IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特許7475177生産機械システム、管理方法及び管理プログラム
<>
  • 特許-生産機械システム、管理方法及び管理プログラム 図1
  • 特許-生産機械システム、管理方法及び管理プログラム 図2
  • 特許-生産機械システム、管理方法及び管理プログラム 図3
  • 特許-生産機械システム、管理方法及び管理プログラム 図4
  • 特許-生産機械システム、管理方法及び管理プログラム 図5
  • 特許-生産機械システム、管理方法及び管理プログラム 図6
  • 特許-生産機械システム、管理方法及び管理プログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】生産機械システム、管理方法及び管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020053652
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021152834
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚登
(72)【発明者】
【氏名】笠原 和人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】滝本 大介
(72)【発明者】
【氏名】中田 慎吾
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-296214(JP,A)
【文献】特開2007-025997(JP,A)
【文献】特開2005-174343(JP,A)
【文献】特開2019-168800(JP,A)
【文献】特開2002-196809(JP,A)
【文献】特開2018-041387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 19/405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1実使用加工具によって行われた第1被加工物の加工における第1実送り速度及び第1実加工時間と、前記第1実使用加工具と加工具タイプの異なる第2実使用加工具によって行われた第2被加工物の加工における第2実送り速度及び第2実加工時間とを取得する取得部と、
前記第1実使用加工具と加工具タイプの同じ第1標準加工具について予め設定された第1標準送り速度と、前記第2実使用加工具と加工具タイプの同じ第2標準加工具について予め設定された第2標準送り速度とを記憶する記憶部と、
前記第1実送り速度を前記第1標準送り速度に変更した場合における前記第1実加工時間の削減時間と、前記第2実送り速度を前記第2標準送り速度に変更した場合における前記第2実加工時間の削減時間とを演算する演算部と、
を備える生産機械システム。
【請求項2】
前記第1実使用加工具及び第2実使用加工具は機械加工工具であり、
前記加工具タイプは、加工具カテゴリ及び加工具径によって特定される、
請求項1に記載の生産機械システム。
【請求項3】
前記第1実使用加工具及び第2実使用加工具は溶接装置であり、
前記加工具タイプは、溶接継手カテゴリによって特定される、
請求項1に記載の生産機械システム。
【請求項4】
前記第1被加工物の材質は、前記第1標準加工具によって加工可能な材質と同じであり、
前記第2被加工物の材質は、前記第2標準加工具によって加工可能な材質と同じである、
請求項1乃至3のいずれかに記載の生産機械システム。
【請求項5】
前記第1実使用加工具によって行われた加工タイプは、前記第1標準加工具によって行うことのできる加工タイプと同じであり、
前記第2実使用加工具によって行われた加工タイプは、前記第2標準加工具によって行うことのできる加工タイプと同じである、
請求項1乃至4のいずれかに記載の生産機械システム。
【請求項6】
前記演算部は、前記第1実加工時間の削減時間と前記第1実使用加工具によって加工された前記第1被加工物の合計個数との第1乗算値と、前記第2実加工時間の削減時間と前記第2実使用加工具によって加工された前記第2被加工物の合計個数との第2乗算値とを演算する、
請求項1乃至5のいずれかに記載の生産機械システム。
【請求項7】
表示部を更に備え、
