(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/04 20060101AFI20240419BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20240419BHJP
H01Q 1/48 20060101ALI20240419BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H01Q9/04
H01Q1/52
H01Q1/48
H01Q21/28
(21)【出願番号】P 2020021063
(22)【出願日】2020-02-11
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真悟
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-111763(JP,A)
【文献】特開2013-090208(JP,A)
【文献】特開2003-332840(JP,A)
【文献】特開2009-272685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/04
H01Q 1/52
H01Q 1/48
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体板の一面近傍に複数のアンテナを配置したアンテナ装置であって、
該アンテナは、グランド板と、
該グランド板の輪郭辺の第1位置から延出する放射素子部と、
該放射素子部に設けられた給電点に接続される給電線路と
、
該グランド板の輪郭辺の第2位置から該導体板に向かって延出するとともに、該導体板に接地される接地片とで構成されており、
該アンテナは、該グランド板が該導体板の一面から所定間隔離間して配置されている
とともに、該第2位置が、該第1位置が存在する第1輪郭辺とは異なる第2輪郭辺に存在することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
該第1輪郭辺は、該第2輪郭辺と、第3輪郭辺とに接触しているとともに、該第2輪郭辺と該給電点の間の距離は、該第3輪郭辺と該給電点の間の距離より短いことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
該接地片の幅は、該第2位置が設けられる輪郭辺の長さの3分の2以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
該導体板の一面近傍に第1アンテナと第2アンテナを配置したアンテナ装置であって、
該導体板はX軸方向と、X軸方向に直行するY軸方向を有し、
該第1アンテナは、該第2アンテナの配置された位置に対して、X軸方向、Y軸方向ともにずれた位置に配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
該導体板の一面近傍に第1アンテナと第2アンテナを配置したアンテナ装置であって、
該第1アンテナの第1位置が存在する輪郭辺と、該第2アンテナの第1位置が存在する輪郭辺とが、互いに平行にならないよう、該第1アンテナと該第2アンテナが配置されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を有する機器に使用される、複数のアンテナで構成されたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報端末機器に代表される多種多様な機器に無線LAN、WiMAX(登録商標)、WiFi(登録商標)、BlueTooth(登録商標)をはじめとする無線データ通信システムが採用されており、これらの通信に使用されるアンテナの需要が高まっている。
【0003】
また、通信速度を向上させるために、一つの通信装置に多数のアンテナを搭載する場面も存在する。
【0004】
一つの通信装置に多数のアンテナを搭載する際に課題となるのが、アンテナ間の相互干渉による通信特性の低下である。アンテナ間の相互干渉を抑制するには、一定の距離を取ってアンテナを配置する手法が存在するが、通信装置の小型化も要求される昨今では、アンテナを搭載できる場所に対する制限が大きいため、一定の距離を取ってアンテナを配置することが困難な場面も存在する。
【0005】
