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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20240419BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G01R15/00 500
H05K3/46 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020041006
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021143862
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 宮仁
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002333(JP,A)
【文献】特開2014-239142(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002308(WO,A1)
【文献】特開2015-017832(JP,A)
【文献】特開2016-161304(JP,A)
【文献】特表2016-540379(JP,A)
【文献】特開2020-046207(JP,A)
【文献】特開2017-033664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の樹脂基板と、
前記樹脂基板の所定の領域を貫通するように形成された収容部に配置された電流検出素子と、
前記収容部内において、前記樹脂基板と前記電流検出素子とを、少なくとも前記樹脂基板の側面と前記電流検出素子の側面との間において固定する樹脂層と、
前記電流検出素子と、絶縁層を介して設けられた、前記電流検出素子に電流を流す電流用配線と、
前記電流検出素子と前記電流用配線とを、前記絶縁層を貫通して接続する複数の電流用ビアと、
前記電流検出素子と接続され、電圧降下を測定するための電圧検出用ビアと、
を有する電流検出装置。
【請求項2】
前記電流用ビアを前記樹脂基板の第1面側に設け、
前記電圧検出用ビアを前記樹脂基板の第2面側に設けた
請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記電流用ビアと前記電圧検出用ビアを前記樹脂基板の第1面側又は第2面側のいずれか一方に設け、
前記電流用ビアと前記電圧検出用ビアとを接続する配線が切断されている
請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記電流検出素子はシャント抵抗器であり、
前記シャント抵抗器の抵抗体の厚さが0.5mm以上である
請求項1から3までのいずれか1項に記載の電流検出装置。
【請求項5】
前記樹脂基板の第1面と第2面とは、前記電流検出素子の第1面と第2面とそれぞれ面一である
請求項2から4までのいずれか1項に記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記樹脂基板と前記電流検出素子とは、前記樹脂層により被覆されている
請求項1から5までのいずれか1項に記載の電流検出装置。
【請求項7】
前記絶縁層は、前記樹脂基板及び前記電流検出素子を被覆する前記樹脂層であり、当該樹脂層を貫通するように前記電流用ビアが形成されている
請求項6に記載の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の絶縁層(セラミック層)が積層された積層体に電流検出用の抵抗素子が内蔵された抵抗素子内蔵基板からなる電流検出装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1では、積層された複数の絶縁層を貫通するビア内に金属ビアを埋め込んで抵抗器の電極と接続させることで、積層基板内に内蔵されている抵抗器の放熱効果を向上させるようにしている。
【0004】
特許文献2では、特許文献1と同様の構造において、所定方向に配列される複数の第1(第2)のセンス用ビア導体の数を調整することにより、第1(第2)のセンス用ビア導体それぞれのビア径を調整せずとも、複数の第1(第2)のセンス用ビア導体を並列接続することで疑似的に抵抗器の抵抗膜の幅Wを大きくして、疑似的に抵抗膜の幅を調整する技術が開示されている。
