(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】遮光部材、遮光部材を用いた撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20240419BHJP
G03B 9/00 20210101ALI20240419BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240419BHJP
G02B 1/113 20150101ALI20240419BHJP
【FI】
G02B5/00 B
G03B9/00 A
G02B7/02 H
G02B1/113
(21)【出願番号】P 2019214635
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018221893
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 安紘
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114632(JP,A)
【文献】特開2018-92030(JP,A)
【文献】特開2017-15815(JP,A)
【文献】特開2007-206136(JP,A)
【文献】特開2004-212462(JP,A)
【文献】特開2010-175941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
G02B 5/20- 5/28
G02B 1/10- 1/18
G02B 7/02
G03B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成された遮光基板の上に、誘電体層と光吸収層とが交互に積層された光減衰膜を備える遮光部材であって、
前記光減衰膜は、複数の前記光吸収層を有し、
複数の前記光吸収層は、金属化合物の第1の光吸収層と、
前記第1の光吸収層よりも積層された方向に前記遮光基板から離れた位置に設けられた、
金属化合物の第2の光吸収層と、を含み、
前記第2の光吸収層の金属の酸化数は、前記第1の光吸収層の金属の酸化数よりも大きいことを特徴とする遮光部材。
【請求項2】
前記遮光基板と前記光減衰膜との間に、他の誘電体層が設けられることを特徴とした請求項1に記載の遮光部材。
【請求項3】
前記第1の光吸収層の酸化数との前記第2の光吸収層の酸化数の差の絶対値は、0.2以下であることを特徴とした請求項1または2に記載の遮光部材。
【請求項4】
前記光減衰膜の上に設け
られる反射防止膜とを有し、
前記遮光基板は、金属基板であり、前記誘電体層がAl
2O
3、前記反射防止膜がMgF
2であることを特徴とした請求項1~3のいずれか一項に記載の遮光
部材。
【請求項5】
前記光吸収層のうち前記
遮光基板側に最も近い光吸収層の酸化数又は窒化数が各光吸収層の内で最も小さいことを特徴とした請求項1~4のいずれか一項に記載の遮光部材。
【請求項6】
前記光減衰膜は6層以上の積層構造であることを特徴とした請求項1~5のいずれか一項に記載の遮光部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の遮光部材と、前記遮光部材の開口を通過した光を撮像する撮像素子とを備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラなどの撮像系に搭載される絞り板などの遮光部材及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からカメラなどの撮像装置には、撮像素子に入射する光量を調整するために絞り板が設けられている。絞り板はメイン光路を通過させ、それ以外の光が撮像素子に入射するのを防止するものであるが、メイン光路を通過した光が、レンズや光学フィルタなどにより反射し、この反射した光が絞り板で更に反射し、撮像素子に入射することでゴーストやフレアが発生してしまうことがあった。
【0003】
特許文献1では、基板上に黒色被膜を設け、更に黒色被膜上に反射防止膜を形成することで、反射率を低減した黒色反射防止部膜が開示されている。また、特許文献2には、SUS基板の上に、TiN、SiNを交互積層したものが知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-350003号公報
【文献】特開2012-163756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、光吸収機能を有する黒色被膜は単層であり、特定の波長に対して低反射にしているものに過ぎず、黒色被膜は樹脂であるため環境安定性に問題があった。引用文献2には、光吸収層に着眼した環境安定性に関しては言及されていない。
