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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】分画抗菌組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20240419BHJP
   A61K 31/785 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240419BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C08G73/00
A61K31/785
A61P1/02
A61P11/00
A61P11/02
A61P17/00 101
A61P17/02
A61P27/02
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/02
A61P35/00
A61P43/00 121
C08L79/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019564777
(86)(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018033880
(87)【国際公開番号】W WO2018217743
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】62/510,446
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/633,761
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519413232
【氏名又は名称】ヴィクトル ヴェニアミノヴィッチ テッツ
【氏名又は名称原語表記】Viktor Veniaminovich Tets
(73)【特許権者】
【識別番号】519413243
【氏名又は名称】ゲオルギー ヴィクトロヴィッチ テッツ
【氏名又は名称原語表記】Georgy Viktorovich Tets
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル ヴェニアミノヴィッチ テッツ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギー ヴィクトロヴィッチ テッツ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンチン アンドレイヴィッチ クラスノフ
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/118043(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0013838(US,A1)
【文献】特表2007-536233(JP,A)
【文献】特開2005-264073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00
A61K 31/785
A61P 1/02
A61P 11/00
A61P 11/02
A61P 17/00
A61P 17/02
A61P 27/02
A61P 31/00
A61P 31/04
A61P 31/10
A61P 31/12
A61P 33/02
A61P 35/00
A61P 43/00
C08L 79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
780Da~5700Daの平均分子量および10kDa未満の分子分布を有する式Iのポリマー画分:
【化1】
(式中、nは1~3であり、mは4~14であり、zは1~6であり、Xは酸である)。
【請求項2】
実質的に他のポリマー成分を含まない、請求項1に記載のポリマー画分。
【請求項3】
Xが、HCl、HSOまたはAcOHから選択される、請求項1または2に記載のポリマー画分。
【請求項4】
前記ポリマー画分の分子量中央値が1330Da~3500Daの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー画分。
【請求項5】
以下から選択される、請求項1に記載のポリマー画分。
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー画分と医薬賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のポリマー画分を調製する方法であって、
ヘキサメチレンジアミンを、グアニジン塩、ならびにヒドラジン水和物、セミカルバジド、セミカルバジド塩酸塩、カルボヒドラジドおよびアミノグアニジン塩酸塩からなる群より選択される化合物と、175℃~195℃の温度で反応させること;および
透析によりポリマー画分を分離すること
を含む、方法。
【請求項8】
780Da~5700Daの平均分子量および10kDa未満の分子分布を有する式Iのポリマー画分:
【化3】
(式中、nは1~3であり、mは4~14であり、zは1~6であり、Xは酸である)
であって、ヘキサメチレンジアミンを、グアニジン塩、ならびにヒドラジン水和物、セミカルバジド、セミカルバジド塩酸塩、カルボヒドラジドおよびアミノグアニジン塩酸塩からなる群より選択される化合物と、175℃~195℃の温度で反応させること;および透析によりポリマー画分を分離すること;を含むプロセスによって調製されたものである、ポリマー画分。
【請求項9】
細菌因子、真菌因子、ウイルス因子、原生動物因子およびがん細胞からなる群より選択される因子の増殖を阻害するための組成物であって、有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー画分を含み、該ポリマー画分を前記因子と接触させる、組成物。
【請求項10】
有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー画分を含む、必要とする対象において感染症を治療するための組成物。
【請求項11】
有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー画分を含む、必要とする対象においてがんを治療するための組成物。
【請求項12】
前記感染症は、細菌因子、真菌因子、ウイルス因子および原生動物因子からなる群より選択される因子によって引き起こされたものである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記感染症は、混合感染症、全身感染症、歯性感染症、皮膚および軟組織感染症、または創傷/潰瘍の感染症、粘膜感染症、気道感染症、肺感染症、膿瘍の感染症、副鼻腔炎、および眼感染症からなる群より選択される、請求項10または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記肺感染症は、細菌株、真菌株および/またはウイルス株の混合によって引き起こされたものである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記肺感染症は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、嚢胞性線維症における肺感染症、および人工呼吸器関連肺炎(VAP)から選択される、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
腫瘍を治療するために使用される、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリマー画分は、局所的に投与される、点滴注入される、局所投与される、経腸的に投与される、または非経口投与される、請求項10、および12~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリマー画分は、抗菌剤の活性を増強する少なくとも1つの化合物と組み合わせて投与される、請求項10、12~15、および17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリマー画分は、他の抗菌薬と組み合わせて投与される、請求項10、12~15、および17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリマー画分は、他の抗がん剤と組み合わせて投与される、請求項11または16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性、抗真菌活性および抗ウイルス活性を有する分画ポリマー組成物を提供する。これらの組成物は、病原体によって引き起こされる感染性疾患の治療および他の用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
薬剤耐性病原体の急速な進化は重要な公衆衛生問題である(非特許文献1)。抵抗性の感染症を治療するための新しい抗菌化合物が広く求められており、いくつかの公報が有効なクラスの化合物を報告している。特許文献1は、次式の抗ウイルス剤を開示する:
【化1】
式中、HXは酸であり、nは3~20であり、mは4~20である。このような化合物は、グアニジン塩酸塩とヘキサメチレンジアミンおよびヒドラジン水和物の三元重縮合(ternary polycondensatio)により合成できる。
【0003】
特許文献2は、次式のヒドラジン止血剤を開示する:
【化2】
式中、nは1~20であり、mは1~10であり、nxmは≧8である。
【0004】
特許文献3は、次式のヒドラジン化合物を開示する:
【化3】
式中、nは1~3であり、mは2~10であり、zは4~20であり、Xは存在しないかまたは酸である。そのような化合物は、強力な抗菌性および抗真菌性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2017/0013838号明細書
【文献】国際公開第2016/118043号
【文献】米国特許第8,993,712号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Fidel, P.L, et al., Clin. Microbiol. Rev., 1999, 12(1):80-96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低毒性、増強された抗菌活性および他の有利な特徴を有する、耐性病原体を標的とする新しいまたは改善された薬剤が継続的に必要とされている。本明細書に記載の化合物、組成物および方法は、これらの目的および他の目的に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、約780Da~約5700Daの平均分子量および約10kDa未満の分子分布を有する、式Iを含むポリマー画分を提供し、式Iは以下の構造を有する:
【化4】
式中の構成メンバーは下記において定義する。
【0009】
本発明はさらに、式Iのポリマー画分および薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0010】
本発明はさらに、例えば、ヘキサメチレンジアミンとヒドラジン水和物とグアニジン塩との三元重縮合反応、および式Iの特定の画分を分離するための粗生成物の透析により、本発明の式Iのポリマー画分を調製する方法を提供する。
【0011】
本発明はさらに、病原体(例えば、細菌、真菌、ウイルスおよび原生動物因子(bacterial, fungal, viral, and protozoal agents))またはがん細胞の増殖(growth)を阻害する方法であって、病原体を有効量の本発明の式Iのポリマー画分と接触させることを含む方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、有効量の本発明の式Iのポリマー画分を対象に投与することを含む、必要とする対象において感染を治療する方法を提供する。
【0013】
本発明はさらに、有効量の本発明の式Iのポリマー画分を対象に投与することを含む、必要とする対象においてがんを治療する方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、式Iのポリマー画分を用いて、気道感染症、特に肺感染症(例えば、細菌株と真菌株の混合によって引き起こされる感染症)、ならびに慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、および人工呼吸器関連肺炎(VAP)を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に記載の化合物調製物の質量スペクトルである。
図2-1】実施例30に記載のように本発明の化合物調製物の存在下で増殖させたがん細胞の用量反応曲線を示す。
図2-2】図2-1の続きである。
図2-3】図2-2の続きである。
図2-4】図2-3の続きである。
図2-5】図2-4の続きである。
図2-6】図2-5の続きである。
図2-7】図2-6の続きである。
図2-8】図2-7の続きである。
図2-9】図2-8の続きである。
図3-1】実施例30に記載のがん細胞スクリーニングの平均グラフデータを示す。
図3-2】図3-1の続きである。
図3-3】図3-2の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、とりわけ、高い抗菌および抗ウイルス活性と低い毒性とを有する殺生物製剤を提供する。より詳細には、本発明は、式Iのポリマー画分を提供する:
【化5】
式中、nは1~3であり、mは4~14であり、zは1~6であり、Xは酸である。
【0017】
式Iは、ヘキサメチレンジアミンと、ヒドラジン水和物と、グアニジンの塩との三元重縮合反応により、重合反応によって生成されるすべての生成物を含む生成物ポリマーを形成することによって製造することができる。出願人は、驚くべきことに、式Iの生成物ポリマーを、分子量および後述する他のパラメーターに基づいてポリマー画分に分離すると、その分画された調製物が有利な特性、例えば低毒性および増強された効力を示すことを発見した。
【0018】
一部の実施形態では、分画された式Iの調製物の平均分子量は、約780Da~約5700Daである。
【0019】
一部の実施形態では、平均分子量値は、式Iの化合物の遊離塩基形態(酸部分を含まない)の値を示す。例えば、一部の実施形態では、式Iの化合物の遊離塩基形態(酸部分を含まない)の平均分子量は、約780Da~約5700Daである。
【0020】
本発明の一部の実施形態において、式Iの化合物の平均分子量(酸部分を含まない)は約3680Da未満である。
【0021】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約1330±10%Daである。
【0022】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約1600±10%Daである。
【0023】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約1850±10%Daである。
【0024】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約2000±10%Daである。
【0025】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約2200±10%Daである。
【0026】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約2300±10%Daである。
【0027】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約2500±10%Daである。
【0028】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約2600±10%Daである。
【0029】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約2630±10%Daである。
【0030】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約2800±10%Daである。
【0031】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約3100±10%Daである。
【0032】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約3170±10%Daである。
【0033】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約3680±10%Daである。
【0034】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約5700±10%Daである。
【0035】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分の平均分子量は約910Da~約1200Daである。
【0036】
いくつかのさらなる実施形態では、本発明の式Iのポリマー画分の分子分布(molecular distribution)は約10kDa未満である。
【0037】
一部の実施形態において、分画された式Iの調製物の分子量中央値(median molecular weight)は、約1330Da~約3500Daである。
【0038】
一部の実施形態では、分画された式Iの調製物の分子量中央値は、約1330Da、または約1340Da、または約1350Da、または約1360Da、または約1370Da、または約1380Da、または約1390Da、または約1400Da、または約1410Da、または約1420Da、または約1430Da、または約1440Da、または約1450Da、または約1460Da、または約1470Da、または約1480Da、または約1490Da、または約1500Da、または約1550Da、または約1600Da、または約1650Da、または約1700Da、または約1750Da、または約1800Da、または約1850Da、または約1900Da、または約1950Da、または約2000Da、または約2500Da、または約3000Da、または約3100Da、または約3200Da、または約3300Da、または3400Da、または3500Daである。
【0039】
一部の実施形態において、ポリマー画分は、特定の分子量範囲外にある他のポリマー成分を実質的に含まないように、例えば、透析により実質的に精製される。一部の実施形態において、式Iのポリマー画分は、式Iの反応生成物配合物から実質的に分離される。
【0040】
式Iの構造は、例えば、HCl、HSO、AcOH、HPO、HCO、またはCCOOHなどの、酸「X」部分で修飾され、あらゆる酸付加塩を含む。
【0041】
一部の実施形態では、XはHClである。
【0042】
一部の実施形態では、XはHSOである。
【0043】
一部の実施形態では、XはAcOHである。
【0044】
一部の実施形態では、n、m、およびzは、分画されたポリマー調製物中の構成成分の平均値を表す。
【0045】
一部の実施形態では、n:mの比は1:8である。
【0046】
一部の実施形態では、nは1である。
【0047】
一部の実施形態では、nは2である。
【0048】
一部の実施形態では、nは3である。
【0049】
一部の実施形態では、mは4である。
【0050】
一部の実施形態では、mは5である。
【0051】
一部の実施形態では、mは6である。
【0052】
一部の実施形態では、mは7である。
【0053】
一部の実施形態では、mは8である。
【0054】
一部の実施形態では、mは9である。
【0055】
一部の実施形態では、mは10である。
【0056】
一部の実施形態では、mは11である。
【0057】
一部の実施形態では、mは12である。
【0058】
一部の実施形態では、mは13である。
【0059】
一部の実施形態では、mは14である。
【0060】
いくつかのさらなる実施形態では、zは、1~6、あるいは1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0である。
【0061】
一部の実施形態では、zは1である。
【0062】
一部の実施形態では、zは1.3である。
【0063】
一部の実施形態では、zは1.4である。
【0064】
一部の実施形態では、zは1.7である。
【0065】
一部の実施形態では、zは1.8である。
【0066】
一部の実施形態では、zは1.9である。
【0067】
一部の実施形態では、zは2.0である。
【0068】
一部の実施形態では、zは2.4である。
【0069】
一部の実施形態では、zは2.8である。
【0070】
一部の実施形態では、zは4.3である。
【0071】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが1.4であり、XがHClであり、平均分子量が1850(±10%)Daであり、分子分布が約3000Da未満であるように定義される。
【0072】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが2.4であり、XがHClであり、平均分子量が3170(±10%)Daであり、分子分布が約10000Da未満であるように定義される。
【0073】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが1.8であり、XがHClであり、平均分子量が2300(±10%)Daであり、分子分布が約1000Daと約3000Daの間であるように定義される。
