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特許7475180発光装置、表示装置、撮像装置、電子機器、照明装置及び移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】発光装置、表示装置、撮像装置、電子機器、照明装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/852 20230101AFI20240419BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240419BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240419BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20240419BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20240419BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240419BHJP
   H05B 33/24 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H10K50/852
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/26 Z
H05B33/28
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
H05B33/24
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020058309
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157987
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 希之
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-232163(JP,A)
【文献】特開2013-157278(JP,A)
【文献】特開2019-179716(JP,A)
【文献】国際公開第2014/199745(WO,A1)
【文献】特開2015-005552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/24
H05B 33/02
H10K 50/10
H10K 59/10
H05B 33/26
H05B 33/28
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1色のための第1発光素子と、前記第1色よりも波長が短い第2色のための第2発光素子と、前記第2色よりも波長が短い第3色のための第3発光素子と、を有し、
前記第1発光素子は、第1反射層と、無機物層である第1透明絶縁層と、第1透明電極層と、第1発光層と、第1上部電極層と、をこの順に含み、
前記第2発光素子は、第2反射層と、前記第2反射層に接する第2透明電極層と、第2発光層と、第2上部電極層と、をこの順に含み、
前記第3発光素子は、第3反射層と、第3発光層と、第3上部電極層と、をこの順に含み、前記第3反射層と前記第3発光層との間に透明電極層及び透明絶縁層を含まない、発光装置であって、
前記第1透明絶縁層の屈折率は、前記第2反射層の上に接する層の屈折率よりも低く、
前記第2反射層と前記第2上部電極層との間の光路長をL とすると、
=(2m π-Φ )×(λ /4π)±λ /8、
ただし、λ は第2発光素子から発する光の主波長、m は0又は1、Φ はλ に対する前記第2反射層の界面及び前記第2上部電極層の界面における反射位相の和、
を満たす、発光装置。
【請求項2】
前記第3反射層と前記第3発光層との間の距離は、前記第2反射層と前記第2発光層との間の距離よりも短い、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2反射層と前記第2発光層との間の距離は、前記第1反射層と前記第1発光層との間の距離よりも短い、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光装置は、CIE1976(u′v′)において正面方向の基準白色に対して視野角50°で観察される色のずれ量が、0.0228と0.0238との間の値よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
1色のための第1発光素子と、前記第1色よりも波長が短い第3色のための第3発光素子とを有し、
前記第1発光素子は、第1反射層と、無機物層である第1透明絶縁層と、第1透明電極層と、第1発光層と、第1上部電極層と、をこの順に含み、
前記第3発光素子は、第3反射層と、第3発光層と、第3上部電極層と、をこの順に含み、
前記第3発光素子は、前記第3反射層と前記第3発光層との間に透明電極層及び透明絶縁層を含まない、発光装置であって、
前記第1透明絶縁層の屈折率は、前記第3反射層の上に接する層の屈折率よりも低く、
前記第3反射層と前記第3上部電極層との間の光路長をL とすると、
=(2m π-Φ )×(λ /4π)±λ /8、
ただし、λ は第3発光素子から発する光の主波長、m は0又は1、Φ はλ に対する前記第3反射層の界面及び前記第3上部電極層の界面における反射位相の和、
を満たす、発光装置。
【請求項6】
前記第3反射層と前記第3発光層との間の距離は、前記第1反射層と前記第1発光層との間の距離よりも短い、請求項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1反射層と前記第1透明電極層とは互いに電気的に接続されている、請求項1乃至の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
1色のための第1発光素子と、前記第1色よりも波長が短い第2色のための第2発光素子とを有し、
前記第1発光素子は、第1反射層と、無機物層である第1透明絶縁層と、第1透明電極層と、第1発光層と、第1上部電極層と、をこの順に含み、
前記第2発光素子は、第2反射層と、第2透明電極層と、第2発光層と、第2上部電極層と、をこの順に含む発光装置であって、
前記第1透明絶縁層の屈折率は、前記第2反射層の上に接する層の屈折率よりも低く、
前記第2反射層と前記第2上部電極層との間の光路長をL とすると、
=(2m π-Φ )×(λ /4π)±λ /8、
ただし、λ は第2発光素子から発する光の主波長、m は0又は1、Φ はλ に対する前記第2反射層の界面及び前記第2上部電極層の界面における反射位相の和、
を満たす、発光装置。
【請求項9】
前記第2反射層と前記第2透明電極層とが互いに接していることを特徴とする請求項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1反射層と前記第1上部電極層との間の光路長をLとすると、
L=(2mπ-Φ)×(λ/4π)±λ/8
ただし、λは第1発光素子から発する光の主波長、mは0又は1、Φはλに対する前記第1反射層の界面及び前記第1上部電極層の界面における反射位相の和、
を満たす、請求項1乃至の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
m=0である、請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
