(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】糸係止部材及びそのアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
B68G 7/05 20060101AFI20240419BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
B68G7/05 Z
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2020018625
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134464
【氏名又は名称】株式会社トスカバノック
(73)【特許権者】
【識別番号】591017054
【氏名又は名称】株式会社三洋製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】平井 智行
(72)【発明者】
【氏名】村主 隆博
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064576(JP,A)
【文献】特開2019-200368(JP,A)
【文献】特開2010-006470(JP,A)
【文献】特開2019-043386(JP,A)
【文献】登録実用新案第3112848(JP,U)
【文献】米国特許第05074452(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0006008(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 1/00-99/00
B60N 2/00- 2/90
B65C 1/00-11/06
B60R 13/01-13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止バーの略中央部分に頂面が弧状の突出部を一体に形成し、その突出部に糸の挿通孔を形成してある糸係止部材であって、前記した糸の挿通孔は楕円形に形成してあることを特徴とする糸係止部材。
【請求項2】
前記した突出部の頂面から係止バーの表面にかけてカーブするスロープを形成し前記した楕円形の糸の挿通孔の周域を肉盛り補強してあることを特徴とする請求項1に記載の糸係止部材。
【請求項3】
前記した係止バーの少なくとも一方の端面には、この係止バーを押圧するピストンロッドの先端を受ける当圧部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の糸係止部材。
【請求項4】
前記した当圧部は円錐状をした突起部であることを特徴とする請求項3に記載の糸係止部材。
【請求項5】
前記した糸係止部材は前記した係止バーの突出部が形成されている裏面側で連結部を介してランナーに複数個が所定ピッチで連結された
アッセンブリとし、前記した係止バーの長手方向はランナーの長手方向に対して直交とされており、そのアッセンブリはランナーの両端部で連結して長尺に連続可能としてあることを特徴とする
請求項1に記載の糸係止部材のアッセンブリ。
【請求項6】
前記した連結部は破断し易いように細径部分を形成していることを特徴とする請求項5に記載の糸係止部材のアッセンブリ。
【請求項7】
前記したアッセンブリの連結は、ランナーの一方端部に受穴を形成し、他端部に、その受穴に嵌入される突起を一体に形成してあることを特徴とする請求項5に記載の糸係止部材のアッセンブリ。
【請求項8】
前記した受穴の開口縁には、前記した突起を受け入れ易くするための面取り部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の糸係止部材のアッセンブリ。
【請求項9】
前記した突起の外周面には受穴の内壁面と部分接触し、抜け防止を図るための突条が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の糸係止部材のアッセンブリ。
【請求項10】
前記した突起は抜け防止のため横断面を楕円状とし、その長軸方向の端部が受穴の内壁面と部分接触していることを特徴とする請求項8に記載の糸係止部材のアッセンブリ。
【請求項11】
前記したランナーは端部で連結した時に、少なくとも一側面はフラットな面一に構成されることを特徴とする請求項7から10に記載のうち1項に記載の糸係止部材のアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は自動車のシートやアームレスト、ヘッドレスト等の内装、家具としてのソファや寝具等にあってクッション材の外表面を覆う皮革、合成皮革、布等の縫製に用いる糸係止部材及びそのアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のシートのクッション材の表面に表皮材を縫着するのは、職人が人手によって針と糸を用いて縫製していたもので、効率が悪く、また、ミシンを用いようとしても平面的なものにしか対応できず、立体的には対処できなかった。