前記表示部は、前記第1乗算値と前記第2乗算値とを同一画面に表示する、
請求項6に記載の生産機械システム。
【請求項8】
生産機械システムの管理方法であって、
第1実使用加工具によって行われた第1被加工物の加工における第1実送り速度を、前記第1実使用加工具と加工具タイプの同じ第1標準加工具について予め設定された第1標準送り速度に変更した場合における実加工時間の第1削減時間を演算する工程と、
第2実使用加工具によって行われた第2被加工物の加工における第2実送り速度を、前記第2実使用加工具と加工具タイプの同じ第2標準加工具について予め設定された第2標準送り速度に変更した場合における実加工時間の第2削減時間を演算する工程と、
を備える管理方法。
【請求項9】
前記第1削減時間と前記第2削減時間とを比較可能に表示する工程を更に備える、
請求項8に記載の管理方法。
【請求項10】
第1実使用加工具によって行われた第1被加工物の加工における第1実送り速度を、前記第1実使用加工具と加工具タイプの同じ第1標準加工具について予め設定された第1標準送り速度に変更した場合における実加工時間の削減時間を演算する工程と、
第2実使用加工具によって行われた第2被加工物の加工における第2実送り速度を、前記第2実使用加工具と加工具タイプの同じ第2標準加工具について予め設定された第2標準送り速度に変更した場合における実加工時間の削減時間を演算する工程と、
を生産機械システムを管理するコンピュータに実行させる管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産機械システム、管理方法及び管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NC(Numerical Control)プログラムに従って、被加工物に所望の加工(例えば、切削加工、溶接加工など)を実施するコンピュータ数値制御生産機械(以下、「生産機械」という。)が知られている。
【0003】
特許文献1では、複数の生産機械を備える生産機械システムにおいて、各生産機械から加工具情報と加工条件とを自動的に収集する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-41387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各生産機械における加工条件は各生産機械のオペレータによって決められており、加工条件が適切であるか否かはオペレータの技量に依存しているため、加工条件の改善には余地が残されている。
【0006】
例えば、各生産機械において行われる1つ1つの加工ごとに加工条件を見直す手法が考えられるが、この手法では、加工条件を見直すにあたり各加工条件に優先順位を付けることができないため、膨大な数の加工ごとに加工条件を見直す必要がある。
【0007】
本開示は、加工条件を効率的に改善可能な生産機械システム、管理方法及び管理プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る生産機械システムは、取得部と、記憶部と、演算部とを備える。取得部は、第1実使用加工具によって行われた第1被加工物の加工における第1実送り速度及び第1実加工時間と、第1実使用加工具と加工具タイプの異なる第2実使用加工具によって行われた第2被加工物の加工における第2実送り速度及び第2実加工時間とを取得する。記憶部は、第1実使用加工具と加工具タイプの同じ第1標準加工具について予め設定された第1標準送り速度と、第2実使用加工具と加工具タイプの同じ第2標準加工具について予め設定された第2標準送り速度とを記憶する。演算部は、第1実送り速度を第1標準送り速度に変更した場合における第1実加工時間の削減時間と、第2実送り速度を第2標準送り速度に変更した場合における第2実加工時間の削減時間とを演算する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、加工条件を効率的に改善可能な生産機械システム、管理方法及び管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る生産機械システムの構成を示す模式図
図2】実施形態に係る実加工情報の一例を示す表
図3】実施形態に係る標準加工情報の一例を示す表
