(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】計測方法、インプリント装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240419BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240419BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
G01B11/24 Z
(21)【出願番号】P 2020071199
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】安川 真誠
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-108975(JP,A)
【文献】特開2009-295932(JP,A)
【文献】特開2016-127167(JP,A)
【文献】特開2018-022114(JP,A)
【文献】特開2018-074041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持面を含む保持部を浮上した状態で駆動する駆動部によって、前記基板の表面の被計測領域を計測部に対して第1方向に駆動しながら、前記第1方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれを前記計測部で計測して各計測ラインにおける前記被計測領域の高さを表す第1計測情報を取得する第1工程と、
前記駆動部によって、前記被計測領域を前記計測部に対して前記複数の第1計測ラインの全てに交差する第2方向に駆動しながら、前記第2方向に平行な1つの第2計測ラインを前記計測部で計測して前記第2計測ラインにおける前記被計測領域の高さを表す第2計測情報を取得する第2工程と、
前記第1計測情報及び前記第2計測情報に基づいて、前記被計測領域の高さの分布を表す第1分布情報を生成する第3工程と、
を有
し、
前記第3工程では、前記第2計測情報を基準として用いて前記第1計測情報を補正することで前記第1分布情報を生成することを特徴とする計測方法。
【請求項2】
前記複数の第1計測ラインのそれぞれには、前記計測部で計測すべき複数の第1計測点が設定され、
前記第2計測ラインには、前記計測部で計測すべき複数の第2計測点が設定され、
前記複数の第1計測ラインのそれぞれについて、前記複数の第1計測点のうちの1つの計測点と前記複数の第2計測点のうちの1つの計測点とが重なるように、前記複数の第1計測点及び前記複数の第2計測点が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記第1方向と前記第2方向とは、直交していることを特徴とする請求項1又は2に記載の計測方法。
【請求項4】
前記駆動部は、互いに直交する2つの方向に平行な2つのガイドを含み、
前記第1方向は、前記2つのガイドのうちの一方のガイドと平行な方向であり、
前記第2方向とは、前記2つのガイドのうちの他方のガイドと平行な方向であることを特徴とする請求項3に記載の計測方法。
【請求項5】
前記保持面における前記基板の角度を第1角度に設定した状態において前記第1工程及び前記第2工程のそれぞれで取得される前記第1計測情報及び前記第2計測情報と、前記保持面における前記基板の角度を前記第1角度とは異なる第2角度に設定した状態において前記第1工程及び前記第2工程のそれぞれで取得される前記第1計測情報及び前記第2計測情報とに基づいて、前記保持面の高さの分布を表す第2分布情報を生成する第4工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至
4のうちいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項6】
前記第1角度と前記第2角度との角度差は、90度又は180度であることを特徴とする請求項
5に記載の計測方法。
【請求項7】
前記被計測領域は、前記基板の表面の全域であることを特徴とする請求項1乃至
6のうちいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項8】
前記被計測領域は、前記基板の表面の一部の領域であることを特徴とする請求項1乃至
6のうちいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項9】
計測部を保持する保持部を浮上した状態で駆動する駆動部によって、前記計測部を型のパターン面に対して第1方向に駆動しながら、前記第1方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれを前記計測部で計測して各計測ラインのそれぞれにおける前記型のパターン面の高さを表す第1計測情報を取得する第1工程と、
前記駆動部によって、前記計測部を前記型のパターン面に対して前記複数の第1計測ラインの全てに交差する第2方向に駆動しながら、前記第2方向に平行な1つの第2計測ラインを前記計測部で計測して前記第2計測ラインにおける前記型のパターン面の高さを表す第2計測情報を取得する第2工程と、