=0である、請求項1乃至11の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第1発光層は、白色光を発する、請求項1乃至12の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記第1発光層は、前記第1色の光を発する、請求項1乃至12の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項15】
複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、請求項1乃至14の何れか1項に記載の発光装置と、前記発光装置の発光を制御する制御部とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項16】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は、請求項1乃至14の何れか1項に記載の発光装置を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項17】
請求項1乃至14の何れか1項に記載の発光装置を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項18】
請求項1乃至14の何れか1項に記載の発光装置を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部又は光学フィルムと、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項19】
請求項1乃至14の何れか1項に記載の発光装置を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、表示装置、撮像装置、電子機器、照明装置及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色を発光可能なフルカラーの表示装置が実用化されている。特許文献1は、有機発光材料を用いた発光素子を有するフルカラーの表示装置において、色純度を向上させるために、微小共振器構造を利用することを提案する。微小共振器構造とは、発光層からの直接光と、反射層による反射光とを干渉させることによって、特定の波長の光を強め合う構造のことである。特許文献1の表示装置では、各色用の発光素子ごとに、発光層と反射層との間の透明絶縁層の膜厚を異ならせることによって、さらに色純度を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-107887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤色、緑色又は青色のような特定の波長に共振させる干渉構造において、発光輝度が視野角に大きく依存することが知られている。この現象は、発光色ごとに干渉の距離を異ならせる場合に顕著である。このため、干渉構造を有する発光装置において、正面方向では白色に見えるが、斜め方向では白色からの色ずれが大きくなる場合がある。本発明の一つの側面は、干渉構造を有する発光装置において視野角特性を向上するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、1色のための第1発光素子と、前記第1色よりも波長が短い第2色のための第2発光素子と、前記第2色よりも波長が短い第3色のための第3発光素子と、を有し、前記第1発光素子は、第1反射層と、無機物層である第1透明絶縁層と、第1透明電極層と、第1発光層と、第1上部電極層と、をこの順に含み、前記第2発光素子は、第2反射層と、前記第2反射層に接する第2透明電極層と、第2発光層と、第2上部電極層と、をこの順に含み、前記第3発光素子は、第3反射層と、第3発光層と、第3上部電極層と、をこの順に含み、前記第3反射層と前記第3発光層との間に透明電極層及び透明絶縁層を含まない、発光装置であって、前記第1透明絶縁層の屈折率は、前記第2反射層の上に接する層の屈折率よりも低く、前記第2反射層と前記第2上部電極層との間の光路長をL とすると、L =(2m π-Φ )×(λ /4π)±λ /8、ただし、λ は第2発光素子から発する光の主波長、m は0又は1、Φ はλ に対する前記第2反射層の界面及び前記第2上部電極層の界面における反射位相の和、を満たす、発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記手段により、干渉構造を有する発光装置において視野角特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の発光装置の断面構造例を説明する図。
図2】第1実施形態の発光装置の詳細な層構造を説明する図。
図3】干渉構造について説明する図。
図4】第1実施形態の発光装置の製造方法例を説明する図。
図5】第1実施例の発光層のドーパントの特性を説明する図。
図6】第1実施例の発光素子が発する光のスペクトルを説明する図。
図7】第1実施例のカラーフィルタの透過特性を説明する図。
図8】一部の実施形態に係る表示装置の構成例を説明する図。
図9】一部の実施形態に係る撮影装置及び電子機器の構成例を説明する図。
図10】一部の実施形態に係る表示装置の構成例を説明する図。
図11】一部の実施形態に係る照明装置及び移動体の構成例を説明する図。
図12】一部の実施形態に係る眼鏡の構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
以下の説明において、図面の各要素の寸法・比率は実際のものと異なりうる。また、本明細書で特に図示又は記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知又は公知技術を適用してもよい。
【0010】
<第1実施形態>
図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態にかかる発光装置100について説明する。発光装置100は、複数の画素がアレイ状に配列された画素アレイを有する。図1は、発光装置100に含まれる一つの画素101の断面図である。図2は、一つの画素101を構成する三つの副画素101B、101G及び101Rの層構造を説明する図である。図1では、三つの副画素101B、101G及び101Rが1列に並んでいるが、副画素の配置はこれに限られない。副画素101B、101G及び101Rは、それぞれ、青色光、緑色光及び赤色光を発するための副画素である。そこで、副画素101B、101G及び101Rを、それぞれ、青色副画素101B、緑色副画素101G及び赤色副画素101Rと呼ぶ。
【0011】
基板102の上に、反射電極層103B、103G及び103Rが配置されている。反射電極層103B、103G及び103Rを反射電極層103と総称する。反射電極層103についての以下の説明は、反射電極層103B、103G及び103Rのいずれにも当てはまる。反射電極層103B、103G及び103Rは、それぞれ、青色副画素101B、緑色副画素101G及び赤色副画素101Rに含まれる。反射電極層103B、103G及び103Rは、画素分離膜111によって互いに電気的に分離されている。このように、画素分離膜111は、発光領域を規定する機能を有する。画素分離膜111は、SiO、SiN、樹脂などの絶縁材料で形成される。
【0012】
図2に示すように、反射電極層103Bは、基板の上に配置された金属層201Bと、金属層201Bの上に配置されたバリア層202Bとを含んでもよい。これに代えて、反射電極層103Bは、バリア層202Bを含まずに、金属層201Bのみを含んでもよい。
【0013】