図4】実施形態に係る抽出された実加工情報の一例を示す表
図5】実施形態に係る演算部による演算結果の一例を示す表
図6】実施形態に係る生産機械システムの管理方法を説明するためのフローチャート
図7】生産機械として溶接装置を用いた場合における演算結果の一例を示す表
【発明を実施するための形態】
【0011】
(生産機械システム1の構成)
本実施形態に係る生産機械システム1の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、生産機械システム1の構成を示す模式図である。
【0012】
生産機械システム1は、複数の工作機械10と、管理装置20と、端末装置30とを備える。
【0013】
複数の工作機械10それぞれは、生産機械の一例である。複数の工作機械10には、第1乃至第3工作機械10a~10cが含まれる。ただし、工作機械10の数は特に制限されず、1以上であればよい。
【0014】
[第1乃至第3工作機械10a~10c]
第1乃至第3工作機械10a~10cそれぞれは、機械本体11と、CNC(Computer Numerical Control)制御部12とを有する。
【0015】
機械本体11は、被加工物(いわゆる、ワーク)Wを所望の形状に加工する。本実施形態では、図1に示すように、第1工作機械10aにおいて加工される第1被加工物Waと、第2工作機械10bにおいて加工される第2被加工物Wbと、第3工作機械10cにおいて加工される第3被加工物Wcとが被加工物Wに含まれる。
【0016】
機械本体11において行われる加工としては、切削加工が代表的である。切削加工には、穴あけ加工、フライス加工及び旋削加工などが含まれる。
【0017】
機械本体11は、テーブル14と、実使用加工具15と、主軸16とを有する。
【0018】
テーブル14上には、被加工物が載置される。実使用加工具15は、被加工物の加工に実際に用いられる機械加工工具である。実使用加工具15は、主軸16に取り付けられた状態で回転駆動する。実使用加工具15は、テーブル14上に載置された被加工物に対して相対移動する。実使用加工具15は、テーブル14が移動することによって、或いは、主軸16が移動することによって、被加工物に対して相対移動する。
【0019】
実使用加工具15は、被加工物Wに対して行われる加工内容に応じて適宜選択される。よって、第1乃至第3工作機械10a~10cそれぞれの実使用加工具15は同じであってもよいし異なっていてもよい。本実施形態では、図1に示すように、第1工作機械10aにおける第1被加工物Waの加工に用いられる第1実使用加工具15aと、第2工作機械10bにおける第2被加工物Wbの加工に用いられる第2実使用加工具15bと、第3工作機械10cにおける第3被加工物Wcの加工に用いられる第3実使用加工具15cとが実使用加工具15に含まれる。第1乃至第3実使用加工具15a~15cは、互いに加工具タイプの異なる加工具であるものとする。加工具タイプは、加工具カテゴリ及び加工具径によって特定される。加工具カテゴリは、実使用加工具15の種類及び用途などを示す。実使用加工具15の加工具カテゴリとしては、例えば、ドリル、フライス、バイトなどが挙げられる。加工具径は、実使用加工具15の刃先の直径である。
【0020】
CNC制御部12は、NC(Numerical Control)プログラムに従って、機械本体11を制御する。NCプログラムは、被加工物の加工条件を含む。加工条件には、実使用加工具15の送り速度(いわゆる、Fコード。以下、「実送り速度」という。)と、主軸16の回転数(以下、「実主軸回転数」という。)とが含まれる。本実施形態において、NCプログラムに含まれる加工条件は、各工作機械10のオペレータが適切と考えた値に設定されているものとする。
【0021】
CNC制御部12は、被加工物Wの加工が完了すると、実加工情報を生成して、生成した実加工情報を管理装置20に送信する。本実施形態では、図1に示すように、第1工作機械10aのCNC制御部12は、第1被加工物Waの加工が完了すると、第1実加工情報J1を生成して、生成した第1実加工情報J1を管理装置20に送信する。第2工作機械10bのCNC制御部12は、第2被加工物Wbの加工が完了すると、第2実加工情報Jbを生成して、生成した第2実加工情報Jbを管理装置20に送信する。第3工作機械10cのCNC制御部12は、第3被加工物Wcの加工が完了すると、第3実加工情報Jcを生成して、生成した第3実加工情報Jcを管理装置20に送信する。
