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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】小腸傷害抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20240419BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K31/166
A61P1/00
A61P29/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020051214
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2020164512
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2019063564
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】北原 美優
(72)【発明者】
【氏名】関 桂子
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-158066(JP,A)
【文献】特開平05-148139(JP,A)
【文献】特開昭54-023131(JP,A)
【文献】特開2011-225529(JP,A)
【文献】日本消化器病学会雑誌,2010年,第107巻,p.1910-1915
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 33/44
A61P 1/00- 43/00
A61K 47/00- 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアミノフェン及びエテンザミドからなる群から選ばれる1種を含有する小腸傷害抑制剤。
【請求項2】
前記小腸傷害が、薬物投与による傷害である、請求項1に記載の小腸傷害抑制剤。
【請求項3】
前記薬物が、非ステロイド性消炎鎮痛薬である、請求項2に記載の小腸傷害抑制剤。
【請求項4】
前記アセトアミノフェン及びエテンザミドからなる群から選ばれる1種が、1回当たり3~4000mg投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の小腸傷害抑制剤。
【請求項5】
前記アセトアミノフェン及びエテンザミドからなる群から選ばれる1種が、1日当たり3~5000mg投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の小腸傷害抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸傷害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性消炎鎮痛薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs;以下、NSAIDsとも称する)は、アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、プロスタグランジン類の合成を抑制し、鎮痛、解熱、及び抗炎症効果を発揮する。
鎮痛薬の第一選択薬である上記NSAIDsは、胃傷害を誘発することが知られている。この胃傷害の抑制剤としては、プロスタグランジン製剤、プロトンポンプ阻害剤、制酸剤等が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
近年、NSAIDsは、胃傷害だけでなく、小腸にも傷害を起こすことが明らかとなってきた(非特許文献1参照)。胃傷害と小腸傷害のメカニズムは異なっており、胃傷害の抑制に有効なプロトンポンプ阻害剤が、小腸に対しては傷害を増悪させることが報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。小腸傷害は自覚症状に乏しく、対処が遅れる恐れがあるという問題があるが、まだ、有効な小腸傷害抑制方法は確立されていない。
【0004】
鎮痛薬として知られているアセトアミノフェンは、イブプロフェンやジクロフェナクナトリウム等による胃傷害の抑制に有効であることが知られている(特許文献3)が、小腸傷害に対する効果については知られていない。
また、鎮痛薬として知られているエテンザミドは、胃傷害の抑制に有効であることが知られているが、小腸傷害に対する効果については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-52210号公報
【文献】特開2013-136566号公報
【文献】特開2016-210708号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】THE GI FOREFRONT Vol.10 No.1 2014.6 20-22
【文献】臨床リウマチ,29:77-84,2017
【文献】Clinical Gastroenterology and Hepatology 2016;14:809-815
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、薬物等による腸傷害を抑制することができる腸傷害抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、薬物等による腸傷害を抑制することができる化合物について鋭意検討した結果、アセトアミノフェン、エテンザミド等を包含する下記一般式(I)で表される化合物(I)が前記腸傷害に有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
【化1】
【0010】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 下記一般式(I)で表される化合物(I)を含有する腸傷害抑制剤。
【0011】
【化2】
