(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】硬化性白色シリコーン組成物、光半導体装置用反射材、および光半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240419BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240419BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240419BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20240419BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/22
H01L33/60
(21)【出願番号】P 2019235110
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 壮介
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/078140(WO,A1)
【文献】特開2021-042332(JP,A)
【文献】特開2012-233035(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104080(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C08K 3/00 - 13/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均組成式:(R
1
3SiO
1/2)
a(R
1
2SiO
2/2)
b(R
1SiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d(XO
1/2)
eで表され、式中、R
1は各々独立に、一価の炭化水素基であり、ただし、少なくとも2個のR
1はアルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦0.7、0≦b≦0.2、0≦c≦0.3、0≦d≦0.8、及び0≦
e≦0.2であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0を満たす数である、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)R
2R
3
2SiO(R
3
2SiO)
nSiOR
2R
3
2で表され、式中、R
2はアルケニル基であり、R
3は各々独立に、アルケニル基以外の一価の炭化水素基であり、nは50以上の整数である、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(C)一分子内に少なくとも2個以上の水素原子結合ケイ素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)硬化反応用触媒、及び
(E)白色顔料
を含み、
(A)成分が、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、20質量%以上で含まれ、
(B)成分は、硬化性白色シリコーン組成物中に(A)成分と同じ量で含まれるか、または(A)成分よりも多い量で含まれ、(A)~(C)成分中のアルケニル基含有量が1.7質量%以下で
あり、
前記硬化性白色シリコーン組成物の硬化物は、JIS K 7215-1986に規定のタイプDデュロメータにより測定して14以上の硬度を有することを特徴とする、硬化性白色シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、30質量%以上である、請求項1に記載の硬化性白色シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(E)白色顔料が、オルガノポリシロキサン成分の合計100質量部に対して30質量部以上で含まれる、請求項1又は2に記載の硬化性白色シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(A)成分に含まれるアルケニル基の含有量が、1モル%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性白色シリコーン組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の平均組成式において、b及びcが0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性白色シリコーン組成物。
【請求項6】
前記(B)成分の分子量(Mw)が、6,000以上200,000以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性白色シリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の硬化性白色シリコーン組成物の硬化物からなる、光半導体装置用反射材。
【請求項8】
請求項
7に記載の光半導体装置用反射材を備える、光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性白色シリコーン組成物に関し、より具体的には、光半導体装置の反射材に好適に用いられる硬化性白色シリコーン組成物に関する。また、本発明は、こうした硬化性白色シリコーン組成物の硬化物からなる光半導体装置用反射材およびその反射材を備える光半導体装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物は、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の変化が小さいため、光学材料としても適している。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する分子量1000未満のケイ素化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有し、分子量が1000以上であるシリコーン化合物、及び、(E)無機充填材を必須成分として含有することを特徴とする半導体のパッケージ用の硬化性樹脂組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有し、前記アルケニル基含有量が30~600mmol/100gであるポリオルガノシロキサン100重量部、(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、SiH基が1.0~5.0個となる量の(B)1分子中に3個以上のSiH基を含有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン 、触媒量の(C)白金系触媒、0.3~20重量部も(D)接着性付与剤、及び60~150重量部の(E)平均粒径が0.1~0.5μmの酸化チタンを含有することを特徴とする光半導体用シリコーン接着剤組成物が記載されている。
