埋め込みプラットフォーム上で実施され得る。脱相関時間は、DVE媒質112の不透明度と、貫通しようとするDVE媒質112を通る総距離とに依存する。SPADアレイ212は、検出器の役割を果たし、埋め込みプラットフォーム(例えばDSP214)内に情報を供給する。埋め込みプラットフォームは、逆伝播を計算し、SLM206上の位相プロファイルを修正する。
【0067】
光学素子204は、OPA202からのレーザ光線116の集束と相関を補助する。光学素子204は、リターンした反射光(例えば反射リターン118)の比較の対象となり得る参照光を生成するビームスプリッタを含んでいてよい。光学素子208は、SLM206からのレーザ光線116を導き、DVE媒質112内へと集束させる。求めている標的物114は、このDVE媒質112内(またはそれを越えた位置)の、未知の距離にある。
【0068】
標的物114とDVE媒質112で反射した光子は、集められた光エネルギーをSPADアレイ212へと導く集束用光学素子210を通って、耐DVE性LIDARシステム110へと戻る。DSP214は、SLM206の現在の状態を考慮に入れてSPADアレイ212から受信した信号を処理し、DVE媒質112の散乱特性を持った共役光が成功裏に実現されたかどうかを判定するため、標的物114までの一連の企図された距離内を走査する。このDVE媒質112の散乱特性を持った共役光の成功は、標的物114が突き止められたかまたは特定されたかどうかの判定を可能にするものである。伝送された光線と、その結果生じて検出されたパターンとの共役に関するアルゴリズムを記憶するのに、DSP214と操作可能に連結されたメモリ装置218が使用されてよい。ある態様では、このアルゴリズムは、ビークルの位置及び態勢を、散乱行列Mの連続的な決定に組み入れ得る、フィーナップのアルゴリズムまたは機械学習のアルゴリズムベースの光線伝播法のどちらかに基づいていてよい。代わりに、処理時間を高速化しチップ面積を節約するために、下位の共役計算機能が、ハード接続されたデジタル論理として特性用途向け集積回路(ASIC)内に配線接続されていてもよい。
【0069】
ある態様では、耐DVE性LIDARシステム110には、オペレータまたはモニタと通信し、これらに情報を与えるユーザインターフェース216(例えばマンマシンインターフェース(HMI))を設けることができる。このユーザインターフェース216は、特に着陸ゾーンにおいて、DVE媒質112によって生じた散乱の度合いを定量化し、オペレータもしくはモニタ(またはモニタリングシステム)に対して視覚的合図及び/または音響的合図を提供する。ユーザインターフェース216は、航空ビークル102自体か、携帯用ユーザ装置(例えばタブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォンなど)か、または遠隔操作/制御センター内に一体化されていることができる。ユーザインターフェース216は、DVEモードを起動する(耐DVE性LIDARシステム110にLIFT-DVEのシステム及び方法を採るよう命令する)こと、標的物114までの距離の結果及び/または標的物114が検出されなかった旨の警告を表示すること、並びにハードウェアによるDVE内における標的物114の探索の限界を設定することを含む、耐DVE性LIDARシステム110の制御を可能にし得る。ユーザインターフェース216は、耐DVE性LIDARシステム110のモードを設定するのに有用である。例えば、LIDARは、DVE媒質112のプローブが成功したか失敗したかと、DVE媒質112の脱相関時間とを、リポートすることができる。この脱相関時間によって、DVE媒質112の厚さ、深さ、または深刻性が評価される。オペレータは、ユーザインターフェース216を介して、例えば透明度が最も低いものから最も高いものまでの範囲に及び得る特定のタイプのDVE媒質112用に、耐DVE性LIDARシステムを設定することができる。それによって、LIDARが、特定のタイプのDVEにおいて光学素子が解像可能なものを超えてより大きくまたはより鮮明に画像化することを試みなくてよい。ユーザインターフェース216は、ハードウェアの(例えば耐DVE性LIDARシステム110の)状態、最新の正確な距離測定がビークルの動きに対してどれだけ時間的に前のものであるか、及びDVE媒質112内の標的物までの最新の既知の距離が与えられたときの、航空ビークル102の慣性運動が安全限界を超えている度合についても、リポートし得る。
【0070】