【0005】
これにより、電流検出用抵抗が有する抵抗膜に接続される各第1、第2のセンス用ビア導体の径を変更することなく積層体に設けられる電流検出用抵抗の抵抗値の設計を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-239142号公報
【文献】特開2015-002333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電流検出装置においてTCR(抵抗温度係数)の影響の抑制が求められている。本発明は、内蔵基板におけるTCRの影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、絶縁性の樹脂基板と、前記樹脂基板の内部に配置された電流検出素子と、前記電流検出素子と、絶縁層を介して設けられた、前記電流検出素子に電流を流す電流用配線と、前記電流検出素子と前記電流用配線とを、前記絶縁層を貫通して接続する複数の電流用ビアと、前記電流検出素子と接続され、電圧降下を測定するための電圧検出用ビアと、を有する電流検出装置が提供される。
電流用配線等を介在させずに、前記電圧ビアをシャント抵抗器の電極端子に直接接続しているため、電流検出装置のTCRを低減することができる。
【0009】
前記電流用ビアを前記樹脂基板の第1面側に設け、前記電圧用ビアを前記樹脂基板の第2面側に設けることが好ましい。
上記の構成により、前記電流用ビアと前記電圧用ビアを離れた位置としてTCRの影響を低減することができる。
【0010】
前記電流用ビアと前記電圧用ビアを前記樹脂基板の第1面側又は第2面側のいずれか一方に設けた場合に、前記電流用ビアと前記電圧用ビアとを接続する配線が切断されているようにすると良い。
上記の構成により、前記電流用ビアと前記電圧用ビアを電気的に離れた位置としてTCRの影響を低減することができる。
【0011】
前記電流検出素子はシャント抵抗器であり、前記シャント抵抗器の厚さが0.5mm以上であることが好ましい。
シャント抵抗器の厚さを厚くすることで、前記電流用ビアと前記電圧用ビアの位置を厚み方向に離すことができる。
【0012】
前記樹脂基板の第1面と第2面とは、前記電流検出素子の第1面と第2面とそれぞれ面一であることが好ましい。前記樹脂基板と前記電流検出素子とは、樹脂層により被覆されていることが好ましい。
上記の構成により、第1面側、第2面側のいずれの方向にも積層して縦型の集積構造を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内蔵基板におけるTCRの影響を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態による電流検出装置の一構成例を示す断面図である。
図2A図1に示す電流検出装置の製造方法の一例を断面構造により示す図である。
図2B図1に示す電流検出装置の製造方法の一例を断面構造により示す図である。
図3】電流検出回路を含む電流検出装置の回路構成例を示す機能ブロック図であり、シャント抵抗器を実装した状態の一例を示す図である。
図4】本実施の形態による電流検出装置Aの概略構成図(側面図)であり、TCRのシミュレーションを行ったベースモデルを示す図である。
図5図4に示す構造とその他のビア配置の変形例とにおける、TCRの値を示す図である。
図6図4に示す電流検出装置の電流経路とビア位置との関係、すなわち電流経路を複数示した図である。
図7】第1から第3の電流経路におけるTCRの電圧ビア依存性を示す図である。
図8図4に対応する図であり、本発明の第2の実施の形態による電流検出装置の一構成例を示す側面図である。
図9図6に示す構造とその他のビア配置の変形例とにおける、TCRの値を示す図である。
図10図8に示す電流検出装置の電流経路とビアとの関係、すなわち電流経路を複数示した図である。
図11図11は、第1から第3の電流経路におけるTCRの電圧ビア依存性を示す図である。
図12図8に対応する図であり、本発明の第3の実施の形態による電流検出装置の一構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態による電流検出装置について図面を参照しながら説明を行う。
【0016】
(第1の実施の形態)
(電流検出装置の構成例)