【0074】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが1.9であり、XがHClであり、平均分子量が2500(±10%)Daであり、分子分布が約2000Daと約3000Daの間であるように定義される。
【0075】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが2.8であり、XがHClであり、平均分子量が3680(±10%)Daであり、分子分布が約3000Daと約5000Daの間であるように定義される。
【0076】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが3、mが4であり、zが1.4であり、XがHClであり、平均分子量が1600(±10%)Daであり、分子量分布が約3000Da未満であるように定義される。
【0077】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが14であり、zが1.3であり、XがHClであり、平均分子量が3170(±10%)Daであり、分子分布が約10000Da未満であるように定義される。
【0078】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが1.7であり、XがHSOであり、平均分子量が2600(±10%)Daであり、分子分布が10000Da未満であるように定義される。
【0079】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが1.7であり、XがAcOHであり、平均分子量が2200(±10%)Daであり、分子分布が約3000Da未満であるように定義される。
【0080】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが1であり、XがHClであり、平均分子量が1330(+10%)Daであり、分子分布が約2000Da未満であるように定義される。
【0081】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが2.4であり、XがHClであり、平均分子量が3100(+10%)Daであり、分子分布が約5000Da未満であるように定義される。
【0082】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが4.3であり、XがHClであり、平均分子量が5700(+10%)Daであり、分子分布が約5000Daと約10000Daまでの間であるように定義される。
【0083】
一部の実施形態では、式Iのポリマー画分は、nが1であり、mが8であり、zが2.0であり、XがHClであり、平均分子量が5700(+10%)Daであり、分子分布が約2000Daと約10000Daまでの間であるように定義される。
【0084】
合成
本発明の化合物およびポリマー画分(それらの塩を含む)は、公知の有機合成技術を使用して調製することができ、多数の可能な合成経路のいずれかに従って合成することができる。例えば、一部の実施形態では、式Iの化合物は、ヘキサメチレンジアミンと、ヒドラジン水和物と、グアニジンの塩との三元重縮合反応により合成される。その後、粗生成物の透析を実施して、狭く正確な分子量分布を有する式Iの調製物の分離を容易にすることができる。透析ステップでは、分画は、当業者によって選択される適切な透析モジュールを使用してろ過および濃縮の1または複数のステップを含んでもよい。
【0085】
一部の実施形態において、本発明は、式Iのポリマー画分を調製する方法であって、
ヘキサメチレンジアミンを、グアニジン塩、ならびにヒドラジン水和物、セミカルバジド、セミカルバジド塩酸塩、カルボヒドラジドおよびアミノグアニジン塩酸塩からなる群より選択される化合物と、175℃~195℃の温度で反応させるステップ;および
透析によりポリマー画分を分離するステップ
を含む方法を提供する。
【0086】
一部の実施形態では、ヘキサメチレンジアミンおよびグアニジン塩をヒドラジン水和物と反応させて、式Iの重合生成物を得る。
【0087】
一部の実施形態では、ヘキサメチレンジアミンおよびグアニジン塩をセミカルバジドと反応させて、式Iの重合生成物を得る。
【0088】
一部の実施形態では、ヘキサメチレンジアミンおよびグアニジン塩をセミカルバジド塩酸塩と反応させて、式Iの重合生成物を得る。
【0089】
一部の実施形態では、ヘキサメチレンジアミンおよびグアニジン塩をカルボヒドラジドと反応させる。
【0090】
一部の実施形態では、ヘキサメチレンジアミンおよびグアニジン塩をアミノグアニジン塩酸塩と反応させて、式Iの重合生成物を得る。
【0091】
一部の実施形態において、本発明は、約1330Da~約5700Daの平均分子量および約10kDa未満の分子分布を有する式Iのポリマー画分を提供し、式Iは、以下の構造:
【化6】
を有し、
式中、nは1~3であり、mは4~14であり、zは1~6であり、Xは酸であり、そのポリマー画分は、ヘキサメチレンジアミンを、グアニジン塩、ならびにヒドラジン水和物、セミカルバジド、セミカルバジド塩酸塩、カルボヒドラジドおよびアミノグアニジン塩酸塩からなる群より選択される化合物と、175℃~195℃の温度で反応させ;さらに透析によりポリマー画分を分離する;ことを含むプロセスによって調製される。
【0092】
本発明の一部の実施形態において、式Iの化合物は、以下の試薬およびモル%割合を使用して調製される:
【0093】
本発明の一部の実施形態において、式Iの化合物は、以下の試薬およびモル%割合を使用して調製される:
【0094】
本発明の一部の実施形態において、式Iの化合物は、以下の試薬およびモル%割合を使用して調製される:
【0095】
本発明の一部の実施形態において、式Iの化合物は、以下の試薬およびモル%割合を使用して調製される:
【0096】
本発明の一部の実施形態において、式Iの化合物は、以下の試薬およびモル%割合を使用して調製される:
【0097】
方法
本発明の化合物およびポリマー画分は抗菌活性を有し、1つまたは複数の病原体および/または感染因子の増殖を阻害することができる。したがって、病原体を本明細書に記載の化合物および/またはポリマー画分の1つまたは複数と接触させることにより、本発明の化合物およびポリマー画分を用いて病原体の増殖を阻害することができる。一部の実施形態では、化合物およびポリマー画分は、細菌、真菌、ウイルス、原生動物因子またはがん細胞の増殖および/または活性を阻害するように作用することができる。さらなる実施形態では、有効量の本発明の化合物またはポリマー画分を投与することにより、本発明の化合物を用いて治療を必要とする個体または対象において感染症を治療することができる。さらなる実施形態では、有効量の本発明の化合物またはポリマー画分を投与することにより、本発明の化合物またはポリマー画分を用いて、そのような治療を必要とする個体または対象においてがんを治療することができる。
【0098】
本化合物およびポリマー画分が阻害および/または調節する因子(agent)には、感染または疾患を引き起こすことができる任意の因子が含まれる。一部の実施形態では、本発明の化合物は選択的であり得る。「選択的」とは、少なくとも1つの他の化合物またはポリマー画分と比較して、その化合物またはポリマー画分が、特定の因子に対してより高い親和性で結合しまたはより高い効力で阻害することを意味する。
【0099】
本発明の別の態様は、治療有効量または用量の本発明の化合物またはポリマー画分、あるいはその医薬組成物を、そのような治療を必要とする個体に投与することにより、個体(例えば患者)における感染症または感染性疾患を治療および/または予防する方法に関する。感染症には、病原体の活性に直接または間接的に関連するあらゆる疾患、障害または状態が含まれる。感染症には、細菌、真菌、ウイルスおよび原生動物因子などの病原体の増殖を調節することにより予防、改善または治癒され得る疾患、障害または状態も含まれる。
【0100】
一部の実施形態では、感染症は混合感染症である。
【0101】
一部の実施形態では、感染症は全身感染症である。
【0102】
一部の実施形態では、感染症は歯性感染症である。
【0103】
一部の実施形態では、感染症は、皮膚および軟部組織の感染症または創傷/潰瘍の感染症である。
【0104】
一部の実施形態では、感染症は粘膜感染症である。
【0105】
一部の実施形態では、感染症は気道感染症である。
【0106】
一部の実施形態では、感染症は、細菌、真菌および/またはウイルス株の混合によって引き起こされる肺感染症を含む、肺感染症である。一部の実施形態では、肺感染症は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、嚢胞性線維症患者における肺感染症、または真菌性肺炎である。本発明はまた、本明細書に記載の疾患を含む特定の疾患の予防、例えば免疫不全患者における真菌性肺炎の予防にも関する。一部の実施形態では、感染症は皮膚および/または軟部組織感染症である。
【0107】
一部の実施形態では、感染症は膿瘍の感染症である。
【0108】
一部の実施形態では、感染症は副鼻腔炎である。
【0109】
一部の実施形態では、感染症は歯性感染症である。
【0110】
一部の実施形態では、感染症は眼感染症である。
【0111】
一部の実施形態では、本発明は腫瘍の治療に有用である。
【0112】
一部の実施形態では、本発明は、ウイルス性気道感染症の治療および/または予防に有用である。
【0113】
一部の実施形態では、本発明は尿路感染症の治療および/または予防に有用である。
【0114】
一部の実施形態では、本発明は膀胱炎の治療および/または予防に有用である。
【0115】
一部の実施形態では、本発明は、耳炎の治療および/または予防に有用である。
【0116】
一部の実施形態では、本発明は、腹膜炎および腹腔内敗血症の治療および/または予防に有用である。
【0117】
一部の実施形態では、本発明は、膿胸(pleural empyema)の治療および/または予防に有用である。
【0118】
一部の実施形態では、本発明は、敗血症の治療および/または予防に有用である。
【0119】
一部の実施形態において、本発明は、IBD、クローン病、および/またはクロストリジウム感染症の治療および/または予防に有用である。
【0120】
一部の実施形態では、本発明は、多剤耐性の細菌、ウイルスまたは真菌によって引き起こされる感染症を治療および/または予防するのに有用である。
【0121】
一部の実施形態では、本発明は、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)によって引き起こされる感染症の治療および/または予防に有用である。
【0122】
一部の実施形態では、本発明は、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)細菌によって引き起こされる感染症を治療および/または予防するのに有用である。
