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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】水中油型害虫忌避組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 55/10 20060101AFI20240419BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20240419BHJP
   A01N 27/00 20060101ALI20240419BHJP
   A01N 31/14 20060101ALI20240419BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20240419BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240419BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A01N55/10 500
A01N25/30
A01N27/00
A01N31/14
A01N37/02
A01P17/00
A61K8/06
A61K8/92
A61Q17/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019228893
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2020109075
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018248692
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 浩之
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-88599(JP,A)
【文献】特開2017-214312(JP,A)
【文献】特開昭59-39808(JP,A)
【文献】特開昭59-39809(JP,A)
【文献】特開2006-36759(JP,A)
【文献】特開2011-21007(JP,A)
【文献】特表2008-500432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 55/10
A01N 25/30
A01N 27/00
A01N 31/14
A01N 37/02
A01P 17/00
A61K 8/06
A61K 8/92
A61Q 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤を有効量含有しない、水中油型の害虫忌避組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:2質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
【請求項2】
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤を有効量含有しない、水中油型の害虫停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:2質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
【請求項3】
成分(A)がシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(B)がシリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型の害虫忌避組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫、例えば、蚊、ハエ等の飛翔害虫は、人等の動物に病原体を媒介して感染症を引き起こしたり、皮膚炎を引き起こしたりする要因となっている。特に、一部の蚊は、デング熱、ジカ熱、黄熱病、脳炎、マラリア等の病原体を媒介することから、衛生学的に非常に有害な昆虫である。
従来、このような飛翔害虫から身を守るために、殺虫剤を散布したり、皮膚表面に忌避剤を塗布する方法が汎用されており、代表的な忌避剤として、DEET(N,N-ジエチルトルアミド)が一般的に使用されている。
【0003】
蚊等の害虫は、動物の体温を感知する温熱受容体、体臭等の揮発性物質を感知する嗅覚受容体、二酸化炭素を感知する二酸化炭素受容体等の化学受容システムを保有しており、これにより動物を探知するが、DEETは、かかる害虫が有する化学受容システムに変調を与えて害虫の認知感覚を無力化することにより、害虫を忌避する。
しかし、DEETには不快臭があり、また、十分な忌避持続効果を発揮するためには一定量以上の配合が必要となる。さらに、人によってはアレルギーや肌荒れを引き起こすことが知られており、幼児や皮膚の敏感な人に対しては使用量や使用回数が制限されるという問題がある。
【0004】
そこで、忌避成分として天然精油の利用が検討されている。シトロネラ油、レモンユーカリ油、レモングラス油、オレンジ油、カシア油等の天然精油もキャンドルやアロマローションに使用されており、人体への安全性は高い。しかし、それらの害虫に対する忌避効果は十分ではなく、その実用性に問題がある。
【0005】
その他、従来から、害虫用の忌避剤や忌避組成物については、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、フッ素・ポリエーテル共変性シリコーン及び紫外線防御成分を配合した皮膚保護剤に、DEET等の昆虫忌避剤を配合することが記載されている。
特許文献2には、カラン-3,4-ジオールと粘度が25℃において5000cSt以下であるシリコーンオイルとを含有する害虫忌避剤が開示され、また、特許文献3には、シリコーン系化合物を有効成分として含有することを特徴とする防虫剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-59447号公報
【文献】特開平8-81307号公報
【文献】特開2006-36759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
害虫忌避剤のうち、皮膚に施用されるものについては、初期の害虫忌避効果のみならず忌避効果の持続性に優れることや、人体に安全であること、皮膚に塗布した際の使用感の良さ、保存安定性といった性能も備えていることが望まれる。しかし、前述したように、現在利用できる主要な害虫忌避剤は、これらの要望を十分に満たしていないのが現状である。
例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されるDEET等の既存の害虫忌避剤には不快臭があり、人によってはアレルギーや肌荒れを引き起こすことが知られており、また、国によっては、幼児の使用量に制限が設けられている。このような状況から、より人体への安全性が高く、幼児や皮膚の敏感な人が安心して使用することのできる忌避剤が求められている。
また、人の皮膚に塗布して用いるタイプの忌避組成物においては、特許文献3に記載の防虫剤とは異なり、初期の害虫忌避効果のみならず忌避効果の持続性に優れることや、皮膚に塗布した際の感触の良さ、保存安定性といった性能も備えていることが望まれる。
しかし現状では、害虫忌避効果及びその持続性と、皮膚に塗布した際の感触の良さ、並びに保存安定性を両立した組成物は見出されていなかった。
【0008】
本発明は、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れる水中油型の害虫忌避組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の表面張力と粘度を有する不揮発性の液状油性成分、特定の体積中位粒径を有する疎水性粒子、及び水をそれぞれ所定量含有する水中油型の害虫忌避組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]~[7]を提供する。
[1]下記成分(A)~(C)を含有する、水中油型の害虫忌避組成物又は害虫停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
[2]下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子を含む、体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
[3]下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が2以上5以下であり、かつ、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が1質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性の液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が1.5μm以上25μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
[4]下記成分(A)~(D)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が2以上5以下であり、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.2以上1.2以下であり、かつ、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が1質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、及び、炭化水素油、からなる群から選ばれる1種以上の不揮発性の液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が1.5μm以上25μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
[5]成分(B)が、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子を含む、[3]又は[4]の水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
[6][1]~[5]のいずれか1の組成物を人の皮膚表面に塗布する、害虫の忌避方法。