前記第1計測情報及び前記第2計測情報に基づいて、前記型のパターン面の高さの分布を表す第1分布情報を生成する第3工程と、
を有することを特徴とする計測方法。
【請求項10】
前記複数の第1計測ラインのそれぞれには、前記計測部で計測すべき複数の第1計測点が設定され、
前記第2計測ラインには、前記計測部で計測すべき複数の第2計測点が設定され、
前記複数の第1計測ラインのそれぞれについて、前記複数の第1計測点のうちの1つの計測点と前記複数の第2計測点のうちの1つの計測点とが重なるように、前記複数の第1計測点及び前記複数の第2計測点が設定されていることを特徴とする請求項
9に記載の計測方法。
【請求項11】
前記第1方向と前記第2方向とは、直交していることを特徴とする請求項
9又は
10に記載の計測方法。
【請求項12】
前記駆動部は、互いに直交する2つの方向に平行な2つのガイドを含み、
前記第1方向は、前記2つのガイドのうちの一方のガイドと平行な方向であり、
前記第2方向とは、前記2つのガイドのうちの他方のガイドと平行な方向であることを特徴とする請求項
11に記載の計測方法。
【請求項13】
前記第3工程では、前記第2計測情報を基準として用いて前記第1計測情報を補正することで前記第1分布情報を生成することを特徴とする請求項
9乃至
12のうちいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項14】
前記型を保持する保持面における前記型の角度を第1角度に設定した状態において前記第1工程及び前記第2工程のそれぞれで取得される前記第1計測情報及び前記第2計測情報と、前記保持面における前記型の角度を前記第1角度とは異なる第2角度に設定した状態において前記第1工程及び前記第2工程のそれぞれで取得される前記第1計測情報及び前記第2計測情報とに基づいて、前記保持面の高さの分布を表す第2分布情報を生成する第4工程を更に有することを特徴とする請求項
9乃至
13のうちいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項15】
前記第1角度と前記第2角度との角度差は、90度又は180度であることを特徴とする請求項
14に記載の計測方法。
【請求項16】
前記第1分布情報は、前記型のパターン面の全域の高さの分布を表すことを特徴とする請求項
9乃至
15のうちいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項17】
基板を保持する保持面を含む保持部を浮上した状態で駆動する駆動部によって、前記基板の表面の被計測領域を計測部に対して第1方向に駆動しながら、前記第1方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれを前記計測部で計測して各計測ラインにおける前記被計測領域の高さを表す第1計測情報を取得する第1工程と、
前記駆動部によって、前記被計測領域を前記計測部に対して前記複数の第1計測ラインの全てに交差する第2方向に駆動しながら、前記第2方向に平行な1つの第2計測ラインを前記計測部で計測して前記第2計測ラインにおける前記被計測領域の高さを表す第2計測情報を取得する第2工程と、
前記保持面における前記基板の角度を第1角度に設定した状態において前記第1工程及び前記第2工程のそれぞれで取得される前記第1計測情報及び前記第2計測情報と、前記保持面における前記基板の角度を前記第1角度とは異なる第2角度に設定した状態において前記第1工程及び前記第2工程のそれぞれで取得される前記第1計測情報及び前記第2計測情報とに基づいて、前記保持面の高さの分布を表す分布情報を生成する第3工程と、
を有することを特徴とする計測方法。
【請求項18】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板を保持する保持面を含む保持部と、
前記保持部を浮上した状態で駆動する駆動部と、
前記保持面に保持された前記基板の高さを計測する計測部と、
前記型のパターン面と前記基板の表面とが平行となるように、前記型及び前記基板の少なくとも一方の姿勢を制御する処理を行う制御部と、
を有し、
前記処理は、
前記駆動部によって、前記基板の表面の被計測領域を前記計測部に対して第1方向に駆動しながら、前記第1方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれを前記計測部で計測して各計測ラインにおける前記被計測領域の高さを表す第1計測情報を取得する第1工程と、
前記駆動部によって、前記被計測領域を前記計測部に対して前記複数の第1計測ラインの全てに交差する第2方向に駆動しながら、前記第2方向に平行な1つの第2計測ラインを前記計測部で計測して前記第2計測ラインにおける前記被計測領域の高さを表す第2計測情報を取得する第2工程と、
前記第1計測情報及び前記第2計測情報に基づいて、前記被計測領域の高さの分布を表す分布情報を生成する第3工程と、
を含むことを特徴とするインプリント装置。