【0006】
本発明は、光吸収層の組成によって環境安定性に優れた遮光部材を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の遮光部材は、開口が形成された遮光基板の上に、誘電体層と光吸収層とが交互に積層された光減衰膜を備える遮光部材であって、
前記光減衰膜は、複数の前記光吸収層を有し、複数の前記光吸収層は、金属化合物の第1の光吸収層と、前記第1の光吸収層よりも積層された方向に前記遮光基板から離れた位置に設けられた、金属化合物の第2の光吸収層と、を含み、前記第2の光吸収層の金属の酸化数は、前記第1の光吸収層の金属の酸化数よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、光吸収層の組成によって環境安定性に優れた遮光部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施例に係る遮光部材の各層の構成を表す断面図。
【
図6】実施例2に係る光吸収積層体の断面図及び光吸収層の酸化数を示すグラフ
【
図7】実施例3に係る光吸収積層体の断面図及び光吸収層の酸化数を示すグラフ
【
図8】実施例3の変形例に係る光吸収積層体の断面図及び光吸収層の酸化数を示すグラフ
【
図9】実施例4に係る光吸収積層体の断面図及び光吸収層の酸化数を示すグラフ
【
図10】実施例2~4及び比較例2~4の高温高湿試験における光学濃度変化量を比較したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
【0011】
本発明の遮光部材は、
図1に示すように、遮光基板1上に誘電体層2と光吸収層3とが交互積層された光減衰膜5が形成されている。光減衰膜5上に誘電体層2と光吸収層3よりも屈折率の低い反射防止膜4を設けると低反射な構成をとりやすい。複数の光吸収層は、金属化合物の第1の光吸収層と、第1の光吸収層よりも積層された方向に遮光基板から離れた位置に設けられた、金属化合物の第2の光吸収層と、を含む。第2の光吸収層の金属の酸化数は、第1の光吸収層の金属の酸化数よりも大きいことによって、環境安定性が高くなる。また、上述した各層の間に、他の金属化合物層等が設けられていてもよい。
【0012】
(基板)
本発明における遮光基板1は可視光波長(400~700nm)に対する遮光機能を有している。ここで、遮光機能とは光学濃度2.0以上(透過率1%以下程度)を指し、遮光基板1としては、光学濃度2.5以上(透過率0.32%以下程度)であることが好ましい。遮光基板1の光学濃度を濃くすることで、遮光基板1上に形成する光減衰膜5の膜設計自由度を高くすることができる。なお、本発明において特に指定しない限り、光学濃度及び透過率は光波長550nmにおける値である。
【0013】
遮光基板1としては、例えば、カーボンブラックなどの可視光域に光吸収性を有する顔料や染料を分散させた樹脂シート、樹脂シートに金属などの可視光吸収機能を有する薄膜を形成したシート、金属シートであってもよいが、遮光性や剛性を考慮すると金属シートであることが最も好ましい。金属シートとしては例えば、ステンレスやアルミ合金、銅合金などの金属基板が好適に使用できる。遮光部材が搭載される光学系の小型・軽量化の観点から遮光基板1の板厚は、剛性が保てる範囲で薄い方が好ましく、例えば100μm以下が好ましく、10~50μm程度であることがより好ましい。
【0014】
遮光基板1は光が散乱する程度に表面粗さを有していることが好ましい。遮光基板1によって散乱を生じさせることで、遮光部材の正反射率を低減することができ、強度の強いゴーストやフレアの発生を抑制することができる。更に、遮光基板1が一定以上の表面粗さを有していることで、遮光基板1と光減衰膜5との界面の面積が増え、密着性を向上させることができる。表面粗さは、例えばショットブラストやエッチング等の処理を施すことで得ることができる。
【0015】
本発明において、遮光基板1は開口を有している。開口は打ち抜きやエッチングなどで形成可能であるが、開口径の精度や、開口端部の形状を考慮するとエッチングで開口を形成することが好ましい。
【0016】
(光減衰膜)
次に光減衰膜5について説明する。本発明の光減衰膜5は誘電体層2と光吸収層3とを交互に積層した構成となっている。このような積層構成とすることで、光の干渉効果を利用し、対象波長(可視光波長)の広い波長領域において効果的に光吸収層3で光を吸収することができ、この領域において従来よりも低反射化が可能となる。
【0017】