(式中、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは水素原子、カルバモイル基、アルキル基、又はアルコキシ基を示し、Rは水素原子、アシルアミノ基又はスルホ基を示す)
[2] 前記腸傷害が、薬物投与による傷害である、[1]に記載の腸傷害抑制剤。
[3] 前記薬物が、非ステロイド性消炎鎮痛薬である、[2]に記載の腸傷害抑制剤。
[4] 前記化合物(I)が、1回当たり3~4000mg投与されるように用いられることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載の腸傷害抑制剤。
[5] 前記化合物(I)が、1日当たり3~5000mg投与されるように用いられることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか一項に記載の腸傷害抑制剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薬物等による腸傷害を抑制することができる腸傷害抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ラット小腸の分割する8つのセクションを模式的に示した図である。
図2】イブプロフェン投与群(IBP)、ロキソプロフェン投与群(LOX)、アセトアミノフェン投与群(APAP)及びコントロール群(Veh)における傷害面積率を示した図である。
図3】ロキソプロフェン投与群(LOX)、ロキソプロフェンに5倍量のアセトアミノフェン(APAP)を含有する試料投与群(LOX+APAP)、イブプロフェン投与群(IBP)、イブプロフェンに等倍量のアセトアミノフェンを含有する試料投与群(IBP+APAP)における傷害面積率を示した図である。
図4】イブプロフェン投与群(IBP)に0.58倍量のエテンザミド(ETZ)を含有する試料投与群(IBP+ETZ)における傷害面積率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の腸傷害抑制剤は、下記一般式(I)で表される化合物(I)を含有する。化合物(I)は、本発明の腸傷害抑制剤の有効成分として含有することが好ましい。
【0015】
【化3】
(式中、Rは水素原子又はアルキル基を示し、Rは水素原子、カルバモイル基、アルキル基、又はアルコキシ基を示し、Rは水素原子、アシルアミノ基又はスルホ基を示す)
【0016】
前記式(I)中、R及びRにおけるアルキル基は、炭素数1~6が好ましく、炭素数1~3がより好ましい。R及びRにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、具体的には、メチル、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等があげられる。
前記式(I)中、Rにおけるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基や2,3-ジヒドロキシプロポキシ基等が挙げられ、メトキシ基、2,3-ジヒドロキシプロポキシ基が好ましい。
前記式(I)中、Rのアシルアミノ基におけるアシル基の炭素鎖長は、炭素数2~6が好ましく、炭素数2~4がより好ましい。
前記式(I)中、Rにおけるスルホ基は、医薬的に許容される塩も含み、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
前記化合物(I)としては、例えば、下記式(I)-1で表されるアセトアミノフェン、及び下記式(I)-2で表されるエテンザミド、(I)-3で表されるグアヤコールスルホン酸カリウム、(I)-4で表されるグアイフェネシン、(I)-5で表されるクレゾールスルホン酸カリウム等が挙げられる。
上記アセトアミノフェン及びエテンザミドは、発熱や頭痛等の症状を抑制する解熱鎮痛剤の主要な成分の一つとして使用される薬剤であり、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン及びクレゾールスルホン酸カリウムは、痰を出しやすくする去痰成分であるが、本発明においては、腸傷害抑制剤の有効成分の一つとして使用される。
前記化合物(I)としては、薬物等による腸傷害を効果的に抑制できる点から、アセトアミノフェン及びエテンザアミドがより好ましい。
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
【化6】
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
本発明の腸傷害抑制剤が適用される腸としては、小腸、大腸が挙げられる。小腸には、十二指腸、空腸、回腸が含まれる。大腸には、盲腸、結腸、直腸が含まれる。
【0023】
本発明の腸傷害抑制剤において、腸傷害発生の原因は特に制限はなく、例えば、ストレス、薬物投与等が挙げられるが、本発明の腸傷害抑制剤は、薬物投与による傷害に対して好ましく適用される。
【0024】
前記腸傷害発生の原因となる薬物としては、特に制限はないが、例えば、NSAIDsが挙げられる。前記NSAIDsとしては、ジクロフェナク、インドメタシン、エトドラク、ナプロキセン、メロキシカム、イブプロフェン、ロキソプロフェン、セレコキシブ、ケトプロフェン、アセチルサリチル酸やこれらの医薬的に許容可能な塩等が挙げられる。
【0025】
傷害の原因となる薬物投与の投与経路としては、経口投与、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与等)等が挙げられる。本発明の腸傷害抑制剤は、これらの中でも、薬物の経口投与(内服)による腸傷害に対して好ましく適用される。
【0026】
本発明の腸傷害抑制剤の使用において、化合物(I)の1回当たりの投与量は、化合物(I)を成人で、3~4000mgとすることが好ましく、3~2000mgとすることがより好ましく、50~1000mgとすることがさらに好ましい。
【0027】