図1は、本発明の第1の実施の形態による電流検出装置の一構成例を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態による電流検出装置Aは、ガラスエポキシ樹脂などにより形成されている絶縁性の樹脂基板11と、絶縁性の樹脂基板11に内蔵されている電流検出素子、例えばシャント抵抗器1とを有している。シャント抵抗器1は、抵抗体3と、その両側に設けられている一対の電極端子5a,5bを有している。第1の電極5a、第2の電極5bは、Cuなどの導電性の金属材からなる。抵抗体3用の材料としては、Cu-Ni系、Cu-Mn系、Ni-Cr系などの金属材料を用いることができる。シャント抵抗器1は、Cu-Ni系などの単体の金属でもよく、また抵抗金属材からなる被膜構造のものでもよい。これらを電流検出素子と総称する。絶縁性の樹脂基板11の第1面S1側及び第2面S2側には、例えばCu箔層13a、13bが形成されている。樹脂基板11には、シャント抵抗器1を収容するための貫通孔11aが形成されている。
【0018】
樹脂基板11は第1面S1と第2面S2とを有しており、シャント抵抗器1もそれに対応して第1面S1と第2面S2とを有している。樹脂基板11とシャント抵抗器1とは、それぞれの第1面S1及び第2面S2とがそれぞれ略面一になるように形成されている。
【0019】
樹脂基板11とシャント抵抗器1の側面間及び第1面S1、第2面S2に、200℃以下の低温で硬化するエポキシ樹脂などの低温硬化樹脂などを塗布し硬化させることで生成される樹脂層15により、絶縁性の樹脂基板11とシャント抵抗器1とが一体化されている。電極5a及び電極5bの第1面S1側に形成された樹脂層15には、電極5a及び電極5bの抵抗体3に近い位置に、電極5a,5bの第1面S1を露出する一対の貫通孔21a,21a(コンタクトホール:CH)が形成される。
【0020】
貫通孔21a,21a内にそれぞれ埋められている導電性のビア(金属ビア,導電ビアなどとも称する。)22a,22aを有する。この導電性のビア22a,22aを電圧検出用のビアとして用いることができる。その第1面側に、ビア22a,22aとともに第1の電圧用配線23aを形成することができる。
【0021】
電極5a及び電極5bの第2面S2側に形成された樹脂層15にも、電極5a,5bの第2面を露出する一対の貫通孔21b,21b(コンタクトホール:CH)が形成される。
貫通孔21b,21b内にそれぞれ埋められている導電性のビア(金属ビア,導電ビアなどとも称する。)22b、22bを有する。この導電性のビア22b,22bを電流検出用のビアとして用いることができる。その第2面側に、ビアとともに第1の電流用配線18を形成することができる。
【0022】
さらに、第1面S1側の樹脂層15の第1面S1に、樹脂を塗布、硬化することで、樹脂層17aを形成することができる。樹脂層17aにも、第1の電圧用配線23a,23aを露出する貫通孔25a,25aを形成し、導電性のビア24a,24aとともに、その第1面側に第2の電圧検出用配線27a,27aを形成することで、樹脂層17aの第1面S1に電極5a,5bと電圧用配線により電気的に接続される電圧を第1面S1側から検出することができる。
【0023】
さらに、第1面S1側に、電圧検出用の電子部品(IC等)41などを搭載して、第2の電圧検出用配線27a,27aに接続することで、電圧信号を演算等して検出することができる。
このようにして、新たな樹脂層の形成と新たな樹脂層に設けた配線や半導体集積回路などの電子部品を、必要に応じて順次積層し、搭載して形成することが可能である。
【0024】
図1に示す構造では、第1面S1側に電圧検出用配線が形成され、第2面S2側に電流用配線が形成されている。このため、シャント抵抗器1において第2面S2側が電流経路として支配的となり、シャント抵抗器1の第1面S1側は、電流の影響による電位分布が生じにくくなる。よって、電流経路の影響を受けにくい位置、図1では第1面S1に電圧検出用配線を接続することで、配線材料である銅の特性を受けづらく、TCRの影響を低減した電圧検出ができるようになる。
【0025】
尚、後述するように、第1面S1又は第2面S2のいずれかに、電流経路と電圧ビア22a,22bとを設けるようにしてその配置を工夫することでも、TCRの影響を抑制することもできる。
【0026】
(製造工程の一例)
図2A及び図2Bは、図1に示す電流検出装置の製造方法の一例を断面構造により示す図である。