【0123】
一部の実施形態では、本発明は、微生物バイオフィルムの成長を処置および/または予防するのに有用である。
【0124】
一部の実施形態において、本発明は、表面、例えば、自然に見られる表面(例えば、池)の処理に有用である。
【0125】
製剤および剤形
薬剤または医薬品として使用される場合、本明細書に記載の式Iの調製物は、医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、製薬業界で周知の方法で調製することができ、局所治療が望ましいかまたは全身治療が望ましいか、および治療される領域に応じて、様々な経路で投与することができる。投与は、局所投与(経皮、表皮、眼、あるいは鼻腔内、膣内および直腸送達を含む粘膜への投与を含む)、肺内投与(例えば、ネブライザーによるものを含む粉末またはエアロゾルの吸入または吸送(insufflation)による投与;気管内または鼻腔内投与)、経口または非経口投与であってよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内投与、または注射もしくは注入;あるいは頭蓋内投与、例えば髄腔内または脳室内投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であっても、あるいは、例えば連続注入ポンプによるものであってもよい。局所投与用の医薬組成物および製剤には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液剤および粉末が含まれる。従来の医薬担体、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤などが必要であるかまたは望ましい場合がある。コーティングされたコンドーム、手袋なども有用となり得る。
【0126】
本発明は、1つ以上の薬学的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて、活性成分(または有効成分)として式Iの調製物を含む医薬組成物も包含する。本発明の組成物の製造において、活性成分は、典型的には、賦形剤と混合されるか、賦形剤により希釈されるか、あるいは、例えば水溶液、カプセル、サシェ、紙、または他の容器の形態のそのような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤としての役割を果たす場合、それは、活性成分のためのビヒクル、担体または媒体として働く固体、半固体または液体材料であってよい。したがって、組成物は、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体中)、錠剤、丸薬、粉末、ロゼンジ、サシェ、カシェ、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体中)、例えば最大10質量%の活性化合物を含む軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射液、および滅菌包装粉末の形態であってよい。
【0127】
本発明の化合物および組成物を局所投与、経口投与または注射による投与のために組み込むことができる液体剤形には、水溶液、適切なフレーバーシロップ、水性または油性懸濁液、およびエマルジョン、ならびにエリキシルおよび類似の医薬ビヒクルが含まれる。
【0128】
吸入または吹送用の組成物には、薬学的に許容される水性または有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末が含まれる。液体または固体組成物は、上記のような適切な薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。一部の実施形態では、組成物は、局所または全身効果のために、経口または鼻呼吸経路によって投与される。組成物は、不活性ガスを使用して噴霧することができる。噴霧溶液は、噴霧装置から直接吸い込むことができ、あるいは噴霧装置をフェイスマスクテントまたは間欠的陽圧呼吸器に取り付けてもよい。溶液、懸濁液または粉末組成物は、適切な方法で製剤を送達するデバイスから経口または経鼻投与することができる。
【0129】
一部の実施形態において、式Iおよび/またはそのポリマー画分は局所的に(locally)投与される。
【0130】
一部の実施形態では、式Iおよび/またはそのポリマー画分は点滴注入(instillation)により投与される。
【0131】
一部の実施形態では、式Iおよび/またはそのポリマー画分は局所(topically)投与される。
【0132】
一部の実施形態では、式Iおよび/またはそのポリマー画分は経腸的に投与される。
【0133】
一部の実施形態では、式Iおよび/またはそのポリマー画分は非経口投与される。
【0134】
一部の実施形態では、本発明の化合物およびポリマー画分は、抗菌剤の活性を増強する少なくとも1つの他の化合物または成分と組み合わせて投与される。がんおよび/または腫瘍の成長の治療に使用される場合、化合物およびポリマー画分は、他の抗菌薬または抗がん剤と組み合わせて投与されてよい。
【0135】
一部の実施形態では、本発明の式Iおよび/またはポリマー画分は、吸入用の溶液形態に調製される。
【0136】
一部の実施形態では、式Iおよび/またはそのポリマー画分は、吸入用の粉末形態に調製される。
【0137】
一部の実施形態では、式Iおよび/またはそのポリマー画分は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺移植、真菌性肺炎、人工呼吸器関連肺炎などにおける肺感染症を治療するためのものである。
【0138】
一部の実施形態では、式Iおよび/またはそのポリマー画分は、点滴注入用の溶液形態に調製される。そのような溶液は、例えば、尿路感染症、副鼻腔炎、膿瘍、腹膜炎、膿胸(lung empyema)の治療に有用である。
【0139】
一部の実施形態において、式Iおよび/またはそのポリマー画分は、例えば、根管の治療、歯周ポケットに適用される組成物、および口腔リンス溶液などの歯科用途のための溶液形態に調製される。
【0140】
式Iおよび/またはそのポリマー画分の局所製剤は、様々な用途、例えば、潰瘍、火傷の治療、および材料の含浸(impregnation of materials)に使用することができる。
【0141】
患者に投与される化合物または組成物の量は、投与されているもの、予防または治療などの投与の目的、患者の状態、投与方法などによって異なる。治療用途では、すでに疾患を患っている患者に、疾患およびその合併症の症状を治癒するまたは少なくとも部分的に抑えるのに十分な量で組成物を投与することができる。有効用量は、治療中の疾患の状態、ならびに疾患の重症度、患者の年齢、体重、全身状態などの要因に応じた主治医の判断によって決まる。
【0142】
本発明の化合物およびポリマー画分の治療用量は、例えば、治療が行われる特定の用途、化合物の投与方法、患者の健康および状態、ならびに処方医師の判断に従って変動し得る。医薬組成物中の本発明の化合物の割合または濃度は、投与量、化学的特性(例えば、疎水性)および投与経路を含む、多くの要因によって変動し得る。例えば、本発明の化合物およびポリマー画分は、非経口投与用に約0.1~約10%w/vの化合物を含む生理学的緩衝水溶液で提供することができる。ある典型的な用量範囲は、約1μg/kg体重/日~約1g/kg体重/日である。一部の実施形態において、用量範囲は、約0.01mg/kg体重/日~約100mg/kg体重/日である。投与量は、疾患または障害の進行のタイプおよび程度、特定の患者の全体的な健康状態、選択化合物の相対的な生物学的効果、賦形剤の組成、およびその投与経路などの変数に依存する可能性が高い。有効用量は、in vitroまたは動物モデルの試験システムから得られる用量反応曲線から推定できる。
【0143】
本発明を特定の実施例によりさらに詳細に説明する。以下の例は、例示の目的で提供されており、いかなる形でも本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本質的に同じ結果をもたらすために変更または修正することができるさまざまな重要でないパラメーターを容易に認識するであろう。
【実施例
【0144】
以下で使用する試薬および溶媒は、Sigma-Aldrichなどの商業的供給元から入手できる。質量分析の結果は、電荷に対する質量の比として報告され、その後に各イオンの相対存在量が続く(括弧内)。表では、最も一般的な原子同位体を含むM+H(または、記述のように、M-H)イオンについて単一のm/e値が報告されている。
【0145】
以下のものは、本発明の化合物およびポリマー画分の例である。
【0146】
実施例1
【化7】
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびヒドラジン水和物(5.0g、0.1モル、2.6質量%)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で1時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を190℃に上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有するオリゴマー水溶液330mLを透明で実質的に無色の液体として得た。
【0147】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、その溶液を3kDaの上限カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例1の表題化合物120gを含むろ液1250mLを得た。残留末端アミノ基の酸塩基滴定により、表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について1850(±10%)Daの平均分子量が決定された。
【0148】
実施例1の化合物をMALDI-MSで調べた。0.1mlのα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)の水溶液を、実施例1の調製物の0.1mg/ml水溶液0.1mlに加えて混合した。得られた溶液1μlをMALDIのターゲットに塗布し、風乾した。得られたサンプルを、400nmのレーザー動作周波数を使用して、MALDI-TOFデバイス(Brucker Daltonics)で試験した。マスイオンが、m/z480~2000Daの範囲において正イオンモードで登録された。実施例1の調製物の質量スペクトルを図1に示す。
【0149】
代替合成A