【請求項19】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板を保持する保持面を含む保持部と、
前記保持部を浮上した状態で駆動する駆動部と、
前記駆動部に設けられ、前記型のパターン面の高さを計測する計測部と、
前記型のパターン面と前記基板の表面とが平行となるように、前記型及び前記基板の少なくとも一方の姿勢を制御する処理を行う制御部と、
を有し、
前記処理は、
前記駆動部によって、前記計測部を前記型のパターン面に対して第1方向に駆動しながら、前記第1方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれを前記計測部で計測して各計測ラインのそれぞれにおける前記型のパターン面の高さを表す第1計測情報を取得する第1工程と、
前記駆動部によって、前記計測部を前記型のパターン面に対して前記複数の第1計測ラインの全てに交差する第2方向に駆動しながら、前記第2方向に平行な1つの第2計測ラインを前記計測部で計測して前記第2計測ラインにおける前記型のパターン面の高さを表す第2計測情報を取得する第2工程と、
前記第1計測情報及び前記第2計測情報に基づいて、前記型のパターン面の高さの分布を表す分布情報を生成する第3工程と、
を含むことを特徴とするインプリント装置。
【請求項20】
請求項
18又は
19に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、インプリント装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加えて、基板上のインプリント材を型(モールド)で成形して、型に形成された微細な凹凸パターンを基板上に形成する微細加工技術が注目されている。かかる微細加工技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができる。
【0003】
インプリント技術では、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法は、基板上のショット領域に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態で光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する。
【0004】
インプリント技術を採用したインプリント装置では、型と基板上のインプリント材とを接触させる際に、型のパターン面と基板の表面とが平行でない場合、基板上に形成されるパターンの倒れや型に対するインプリント材の充填不良などを引き起こす可能性がある。従って、型と基板上のインプリント材とを接触させる前に、型のパターン面の高さ分布と、基板の表面の高さ分布とを求めておく必要がある。なお、基板の表面の高さ分布を求めることは、インプリント装置に限られるものではなく、フォーカス調整が必要な投影光学系を用いた露光装置においても同様に必要となり、それに関する技術も提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0005】
特許文献1には、投影光学系を用いた露光装置において、基板の厚さ分布と、かかる基板を保持する保持面の高さ分布とを事前に計測し、それらの計測結果から保持面に保持された基板の表面の高さ分布を求める技術が開示されている。また、特許文献2には、投影光学系を用いた露光装置において、基板の表面を互いに異なる2方向について計測することで、基板の表面の高さ分布を計測するのに要する時間を短縮する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-156508号公報
【文献】特開2018-22114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、基板を保持する保持面を含む基板保持部を駆動するための駆動部の駆動方式がエア浮上方式である場合、圧力変動によって基板保持部の浮上量(高さ)が変化し、基板の表面の高さの計測に影響を及ぼしてしまうことがある。なお、圧力変動の要因としては、例えば、露光装置(駆動部)にエアを供給する工場設備側の圧力変動が挙げられる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、基板の表面の高さの分布を計測するのに有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての計測方法は、基板を保持する保持面を含む保持部を浮上した状態で駆動する駆動部によって、前記基板の表面の被計測領域を計測部に対して第1方向に駆動しながら、前記第1方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれを前記計測部で計測して各計測ラインにおける前記被計測領域の高さを表す第1計測情報を取得する第1工程と、前記駆動部によって、前記被計測領域を前記計測部に対して前記複数の第1計測ラインの全てに交差する第2方向に駆動しながら、前記第2方向に平行な1つの第2