図2A(a)に示すように、まず、絶縁性の樹脂基板11を準備する。絶縁性の樹脂基板11の第1面S1及び第2面S2には、例えば、パターン形成のためのCu箔層13a、13bが形成されている。
【0027】
図2A(b)に示すように、両面にCu箔層13a、13bが形成された樹脂基板11を準備する。樹脂基板11には所定の領域に、絶縁性の樹脂基板11を貫通しシャント抵抗器1を収容するための収容部11aを形成する。かかる樹脂基板11は、多層構造を形成するためベースとなる基板である。また、樹脂基板11はシャント抵抗器1と同程度の厚みを有する。
収容部11a内にシャント抵抗器1を面一になるように収容/仮固定する。図2A(b)には、断面図に対応する斜視図も示している。
【0028】
図2A(c)に示すように、エポキシ樹脂などを塗布し、低温で硬化させることで形成された樹脂層15により、絶縁性の樹脂基板11の貫通孔11a内にシャント抵抗器1を収容/本固定することができる。樹脂層15は、絶縁性の樹脂基板11の第1面S1と第2面S2にも形成されている。
【0029】
図2B(d)に示すように、第1面S1側に形成された樹脂層15には、電極5a及び電極5bの抵抗体3に近い位置に、電極5a、5b面を露出する一対の貫通孔21a,21a(コンタクトホール:CH)を、レーザー等を用いた公知のパターニング技術を用いて形成する。
同様に、第2面S2側の樹脂層15に、電極5a,5bの第2面S2を露出する貫通孔21b、21b等を形成する。
【0030】
図2B(e)に示すように、第1面S1と第2面S2とにメッキなどにより、金属層22,23を形成する。貫通孔内にも金属層22,23が充填される。
図2C(f)に示すように、パターニング工程などにより、第1面S1にはビア21a,21a内を含む所定の領域に配線23a,23aを形成する。
また、第2面S2にも、パターニング工程などにより、第2面S2にはビア22b,22bと、それを含む所定の領域に配線18,18を形成する。
【0031】
以降、必要に応じて、樹脂層の被覆(積層)、レーザー加工等の工程を繰り返すことで、立体的に配線された積層構造体を形成することができる。
以上のように、絶縁性の樹脂基板11の第1面S1及び第2面S2の少なくともいずれかに、順次、樹脂層(層間絶縁膜)と回路パターンなどを形成していくことで、電流検出装置を含む多層の集積構造を形成することができる。
【0032】
図3は、電流検出回路41を含む電流検出装置Xの回路構成例を示す機能ブロック図であり、シャント抵抗器1を実装した状態の一例を示す図である。シャント抵抗器1の電極5a,5bには、電圧測定のための電圧用配線27a,27aがそれぞれ接続されている。電圧用配線27a,27aは、電圧ビア24a,24aを介してIC41に接続されている。また、電流用配線18が、シャント抵抗器1の電極5a,5bにおいて電圧測定位置よりも外側に配置されている。
【0033】
なお、集積回路41は、積層体で構成した電流検出装置Aに搭載したり、内蔵したり、あるいは電流検出装置Aとは別体とされ、配線接続される。全体として電流検出用モジュールXを構成する。ICは、A/D変換回路63、増幅回路65、マイコン67等が組み込まれ、電圧信号に応じた信号を各種機器に出力する。この構造により、配線18,18間を流れる電流をシャント抵抗器1により計測することができる電流検出用モジュールXを構成することができる。
【0034】
(TCRの計算結果)
図4は、本実施の形態による電流検出装置Aの概略構成図であり、TCRのシミュレーションを行ったベースモデルを示す図である。
【0035】
【表1】
【0036】
表1は、シミュレーションに用いた物性値を示す表である。
シャント抵抗器1の抵抗体3の材質は、CuMn合金、比抵抗は43μΩ・cm、TCRは0ppm/Kとした。厚みは1.3mmとした。
シャント抵抗器1の電極5a,5bは、材質がCuであり、比抵抗は1.7μΩ・cm、TCRは4,000ppm/Kとした。厚みは1.3mmとした。
配線パターンの材質はCuであり、比抵抗は1.7μΩ・cm、TCRは4,000ppm/Kとした。パターンの厚みは70μmとした。
電極ビアの材質はCuであり、比抵抗は1.7μΩ・cm、TCRは4,000ppm/Kとした。ビア径Φは0.4mm、高さは0.1mmとした。
【0037】
図4(a)は、上記図1から図3までを参照して説明した電流検出装置におけるTCR特性をシミュレーションにより評価するためにモデル化した電流検出装置の概略構成例を示す断面図である。図4(b)は斜視図である。