【0003】
これを解決するため、特許文献1、特許文献2に示される技術が開陳されている。特許文献1としては、糸を通した針を対象に貫通させ、その針を戻す際に対象の裏面で結び目を形成し、抜け止めを図るものである。この場合は対象の構成に起因して針の使用が制約されてしまう。
【0004】
また、特許文献2には、基材とクッション材の間に針先を挿し込み、糸挿通孔を形成してその挿通孔に糸を挿通した糸係止部材を、中空ニードルを用いて基材と表皮材との間に打ち込み、ステッチを形成するというものである。この場合には、中空ニードルは傾斜角をもって、基材に沿って滑らせるように打ち込む必要があり、中空ニードルの先端の損傷は著しく、部品寿命が短くなってしまうとともに、使用する糸が撚糸の場合、糸挿通孔の内縁との擦れによって、糸の解れが生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-71382号公報
【文献】特開2019-64576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明が解決しようとする問題点は、自動車の内装や、家具としてのソファ、寝具等のクッション材の表面を覆う表皮材を、クッション材に縫着するについて、その作業の方向性を表皮材側からの一方向で可能とし、立体縫製を可能とし、しかも作業を自動連続運転可能なロボット化できるとともに、撚糸を用いても解れの虞もなく、また、糸挿通孔を形成した糸係止部材を連続運転のためアッセンブリとし、そのアッセンブリも糸挿通孔の形成のため、数の制限を受けても連結することで多連化することができるとともに、使用する針も対象に対して垂直方向に使用することができるという、糸係止部材及びそのアッセンブリは存在していないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る糸係止部材は、係止バーの略中央部分に頂面が弧状の突出部を一体に形成し、その突出部に糸の挿通孔を形成してある糸係止部材であって、前記した糸の挿通孔は楕円形に形成してあることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る糸係止部材は、前記した突出部の頂面から係止バーの表面にかけてカーブするスロープを形成し前記した楕円形の糸の挿通孔の周域を肉盛り補強してあることを特徴とし、前記した係止バーの少なくとも一方の端面には、この係止バーを押圧するピストンロッドの先端を受ける当圧部が形成されていることを特徴とし、前記した当圧部は円錐状をした突起部であることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明に係る糸係止部材のアッセンブリは、前記した糸係止部材は前記した係止バーの突出部が形成されている裏面側で連結部を介してランナーに複数個が所定ピッチで連結されたアッセンブリとし、前記した係止バーの長手方向はランナーの長手方向に対して直交とされており、そのアッセンブリはランナーの両端部で連結して長尺に連続可能としてあることを特徴とし、前記した連結部は破断し易いように細径部分を形成していることを特徴としている。
【0010】
そして、本発明に係る糸係止部材のアッセンブリは、前記したアッセンブリの連結は、ランナーの一方端部に受穴を形成し、他端部に、その受穴に嵌入される突起を一体に形成してあることを特徴とし、前記した受穴の開口縁には、前記した突起を受け入れ易くするための面取り部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る糸係止部材のアッセンブリは、前記した突起の外周面には受穴の内壁面と部分接触し、抜け防止を図るための突条が設けられていることを特徴とし、前記した突起は抜け防止のため横断面を楕円状とし、その長軸方向の端部が受穴の内壁面と部分接触していることを特徴とし、前記したランナーは端部で連結した時に、少なくとも一側面はフラットな面一に構成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る糸係止部材は上記のように構成されている。糸の挿通孔を糸の断面となる円形ではなく楕円形としてあるので、挿通される糸は部分的にその挿通孔の内壁と摺接されるが、接触することとなりスペースを生じさせることができ、撚糸を使用した場合でも解れが生じてしまうことがなくなり、糸の挿通孔周域の脆弱さが補強され、縫製装置のピストンロッドで係止バーを押圧する際の密合性も図られる。