操縦メカニズム222は、ミッション(例えば標的物114に対する操作)を達成するためまたは緊急操作を実行する(例えば障害物を回避する)ため、(自律であれ有人制御下であれ)航空ビークル102を航行経路上で操縦するように構成されていてよい。一態様では、操縦メカニズム222は、航空ビークル102を意図したルートに沿って正確に導くためにフィードバックまたは他の制御システムを採用していてよい、飛行制御システム220からの信号に応答する。VTOL式の航空ビークルにおいては、操縦メカニズム222は、例えば複数のローター(例えば、ファンまたはヘリコプターブレード付きローター)を含んでいてよい。この複数のローターは、翼及び他の操縦翼面と共に、固定式ローターまたは操縦可能なローターであってよい。固定翼航空ビークルといった他の航空ビークルに関しては、操縦メカニズム222は、方向舵、昇降舵、フラップ、補助翼、スポイラー、エアブレーキ、及びその他の操縦翼面を含み得る。例えば、航空ビークル102の後部にある方向舵と、昇降舵と、垂直飛行ビークル用のあらゆる他の適切な操縦翼面と、同様に関連する配線、ケーブル、アクチュエータなどである。操縦メカニズム222は、推力ベクトルを直接変化させるベクトル推力制御を採用している、関節式の電気モータもまた含んでいてよい。操縦メカニズム222は、さらにまたは代わりに、航空ビークル102を操縦するためのあらゆるメカニズムを含み得る。
【0071】
飛行制御システム220は、航行システムの構成要素から受信した信号に基づき、(例えば、複数のウエイポイントを生成して)航空ビークル102が所望の箇所に到達するための1つ以上の航行経路を決定し得る。飛行制御システム220は、航空ビークル102を所望の箇所までの航行経路に沿って導くために、航行指令(例えばデータ信号)を計算し、生成し、操縦メカニズム222に送信し得る。飛行制御システム220は、全体的にまたは部分的に、別個のハウジング内、機体内、またはそれらの何らかの組み合わせ内に配置されていてよい。耐DVE性LIDARシステム110からの情報を使用し得る飛行制御システム220は、概して、航空ビークル102内で1つ以上の操縦メカニズム222に指示を出すか、または操縦メカニズム222を別様に制御するように構成されている。飛行制御システム220は、航空ビークル102及び遠隔地と通信関係にあるようにして連結されていてよく、通信装置228を介して航空ビークル102と遠隔地との間で信号を送受信するように構成されていてよい。通信装置228は、例えば、無線トランシーバーとアンテナであってよい。ある態様では、複数の航空ビークル間の通信に対応するために、1つ以上の飛行制御システム220が利用されてよい。
【0072】
一実施例では、飛行制御システム220は、操縦システム230、マップシステム232、航行システム(例えばGPSシステム234、慣性計測装置(IMU)、及び/または慣性航法装置(INS))、飛行制御プロセッサ236、ジャイロスコープ238、飛行コントローラ240、加速度計242、及び/またはメモリ装置244を含んでいてよい。飛行制御システム220は、無人航空ビークルまたは他の自律式もしくは手動操縦式ビークルの運航に必要または有用な、あらゆる他の従来型の飛行計器、センサ、処理回路、通信回路、カメラを含む光学システムなどといった他のセンサ246と同様、上記の構成要素もまた耐DVE性LIDARシステム110内に配置されているとして含んでいてもよい。
【0073】
飛行制御システム220は、1つ以上の操縦メカニズム222及び/または耐DVE性LIDARシステム110と通信可能に連結されていてよい。例えば、操縦システム230は、意図した経路に沿って航空ビークル102を導くために、飛行制御システム220(または耐DVE性LIDARシステム110)から信号を受信して、ビークルの操縦メカニズム222に対して適切な制御信号を提供するように構成されていてよい。
【0074】
マップシステム232は、エリア内の自然の地物及び人工の地物に関する位置情報を提供するマップベースの飛行制御システムの一部であってよい。これは、例えば地形図や、道路、建物、河川などが識別された通常の二次元地図や、樹木、彫像、公共インフラ、建物などといった様々な天然及び人工の障害物の高さ及び形状を特徴づける詳細な三次元データを含む、あらゆる詳細レベルの情報を含んでいてよい。一態様では、マップシステム232は、経路の決定などの目的で、ある環境内における様々な障害物に関する情報を提供するため、周辺状況の視覚的確認用の光学システムと協働し得るか、またはGPSシステム234と協働し得る。一態様においては、マップシステム232は、GPSが拒絶されたまたはGPSに障害が発生している環境下における、補助的な航行支援を提供し得る。GPSが部分的または全面的に欠落しているときには、マップシステム232は、GPS信号が復活し得るまでの間の位置情報を提供する、耐DVE性LIDARシステム110及び/または、光学センサ、慣性センサなどといった、他のセンサ246と協働し得る。