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびセミカルバジド(7.5g、0.1モル)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を190℃に上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0150】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、その溶液を、3kDaの上限質量カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例1の表題化合物120gを含むろ液1250mLを得た。
【0151】
代替合成B
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびセミカルバジド塩酸塩(11.05g、0.1モル)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を190℃に上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0152】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、その溶液を、3kDaの上限質量カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例1の表題化合物120gを含むろ液1250mLを得た。
【0153】
代替合成C
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびセミカルバジド塩酸塩(11.05g、0.1モル)および水(5mL)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を190℃に上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0154】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、その溶液を、3kDaの上限質量カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例1の表題化合物120gを含むろ液1250mLを得た。
【0155】
代替合成D
ガス排出管、攪拌子、および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびカルボヒドラジド(90g、0.1モル)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を190℃に上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0156】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、その溶液を、3kDaの上限質量カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例1の表題化合物120gを含むろ液1250mLを得た。
【0157】
代替合成E
ガス排出管、攪拌子、および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびアミノグアニジン塩酸塩(110.5g、0.1モル)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を190℃に上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0158】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、その溶液を、3kDaの上限質量カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例1の表題化合物120gを含むろ液1250mLを得た。
【0159】
実施例2
【化8】
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびヒドラジン水和物(5.0g、0.1モル、2.6質量%)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を195℃まで上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0160】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、その溶液を、10kDaの上限カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例2の表題化合物130gを含むろ液1350mLを得た。残留末端アミノ基の酸塩基滴定により、表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について3170(±10%)Daの平均分子量が決定された。
【0161】
実施例
【化9】
実施例1に記載の方法を使用して、表題化合物を調製した。この実施例では、600mLの得られたろ液(3000Daの上限質量カットオフのオリゴマー溶液)を水で5.9Lに希釈し、上限質量カットオフが1000Daの膜を備えたろ過膜モジュールで透析して、5.4Lのろ液を分離した。残りの透析物を分離して、実施例3の表題化合物44gを含む溶液450mLを得た。表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について2300Daの平均分子量が決定された。
【0162】
実施例4
【化10】
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびヒドラジン水和物(5.0g、0.1モル、2.6質量%)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で1時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を190℃に上げ、フラスコの内容物を4時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、熱水(150mL)を撹拌しながら加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0163】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、溶液を、3kDaの上限カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、110gの不揮発性物質を含むろ液1300mLを得た。このろ液600mLを水で5Lに希釈し、上限質量カットオフが2kDaの膜を備えたろ過膜モジュールで透析して、4.7Lのろ液を分離した。残りの透析物を分離して、実施例4の表題化合物28gを含む溶液290mLを得た。表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について2500の平均分子量(±10%)Daが決定された。
【0164】
実施例5
【化11】
ガス排出管、攪拌子、および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびヒドラジン水和物(5.0g、0.1モル、2.6質量%)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を195℃に上げ、フラスコの内容物を1.5時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、熱水(150mL)を撹拌しながら加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0165】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次に、溶液を5kDaの上限カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、5kDaの上限カットオフのオリゴマー120gを含むろ液1230mLを得た。このろ液600mLを水で6Lに希釈し、上限質量カットオフが3kDaの膜を備えたろ過膜モジュールで透析して、5.6Lのろ液を分離した。残りの透析物を分離して、実施例5の表題化合物35gを含む溶液360mLを得た。表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について3680(±10%)Daの平均分子量が決定された。
【0166】
実施例6
【化12】
表題化合物は、以下の試薬を用いて、実施例1に記載の方法を使用して調製した:
【0167】
実施例6の表題化合物は、10%水溶液として得られた。表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)の平均分子量は、残留末端アミノ基の酸塩基滴定により決定して、1600(±10%)Daであった。
【0168】
実施例7
【化13】
表題化合物は、以下の試薬を用いて、実施例2に記載の方法を使用して調製した:
【0169】
実施例7の表題化合物は、10%水溶液として得られた。表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)の平均分子量は、残留末端アミノ基の酸塩基滴定により測定して、2800(±10%)Daであった。
【0170】
実施例8
【化14】
表題化合物は、以下の試薬を用いて、実施例2に記載の方法を使用して調製した:
【0171】
実施例8の表題化合物は、10%水溶液として得られた。表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)の平均分子量は、残留末端アミノ基の酸塩基滴定により決定して、2600(±10%)Daであった。
【0172】
実施例9
【化15】
表題化合物は、以下の試薬を用いて、実施例1に記載の方法を使用して調製した:
【0173】
実施例9の表題化合物は、10%水溶液として得られた。表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)の平均分子量は、残留末端アミノ基の酸塩基滴定により測定して、2000(±10%)Daであった。
【0174】
実施例10
【化16】
ガス排出管、攪拌子および温度計装を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびヒドラジン水和物(5.0g、0.1モル、2.6質量%)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で1時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を190℃に上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0175】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、溶液を2kDaの上限カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例10の表題化合物80gを含むろ液1000mLを得た。残留末端アミノ基の酸塩基滴定により、表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について1330(±10%)Daの平均分子量が決定された。