金属層201Bは、例えば、ネオジム(Nd)、銅(Cu)、シリコン(Si)、パラジウム(Pd)などを微量ドーピングすることによって膜物性を安定にしたアルミ合金や銀合金などから形成される。金属層201Bの膜厚は、例えば20nm以上200nm以下であってもよい。
【0014】
バリア層202Bは、例えば、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、クロム(Cr)などから形成される。バリア層202Bの材料は、比較的仕事関数が高く、化学的安定性が高く、融点が高い金属から選択される。バリア層202Bの膜厚は、可視光領域において50%程度以上の高反射性を維持するように選択され、例えば50nm以下である。
【0015】
反射電極層103Gは、基板の上に配置された金属層201Gと、金属層201Gの上に配置されたバリア層202Gとを含んでもよい。反射電極層103Rは、基板の上に配置された金属層201Rと、金属層201Rの上に配置されたバリア層202Rとを含んでもよい。金属層201G及び201Rの材料は、金属層201Bと同様の材料であってもよい。バリア層202G及び202Rの材料は、バリア層202Bと同様の材料であってもよい。
【0016】
赤色副画素101Rは、反射電極層103Rの上に、透明絶縁層105Rを有する。透明絶縁層105Rは、透明な絶縁性材料、例えばSiOで形成される。以下の説明において、透明絶縁層105Rを単に透明絶縁層105と表すこともある。
【0017】
赤色副画素101Rは、透明絶縁層105Rの上に、透明電極層104Rを有する。透明電極層104Rは、酸化物導電性材料のインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミ亜鉛酸化物(AZO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)などの高い透過率を有する導電性酸化物材料で形成される。
【0018】
透明絶縁層105Rの屈折率は、透明電極層104Rの屈折率よりも低くてもよい。例えば、透明絶縁層105Rの屈折率は1.7以下であり、透明電極層104Rの屈折率は1.7以上であってもよい。また、透明絶縁層105の屈折率は、機能層106を構成する層のうち反射層103に最近接する層の屈折率よりも低くてもよい。透明絶縁層105Rや透明電極層104Rなどの光学特性(例えば、屈折率)は、エリプロメトリ法を用いた分光エリプソメータ、分光反射率法を用いた分光膜厚計などによって計測されてもよい。
【0019】
透明電極層104Rの一部は、透明絶縁層105Rを貫通し、反射電極層103Rに接続されている。そのため、透明電極層104Rと反射電極層103Rとは、回路において同じノードを構成する。透明電極層104Rの端部は画素分離膜111によって覆われている。そのため、透明電極層104Rは、他の副画素から電気的に分離されている。
【0020】
緑色副画素101Gは、反射電極層103Gの上に、透明電極層104Gを有する。透明電極層104Gの材料は、透明電極層104Rと同じであってもよい。透明電極層104Gの下面は、全体的に反射電極層103Gの上面に接している。透明電極層104G及び104Rを透明電極層104と総称する。透明電極層104Gの端部は、画素分離膜111によって覆われている。そのため、透明電極層104Gは、他の副画素から電気的に分離されている。
【0021】
反射電極層103B、透明電極層104G、透明電極層104R及び画素分離膜111の上に、機能層106が配置されている。機能層106は、青色副画素101B、緑色副画素101G及び赤色副画素101Rに対して共通に設けられている。機能層106は、白色に発光する発光層を含む。機能層106は、無機材料で形成されてもよいし、有機材料で形成されてもよい。以下では、機能層106が有機材料で形成される場合について説明する。
【0022】
図2に示すように、反射電極層103が陽極(アノード)となる場合に、機能層106は、基板102から近い順に、正孔輸送層203、発光層204及び電子輸送層205を含んでもよい。また、機能層106は、正孔輸送層203の下に正孔注入層を含んでもよく、正孔輸送層203と発光層204との間に電子ブロック層を含んでもよい。さらに、機能層106は、発光層204と電子輸送層205との間に正孔ブロック層を含んでもよく、電子輸送層205の上に電子注入層を含んでもよい。発光層204は、単層であってもよいし、発光色ごとの多数の層が積層されていてもよい。
【0023】
電子輸送層205は、既存の電子輸送性材料、例えばフェナントロリン誘導体、キノリノール錯体などで形成されてもよい。発光層204と電子輸送層205との間に正孔ブロック層が含まれる場合に、正孔ブロック層は、多環式芳香族炭化水素や複素環芳香族などのワイドギャップ材料で形成されてもよい。
【0024】
正孔輸送層203は、既存の正孔輸送性材料、例えばトリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体などで形成されてもよい。正孔輸送層203と発光層204との間に電子ブロック層が含まれる場合に、電子ブロック層は、LUMOが発光層204よりも浅い(絶対値が小さい)材料、例えば特にカルバゾール誘導体やトリアリールアミン誘導体で形成されてもよい。正孔輸送層203の下に正孔注入層が含まれる場合に、正孔注入層は、酸化モリブデンやF-TCNQ(テトラシアノキノジメタン)などの電子吸引性の強い材料で形成されてもよい。
【0025】
発光層204は、赤色発光ドーパント、緑色発光ドーパント及び青色発光ドーパントの3種のドーパントを濃度調整することによって白色発光するように構成された単層であってもよい。これに代えて、発光層204は、赤緑色発光層と青色発光層との積層であってもよい。赤緑色発光層は、少なくとも緑色発光分子及び赤色発光分子を含む。それぞれの発光層は、ホスト材料に各色の発光分子を所定のドーパント濃度で共蒸着することによって形成されうる。例えば、青色発光層において、ホスト材料に対して青色ドーパント濃度が0.1wt%~10wt%含まれている。赤緑色発光層において、ホスト材料に対して緑発光分子が0.5wt%~10wt%含まれ、赤発光分子が0.5wt%~5wt%含まれる。
【0026】
青色発光分子の発光ピークは、440nm~480nmであってもよい。緑色発光分子の発光ピークは、515nm~550nmであってもよい。赤色発光分子の発光ピークは、600nm~640nmであってもよい。各発光分子は蛍光発光材料であってもよいし、りん光発光材料や、遅延蛍光材料であってもよい。発光層204のホスト材料は、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、アミン系誘導体などの多環式化合物や複素環化合物であってもよい。また、ホスト材料は、発光分子に適した発光材料であってもよい。例えば、青色発光分子を発光させるのに適したホスト材料であれば、赤緑色発光層のホスト材料としても使用できる。赤緑色発光層と青色発光層との間に、発光層の発光バランスを調整するスペーサが含まれていてもよい。
【0027】
機能層106の上に上部電極層107が配置されている。上部電極層107は、青色副画素101B、緑色副画素101G及び赤色副画素101Rに対して共通に設けられている。上部電極層107は、ITO、IZOなどの透明酸化物導電材料で形成されてもよいし、金属薄膜で形成されてもよい。微小共振器効果を用いて色純度を向上させるために、反射率が高い金属薄膜を用いてもよい。金属薄膜を用いる場合に、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属を含有するAg合金薄膜を用いてもよく、Ag単体であってもよい。
【0028】