【0075】
マップシステム232は、本明細書中で検討するように、ビークルの航行をサポートするため、飛行制御システム220の他の構成要素とより広範に通信し得る。例えば、マップシステム232は、1つ以上の物体を含む運航環境のマップを記憶している、マップベースの航行システムを提供し得る。このマップベースの航行システムは、カメラに連結されていてよく、記憶されている物体と、GPSデータまたは他の位置情報が欠如している際に位置情報を提供し得る視覚可能な環境とを比較することによって、ビークルの位置を決定するように構成されていてよい。
【0076】
GPSシステム234は、航空ビークル102の位置を決定するように構成された、全地球測位システムの一部であってよい。GPSシステム234は、従来の衛星ベースのシステムや、公的または私的に運用されているビーコン、位置信号などを用いた他のシステムを含む、当該技術分野で周知であるか周知になるであろうあらゆるGPS技術を含んでいてよい。GPSシステム234は、位置を計算するのに使用するデータを検出する1つ以上のトランシーバーを含んでいてよい。GPSシステム234は、航空ビークル102の運航を制御し、ビークルを意図した経路に沿って航行させるため、飛行制御システム220の他の構成要素と協働してよい。
【0077】
ジャイロスコープ238は、ジャイロスコープ238が連結された航空ビークル102または地表の回転を検出するように構成された装置(例えば耐DVE性LIDARシステム110の一部)であってよい。ジャイロスコープ238は、航空ビークル102と一体化されていてよいか、または航空ビークル102の外部に配置されていてよい。ジャイロスコープ238は、当該技術分野で周知であるか周知になるであろうあらゆるジャイロスコープまたはその変種(例えばジャイロスタット、微小電機機械システム(「MEMS」)、光ファイバージャイロスコープ、振動型ジャイロスコープ、動的同調ジャイロスコープなど)を含んでいてよい。ジャイロスコープ238は、航空ビークル102の運航を制御し、ビークルを意図した経路に沿って航行させるため、飛行制御システム220の他の構成要素と協働してよい。
【0078】
加速度計242は、航空ビークル102の直線運動を検出するように構成された任意の装置であってよい。加速度計242は、航空ビークル102と一体化されていてよいか、または航空ビークル102の内部もしくは外部に配置されていてよい。加速度計242は、当該技術分野で周知であるか、周知になるであろう、任意の加速度計(例えば、容量型、抵抗型、バネ質量式、直流(DC)応答式、電気機械サーボ式、レーザ式、磁気誘導型、圧電型、光学式、低周波数型、振子式積分ジャイロ加速度計、共振型、ひずみゲージ式、弾性表面波型、MEMS型、熱式、真空ダイオード式など)を含んでいてよい。加速度計242は、航空ビークル102の運航を制御し、ビークルを意図した経路に沿って航行させるため、飛行制御システム220の他の構成要素と協働してよい。
【0079】
他のセンサ(またはセンサシステム)246もまた、同様に採用されてよい。例えば、航空ビークル102(または飛行制御システム220、耐DVE性LIDARシステム110など)は、赤外線センサ、レーダー(即ち電波探知測距)センサなどを採用し得る。
【0080】
飛行制御プロセッサ236は、飛行コントローラ240、航空ビークル102、飛行制御システム220、操縦メカニズム222、並びに、耐DVE性LIDARシステム110のDSP214といった、本明細書に記載の他の様々な構成要素、システム、及びサブシステムと通信関係にあるようにして連結されていてよい。飛行制御プロセッサ236は、航空ビークル102もしくは飛行制御システム220の内蔵プロセッサ、本明細書で検討されている様々な機能をサポートするためのさらなるプロセッサ、ローカルもしくはリモートで航空ビークル102及び飛行制御システム220に連結されているデスクトップコンピュータなどのプロセッサ、データネットワークを通じて航空ビークル102及び飛行制御システム220に連結されているサーバもしくは他のプロセッサ、または任意の他のプロセッサもしくは処理回路であってよい。概して、飛行制御プロセッサ236は、航空ビークル102または飛行制御システム220の動作を制御し、航行をサポートするための様々な処理及び計算の機能を実行するように構成されていてよい。飛行制御プロセッサ236は、航空ビークル102の内蔵プロセッサが航空ビークル102の運航を制御する一方で、ハウジング内のプロセッサが光学データ及び反響定位データを前処理するといったように、本明細書に記載のステップを実行するために協働する複数の異なるプロセッサを含んでいてよい。