[7][1]~[5]のいずれか1の組成物を害虫の肢に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐ、害虫の停留抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れる水中油型の害虫忌避組成物、水中油型の害虫停留抑制組成物、害虫の忌避方法、及び害虫の停留抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[害虫忌避組成物、害虫停留抑制組成物]
本発明の害虫忌避組成物及び害虫停留抑制組成物(以下、これらを総称して「本発明の組成物」ともいう)は、下記成分(A)~(C)を含有する水中油型の組成物である。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
【0012】
本発明の組成物は特定量の成分(A)~(C)を含有し、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れる水中油型の組成物である。
【0013】
本発明において「害虫に対する忌避効果」とは、害虫が対象物へ接触しても停留せずに直ぐに離れていくことを意味し、本発明の組成物は接触忌避組成物に該当する。すなわち、本発明における害虫忌避効果は、害虫を対象物へ寄せ付けないもの、あるいは害虫が対象物へ寄り付かないもの等のように対象物へ非接触で忌避する忌避剤ないし防虫剤や、害虫に対して殺虫力を有し、害虫を駆除する殺虫剤とは異なる。
本発明の組成物は、それらが塗布又は付着された対象物に蚊等の害虫が降着しても、害虫がその場に停留せず、直ぐに立ち去ることにより、害虫を忌避する効果を奏するものである。具体的には、蚊等の害虫が人などの動物の皮膚に降着した後、刺針を差し込むほどの時間、具体的には1秒間以上、皮膚表面の所定領域内に停留させないという停留抑制効果を有する。かかる効果は、従来にない害虫忌避原理に基づくものであり、しかも肌荒れ等の副作用がなく安全である。したがって本発明の組成物は、害虫停留抑制組成物として用いることができる。
本発明において「害虫に対する忌避持続効果」とは、本発明の組成物を対象物に塗布後、時間が経過しても上記忌避効果が持続することを意味する。なお、以降の記載において、本発明における特に飛翔害虫に対する忌避持続効果を単に「忌避持続効果」と表記する。
【0014】
本発明の組成物は、成分(A)として25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、(a)シリコーン油、(b)エステル油、(c)エーテル油、(d)炭化水素油、(e)脂肪族アルコール、及び(f)多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分を含有する。成分(A)を含有することで、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明者らは、蚊等の飛翔害虫は、肢に濡れが生じた際に降着面から生じる引力を避けるため、肢が濡れる表面への停留を避ける性質を有することを見出した。蚊等の飛翔害虫の肢は疎水性であるため、25℃における表面張力が40mN/m以下の液状油性成分であると飛翔害虫の肢と親和性が高くなり、また、粘度が400mPa・s以下の液状油性成分であると、飛翔害虫の肢が液状油性成分と触れた際、短時間で液状油性成分と飛翔害虫の肢との接触面積が十分に大きくなる。そのため、成分(A)が塗布又は付着された表面に飛翔害虫が降着すると、肢に濡れが生じ、その際、降着面から生じる引力を避け、降着地点に停留せずに飛び去ると考えられる。
なお、本発明における降着とは、蚊等の飛翔害虫が対象物に1秒未満の時間接触することを指す。また、本発明における停留とは、蚊等の飛翔害虫が対象物に1秒以上の時間接触しつづけることを指す。
【0015】
また本発明の組成物は、成分(A)に加え、さらに成分(B)を含有することで、成分(A)による忌避持続効果が向上し、かつ、組成物を皮膚に塗布した際に感触の良いものとなる。
【0016】
<成分(A):不揮発性液状油性成分>
本発明の組成物が含有する成分(A)は、25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、(a)シリコーン油、(b)エステル油、(c)エーテル油、(d)炭化水素油、(e)脂肪族アルコール、及び(f)多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分である。
【0017】
成分(A)は、皮膚に施用し易くし、かつ、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは20℃で液状であり、より好ましくは15℃で液状であり、さらに好ましくは10℃で液状である。
なお、液状油性成分の「液状」とは、米国材料試験協会規格「ASTM D 4359-90:Standard Test Method for Determining Whether a Material is a Liquid or Solid」による液体-固体の判定試験で、液体に判定されるものを意味する。
成分(A)は、忌避持続効果を向上させる観点から、難水溶性又は非水溶性の成分であることが好ましく、具体的には、20℃における水100gに対する溶解量が、好ましくは1g以下、より好ましくは0.5g以下、さらに好ましくは0.1g以下であり、そして、よりさらに好ましくは実質0gである。
【0018】
本発明に用いる成分(A)の液状油性成分は、忌避持続効果を向上させる観点から、不揮発性の液状油性成分を用いる。ここで、本発明における不揮発性の液状油性成分とは、1気圧下、25℃、60分乾燥後の揮発率が、50%以下であるものをいい、好ましくは、1気圧下、25℃、120分乾燥後の揮発率が、50%以下であるものをいう。揮発率の評価は、ドイツ試験規格DIN53249に従って測定され、具体的には、下記の1~4の手順で行われる。
1.直径150mmの丸型ろ紙の重量(P(g))を測定する。
2. ピペットを用いて成分(A)0.3gのサンプルを丸型ろ紙に滴下し、直後にろ紙の重量(W(g))を測定する。
3.通気の無い中、25℃、5分間隔で、約0.001gの正確さによる重量測定で、ろ紙の重量を測定する。2を測定した後、60分経過後に測定したろ紙の重量をW60(g)とする。
4.計算式{((W-P)-(W60-P))/(W-P)}×100で導かれる値を揮発率(%)とする。
揮発率が低いほど、皮膚に塗布した際に、液状油性成分が長時間滞留するため、忌避持続効果が高いものとなる。
2種以上の液状油性成分を用いる場合、液状油性成分の揮発率とは、2種以上の液状油性成分の混合物としての揮発率を意味する。したがって当該混合物の揮発率が前記範囲となる限り、1気圧下、25℃で60分乾燥後の揮発率が50%超の液状油性成分を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
成分(A)の25℃における表面張力は、入手性の観点から、好ましくは15mN/m以上、より好ましくは17mN/m以上であり、そして、忌避持続効果を向上させる観点から、40mN/m以下、好ましくは30mN/m以下、より好ましくは28mN/m以下、さらに好ましくは25mN/m以下、よりさらに好ましくは23mN/m以下、よりさらに好ましくは21mN/m以下である。また、それ自体では25℃における表面張力が40mN/m超のものであったとしても、他の液状油性成分との混合物とすることで、表面張力を下げれば忌避持続効果を発現する。
成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度は、揮発性を抑え、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは1mPa・s以上であり、忌避持続効果を向上させる観点、および長期保存安定性を確保する観点から、400mPa・s以下であり、好ましくは300mPa・s以下、より好ましくは210mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下、よりさらに好ましくは60mPa・s以下、よりさらに好ましくは40mPa・s以下、よりさらに好ましくは30mPa・s以下である。なお、粘度の異なる2種以上の液状油性成分を用いる場合は、これら液状油性成分の混合物としての粘度を意味する。
なお、成分(A)の表面張力、粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0020】
(a)シリコーン油
シリコーン油としては、忌避持続効果を向上させる観点から、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール(末端にヒドロキシ基を有するジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
変性シリコーンとしては、アミノ変性シリコーン(アミノ基を有するジメチルポリシロキサン)、ポリエーテル変性シリコーン、グリセリル変性シリコーン、アミノ誘導体シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0021】
シリコーン油の中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、ジメチルポリシロキサンがさらに好ましい。
【0022】
ジメチルポリシロキサンとしては、直鎖状ジメチルポリシロキサン及び環状ジメチルポリシロキサンからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点から、直鎖状ジメチルポリシロキサンがより好ましい。
直鎖状ジメチルポリシロキサンの市販品例としては、信越化学工業(株)のKF-96シリーズ、東レ・ダウコーニング(株)のSH200Cシリーズ、「2-1184 Fluid」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社の「Silsoft DML」、「Element14 PDMS 5-JC」、「Element14 PDMS 10-JC」、「Element14 PDMS 20-JC」等が挙げられる。
【0023】
(b)エステル油
エステル油としては、忌避持続効果を向上させる観点から、下記一般式(1)~(3)のいずれかで表されるエステル油、及び下記一般式(4)で表されるジアルキルカーボネート化合物が好ましい。
【0024】
1-COO-R2 (1)
一般式(1)において、R1は、水酸基が置換していてもよく、炭素数7以上23以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族炭化水素基を示し、R2は炭素数1以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。