【0022】
第1実加工情報J1には、第1実使用加工具15aによって行われた第1被加工物Waの加工についての、加工日時と、第1実使用加工具15aの加工具タイプ(加工具カテゴリ及び加工具径)と、第1実送り速度と、第1実主軸回転数と、第1被加工物Waの実材質と、実加工タイプと、第1被加工物Waを1つ加工するのに実際にかかった第1実加工時間とが含まれる。
【0023】
第2実加工情報J2には、第2実使用加工具15bによって行われた第2被加工物Wbの加工についての、加工日時と、第2実使用加工具15bの加工具タイプ(加工具カテゴリ及び加工具径)と、第2実送り速度と、第2実主軸回転数と、第2被加工物Wbの実材質と、実加工タイプと、第2被加工物Wbを1つ加工するのに実際にかかった第2実加工時間とが含まれる。
【0024】
第3実加工情報J3には、第3実使用加工具15cによって行われた第3被加工物Wcの加工についての、加工日時と、第3実使用加工具15cの加工具タイプ(加工具カテゴリ及び加工具径)と、第3実送り速度と、第3実主軸回転数と、第3被加工物Wcの実材質と、実加工タイプと、第3被加工物Wcを1つ加工するのに実際にかかった第3実加工時間とが含まれる。
【0025】
実材質とは、第1乃至第3被加工物Wa~Wcそれぞれの構成材料である。実加工タイプとは、実使用加工具15によって実際に行われた加工の種類である。実加工タイプとしては、例えば、荒加工、仕上げ加工などが挙げられる。
【0026】
[管理装置20]
管理装置20は、ネットワークを介して、各工作機械10及び端末装置30それぞれと相互通信可能である。管理装置20の機能は、サーバによって達成することができる。サーバは、クラウドサーバであってよい。
【0027】
管理装置20は、取得部21と、記憶部22と、抽出部23と、演算部24とを備える。
【0028】
取得部21は、第1工作機械10aから第1実加工情報J1を取得し、第2工作機械10bから第2実加工情報J2を取得し、第3工作機械10cから第3実加工情報J3を取得する。取得部21は、取得した第1乃至第3実加工情報J1~J3を記憶部22に記憶させる。
【0029】
記憶部22は、第1乃至第3実加工情報J1~J3を記憶する。図2は、記憶部22が記憶している実加工情報の一例を示す表である。図2に示すように、記憶部22は、第1乃至第3工作機械10a~10cそれぞれから取得された第1乃至第3実加工情報J1~J3を時系列順に記憶する。図2に示す例では、第1乃至第3実使用加工具15a~15cは、互いに加工具タイプ(具体的には、加工具径)が異なっている。また、第1実使用加工具15aによる第1被加工物Waの加工には20分かかり、第2実使用加工具15bによる第2被加工物Wbの加工には10分かかり、第3実使用加工具15cによる第3被加工物Wcの加工には5分かかっている。
【0030】
記憶部22は、第1乃至第3実加工情報J1~J3とは別に、第1乃至第3標準加工具Sa~Scそれぞれについての第1乃至第3標準加工情報H1~H3を記憶している。図3は、記憶部22が記憶している標準加工情報の一例を示す表である。
【0031】
第1乃至第3標準加工具Sa~Scは、第1乃至第3工作機械10a~10cにおいて実使用加工具15として用いられる可能性のある機械加工工具である。本実施形態において、第1標準加工具Saは第1工作機械10aの第1実使用加工具15aに対応し、第2標準加工具Sbは第2工作機械10bの第2実使用加工具15bに対応し、第3標準加工具Scは第3工作機械10cの第3実使用加工具15cに対応している。
【0032】
ただし、記憶部22は、第1乃至第3標準加工情報H1~H3とは別に、第1乃至第3標準加工具Sa~Sc以外の標準加工具についての標準加工情報を更に記憶していてもよい。
【0033】
第1標準加工情報H1には、第1標準加工具Saについての、加工具タイプ(加工具カテゴリ及び加工具径)と、第1標準送り速度と、第1標準主軸回転数と、標準材質と、標準加工タイプとが含まれる。
【0034】
第2標準加工情報H2には、第2標準加工具Sbについての、加工具タイプ(加工具カテゴリ及び加工具径)と、第2標準送り速度と、第2標準主軸回転数と、標準材質と、標準加工タイプとが含まれる。
【0035】