誘電体層2は、金属化合物を成膜したものであり、例えば、MgF2、その他に金属酸化物、金属窒化物等を用いることができる。誘電体層2としては、ガスバリア性が高いものが好ましく、例えばAl2O3、SiO2等が好適である。ここで、誘電体層2は化学量論的金属化合物層であることが好ましい。化学量論的金属化合物とは酸素や窒素、フッ素などと完全に反応した金属化合物を指す。これらの金属化合物は、既に十分に酸化、窒化、及びフッ化しているため、反応性に乏しく、経時変化などによる光学特性の変化が小さいという特徴がある。ここで、本発明において化学量論的金属化合物とは、対応する化学量論的組成に対して、酸素や窒素、フッ素などが化学量論的組成の90%以上含まれる組成を指し、例えば、酸化アルミでいうと化学量論的組成はAl2O3であり、本発明において化学量論的金属化合物とはAl2Oy(y≧2.7)である。
【0018】
光吸収層3は、可視光波長において吸収を有する金属化合物を成膜したものであり、例えば、Ti、Ni、Cr、Fe、Nb、Ta、又はこれらの合金からなる酸化物や窒化物などを用いることができる。ここで、光吸収層3は亜化学量論的金属化合物であることが好ましく、更には亜化学量論的金属酸化物又は亜化学量論的金属窒化物であることが好ましい。一般に亜化学量論的金属酸化物又は亜化学量論的金属窒化物は、対応する化学量論的金属酸化物及び化学量論的金属窒化物と比較して、大きい消衰係数を有している。このため、光吸収層3の膜厚を薄くすることが可能となる。なお、光吸収層3として金属層を用いると、消衰係数は大きいものの、その高い反射率の為、遮光部材として十分な低反射化を達成することが難しくなる。
【0019】
本発明の実施形態において、亜化学量論的とは対応する化学量論的組成に対して、酸素及び窒素、又はその合計が10~70%欠損している状態を指し、例えば酸化チタンでいうと化学量論的組成はTiO2であり、亜化学量論的組成はTiOx(0.6≦x≦1.8)である。酸素及び窒素、又はその両方が化学量論的組成に対し30%より欠損していると、金属に近い光学特性となり、低反射化を達成するのが困難となる。一方、酸素及び窒素、又はその合計が化学量論的組成に対し90%より含まれると、十分な光吸収を得られにくくなる。
【0020】
ところで、亜化学量論的金属化合物は対応する化学量論的金属化合物と比較して、化学的反応性が高い。このため、亜化学量論的金属化合物である光吸収層3は、化学量論的金属化合物である誘電体層2に挟持されていることが好ましい。このような構成とすることで、光吸収層3の化学反応(主に酸化)を抑制することができ、光減衰膜5の反射率特性を安定化することが可能となる。誘電体層2の膜厚は、光吸収層3の保護機能を保てる膜厚であり、60Å以上が好ましく、80Å以上であることが更に好ましい。
【0021】
光吸収層3は、層内部でその酸化数又は窒化数が略同一でもよいし、連続的または段階的に異なる層を有していてもよい。光吸収層3は酸化数や窒化数が異なることで、屈折率や消衰係数といった光学特性が変化し、同じ物理膜厚を成膜した場合、透過率の波長依存性が異なる傾向を示すことがある。例えば酸化チタンでいうと、TiO層の場合、物理膜厚200Åの時、可視光波長の短波長側(400nm側)に向かって透過率は緩やかな下降傾向が見られる。Ti2O3層の場合、同じく物理膜厚200Åの時、可視光波長の長波長(700nm側)に向かって透過率は下降傾向となる。すなわち、TiOとTi2O3は、可視光波長の透過率特性において、お互いに傾向の異なる波長依存特性を有している。これにより、光吸収層3に、例えばTiO層とTi2O3層の両方を用いることで、光減衰膜5として可視光波長において透過率の波長依存性を小さくしやすく、この波長領域において低反射化を実現するための膜設計の自由度が高くなる。光吸収層3において、酸化数又は窒化数を異ならせるには、各層により出発材料の酸化数を調整したり、成膜時に導入する空気、酸素、窒素などの比率を調整する手法などを用いることができる。
【0022】
各光吸収層3において略同等の酸化数若しくは窒化数とする場合、光減衰膜5の可視光波長における透過率の波長依存性を小さくする手法としては、例えば光吸収層をTiOとTi2O3の混合層とする手法が考えられる。このようにすることで、光吸収層の各層で可視光波長における透過率の波長依存を小さくすることができる。例えば、TiOとTi2O3の混合層とする場合は、出発材料の酸化数を任意の酸化数になるように調整してもよいし、成膜時に導入する酸素の比率を調整してもよいし、2源蒸着法によって例えばTiOとTi2O3を同時に成膜してもよい。
【0023】