本発明の腸傷害抑制剤の使用において、化合物(I)の1日当たりの投与量は、化合物(I)を成人で、3~5000mgとすることが好ましく、10~4000mgとすることがより好ましく、150~4000mgとすることがさらに好ましい。例えば、化合物(I)として、アセトアミノフェンを用いる場合は、1日当たり150~4000mgとすることができ、化合物(I)として、エテンザミドを用いる場合には、1日当たり250~1500mgとすることができる。
【0028】
本発明の腸傷害抑制剤には、必要に応じて、前記化合物(I)以外の他の薬物を含有することができる(配合剤と称する)。
前記他の薬物としては、例えば、
解熱・鎮痛・消炎薬(例えばアセチルサリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、サザピリン等のサリチル酸系薬剤、イブプロフェン、ロキソプロフェン等のプロピオン系薬剤、フルフェナム酸、メフェナム酸等のフェナム酸系薬剤、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシン等のアリール酢酸系薬剤、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン等のピラゾリジン系薬剤、ブコローム等のピリミジン系薬剤、ピロキシカム等のオキシカム系薬剤、スルピリン等のピリン系薬剤、イソプロピルアンチピリン等);
抗ヒスタミン薬(例えば塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸カルビノキサミン等);
鎮咳薬(例えば臭化水素酸デキストロメトルファン、リン酸ジヒドロコディン、リン酸コディン、ヒベンズ酸チペピジン、塩酸クロペラスチン、ベンゾナテート等);
去痰薬(例えば塩酸ノスカピン、塩酸ブロムヘキシン等);
塩酸L-システイン、塩酸L-メチルシステイン、アセチルシステイン等の粘膜溶解液;カルボシステイン等の粘液修復薬;
塩化リゾチーム等の消炎酵素剤;
グリチルリチン酸等の抗炎症剤;
アリルイソプロピルアセチル尿素等の催眠鎮静剤;
塩酸アンブロキソール等の粘液潤滑薬;
塩酸テルビナフィン等の抗真菌剤;
気管支拡張薬又は喘息治療薬(例えばシュードエフェドリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸テルブタリン、イソプロテレノール、サルブタモール、テルブタリン等のβ2-アドレナリン受容体刺激薬、テオフィリン、アミノフィリン、プロキシフィリン等のキサンチン系薬剤、クロモグリク酸等);
アミノ酸類;生薬;ビタミン類(ビタミンA,D,E,K,U等の脂溶性ビタミン類;ビタミンB,C,P等の水溶性ビタミン類);等が例示できる。
これら他の薬物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の腸傷害抑制剤における前記他の薬物の含有量は、目的とする医薬製剤の用途により、有効性と安全性を鑑み各々適切な処方量で設定する。
本発明の腸傷害抑制剤には、薬物投与により生じる腸傷害を抑制することができるため、前記の他の薬物のうち、解熱・鎮痛・消炎薬(例えば、アセチルサリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、サザピリン等のサリチル酸系薬剤、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン等のプロピオン系薬剤、フルフェナム酸、メフェナム酸等のフェナム酸系薬剤、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシン等のアリール酢酸系薬剤、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン等のピラゾリジン系薬剤、ブコローム等のピリミジン系薬剤、メロキシカム、ピロキシカム等のオキシカム系薬剤、スルピリン等のピリン系薬剤、イソプロピルアンチピリン、セレコキシブ等)を含有する配合薬が有用であり好ましく、NSAIDsの中でも、ジクロフェナク、インドメタシン、ナプロキセン、メロキシカム、イブプロフェン、ロキソプロフェン、セレコキシブ、ケトプロフェン、アセチルサリチル酸やこれらの医薬的に許容可能な塩が特に有用であり好ましい。
前記配合剤において、前記化合物(I)以外の他の薬物が腸傷害発生の原因となる薬物である場合、腸傷害発生の原因となる薬物に対する化合物(I)の含有質量比は、0.05~20が好ましく、0.2~10が好ましい。前記範囲内とすることで、腸傷害発生の原因となる薬物による薬効を維持しつつ、腸傷害発生の原因となる薬物による腸傷害が効果的に抑制される。
【0029】
本発明の腸傷害抑制剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の任意成分を含有することができる。前記任意成分としては、結合剤、賦形剤、滑沢剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料等)、色素、安定化剤、コーティング剤、可塑剤、隠蔽剤等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて適量を用いることができる。
結合剤としては、例えば、澱粉、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等を用いることができる。
賦形剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、乳糖、タルク、結晶セルロース(セオラス等)、粉糖、マンニトール等の糖アルコール類、軽質無水ケイ酸等を用いることができる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
甘味料としては例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
酸味料としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等を用いることができる。
コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、「オパドライ(商品名)」(日本カラコン合同会社製)等を用いることができる。