【0013】
また、糸係止部材を対象に装着する以前の縫製装置にセットされるアッセンブリは上記のように構成されている。糸係止部材における糸の挿通孔は糸の径と対応させるための極めて小径となり、これを形成するには成形型に極細の線材を通し、摺動させることとなるが、このため一つのアッセンブリに保有させる糸係止部材の数は限定されてしまう。しかし、対象への装着は連続した自動運転とすることが望まれるため長尺の連続体が要求されるが、これに応えるためアッセンブリ自体を自在に好みの長さに連続して使用することができる。また、その連結は受穴へ突起の嵌合とした場合、その突起の全外周面での嵌合はできないので、部分接触とすることで、抜け防止も図ることができ、受穴の開口縁に面取り部を形成して嵌合作業もスムーズとなる。
【0014】
さらに、アッセンブリは、ランナーとの糸係止部材の連結部に細径部分を形成しているので、破断し易い。また、ランナーを連結して長尺とした際にも、少なくとも一側面は面一なフラットとなり、装置に装着した場合の送りもスムーズとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】糸係止部材を含めたアッセンブリの正面図である。
【
図7】アッセンブリの連結部分を示す側面図である。
【
図8】同じくランナー部分を断面として示す平面図である。
【
図16】縫製装置にアッセンブリを装着した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例1】
【0017】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図面を参照して説明する。図中50は本発明を実施した糸係止部材である。この糸係止部材50はプラスチックで成形されており、直線状の係止バー51を有しており、この係止バー51の中央部分に頂面を弧状とした突出部52が一体に形成されている。また、前記した突出部52には楕円形をした糸挿通孔53が形成されている。
【0018】
この突出部52の頂面から係止バー51の表面にかけては、ゆるやかにカーブするスロープ52a、52aが形成されており、脆弱となる突出部52の肩部分を肉盛りして補強している。この補強によって、後述する縫製装置を用いた際に、糸挿通孔53に挿通されている糸を引張した際のテンションに対しても耐え、また、突出部52は対象物に形成される。中空ニードルで穿設された孔に密に収まり、位置決めされることとなる。
【0019】
さらに、係止バー51の少なくとも一方の端面、即ち、後述するピストンロッド15の先端で押される側の端面にはそのピストンロッド15の先端を受ける当圧部として円錐状の突起部51aが一体に形成されている。この場合、ピストンロッド15の先端はこの円錐状の突起部51aと対応する凹陥部となっている。尚、この形態はこの実施例にこだわるものではなく、係止バー51の当圧部を凹陥部とし、ピストンロッド15の先端をその凹陥部と対応する突起とすることも必要に応じて可能である。
【0020】
この糸係止部材50は後述する縫製装置に装着されるまではアッセンブリAとなっており、このアッセンブリAは所定のピッチで糸係止部材50、50‥を同一方向に向けてランナー54に列設させたものとなっている。糸係止部材50、50‥とランナー54とは係止バー51の突出部52と反対側で連結部55によって連結されて一体化されている。尚、この連結部55には細径部分55aが形成され、糸係止部材50をランナー54から破断して切離し易いように形成してある。
【0021】
ここで、糸係止部材50の突出部52に、糸挿通孔53を形成するには、使用する糸と略同径とした細径の線材を突出部52、52‥に対して挿通し、引き抜く作業が要求され、そのため、アッセンブリAにおける糸係止部材50、50‥の保有数は制約されてしまう。しかし、縫製作業では多数の糸係止部材50、50‥を連続運転して装着していく必要があり、このアッセンブリAを長手方向に連続形成させることが望まれる。そのため、ランナー54の一端には受穴56を形成し、他端には、この受穴56に嵌入される突起57が一体に形成されている。即ち、受穴56に対し、連結すべき別のアッセンブリAの突起57を嵌入してアッセンブリAを連続させ、目的とする長尺のものとすることができる。図では25個の糸係止部材50、50‥を連ねたものを示しているが、これにこだわらず、5個、10個等を連ねたアッセンブリAとすることも勿論可能である。
【0022】
前記した受穴56の開口縁には突起57の嵌合をガイドするテーパ状の面取り部56aが形成されている。また、突起57はランナー54に連結杆57bを介して設けられているもので、前記した面取り部56aのランナー54端部側にはこの連結杆57bを受け入れる収納部56bが形成されている。即ち、この収納部56bに連結杆57bを嵌め、突起57を受穴56に嵌合することでランナー54、54の連結は密に位置決めされることになる。そして、このアッセンブリAの連結は、特に