1がアルキル基の場合、忌避持続効果を向上させる観点から、炭素数は好ましくは7以上、より好ましくは9以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは21以下、より好ましくは17以下である。また、R1が芳香族炭化水素基の場合、忌避持続効果を向上させる観点から、炭素数は好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
2は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは炭素数が20以下、より好ましくは18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。また、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、R1又はR2の少なくとも一方が、分岐アルキル基であることが好ましい。
【0025】
一般式(1)で表されるエステル油としては、2-エチルヘキサン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、オクタン酸イソデシル、オクタン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸セテアリル、プロピルへプタン酸オクチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸イソブチル、エルカ酸オレイル、安息香酸アルキル(アルキルの炭素数12~15)、及びナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル等からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0026】
(R3O)-CH2CH(OR4)-CH2(OR5) (2)
一般式(2)において、R3、R4及びR5は、各々独立に、水素原子、又は下記一般式(2-1)で示される基であって、全てが水素原子であることはない。
-CO-R6 (2-1)
(式中、R6は、水酸基が置換していてもよい炭素数7以上23以下、好ましくは17以下のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
一般式(2)で表されるエステル油としては、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリルからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらホホバ油、オリーブ油、ひまわり油、大豆油、落花生油、菜種油、アーモンド油、パーム油、ココヤシ油、ひまし油、小麦胚芽油、ぶどう種油、あざみ油、宵待草油、マカデミアナッツ油、とうもろこし胚芽油、及びアボカド油等の植物由来のエステル油であっても良い。
【0027】
7O-(AO)m-COR8 (3)
一般式(3)において、R7は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、R8は炭素数1以上23以下のアルキル基又はアルケニル基を示す。AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、mは1以上50以下の平均付加モル数を表す。
7は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは炭素数が6以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下の芳香族炭化水素基、より好ましくはベンジル基である。
8は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは炭素数が7以上、より好ましくは11以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは21以下、より好ましくは15以下であるアルキル基である。
AO基は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくはプロピレンオキシ基であり、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、mは好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下である。
一般式(3)で表されるエステル油としては、ベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とミリスチン酸のエステル(クローダ社「クロダモルSTS」)、ベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体と2-エチルヘキサン酸のエステル(クローダ社「クロダモルSFX」)からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0028】
9-O-(CH2CH2O)v-CO-(OCH2CH2)w-OR10 (4)
一般式(4)において、R9及びR10は、各々独立に、炭素数6以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、v及びwは、各々独立に、0又は1以上50以下の平均付加モル数を示す。
9及びR10は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは炭素数8以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは18以下、より好ましくは12以下のアルキル基である。
v及びwは、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは0又は1以上5以下の数であり、より好ましくは0である。
一般式(4)で表されるジアルキルカーボネート化合物としては、ジオクチルカーボネート(コグニス社「セチオールCC」)等が挙げられる。
【0029】
上記以外のエステル油としては、多価カルボン酸とアルコールとのエステルや、グリセリンを除く多価アルコールと脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
その具体例としては、ダイマー酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、ジカプリン酸プロパンジオール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点から、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステルが好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール及びジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
上記の(b)エステル油の中では、一般式(1)で表されるエステル油、及びネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステルからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0030】
(c)エーテル油
エーテル油としては、忌避持続効果を向上させる観点から、下記一般式(5)で表されるジアルキルエーテル化合物、又は下記一般式(6)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物が好ましい。
【0031】
11-O-R12 (5)
一般式(5)において、R11及びR12は、各々独立に、炭素数6以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族炭化水素基を示す。
11及びR12は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくはアルキル基であり、その炭素数は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは8以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下である。
一般式(5)で表されるジアルキルエーテル化合物としては、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル(コグニス社「セチオールOE」)、ジカプリリルエーテル、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテル(花王(株)「ASE-166K」)等が挙げられる。
【0032】
13-O-(PO)r(EO)s-H (6)
一般式(6)において、R13は炭素数6以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示す。rは0.1以上15以下の平均付加モル数を示し、sは0以上10以下の平均付加モル数を示す。sが0でない場合、PO及びEOの付加形式は、ランダムであってもブロックであってもよい。
13の炭素数は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは8以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは12以下である。
平均付加モル数rは、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは13以下、より好ましくは10以下であり、平均付加モル数sは、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0である。
一般式(6)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物としては、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキシ基の平均付加モル数rが3以上10以下である、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル、及びポリオキシプロピレンラウリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
上記の(c)エーテル油の中では、忌避持続効果を向上させる観点から一般式(5)で表されるエーテル油が好ましい。
【0033】
(d)炭化水素油
炭化水素油としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、イソヘキサデカン、イソエイコサン、水添ポリイソブテン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、及びシクロパラフィン等が挙げられる。
これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、流動パラフィン、流動イソパラフィン、及びスクワランからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0034】
(e)脂肪族アルコール
脂肪族アルコールとしては、1価の鎖状又は環状脂肪族アルコールが挙げられ、忌避持続効果を向上させる観点から、1価の鎖状脂肪族アルコールが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数は、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは14以上、より好ましくは18以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは28以下、より好ましくは24以下、さらに好ましくは22以下である。
前記脂肪族アルコールは、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよく、飽和及び不飽和のいずれであってもよいが、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、分岐鎖の脂肪族飽和アルコールが好ましい。
直鎖脂肪族アルコールとしてはオレイルアルコール等が挙げられ、分岐鎖脂肪族飽和アルコールとしては、ブチルオクタノール、ブチルデカノール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、分岐鎖脂肪族飽和アルコールが好ましく、ヘキシルデカノール、及びオクチルドデカノールからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0035】
(f)多価アルコール
多価アルコールとしては、炭素数2以上の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、炭素数4以上の糖アルコール等が挙げられ、飽和及び不飽和のいずれであってもよいが、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、炭素数2以上10以下の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、及び炭素数4以上10以下の糖アルコールからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
多価アルコールのうち、炭素数2以上の脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール等の2価アルコール等が挙げられる。
また、前記糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、マンニトール等が挙げられる。
【0036】
前記の液状油性成分の中では、忌避持続効果を向上させる観点から、(a)シリコーン油、(b)エステル油、(c)エーテル油、及び(d)炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、(a)シリコーン油、(b)エステル油、及び(d)炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、(a)シリコーン油及び(b)エステル油からなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、(a)シリコーン油がよりさらに好ましい。(a)シリコーン油のうち、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはジメチルポリシロキサンであり、よりさらに好ましくは直鎖状ジメチルポリシロキサンである。
【0037】
(成分(A)の含有量)
本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、13質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点、及び組成物の長期保存安定性を確保する観点から、50質量%以下であり、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、13~50質量%であり、好ましくは20~40質量%であり、より好ましくは25~40質量%、さらに好ましくは25~35質量%である。
【0038】
<成分(B):疎水性粒子>
本発明の組成物は、成分(B)として、体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子を含有する。本発明の組成物は、成分(B)を含有することで、成分(A)による忌避持続効果が向上し、かつ、組成物を皮膚に塗布した際に感触の良いものとなる。
【0039】
本明細書において「疎水性粒子」とは、23℃における粒子表面のぬれ張力が70mN/m以下であるものを意味する。また「親水性粒子」とは、粒子表面の当該ぬれ張力が70mN/m超であるものを意味する。
成分(B)の粒子が特定の粒径を有する疎水性粒子であることで、忌避持続効果が向上するとともに、皮膚に塗布した際に感触の良い組成物が得られる。本発明の組成物に用いる成分(B)としては、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、23℃におけるぬれ張力は60mN/m以下が好ましく、50mN/m以下がより好ましい。粒子表面のぬれ張力は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0040】
成分(B)の疎水性粒子は、前記疎水性を呈するものであれば有機粒子、無機粒子、及びこれらの混合物のいずれでもよく、通常、化粧料に配合されるものを使用できる。これらの中でも、忌避持続効果を向上させる観点、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点、及び組成物の長期保存安定性を確保する観点からは、成分(B)は疎水性有機粒子を含むことが好ましい。
【0041】
疎水性有機粒子を構成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル-シリコーン共重合樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、セルロース等で構成された樹脂が挙げられる。これらの疎水性有機粒子は、架橋型樹脂粒子でもよく、非架橋型樹脂粒子でもよい。また、上記樹脂で構成された樹脂粒子の表面を疎水化処理した粒子でもよい。
上記の中でも、疎水性有機粒子としては、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点からは、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びセルロースからなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子が好ましく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子がより好ましく、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子がさらに好ましい。
【0042】
疎水性有機粒子を構成するアクリル樹脂としては、アクリル系モノマーの単独重合体又は共重合体が挙げられる。アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を指す。
(メタ)アクリル酸エステルの中でも、より疎水性を高める観点からは(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキルの炭素数は、好ましくは1以上18以下、より好ましくは1以上16以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0043】
上記アクリル樹脂は、上記(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の、多官能(メタ)アクリレートをさらに共重合させた架橋型アクリル樹脂でもよい。
アクリル樹脂としては、具体的にポリメタクリル酸メチル、アクリル酸/アクリル酸メチル共重合体が挙げられ、架橋型アクリル樹脂としては、アクリル酸ブチル・ジメタクリル酸エチレングリコール・メタクリル酸ナトリウム共重合体、メタクリル酸ラウリル・ジメタクリル酸エチレングリコール・メタクリル酸ナトリウム共重合体(以下「(メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸Na)クロスポリマー」と表記することがある。)等が挙げられる。
【0044】
疎水性有機粒子のうち、アクリル樹脂粒子としては、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、ポリメタクリル酸メチル、及び、(メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸Na)クロスポリマーからなる群から選ばれる1種以上のアクリル樹脂からなる粒子が好ましい。アクリル樹脂粒子の市販品としては、特開2006-225311号公報に「架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体」として記載されている粒子、アイカ工業(株)のガンツパールシリーズ等が挙げられる。
【0045】
疎水性有機粒子を構成するシリコーン樹脂としては、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン;ポリメチルシルセスキオキサン等のポリオルガノシルセスキオキサン;及びこれらの複合材料、並びに、オルガノポリシロキサン鎖を含有する共重合体;等が挙げられる。これらの中でも、忌避持続効果を向上させ、かつ皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、メチルポリシロキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、及びこれらの複合材料からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
また、上記シリコーン樹脂を、ジビニルジメチルポリシロキサン(ビニルジメチコン)、フェニルビニルジメチルポリシロキサン(フェニルビニルジメチコン)等で架橋した架橋型シリコーン樹脂を用いることもできる。架橋型シリコーン樹脂としては、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。