図4(a),図4(b)に示すように、シャント抵抗器1のCu電極5a、5bの電流が流れる方向の長さは3.5mm、抵抗体3の長さは1.5mmである。また、電極5a、5bの第1面S1にそれぞれ設けられている電圧ビア24a,24aのピッチは29mmであり、第2面S2に設けられる最近接の電流ビア22b-1,22b-1のピッチも29mmである。第2面の電流ビア22b-1~3は3×3の配置を有している。
【0038】
そして、シャント抵抗器1の全長は、8.5mmである。シャント抵抗器の幅は3mmであり、厚さは1.3mmである。すなわち、シャント抵抗器の厚みは0.5mm以上としている。この厚みの最大値は、加工性、導電性等から3mm程度としてもよい。なお、樹脂基板11への内装を考慮すると、0.5~1.5mmとするのが好ましい。この厚みは、より具体的には電極5a、5bの厚みということができる。図4(a)に示すとおり、電流Iinは電流用配線18、電流ビア22b-1~22b-3、電極5a、抵抗体3、電流5b、放熱ビア22b(電流5bに接続された各ビア)、電流用配線18を経由して電流Ioutとして流れる。シャント抵抗器1における第2面S2側が主な電流経路となるため、シャント抵抗器1における第1面S1側は電位の分布が、第2面S2側に比べて、生じにくくなる。このため、電圧ビア24a,24aを第1面S1の面に接続することで、電位分布の影響を抑えた安定した電流検出が可能となる。かかる効果を得るためには、シャント抵抗器(若しくは電圧ビアが接続される電極)が所定の厚みを有しており、特に上述のごとく0.5mm以上とするのが好ましい。
【0039】
図5は、図4に示す構造を基本構造とし、電流ビアの配置を変えた場合のTCRの値を示す図である。図5の下には、シャント抵抗器におけるビア配置を平面図で示しており、その直上にTCRの計算結果を示した。
絶縁性の樹脂基板11の第1面と第2面とに図4に示す電圧ビアと電流ビアとを配置した場合には、図5に示すように、電流ビアの配置を変えたそれぞれの例ついてTCRは200ppm/K以下であり、概ね160~170ppm/K程度と低い値を示すことがわかる。すなわち、TCRに関する、ビア配置やビア数(ビア密度)の依存性も小さいことがわかる。
【0040】
このように、電流経路に影響を受けづらい位置に電圧ビアと電流ビアを、例えば絶縁性の樹脂基板11の第1面と第2面とに分けて配置することにより、電極の銅の特性を受けづらく、TCRの影響を低減した電圧検出ができるようになる。また、ビアの配置の依存性も小さくすることができる。
【0041】
図6は、図4に示す電流検出装置の電流経路と電圧ビア位置との関係を示した図であり、図7は、それら異なる電流経路および電圧ビア位置(図6(b)参照)によるTCRの依存性を示す図である。
図6(a),(b)に示すように、電流検出装置の端子の両端間に直線的に電流を流す第1の電流経路A(71-73)、電流検出装置の端子の両側面(異なる側面側)間にS字状に電流を流す第2の電流経路B(75-77)、電流検出装置の端子の両側面(同じ側面側)間にU字状に電流を流す第3の電流経路C(75-79)のそれぞれについてTCRを計算した。
【0042】
図7は、第1から第3の電流経路A~CにおけるTCRの電圧ビア位置依存性を示す図である。
図7に示すように、電流経路を変えることでTCRが影響を受けることがわかる。電流経路A,Bにおいては、電圧ビア位置によるTCRの大きな変化は無く、TCRの電圧ビア位置依存性は小さいことがわかる。電流経路Cにおいては、電圧ビア位置によりTCRが影響を受ける。ただし、全体としてTCR200ppm/Kを下回っている。
【0043】
(第2の実施の形態)
図8(a),(b)は、シャント抵抗器、各ビア、および配線の位置関係について、図4とは異なる構造例の側面図及び斜視図であり、本発明の第2の実施の形態にかかる電流検出装置の一構成例を示す図である。すなわち、第1面S1側に、電流用配線18a、電流ビア22b-1~22b-3、電圧ビア24a,24aを形成した例である。図8(a)に示すとおり、電流Iinは電流用配線18a、電流ビア22b-1~22b-3、電極5a、抵抗体3、電流5b、放熱ビア22b(電流5bに接続された各ビア)、電流用配線18を経由して電流Ioutとして流れる。電圧検出に用いられる電圧ビア24aと、これに並んで設けられる複数の電流ビア22b-1~22b-3とは、配線18aにより接続されている。図8(b)に示す通り、電圧ビア24aは、3つある電流ビア22b-1のうちの真ん中の電流ビアの直上に、配線18aを挟んで、形成されている。図8(b)は斜視図であり、電極5aに接続される電流用配線18aを透視した図である。このように配置することで、配線18aが有するTCRの影響を低減することができる。