【0005】
近年、発光ダイオード(LED)等の光半導体装置において、より高い出力密度と薄型化が望まれている。従来の硬化性シリコーン組成物の硬化物をこうした光半導体装置の反射材に用いた場合、その靭性が不十分であり、反射材にクラックやチッピングが発生してしまう場合があるという問題があった。また、従来の硬化性シリコーン組成物に大量の酸化チタン等の白色顔料を含有させた場合にも、その硬化物の靭性が劣化し、得られた反射材にクラックやチッピングが発生してしまう場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2013/051600号公報
【文献】特開2008-120844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、十分に高い硬度を示しつつ、優れた伸び特性を有し、その結果、靭性に優れる硬化物を形成できる、硬化性白色シリコーン組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、靭性に優れる光半導体装置用反射材を提供することにある。また、本発明のさらに別の目的は、本発明の光半導体装置用反射材を備える光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本件発明者は、鋭意検討した結果、驚くべきことに、硬化性白色シリコーン組成物において、原料のオルガノポリシロキサンが、分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖されたオルガノポリシロキサンを含み、オルガノポリシロキサン原料中のアルケニル基含有量を所定の範囲に調整することにより、十分に高い硬度を示しつつ、優れた伸び特性を有し、その結果、靭性に優れる硬化物が得られる硬化性白色シリコーン組成物を提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
したがって、本発明は、
(A)平均組成式:(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)eで表され、式中、R1は各々独立に、一価の炭化水素基であり、ただし、少なくとも2個のR1はアルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦0.7、0≦b≦0.2、0≦c≦0.3、0≦d≦0.8、及び0≦e≦0.2であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0を満たす数である、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)R2R3
2SiO(R3
2SiO)nSiOR2R3
2で表され、式中、R2はアルケニル基であり、R3は各々独立に、アルケニル基以外の一価の炭化水素基であり、nは50以上の整数である、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(C)一分子内に少なくとも2個以上の水素原子結合ケイ素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)硬化反応用触媒、及び
(E)白色顔料
を含み、
(A)成分が、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、20質量%以上で含まれ、(A)~(C)成分中のアルケニル基含有量が1.7質量%以下である、硬化性白色シリコーン組成物に関する。
【0011】
前記(B)成分の含有量が、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、30質量%以上であることが好ましい。
【0012】
前記(E)白色顔料が、オルガノポリシロキサン成分の合計100質量部に対して30質量部以上で含まれることが好ましい。
【0013】
前記(A)成分に含まれるアルケニル基の含有量が、1モル%以上であることが好ましい。
【0014】
前記(A)成分の平均組成式において、b及びcが0であることが好ましい。
【0015】
前記(B)成分の分子量(Mw)が、6,000以上200,000以下であることが好ましい。
【0016】
前記(B)成分が、前記(A)成分と同じ量で含まれるか、または(A)成分よりも多い量で含まれることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、本発明に係る硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる、光半導体装置用反射材にも関する。
【0018】
本発明はまた、本発明に係る光半導体装置用反射材を備える、光半導体装置にも関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る硬化性白色シリコーン組成物によれば、十分に高い硬度を示しつつ、優れた伸び特性を有する硬化物を形成できるので、優れた靭性を有する硬化物を形成できる。そのため、たとえ大量の酸化チタン等の白色顔料を含有していても、硬化物にクラックやチッピングが発生するのを防ぐことができる。また、本発明に係る光半導体装置用反射材によれば、靭性に優れるので、信頼性の高い反射材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[硬化性白色シリコーン組成物]
本発明に係る硬化性白色シリコーン組成物は、
(A)平均組成式:(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)eで表され、式中、R1は各々独立に、一価の炭化水素基であり、ただし、少なくとも2個のR1はアルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦0.7、0≦b≦0.2、0≦c≦0.3、0≦d≦0.8、及び0≦e≦0.2であり、であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0を満たす数である、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)R2R3
2SiO(R3
2SiO)nSiOR2R3
2で表され、式中、R2はアルケニル基であり、R3は各々独立に、アルケニル基以外の一価の炭化水素基であり、nは50以上の整数である、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(C)一分子内に少なくとも2個以上の水素原子結合ケイ素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)硬化反応用触媒、及び
(E)白色顔料
を含み、