疎水性有機粒子のうち、シリコーン樹脂粒子としては、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、架橋型シリコーン樹脂粒子が好ましく、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー及び(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマーからなる群から選ばれる1種以上のシリコーン樹脂からなる粒子がより好ましい。
シリコーン樹脂粒子の市販品としては、信越化学工業(株)のKSPシリーズ、KMPシリーズ、「KSG-16」、「シリコーン X-52-1621」等が挙げられる。
【0046】
また、疎水性無機粒子としては、忌避持続効果を向上させ、かつ皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、ベントナイト、マイカ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機粒子表面を疎水化処理した粒子が好ましいものとして挙げられる。
【0047】
成分(B)の疎水性粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状、板状、柱状、針状等が挙げられる。これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、球状粒子が好ましい。また、粒子表面に凹凸を有するものや、多孔質のものを用いてもよい。
【0048】
成分(B)の疎水性粒子は、皮膚に塗布した際の感触を良好なものとする観点、及び組成物の長期保存安定性を確保する観点から、体積中位粒径(D50)が0.1μm以上であり、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、よりさらに好ましくは3.0μm以上である。また、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、体積中位粒径は40μm以下であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、さらに好ましくは25μm以下、よりさらに好ましくは20μm以下である。そして、成分(B)の体積中位粒径は、0.1~40μmであり、好ましくは0.5~30μmであり、より好ましくは1.0~27μm、さらに好ましくは1.5~25μm、よりさらに好ましくは3.0~20μmである。
なお、本発明における体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して、50%になる粒径を意味する。
【0049】
成分(B)として2種以上の粒子を用いる場合、成分(B)の体積中位粒径とは、全粒子の混合物の体積中位粒径を意味し、具体的には以下の式(a)で求めることができる。
【数1】

PiD50:粒子を構成する粒子群Piの体積中位粒径(D50)(μm)
Xi:粒子を構成する粒子群Piの質量比(%)
ρi:粒子を構成する粒子群Piの密度(g/cm
例えば、樹脂粒子の密度は1.18g/cm、シリカの密度は2.20g/cm、酸化チタンの密度は4.17g/cmである。
体積中位粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
【0050】
本発明における成分(B)は忌避持続効果を向上し、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定される成分(B)の粒子径の分布曲線において、粒子全体の体積に対する、45μm以上の粒子径の体積割合が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。本発明の組成物は、このような粒度分布を有する粒子を含有することにより、組成物に構造粘性が付与され、皮膚に塗布した際の感触を良いものとしつつも、忌避持続時間をも向上させることが可能となる。成分(B)の粒度分布は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0051】
(成分(B)の含有量)
また、本発明の組成物中の成分(B)の含有量は、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、0.5質量%以上であり、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上であり、よりさらに好ましくは7質量%以上であり、ことさらに好ましくは8質量%以上である。また、忌避持続効果を向上させる観点から、35質量%以下であり、好ましくは27質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下であり、さらに好ましくは16質量%以下、よりさらに好ましくは13質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(B)の含有量は、0.5~35質量%であり、好ましくは2~27質量%、より好ましくは4~27質量%であり、さらに好ましくは6~18質量%であり、よりさらに好ましくは7~16質量%であり、よりさらに好ましくは7~13質量%であり、ことさらに好ましくは8~13質量%である。
【0052】
<成分(C):水>
本発明の組成物は、成分(C)として水を含有する。組成物中の成分(C)の含有量は、水中油型の組成物とする観点で、30質量%以上であり、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。また、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、86.5質量%以下であり、好ましくは78質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。組成物中の成分(C)の含有量の具体的範囲は、30~86.5質量%であり、好ましくは40~78質量%、より好ましくは40~70質量%であり、さらに好ましくは40~65質量%であり、よりさらに好ましくは45~65質量%であり、よりさらに好ましくは50~65質量%である。なお、成分(A)~(C)の合計量の上限は100質量%である。
【0053】
本発明の組成物において、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]は、忌避持続効果を向上させる観点、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点、及び長期保存安定性を確保する観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上、よりさらに好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは7以下、よりさらに好ましくは5以下である。
また本発明の組成物において、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]は、忌避持続効果を向上させる観点、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点、及び長期保存安定性を確保する観点から、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上、よりさらに好ましくは0.4以上であり、同様の観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.0以下、よりさらに好ましくは0.8以下である。
【0054】
(界面活性剤)
本発明の組成物は、さらに、水中油型の組成物にする観点から、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、公知のものが使用でき、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の何れでも用いることができる。これらは単独で用いても2種類以上併用してもよい。
本発明の組成物中の界面活性剤の含有量は、水中油型の組成物にする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0055】
(成分(D):増粘剤)
本発明の組成物は、さらに成分(D)として増粘剤を含有することができる。皮膚への塗布後の流動性を調整することにより忌避持続効果を向上させる観点、各成分を良好に分散又は溶解させて皮膚への優れた塗布性を確保できる観点、及び組成物の長期保存安定性を確保する観点から、当該増粘剤としては、適度な乳化能(すなわち、界面活性能)を有するものが好ましい。本発明において、乳化能及び増粘効果を有する剤は増粘剤とする。具体的には、成分(D)は、水溶性のカチオン性高分子、アニオン性高分子、ノニオン性高分子、及び、両性高分子又は双極性高分子が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物中の成分(D)の含有量は、上記効果を得る観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。なお、本発明の組成物が界面活性能を有する増粘剤を含有する場合、それ以外の界面活性剤の含有量は、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0057】
<その他の成分>
本発明の組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の成分、例えば、防腐剤、着色剤、保湿剤、香料、pH調整剤、ビタミン類、血行促進剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の薬効成分や生理活性成分を含有することもできる。これらの各成分は他の用途としても使用することができ、例えば、香料を殺菌剤とし使用することも可能である。
【0058】
本発明の組成物は、害虫忌避に対して、成分(A)を忌避有効成分として含有し、それ以外の害虫忌避剤を有効量含まないことが、使用者のアレルギーや肌荒れを防止するといった観点から好ましい。
本発明の組成物は、後述する既存の害虫忌避剤を有効量含まなくても、忌避持続効果を有する。言い換えれば、本発明の組成物が、成分(A)以外の害虫忌避剤を有効量下限値未満で含有する場合であっても、害虫が、降着してもその場に停留しない停留抑制効果が発現されていれば、本発明の停留抑制効果が発現されていることになる。すなわち、本発明の組成物は、成分(A)以外の害虫忌避剤を実質的に含有しなくてもよい。
【0059】
ここで、成分(A)以外の害虫忌避剤を「有効量含まない」とは、一般的には、成分(A)以外の既存の害虫忌避剤の含有量が、本発明の組成物中、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは4質量%以下、よりさらに好ましくは3質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下であることを意味する。