図8に示すようにランナー54、54の一側面は面一でフラットなものとなり、装置に装着した際の送り作業もスムーズとなる。
【0023】
さらに、受穴56への突起57の嵌合について、突起57の全外周面で受穴56の内壁面へ嵌合することは物理的に無理があり、遊嵌状態とすると嵌合が外れ、抜けが生じてしまう。そこで、突起57の外周面に180度ピッチの点対称位置に各々突条57a、57aを一体に形成し、この突条57a、57aを受穴56の内壁面と部分接触させる構成としてある。この突条57a、57aによる部分接触によって突起57が受穴56から抜け外れてしまうことが防止される。
【0024】
また、特に図示しないが、前記した突条57a、57aの存在に代え、突起57自体を横断面楕円形に形成して、その楕円形の長軸部分の端部を受穴56の内壁面と部分接触させる構成とすることもできる。この場合、その長軸部分の端部による受穴56の内壁面との部分接触で、突起57が受穴56から抜け外れてしまうことを防止できる。
【0025】
前記した糸係止部材50、強いてはアッセンブリAを使用して縫製を実施しようとするのは、例えば
図9として示す自動車用のシートSの表面、即ちクッション材Bに対しその外表面に皮革、人工皮革、布等の表皮材Cを縫着することである。後述する縫製装置を使用して、糸の挿通孔53、53‥に一連に挿通されている糸58(ここでは撚糸を想定)を係止バー51とともにクッション材Bの裏面まで打ち込み、係止バー51をクッション材Bの裏面で係止する。これによって中空ニードルで穿設された孔を通って糸58はクッション材Bの表面に表皮材Cをステッチ状に止着し、装飾を兼ねての縫製がなされる。尚、
図9、
図10では、糸58が孔を通っているように描かれているが、これは理解し易くするためであって実際には中空ニードルが刺し通された孔のみが存在する。
【0026】
続いて、糸係止部材50、強いてはアッセンブリAを使用して糸58を対象に縫着するための縫製装置Mについて、
図15を参照して、その構成、作用を説明する。この装置Mはベース1を有しており、このベース1は上面開口の矩形となっているもので、略中央には、シリンダ16内を摺動して前方へ出入するピストン16aの摺動スペースが形成されており、この摺動スペースの左右壁の上面はピストンロッド15の取付板9がスライド可能なガイド面9a、9bとなっている。
【0027】
前記したベース1の後面にはシリンダ16の取付板13がネジ24、24によって止着されており、その取付板13の中央孔13aを挿通して、このシリンダ16のピストン16aがベース1の摺動スペース内に臨まされている。このピストン16aの先端は取付板9の下面に形成されている止着部9aの孔を通り、その前後をナット26、27で挟持して固定され、ピストン16aは取付板9と一体化されている。尚、28はシリンダ16用のスペーサであり、シリンダ16の後端には前進用エアのためのクイック継手18が設けられており、前端寄りの上面にはピストン16aの後進(バック)用のクイック継手付コントローラ17が設けられており、この各々にはエアホースが連結される。
【0028】
前記した取付板9の天面には後端をL字状に屈曲したピストンロッド15の屈曲された後端が挿し込まれ、着脱自在に取り付けられる。2はベース1の上面開口を閉塞するカバーであり、このカバー2の裏面には、特に図示していないがピストンロッド15の少なくとも上部が嵌め付けられ、摺動をガイドする溝が形成されている。このカバー2はベース1に対して、上方から取り付けネジ25、25‥によって固着され、ベース1に対しての着脱も可能とされている。
【0029】
前記したガイド面9aの外側には先端を開放した直線のガイド溝10aが形成されており、このガイド溝10にはスライダー10がセットされている。このスライダー10の先端には、前記した取付板9の前コーナー部分で押される係合段部10bが一体形成されており、この係合段部10bの前端は突出して、後述するアッセンブリAの送り機構を操作する。また、スライダー10の後端には取付板9の後コーナー部分で押し戻される係合段部10b′が一体形成されている。
【0030】
ピストン16aの摺動スペースの前方には壁体で仕切られて、アッセンブリAの糸係止部材50を1個づつ送るための送り機構の収容スペースが形成され、この収容スペースには大概的にL字形をした送りブロック5がセットされる。この送りブロック5は送り用スプリング12で初期位置方向へ引張附勢される。この送りスプリング12はベース1に立設されるピン14によって一方を支持されている。
【0031】