【0081】
飛行制御プロセッサ236は、例えば位置情報、運動情報、耐DVE性LIDARシステム110からのデータなどを含む様々なインプットに基づいて、ある箇所までの航空ビークル102の航行経路を決定または修正するように構成されていてよい。これらのインプットは、航空ビークル102の周辺の環境内の障害物に関する情報を提供し得る、GPSシステム234、マップシステム232、ジャイロスコープ238、加速度計242、並びに任意の他の航空に関わるインプット、また同様に、光学システム及び反響定位システムに、様々な形で基づいていてよい。初期経路は、例えばGPSシステム234によって与えられる位置情報のみに基づき、ジャイロスコープ238や加速度計242などによって検出された動きに基づいた飛行中の調整を受けて、決定されてよい。飛行制御プロセッサ236は、光学航行システムを利用するようにも構成されていてよい。この場合、プロセッサは、例えば一連の画像を処理するためのオプティカルフローを用いて光学システムのFOV内にある視覚可能な障害物を特定し、あらかじめGPSシステム234が航空ビークル102に視覚可能な障害物を回避して当該箇所に向けて航行させるように構成される。飛行制御プロセッサ236は、耐DVE性LIDARシステム110またはISRペイロード226のFOV内、通常はビークルの飛行経路内の障害物を特定するようにさらに構成されていてよく、GPSシステム234及び光学航行システムが、航空ビークル102に障害物を回避させ、当該箇所に向けた元のコースに復帰させるよう導く応答操作を実行させるように、さらに構成されていてよい。
【0082】
飛行コントローラ240は、航空ビークル102及び、操縦メカニズム222といった飛行制御システム220の構成要素を制御するように操作可能であってよい。飛行コントローラ240は、飛行制御プロセッサ236、航空ビークル102、操縦メカニズム222、及び本明細書に記載の装置及びシステムの他の様々な構成要素と、通信関係にあるようにして電気的にまたは別様に連結されていてよい。飛行コントローラ240は、限定しないが、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ、及び任意の他のデジタル及び/またはアナログの構成要素、並びにこれらの組み合わせと共に、制御信号、駆動信号、電力信号、センサ信号などを送受信するための入力及び出力を含む、本明細書に記載の航空ビークル102及び飛行制御システム220の様々な構成要素を制御するのに適切な、ソフトウェア及び/または処理回路の任意の組み合わせを含んでいてよい。一態様では、これは、機載のプロセッサといった、航空ビークル102及び飛行制御システム220に直接かつ物理的に関連付けられた、回路を含み得る。別の態様では、これは本明細書に記載の飛行制御プロセッサ236といったプロセッサであってよく、例えば有線または無線の接続を通じて、航空ビークル102及び飛行制御システム220に連結された、パーソナルコンピュータまたは他のコンピュータ処理装置に関連付けられていてよい。同様に、本明細書に記載の様々な機能は、航空ビークル102の機載プロセッサと、飛行制御システム220と、別個のコンピュータの間で、配分されていてよい。こうしたコンピュータ処理用の装置及び環境は、異なる意味が明示的に与えられているか、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、全て、本明細書で使用される「コントローラ」または「プロセッサ」という用語の意味の範囲内に該当することが意図されている。
【0083】
メモリ装置218、244は、限定しないが、感知した障害物の位置、マップ、画像、配向、速度、航行経路、操縦の詳細、GPS座標、センサ測定値などを含む、飛行制御システム220及び/または耐DVE性LIDARシステム110のデータのログを記憶する、ローカルのメモリまたはリモートの記憶装置を含み得る。メモリ装置218、244は、さらにまたは代わりに、ISRペイロード226及び/または耐DVE性LIDARシステム110からのセンサデータや関連するメタデータなどもまた、記憶してよい。メモリ装置244内に記憶されているデータには、飛行制御プロセッサ236、飛行コントローラ240、耐DVE性LIDARシステム110、遠隔処理リソースなどからアクセスされてよい。