第3標準加工情報H3には、第3標準加工具Scについての、加工具タイプ(加工具カテゴリ及び加工具径)と、第3標準送り速度と、第3標準主軸回転数と、標準材質と、標準加工タイプとが含まれる。
【0036】
なお、第1乃至第3標準送り速度は、第1乃至第3標準加工具Sa~Scそれぞれを用いて加工する際に好適な送り速度として予め設定された値である。第1乃至第3標準主軸回転数は、第1乃至第3標準加工具Sa~Scそれぞれを用いて加工する際に好適な主軸回転数として予め設定された値である。標準送り速度及び標準主軸回転数は、想定される全ての被加工物Wの材質に適用可能な値、或いは、加工具メーカが推奨する値に設定することができる。標準材質とは、第1乃至第3標準加工具Sa~Scを用いた加工に特に適した構成材料である。標準加工タイプとは、第1乃至第3標準加工具Sa~Scそれぞれに特に適した加工タイプである。
【0037】
抽出部23は、後述する端末装置30の入力部32から検索クエリを受信する。抽出部23は、検索クエリを受信すると、記憶部22を参照して、時系列順に並べられた実加工情報(図2参照)の中から、検索クエリによって示された実加工情報を抽出する。
【0038】
図4は、抽出部23が抽出した実加工情報の一例を示す表である。図4に示すように、本実施形態では、2019年12月20日22時40分に第1実使用加工具15aによって加工された第1被加工物Waについての第1実加工情報J1と、2019年12月20日22時45分に第2実使用加工具15bによって加工された第2被加工物Wbについての第2実加工情報J2と、2019年12月20日22時50分に第3実使用加工具15cによって加工された第3被加工物Wcについての第3実加工情報J3とが抽出されている。
【0039】
演算部24は、加工具タイプを比較することによって、記憶部22に記憶された第1乃至第3標準加工情報H1~H3(図3参照)の中から、抽出部23によって抽出された第1乃至第3実加工情報J1~J3(図4参照)それぞれに対応する標準加工情報を選出する。本実施形態では、第1実加工情報J1に含まれる第1実使用加工具15aの加工具タイプは、第1標準加工情報H1に含まれる第1標準加工具Saの加工具タイプと同じであるので、演算部24は、第1実加工情報J1に対応する標準加工情報として第1標準加工情報H1を選出する。同様に、演算部24は、第2実加工情報J2に対応する標準加工情報として第2標準加工情報H2を選出し、第3実加工情報J3に対応する標準加工情報として第3標準加工情報H3を選出する。
【0040】
演算部24は、第1乃至第3実加工情報J1~J3に含まれる第1乃至第3実使用加工具15a~15cの第1乃至第3実送り速度を、第1乃至第3標準加工情報H1~H3に含まれる第1乃至第3標準加工具Sa~Scの第1乃至第3標準送り速度に変更(改善)した場合における、第1乃至第3実加工時間それぞれの「削減時間」及び「総削減時間」を演算する。
【0041】
図5は、演算部24における演算結果の一例を示す表である。図5に示すように、第1実加工情報J1に含まれる第1実使用加工具15aの第1実送り速度1500(mm/min)を、第1標準加工情報H1に含まれる第1標準加工具Saの第1標準送り速度3000(mm/min)に変更した場合、第1実加工時間20(min/個)は10(min/個)に短縮される。演算部24は、第1実加工時間20(min/個)と改善後の加工時間10(min/個)との差分である10(min/個)を、1個の第1被加工物Wa当たりの「第1削減時間」として演算する。なお、演算部24は、第1実送り速度を第1標準送り速度に変更するにあたって、第1実主軸回転数640(rpm)を第1標準主軸回転数1280(rpm)に変更している。
【0042】
さらに、演算部24は、記憶部22を参照して、時系列順に並べられた実加工情報(図2参照)に含まれる第1実加工情報J1の数を数えることによって、第1実使用加工具15aによって加工された第1被加工物Waの合計個数を取得する。本実施形態では、合計個数として、前月中に加工された第1被加工物Waの個数を用いるものとする。そして、演算部24は、1個の第1被加工物Wa当たりの第1削減時間10(min/個)と第1実使用加工具15aによって加工された第1被加工物Waの合計個数である2(個/月)との第1乗算値20(min/月)を、全ての第1被加工物Waについての第1総削減時間として演算する。
【0043】