(A)成分が、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、20質量%以上で含まれ、(A)~(C)成分中のアルケニル基含有量が1.7質量%以下である。
【0021】
以下、本発明の硬化性白色シリコーン組成物の各成分について詳細に説明する。
【0022】
(A)レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する硬化性のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。本発明に係る硬化性白色シリコーン組成物は、1種類の(A)レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種類以上の(A)レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよい。
【0023】
本明細書において、レジン状オルガノポリシロキサンとは、分子構造中に分岐状または三次元網状構造を有するオルガノポリシロキサンを意味する。一実施形態において、(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、その分子構造中に少なくとも1つのRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)及び/又はSiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含む。一実施形態において、(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、その分子構造中にQ単位を含むが、T単位は含まない。
【0024】
(A)成分は、平均組成式:(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)eで表され、式中、R1は各々独立に、一価の炭化水素基であり、ただし、少なくとも2個のR1はアルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦0.6、0≦b≦0.2、0≦c≦0.3、0≦d≦0.7、及び0≦e≦0.2であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0を満たす数である。
【0025】
(A)成分の平均組成式において、R1の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。R1は、好ましくは、炭素原子数1~6の一価の炭化水素基、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、一実施形態において、R1は、フェニル基以外の一価の炭化水素基である。また、他の実施形態において、R1のは、アリール基以外の一価の炭化水素基である。
【0026】
(A)成分の平均組成式において、少なくとも2個のR1はアルケニル基である。こうしたアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、およびドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、炭素数が2~6個のアルケニル基が好ましく、特に好ましくはビニル基である。
【0027】
(A)成分の平均組成式においてXは水素原子またはアルキル基である。Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、およびプロピル基が例示される。
【0028】
(A)成分の平均組成式において、aは、好ましくは、0.1≦a≦0.6の範囲であり、より好ましくは0.2≦a≦0.55の範囲であり、さらに好ましくは0.3≦a≦0.5の範囲である。(A)成分の平均組成式において、bは、好ましくは、0≦b≦0.15の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.1の範囲であり、特に0≦b≦0.05の範囲である。(A)成分の平均組成式において、cは、好ましくは、0≦c≦0.2の範囲であり、より好ましくは0≦c≦0.1の範囲であり、特に0≦c≦0.05の範囲である。(A)成分の平均組成式において、dは、好ましくは、0.1≦d≦0.7の範囲であり、より好ましくは0.2≦d≦0.65の範囲であり、さらに好ましくは0.3≦d≦0.6の範囲である。平均単位式(A-1)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.15の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、特に0≦e≦0.05の範囲である。
【0029】
(A)成分中に含まれるアルケニル基の含有量(レジン状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基のモル%)は、適宜設計可能であるが、1モル%以上、好ましくは2モル%以上、より好ましくは2.5モル%以上、さらに好ましくは3モル%以上であってよく、8モル%以下、好ましくは6モル%以下、より好ましくは5モル%以下、優先的には4モル%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量(モル%)は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0030】
(A)成分中に含まれるアルケニル基の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上であってよく、8質量%以下、好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%以下、優先的には2質量%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量(質量%)は、例えば、(A)成分の総質量を100としたときの、全てのアルケニル基をビニル基として置き換えたときのビニル基の質量%として計算することができるし、又は、下記に示す滴定法により求めることもできる。
【0031】
(A)成分は、好ましくはR3SiO1/2で表されるシロキサン単位であるM単位およびQ単位を含み、より好ましくはM単位およびQ単位のみからなる。すなわち、前記(A)成分の平均組成式において、b及びcが0である。M単位とQ単位の比率は特に限定されないが、Q単位に対するM単位のモル比が0.5~3の範囲内であることが好ましく、0.8~2の範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは1~1.5の範囲内である。一実施形態において、(A)成分は、M単位よりもQ単位を多く含む。
【0032】