上部電極層107の上に透明封止層108が配置されている。透明封止層108は、青色副画素101B、緑色副画素101G及び赤色副画素101Rに対して共通に設けられている。透明封止層108は、有機発光素子を外部の水分及び酸素から保護する。透明封止層108は、酸素や水分の透過性が極めて低い材料で形成される。透明封止層108は、窒化シリコン膜(SiN)、シリコン酸化膜(SiO)、酸化アルミニウムの単層膜で形成されていてもよいし、これらの多層膜で形成されてもよい。さらに、多層膜構成として、透明封止層/樹脂層/透明封止層のように樹脂層をサンドイッチすることによって、封止性能を向上させてもよい。
【0029】
透明封止層108は、平坦化層109及びカラーフィルタ110R、110G,110Bを形成する工程において発光素子を保護する機能を有してもよい。透明封止層108の膜厚は、光学特性や膜応力の観点から、10nm以上10μm以下であってもよい。
【0030】
透明封止層108の上に平坦化層109が配置されている。平坦化層109は、青色副画素101B、緑色副画素101G及び赤色副画素101Rに対して共通に設けられている。平坦化層109の上面は、平坦化層109の下面よりも平坦である。透明封止層108の上面が十分に平坦である場合に、平坦化層109は省略されてもよい。
【0031】
青色副画素101Bにおいて、平坦化層109の上にカラーフィルタ110Bが配置されている。カラーフィルタ110Bは、青色光を選択的に透過する。緑色副画素101Gにおいて、平坦化層109の上にカラーフィルタ110Gが配置されている。カラーフィルタ110Gは、緑色光を選択的に透過する。赤色副画素101Rにおいて、平坦化層109の上にカラーフィルタ110Rが配置されている。カラーフィルタ110Rは、赤色光を選択的に透過する。カラーフィルタ110B、110G及び110Rをカラーフィルタ110と総称する。
【0032】
カラーフィルタ110の上に、発光装置100の最表面を保護するための樹脂層と、ガラスやプラスチックなどの透明保護基板とが配置されてもよい。発光装置100は、上述の画素101に加えて、画素101を駆動するための回路(不図示)や反射電極層103及び上部電極層107に給電するための配線などを有しうる。
【0033】
青色副画素101Bのうち、反射電極層103Bから上部電極層107までの部分によって、青色用の発光素子112Bが構成される。緑色副画素101Gのうち、反射電極層103Gから上部電極層107までの部分によって、緑色用の発光素子112Gが構成される。赤色副画素101Rのうち、反射電極層103Rから上部電極層107までの部分によって、赤色用の発光素子112Rが構成される。
【0034】
発光素子112Rは、反射電極層103Rと、透明絶縁層105Rと、透明電極層104Rと、機能層106と、上部電極層107と、をこの順に含む。この層構造において、上下の層は互いに接している。機能層106は、発光層204を含む。発光層204のうち、発光素子112Rに含まれる部分は、発光素子112Rにおける発光層とみなしうる。上部電極層107のうち、発光素子112Rに含まれる部分は、発光素子112Rにおける上部電極層とみなしうる。
【0035】
発光素子112Gは、反射電極層103Gと、透明電極層104Gと、機能層106と、上部電極層107と、をこの順に含む。この層構造において、上下の層は互いに接している。例えば、反射電極層103Gと透明電極層104Gとは互いに接している。機能層106は、発光層204を含む。発光層204のうち、発光素子112Gに含まれる部分は、発光素子112Gにおける発光層とみなしうる。上部電極層107のうち、発光素子112Gに含まれる部分は、発光素子112Gにおける上部電極層とみなしうる。
【0036】
発光素子112Bは、反射電極層103Bと、機能層106と、上部電極層107と、をこの順に含む。この層構造において、上下の層は互いに接している。機能層106は、発光層204を含む。発光層204のうち、発光素子112Bに含まれる部分は、発光素子112Bにおける発光層とみなしうる。上部電極層107のうち、発光素子112Bに含まれる部分は、発光素子112Bにおける上部電極層とみなしうる。発光素子112Bは、反射電極層103Bと発光層204との間に透明電極層を含まない。
【0037】
反射電極層103Bと発光層204との間の距離は、反射電極層103Gと発光層204との間の距離よりも短い。反射電極層103Gと発光層204との間の距離は、反射電極層103Rと発光層204との間の距離よりも短い。また、反射電極層103Bと上部電極層107との間の距離は、反射電極層103Gと上部電極層107との間の距離よりも短い。反射電極層103Gと上部電極層107との間の距離は、反射電極層103Rと上部電極層107との間の距離よりも短い。
【0038】
続いて、画素101における干渉設計について説明する。青色副画素101B、緑色副画素101G及び赤色副画素101Rが、それぞれ、青色、緑色及び赤色に共振ピークを有するように、透明電極層104、透明絶縁層105R、機能層106の膜厚が設定されている。第1実施形態では、発光層204は白色光を発する。青色副画素101Bにおいて、発光層204から反射電極層103Bまでの層構造が、青色に適した干渉膜厚となるように形成されている。具体的に、青色副画素101Bの各層は、光路長をzとし、干渉次数をmとすると、以下の式(1)を満たす膜厚を有する。
z=(2mπ-φ)×(λ/4π) …(1)
ただし、λは、発光素子112Bから発する光の発光スペクトルの主波長である。mは整数である。φは、主波長λに対する反射電極層103Bにおける反射位相である。式(1)を満たす波長λが最も強められるが、±λ/8ずれた値の範囲の波長λも強められる。すなわち、青色副画素101Bの各層は、以下の式(1′)を満たせばよい。
z=(2mπ-φ)×(λ/4π)±λ/8 …式(1′)
【0039】
上部電極層107が高反射性の金属薄膜である場合に、青色副画素101Bの各層が、以下の式(2)を満たす膜厚を有する場合に、発光素子112Bが発する光の主波長を強めることができる。この場合、反射電極と上部電極間の光路長をL、干渉次数mとして、
L=(2mπ-Φ)×(λ/4π) …式(2)
ただし、Lは、反射電極層103Bと上部電極層107との間の光路長である。λは、発光素子112Bから発する光の発光スペクトルの主波長である。mは、干渉次数であり、整数である。具体的に、mは、0又は1であってもよい。Φは、主波長λに対する反射電極層103Bの界面及び上部電極層107の界面における反射位相の和である。式2を満たす波長λが最も強められるが、±λ/8ずれた値の範囲の波長λも強められる。すなわち、青色副画素101Bの各層は、以下の式(2′)を満たせばよい。
L=(2mπ-Φ)×(λ/4π)±λ/8 …式(2′)
【0040】
上記では、青色副画素101Bについて説明したが、緑色副画素101G及び赤色副画素101Rについても、式(1′)又は式(2′)を満たすことによって緑色又は赤色の光を強められる。主波長λは、副画素ごとの発光素子から出射される波長であり、青領域であれば420~500nm、緑領域であれば500nm~560nm、赤領域であれば590~680nmの波長域である。特に、m=0の場合に、青色副画素101B及び緑色副画素101Gについて、波長領域が近いため、これらについての主波長λは、青領域と緑領域との中間の値付近、又は同じ値としてもよい。この場合に、カラーフィルタなどの分光部材を用いて色分離することによって、青色、緑色の異なる発光色の副画素を形成できる。
【0041】
なお、式(1)と式(2)とを同時に満たす場合に微小共振器効果が最大化される。また、式(2)を満足する干渉条件については、分光反射率法による分光反射率計を用いた反射率スペクトルから共振波長を計測することによって確認されてもよい。例えば、共振波長において、反射率が極小値をとるようなスペクトル形状となることから、特定の波長領域で共振するような設計になっているかを確認してもよい。