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、トリアセチン等を用いることができる。
隠蔽剤としては、例えば、酸化チタン、タルク等を用いることができる。
【0030】
本発明の腸傷害抑制剤の投与形態は特に限定されない。例えば、経口投与(例えば、口腔内投与、舌下投与等)、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与等)等が挙げられる。これらの中でも侵襲性の少ない投与形態が好ましく、腸傷害を効果的に抑制する観点から、経口投与(内服)がより好ましい。
【0031】
経口投与剤(内服剤)又は経口投与用組成物(内服用組成物)の剤形としては、例えば、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、錠剤(錠剤、タブレット)、カプセル状(カプセル剤)、粉末状(顆粒、細粒)、ソフトカプセル状(ゼラチン基剤等のソフトカプセル剤)、ハードカプセル状(ハードカプセル剤)、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、固形状、半液体状、クリーム状、ペースト状が挙げられる。
本発明の腸傷害抑制剤を製剤形態とする方法は特に限定されず、製剤形態に応じ、常法により実施できる。例えば、本発明の腸傷害抑制剤の有効成分である化合物(I)と他の成分とをそのまま混合し、あるいは前記成分の一部または全部に造粒やコーティングを施してから混合して粒状混合物を製造し、これを粒状剤(顆粒剤、細粒剤、散剤)とすることができる。また、前記粒状混合物を打錠し、さらに必要に応じてコーティングを行い、錠剤とすることができる。
【実施例
【0032】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0033】
[実施例1]
(1)動物
Wistar系雄性ラットの8週齢を4日間以上予備飼育し、18時間絶食させた(水は自由摂取)後、給餌し、1時間後試験に供した。
【0034】
(2)試料(懸濁液)
ラットに対する試料の投与量を、10mL/kgとし、イブプロフェン(IBP)の投与量として200mg/kg、ロキソプロフェン(LOX)の投与量として68.1mg/kg、アセトアミノフェン(APAP)の投与量として300mg/kgにそれぞれなるように試料の調製を行った。コントロール試料(Vehicle)としては、5%アラビアゴム液となるように試料を調製した。
【0035】
(3)試料の投与
各試料をそれぞれ、10mL/kgとして投与した。具体的には、あらかじめ測定しておいたラットの体重にあわせた量の試料(例えば、ラット体重が200gであれば2mL)を、ラット用経口投与ゾンデを装着したディスポーザブル注射筒にとり、強制経口投与した。各例について、ラット5匹を用いた(n=5)。
【0036】
(4)小腸傷害性評価
小腸摘出30分前にエバンスブルーを尾静脈に投与し、各試料投与24時間後にイソフルラン麻酔下で小腸を摘出した。摘出した小腸を図1に示すように8つのセクションに分割し、濾紙上に各セクションを開いて撮像した。傷害部分はエバンスブルーの漏出により青色に染色し、ImageJにて傷害部分(エバンスブルー漏出部位)の面積を算出した。その後8セクションの面積を合算し、下記式に従い、傷害面積率を各試料投与群について算出した。
傷害面積率(%)=エバンスブルー漏出部位面積/全組織面積
その結果を図2に示す。
【0037】
図2に示すように、イブプロフェン投与群(IBP)と、ロキソプロフェン投与群(LOX)とにおいて、有意な小腸傷害が認められた。それに対して、コントロール群(Veh)とアセトアミノフェン投与群(APAP)とには、小腸傷害は認められなかった。
【0038】
[実施例2]
ラットに対する試料の投与量を、10mL/kgとし、ロキソプロフェン(LOX)とアセトアミノフェン(APAP)との投与量がそれぞれ68.1mg/kg、340.5mg/mgとなる試料(LOX+APAP)と、イブプロフェン(IBP)とアセトアミノフェン(APAP)との投与量がそれぞれ200mg/kg、200mg/kgとなる試料(IBP+APAP)を調製した。また、ロキソプロフェン(LOX)の投与量として68.1mg/kg、イブプロフェン(IBP)の投与量として200mg/kg、アセトアミノフェン(APAP)の投与量として340.5mg/kgとなる試料をそれぞれ調製した。
【0039】
上記で調製した試料を用いる以外は、実施例1と同様にして各試料をラットに投与し、小腸傷害性を評価した。その結果を図3に示す。
図3に示すように、ロキソプロフェン投与群(LOX)で認められた小腸傷害作用が、ロキソプロフェン(LOX)に対して5倍量のアセトアミノフェン(APAP)を含有することにより抑制された(図3中の、LOX+APAP)。また、イブプロフェン投与群(IBP)で認められた小腸傷害作用が、イブプロフェン(IBP)に対して等倍量のアセトアミノフェン(APAP)を含有することにより抑制された(図3中のIBP+APAP)。
この結果から、アセトアミノフェンは、イブプロフェン又はロキソプロフェンによる小腸傷害を抑制する効果があることが明らかとなった。
【0040】
[実施例3]
ラットに対する試料の投与量を、10mL/kgとし、イブプロフェン(IBP)とエテンザミド(ETZ)との投与量がそれぞれ200mg/kg、116mg/kgとなる試料(IBP+ETZ)を調製した。また、イブプロフェン(IBP)の投与量として200mg/kgとなる試料をそれぞれ調製した。
【0041】
上記で調製した試料を用いる以外は、実施例1と同様にして各試料をラットに投与し、小腸傷害性を評価した。その結果を図4に示す。
図4に示すように、イブプロフェン投与群(IBP)で認められた小腸傷害作用が、イブプロフェン(IBP)に対して0.58倍量のエテンザミド(ETZ)を含有することにより抑制された(図4中のIBP+ETZ)。
この結果から、エテンザミドは、イブプロフェンによる小腸傷害を抑制する効果があることが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4