既存の害虫忌避剤の有効量は、例えば、各忌避剤製品の製造会社等により公表されている最小有効量等を参考にすることができる。
より具体的には、後述する既存の害虫忌避剤であるDEET:N,N-ジエチルトルアミドの有効量は、4質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、イカリジン:1-メチルプロピル-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピぺリジンカルボキシレートの有効量は4質量%以上、IR3535:3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステルの有効量は4質量%以上、シトロネラ油の有効量は10質量%以上である。
【0060】
また、既存の害虫忌避剤の有効量は、以下に記載する忌避評価試験で測定することもできる。
(忌避評価試験)
メッシュで囲われたプラスチックケージ(30×30×30cm:BugDorm-1ケージ)に、交尾済みのメス蚊(ヒトスジシマカ)100匹を入れる。クアラテックスーパーロング手袋(50cm)(アズワン(株)、Catalog number : 3-6432-02)の手首部分より約15cm肘側に縦5cm×横4cm長方形型の切り込みを入れたものに、腕を挿入する。切り込みからの露出部に何も塗布しない状態で、ケージに腕を挿入し、2分間以内に、肌露出部で2か所、蚊に降着された後、1秒間以上停留されることを確認する。1秒間以上停留されない場合は、新しく蚊を用意する。以下、1秒以上の停留を単に停留と表現する。
害虫忌避剤の溶液である評価サンプルの試験は、肌露出部(5cm×4cm)に、該評価サンプルを2mg/cmで塗布できるようにエタノールで濃度を調整して行う。
露出部にピペットマンを用いて、濃度を調整した液を乗せ、肌露出部全体に行き渡るように塗布する(必要溶液量:40~50μl)。その後3分間静置し、試験を開始する。
試験は、該評価サンプルを塗布した腕をケージに2分間挿入し、停留数をカウントすることで行う。トータルで2回停留された時点で試験を終了とし、試験終了まで30分間毎に2分間ずつ腕を挿入する試験を行う。30分目に2回目の停留がされた場合は、忌避効果持続時間を0分間と判定し、60分目で2回目の停留がされた場合は30分間の忌避効果持続時間と判定する。試験は3人の被験者にて行い、平均の忌避効果持続時間を算出する。
本試験において、平均2時間以上の忌避効果持続時間を示す害虫忌避剤の濃度を、その害虫忌避剤の有効濃度(有効量)とすることができる。
また、本発明の組成物は、既存の害虫忌避剤を有効量含まなくても、忌避持続効果を有することから、むしろ、成分(A)以外の害虫忌避剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明の組成物中、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、よりさらに好ましくは実質0質量%である。
【0061】
成分(A)以外の既存の害虫忌避剤としては、DEET、イカリジン、ジメチルフタレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、カラン-3,4-ジオール、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、シトロネロール、ユーカリプトール、α-ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、2-ウンデカノン等の公知の害虫忌避化合物の他、シトロネラ油、レモングラス油等の忌避精油等が挙げられる。「忌避精油」とは、植物に含まれる成分を抽出、蒸留、又は圧搾等により得られる精油(エッセンシャルオイル)のうち害虫忌避効果を有するものを意味する。
【0062】
本発明の組成物は、常法により製造できる。例えば、予め成分(B)、(C)を配合し、ホモジナイザー等の撹拌装置を用いて混合した後、成分(A)、及び必要に応じその他の成分を配合し、撹拌することにより製造することができる。
【0063】
本発明の組成物が忌避対象とする害虫に特に制限はないが、飛翔害虫に対してより効果的である。
「飛翔害虫」とは、飛行しながら人等の動物に近づき、その皮膚から吸血する害虫、吸血はしなくても飛翔しながら病原細菌等を媒介する害虫、飛行すること自体が人間に対し不快感を与える害虫等をいう。
飛翔害虫の具体例としては、アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、シナハマダラカ、トウゴウヤブカ、ガンビエハマダラカ、ステフェンスハマダラカ等の蚊;セスジユスリカ、アカムシユスリカ等のユスリカ;クロオオブユ、キアシオオブユ、アオキツメトゲブユ等のブユ;イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ、クロバエ、ニクバエ、タネバエ、タマネギバエ、ミバエ、ショウジョウバエ、チョウバエ、チェチェバエ、サシバエ等のハエ;シクロアブ、ウシアブ、メクラアブ、ゴマフアブ等のアブ;トクナガクロヌカカ、オオシマヌカカ、ニワトリヌカカ等のヌカカ;キイロスズメバチ、セグロアシナガバチ、ミツバチ等のハチ等が挙げられる。
本発明の組成物は、これらの中でも、特に蚊に対する忌避持続効果が優れている。前述した蚊の中でも、アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカに対する忌避持続効果に優れる。
【0064】
[害虫の忌避方法、停留抑制方法]
本発明の害虫の忌避方法は、本発明の害虫忌避組成物を、人の皮膚表面に塗布することにより行われる。
また、本発明の害虫の停留抑制方法は、本発明の害虫停留抑制組成物を、害虫、特に飛翔害虫の肢に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐものである。以下、これらの方法を総称して「本発明の方法」ともいう。
【0065】
ここで、「皮膚表面に塗布する」とは、皮膚表面に手などで組成物を直接塗布することだけでなく、噴霧等により組成物を皮膚表面に付着させることを含む。
皮膚表面に塗布する組成物の量は、忌避持続効果を向上させる観点から、1cmあたり、好ましくは0.1mg以上であり、より好ましくは0.2mg以上、さらに好ましくは0.25mg以上である。また、塗布量の上限は、べたつき抑制及び経済性の観点から、1cmあたり、好ましくは10mg以下、より好ましくは8mg以下、さらに好ましくは5mg以下である。
【0066】
本発明の組成物は、蚊に対する忌避持続効果に優れ、安全で、皮膚に塗布した際の感触が良く、かつ長期保存安定性にも優れる忌避組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物であることが好ましい。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
【0067】
本発明の組成物は、蚊に対する忌避持続効果に優れ、安全で、皮膚に塗布した際の感触が良く、かつ長期保存安定性にも優れる忌避組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物であることがより好ましい。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子を含む、体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
【0068】
本発明の組成物は、蚊に対する忌避持続効果に優れ、安全で、皮膚に塗布した際の感触が良く、かつ長期保存安定性にも優れる忌避組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が2以上5以下であり、かつ、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が1質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物であることが好ましい。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性の液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が1.5μm以上25μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
【0069】
本発明の組成物は、蚊に対する忌避持続効果に優れ、安全で、皮膚に塗布した際の感触が良く、かつ長期保存安定性にも優れる忌避組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(D)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が2以上5以下であり、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.2以上1.2以下であり、かつ、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が1質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物であることが好ましい。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、及び、炭化水素油、からなる群から選ばれる1種以上の不揮発性の液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が1.5μm以上25μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
【0070】
上記組成物において、成分(B)は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子を含むことがより好ましい。
【0071】
本発明の害虫の忌避方法は、本発明の組成物が塗布又は付着された対象物に蚊等の害虫が降着しても、害虫がその場に停留しないことによって、害虫を忌避する方法であり、具体的には、蚊等の害虫が、人等の動物の皮膚に降着した後、刺針を差し込むことができる程度の時間、具体的には例えば1秒間以上、動物の皮膚表面に滞在させないという停留抑制効果を有する。かかる効果は、従来にない害虫忌避原理に基づくものであり、しかも肌荒れ等の副作用がなく安全である。
【0072】
上述の実施形態に関し、本発明はさらに以下の実施態様を開示する。
<1>
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が1以上50以下である、水中油型の害虫忌避組成物又は害虫停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性の液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