【0042】
上述の発光装置100では、発光素子112Gと発光素子112Rとの層構造が異なるため、視野角に対する干渉効果が赤色副画素101Rと緑色副画素101Gとで互いに異なる。等方的に発光層204から放射される光には、反射電極層103に対して斜めに入射する光が存在する。副画素から大気中に放出される光の角度αは、スネルの法則に従って、発光層204からの放射角θと、各層の屈折率とから導くことができる。具体的に、図3に示すように、発光装置100のユーザによって観察される角度をαとし、発光層からの光の放射角(出射角)をθとし、反射電極層に入射する光の入射角をθ′とする。また、発光層の屈折率をNemとし、透明電極層の屈折率をNmedとし、観察媒体(例えば、大気)の屈折率をNairとする。このとき、以下の式(3)が成り立つ。
air×sinα=Nem×sinθ=Nmed×sinθ′ …式(3)
式(3)を変形すると、sinθ′=(Nair/Nmed)×sinαとなる。すなわち、反射電極層上に存在する媒質の屈折率(Nmed)により、反射電極層の界面への光の入射角(θ′)が変化する。
【0043】
反射電極層上の媒質の屈折率が低いほど反射電極層の界面への光の入射角θ′は大きくなる。また、反射電極層上の媒質の屈折率が高いほど反射電極層の界面への光の入射角θ′は小さくなる。各副画素について、正面方向で出射される発光波長に合わせて、出射される色に最適となる共振波長を強めるように干渉が設計される。正面方向に対して干渉の光路差がn×d(nは屈折率、dは物理膜厚)となるように設計されている場合に、ある角度βに対して、干渉の光路差がnd×cosβとなるため、正面方向に対して光路差が短くなる。すなわち、正面方向の共振波長よりも、斜め方向における共振波長の方が短波長化することになる。
【0044】
したがって、反射電極層103Rの上に低屈折率層の透明絶縁層105Rを有する赤色副画素101Rの視野角による反射干渉効果の度合は、緑色副画素101Gのそれにくらべて大きく短波側にシフトするということになる。このため、斜め方向から観察した場合に、各副画素において正面方向に取り出そうとしている光よりも、斜め方向での発光素子における干渉強度が低下することになる。さらに、斜めから見た場合に、短波長の色(青、緑)よりも長波長(赤)の色の強度は、短波長の色の強度よりも大きく減少することになる。その結果、視感度及び色づきの視認度が強い長波長側の強度をより低下させることができるため、斜め方向での白色バランスが崩れにくくなり白色の色ずれが抑制できる。
【0045】
続いて、図4を参照して、発光装置100の製造方法について説明する。図4に説明しない部分については、既存の方法が用いられてもよい。図4(a)に示すように、基板102の上に、反射電極層103の材料で金属膜401を形成する。例えば、基板102の上にスパッタ法によって全体的に金属層201を成膜した後、真空状態を維持したまま又は不活性ガス中など大気曝露を避けた状態で、スパッタ法又は真空蒸着法でバリア層202を成膜する。バリア層202の形成は省略されてもよい。
【0046】
次に、金属膜401にレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー法を用いて、レジスト膜をパターニングする。次に、ドライエッチング又はウェットエッチングを用いて金属膜401のエッチングを行うことによって、金属膜401から反射電極層103B、103G及び103Rを形成する。その後、レジスト膜を除去し、透明絶縁層105Rの材料(例えば、SiO)を用いて、絶縁膜402を22nm、成膜する。この工程終了後、図4(b)の構造が得られる。
【0047】
続いて、レジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー法を用いて、レジスト膜をパターニングし、絶縁膜402をドライエッチングによってパターニングする。このパターニングによって、反射電極層103Gの上面の大部分(例えば、上面の中央を含む90%の部分)と、反射電極層103Rの上面の一部分(例えば、上面の端部の近くにある5%の部分)とが露出するようにするように、絶縁膜402に開口を形成する。絶縁膜402のうち、反射電極層103Rの上にある部分が透明絶縁層105Rとなる。その後、レジスト膜を除去し、絶縁膜402の上に、透明電極層104の材料(例えば、ITO)を用いてスパッタ法を行うことによって16nmの透明導電膜403を形成する。この工程終了後、図4(c)の構造が得られる。この例では、反射電極層103Gの端部が絶縁膜402に覆われたままであるが、反射電極層103Gの上面全体から絶縁膜402が除去されてもよい。
【0048】
その後、レジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー法を用いて、レジスト膜をパターニングし、残りのレジスト膜を用いて透明導電膜403をパターニングし、その後レジスト膜を除去する。このパターニングによって、透明導電膜403は、反射電極層103Rの上にある部分と、反射電極層103Gの上にある部分とを残して除去される。透明導電膜403のうち反射電極層103Rの上にある部分が透明電極層104Rとなる。透明導電膜403のうち反射電極層103Gの上にある部分が透明電極層104Gとなる。
【0049】
次に、レジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー法を用いて、レジスト膜をパターニングし、ドライエッチング法により絶縁膜402をパターニングし、レジスト膜を除去する。このパターニングによって、反射電極層103Bの上面の大部分(例えば、上面の中央を含む90%の部分)が露出するようにするように、絶縁膜402に開口を形成する。この工程終了後、図4(d)の構造が得られる。この例では、反射電極層103Bの端部が絶縁膜402に覆われたままであるが、反射電極層103Bの上面全体から絶縁膜402が除去されてもよい。
【0050】
その後、画素分離膜111の材料(例えば、SiO)を全面的に成膜することによって、50nmの絶縁膜404を形成する。絶縁膜404は、成膜プロセスを考慮して、絶縁膜402と同じ材料で形成されてもよい。これにかえて、絶縁膜404は、絶縁膜402とは異なる材料、例えばSiNで形成されてもよい。この工程終了後、図4(e)の構造が得られる。
【0051】
その後、レジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィー法を用いて、レジスト膜をパターニングし、トライエッチングにより、絶縁膜404のうち、反射電極層103B、103G及び104Rの上にある部分を除去する。絶縁膜404のうち残った部分が画素分離膜111となる。この工程終了後、図4(f)の構造が得られる。
【0052】
その後、機能層106、上部電極層107、透明封止層108、平坦化層109及びカラーフィルタ110を順に形成することによって発光装置100が製造される。機能層106は、真空蒸着法やインクジェット法などによって形成されてもよい。上部電極層107は、スパッタ法や真空蒸着法によって形成されてもよい。
【0053】
上述の方法によれば、光学干渉を調整するための層、すなわち透明絶縁層105及び透明電極層104をスパッタ法による成膜のみで形成できる。その結果、これらの層の厚さをエッチングプロセスにより制御する方法に比べて、膜厚制御性が向上する。また、上述の方法によれば、光学干渉を調整するための層の厚さを副画素ごとに変える場合と比較して工程数を削減でき、また、パターニングに必要なマスク枚数を少なくすることができる。その結果、歩留まりの低下やコストを抑制できる。