一定の距離を取ってアンテナを配置する以外にアンテナ間の相互干渉を低減する方法として、アンテナ間のグランドにスリットを設ける方法(特許文献1)や、アンテナ間のグランドに突出部を設ける方法(特許文献2)などが提案されているが、全体的なアンテナ形状が制限されてしまうため、アンテナを所定の周波数に対応させる調整に困難が生じ、アンテナ設計の自由度に影響する。
【0006】
加えて、相互干渉を低減する方法を採用した上述のアンテナが、金属板などの導体に近接して搭載された場合、相互干渉の低減効果が低下する傾向にある。アンテナを搭載する通信装置の筐体などは金属板で構成される場面も多く、相互干渉を低減する観点において好ましくない環境となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-13643号公報
【文献】特開2013-51644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、アンテナ設計の自由度を確保できるとともに、金属製筐体を有する通信装置など、アンテナ間の相互干渉を低減する観点において好ましくない環境においても、アンテナ間の相互干渉を抑制できるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はアンテナの構造と装置内における配置方法を鋭意検討した結果、アンテナが有するグランド板とは別に導体板が存在する場合、各アンテナが有するグランド板が、導体板の一面から所定間隔離間した状態となるよう複数のアンテナを配置することで、アンテナ設計の自由度に優れるとともに、アンテナ間の相互干渉が抑制されたアンテナ装置を実現した。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナ装置では、以下の効果が期待できる。
(1)アンテナ形状に依存することなくアンテナ間の相互干渉を抑制できるため、アンテナ設計の自由度に優れ、所望の特性を有したアンテナ装置を容易に得ることができる。
(2)金属製筐体を有する通信装置など、アンテナ間の相互干渉を低減する観点において好ましくない環境においても、安定したアンテナ間の相互干渉抑制効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明のアンテナ装置に使用するアンテナの
参考例である。
【
図3】導体板の一面に対してアンテナ(グランド板)を離間させる方法の一例である。
【
図4】本発明のアンテナ装置に使用するアンテナの
構成例である。
【
図6】本発明のアンテナ装置における、アンテナの配置方法の一例である。
【
図7】本発明のアンテナ装置における、アンテナの配置方法の他の例である。
【
図8】実施例1に使用したアンテナのVSWRである。
【
図9】実施例1のアンテナ間のアイソレーションである。
【
図10】実施例2に使用したアンテナのVSWRである。
【
図11】実施例2のアンテナ間のアイソレーションである。
【
図13】比較例のアンテナ装置に使用するアンテナである。
【
図14】比較例に使用したアンテナのVSWRである。
【
図15】比較例のアンテナ間のアイソレーションである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1を参照しながら、本発明について説明する。
【0013】
図1において、1a、1bはアンテナ、2は導体板であり、導体板2の一面近傍に複数のアンテナ1a、1bを配置することで、本発明のアンテナ装置7が構成される。
【0014】
本発明に使用されるアンテナ1は、
図2に示したように、グランド板3、グランド板3の輪郭辺の第1位置A1から延出する放射素子部4、放射素子部4に設けられた給電点Pに接続される給電線路5を有する。なお、
図2(b)は、
図2(a)を背面から見た場合の斜視図である。
【0015】
導体板2は、アンテナ1が配置される通信装置の筐体を想定したものであり、通常は矩形状だが、円形状、三角形状など、他の形状であっても良い。また、実際の形状は板状に限定されず、一定の厚さを有した直方体状などであっても良い。
直方体状など、導体板2が複数の面を有する場合は、導体板2の一面は任意の面から選択することができる。
導体板2の材料は鉄、アルミニウムなどの各種金属や導電性樹脂の他、表面に金属メッキを施した樹脂板も利用できる。
【0016】
本発明で特徴的なことは、