【0044】
図9は、図8に示す構造(電流用配線18a、電流ビア22b、電圧ビア24aをともにS1側に形成した例)であってビア配置を変形した場合のTCRの値を示す図である。図9の下部には、シャント抵抗器におけるビア配置を平面図で示しており、その直上にTCRの計算結果を示した。図9に示すように、第1面と第2面とに電圧ビアと電流ビアとを分けた図5等の例に比べて、TCRに関するビア配置やビア数(ビア密度)の依存性は大きいことがわかる。特に、最も左に示す例や、右から3番目、4番目に示す例のように、電極5a,5bの半分以上の面積に対して略均等に電流ビアを配置するとTCRが略200ppm/Kとなる。図の左2番目~6番目のように、電極5a,5bの面の一部に偏って形成した場合はTCRが高くなる傾向がある。
【0045】
図10は、図8に示す電流検出装置の電流経路と電圧ビアとの関係を複数示した斜視図及び平面図であり、図11は、これら異なる電流経路におけるTCRの電圧ビアの位置(図10(b)参照)依存性を示す図である。
図10(a),(b)に、電流検出装置の端子の両端間に直線的に電流を流す第1の電流経路A1(71a-73a)、電流検出装置の端子の両側面(異なる側面側)間にS字状に電流を流す第2の電流経路B1(75a-77a)、電流検出装置の端子の両側面(同じ側面側)間にU字状に電流を流す第3の電流経路C1(75a-79a)を示す。
【0046】
図11は、第1から第3の電流経路A1~C1におけるTCRの電圧ビア位置による依存性を示している。
図11に示すように、電流経路に対して、電圧ビアの位置を変えることによって、TCRの影響を調整することができる。第1の電流経路A1において、TCRの値が小さく、かつ、電圧ビアの位置依存は小さいことがわかる。第2の電流経路B1に対しては、Y=0、すなわち、シャント抵抗器1の略中心部分に電圧ビアを配置するのがよい。第3の電流経路C1については、電流が流入及び流出する側面側から離れ、その反対側の側面に近づけるとTCRが低くなる。具体的には、中心位置(Y=0)よりも0.5mm以上離すとよい。
【0047】
(第3の実施の形態)
図12は、本発明の第3の実施の形態による電流検出装置の一構成例を示す図である。第1面S1に、電圧ビア24a,24aとビア22b-1、電流ビア22b-2~3との両方を形成した例を示す図である。但し、図12に示すとおり、電圧ビア24a,24aおよびビア22b-1と、電流ビア22b-2~3とは、配線18aにより接続されておらず、電圧ビアと電流ビアとがクリアランス32aにより切断されている。本構成例において、ビア22b-1は、電圧検出に用いるビアとして機能する。
このようにすると、クリアランス配線18aが接続されている場合に比べて、TCRを低くすることができる。具体的には、TCRが200ppm/K以下、例えば165ppm/K程度にすることができる。
【0048】
以上に説明したように、絶縁性の樹脂基板の第1面に電圧ビアと電流ビアとを設けた場合であっても、両者の配線を切断しておくことで、TCRの影響を低減することができる。
【0049】
上記の実施の形態において、図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、電流検出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
A 電流検出装置
S1 第1面
S2 第2面
1 シャント抵抗器
3 抵抗体
5a,5b 電極端子
11 絶縁性の樹脂基板
11a 貫通孔(収容部)
13a、13b Cu箔層
15 樹脂層
17a 樹脂層
18 電圧検出用配線
21a 電圧ビア貫通孔
21b 電流ビア貫通孔
22a 電圧(検出用)ビア
22b 電流(検出用)ビア
23a 第1の電流検出用配線
24a 電圧(検出用)ビア
25a 電圧用ビア貫通孔
27a 第2の電流検出用配線
32a クリアランス
41 電流検出回路
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12