【0054】
<第2実施形態>
第1実施形態では、発光層204が白色光を発した。これにかえて、第2実施形態では、各副画素は異なる色を発光する。具体的に、発光層204のうち、赤色副画素101Rに含まれる部分は、赤色光を発する。発光層204のうち、緑色副画素101Gに含まれる部分は、緑色光を発する。発光層204のうち、青色副画素101Bに含まれる部分は、青色光を発する。このような発光層204は、蒸着マスクによる蒸着塗分け法や、インクジェット法による塗分け、フォトリソグラフィーによる塗分けなどによって形成されてもよい。第2実施形態では、発光層204自体が各色の光を発するため、カラーフィルタ110が省略されてもよい。
【0055】
<その他の実施形態>
以下に、上述の第1実施形態及び第2実施形態の各層の材料の変形例について説明する。基板102は、石英、ガラス、シリコンウエハ、樹脂などで形成されてもよい。また、発光装置100は、基板102の上に、トランジスタなどのスイッチング素子や配線を備え、その上に絶縁層を備えてもよい。絶縁層の材料は、ポリイミドなどの樹脂、酸化シリコン、窒化シリコンなどであってもよい。
【0056】
反射電極層103が発光素子112の陽極として機能し、上部電極層107が発光素子112の陰極として機能してもよい。電位が高い電極が陽極であり、他方が陰極である。また、発光層204にホールを供給する電極が陽極であり、電子を供給する電極が陰極であるということもできる。反射電極層103は、例えばクロム、アルミニウム、銀、チタン、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金、積層したものなどで形成されてもよい。
【0057】
一方、上部電極層107の材料は、リチウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロムなどの金属単体又はこれらを含む混合物であってもよい。これら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム-銀、アルミニウム-リチウム、アルミニウム-マグネシウム、銀-銅、亜鉛-銀などが使用できる。酸化錫インジウム(ITO)などの金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また上部電極層107は一層構成でもよく、多層構成でもよい。上部電極層107の材料として銀を用いてもよく、銀の凝集を抑制するため、銀合金を用いてもよい。銀の凝集が抑制できれば、合金の比率は問わない。例えば、合金の比率は1:1であってよい。
【0058】
透明封止層108は、窒化ケイ素などのパッシベーション膜であってもよい。透明封止層108は、上部電極層107を形成後に真空を破らずに別のチャンバーに搬送し、CVD法で厚さ2μmの窒化ケイ素膜を形成することによって形成されてもよい。CVD法の成膜の後で原子堆積法(ALD法)を用いて保護層を形成してもよい。
【0059】
カラーフィルタ110は、高分子で形成されてよい。平坦化層109は、有機化合物で構成されてよく、低分子であっても、高分子であってもよい。平坦化層109は、カラーフィルタ110の上下に設けられてもよく、その構成材料は同じであっても異なっていてもよい。具体的に、平坦化層109の材料は、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂などであってもよい。
【0060】
発光装置100は、平坦化層109の上に、対向基板を有してよい。対向基板は、基板102と対応する位置に設けられるため、対向基板と呼ばれる。対向基板の構成材料は、基板102と同じであってよい。
【0061】
機能層106は、有機化合物層である。機能層106は真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマなどのドライプロセスを用いて形成されてもよい。またドライプロセスにかえて、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法など)により層を形成するウェットプロセスを用いることもできる。塗布法で成膜する場合に、適当なバインダ樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。バインダ樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダ樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を併用してもよい。
【0062】
<実施例及び比較例>
以下、第1実施形態の発光装置100の様々な実施例について説明する。また、これらの実施例に対する比較例についても説明する。
【0063】
<第1実施例>
第1実施例では、以下の表1に示す材料及び膜厚となるように発光素子112B、112G及び112Rを形成した。発光層204は、図5に示す蛍光スペクトルを有する青色ドーパント、緑色ドーパント及び赤色ドーパントをホスト材料に共蒸着により混合することによって、白色発光層とした。その後、透明封止層108を2μm形成した。次に、透明封止層108の上に、カラーフィルタ110を形成し、樹脂を用いて保護ガラス基板を貼り合わせた。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、各副画素について、上述の式1を満たし、式2のmが0となる。図6(a)は、副画素ごとの発光素子のELスペクトルを示す。各副画素の出射させたい色に適した波長領域が強められていることがわかる。図6(b)は、カラーフィルタ110を透過した後の副画素ごとのELスペクトルを示す。図7に、カラーフィルタ110の透過特性を示す。カラーフィルタ110を通過することにより、最適な波長を透過する強度を増強でき、色純度及び副画素ごとの発光効率が向上していることがわかる。
【0066】
次に、視野角の色ずれについて評価した。まず、正面方向において基準白色になるように、各色の副画素の発光強度を調整した。次に正面(0°)に対して視野角50°から観測した場合の色ずれについて、Δu′v′を用いて評価した。Δu′v′は、CIE1976(u′v′)において正面方向(0°)の基準白色に対して、視野角50°において観察される色のずれ量を表す。正面方向における基準白色のu′、v′の値をそれぞれ(u′0,v′0)とし、視野角50°において観察される色のu′、v′の値をそれぞれ(u′50,v′50)とする。このとき、u′0-u′50=Δu′、v′0-v′50=Δv′となるため、Δu′v′は以下の式(4)で表せる。
Δu′v′=√((Δu′)+(Δv′)) …式(4)
視野角50°におけるΔu′v′の評価結果を後述の表8に示す。
【0067】
<第2実施例>
第2実施例では、以下の表2に示す材料及び膜厚となるように発光素子112B、112G及び112Rを形成した。また、第2実施形態では、式(2)のmが1となるようにした。それ以外については第1実施例と同様である。視野角50°におけるΔu′v′の評価結果を後述の表8に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
<第3実施例>
第3実施例では、以下の表3に示す材料及び膜厚となるように発光素子112B、112G及び112Rを形成した。第1実施例とは異なり、緑色副画素101Gが透明電極層104Gを含まない。それ以外については第1実施例と同様である。視野角50°におけるΔu′v′の評価結果を後述の表8に示す。緑色副画素101Gが透明電極層104Gを含まないため、緑色副画素101Gは、青色副画素101Bと同様の層構造を有する。
【0070】
【表3】
【0071】
<第1比較例>