また、前記した送りスプリング12の上方にはレバー4が、その後端をベース1に立設されるピン14′に枢支され、枢動可能に備えられている。このレバー4の前端には透孔が形成されており、この透孔は送りブロック5の透孔と連通されるもので、この二つの透孔を貫通して送りギア6の下面中央に垂設された支持脚6aが挿通して送りギア6が取り付けられる。この送りギア6の支持脚6aはベース1に形成された透孔1aからも突出し、その先端はベース1の外部に露呈する。この露呈された部分を外部から操作することでセットされたアッセンブリAから送りギア6を外すことができ、アッセンブリAを装置Mから取り外すことが可能となる。尚、支持脚6aの透孔への挿通には、実施例では三つのマイクロベアリング19、19‥を介在させている。
【0032】
さらに、送りブロック5の上面には送り爪7が備えられている。この送り爪7は送りブロック5に立設されたピン21に先端を係止され、基端を、送り爪7の後端上方に一体形成された立壁7aに固着されており、送り爪7を初期位置方向へ附勢している。送り爪7の先端近傍には透孔7bが形成されており、この透孔7bを貫通してフランジを有する送り爪ネジシャフト8の下端が送りブロック5の受孔へ嵌入されて、送り爪7が送りブロック5に装着されている。送り爪ネジシャフト8の上端にはマイクロベアリング20が嵌め付けられており、このマイクロベアリング20がスライダー10の係合段部10bの先端の押圧力を受けて送りブロック5全体を枢動させる。尚、送り爪7の立壁7aの側縁が送りギア6と噛合し、これを回動させることとなる。
【0033】
また、図中3はヘッドブロックを示しており、このヘッドブロック3はベース1の前面にネジ23、23によって固定されている。尚、この固定の際により正確な位置決めを行なうため、位置決めピン(ノックピン)29、29を介在させてある。このヘッドブロック3が取り付けられるベース1の前面にはアッセンブリAのランナー54がセットされ通行する溝1bが左右方向に形成され、ヘッドブロック3の裏面にも、この溝1bと対応して断面が矩形となる溝3aが形成されており、アッセンブリAのランナー54を挟み込み、ガイドする構成となっている。
【0034】
ヘッドブロック3の前面上方には略直方体の突部3bが形成されており、この突部3bの上面は横方向に段部3cが形成され、この段部3cは送り込まれるアッセンブリAの糸係止部材50の位置決めストッパとなる。また、この突部3bの上部には段部3cにかけて中空ニードル0の固定部01が挿し込み固定される取付孔3dが形成されている。
【0035】
取付孔3dに固定部01が挿入された中空ニードル0は突部3bの側面から固定ネジ(イモネジ)22によって着脱自在に固定される。
【0036】
ここで、中空ニードル0は、その上面に長手方向に沿ってスリット03が形成されており、このスリット03はピストンロッド15で押された糸係止部材50の係止バー51の突出部52とその突出部52の糸挿通孔53に挿通されている糸58が通過するためのものである。また、中空ニードル0の固定部01の側面には前記した固定ネジ(イモネジ)22が入り固定する穴04が形成されている。さらに、固定部01の側面には前記したスリット03と連通する糸係止部材50の係止バー51の受け入れ孔05が形成されている。
【0037】
また、中空ニードル0の先端06はスリット03側に向けて屈曲されており、中空ニードルの内壁面もこの屈曲に沿っており、スリット03側が切り欠かれた形状として放出部07が形成される。即ち、送られてくる糸係止部材50の係止バー51はこの屈曲された中空ニードル0の内壁面に沿って強制的にガイドされて放出部07より外部へ放出されることとなる。これによって、糸係止部材50は係止バー51の突出部52が対象の裏面に対応して放出されることとなり、糸58もその対象に最短距離で止着される。
【0038】
次いで、この縫製装置Mの作用を説明すると、中空ニードル0を、スリット03を上方に向けてヘッドブロック3の取付孔3dに固定する。そして、アッセンブリAのランナー54をベース1の前面の溝1bとヘッドブロック3の裏面の溝3aで形成されるガイド溝に挿し込む。この挿し込みはヘッドブロック3の段部3cの低面側からなされ、糸係止部材50がヘッドブロック3の側面で停止されるまで押し込み、スタンバイとなる。
【0039】