光吸収層3の各層によって酸化数又は窒化数を異ならせる場合は、基板側に最も近い光吸収層の酸化数又は窒化数が各光吸収層の内で最も小さいことが好ましい。一般に酸化数又は窒化数が小さい方が光吸収性は高くなり、遮光基板1に金属など高い反射率を有する基板を用いた場合、効果的に基板の反射光を吸収することができるためである。一方、光減衰膜5を形成する光吸収層の内、最も表層に近い光吸収層の酸化数または窒化数は、最も大きいことが好ましい。一般に酸化数又は窒化数が大きくなるにつれて、光吸収層の反射が小さくなる傾向があるためである。すなわち、このような構成とすることで、遮光基板1の反射を効果的に吸収しつつ、遮光部材10として反射を効果的に抑制できる。遮光基板1に最も近い光吸収層と光減衰膜5の表層に最も近い光吸収層との間に存在する光吸収層は、各層で略均一の酸化数及び窒化数であってもよいし、それぞれで異なる酸化数及び窒化数であってもよいし、例えば表層に向かって徐々に酸化数及び窒化数が大きくなっていくように連続的に変化してもよい。
【0024】
一方、各光吸収層の酸化数又は窒化数を略同等とすることで、光吸収層の光学定数を各層で同じにできるため、膜設計が容易になるという利点を有する。
【0025】
なお、本実施形態では、光吸収層3に関してTiOとTi2O3で説明したが、当然これに限定されるものではなく、任意の材料を使用可能である。また、光吸収層3にTiOよりも酸素比率が小さい光吸収層(TiOx:x<1)を成膜する場合は、例えばTiを出発材料として酸素を導入しながら成膜してもよいし、例えばTiOを出発材料として、成膜時に酸素の乖離が起きるレベルの高エネルギーを照射して、意図的に酸素欠損を得る手法などを用いることができる。反対に、例えばTi2O3よりも酸素比率を大きい光吸収層(TiOx:1.5<x)とする場合は、例えばTi4O7等を出発材料に選んでもよいし、例えばTi2O3を出発材料として酸素を導入しながら成膜してもよい。
【0026】
本発明の遮光部材は
図5に示すように、遮光基板1上に設けられた、遮光基板1側から積層方向に向かって順に酸化数が大きくなる少なくとも第1の光吸収層33aと第2の光吸収層33bと誘電体層2との積層体を光吸収積層体6としたとき、光吸収積層体6を構成する光吸収層33a、33bは金属酸化物(MxOy)からなり、第1の光吸収層33aと第2の光吸収層33bとの酸化数の絶対値の差は、MxOyが飽和酸化物である時の式1で与えられる値よりも小さくなっている。
【0027】
((y/x)-1)/((y/x)+1) ・・・・・式1
【0028】
なお、光吸収積層体6の遮光基板1から最も遠い最表層には、反射防止膜4を形成し、低反射化した光減衰膜5とすることが好ましい。
【0029】
金属及び金属酸化物は一般に酸化数が大きくなるにつれて酸化しにくくなる傾向がある。例えば、チタン酸化物ではTiOはTiに比べ酸化しにくく、更にTi2O3はTiOと比較して酸化しにくい。すなわち、成膜後の光学特性安定性を考慮すると、光吸収層は酸化数が大きい方が有利となる。しかし、前述のように酸化数が大きいと十分な光吸収性を確保できず、光吸収層の膜厚が厚くなったり、必要となる層数が多くなることで、クラックなどが発生する虞が高くなる。そこで、本発明の光吸収積層体6は、大気からの酸化の影響を受けやすい基板側とは反対側の光吸収層の酸化数が、大気からの酸化の影響を受けにくい遮光基板側の光吸収層の酸化数よりも大きくなるように構成される。すなわち、光吸収積層体を形成する光吸収層の内、遮光基板側に近い光吸収層から順に、第1の光吸収層33a、第2の光吸収層33bとした時、第2の光吸収層33bの方が酸化数が大きくなるように構成される。このような構成とすることで、過度に膜厚・積層数を増やすことなく、環境安定性の優れた光吸収積層体6とすることができる。さらに、光吸収積層体6を構成する第1の光吸収層33aと第2の光吸収層33bの酸化数の差は、光吸収層に使用する金属酸化物(MxOy)が飽和酸化物であるときの式1で与えられる値よりも小さい。例えば、チタン酸化物の時、飽和酸化物はTiO2であり、式1の値は0.333となる。更には、第1の光吸収層33aと第2の光吸収層33bの酸化数の差が0.2以下であることがより好ましい。
【0030】
ここで、遮光基板1と光減衰膜5との界面は誘電体層2となっていることが好ましい。遮光基板1の開口形成や表面性改質において使用した薬品が遮光基板1に残っている場合、比較的反応性の高い光吸収層3(亜化学量論的化合物層)を遮光基板1と光減衰膜5との界面にすると、化学反応を起こし、光学特性の変化や密着性の低下を引き起こす虞があるが、遮光基板1と光減衰膜5との界面を反応性の低い誘電体層2(化学量論的化合物層)とすることで、これらの影響を最小限に抑えることができる。特に、遮光基板1の表面を粗し、遮光基板1と光減衰膜5との界面面積が広くなるような場合は、界面を化学的に安定な誘電体層2とすることが効果的である。
【0031】