第1比較例は、以下の表4に示す膜厚である点で第1実施例と異なり、他の点は同じである。第1比較例の視野角の色ずれの評価結果を後述の表8に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
<第2比較例>
第2比較例は、以下の表5に示す膜厚である点で第1実施例と異なり、他の点は同じである。第2比較例の視野角の色ずれの評価結果を後述の表8に示す。
【0074】
【表5】
【0075】
<第3比較例>
第3比較例は、以下の表6に示す膜厚である点で第1実施例と異なり、他の点は同じである。第3比較例の視野角の色ずれの評価結果を後述の表8に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
<第4比較例>
第4比較例は、以下の表7に示す膜厚である点で第1実施例と異なり、他の点は同じである。第4比較例の視野角の色ずれの評価結果を後述の表8に示す。
【0078】
【表7】
【0079】
<評価結果>
上述の第1実施例~第3実施例及び第1比較例~第4比較例の視野角の色ずれの評価結果を表8に示す。第1実施例~第3実施例は、第1比較例~第4比較例よりも視野角による色ずれが少ないことがわかる。
【0080】
【表8】
【0081】
<本発明の一部の実施形態に係る発光装置の用途>
本発明の上述の実施形態に係る発光装置は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。それ以外にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。電子写真方式のプリンタは、例えば感光体と、この感光体に光を与える発光装置とを有する。プリンタの発光装置は、上述の実施形態の発光装置であってもよい。
【0082】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置であってもよい。
【0083】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式であっても、静電容量方式であっても、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよい。また、表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0084】
図8は、一部の実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置800は、上部カバー801と、下部カバー809と、の間に、タッチパネル803、表示パネル805、フレーム806、回路基板807、及びバッテリー808を有してもよい。タッチパネル803及び表示パネル805に、フレキシブルプリント回路FPC802、804が接続されている。回路基板807に、トランジスタがプリントされている。バッテリー808は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。表示装置800は、複数の画素を有し、この複数の画素の少なくとも一つが上述の実施形態の発光装置の発光素子と、この発光素子に接続されたトランジスタとを有する。
【0085】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示装置は表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0086】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置(光電変換装置)の表示部に用いられてもよい。撮像装置の表示部は、撮像素子が撮像した画像を表示してもよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。
【0087】
図9(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置900は、ビューファインダ901、背面ディスプレイ902、操作部903、筐体904を有してもよい。ビューファインダ901は、本実施形態に係る表示装置を有してもよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してもよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0088】
上述の発光装置は有機発光素子を有するため、応答速度が速い。そのため、撮像に適したわずかな時間で情報を表示できる。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が求められる装置に使用可能である。
【0089】
撮像装置900は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体904内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。
【0090】
図9(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器910は、表示部911と、操作部912と、表示部911が設けられた筐体913とを有する。筐体913には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、及び通信部を有してもよい。通信部は、外部との通信に用いられる。操作部912は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部912は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してもよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部911に映される。電子機器としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0091】
図10は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。図10(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1000は、額縁1001を有し表示部1002を有する。表示部1002には、本実施形態に係る発光装置が用いられてよい。
【0092】
額縁1001と、表示部1002を支える土台1003を有している。土台1003は、図10(a)の形態に限られない。額縁1001の下辺が土台を兼ねてもよい。また、額縁1001及び表示部1002は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0093】
図10(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。図10(b)の表示装置1010は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1010は、表示部1011、表示部1012、筐体1013、屈曲点1014を有する。表示部1011と表示部1012とは、本実施形態に係る発光装置を有してもよい。表示部1011と表示部1012とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。表示部1011と表示部1012とは、屈曲点で分けることができる。表示部1011、表示部1012は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第1及び表示部とで一つの画像を表示してもよい。
【0094】