図1に示したように、アンテナ1は、導体板2の一面に対してグランド板3が所定間隔離間した状態で配置されていることである。
【0017】
導体板2の一面に対してグランド板3が離間した状態で、アンテナ1が配置されることによって、アンテナ1と導体板2は電気的に独立した状態となり、導体板2の近傍に複数のアンテナ1が配置されている場合は、各アンテナ1が電気的に独立した状態となる。
【0018】
各アンテナ1が電気的に独立していることにより、アンテナ1に給電される高周波電流が別のアンテナ1に流れ込むことがなくなり、アンテナ間での結合度が低減し、アンテナ1間での相互干渉を抑制することができる。
【0019】
導体板2の一面に対してグランド板3が離間した状態でアンテナ1を配置する方法は特に限定されないが、アンテナ1を保持する保持部材を別途設けて、導体板2に対してグランド板3が離間するように保持する方法が挙げられる。
具体的には、
図3(a)に示したように、導体板2上に絶縁体等で構成された保持部材6を設け、保持部材6によってアンテナ1を支持する方法や、
図3(b)に示したようなアンテナ1を挟持する保持部材6によって導体板2の一面に対して離間させる方法などが挙げられる。
【0020】
本発明において好ましく利用できる保持部材6として、
図4に示した、グランド板3の輪郭辺の第2位置A2から導体板2に向かうように延出した接地片61が挙げられる。
接地片61を設けた構造のアンテナ1を用い、
図5に示したように接地片61を導体板2に接地させることで、アンテナ1に帯電した静電気が接地片61を介して導体板2へと除去される経路ができるため、静電気による給電線路5や、その先に存在する高周波回路の損傷を抑制することができる。
【0021】
複数のアンテナ1に接地片61を設けた態様は、各アンテナ1の電気的独立が失われるが、一定の相互干渉抑制機能は依然として有する。
この相互干渉抑制機能は、任意のアンテナ1aから別のアンテナ1bへと高周波電流が流れ込む場合、アンテナ1a→接地片61a→導体板2→接地片61b→アンテナ1bという経路で流れ込むことになるため、導体板2に流れ込んだ高周波電流は導体板2内に散逸し、アンテナ1bに流れ込む高周波電流が限られた量になって得られたものと推定される。
【0022】
このように、各アンテナ1の電気的独立が失われたとしても一定の相互干渉抑制機能は依然として有するため、接地片61を設けた態様は、アンテナ間の相互干渉の抑制機能と、静電気による損傷の抑制機能を両立させた態様と評価することができる。
【0023】
接地片61には、導体板2への固定を考慮して、その先端に導体板2に対して面接触する固定片62を設けるのが好ましい。
図4のアンテナ1においては、接地片61と固定片62が保持部材6として機能する。
【0024】
加えて、給電点Pと接地片61の位置関係を考慮することで、安定したアンテナ間の相互干渉の抑制機能を得ることができる。
【0025】
具体的には、第2位置A2は、第1位置A1が存在する第1輪郭辺L1とは異なる第2輪郭辺L2に存在させるのが好ましい。
【0026】
この態様は、給電点Pと接地片61との間に一定の距離を設けた態様と言い換えることができる。給電点Pと接地片61との間に一定の距離を設けた場合、給電された高周波電流が接地片61へと流れ込むのに対する一定の抵抗が生まれるため、アンテナ1間での高周波信号の流れ込みが抑制され、アンテナ間での相互干渉が抑制される。
【0027】
加えて、第1輪郭辺L1の一端が第2輪郭辺L2、他端が第3輪郭辺L3と接触していると定義した場合、第2輪郭辺L2と給電点Pとの間の距離は、第3輪郭辺L3と給電点Pとの間の距離より短くするのが好ましい。
【0028】
この態様は、給電点Pと接地片61のとの間の距離を一定の範囲内に収めた態様と言い換えることができる。給電点Pと接地片61との間の距離が長い場合、給電線路5に対する外乱(給電線路5が同軸ケーブルの場合は、同軸ケーブルの振動など)に対するアンテナ特性の変動が大きくなり、アンテナ動作が不安定になる傾向にある。給電点Pと接地片61との間の距離を一定の範囲内に収めることで、アンテナ動作の安定化に寄与する。
【0029】
接地片61を設ける第2位置A2は、接地片61を割愛して同形状のアンテナを作成した際にグランド板3に発生する電界強度が弱い領域に設定すると、アンテナ間での相互干渉抑制機能が高まる傾向にある。