計測ラインを前記計測部で計測して前記第2計測ラインにおける前記被計測領域の高さを表す第2計測情報を取得する第2工程と、前記第1計測情報及び前記第2計測情報に基づいて、前記被計測領域の高さの分布を表す第1分布情報を生成する第3工程と、を有し、前記第3工程では、前記第2計測情報を基準として用いて前記第1計測情報を補正することで前記第1分布情報を生成することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、基板の表面の高さの分布を計測するのに有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示すインプリント装置の駆動部の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】第1計測部の計測結果と駆動部の浮上量との関係を示す図である。
【
図4】第1実施形態における計測方法を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態における計測方法を説明するための図である。
【
図6】第1本実施形態における計測方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7】第1本実施形態における計測方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態におけるインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図9】第2実施形態における計測方法を説明するための図である。
【
図10】第2実施形態における計測方法を説明するためのフローチャートである。
【
図11】第2実施形態における計測方法を説明するためのフローチャートである。
【
図12】本発明の第3実施形態におけるインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図13】
図12に示すインプリント装置の基板保持部を交換する方法を説明するためのフローチャートである。
【
図14】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態におけるインプリント装置101の構成を示す概略図である。インプリント装置101は、物品としての半導体素子、液晶表示素子、磁気記憶媒体などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、基板にパターンを形成するリソグラフィ装置である。インプリント装置101は、基板上に供給された未硬化のインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0015】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料(硬化性組成物)が使用される。硬化用のエネルギーとしては、電磁波や熱などが用いられる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、具体的には、赤外線、可視光線、紫外線などを含む。
【0016】
硬化性組成物は、光の照射、或いは、加熱により硬化する組成物である。光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0017】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0018】
基板には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。具体的には、基板は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。
【0019】
インプリント装置101は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行う。インプリント処理は、供給工程と、供給工程の後に実行される接触工程と、接触工程の後に実行される硬化工程と、硬化工程の後に実行される分離工程とを含む。供給工程では、基板のショット領域の上にインプリント材を液滴の状態で供給(配置)する。接触工程では、基板のショット領域の一部分の上のインプリント材と型のパターン面とを接触させ、その後、インプリント材とパターン面との接触領域をショット領域の全域まで拡大する。硬化工程では、基板のショット領域の上のインプリント材と型のパターン面とを接触させた状態でインプリント材を硬化させる。分離工程では、基板のショット領域の上のインプリント材の硬化物と型のパターン面とを分離する。
【0020】
インプリント装置101は、
図1に示すように、基板1を保持する保持面11Aを含む基板保持部11と、基板保持部11を駆動して基板1を位置決めする駆動部21とを有する。また、インプリント装置101は、基板1を基板保持部11に搬送(載置)する基板搬送部31と、基板保持部11を駆動部21に搬送(載置)する保持部搬送部32とを有する。更に、インプリント装置101は、第1計測部81と、第1制御部91とを有する。