【0084】
稼働中、耐DVE性LIDARシステム110は、主にDVE媒質112からの後方散乱をリターンするDVE内での稼働中に、信号を送信し得る。このリターンは、干渉する媒質からの後方散乱を消すべく、SLM206に位相共役光を生成させるために使用される。標的物114が射程内に入ってくると、受信した信号の中に標的物114の後方散乱特性が表れるであろう。しかし、標的物114の後方散乱は、これ以前に検出されたDVEの媒質とは異なる特性を有しているであろう。システムは、標的物114の信号を最大化するため、SLM206に媒質の後方散乱信号との位相共役光を発生させようとし続けるであろう。それによって、他の従来型の技法で可能なよりも長い距離における、標的物114の後方散乱の検知が可能になるであろう。最適化されたSLM変調においてさえも標的物114が一切検出されない場合には、LIDARは、次の増分の距離までをプローブし、標的物114が捕捉されるか、記載のシステムのLIDARの限界が検出されるまで、これを繰り返す。
【0085】
初期のDVEの後方錯乱の位相共役補正は、システム内にあらかじめ組み込まれ(例えばメモリ装置218内に記憶され)ていてよい。これは、雨や霧や煙や埃といった、種々の一般的なDVE条件に関する別個の初期SLM補正を含んでいてよい。これらのSLM補正は、最適な伝送マトリクスをモデリングする畳み込みニューラルネットワークを用いてあらかじめ学習された、種々の稼働条件のデータベースを組み込んでいてよい。DVE後方散乱補正は、標的物114がないことが分かっている所定の距離までの後方散乱を測定することによって、リアルタイムでサンプリングされ得る。DVE後方散乱補正は、DVE媒質112が変わったことを表す後方散乱特性の変化が検出されるまで、近距離から遠距離へと繰り返されてよい。特定の態様では、DVE後方散乱補正サンプリングは、以前の地形図から自由空間を含むことが分かっている空間に限られている。
【0086】
図3は、耐DVE性LIDARシステム110の例示の操作方法300のフロー図を示す。方法300は、DVE媒質231が有意に相関し、共役光が生成され得る最小の距離に始まって、探査を繰り返す。耐DVE性LIDARシステム110は、ステップ302で、従来型のLIDARのように、正常な非DVEの稼働用の開始パラメータへと初期化される。次に、耐DVE性LIDARシステム110は、ステップ304で、DSP214を介して、DVEモードが選択されたかどうかを確認する。選択されていない場合は、ステップ306及び308において、従来型の操作が継続する。しかし、ステップ308でDVEモードが選択されるかまたは距離が取得されない場合、耐DVE性LIDARシステム110は、ステップ310で、まずシステムの最小有効距離においてリターンを生成する位相共役光を探して、DVEモードにおける距離を取得しようと試みるであろう。ステップ312でテストされたその距離における共役が成功した場合、システムは距離を増大させ、ステップ316において再び共役を試みるであろう。共役が失敗した場合、それによって、現在のDVEにおいて達成可能な最大透過深度が決定する。312で走査が失敗し、それが初回通過314であった場合、システムは、標的物114を特定することが全く不可能であり、方法は、初期条件に戻る。初期条件の時点では、操作方法300は、失敗した旨をリポートし、ステップ326で初期条件に戻る。そうでない場合には、ステップ318で、最後に成功した共役の距離が、現在の有効距離としてリポートされる。次に方法300は、ステップ320で、この有効距離のエンベロープ内における標的物114からの反射リターン118を求めて走査を行う。ステップ322で標的物が発見された場合、耐DVE性LIDARシステム110は、ステップ324でその距離を報告する。標的物が発見されなかった場合、DVEに対する脱相関ウィンドウが開いたままである限り、プロセスは、ステップ320を繰り返し得る。しかし、脱相関時間は、新たな距離の更新の必要性と比べて短いものであることが予期される。したがって、移動中のビークルの場合、プロセスは一般的に、脱相関ウィンドウの終了時点でステップ310を繰り返すであろう。
【0087】