同様に、第2実加工情報J2に含まれる第2実使用加工具15bの第2実送り速度3000(mm/min)を、第2標準加工情報H2に含まれる第2標準加工具Sbの第2標準送り速度6000(mm/min)に変更した場合、第2実加工時間10(min/個)は5(min/個)へと短縮される。演算部24は、第2実加工時間10(min/個)と改善後の加工時間5(min/個)との差分である5(min/個)を、1個の第2被加工物Wb当たりの「第2削減時間」として演算する。なお、演算部24は、第2実送り速度を第2標準送り速度に変更するにあたって、第2実主軸回転数1200(rpm)を第2標準主軸回転数2560(rpm)に変更している。
【0044】
さらに、演算部24は、記憶部22を参照して、時系列順に並べられた実加工情報(図2参照)に含まれる第2実加工情報J2の数を数えることによって、第2実使用加工具15bによって加工された第2被加工物Wbの合計個数を取得する。そして、演算部24は、1個の第2被加工物Wb当たりの第2削減時間5(min/個)と第2実使用加工具15bによって加工された第2被加工物Wbの合計個数である3(個/月)との第2乗算値15(min/月)を、全ての第2被加工物Wbについての第2総削減時間として演算する。
【0045】
同様に、第3実加工情報J3に含まれる第3実使用加工具15cの第3実送り速度3000(mm/min)を、第3標準加工情報H3に含まれる第3標準加工具Scの第3標準送り速度6000(mm/min)に変更した場合、第3実加工時間5(min/個)は2.5(min/個)へと短縮される。演算部24は、第3実加工時間5(min/個)と改善後の加工時間2.5(min/個)との差分である2.5(min/個)を、1個の第3被加工物Wc当たりの「第3削減時間」として演算する。なお、演算部24は、第3実送り速度を第3標準送り速度に変更するにあたって、第3実主軸回転数2000(rpm)を第3標準主軸回転数4000(rpm)に変更している。
【0046】
さらに、演算部24は、記憶部22を参照して、時系列順に並べられた実加工情報(図2参照)に含まれる第3実加工情報J3の数を数えることによって、第3実使用加工具15cによって加工された第3被加工物Wcの合計個数を取得する。そして、演算部24は、1個の第3被加工物Wc当たりの第3削減時間2.5(min/個)と第3実使用加工具15cによって加工された第3被加工物Wcの合計個数である4(個/月)との第3乗算値10(min/月)を、全ての第3被加工物Wcについての第3総削減時間として演算する。
【0047】
演算部24は、図5に示す演算結果を、後述する端末装置30の表示部31に表示させる。
【0048】
[端末装置30]
端末装置30は、ネットワークを介して、管理装置20と相互通信可能である。端末装置30としては、スマートフォンなどのスマートデバイス、或いは、パーソナルコンピュータ等の情報処理機器を用いることができる。利用者は、端末装置30を介して管理装置20を利用することができる。
【0049】
端末装置30は、表示部31と、入力部32とを備える。
【0050】
表示部31は、利用者が目視できるディスプレイである。表示部31は、管理装置20の記憶部22を参照して、時系列順に並べられた実加工情報(図2参照)を表示する。
【0051】
表示部31は、第1乃至第3被加工物Wa~Wcそれぞれについての「第1乃至第3削減時間」及び「第1乃至第3総削減時間」を表示する。表示部31は、「第1乃至第3削減時間」を互いに比較可能に表示可能であることが好ましい。例えば、表示部31は、「第1乃至第3削減時間」を同一画面に表示することが好ましい。
【0052】
入力部32は、利用者によって操作される操作部材である。入力部32としては、キーボード及びマウスなどを用いることができる。利用者は、入力部32を用いて、表示部31に表示された実加工情報の中から加工条件を改善したい実加工情報を選択する。本実施形態では、上述の通り、図4に示した第1乃至第3実加工情報J1~J3が利用者によって選択されている。
【0053】
入力部32は、利用者が選択した第1乃至第3実加工情報J1~J3を示す検索クエリを生成して、管理装置20の抽出部23に送信する。
【0054】