【0021】
基板保持部11は、本実施形態では、ピンチャックで構成され、基板1を真空吸着することで基板1を保持する。基板1は、基板保持部11から真空吸着されることで載置位置を維持することができる。但し、基板保持部11は、ピンチャックに限定されるものではなく、静電チャックで構成されていてもよい。
【0022】
駆動部21は、基板保持部11を、例えば、真空吸着することで基板保持部11を保持する。駆動部21は、駆動方式として、エア浮上方式を採用し、噴射部22からガスを噴射することで、インプリント装置101を設置する床から数μm程度浮いた状態を維持して水平方向に駆動する。噴射部22から噴射されるガスは、例えば、クリーンドライエアであって、インプリント装置101が設置されている工場設備PEから、ガス供給管などを介して、噴射部22に供給される。
【0023】
基板搬送部31は、基板1を基板保持部11に搬送する際に、基板1を鉛直方向の軸周りに回転させる(即ち、基板1を所定の角度に回転させる)回転機構311を含む。回転機構311は、例えば、複数のロボットハンドのリンク機構を回転することで実現してもよいし、ロボットハンド自体が回転することで実現してもよい。また、回転機構311は、基板1の外周部に設けられたノッチ又は切り欠きを用いて基板1の回転角度を計測する計測器やエンコーダなどを含む。
【0024】
保持部搬送部32は、基板保持部11を搬送する機能に加えて、基板保持部11、詳細には、基板保持部11の保持面11Aをクリーニングする機能を有していてもよい。
【0025】
第1計測部81は、基板保持部11に保持された基板1までの距離(第1計測部81と基板1の表面との間の距離)を計測する機能を有する。基板1を保持した基板保持部11を水平方向に移動(走査)させながら、第1計測部81で基板1までの距離を計測することで、基板1の全体、具体的には、基板1の表面の高さ分布を取得することができる。第1計測部81には、レーザ変位計や分光干渉計などが用いられるが、これに限定されるものではなく、基板1までの距離を非接触で高精度(正確)に計測可能な計測器であればよい。
【0026】
第1制御部91は、CPUやメモリなどを含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従って、インプリント装置101の各部を制御する。例えば、第1制御部91は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を制御する。また、第1制御部91は、本実施形態では、第1計測部81で計測された計測結果を処理する機能を有する。
【0027】
図2は、本実施形態における駆動部21の構成の一例を示す概略図である。駆動部21は、互いに直交する方向に平行な2つのガイド、具体的には、X方向のガイド23と、Y方向のガイド24とを含み、X方向及びY方向の任意の位置に駆動することが可能である。ガイド23及び24は、例えば、リニアモータで構成される。また、駆動部21の位置は、例えば、ガイド23及び24に設けられたエンコーダやスケールを用いて計測され、かかる計測の結果に基づいて、第1制御部91の制御下で駆動部21が位置決めされる。
【0028】
図3は、第1計測部81が基板1の表面までの距離を計測した計測結果Zmと、第1計測部81が基板1の表面までの距離を計測したときの駆動部21の浮上量Zsとの関係を示す図である。ここでは、駆動部21によって、基板1の表面の被計測領域を第1計測部81(計測視野)に対してY方向(第1方向)に駆動しながら、Y方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点を計測している。なお、本実施形態では、第1計測部81に対して基板1を駆動(走査)する方向をY方向としているが、これに限定されるものではなく、例えば、X方向としてもよいし、斜め方向としてもよい。
【0029】
また、駆動部21を浮上させるために、インプリント装置101が設置されている工場設備PEからガス供給管などを介して噴射部22に供給されるガスの圧力変動をPとする。工場設備PEから供給されるガスの圧力変動Pは、用力を発生させるためのポンプの性能に依存し、長周期的な挙動を示す。圧力変動Pの幅(圧力変動幅)は、インプリント装置101などの半導体製造装置が設置される工場設備によって異なるが、一般的には、数十kPa程度である。半導体製造装置では、工場設備から供給されるガスを、調圧弁などを介して所定の圧力値及び圧力変動幅となるように調圧して用いている。例えば、高精度な調圧が要求される場合には、精密調圧弁などを用いることで、圧力変動幅を数kPa程度に抑えることが可能である。
【0030】
インプリント装置101では、基板1のショット領域ごとに、基板1の表面と型のパターン面とが平行となるように、型及び基板1の少なくとも一方の姿勢を制御する処理を行う。従って、基板1の表面の高さの分布をナノメートルのオーダーで求めることが要求される。
【0031】