図4を参照すると、耐DVE性LIDARシステム110は、ステップ402で、例えばプロセッサ(例えば飛行制御プロセッサ236、DSP214など)を介して、航空ビークルの状態推定を判定し得る。例えば、プロセッサは、1つ以上の要因410を用いて航空ビークル102の位置及び/姿勢を特定し得る。1つ以上の要因410は、例えばGPSデータ、IMUデータ、点群、DVE媒質112内の散乱体に関するデータなどを含み得る。要因410は、例えば飛行制御システム220、ISRペイロード226などから受信され得る。ステップ404では、例えば、(例えばDVE媒質112の)散乱層の剥離(unpeel)を用いることによって、散乱行列が更新される。ステップ406では、例えば、フィーナップ再構成、機械学習などを用いて、位相共役が更新される。ステップ408では、SLM206を更新するために、点群の測定値が用いられる。この更新された点群の測定値は、ステップ410において、将来の利用のために記憶され得る。
【0088】
耐DVE性LIDARシステム110は、位相回復アルゴリズム及び/または学習トモグラフィを使用し得る。
図5は、フィーナップ再構成を実施する例示のブロック図を示す。例えば、フィーナップの位相回復は、アルゴリズムによって位相問題の解を見出すためのプロセスである。複合信号をF(k)、その振幅を|F(k)|、位相をψ(k)とすると、
となる。式中、xはM次元の空間座標であり、kはM次元の空間周波数座標であり、位相回復は、測定された振幅について、一式の制約を満たす位相を見つけることにある。別の例では、複数の散乱を考慮に入れたビーム伝播法に基づいて再構成モデルを生成するために、学習トモグラフィが用いられる。
【0089】
耐DVE性LIDARシステム110は、正確な着陸箇所が概算的に既知になっており(しかし厳密には既知になっておらず)、例えば戦場環境においてマイクロ波式着陸システムからの放射が検知され攻撃を受け得ることからレーダーといった視覚不能な表面を走査するためのより高エネルギーの方法が望ましくない場合の、DVE下でのVTOL航空ビークルの自律着陸に特に有用である。自律式垂直離着陸ビークルは、概略的に指定された着陸地点まで飛行し、その後、地上を検出するためにLIDARを用いてDVE内へと下降し始めるために、耐DVE性LIDARシステム110を使用し得る。例えば戦場の煙が存在している場合でさえ、耐DVE性LIDARシステム110によって、ビークルが、着陸を行う地点に関する不確実性がより高い場合よりも高速で下降することができる十分長い距離から、正確に地上を検出することが可能になる。下降速度がより高速である場合、または従来型の光学式によるアプローチの誘導が一切利用可能でないときの下降の場合には、耐DVE性LIDARシステム110を装備したビークルに、性能と残存可能性に関する利点が与えられていることになる。
【0090】
部品や特徴などの特定の配設に関して様々な実施形態が説明されてきたが、これらは、あらゆる可能な配設または特徴を網羅することを意図しておらず、実際には、多くの他の実施形態、変更形態、及び変形形態が、当業者にとって解明可能であり得る。したがって、このように、本発明は、上記で具体的に記載されたものとは異なる態様で実施されてよいことは、理解すべきである。
【0091】
本開示は、以下の条項に記載の主題を含む。
【0092】
1.悪視程環境(DVE)下で運航する航空ビークル(102)用のLIDARシステム(110)であって、
コヒーレント光線を放射するように構成されたレーザ源(201)と、
当該コヒーレント光線を変調するための空間光変調器であって、当該空間光変調器と標的物(114)との間に配置されたDVE媒質(112、231)の干渉パターンに対する位相共役光を生成するように構成された空間光変調器と、
空間光変調器からの当該コヒーレント光線をフィルタリングする光学レンズ(200)であって、コヒーレント光線を標的物(114)に向けるように構成されており、コヒーレント光線はDVE媒質(112、231)に反射して散乱光子を生み出し、標的物(114)に反射して反射光子を生み出す、光学レンズ(200)と、
散乱光子及び反射光子を収集する第2の光学レンズ(200)と、
散乱光子及び反射光子を検出する検出器アレイとを備える、LIDARシステム(110)。
【0093】
2.当該DVE媒質(112、231)の現在の散乱特性を特定するため、複数の共役光を繰り返して走査するように構成されている、条項1に記載のLIDARシステム(110)。
【0094】
3.複数の共役光を繰り返して走査するステップが、フィーナップ(Fienup)再構成技法を用いる、条項2に記載のLIDARシステム(110)。
【0095】
4.LIDARシステム(110)が、走査のための所定の時間が推定距離における当該DVE媒質(112、231)の脱相関時間を超過するまで、連続してより長い推定距離でプローブするように構成されている、条項2に記載のLIDARシステム(110)。
【0096】