本発明において、光減衰膜5は6層以上の積層構成となっている。6層以上の構成とすることで、光吸収層3の積層数を一定以上確保することができ、一層当たりの光吸収層3の膜厚を薄くできると共に、光の干渉を利用して効果的に光吸収層3で光を吸収する膜構成とすることができる。本発明において、光吸収層3の一層当たりの膜厚は350Å以下であることが好ましい。光吸収層3の一層当たりの膜厚が厚くなると、その層における成膜初期と成膜後期の組成(酸化数)の差が大きくなりやすく、設計値に対する光学特性のバラツキが生じやすくなり、安定した光学特性を得るのが難しくなる。なお、光吸収層3は30Å以上の膜厚を有していることが好ましい。光吸収層3が30Åに満たない場合、海島構造となり、成膜した領域において均一に光を吸収できない虞がある。また、光吸収層3が層を形成しない場合、誘電体層2との光干渉が発現せずに、光吸収層3によって効果的に光を吸収することができなくなる。また、本発明の光減衰膜5は24層以下の積層数であることが好ましい。積層数を24層以下とすることで、光減衰膜5の膜厚が厚くなり過ぎず、遮光部材10が必要以上に厚くなることを抑制することができる。より好ましくは、光減衰膜5は14層以下の積層数であることが好ましい。なお、光減衰膜5の膜厚は1μm以下が好ましく、更には0.5μm以下であることが好ましい。光減衰膜5の膜厚が1μm以下程度であれば、遮光部材10を光学系に配置した場合、レンズ設計の自由度や光学系の小型化を損なうことなく好適に使用できる。
【0032】
本発明において、遮光基板1の反射を十分に吸収し、遮光部材10として低反射化を実現するには、光減衰膜5の光学濃度が0.9以上(透過率12.5%以下)であることが好ましく、光学濃度が1.5以上(透過率3.2%以下)であることが更に好ましい。また、光減衰膜5の光学濃度は、3.0以下であることが好ましい。光減衰膜5の光学濃度を必要以上に高くしようとすると、光減衰膜5の膜厚が厚くなり、遮光部材1を搭載する撮像装置の小型軽量化に反することになるし、また、膜の応力による遮光基板1の反りやうねりが発生しやすくなるためである。
【0033】
光減衰膜5の低反射化を実現するためには、光減衰膜5を構成する最も表層に近い光吸収層3の光学膜厚が、低反射を実現する波長領域の中心波長を550nmとした時、0.01~0.1程度、光減衰膜5の最表層である誘電体膜2の光学膜厚が0.01~0.1程度であることが好ましい。ここで、光学膜厚とは、屈折率と物理膜厚との積で表される。
【0034】
光減衰膜5は、遮光基板1の両面に形成されることが好ましい。遮光基板1の両面に光減衰膜5を形成することで、光学系に搭載した際に、メイン光路以外の光に対する低反射化を実現しつつ、メイン光路を通過し、レンズや撮像素子によって反射され、遮光部材10に入射した光に対しても低反射化を実現できる。更に、遮光基板1の両面に光減衰膜5を形成することで、開口端部にも光減衰膜5が付着しやすくなり、開口端部の反射を効果的に抑制できる。なお、遮光基板1の両面に光減衰膜5を形成する場合は、それぞれの面の膜厚を同程度とすることが好ましく、更には誘電体層2及び光吸収層3の膜厚を同程度とすることが好ましく、最も好ましくは、それぞれの面の膜構成が略同一であることである。このような構成とすることで、薄い板厚の遮光基板1を用いても、反りやうねりを小さくすることができる。
【0035】
(反射防止膜)
次に反射防止膜4について説明する。本発明において反射防止膜4は、低屈折率材料、例えばSiO2やMgF2等が好適に用いられる。反射防止膜4が単層からなるとき、光減衰膜5の最表層である誘電体層2の光学膜厚と併せて、低反射化を実現する波長領域の中心波長をλとした時、光学膜厚がλ/4程度となるように成膜される。反射防止膜4が屈折率の異なる複数の薄膜の積層構造とするとき、反射防止膜4の最表層は反射防止膜4を形成する層で最も屈折率の小さい層であり、その光学膜厚はλ/4程度である。本発明において、λ/4程度とは、(0.7×λ/4)~(1.3×λ/4)程度の膜厚を指す。後述する実施例では、誘電体層2としてAl2O3、反射防止膜4としてMgF2を用いたが、屈折率差、膜厚の条件を満たせば、誘電体層2及び反射防止膜4をともにSiO2としてもよい。また、誘電体からなる反射防止膜4を形成する場合は、光吸収層3に隣接して反射防止膜4を形成してもよい。この時、反射防止膜4は化学量論的金属化合物であることが好ましい。
【0036】
(製造方法)
本発明に係る遮光部材の製造方法について説明する。本発明の遮光部材10は、遮光基板1に気相蒸着法によって、光減衰膜5及び反射防止膜4を形成する。ここでは、気相蒸着法の内、真空蒸着法による製造方法を説明するが、真空蒸着法に限らず、スパッタリング法やイオンプレーティング法、イオンアシスト法など既知の様々な方法で製造することができる。