(A)成分は、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、20質量%以上で含まれる。好ましくは、(A)成分は、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、25質量%以上で含まれ、より好ましくは30質量%以上で含まれる。好適な実施形態において、(A)成分は、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、70質量%以下で含まれ、好ましくは60質量%以下で含まれ、より好ましくは55質量%以下で含まれ、特に好ましくは50質量%以下で含まれる。
【0033】
(B)直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
本発明の硬化性白色シリコーン組成物は、(B)成分として、R2R3
2SiO(R3
2SiO)nSiOR2R3
2で表される(式中、R2はアルケニル基であり、R3は各々独立に、アルケニル基以外の一価の炭化水素基であり、nは50以上の整数である)、分子鎖両末端アルケニル基封鎖構造を有する直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含む。(B)成分は1種のみの直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを用いてもよく、2種以上の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(B)成分の構造式中、R2はアルケニル基である。こうしたアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、およびドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、炭素数が2~6個のアルケニル基が好ましく、特に好ましくはビニル基である。
【0035】
(B)成分の構造式中、R3は、アルケニル基以外の一価の炭化水素基である。R3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。R3は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルケニル基以外の一価の炭化水素基、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、一実施形態において、R3は、フェニル基以外の一価の炭化水素基である。また、他の実施形態において、R3は、アリール基以外の一価の炭化水素基である。
【0036】
(B)成分の構造式中、nは50以上であり、好ましくは100以上であり、より好ましくは150以上では、さらに好ましくは200以上であり、特に好ましくは250以上である。一実施形態において、nは3,000以下であり、より好ましく2,000以下である。
【0037】
(B)成分の分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは6,000以上であり、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは14,000以上であり、優先的には18,000以上である。一実施形態において、(B)成分の分子量(Mw)は、200,000以下であり、好ましくは160,000以下であり、より好ましくは120,000以下である。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCにより標準ポリスチレンに換算した値として求めることができる。
【0038】
(B)成分中に含まれるアルケニル基の含有量(質量%)は、特に限定されないが、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.07質量%以上であってよく、2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、優先的には0.6質量%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量(質量%)は、例えば、(B)成分の総質量を100としたときの、全てのアルケニル基をビニル基として置き換えたときのビニル基の質量%として計算することができるし、又は、下記に示す滴定法により求めることもできる。
【0039】
(B)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、20質量%以上で含まれ、より好ましくは30質量%以上で含まれ、さらに好ましくは35質量%以上で含まれ、優先的には40質量%以上で含まれ、特に好ましくは45質量%以上で含まれる。好適な実施形態において、(B)成分は、オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、80質量%以下で含まれ、好ましくは75質量%以下で含まれ、より好ましくは70質量%以下で含まれる。
【0040】
本発明の一実施形態において、(B)成分は、硬化性白色シリコーン組成物中に上記(A)成分と同じ量で含まれるか、または(A)成分よりも多い量で含まれる。また、他の実施形態において、硬化性白色シリコーン組成物中は、(B)成分を、(A)成分に対する(B)成分の質量比が0.5~3の範囲内で含み、好ましくは0.8~2.5の範囲内で含み、より好ましくは0.9~2.2の範囲内で含む。
【0041】
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明の硬化性白色シリコーン組成物は、架橋剤として、(C)成分の一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む。(C)成分は1種のみのオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いてもよく、2種以上のオルガノハイドロゲンポリシロキサンを組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(C)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、および三次元網状構造が例示され、好ましくは、直鎖状構造である。(C)成分は1種のみの構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いてもよく、2種以上の構造のオルガノハイドロゲンポリシロキサンを組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(C)成分のケイ素原子結合水素原子は、分子鎖両末端か、または、分子鎖の両末端以外の側鎖にケイ素原子結合水素原子が含有されていてもよい。(C)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、一価の炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(C)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