しかしながら、駆動部21が圧力変動Pを受ける構造を有している場合には、精密調圧弁で数kPa程度の圧力変動幅に抑えたとしても、圧力変動Pに連動して駆動部21の浮上量が数十ナノメートルも変動することがある。また、駆動部21や第1計測部81を支持する構造体においても、床からの振動成分の影響を緩和するために、エアマウント方式で浮上している場合があり、工場設備PEの用力変動(圧力変動P)の影響を受ける可能性がある。また、駆動部21の駆動に起因する振動の影響を考慮して、駆動部21と第1計測部81とを別々の構造体で支持する場合においても、駆動部21及び第1計測部81のうちのいずれか一方が工場設備PEの用力変動の影響を受ける可能性がある。
【0032】
図3を参照するに、駆動部21の浮上量Zsと圧力変動Pとの関係は、tを時間項として、以下の式(1)で表される。式(1)を参照するに、時間的に変動する圧力変動Pと連動して、駆動部21の浮上量Zsも変動していることがわかる。
【0033】
【0034】
基板保持部11(の保持面11A)に保持された状態の基板1の表面の高さの分布をZt、基板1(基板自体)の表面の高さの分布をZw、基板保持部11の保持面11Aの高さの分布をZcとする。この場合、基板保持部11に保持された状態の基板1の表面の高さの分布Ztは、以下の式(2)で表される。なお、式(2)において、x及びyは、それぞれ、X座標及びY座標における計測点を表し、Zsiは、駆動部21の浮上量の理想値(一定値)を表している。
【0035】
【0036】
上述したように、駆動部21によって、基板1(を保持した基板保持部11)を第1計測部81に対して駆動しながら、第1計測部81で基板1の表面までの距離を計測した計測結果をZmとする。この場合、基板保持部11に保持された状態の基板1の表面の高さの分布Ztは、以下の式(3)で表される。
【0037】
【0038】
駆動部21の浮上量Zsは圧力変動Pに連動しているため、計測時間が短い列内の計測結果(1つの第1計測ラインに設定された複数の第1計測点を計測した結果)については、
図3に示すように、概ね相関が現れ、圧力変動Pの影響は軽微である。一方、基板1の表面の高さの分布Ztを高精度(精緻)に求めるために、Y方向の第1計測ラインの数(計測列数)を増やすと、計測時間が長くなるため、圧力変動Pの影響が大きくなる。基板1の表面や基板保持部11の保持面11Aは、一般的には、数十ナノメートルオーダーの高さの分布を有している。従って、これと同レベルで駆動部21の浮上量Zsが変動すると、基板1の表面の高さの分布Ztを求めるためには、駆動部21の浮上量Zsを別の計測器で計測する必要がある。
【0039】
図4(a)及び
図4(b)は、本実施形態における基板1の表面の高さの分布を計測する計測方法を説明するための図である。
図4(a)及び
図4(b)では、基板1の表面の全域を被計測領域としている。
図4(a)は、Y方向(第1方向)に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点を示している。
図4(b)は、Y方向に直交するX方向(第2方向)に平行な1つの第2計測ラインに設定された複数の第2計測点を示している。本実施形態では、複数の第1計測ラインのそれぞれについて、複数の第1計測点のうちの1つの計測点と複数の第2計測点のうちの1つの計測点とが重なるように、複数の第1計測点及び複数の第2計測点が設定されている。
【0040】
図4(a)を参照するに、本実施形態では、駆動部21によって、基板1を第1計測部81に対してY方向に駆動しながら、複数の第1計測ラインのそれぞれについて、各計測点(第1計測点のそれぞれ)までの距離を第1計測部81で計測する。同様に、
図4(b)を参照するに、本実施形態では、駆動部21によって、基板1を第1計測部81に対してX方向に駆動しながら、1つの第2計測ラインについて、各計測点(第2計測点のそれぞれ)までの距離を第1計測部81で計測する。本実施形態では、複数の第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点(
図4(a))、第2計測ラインに設定された複数の第2計測点(
図4(b))の順に計測することを想定している。但し、第2計測ラインに設定された複数の第2計測点、複数の第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点の順に計測してもよい。
【0041】
なお、
図4(a)及び
図4(b)では、第1方向をY方向とし、第2方向をX方向としたが、これに限定されるものではない。例えば、第1方向をX方向とし、第2方向をY方向としてもよいし、第1方向を斜め方向とし、第2方向を斜め方向に直交する方向としてもよい。また、第2方向は、第1方向に直交する方向としているが、これに限定されるものではなく、複数の第1計測ラインの全てに交差する方向であればよい。但し、第1方向及び第2方向が、それぞれ、駆動部21のX方向のガイド23及びY方向のガイド24と平行である場合、駆動部21の発熱の観点や位置再現性の観点で有利となる。換言すれば、第1方向は、2つのガイド23及び24のうちの一方のガイド(例えば、X方向のガイド23)と平行な方向であり、第2方向は、2つのガイド23及び24のうちの他方のガイド(例えば、Y方向のガイド23)と平行な方向であるとよい。