このセッティングした状態で、中空ニードル0の先端を表皮材Cの表面側から直角に刺し込み中空ニードル0の先端をクッション材Bの裏面まで通す、ここで、シリンダ16のクイック継手18から接続されているホースを介して圧縮エアをシリンダ16内に送り込む。その圧縮エアによってシリンダ16のピストン16aは装置M内を前進し、この前進によってピストンロッド15を取り付けた取付板9も前進する。これによってピストンロッド15も前進し、中空ニードル0の内部へ挿入され、糸係止部材50の係止バー51を中空ニードル0の解放部07まで送り、ここから中空ニードル0の外部へ排出し、糸係止部材50は糸挿通部53に糸58を挿通した状態でクッション材Bの裏面へ位置される。そして、中空ニードル0が戻る際に、次の糸係止部材50に挿通されている糸58も戻り、この糸58で糸係止部材50をクッション材Bの裏面で係止させ、糸58にテンションを与えることとなる。尚、中空ニードル0の後進(バック)はクイック継手コントローラ17に接続されているホースから圧縮エアを送ることにより、また、必要に応じて負圧をかけることでなされる。ここで、ピストンロッド15の先端は係止バー51の端部の当圧部としての円錐状の突起51aと合わせ、これとフィットする凹陥状となっている。
【0040】
また、ピストンロッド15によって、中空ニードル0に係止バー51を押し通す際に、該当する糸係止部材50の連結部55及びランナー54はヘッドブロック3の背面に位置して受けられており、ピストンロッド15による押圧力によって糸係止部材50は押し切り剪断され、単一品に切離される。この切離は連結部55に細径部55aが形成されていることで容易となる。
【0041】
また、ピストン16aによって前進する取付板9はその前端のコーナーでスライダー10の係合段部10bの後面を押し、このスライダー10をガイド溝10aに沿って前進させる。このガイド溝10aは先端が開放されているので係合段部10bはガイド溝10aから前方へ突出し、送り爪ネジシャフト8の上端に設けられているマイクロベアリング20を押し、コイルスプリング12の附勢力に抗して送りブロック5を枢動させる。
【0042】
前記した送りブロック5の枢動によって送り爪7の立壁7aは噛合されている送りギア6をワンピッチ回動させる。アッセンブリAの連結部55はセット時に送りギア6と噛合されているので、ピストンロッド15で中空ニードル0内に送り込まれた糸係止部材50の切離された連結部55及びランナー54は前記した送りギア6の回動により、溝1bと3aとによるガイド溝内を先送りされる。
【0043】
中空ニードル0から単一品となった糸係止部材50が排出されると、ピストン16aは後進し、ピストンロッド15、その取付板9及びスライダー10も初期位置に復帰するが、スライダー10で押されていた送りブロック5もコイルスプリング12の附勢力で復元され、同時に送り爪7も復元するので、この復元回動時に、送りギア6は次の糸係止部材50をピストンロッド15を対向させるため、アッセンブリAをワンピッチ送ることとなり、次の糸係止部材50の装着がスタンバイされる。尚、この中空ニードル0の後進の際に、糸の挿通孔53に連続して挿通されている糸58も同時に後進して係止バー51を対象物(クッション材B)の裏面に密着させ、糸58にテンションを与えることとなる。この際に、糸係止部材50の突出部52は中空ニードル0によって穿設された孔に引き入れられ位置決めされる。
【0044】
本発明は上記したように構成されている。そのため、糸として撚糸を使用しても解れてしまう虞はなく、対象の表面側から一方的に作業が行える。しかも縫製装置Mをロボットに組み付けることで自動化することもでき、対象の曲面に対しても作業が可能となるので立体縫製を実行できる。また、中空ニードルの構造から糸係止部材の排出方向が制約されて精密な施工を行うことができる。糸係止部材50自体も糸の挿通孔53周囲の脆弱性が補強されており、ピストンロッドの押圧を密に受ける構成となっており、アッセンブリとしての連結も容易で精密なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本実施例にあってはシリンダとして圧縮エアを用いるエアシリンダーを示しているが、これに限定されるものではなく、電動や油圧式のものを用いることもできるのは勿論であり、糸係止部材をアッセンブリから切離するについても装置にカッターを組み込むことも勿論可能である。さらに、対象は自動車用のシートに限らず家具としてのシート、寝具等にも応用できる。
【符号の説明】
【0046】
0 中空ニードル
1 ベース
2 カバー
3 ヘッドブロック
4 レバー
5 送りブロック
6 送りギア
7 送り爪
8 送り爪ネジシャフト
9 取付板
10 スライダ
11、12 コイルスプリング
13 シリンダー取付板
14、14′ ピン
15 ピストンロッド
16 シリンダー
16a ピストン
17 クイック継手付きコントローラ
18 クイック継手
19、20 マイクロベアリグ
21 スプリングピン
22 イモネジ
23、24、25 取り付けネジ
26、27 ナット
28 スペーサ
29 位置決めピン
50 糸係止部材
51 係止バー
51a 円錐状の突起部
52 突出部
53 糸の挿通孔
54 ランナー
55 連結部
56 受穴
56a 面取り部
57 突起
57a 突条
58 糸
A アッセンブリ
B クッション材
C 表皮材
M 縫製装置
S シート