【0044】
このような(C)成分としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、H(CH3)2SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサン、ならびにH(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0045】
(C)成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、硬化性白色シリコーン組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~10モルとなる量であり、好ましくは、0.5~5モルとなり、特に、0.8~2.0モルとなる量であり得る。なお、(C)成分中のケイ素原子結合水素原子の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0046】
また、別の実施形態において、(C)成分の含有量は、オルガノポリシロキサン成分の総質量に対して、0.1~15質量%の範囲であり、好ましくは0.5~10質量%の範囲であり、さらに好ましくは1~6質量%の範囲である。
【0047】
本発明に係る硬化性白色シリコーン組成物において、(A)~(C)成分中のアルケニル基含有量が1.7質量%以下である。より好ましくは、(A)~(C)成分中のアルケニル基含有量は、1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.3質量%以下であり、優先的には1.2質量%以下であり、特に好ましくは1.1質量%以下である。一実施形態において、(A)~(C)成分中のアルケニル基含有量は、0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。なお、アルケニル基含有量(質量%)は、(A)~(C)成分の総質量を100としたときの、全てのアルケニル基をビニル基として置き換えたときのビニル基の質量%として計算することができるし、又は、下記に示す滴定法により求めることもできる。
【0048】
滴定法により各成分中のアルケニル基濃度を定了する方法について説明する。(A)~(C)各成分中のアルケニル基含有量は、ウイス法として一般的に知られる滴定方法により精度よく定量することができる。原理を下記に述べる。まずシリコーン原料中のアルケニル基と一塩化ヨウ素とを式(1)に示すように付加反応させる。次に式(2)に示される反応により、過剰の一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させヨウ素として遊離させる。次に遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
式(1)CH2=CH- + 2ICl → CH2I-CHCl- + ICl(過剰)
式(2)ICl+KI → I2 + KCl
滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量と、別途作成したブランク液との滴定量の差から、成分中のアルケニル基濃度(モル%)を定量することができる。質量%を求める場合には、モル%に式量(ビニル基の場合 CH2=CH- のため式量27)を掛けることで質量%を計算することができる。
【0049】
(D)硬化用触媒
発明に係る硬化性白色シリコーン組成物は、(D)成分として、(A)~(C)成分のオルガノポリシロキサンを硬化するための硬化用触媒を含む。発明に係る硬化性白色シリコーン組成物は、1種類の(D)硬化用触媒を含んでもよいし、2種類以上の(D)硬化用触媒を含んでもよい。
【0050】
(D)成分の硬化用触媒は、ヒドロシリル化反応触媒であり、ヒドロシリル化反応硬化型のシリコーン組成物の硬化を促進するための触媒である。このような(D)成分としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体、白金を担持した粉体等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウム黒、トリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒;さらに、ロジウム系触媒が挙げられ、特に、白金系触媒であることが好ましい。
【0051】
(D)成分の配合量は、(A)~(C)成分の硬化に必要な触媒量であり、特に制限されるものではないが、例えば白金系触媒を用いた場合、この白金系触媒に含まれる白金金属量は、シリコーン組成物中に重量単位で0.01~1000ppmの範囲内となる量であることが実用上好ましく、特に、0.1~500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0052】
(E)白色顔料
発明に係る硬化性白色シリコーン組成物は、(E)成分として白色顔料を含む。(E)白色顔料は、1種類の(E)白色顔料を含んでもよいし、2種類以上の(E)白色顔料を含んでもよい。
【0053】
(E)白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;ガラスバルーン、ガラスビーズ等の中空フィラー;その他、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化アンチモンが例示される。光反射率と隠蔽性が高いことから、酸化チタンが好ましい。また、UV領域の光反射率が高いことから、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムが好ましい。
【0054】
(E)白色顔料は、反射率・白色度・耐光性を高める目的で、さらに表面処理を施しても良い。表面処理の種類としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、有機化合物、シロキサン処理など、公知の表面処理が挙げられる。有機化合物としては、特に限定されないが、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサン等の有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物等が挙げられる。表面処理の方法としては、公知の方法であれば特に限定されず、(1)あらかじめ表面処理された白色顔料をシリコーン組成物中に混合させる方法、(2)白色顔料とは別に表面処理剤をシリコーン組成物中に添加し、組成物中で白色顔料とを反応させる方法、などを用いることができる。
【0055】