【0042】
図4(a)に示すように、駆動部21によって基板1をY方向に駆動しながら第1計測点のそれぞれを第1計測部81で計測して得られる第1計測ラインにおける計測結果(基板1の表面(第1計測点)までの距離)をZm1とする。また、
図4(b)に示すように、駆動部21によって基板1をX方向に駆動しながら第2計測点のそれぞれを第1計測部81で計測して得られる第2計測ラインにおける計測結果(基板1の表面(第2計測点)までの距離)をZm2とする。
【0043】
ここで、1つの第1計測ラインにおける計測結果Zm1については、その計測時間が短く、駆動部21の浮上量Zsの変動が十分に小さいため、駆動部21の浮上量Zsの変動を無視することができる。また、第2計測ラインにおける計測結果Zm2についても同様に、第2計測ラインは1つであるため、駆動部21の浮上量Zsの変動を無視することができる。従って、例えば、Y=0において、第1計測ラインにおける計測結果Zm1(x、0)と、第2計測ラインにおける計測結果Zm2(x、0)とは、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、基板上の同一の計測点(箇所)を計測しているため、同一となるはずである。
【0044】
そこで、本実施形態では、Y=0において、第1計測ラインにおける計測結果Zm1(x、0)が第2計測ラインにおける計測結果Zm2(x、0)となる(一致する)ように、第1計測ラインにおける計測結果Zm1(x、0)を補正する。換言すれば、第2計測ラインにおける計測結果Zm2(x、0)を基準として用いて第1計測ラインにおける計測結果Zm1(x、0)を補正する。この場合、基板保持部11に保持された状態の基板1の表面の高さの分布Ztは、以下の式(4)で表される。
【0045】
【0046】
本実施形態では、Y=0における計測結果、具体的には、第1計測ラインにおける計測結果Zm1(x、0)と第2計測ラインにおける計測結果Zm2(x、0)を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点のうちの1つの計測点と第2計測ラインに設定された複数の第2計測点のうちの1つの計測点とが重なっていれば、Y=0に限定されない。
【0047】
図5(a)及び
図5(b)は、本実施形態における基板1の表面の局所領域ごとの高さの分布を計測する計測方法を説明するための図である。
図5(a)及び
図5(b)では、基板1の表面の一部の領域、具体的には、ショット領域を被計測領域としている。
図5(a)は、基板1の表面の局所領域であるショット領域において、Y方向(第1方向)に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点を示している。
図5(b)は、基板1の表面の局所領域であるショット領域において、Y方向に直交するX方向(第2方向)に平行な1つの第2計測ラインに設定された複数の第2計測点を示している。なお、第2計測ラインは、基板1の各ショット領域の中央を通るように設定するとよい。
【0048】
図5(a)に示すように、駆動部21によって基板1をY方向に駆動しながら第1計測点のそれぞれを第1計測部81で計測して得られる第1計測ラインにおける計測結果(基板1の表面(第1計測点)までの距離)をZn1とする。また、基板1のショット領域のY=y2において、第1計測ラインにおける計測結果をZn1(x、y2)とする。同様に、
図5(b)に示すように、駆動部21によって基板1をX方向に駆動しながら第2計測点のそれぞれを第1計測部81で計測して得られる第2計測ラインにおける計測結果(基板1の表面(第2計測点)までの距離)をZn2とする。また、基板1のショット領域のY=y2において、第2計測ラインにおける計測結果をZn2(x、y2)とする。
【0049】
図4(a)及び
図4(b)で説明したのと同様に、基板保持部11に保持された状態の基板1のショット領域の高さの分布Zt1は、以下の式(5)で表される。
【0050】
【0051】
基板1の表面の局所領域(例えば、ショット領域)の高さの分布を求める場合には、
図5(a)及び
図5(b)に示す計測方法は、
図4(a)及び
図4(b)に示す計測方法と比べて、より高精度(緻密)に局所領域の高さ分布を求めることができる。
【0052】
図6を参照して、本実施形態における基板1の表面の高さの分布を計測する計測方法を含み、基板1の表面の高さの分布を確認する方法について説明する。かかる方法は、第1制御部91がインプリント装置101の各部を統括的に制御することで実行される。
【0053】
S602では、インプリント装置101に基板1を搬入する。具体的には、基板搬送部31を介して、インプリント装置101に基板1を搬入して、かかる基板1を基板保持部11の保持面11Aで保持する。基板1の種類は、例えば、ベアシリコンウエハ、スパーフラットネスウエハ、下地が塗布された基板、樹脂材などの感光材が塗布された基板などを含む。
【0054】