<2>
成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは30以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下、よりさらに好ましくは5以下である、<1>に記載の組成物。
<3>
成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.15以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上であり、1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下である、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4>
成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、よりさらに好ましくは2質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の組成物。
<5>
成分(A)の25℃における表面張力が15mN/m以上、好ましくは17mN/m以上であり、30mN/m以下、好ましくは28mN/m以下、より好ましくは25mN/m以下、さらに好ましくは23mN/m以下、よりさらに好ましくは21mN/m以下である、<1>~<4>のいずれか1に記載の組成物。
<6>
成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が、1mPa・s以上であり、300mPa・s以下、好ましくは210mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは60mPa・s以下、よりさらに好ましくは40mPa・s以下、よりさらに好ましくは30mPa・s以下である、<1>~<5>のいずれか1に記載の組成物。
<7>
成分(A)がシリコーン油、エステル油、エーテル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上、好ましくはシリコーン油、エステル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはシリコーン油及びエステル油からなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはシリコーン油である、<1>~<6>のいずれか1に記載の組成物。
<8>
成分(A)の含有量が20質量%以上、好ましくは25質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である、<1>~<7>のいずれか1に記載の組成物。
<9>
成分(B)が好ましくはアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル-シリコーン共重合樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、セルロースからなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子、より好ましくはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びセルロースからなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子、さらに好ましくはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子、よりさらに好ましくはアクリル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子を含む、<1>~<8>のいずれか1に記載の組成物。
<10>
成分(B)の含有量が好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上、よりさらに好ましくは7質量%以上であり、ことさらに好ましくは8質量%以上であり、好ましくは27質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは16質量%以下、よりさらに好ましくは13質量%以下である、<1>~<9>のいずれか1に記載の組成物。
【0073】
<11>
成分(B)の体積中位粒径が好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、よりさらに好ましくは3.0μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、さらに好ましくは25μm以下、よりさらに好ましくは20μm以下である、<1>~<10>のいずれか1に記載の組成物。
<12>
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定される成分(B)の粒子径の分布曲線において、粒子全体の体積に対する、45μm以上の粒子径の体積割合が15%以下、好ましくは10%以下である、<1>~<11>のいずれか1に記載の組成物。
<13>
成分(C)の含有量が40質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、78質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である、<1>~<12>のいずれか1に記載の組成物。
<14>
さらに成分(D)として増粘剤を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下含有する、<1>~<13>のいずれか1に記載の組成物。
<15>
成分(D)として水溶性のカチオン性高分子、アニオン性高分子、ノニオン性高分子、及び、両性高分子又は双極性高分子からなる群から選ばれる1種以上を含有する、<14>に記載の組成物。
<16>
成分(A)以外の害虫忌避剤がDEET、イカリジン、3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、及びシトロネラ油からなる群から選ばれる1種以上である、<4>~<15>のいずれか1に記載の組成物。
<17>
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)シリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子を含む、体積中位粒径が0.1μm以上40μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
<18>
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が2以上5以下であり、かつ、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が1質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性の液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が1.5μm以上25μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
<19>
下記成分(A)~(D)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が2以上5以下であり、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.2以上1.2以下であり、かつ、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が1質量%以下である、水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、及び、炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上の不揮発性の液状油性成分:13質量%以上50質量%以下
(B)体積中位粒径が1.5μm以上25μm以下の疎水性粒子:0.5質量%以上35質量%以下
(C)水:30質量%以上86.5質量%以下
(D)増粘剤:0.05質量%以上3質量%以下
<20>
成分(B)が、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂で構成された樹脂粒子を含む、<18>又は<19>に記載の水中油型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
<21>
<1>~<20>のいずれか1に記載の組成物を人の皮膚表面に塗布する、害虫の忌避方法。
<22>
<1>~<20>のいずれか1に記載の組成物を害虫の肢に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐ、害虫の停留抑制方法。
【実施例
【0074】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0075】
(液状油性成分の表面張力)
液状油性成分の表面張力は、自動表面張力計「Tensiometer K100」(KRUSS社)を使用し、白金プレートを用いたウィルヘルミー法にて、25℃の環境下で測定される表面張力である。
【0076】
(液状油性成分の粘度)
JIS K7117-1:1999によるB形回転粘度計として、東機産業(株)「Viscometer TVB-10」を使用した。被測定成分は、それぞれの試料ごとに粘度の値が大きく異なるため、一つの測定条件で全てを正確に測定するのは困難である。そこで、2種類のローターを使用して測定した。粘度は、まず、ローターM2を使用して25℃環境下で、回転速度12rpmで測定した。このとき、2500mPa・s以上の粘度を持つ成分は回転速度6rpmで再度測定し、粘度の値を得た。
一方、20mPa・s以下の粘度を持つ成分は、低粘度用ローターであるLアダプターを使用して、23℃環境下で、回転速度を30rpmに設定して再度測定し、粘度の値を得た。
【0077】
(粒子表面のぬれ張力)
富士フイルム和光純薬(株)のぬれ張力試験用混合液を用いて、以下のように測定した。
23℃環境下で、ぬれ張力試験用混合液No.70(表面張力70mN/m)を0.2mL、容器に計量した。その後、測定対象の粒子0.01gを、静かに前記混合液に投入した。
粒子を投入後30秒してから、粒子が前記混合液に濡れたかどうかを目視で確認し、濡れた場合は粒子表面のぬれ張力が70mN/m以下であると判定した。水の表面張力は70mN/mであるため、粒子表面のぬれ張力が70mN/m以下であれば疎水性と判断した。