(E)白色顔料の表面処理は、公知の種類のものであれば特に限定されないが、シリカを含まないものが、得られる白色硬化物の耐光性が特に優れる点で、特に好ましい。さらに、有機物処理を含まないものの方が、得られる白色硬化物の耐熱試験後の反射率を高く維持できる点で、特に好ましい。白色顔料の表面処理は、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)や、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)などの分析方法を用いて分析することができる。
【0056】
(E)成分の平均粒径や形状は限定されないが、平均粒径は0.05~10μmの範囲内であることが好ましく、特に、0.1~2μmの範囲内であることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0057】
本組成物において、(E)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくはオルガノポリシロキサン成分の合計100質量部に対して30質量部以上である。好ましくは、(E)成分の含有量は、オルガノポリシロキサン成分の合計100質量部に対して40質量部以上であり、より好ましくは45質量部以上である。これは、(E)成分の含有量が上記下限以上であると、得られる硬化物の光反射率が良好であるからである。また、好適な実施形態において、(E)成分は、本組成物のオルガノポリシロキサン成分の合計100質量部に対して、80質量部以下で含まれ、好ましくは70質量部以下で含まれ、より好ましくは60質量部以下で含まれる。
【0058】
本発明の硬化性白色シリコーン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、アセチレン化合物、有機リン化合物、ビニル基含有シロキサン化合物、ヒドロシリル化反応抑制剤、硬化遅延剤、白色顔料以外の無機充填剤、または、無機充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水処理してなる無機充填剤、粉体の表面処理剤又は界面活性剤、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、粘着性付与剤、離型剤、金属石鹸、耐熱性付与剤、耐寒性付与剤、熱伝導性充填剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、蛍光体、溶剤等が挙げられる。
【0059】
ヒドロシリル化反応抑制剤は、シリコーン組成物のヒドロシリル化反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば、エチニルシクロヘキサノールのようなアセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。反応抑制剤の添加量は、通常、本組成物全体の0.001~5質量%である。
【0060】
硬化遅延剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。この硬化遅延剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して、質量単位で、10~10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0061】
無機充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、シルセスキオキサン、酸化マグネシウム、酸化鉄、タルク、マイカ、ケイ藻土、ガラスビーズ等の金属酸化物粒子;水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の無機充填剤;ガラス繊維等の繊維状充填剤、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。但し、無機充填剤の配合量は、本組成物の40質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0062】
粉体の表面処理剤としては、特に限定されないが、オルガノシラザン類、オルガノシクロシロキサン類、オルガノクロロシラン類、オルガノアルコキシシラン類、低分子量の直鎖状シロキサン類、有機化合物などが挙げられ、ここで、有機化合物としては、例えば、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサン等の有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物、有機金属錯体、フッ素系有機化合物、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0063】
接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、有機ケイ素化合物中のアルコキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基;3-メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。こうした有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着付与剤の含有量は限定されないが、本組成物の合計100質量部に対して0.01~10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0064】
離型剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸系離型剤、エステル系離型剤、エーテル系離型剤、ケトン系離型剤、アルコール系離型剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記離型剤としては、ケイ素原子を含まないもの、ケイ素原子を含むもの、又は、これらの混合物を使用することができる。より具体的には、離型剤としてカルナウバワックス、モンタンワックス、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、エステル系ワックス、オレフィン系ワックス等が例示される。
【0065】
本発明の硬化性白色シリコーン組成物は、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
【0066】
本発明の硬化性白色シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物は、十分に高い硬度を示すことができる。例えば、本発明の硬化性白色シリコーン組成物を150℃で2時間加熱することにより得られる硬化物は、JIS K 7215-1986「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」に規定のタイプDデュロメータにより測定して、好ましくは10以上の硬度を示すことができ、より好ましくは12以上の硬度を示すことができる。
【0067】