グランド板3に発生する電界強度が弱い領域はアンテナ1に給電された高周波電流が流れにくい領域と考えられ、接地片61を設けても、接地片61を介した導体板2への高周波電流への流れ込みが起きにくく、その結果アンテナ間での相互干渉抑制機能が高まると推定される。
【0030】
また、接地片61の幅は、第2位置A2が設けられる輪郭辺の長さの3分の2以下であることが好ましい。接地片61の幅が輪郭辺の長さの3分の2以下であることで、接地片61へと流れ込む高周波電流の量が制限され、より安定したアンテナ間での相互干渉の抑制効果を得ることができる。
【0031】
接地片61の幅の下限値は特に限定されず、アンテナ1を支持するために必要な強度が確保できる幅に設定すれば良い。
【0032】
本発明においては、上述したアンテナ1の形状の採用と併せて、導体板2の一面近傍における複数のアンテナ1の配置方法も考慮することで、より良好なアンテナ間での相互干渉の抑制効果を得ることができる。
【0033】
具体的には、
図6に示したようにX軸方向とX軸方向に直行するY軸方向とを有する導体板2の一面近傍に第1アンテナ1aと第2アンテナ1bを配置する際、第1アンテナ1aを配置する位置は、第2アンテナ1bが配置された位置に対してX軸方向、Y軸方向ともにずれた位置であることが好ましい。
【0034】
第1アンテナ1aを、第2アンテナ1bが配置された位置に対してX軸方向、Y軸方向ともにずれた位置に配置することで、第1アンテナ1aの指向性の主軸と第2アンテナ1bの指向性の主軸とが同一直線上に位置しなくなり、各アンテナが送受信する電磁波間での干渉が低減し、アンテナ間での相互干渉の抑制効果が安定する。
【0035】
なお、X軸方向、Y軸方向ともにずれた位置は、
図6に示したように、一方のアンテナの最大外寸法の延長線上に、他方のアンテナが存在しない位置を指す。
【0036】
他に好ましく利用できる配置方法として、
図7に示したように、第1アンテナ1aの第1位置A1aが存在する輪郭辺L1aと、第2アンテナ1bの第1位置A1bが存在する輪郭辺L1bとが、互いに平行にならないよう、第1アンテナ1aと第2アンテナ1bを配置する方法が挙げられる。
【0037】
第1アンテナ1aの第1位置A1aが存在する輪郭辺L1aと、第2アンテナ1bの第1位置A1bが存在する輪郭辺L1bとが互いに平行になっていないことで、第1アンテナ1aの指向性の主軸方向と第2アンテナ1bの指向性の主軸方向に差が生まれ、各アンテナが送受信する電磁波間での干渉が低減し、アンテナ間での相互干渉の抑制効果が安定する。
【0038】
上述した2種類のアンテナ配置方法は、併用することでより高い相互干渉の抑制効果が得られるが、アンテナ装置7の設計の都合上、併用が困難な場合は一方のみを使用すれば良い。
【0039】
本発明に使用するアンテナ1が有する放射素子部4の形状は特定のものに限定されず、所望する通信特性に応じて種々の形状のものを使用することができる。逆F形アンテナとして機能する
図2、4に示した直線状の素子の他、コの字状やメアンダ状といった折り返し構造を有するもの、複数の周波数に対応する分岐状のものなどが使用でき、アンテナ1内に放射素子部4と容量結合してアンテナ特性を発現させるための無給電素子を設けても良い。
【0040】
本発明に使用するアンテナ1は、洋白(白銅)、銅、鉄、黄銅、鋼等で作られた、厚さ0.1~1mm程度の金属一枚板を打ち抜いて一体成型したアンテナエレメントや、誘電体基板上に導電パターンを設けたアンテナエレメント、あるいは両者を組み合わせて構成されたアンテナエレメントなど使用して構成される。
【0041】
本発明に使用する給電線路5としては、周知のフッ素樹脂被覆等の高周波同軸ケーブルを使用すればよい。この高周波同軸ケーブルの内部導体、あるいは外部導体をアンテナ1の所定の場所に接続するには、ハンダ付による固定、あるいはカシメによる固定などを利用すれば良い。
【0042】
また、アンテナ1を保護するために、アンテナ1を覆うよう、導体板2上にアンテナ保護カバーを設けても良い。
【0043】
本発明のアンテナ装置7は、通信装置に組み込まれる形で使用される。
【実施例】
【0044】
以下に、無線LAN帯域(2.45GHz帯域)に対応するアンテナ1を複数使用して、アンテナ装置7を構成した例を示す。
【0045】
[実施例1]
実施例1として、
図1に示したアンテナ装置を構成する。
尚、実施例1は参考実施例1とする。
【0046】
1-1.