【0037】
エッチングなどにより開口を設けた遮光基板1を成膜治具にセットし、これを成膜面が蒸着源と対向するように蒸着ドームに取り付ける。次に、蒸着ドームを蒸着チャンバーに投入し、排気を行う。蒸着チャンバー内が所望の真空度、例えば1.0×10-3Pa程度となったら、第一の工程である1層目の誘電体層成膜を行う。具体的には坩堝に充填された誘電体層出発材料を電子ビームで加熱し、遮光基板1に蒸着させる。遮光基板1に成膜された誘電体層が所望の膜厚に到達したら、電子ビームによる誘電体層出発材料の加熱を止め、第二の工程である光吸収層3の成膜を行う。坩堝に充填された光吸収層出発材料を電子ビームで加熱し、所望の膜厚となるように成膜する。このときの酸素の導入量と時間によって酸化数を調整することができる。更に、第三の工程では、第二の工程で成膜した光吸収層の上に、誘電体層を第一の工程と同様に所望の膜厚に成膜する。第二の工程と第三の工程を所望の回数繰返し実施したら、最後に反射防止膜を成膜する。坩堝に充填された反射防止膜出発材料を電子ビームで加熱し、反射防止膜を所望の膜厚に成膜する。反射防止膜の成膜が終わったら、ベントを行い、蒸着チャンバー内の圧力を大気圧とし、遮光基板1を取り出す。なお、成膜中は蒸着ドームが所定の速度で回転しており、これによりドーム同一円周上における膜厚が均一となり、成膜ロット間の光学特性の再現性を高めることができる。遮光基板1の両面に光減衰膜及び反射防止膜を形成する場合、遮光基板1の成膜が施されていない面を、蒸着源と対向するようにして、第一の工程から第三の工程及び、反射防止膜の成膜を行う。
【0038】
本実施形態では、誘電体層、光吸収層、反射防止膜の全ての成膜において、出発材料を電子ビームによって加熱したが、これに限らず出発材料によっては抵抗加熱法などを利用することができる。また、誘電体層、光吸収層、反射防止膜の各層の成膜では、必要に応じて、空気、酸素、窒素などのガスを導入し、各層の化学組成を調整することができる。
【0039】
(実施例1)
図2に本実施例に係る遮光部材10の断面図、表1に本実施例に係る遮光膜及び反射防止膜の膜設計値を示す。なお、本実施例では、遮光基板1の両面に同様の膜構成の光減衰膜5及び反射防止膜4を施している。
【0040】
本実施例において、遮光基板1は厚さ20μmのSUSを用いている。SUS基板は、エッチングにより開口が形成されている。
【0041】
本実施例において、光減衰膜5は11層からなり、誘電体層2にはAl2Oy、光吸収層3にはTiOxを用いた。なお、XPS(x-ray Photoelectron Spectroscopy)により求めたAl2Oyのyの値はおよそ3であり、同じくTiOxのxの値は遮光基板1側から数えて2、4、6、8、10層目でそれぞれ、およそ1.0、1.1、1.2、1.3、1.4であった。すなわち、本実施例の光減衰膜5は、遮光基板1に近い光吸収層で遮光基板1の反射を効果的に吸収する構成となっている。本実施例において、遮光基板1と光減衰膜5との界面は誘電体層2であるAl2Oy層としており、光吸収層3であるTiOx層は全て誘電体層2であるAl2Oy層によって挟持されている。更に、本実施例において、反射防止膜4は単層構成とし、MgF2を用いた。MgF2の膜厚は、光減衰膜5の最表層のAl2Oy層の膜厚と合わせて、光学膜厚で光波長550nmを中心波長としてλ/4程度の膜厚となっている。なお、本実施例において、光減衰膜5及び反射防止膜4の成膜には真空蒸着法を用い、誘電体層であるAl2Oy層の成膜時には酸素の導入を行った。
【0042】
【0043】
図3に本実施例における遮光部材10の全反射率及び正反射率の測定結果を示す。なお、全反射率の測定はUV2600(株式会社島津製作所製)で、正反射率はU-4100(株式会社日立ハイテクノロジー製)により測定し、正反射率の測定は入射角5°で行った。
図3に示すように、本実施例の遮光部材10は全反射率で1%以下の反射率特性を有し、正反射率においては0.1%以下と極めて低い反射率特性となっている。なお、本実施例の光減衰膜5の光学濃度はおよそ1.9(透過率1.25%)であった。
【0044】
(実施例2)
図6は実施例2に係る光減衰膜の断面図及び、光吸収層の酸化数を示したグラフである。実施例2では、光減衰膜5は10層構成であり、1つの光吸収積層体6及び反射防止膜4とからなる。光吸収積層体24を構成する光吸収層33a~33dは、遮光基板側(光吸収層33a)から遮光基板とは反対側(光吸収層33d)に向けて徐々に酸化数が大きくなる構成となっている。なお、実施例2では遮光基板1として、厚さ20μmのSUSを用い、誘電体層2としてAl
2O