また、本発明の硬化性白色シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物は、優れた伸び特性を示すことができる。例えば、本発明の硬化性白色シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して、1mm厚のシート状の硬化物を作製し、これをJIS K 6251-1993「加硫ゴムの引張試験方法」に規定のダンベル状3号形に打ち抜き、このサンプルを用いて測定される破断時の伸び(%)は、好ましくは52(%)以上の伸びを示すことができ、より好ましくは55(%)以上の伸びを示すことができる。
【0068】
本発明の硬化性白色シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物は、十分に高い硬度を示しつつ、優れた伸び特性を有するため、靭性に優れる。そのため、本発明の硬化性白色シリコーン組成物は、光反射材、特に、より高い出力密度と薄型化が要求される光半導体装置の光反射材用に好適に利用することができる。
【0069】
[光半導体装置用反射材]
本発明はまた、本発明の硬化性白色シリコーン組成物を硬化して得られる光半導体装置用反射材に関する。本発明の光半導体装置用反射材は、本発明の硬化性白色シリコーン組成物を硬化して得られるため、靭性に優れる。光半導体装置としては、特に限定されず、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【0070】
[光半導体装置]
本発明の光半導体装置は、本発明の光半導体装置用反射材を備える。こうした光半導体装置としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。本発明の光半導体装置は、靭性に優れる本発明の光半導体装置用反射材を備えるので、信頼性に優れる。
【実施例】
【0071】
本発明の硬化性白色シリコーン組成物を以下の実施例および比較例により詳細に説明する。
【0072】
以下の実施例および比較例において、下記に示す原料成分を用いた。以下でMeはメチル基を表し、Viはビニル基を表す。実施例中において、ケイ素結合官能基全体に占めるビニル基含有量(モル%)は構造式から計算された値であり、ビニル基含有量(質量%)は先述した滴定法により定量した値である。
成分a-1:平均組成式 (ViMe2SiO1/2)0.04(Me3SiO1/2)0.40(SiO4/2)0.56で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるビニル基含有量 3.03モル%;ビニル基含有量 1.55質量%
成分a-2:平均組成式 (ViMe2SiO1/2)0.15(Me3SiO1/2)0.45(SiO4/2)0.40で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるビニル基含有量 8.33モル%;ビニル基含有量 5.44質量%
成分a-3:平均組成式 (ViMe2SiO1/2)0.10(Me3SiO1/2)0.40(SiO4/2)0.50で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン;ケイ素原子結合官能基全体に占めるビニル基含有量 6.67モル%;ビニル基含有量 3.40質量%
成分a-4:平均組成式 (Me3SiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56で表されるレジン状オルガノポリシロキサン
成分b-1:一般式 ViMe2SiO(Me2SiO)nSiMe2Viで表される、分子鎖両末端ビニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン;分子量(Mw)99,000;ビニル基含有量 0.089質量%
成分b-2:一般式 ViMe2SiO(Me2SiO)nSiMe2Viで表される、分子鎖両末端ビニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン;分子量(Mw)21,000;ビニル基含有量 0.45質量%
成分b-3:単位式 Me3SiO(ViMeSiO)n(Me2SiO)mSiMe3で表される、分子鎖側鎖にビニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン;分子量(Mw)98,000;ビニル基含有量 0.48質量%
成分b-4:一般式 ViMe2SiO(ViMeSiO)n(Me2SiO)mSiMe2Viで表される、分子鎖末端と側鎖の両方にビニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン;分子量(Mw)90,000;ビニル基含有量 7.5質量%
成分c:一般式 Me3SiO(HMeSiO)50SiMe3で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分d:白金濃度が4.0質量%である白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体
成分e:酸化チタン(平均粒径0.25μm、PX3788、堺化学工業社製)
【0073】
[実施例1~3および比較例1~6]
各成分を表1及び2に示す組成(質量%)で混合し、硬化性白色シリコーン組成物を調製した。なお、表1及び2中の「Vi含有量」は、成分a~cの総質量に対する、成分a~cに含まれるビニル基の質量%を表している。
【0074】
[評価]
実施例または比較例にかかる各組成物において、硬化物の硬度および伸びを次のようにして測定し、結果を表1および表2に示した。
【0075】
[硬化物の硬さ]
硬化性白色シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して厚さ10mmの硬化物を作製した。この硬化物の硬さを、JIS K 7215-1986「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」に規定のタイプDデュロメータにより測定した。
【0076】
[硬化物の伸び]
硬化性白色シリコーン組成物をシート状に塗布し、150℃で2時間加熱して1mm厚のシート状の硬化物を作製し、これをJIS K 6251-1993「加硫ゴムの引張試験方法」に規定のダンベル状3号形に打ち抜き、島津製作所製オートグラフを用いて破断時の伸び(%)を測定した。
【0077】
【0078】
以上の結果から分かるとおり、本願発明の実施例1~3の硬化性白色シリコーン組成物で形成した硬化物は、硬度10以上を示しつつ、55%以上の高い伸び率を示し、靭性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の硬化性白色シリコーン組成物は、光半導体装置用反射材、特に、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体等の光半導体装置用の反射材として有用である。