図2のアンテナの作成:
厚さが0.4mmの亜鉛めっき鋼板を打ち抜いて、
図2に示す形状のアンテナエレメントを作成した。
グランド板3の大きさは幅30mm×高さ32mmとし、グランド板3の上辺左部からL字状の放射素子部4を延出させ、開放端はグランド板3の右辺に揃えた。グランド板3の上辺に対向する放射素子部4の側片には給電点Pを設けるための突出部を設けた。
アンテナ1の細部寸法は、2.45GHz帯域に対応する逆Fアンテナとして機能するように調整した。
【0047】
給電線路5として、内部導体、フッ素樹脂(PFA)製絶縁体、外部導体、PFA製外被で構成された同軸ケーブルを準備した。
同軸ケーブルの先端を段剥ぎし、同軸ケーブルの長さ方向とグランド板3の高さ方向を平行にした状態で、放射素子部4に設けた突出部に内部導体をはんだ付けして給電点Pとした。
グランド板3の給電点Pに対峙する位置に外部導体をはんだ付けしてアースポイントとし、アンテナ1が完成した。
なお、同軸ケーブルをはんだ付けする面は、アンテナ装置を構成した際に導体板2に対向する面とした。
また、同軸ケーブルの反対側には高周波回路に接続できるよう、周知の同軸ケーブル用コネクタが設けられている。
【0048】
上記のアンテナ1を2個作成し、それぞれ第1アンテナ1a、第2アンテナ1bとした。
【0049】
1-2.
図1のアンテナ装置の作成:
導体板2として、幅300mm×高さ150mm×厚さ40mmの鉄板を準備した。
【0050】
作成した第1、第2アンテナ1a、1bを、
図1に示したように導体板2の一面近傍に配置する。導体板2への配置は、グランド板3a、3bの下辺を保持するとともに、導体板2の一面に対するグランド板3a、3bの離間距離Za、Zbがそれぞれ8.5mmになるよう構成した保持部材6(図示割愛)を導体板2上に設けて行った。
【0051】
導体板2の左側に配置した第1アンテナ1aは、、グランド板3の左辺と導体板2の左辺との間の距離Xaが70mm、グランド板3aの下辺と導体板2の下辺との間の距離Yaが55mmとなるよう配置した。
【0052】
第1アンテナ1aと第2アンテナ1bは一直線上に並列するよう配置し、アンテナ装置7を完成させた。アンテナ間の距離Dは100mmに設定した。
【0053】
1-3.アンテナ装置の評価
第1アンテナ1a、第2アンテナ1bのそれぞれに2.45GHz帯の高周波信号を給電し、各アンテナのVSWRと、第1、第2アンテナ間に発生する相互干渉(アイソレーション)を測定した。VSWRを
図8、アイソレーションを
図9に示す。
【0054】
[実施例2]
実施例2として、
図5に示したアンテナ装置を構成する。
【0055】
2-1.
図4のアンテナの作成:
厚さが0.4mmの亜鉛めっき鋼板を打ち抜いて、
図4に示す形状のアンテナエレメントを作成した。
グランド板3の左辺下部に設けた第2位置A2から、保持部材6として接地片61と固定片62を延出させた以外は、実施例1で作成したアンテナと同様の寸法、構造とした。
接地片61と固定片62の幅は共に7mmで、接地片61の高さは8.5mm、固定片62の長さは10mmとした。
【0056】
実施例1と同様に、給電線路5として同軸ケーブルをはんだ付けしてアンテナ1を完成させ、完成したアンテナ1を2個準備し、それぞれ第1アンテナ1a、第2アンテナ1bとした。
【0057】
2-2.
図5のアンテナ装置の作成:
導体板2として、実施例1と同様の鉄板を準備した。
【0058】
作成した第1、第2アンテナ1a、1bを、
図5に示したように導体板2の一面近傍に配置する。導体板2への固定は、固定片62に穴を設け、導体板2に対してネジ固定を行った。
【0059】
導体板2の一面に対するグランド板3の離間距離Za、Zbはそれぞれ8.5mmであり、距離Xa、Ya、Dは、実施例1と同様、70mm、55mm、100mmに設定した。
【0060】
2-3.アンテナ装置の評価
第1アンテナ1a、第2アンテナ1bのそれぞれに2.45GHz帯の高周波信号を給電し、各アンテナのVSWRと、第1、第2アンテナ間に発生する相互干渉(アイソレーション)を測定した。VSWRを
図10、アイソレーションを
図11に示す。
【0061】
[比較例]
比較例として、
図12に示したアンテナ装置7’を構成する。
【0062】
3-1.