上述したように、管理装置20の抽出部23が、入力部32から受信した検索クエリによって示される第1乃至第3実加工情報J1~J3を抽出すると、管理装置20の演算部24は、第1乃至第3被加工物Wa~Wcそれぞれについての「第1乃至第3削減時間」及び「第1乃至第3総削減時間」を演算して、これらの一覧表(図5参照)を表示部31に表示させる。
【0055】
利用者は、表示部31に表示された一覧表を参照して、1個の被加工物W当たりの「削減時間」を比較考量することによって、或いは、全ての被加工物Wについての総削減時間を比較考量することによって、各加工条件の見直しに優先順位を付けることができる。従って、第1乃至第3工作機械10a~10cにおける各加工条件を効率的に改善することができる。
【0056】
図5に示す例では、「削減時間」及び「総削減時間」のいずれに重きを置いたとしても、第1実加工情報J1→第2実加工情報J2→第3実加工情報J3の順に改善を進めるのが効率的であるといえる。
【0057】
(生産機械システム1の管理方法)
生産機械システム1の管理方法について、図面を参照しながら説明する。図6は、生産機械システム1の管理方法を説明するためのフローチャートである。
【0058】
ステップS1において、取得部21は、第1乃至第3工作機械10a~10cから第1乃至第3実加工情報J1~J3を取得する。
【0059】
ステップS2において、表示部31は、記憶部22が記憶している時系列順の実加工情報(図2参照)を表示する。
【0060】
ステップS3において、入力部32は、利用者が選択した第1乃至第3実加工情報J1~J3を示す検索クエリを生成して、検索クエリを抽出部23に送信する。
【0061】
ステップS4において、抽出部23は、記憶部22が記憶している時系列順の実加工情報(図2参照)の中から、検索クエリによって示された第1乃至第3実加工情報J1~J3(図4参照)を抽出する。
【0062】
ステップS5において、演算部24は、記憶部22が記憶している第1標準加工情報H1(図3参照)と抽出部23が抽出した第1実加工情報J1(図4参照)とを参照して、第1実使用加工具15aの第1実送り速度を第1標準加工具Saの第1標準送り速度に変更した場合における第1実加工時間の第1削減時間を演算する。
【0063】
ステップS6において、演算部24は、記憶部22が記憶している第2標準加工情報H2(図3参照)と抽出部23が抽出した第2実加工情報J2(図4参照)とを参照して、第2実使用加工具15bの第2実送り速度を第2標準加工具Sbの第2標準送り速度に変更した場合における第2実加工時間の第2削減時間を演算する。
【0064】
ステップS7において、演算部24は、記憶部22が記憶している第3標準加工情報H3(図3参照)と抽出部23が抽出した第3実加工情報J3(図4参照)とを参照して、第3実使用加工具15cの第3実送り速度を第3標準加工具Scの第3標準送り速度に変更した場合における第3実加工時間の第3削減時間を演算する。
【0065】
ステップS8において、演算部24は、1個の第1被加工物Wa当たりの削減時間と第1実使用加工具15aによって加工された第1被加工物Waの合計個数との第1乗算値を、全ての第1被加工物Waについての第1総削減時間として演算する。
【0066】
ステップS9において、演算部24は、1個の第2被加工物Wb当たりの削減時間と第2実使用加工具15bによって加工された第2被加工物Wbの合計個数との第2乗算値を、全ての第2被加工物Wbについての第2総削減時間として演算する。
【0067】
ステップS10において、演算部24は、1個の第3被加工物Wc当たりの削減時間と第3実使用加工具15cによって加工された第3被加工物Wcの合計個数との第3乗算値を、全ての第3被加工物Wcについての第3総削減時間として演算する。
【0068】
ステップS11において、演算部24は、第1乃至第3実加工時間それぞれの「第1乃至第3削減時間」及び「第1乃至第3総削減時間」の演算結果(図5参照)を表示部31に表示させる。
【0069】
(実施形態の変形例)
本開示は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0070】
(変形例1)