粒子表面が前記混合液に濡れるとは、粒子に混合液が浸透することを意味する。粒子が混合液に濡れない状態とは、粒子と混合液を混合しても、粒子が混合液と分離する(あるいは、はじかれる)ことを意味する。
なお、各粒子表面のぬれ張力は、下記ぬれ張力試験用混合液を用いて上述の試験をすることで測定した。例えば、粒子表面の表面張力が22.6mN/mであるとは、上述の試験で、ぬれ張力試験用混合液としてNo.25.4(表面張力25.4mN/m)を用いたときは、粒子表面が該混合液に濡れず、ぬれ張力試験用混合液としてNo.22.6(表面張力22.6mN/m)を用いたときは、粒子表面が該混合液に濡れたことを意味する。
<富士フイルム和光純薬(株)のぬれ張力試験用混合液>
No.70(表面張力70mN/m)、No.67(表面張力67mN/m)、No.64(表面張力64mN/m)、No.62(表面張力62mN/m)、No.60(表面張力60mN/m)、No.59(表面張力59mN/m)、No.52(表面張力52mN/m)、No.50(表面張力50mN/m)、No.48(表面張力48mN/m)、No.46(表面張力46mN/m)、No.44(表面張力44mN/m)、No.42(表面張力42mN/m)、No.40(表面張力40mN/m)、No.38(表面張力38mN/m)、No.36(表面張力36mN/m)、No.34(表面張力34mN/m)、No.32(表面張力32mN/m)、No.30(表面張力30mN/m)、No.27.3(表面張力27.3mN/m)、No.25.4(表面張力25.4mN/m)、No.22.6(表面張力22.6mN/m)
【0078】
(体積中位粒径)
粒子の体積中位粒径(D50)は、表1に示す(B2)~(B10)、(b2)及び(b3)の粒子に関しては、(株)堀場製作所のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-920」を用い、エタノール/水(99.5質量%/0.5質量%)を分散媒として測定した。また、(B2)、(B4)、(B7)、(B9)、(b2)の粒子を測定した際の相対屈折率は1.05-0.000iを用い、(B3)、(B5)、(B6)、(B8)の粒子を測定した際の相対屈折率は1.10-0.000iを用いた。
また、表1に示す(B1)、(b1)の粒子に関しては、(株)堀場製作所の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB-500」を用い測定した。(B1)の粒子に関しては、成分(A)のシリコーン6cs(A1)を分散媒とし、相対屈折率を1.05-0.000iとして測定した。また、(b1)の粒子に関しては、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(BASF社「ユビナール MC80」)を分散媒とし、相対屈折率を2.00-0.000iとして測定した。また、先述したように2種以上の粒子を用いる場合、以下の式(a)を用いて体積中位粒径を測定した。
【数2】

PiD50:粒子を構成する粒子群Piの体積中位粒径(D50)(μm)
Xi:粒子を構成する粒子群Piの質量比(%)
ρi:粒子を構成する粒子群Piの密度(g/cm
なお、樹脂粒子の密度は1.18g/cm、シリカの密度は2.20g/cm、酸化チタンの密度は4.17g/cmとした。
【0079】
(粒度分布)
粒子の粒度分布は、表1に示す(B2)~(B9)の粒子に関しては、エタノール/水(99.5質量%/0.5質量%)を分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器((株)堀場製作所製「LA-920」、測定条件:粒子径基準(体積))で測定した。(B2)、(B4)、(B7)、(B9)の粒子を測定した際の相対屈折率は1.05-0.000iを用い、(B3)、(B5)、(B6)、(B8)の粒子を測定した際の相対屈折率は1.10-0.000iを用いた。その際、測定で得られたチャートにおいて、各粒子径の範囲の面積を求め、その面積比から粒子全体の体積に対する45μm以上の粒子径の体積割合を求めた。
表1に示す(B1)の粒子に関しては、(株)堀場製作所の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB-500」を用い測定した。成分(A)のシリコーン6cs(A1)を分散媒として、動的光散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製作所「LB-500」、測定条件:粒子径基準(体積)、相対屈折率1.05-0.000i)で同様に測定した。
【0080】
(害虫に対する忌避持続効果の評価)
(I)ヒトスジシマカの準備
ヒトスジシマカは、住友テクノサービス(株)より購入したヒトスジシマカ卵を27℃、相対湿度(RH)60%の条件下ケージ内で飼育し、成長させて成虫としたものを使用した。
透明なプラスチックパンに水を1cm程度張り、購入した卵が産み付けられているろ紙を入れ、蛹へと孵化させた。その後、孵化させた蛹に対して、日々、幼虫用餌として熱帯魚用エサ(テトラミン)を与えた。1週間後、蛹をスポイトで回収し、20mL用プラスチックカップに移し、網を張ったケージに移した。蛹に対して、成虫用の餌として、10質量%スクロースを25mLプラスチックチューブに入れたものを与えた。羽化後、5日間オスとメスを同じケージで飼育することで交尾を行わせた。飼育5日後、成虫を吸虫管を用いて集め、氷上で5分間麻酔後に目視下でオスとメスを分け、メスのみを回収し、評価に用いた。
【0081】
(II)忌避効果持続時間の測定
約100匹のメスヒトスジシマカをプラスチックケージ(30×30×30cm)に移し、27℃、相対湿度(RH)60%の条件下、試験を実施した。被験者の腕が覆われる大きさのゴム製手袋の前腕部に4×5cmの大きさの穴をあけ、各例の組成物を2mg/cmとなるように均一に塗布した。
その後、ヒトスジシマカの活性化のために、プラスチックゲージに息を5秒間吹きかけた。試験は、組成物を塗布した直後の前腕部を、プラスチックゲージに入れることでヒトスジシマカに2分間暴露させ、停留数をカウントすることで行った。
トータルで2回停留された時点で試験を終了とし、試験終了まで30分間毎に2分間の暴露を行った。30分目の暴露中に2回目の停留がされた場合は、忌避効果持続時間を0分間と判定し、60分目の暴露で2回目の停留がされた場合は忌避効果持続時間を30分間と判定した。試験は3人の被験者にて行い、平均の忌避効果持続時間を算出した。
【0082】
(感触(皮膚塗布時のさらさら感)の評価)
専門パネラー3名が、前腕内側部に直径3cm円に各例の組成物を0.02mL塗布し、25℃、57RH%条件下で1分間かけて均一に塗り延ばした。乾き際から乾燥後のさらさら感に対して、下記基準により5段階評価で官能評価を行い、3名の平均スコアを表に示した。なお、比較例1の評価結果を「1」とした。
5:べたつき感がまったくなく、良好なさらさらとした感触がある。
4:わずかにべたつきを感じるが、さらさらとした感触がある。
3:多少のべたつきを感じるが、さらさらとした感触の方が強い。
2:べたつきを感じ、さらさらとした感触が弱い。
1:べたつきを感じ、さらさらとした感触がない。
【0083】
(長期保存安定性評価)
100mLのガラス瓶に、各例の組成物80mLを入れ、密閉して、50℃で1か月間保存した後、組成物中の油相の分離の有無を、目視により確認し、下記基準で示した。
A:変化なし。
B:油相が合一し、乳化物から表面へのしみ出しが多少見られる。
C:油相の分離が見られる。
【0084】
製造例1(ジメチルシリル化セルロース粒子(B10)の製造)
2000mLのセパラブルフラスコに、セルロース粒子(CELLULOBEADS D-30(大東化成工業(株)、30μm球状セルロース)を含水質量で100.00g秤量し、セルロース粒子中の水分を除去する目的で、最終水分値が1質量%以下になるまで80℃で加熱真空乾燥させた。乾燥後のセルロース粒子の入った2000mLのセパラブルフラスコへ超脱水N,N-ジメチルホルムアミド(富士フイルム和光純薬(株))600mLを投入し、室温にて30分間攪拌した後、クロロジメチルシラン(東京化成工業(株))10.00gを徐々に滴下した。滴下終了後、ウォーターバスにて内温を80℃まで昇温し、4時間反応させた。反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をアセトンにて洗浄した。その後、ろ過物を80℃で一昼夜加熱真空乾燥させて、体積中位粒径(D50)が33.4μmの疎水性粒子であるジメチルシリル化セルロース粒子(B10)を得た。
【0085】
比較製造例1(比較用ジメチルシリル化セルロース粒子(b4)の製造)
製造例1において、CELLULOBEADS D-30(大東化成工業(株))に替えて、セルロース粒子 CELLULOBEADS D-50(大東化成工業(株)、50μm球状セルロース)を用いたこと以外は、製造例1と同様の方法で、体積中位粒径(D50)が45.4μmの疎水性粒子である比較用ジメチルシリル化セルロース粒子(b4)を得た。
【0086】
実施例1~57、比較例1~12(組成物の製造及び評価)
表2~4及び表6~7に示す各成分のうち、予め、粒子成分と水を配合し、T.K.ロボミックス(特殊機化工業(株))の撹拌部をT.K.ホモディスパー 2.5型に替えたものを用いて混合した後、表に示す量の成分(A)及び成分(a)、並びに増粘剤を配合し、T.K.ロボミックス(特殊機化工業(株))の撹拌部をT.K.ホモミキサー MARKII2.5型に替えたものを用いて8,000rpmで2分撹拌する工程を経て水中油型組成物を得た。表に記載した(A)~(D)の表記は、それぞれ本明細書における成分(A)~(D)に対応し、(a)、(b)の表記は、それぞれ本明細書における成分(A)の範囲外の液状油性成分、成分(B)の範囲外の粒子に対応する。また表2~4における使用成分を表1、表6~7における使用成分を表5に示す。各表に記載した配合量は各成分の有効成分量(質量%)である。得られた組成物を用いて、前記方法により各種評価を行った。結果を表に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
表2~4,及び表6~7より、成分(A)~(C)をそれぞれ所定量含有する本発明の組成物は、忌避持続効果を2時間以上もの長時間保つことができ、かつ皮膚に塗布した際にさらさらとした良好な感触を有し、かつ長期保存安定性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ皮膚に塗布した際の感触が良好で、長期保存安定性にも優れる水中油型の害虫忌避組成物、水中油型の害虫停留抑制組成物、害虫の忌避方法及び害虫の停留抑制方法を提供することができる。