図14のアンテナの作成:
厚さが0.4mmの亜鉛めっき鋼板を打ち抜いて、
図13に示す形状のアンテナエレメントを作成した。
基本的な構成、対応する周波数帯域などは、実施例1のアンテナと同様であるが、グランド板3の途中で板金を直角に折り曲げ、グランド板3の主部を構成する平面に対して、放射素子部4を構成する平面が垂直になるよう構成した。
【0063】
給電線路5として同軸ケーブルをはんだ付けしてアンテナ1’を完成させた。
なお、同軸ケーブルをはんだ付けする面は、アンテナ1’を導体板2上に配置する際に干渉しないよう、実施例1、2とは反対の面とした。
【0064】
完成したアンテナ1’を2個準備し、それぞれ第1アンテナ1’a、第2アンテナ1’bとした。
【0065】
3-2.
図5のアンテナ装置の作成:
導体板2として、実施例1と同様の鉄板を準備した。
【0066】
作成した第1、第2アンテナ1’a、1’bを、
図13に示したように導体板2上に配置する。導体板2への固定は、グランド板3に穴を設け、導体板2に対してネジ固定を行ない、導体板2とグランド板3が面接触して電気的に導通した状態とした。
【0067】
比較例では、導体板2の一面に対してグランド板3は離間しておらず、距離Xa、Ya、Dは、実施例1と同様、70mm、55mm、100mmに設定した。
【0068】
3-3.アンテナ装置の評価
第1アンテナ1’a、第2アンテナ1’bのそれぞれに2.45GHz帯の高周波信号を給電し、各アンテナのVSWRと、第1、第2アンテナ間に発生する相互干渉(アイソレーション)を測定した。VSWRを
図14、アイソレーションを
図15に示す。
【0069】
実施例1、2、及び比較例のアンテナ装置を構成する各アンテナのVSWRは2450MHz(2.45GHz)近傍で低下しており、VSWR上では2.45GHz帯域で使用されるアンテナとして必要十分な性能を持っている。
【0070】
一方、実施例1、2、及び比較例のアンテナ装置におけるアンテナ間のアイソレーションは、2.45GHz近傍において比較例では-30dB以上であるのに対し、実施例1では-35dB以下、実施例2では-30dB以下であった。
【0071】
通信特性に悪影響を与えない範囲のアイソレーションは、一般的に-30dB以下とされているため、本発明のアンテナ装置7は、導体板2の一面に対してグランド板3を離間させることで、実用上問題ないレベルにアンテナ間のアイソレーションが抑制されていることが確認できた。
【0072】
実施例1と実施例2を比較した場合、実施例2のアンテナ装置7は実施例1よりもアイソレーションが増加しており、接地片61の存在によって導体板2とグランド板3が電気的に導通した影響が現れたものと考えられる。
しかしながら、依然として-30dB以下であるため実用上の問題は無く、導体板2とグランド板3の電気的導通による静電気の除去効果と、これに伴う給電線路5の損傷防止効果が得られるため、好ましく利用できる態様である。
【0073】
以上、無線LAN帯域(2.45GHz帯域)に対応するアンテナ装置について説明したが、これは本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、他の帯域に対応するアンテナにも適用できることは言うまでもない。特に、アンテナ1の具体的構成は以上述べた例に制限されず、本発明の思想の範囲内で従来提案されている種々のアンテナ構成を適宜選択して利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のアンテナ装置は、通信機能を有した種々の機器に適用でき、IoTに使用される産業装置、通信機能を有した情報家電、自動車関連機器などに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1、1’ アンテナ
1a、1’a 第1アンテナ
1b、1’b 第2アンテナ
2 導体板
3、3a、3b グランド板
4、4a、4b 放射素子部
5 給電線路
6 保持部材
61、61a、61b 接地片
62、62a、62b 固定片
7 アンテナ装置
P 給電点
A1、A1a、A1b 第1位置
A2 第2位置
L1、L1a、L1b 第1輪郭辺
L2 第2輪郭辺
L3 第3輪郭辺