【0176】
実施例11
【化17】
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびヒドラジン水和物(5.0g、0.1モル、2.6質量%)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を195℃まで上げ、フラスコの内容物を1時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0177】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次いで、溶液を、5kDaの上限カットオフを有する膜モジュールを通してろ過し、実施例11の表題化合物126gを含む溶液1300mLを得た。残留末端アミノ基の酸塩基滴定により、表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について、3100(±10%)Daの平均分子量が決定された。
【0178】
実施例12
【化18】
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびヒドラジン水和物(5.0g、0.1モル、2.6質量%)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、175~180℃で2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去した。次に、温度を195℃まで上げ、フラスコの内容物を2時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。次に、得られた溶液を注ぎ出し、フラスコを水(30mL)ですすぎ、両方の溶液を合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0179】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次に、この溶液を、10kDaの上限カットオフを有する膜モジュールでろ過し、1270gの不揮発性物質を含む溶液1350mLを得た。このろ液600mLを水で6Lに希釈し、上限質量カットオフが5kDaの膜を備えたろ過膜モジュールで透析して、5.8Lのろ液を分離した。残りの透析物を分離して、実施例12の目的の表題化合物9gを含む溶液180mLを得た。表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について、5700(±10%)Daの平均分子量が決定された。
【0180】
実施例13
ガス排出管、攪拌子および温度計を備えた耐熱1Lフラスコに、グアニジン塩酸塩(95.5g、1.0モル、48.7質量%)、ヘキサメチレンジアミン(104.4g、0.9モル、48.7質量%)およびヒドラジン水和物(5.0g、0.1モル、2.6質量%)を装填した。アンモニアを捕捉するために、排出管をレシーバーに接続した。フラスコの内容物を攪拌し、175~180℃に加熱し、2時間にわたり水とアンモニアを徐々に除去し、その後195℃に温度を上げて1時間混合した。次に、温度を195℃まで上げ、フラスコの内容物を2時間撹拌した。温かい反応塊を130~140℃に冷却し、撹拌しながら熱水(150mL)を加え、反応塊が完全に溶解するまで混合物を撹拌し続けた。得られた溶液をデカントし、フラスコを水(30mL)ですすぎ、その後、デカントした溶液と再び混ぜ合わせた。合わせた溶液を酸でpH6~7に中和し、50%の濃度を有する330mLのオリゴマー水溶液を透明で実質的に無色の液体として得た。
【0181】
得られた50%オリゴマー溶液300mLに水(1200mL)を加えて、粗生成物の10%溶液を得た。次に、この溶液を、10kDaの上限カットオフを有する膜モジュールでろ過し、1270gの不揮発性物質を含む溶液1350mLを得た。このろ液600mLを水で6Lに希釈し、上限質量カットオフが2kDaの膜を備えたろ過膜モジュールで透析して、5.7Lのろ液を分離した。残りの透析物を分離して、下記式で表される目
的化合物28gを含む溶液290mLを得た:
【化19】
表題化合物(酸を含まない遊離塩基形態)について、2630(±10%)Daの平均分子量が決定された。
【0182】
実施例14
実施例1~13で分離された調製物の構造的特徴を表1に示す。実施例1~12の調製物の元素分析(乾物ベース)を表2に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
【表2】
【0185】
実施例1~12の調製物の殺生物活性と、米国特許第8,993,712号に記載されているプロトタイプ調製物(5273~26000Daの平均分子量を有する)との比較を以下の実施例に示す。プロトタイプ調製物は、下記式の化合物である:
【化20】
式中、n=1~3;m=2~10;z=4~20;およびXは不在または酸であり、n/mの平均比は1/9であり、重合度は40以上であり、ポリマー分子の平均分子量(対イオンなし)は約5273Da~約26000Daの範囲である。
【0186】
実施例15
この実施例では、実施例1~12の調製物の有効性を、様々な細菌(好気性および嫌気性)ならびに真菌病原体に対して試験した。
【0187】
抗菌活性は、連続希釈法によって評価した。化合物を滅菌水に溶解し、500~0.0025mg/Lの濃度で使用した。隣接する試験管の培地中の薬物濃度は2倍異なっていた。37℃で72時間細菌を培養した後、実験結果を収集した。データを表3に示す。
【0188】
【表3】
【0189】
これらのデータは、本発明の化合物が顕著な抗菌活性を有することを示す。
【0190】
【表4】
【0191】
これらのデータは、本発明の化合物が顕著な抗真菌活性を有することを示す。
【0192】
実施例16
この実施例では、本発明の化合物の抗ウイルス活性を試験した。
【0193】
実施例1~12の調製物の5.0%水溶液を調製した。ウイルスが薬剤と接触する時間は、20±2℃の温度で0.5~1.0分であった。ウイルス感染力価の阻害の程度によって決定されるウイルス誘発性細胞変性効果によって細胞内でのウイルス複製を評価し、EC50として測定した。データを表5に示す。
【0194】
【表5】
【0195】
これらのデータは、本発明の化合物が、単純構造および多構造のRNAおよびDNA含有ウイルスに対して顕著な殺ウイルス活性を有することを示す。
【0196】
実施例17
この実験では、式Iの調製物の毒性を、生体外(Ex Vivo)赤血球溶血アッセイ(ヒト赤血球)を使用して分析した。ヒト赤血球をPBSに溶解させた。各化合物を5希釈で試験した。データを表6に示す。
【0197】
【表6】
【0198】
実施例13~16の調製物の生物学的活性および毒性のデータは、式Iの調製物の予想外の利点を実証する。本発明のいかなる理論にも拘束されることなく、本発明の方法は、特定の病原体に対して高レベルの活性をもたらす狭く有利な分子量分布を有するポリマー調製物を提供すると考えられる。調製物からある低分子量および高分子量の成分を除去すると、低毒性、強化された抗菌活性、促進された生体膜への浸透、有利な崩壊プロファイルおよびその他の有利な特徴を有する式Iの画分がもたらされる。式Iの化合物のある画分は、特定の微生物を標的とする独自の活性プロファイルを有する。例えば、実施例1の調製物は、アスペルギルス属の多細胞真菌に対して高い活性を示す。実施例4の調製物は、カンジダ属の単細胞真菌に関して非常に効果的である。実施例11の調製物は、グラム陽性細菌に対して高い活性を示す。実施例2の調製物は、グラム陰性菌に対して活性である。マイコバクテリアは、実施例12の調製物に対して非常に感受性が高い。実施例1、2、3、10、および13の化合物はそれぞれ、特定のウイルスに対して高い活性を示す。したがって、調製されたサンプルは、特定の種類の病原体を標的とするのに役に立つ、独特でかつ予想外の活性プロファイルを有する。
【0199】
実施例18
この実施例では、式Iの化合物の抗腫瘍活性を、継代エールリッヒ固形腫瘍のモデルを使用して試験した。式Iの調製物を、腫瘍移植と同時に腹腔内に投与した(0.01%溶液を0.2ml)。対照動物には水(試験薬物の溶媒として使用)を投与した。
【0200】
【表7】
【0201】
結果は、試験サンプルが実験動物の腫瘍の成長を阻害することを示す。
【0202】
実施例19
この実験では、継代エールリッヒ固形腫瘍のモデルを使用して、本発明の生成物の抗がん剤との併用効果を試験した。薬物を、腫瘍移植と同時に腹腔内に投与した(0.01%溶液を0.2ml)。対照動物には水(試験薬物の溶媒として使用)を投与した。
【0203】
【表8】
【0204】
結果は、試験サンプルが、抗がん剤と一緒に実験動物における腫瘍の成長を阻害することを示す。当業者によって理解されるように、式Iの調製物が他の抗がん剤、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、プリン拮抗薬、ピリミジン拮抗薬、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン剤、およびその他の抗がん剤と組み合わせた場合に、同様の抗がん効果が生じると予想される。
【0205】
実施例20
本明細書に記載の化合物を、実施例1の方法に従ってMALDI-MSにより調べた。表9は、m/z480~2000Daの範囲での実施例1、1a、1b、1c、1d、6、9、10の調製物の質量スペクトルにおける特徴的なMH+イオンの質量値(m/z)とそれらの相対強度を示す。
【0206】
【表9】
【0207】
【表10】
【0208】
【表11】
【0209】
実施例21
この実施例では、嚢胞性線維症の患者における肺感染細菌病原体に対する実施例1の調製物の有効性を試験した。この試験の結果を表12に示す。
【0210】
【表12】
【0211】
これらのデータは、本発明のポリマー画分が、CF患者に一般的に見られる耐性株に対して広いスペクトルの活性をもたらすことを示す。本発明のポリマー画分は、TOBIおよびケイストン(Cayston)などの従来の薬物よりも強化された活性を有する。
【0212】
実施例22
この実施例では、混合呼吸器感染症の動物モデルに対する調製物の有効性を試験した。
【0213】