5.レーザ源(201)が、光学フェーズドアレイ(202)を介してコヒーレント光線を放射するように構成されている、条項1から4のいずれか一項に記載のLIDARシステム(110)。
【0097】
6.検出器アレイが、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)アレイである、条項1から5のいずれか一項に記載のLIDARシステム(110)。
【0098】
7.検出器アレイ及び空間光変調器が、それぞれデジタル信号プロセッサに操作可能に連結されており、デジタル信号プロセッサが、航空ビークル(102)の飛行制御システムと通信するように構成されている、条項1から6のいずれか一項に記載のLIDARシステム(110)。
【0099】
8.飛行制御システムが、デジタル信号プロセッサを介してLIDARシステム(110)から受信したデータに応じて、着陸ゾーンを特定するように構成されている、条項7に記載のLIDARシステム(110)。
【0100】
9.光学レンズ(200)が、散乱光子または反射光子の比較の対象となり得る参照光を生成するビームスプリッタを含む、条項7に記載のLIDARシステム(110)。
【0101】
10.デジタル信号プロセッサが、航空ビークル(102)がDVE媒質(112、231)を通って航行する際に、航空ビークル(102)の位置と姿勢を追尾するように構成されている、条項7に記載のLIDARシステム(110)。
【0102】
11.デジタル信号プロセッサが、少なくとも部分的に、飛行制御システムから受信した情報に基づいて、位置と姿勢を追尾するように構成されている、条項10に記載のLIDARシステム(110)。
【0103】
12.悪視程環境(DVE)下で運航する航空ビークル(102)用のLIDARシステム(110)を操作する方法であって、
レーザ源(201)からコヒーレント光線を放射するステップと、
空間光変調器を介して当該コヒーレント光線を変調するステップであって、空間光変調器が、当該空間光変調器と標的物(114)との間に配置されたDVE媒質(112、231)の干渉パターンに関する位相共役光を生成するように構成された、当該コヒーレント光線を変調するステップと、
光学レンズ(200)を介して空間光変調器からの当該コヒーレント光線をフィルタリングするステップと、
コヒーレント光線を標的物(114)に向けるステップであって、コヒーレント光線がDVE媒質(112、231)に反射して散乱光子を生み出し、標的物(114)に反射して反射光子を生み出す、コヒーレント光線を前記標的物(114)に向けるステップと、
第2の光学レンズ(200)を介して散乱光子及び反射光子を収集するステップと、
検出器アレイを介して散乱光子及び反射光子を検出するステップとを含む、
方法。
【0104】
13.当該DVE媒質(112、231)の現在の散乱特性を特定するため、複数の共役光を繰り返して走査するステップをさらに含む、条項12に記載の方法。
【0105】
14.当該DVE媒質(112、231)の現在の散乱特性を特定するため、あらゆる可能な共役光を繰り返して走査するステップをさらに含む、条項12または13に記載の方法。
【0106】
15.複数の共役光を繰り返して走査するステップが、フィーナップ(Fienup)再構成技法を用いる、条項13に記載の方法。
【0107】
16.走査のための所定の時間が推定距離における当該DVE媒質(112、231)の脱相関時間を超過するまで、連続してより長い推定距離でプローブするステップをさらに含む、条項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
17.検出器アレイ及び空間光変調器が、それぞれデジタル信号プロセッサに連結されており、デジタル信号プロセッサが、航空ビークル(102)の飛行制御システムと通信するように構成されている、条項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
18.デジタル信号プロセッサを介してLIDARシステム(110)から受信したデータに応じて、着陸ゾーンを特定するステップをさらに含む、条項17に記載の方法。
【0110】
19.光学レンズ(200)が、参照光を生成するビームスプリッタを含む方法であって、参照光を散乱光子または反射光子と比較するステップをさらに含む、条項12から18のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
20.航空ビークル(102)がDVE媒質(112、231)を通って航行する際に、航空ビークル(102)の位置と姿勢を追尾するステップをさらに含む、条項12から19のいずれか一項に記載の方法。