図11(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1100は、筐体1101と、光源1102と、回路基板1103と、光学フィルム1104と、光拡散部1105と、を有してもよい。光源は、本実施形態に係る発光装置を有してもよい。光学フィルム1104は、光源1102が発する光を透過する。光学フィルム1104は光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部1105は、光源1102が発する光を透過する。光拡散部1105は、ライトアップ等、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルム1104及び光拡散部1105は、照明の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
【0095】
照明装置1100は例えば室内を照明する装置である。照明装置1100は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってもよい。照明装置1100は、それらを調光する調光回路を有してもよい。照明装置1100は本発明の発光装置とそれに接続される電源回路とを有してもよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置1100はカラーフィルタを有してもよい。
【0096】
また、本実施形態に係る照明装置は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
【0097】
図11(b)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車の模式図である。当該自動車は灯具の一例であるテールランプを有する。自動車1110は、テールランプ1111を有し、ブレーキ操作等を行った際に、テールランプを点灯する形態であってよい。
【0098】
テールランプ1111は、本実施形態に係る発光装置を有してもよい。テールランプは、有機EL素子を保護する保護部材を有してもよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わず、例えばポリカーボネート等で構成されてもよい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
【0099】
自動車1110は、車体1113、それに取り付けられている窓1112を有してもよい。窓1112は、自動車1110の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイは、本実施形態に係る発光装置を有してもよい。この場合、発光装置が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
【0100】
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してもよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてもよい。灯具は本実施形態に係る発光装置を有する。
【0101】
図12を参照して、上述の各実施形態の表示装置の適用例について説明する。表示装置は、例えばスマートグラス、HMD、スマートコンタクトのようなウェアラブルデバイスとして装着可能なシステムに適用できる。このような適用例に使用される撮像表示装置は、可視光を光電変換可能な撮像装置と、可視光を発光可能な表示装置とを有する。
【0102】
図12(a)は、一つの適用例に係る眼鏡1200(スマートグラス)を説明する。眼鏡1200のレンズ1201の表面側に、CMOSセンサやSPADのような撮像装置1202が設けられている。また、レンズ1201の裏面側には、上述した各実施形態の表示装置が設けられている。
【0103】
眼鏡1200は、制御装置1203をさらに備える。制御装置1203は、撮像装置1202と各実施形態に係る表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1203は、撮像装置1202と表示装置の動作を制御する制御部として機能する。。レンズ1201には、撮像装置1202に光を集光するための光学系が形成されている。
【0104】
図12(b)は、一つの適用例に係る眼鏡1210(スマートグラス)を説明する。眼鏡1210は、制御装置1212を有しており、制御装置1212に、撮像装置1202に相当する撮像装置と、表示装置が搭載される。レンズ1211には、制御装置1212内の撮像装置と、表示装置からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1211には画像が投影される。制御装置1212は、撮像装置及び表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、撮像装置及び表示装置の動作を制御する。制御装置は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減部を有することで、画像品位の低下を低減する。
【0105】
赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。
【0106】
より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザの視線が検出される。
【0107】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、受光素子を有する撮像装置を有し、撮像装置からのユーザの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。
【0108】
具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザが注視する第一の視界領域と、第一の視界領域以外の第二の視界領域とを決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第一の視界領域の表示解像度を第二の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第二の視界領域の解像度を第一の視界領域よりも低くしてよい。
【0109】
また、表示領域は、第一の表示領域、第一の表示領域とは異なる第二の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第一の表示領域及び第二の表示領域から優先度が高い領域を決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0110】
なお、第一の視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、撮像装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0111】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する撮像装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【0112】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0113】
100 発光装置、101 画素、101 副画素、103 反射電極層、104 透明電極層、105 透明絶縁層、106 機能層、107 上部電極層
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