方法:実施例1、5および10の調製物の効力を、嚢胞性線維症患者由来の細菌分離株に対して調べた。MIC値は、CLSIガイドラインに従ってブロスマクロ希釈法により決定した。in vivo試験では、8週齢のC57BL/6マウスに、緑膿菌MR-6(2x10cfu/マウス)+アスペルギルス・フミガーツス(6x10cfu/マウス)を鼻腔内感染させた。感染の12時間後に、実施例1、5、および10の調製物、あるいはトブラマイシンまたはアズトレオナム(aztreonam)を32xMICで鼻腔内吸入により投与して、治療を開始した。
【0214】
結果:実施例1、5、および10の調製物は、アスペルギルス・フミガーツスに対して0.25~0.5mg/LのMICおよび緑膿菌に対して1.0~4.0mg/LのMICで、高レベルの抗菌活性を示した。トブラマイシンおよびアズトレオナムの活性はそれより低かった:トブラマイシンは緑膿菌に対して16~32mg/LのMICを示し、アスペルギルス・フミガーツスに対しては有効ではなかった;アズトレオナムは、緑膿菌に対して64mg/LのMICを示し、アスペルギルス・フミガーツスに対しては有効ではなかった。
【0215】
【表13】
【0216】
実施例23
この実施例では、調製物(実施例1および10)の有効性をヒト副鼻腔炎の治療について試験した。副鼻腔炎の患者(合計15人)は、直接副鼻腔穿刺、ならびに0.05%の実施例1の調製物(5人の患者)または0.05%の実施例10の調製物(5人の患者)の2mlの点滴注入を受ける。対照患者には、滅菌0.9%生理食塩水を点滴注入した(5人の患者)。臨床的有効性は、体温の正常化および痛みの低減とみなされた。微生物学的効果は、注入の48時間後にコロンビア寒天培地にプレーティングして37℃で24時間後のCFU数の減少として決定した。
【0217】
【表14】
【0218】
実施例24
この実施例では、調製物(実施例1および4)の有効性をヒト膀胱炎の治療について試験した。膀胱炎の患者(合計15人)は、0.005%の実施例1の調製物(5人の患者)または0.1%の実施例4の調製物(5人の患者)の10mlの膀胱内点滴注入を受けた。対照患者には、滅菌0.9%生理食塩水を点滴注入した(5人の患者)。微生物学的効果は、注入の48時間後にコロンビア寒天培地にプレーティングして37℃で24時間後のCFU数の減少として決定した。
【0219】
【表15】
【0220】
実施例25
この実施例では、調製物の有効性をバクテリオファージに対して試験した。特に、サルモネラ属菌に感染するバクテリオファージに対する0.05%の実施例1、3、9、10、12および13の調製物の効力を調べた。ファージは、Gratiaの方法(Kropinski et al. "Enumeration of bacteriophages by double agar overlay plaque assay." Bacteriophages: Methods and Protocols, Volume 1: Isolation, Characterization, and Interactions, Humana Press, 2009, vol. 501, 69-76)によって数えた。バクテリオファージを化合物と5分間インキュベートし、次いでろ過し、PBSバッファーで洗浄した。次に、バクテリオファージサンプルをプラークアッセイベースの方法で使用して、その活性を調べた。
【0221】
【表16】
【0222】
実施例26
この実施例では、多剤耐性微生物に対する実施例1、10、および13の調製物の有効性を試験した。
【0223】
試験細菌株:多剤耐性緑膿菌AGR18およびMR23
真菌株:アンホテリシンBおよびボリコナゾールに耐性のカンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)CG15、VT18
微生物学的効果は、最小阻害濃度(MIC)として決定した。MICは、目に見える増殖を完全に阻害する抗生物質の最低濃度として定義された。
【0224】
多剤耐性緑膿菌分離株に対する実施例1、10および13の調製物の殺菌活性を以下の表17に示す。
【表17】
【0225】
多剤耐性カンジダ・グラブラータ分離株に対する実施例1、10および13の調製物の殺菌活性を以下の表18に示す。
【表18】
【0226】
実施例27
この実施例では、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)に対する本発明の調製物の有効性を試験した。
【0227】
MICは、CLSIの推奨に従って、標準接種(10cfu/mL)で陽イオン調整ミューラーヒントンブロスII(Becton Dickinson)を使用したブロスマクロ希釈法(broth macrodilution method)を使用して決定した。この試験で使用した培養物は、ヒトの感染からの臨床分離菌であった。これらの実験のデータを表19に示す。
【0228】
【表19】
【0229】
実施例28
この実施例では、本発明の調製物の有効性を、予め形成されたバイオフィルムに対して試験した。具体的には、予め形成された24時間の古さのバイオフィルムに対する実施例1の調製物の有効性を試験した。抗菌剤のMICは、CLSIガイドラインに従って、ブロスマクロ希釈法によって決定した。5×10コロニー形成単位(CFU)/mLの標準的な細菌接種を使用した。抗菌剤の2倍連続希釈液を陽イオン調整MHB中に調製した。MICは、目に見える増殖を完全に阻害する抗生物質の最低濃度として定義された。
【0230】
96ウェルの平底ポリスチレン組織培養マイクロタイタープレート(Sarstedt、ニュームブレヒト、ドイツ)の各ウェルに、カチオン調整MHB中の標準化された緑膿菌接種材料(5×10CFU/mL)200μlを添加した。37℃で24時間インキュベートした後、バイオフィルムサンプルをリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄して非付着細菌を除去し、MICの1、2、4、8、16、32、および64倍の濃度で本発明の調製物を含む200μLのMHBに24時間曝露した。未処理のバイオフィルムを陰性対照として使用した。曝露後、抗菌剤のキャリーオーバーを防ぐためにウェルの内容物を吸引し、各ウェルを滅菌脱イオン水で3回洗浄した。
【0231】
CFU数を評価するために、バイオフィルムをウェルの端に特に注意して徹底的にこすり取った(11)。ウェルの内容物を吸引し、1mLの等張リン酸緩衝液(0.15M、pH7.2)中に入れ、連続希釈およびミューラーヒントン寒天培地へのプレーティングにより総CFU数を決定した。データをlog10スケールに変換し、未処理対照と比較した。
【0232】
MBECは、予め形成されたバイオフィルム中の細菌を50%(MBEC50)、90%(MBEC90)、および100%(MBEC100)殺した薬物の濃度として決定された。MBECの感度は、米国臨床検査標準協議会解釈ガイドライン2012(2012 Clinical and Laboratory Standards Institute guidelines for interpretation)を使用して決定された。すべてのアッセイには最低3回の反復が含まれ、3回の独立した実験で繰り返された。これらの実験の結果を表20に示す。
【0233】
【表20】
【0234】
実施例29
この実施例では、表面の一般的な処理について調製物の効力を試験した。実施例7の調製物の、7フィート(2.13m)×5フィート(1.52m)×2フィート(0.61m)(幅×長さ×高さ)の寸法の池の水を殺菌する能力を試験した。試験の前に、水を池から採取し、ろ過し、ミューラーヒントン寒天プレート(Oxoid Ltd.、ロンドン、イギリス)にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。推定コロニー形成単位数は約41ogl0CFU/mlであった。水に実施例7の試験化合物を最終濃度0.01%まで添加し、ミューラーヒントン寒天プレート(OxoidLtd.、ロンドン、イギリス)にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした後、目に見える細菌の増殖はなかった。
【0235】
実施例30
この実施例では、実施例3に記載の分画調製物をがん細胞スクリーニングで試験した。
【0236】
方法:がんスクリーニングパネルのヒト細胞株を、5%ウシ胎児血清および2mMのL-グルタミンを含むRPMI 1640培地中において増殖させた。細胞を、個々の細胞株の倍加時間に応じて5,000~40,000細胞/ウェルの範囲のプレーティング密度で、100μLの培地中において96ウェルマイクロタイタープレートに接種した。細胞接種後、マイクロタイタープレートを37℃、5%CO、95%空気および100%相対湿度で24時間インキュベートした後、実施例3の調製物を添加した。
【0237】
24時間後、各細胞株の2枚のプレートをTCAでin situで固定し、実施例3の調製物の添加時の各細胞株の細胞集団の対照測定値(Tz)を示した。実施例3の調製物を、所望の最終最大試験濃度の400倍でジメチルスルホキシドに可溶化し、使用前に凍結保存した。添加時に、実施例3の調製物の凍結濃縮物のアリコートを解凍し、50μg/mlゲンタマイシンを含む完全培地で所望の最終最大試験濃度の2倍に希釈した。追加の4つの10倍または1/2log連続希釈を行い、合計5種類の濃度の実施例3の調製物と対照とを提供する。100μlの様々な希釈率のアリコートを、100μlの培地を含む適切なマイクロタイターウェルに添加し、必要最終濃度の実施例3の調製物を各サンプル中に提供した。
【0238】
実施例3の調製物の添加後、プレートを37℃、5%CO、95%空気、および100%相対湿度でさらに48時間インキュベートした。接着細胞については、冷TCAの添加によりアッセイを終了した。50μlの50%(w/v)冷TCA(最終濃度、10%TCA)を穏やかに加えることにより、in situで細胞を固定し、4℃で60分間インキュベートした。上清を廃棄し、プレートを水道水で5回洗浄し、風乾した。1%酢酸中0.4%(w/v)のスルホローダミンB(SRB)溶液(100ul)を各ウェルに添加し、プレートを室温で10分間インキュベートした。染色後、1%酢酸で5回洗浄して結合していない色素を除去し、プレートを風乾した。続いて、結合した染料を10mMトリス塩基で可溶化し、515nmの波長において自動プレートリーダーで吸光度を読み取った。浮遊細胞の場合、50μlの80%TCA(最終濃度、16%TCA)を穏やかに加えることによって、ウェルの底に沈降細胞を固定することによりアッセイを終了したことを除き、方法論は同じであった。7つの吸光度測定[時間ゼロ(Tz)、対照増殖(C)、および5つの濃度レベルの実施例3の調製物の存在下での試験増殖(Ti)]を用いて、実施例3調製物の各濃度レベルについて増殖率(percentage growth)を次のように計算した。
Ti>/=Tzの濃度に関して、[(Ti-Tz)/(C-Tz)]x100
Ti<Tzの濃度に関して、[(Ti-Tz)/Tz]x100
【0239】