3、光吸収層33a~33dとしてTixOy(0.6≦y/x≦1.8)、反射防止膜4としてMgF
2を用いている。ここで、XPS(x-ray Photoelectron Spectroscopy)(装置名:PHI Quantera II)により求めた光吸収層TixOyの22aから22dのy/xの値はそれぞれ、およそ1.0、1.1、1.2、1.3であった。また、本実施例の光減衰膜に含まれるすべての光吸収層33a~33dは、誘電体層2であるAl
2O
3に挟持された構成となっている。
【0045】
本実施例では、10層構成の光減衰膜5としているが、層数は任意に調整可能である。
【0046】
(実施例3)
図7は実施例3に係る光減衰膜の断面図及び、光吸収層の酸化数を示したグラフである。実施例3では、光減衰膜5は12層構造であり、光吸収層33、33’及び誘電体層2の上に、光吸収積層体6及び反射防止層4が形成されている。光吸収層33及び光吸収層33’は略均一の酸化数をとり、光吸収積層体6を形成する光吸収層33a~33cは基板側から反基板側に向けて徐々に酸化数が大きくなる構成となっている。なお、実施例3において、遮光基板、誘電体層、光吸収層、反射防止層は実施例2と同様にそれぞれ、厚さ20μmのSUS、Al
2O
3、TixOy、MgF
2を用いている。ここで、XPSによって求めた光吸収層33、33‘、33a~33cのy/xの値はそれぞれ、1.0、1.0、1.0、1.1、1.3であった。また、実施例2と同様に光減衰膜に含まれるすべての光吸収層は、誘電体層2であるAl
2O
3に挟持されている。
【0047】
実施例3では遮光基板1と光吸収積層体6との間に、光吸収層33、33’、誘電体層2を設けたが、
図8に示すように光吸収積層体6と反射防止膜4との間に光吸収層33、33’、誘電体層2を設けてもよい。また、遮光基板1と光吸収積層体6との間、光吸収積層体6と反射防止膜4との間には、例えば密着層など他の機能膜が設けられていてもよい。
【0048】
本実施例では、光吸収積層体6を形成する光吸収層が3層となっているが、これに限らず光吸収積層体を形成する光吸収層が2層以上あればよい。また、光吸収積層体6と遮光基板1あるいは反射防止膜4との間に設ける光吸収層は、本実施例では2層となっているが、この層数に限定はなく1層あるいは3層以上であってもよい。
【0049】
(実施例4)
図9は実施例4に係る光減衰膜の断面図及び、光吸収層の酸化数を示したグラフである。実施例4では、光減衰膜5は2つの光吸収積層体6a、6b及び反射防止膜4からなり、光吸収積層体6a、6bを形成する光吸収層はそれぞれ共に遮光基板側から反基板側に向けて徐々に酸化数が大きくなる構成となっている。なお、実施例4において、遮光基板、誘電体層、光吸収層、反射防止膜は実施例2と同様にそれぞれ、厚さ20μmのSUS、Al
2O
3、TixOy、MgF
2を用いている。ここで、XPSによって求めた光吸収層33a~33fのxの値はそれぞれ、およそ1.0、1.2、1.3、1.0、1.2、1.4であった。
【0050】
また、実施例2と同様に光減衰膜に含まれるすべての光吸収層は、誘電体層であるAl2O3に挟持されている。ここで、光吸収積層体6bの最も遮光基板1に近い光吸収層33dの酸化数は、光吸収積層体6aの最も遮光基板1から遠い光吸収層33cよりも小さいことが好ましい。光吸収層は酸化数が大きくなるにつれて消衰係数が小さくなるが、光吸収積層体の最も基板に近い光吸収層の酸化数が大きいと光吸収積層体に十分に光吸収機能を持たせることが難しくなるためである。更には、光吸収積層体6a及び6bのそれぞれ最も遮光基板1に近い光吸収層33a及び33dは略同様の酸化数であることが好ましい。このようにすることで、光減衰膜5の膜設計をする際に、光吸収積層体6aと光吸収積層体6bとで光吸収層の光学定数を略同一として設計できるようになり、膜設計がより簡易となる。例えば、本実施例では、出発材料をTiOとして、下層の光吸収積層体6aにおける第1の光吸収層33aとしてTiO層を形成した後に、上層の光吸収積層体6bにおける第1の光吸収層33dにTiO層を形成している。このため、光吸収積層体間で同じ出発材料を利用でき、生産性が高い。
【0051】
また、下層の光吸収積層体6aの第3の光吸収層33cであるTixOy層(y/x=1.3)の後に、上層の光吸収積層体6bの第一の光吸収層33dに、下層の光吸収積層体6aの第3の光吸収層33cよりも消衰係数の大きいTiO層を形成するため十分な光吸収機能を持たせることができる。また、上層の光吸収積層体6bの第3の光吸収層33fであるTixOy層(y/x=1.4)は、光吸収積層体6a及び光吸収積層体6bのそれぞれ第1の光吸収層33a、33dであるTiO層に対して、0.33以上酸化数が離れているものの、上層の光吸収積層体6bの第2の光吸収層33eであるTixOy層(y/x=1.2)とは、酸化数が0.33以内の値をとっており、光学的性質を調整し易い。