上記実施形態において、生産機械システム1は、生産機械の一例である機械加工工具としての工作機械10を備えることとしたが、これに限られない。生産機械システム1は、生産機械として溶接装置を備えていてもよい。その場合、図7に示されるように、管理装置20は、少なくとも、加工具タイプとして溶接継手カテゴリ(隅肉、開先など)、溶接トーチの送り速度、溶接電流などを含む実加工情報K1~K3を取得する。図7の演算結果では、実送り速度100(mm/min)を標準送り速度200(mm/min)に変更することによって、実加工時間が半減されている。利用者は、削減時間」及び「総削減時間」を比較して、実加工情報K1~K3の中から加工条件を改善したい実加工情報を選択することができる。
【0071】
(変形例2)
上記実施形態において、取得部21は、1つの工作機械10から1種類の実加工情報を取得することとしたが、これに限られない。
【0072】
1つの工作機械10において加工具タイプの異なる複数の実使用加工具15が用いられる場合には、1つの工作機械10から複数種類の実加工情報を取得することができる。例えば、第1工作機械10aにおいて加工具タイプの異なる第1及び第2実使用加工具15a,15bの両方が用いられる場合、取得部21は、第1工作機械10aから第1及び第2実加工情報J1,J2を取得する。
【0073】
複数の工作機械10それぞれにおいて加工具タイプの同じ実使用加工具15が用いられる場合には、複数の工作機械10から1種類の実加工情報を取得することになる。例えば、第1及び第2工作機械10a,10bそれぞれにおいて加工具タイプの同じ第1実使用加工具15aが用いられる場合、取得部21は、第1及び第2工作機械10a,10bそれぞれから第1実加工情報J1を取得する。
【0074】
(変形例3)
上記実施形態において、演算部24は、加工具タイプのみを比較して、第1乃至第3標準加工情報H1~H3(図3参照)の中から第1乃至第3実加工情報J1~J3(図4参照)それぞれに対応する標準加工情報を選出することとしたが、これに限られない。
【0075】
演算部24は、加工具タイプだけでなく材質をも比較して、第1乃至第3実加工情報J1~J3(図4参照)それぞれに対応する標準加工情報を選出することが好ましい。具体的には、第1被加工物Waの実材質は第1標準加工具Saによって加工可能な標準材質と同じであり、かつ、第2被加工物Wbの実材質は第2標準加工具Sbによって加工可能な標準材質と同じであることが好ましい。このように、加工具タイプだけでなく材質をも比較することによって、より加工条件の近しい標準加工情報を選出することができる。
【0076】
演算部24は、加工具タイプだけでなく加工タイプをも比較して、第1乃至第3実加工情報J1~J3(図4参照)それぞれに対応する標準加工情報を選出することが好ましい。具体的には、第1実使用加工具15aによって行われた加工タイプは第1標準加工具Saによって行うことのできる加工タイプと同じであり、かつ、第2実使用加工具15bによって行われた加工タイプは第2標準加工具Sbによって行うことのできる加工タイプと同じであることが好ましい。このように、加工具タイプだけでなく加工タイプをも比較することによって、より加工条件の近しい標準加工情報を選出することができる。
【0077】
(変形例4)
上記実施形態において、演算部24は、第1乃至第3実加工時間それぞれの「削減時間」及び「総削減時間」を演算して表示部31に表示させることとしたが、「総削減時間」は演算しなくてもよい。
【0078】
(変形例5)
上記実施形態では、生産機械システム1の管理方法について説明したが、本発明は、電子機器としての管理装置20が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムとして提供されてもよい。当該プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。コンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 生産機械システム
10a~10c 第1乃至第3工作機械
11 工作機械
12 CNC制御部
14 テーブル
15a~15c 第1乃至第3実使用加工具
16 主軸
20 管理装置
21 取得部
22 記憶部
23 抽出部
24 演算部
30 端末装置
31 表示部
32 入力部
Wa~Wc 第1乃至第3被加工物
J1~Jc 第1乃至第3実加工情報
Sa~Sc 第1乃至第3標準加工具
H1~H3 第1乃至第3標準加工情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7