3つの用量反応パラメーターが計算された。50%の増殖阻害(GI50)は、[(Ti-Tz)/(C-Tz)]x100=50から計算され、これは、薬物インキュベーション中に対照細胞における正味のタンパク質の増加(SRB染色により測定)の50%の減少をもたらす実施例3の調製物の濃度である。全増殖阻害(TGI)をもたらす実施例3の調製物の濃度は、Ti=Tzから計算された。処理後の細胞の正味の損失を示すLC50(開始時と比較して、薬物処理の終了時に測定タンパク質の50%の減少をもたらす薬物の濃度)は、[(Ti-Tz)/Tz]x100=-50から計算される。活性レベルに達すると、これら3つのパラメーターのそれぞれについて値が計算される;ただし、効果に達しないかまたはそれを超えている場合、そのパラメーターの値は、試験された最高濃度よりも高いまたは最低濃度よりも低いと表現される。
【0240】
in vitroスクリーニングで使用したヒトがん細胞株のリストを表21に示す。細胞株はNCI-Frederickで維持されている。
【表21-1】
【表21-2】
【表21-3】
【表21-4】
【0241】
この実験の結果を表22に示す。がん細胞スクリーニングの用量反応曲線を図2に示す。データを平均グラフ形式に置き換えたものを図3に示す。
【0242】
【表22】
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
約780Da~約5700Daの平均分子量および約10kDa未満の分子分布を有する式Iのポリマー画分:
【化21】
式中、nは1~3であり、mは4~14であり、zは1~6であり、Xは酸である。
[実施態様2]
実質的に他のポリマー成分を含まない、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様3]
実質的に分離されている、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様4]
XはHCl、H SO またはAcOHから選択される、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様5]
前記ポリマー画分の分子量中央値は約1330Da~約3500Daの範囲である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様6]
nは1であり、mは8であり、zは1.4であり、XはHClであり、平均分子量は1850(±10%)Daであり、分子分布は約3000Da未満である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様7]
nは1であり、mは8であり、zは2.4であり、XはHClであり、平均分子量は3170(±10%)Daであり、分子分布は約10000Da未満である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様8]
nは1であり、mは8であり、zは1.8であり、XはHClであり、平均分子量は2300(±10%)Daであり、分子分布は約1000Daと約3000Daの間である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様9]
nは1であり、mは8であり、zは1.9であり、XはHClであり、平均分子量は2500(±10%)Daであり、分子分布は約2000Daと約3000Daの間である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様10]
nは1であり、mは8であり、zは2.8であり、XはHClであり、平均分子量は3680(±10%)Daであり、分子分布は約3000Daと約5000Daの間である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様11]
nは3であり、mは4であり、zは1.4であり、XはHClであり、平均分子量は1600(±10%)Daであり、分子量分布は約3000Da未満である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様12]
nは1であり、mは14であり、zは1.3であり、XはHClであり、平均分子量は3170(±10%)Daであり、分子分布は約10000Da未満である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様13]
nは1であり、mは8であり、zは1.7であり、XはH SO であり、平均分子量は2600(±10%)Daであり、分子分布は10000Da未満である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様14]
nは1であり、mは8であり、zは1.7であり、XはAcOHであり、平均分子量は2200(±10%)Daであり、分子分布は約3000Da未満である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様15]
nは1であり、mは8であり、zは1であり、XはHClであり、平均分子量は1330(±10%)Daであり、分子分布は約2000Da未満である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様16]
nは1であり、mは8であり、zは2.4であり、XはHClであり、平均分子量は3100(±10%)Daであり、分子分布は約5000Da未満である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様17]
nは1であり、mは8であり、zは4.3であり、XはHClであり、平均分子量は5700(±10%)Daであり、分子分布は約5000と約10000Daまでの間である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様18]
nは1であり、mは8であり、zは2.0であり、XはHClであり、平均分子量は5700(±10%)Daであり、分子分布は約2000と約10000Daまでの間である、実施態様1に記載のポリマー画分。
[実施態様19]
実施態様1に記載のポリマー画分と医薬賦形剤とを含む医薬組成物。
[実施態様20]
式Iのポリマー画分を調製する方法であって、
ヘキサメチレンジアミンを、グアニジン塩、ならびにヒドラジン水和物、セミカルバジド、セミカルバジド塩酸塩、カルボヒドラジドおよびアミノグアニジン塩酸塩からなる群より選択される化合物と、175℃~195℃の温度で反応させるステップ;および
透析によりポリマー画分を分離するステップ
を含む、方法。
[実施態様21]
約780Da~約5700Daの平均分子量および約10kDa未満の分子分布を有する式Iのポリマー画分であって:
【化22】
式中、nは1~3であり、mは4~14であり、zは1~6であり、Xは酸であり、前記ポリマー画分は、ヘキサメチレンジアミンを、グアニジン塩、ならびにヒドラジン水和物、セミカルバジド、セミカルバジド塩酸塩、カルボヒドラジドおよびアミノグアニジン塩酸塩からなる群より選択される化合物と、175℃~195℃の温度で反応させるステップ;および透析によりポリマー画分を分離するステップ;を含むプロセスにより調製されたものである、ポリマー画分。
[実施態様22]
細菌因子、真菌因子、ウイルス因子、原生動物因子およびがん細胞からなる群より選択される因子の増殖を阻害する方法であって、前記因子を、有効量の実施態様1に記載のポリマー画分と接触させることを含む、方法
[実施態様23]
有効量の実施態様1に記載のポリマー画分を対象に投与することを含む、必要とする対象において感染症を治療する方法。
[実施態様24]
有効量の実施態様1に記載のポリマー画分を対象に投与することを含む、必要とする対象においてがんを治療する方法。
[実施態様25]
前記感染症は、細菌因子、真菌因子、ウイルス因子および原生動物因子からなる群より選択される因子によって引き起こされたものである、実施態様23に記載の方法。
[実施態様26]
前記感染症は混合感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様27]
前記感染症は全身感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様28]
前記感染症は歯性感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様29]
前記感染症は、皮膚および軟組織感染症、または創傷/潰瘍の感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様30]
前記感染症は粘膜感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様31]
前記感染症は気道感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様32]
前記感染症は肺感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様33]
前記肺感染症は、細菌株と真菌株の混合によって引き起こされる、実施態様32に記載の方法。
[実施態様34]
前記肺感染症は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、および人工呼吸器関連肺炎(VAP)から選択される、実施態様32に記載の方法。
[実施態様35]
前記感染症は、皮膚および軟組織感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様36]
前記感染症は、膿瘍の感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様37]
前記感染症は副鼻腔炎である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様38]
前記感染症は眼感染症である、実施態様23に記載の方法。
[実施態様39]
前記ポリマー画分は腫瘍を治療するために使用される、実施態様24に記載の方法。
[実施態様40]
前記ポリマー画分は局所的に投与される、実施態様23に記載の方法。
[実施態様41]
前記ポリマー画分は点滴注入される、実施態様23に記載の方法。
[実施態様42]
前記ポリマー画分は局所投与される、実施態様23に記載の方法。
[実施態様43]
前記ポリマー画分は経腸的に投与される、実施態様23に記載の方法。
[実施態様44]
前記ポリマー画分は非経口投与される、実施態様23に記載の方法。
[実施態様45]
抗菌剤の活性を増強する少なくとも1つの化合物と組み合わせて前記ポリマー画分を投与することを含む、実施態様23に記載の方法。
[実施態様46]
前記化合物は他の抗菌薬または抗がん剤と組み合わせて投与される、実施態様23または24に記載の方法
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図2-9】
図3-1】
図3-2】
図3-3】