【0052】
本実施例では2つの光吸収積層体を積層させているが、3つ以上の光吸収積層体を有していてもよい。また、光吸収積層体間に誘電体層や光吸収層、他の機能膜などが単層あるいは複数層形成されていてもよい。更に、本実施例の光吸収積層体6a及び6bはそれぞれ3層の光吸収層から成るが、2層以上であればこれに限られるものではない。本実施例の様に光吸収積層体6aと6bを形成する光吸収層は同一の層数であることが、膜設計の簡易性という観点でより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0053】
実施例4のように、複数の光吸収積層体において、光吸収積層体に含まれる光吸収層が遮光基板側から反基板側に向けて徐々に酸化数が大きくなる構成とすることで、光吸収膜に強い光減衰機能を求められても、光吸収積層体内の光吸収層の酸化数の差が大きくなり過ぎることなく、設計が容易で酸化耐性の良好な光吸収膜を得ることができる。
【0054】
(比較例)
実施例2、実施例3、実施例4とそれぞれ同じ層数の光減衰膜で、遮光基板、誘電体層、光吸収層、反射防止膜を実施例2~4と同様に厚さ20μmのSUS、Al2O3、TixOy、MgF2とし、光吸収積層体を構成する全ての光吸収層の酸化数を1.0としたものを、それぞれ比較例2、比較例3、比較例4とする。
【0055】
図10に高温高湿試験(温度:85℃ 湿度:85%)における、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4の光学濃度(OD)の変化量を示す。
図10より実施例2~4は、それぞれ比較例2~4と比較して、高温高湿試験における光学濃度の変化量が小さい。このことより、実施例2~4の光吸収膜を形成する光吸収層の消衰係数変化が小さい、つまり、光吸収層の酸化数変化が小さいことが分かる。すなわち、実施例2と類似な酸化数の構成である実施例1の構成でも同様な効果が得られる。また、上述した比較例の光吸収積層体を構成する全ての光吸収層の酸化数を1.5としたものは、実施例と同等以下の光学濃度変化量とすることができるが、実施例と同様の光学濃度を持たせようとすると、光吸収層の膜厚が厚くなりクラックや反りなどの弊害が発生する虞がある。更に、遮光基板に近い光吸収層が十分な光吸収機能を有していないと、遮光基板に起因する反射を効果的に抑制することが難しくなる。
【0056】
実施例1~4に示した光減衰膜5を遮光基板上に設けることで、環境安定性が良好な絞り羽根、遮光板などの遮光部材を提供することができる。
【0057】
図4は本発明の遮光部材10を搭載した光学系の断面を示したものである。遮光部材10の開口部10aを光線が通過して撮像素子15に結像した像を光電変換して撮像される。本発明の遮光部材10は、光学系に搭載されるレンズ11~14の近辺に配置され、レンズに直接貼り付けられていてもよいし、レンズと独立して設けられていてもよい。光学系に入射した光は、レンズによって撮像素子上に集光させられるが、遮光部材10によって不要な入射光がレンズを通過するのを抑制する。この時、本発明の遮光部材10は反射率が非常に低いため、フレアやゴーストの要因となる迷光が発生しにくい。更に、本発明の遮光部材10は、光減衰膜5に一定以上の膜厚を有する光吸収層3を有していないため、光吸収層内で大きく光学定数が異なることが無く、反射率特性のバラツキが小さい。また、本発明の遮光部材10は、遮光基板1から積層方向側により離れた光吸収層(第2の光吸収層)の酸化数が、より遮光基板10に近い光吸収層(第1の光吸収層)の酸化数よりも大きくなっていることにより環境安定性に優れている。更には、本発明の遮光部材10は、光減衰膜5の光学特性が変化しやすい光吸収層3が化学的に安定である誘電体層2によって挟持されているため、反射率が安定しているという特徴がある。
図4では遮光部材10はレンズ11~14の外に配置されているが、遮光部材10はレンズに内包されるようにしてもよい。
【0058】
本発明に係る光学系は、カメラ用途、例えば車載用カメラ、スマートフォンやタブレット端末用のカメラなど、特に薄型化を求められる撮像装置及び撮像装置を内蔵した機器に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 遮光基板
2 誘電体層(化学量論的金属化合物層)
3、3’、33a~33f 光吸収層(亜化学量論的金属化合物層)
4 反射防止膜
5 光減衰膜
6、6a、6b 光吸収積層体
10 遮光部材
11~14 レンズ
15 撮像素子