S604では、駆動部21によって、基板1を第1計測部81に対してY方向に駆動しながら、複数の第1計測ラインのそれぞれについて、各計測点までの距離を第1計測部81で計測して、第1計測ラインにおける計測結果Zm1を取得する。このように、基板1の表面の被計測領域を第1計測部81に対して第1方向(Y方向)に駆動しながら、第1方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれを第1計測部81で計測する。これにより、複数の第1計測ラインの各計測ラインにおける基板1の表面の被計測領域の高さを表す第1計測情報(計測結果Zm1)を取得する。
【0055】
S606では、駆動部21によって、基板1を第1計測部81に対してX方向に駆動しながら、1つの第2計測ラインについて、各計測点までの距離を第1計測部81で計測して、第2計測ラインにおける計測結果Zm2を取得する。このように、基板1の表面の被計測領域を第1計測部81に対して第2方向(X方向)に駆動しながら、第2方向に平行な1つの第2計測ラインを第1計測部81で計測する。これにより、第2計測ラインにおける基板1の表面の被計測領域の高さを表す第2計測情報(計測結果Zm2)を取得する。
【0056】
S608では、S604で取得した第1計測ラインにおける計測結果Zm1と、S606で取得した第2計測ラインにおける計測結果Zm2とに基づいて、基板保持部11に保持された状態の基板1の表面の高さの分布Ztを算出する。具体的には、上述したように、第1計測ラインにおける計測結果Zm1が第2計測ラインにおける計測結果Zm2となるように、第1計測ラインにおける計測結果Zm1を補正することで、基板1の表面の高さの分布Ztを算出する。このように、S608では、第1計測情報(計測結果Zm1)及び第2計測情報(計測結果Zm2)に基づいて、基板1の表面の被計測領域の高さの分布を表す第1分布情報(基板1の表面の高さの分布Zt)を生成する。
【0057】
S610では、S608で算出した基板1の表面の高さの分布Ztが許容範囲に収まっているかどうかを判定する。基板1の表面の高さの分布Ztが許容範囲に収まっていない場合には、S612に移行して、その旨を通知する。例えば、インプリント装置101からアラートを発報することで、ユーザに対して、基板1の表面の高さの分布Ztが許容範囲に収まっていないことを通知する。一方、基板1の表面の高さの分布Ztが許容範囲に収まっている場合には、S614に移行して、その旨を通知する。例えば、インプリント装置101のディスプレイを介して、ユーザに対して、基板1の表面の高さの分布Ztが許容範囲に収まっていることを通知する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、駆動部21の浮上量が変動した場合においても、その影響を低減して、基板1の表面の高さの分布を高精度に計測することができる。
【0059】
図7を参照して、本実施形態における基板保持部11の保持面11Aの高さの分布を計測する計測方法を含み、基板保持部11の保持面11Aの高さの分布を確認する方法について説明する。かかる方法は、第1制御部91がインプリント装置101の各部を統括的に制御することで実行される。
【0060】
S702では、インプリント装置101に基板1を搬入する。具体的には、基板搬送部31の回転機構311で基板1を第1角度に回転させて、その状態で基板保持部11の保持面11Aで保持する。換言すれば、基板保持部11の保持面11Aにおける基板1の角度を第1角度に設定する。第1角度の値は任意であるが、本実施形態では、一例として0度とする。
【0061】
S704、S706及びS708は、
図6に示すS604、S606及びS608と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。S704、S706及びS708を経ることで、基板保持部11の保持面11Aにおける基板1の角度を第1角度に設定した状態での基板1の表面の高さの分布Zt1が算出される。
【0062】
S710では、インプリント装置101から基板1を搬出する。具体的には、基板搬送部31を介して、基板保持部11(保持面11A)からインプリント装置101の外部に基板1を搬出する。
【0063】
S712では、インプリント装置101に基板1を搬入する。具体的には、基板搬送部31の回転機構311で基板1を第2角度に回転させて、その状態で基板保持部11の保持面11Aで保持する。換言すれば、基板保持部11の保持面11Aにおける基板1の角度を第2角度に設定する。第2角度は、第1角度と異なっていればよく、例えば、90度や180度が考えられるが、本実施形態では、90度とする。従って、第1角度と第2角度との角度差は、本実施形態では、90度となる。
【0064】
S714、S716及びS718は、
図6に示すS604、S606及びS608と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。S714、S716及びS718を経ることで、基板保持部11の保持面11Aにおける基板1の角度を第2角度に設定した状態での基板1の表面の高さの分布Zt2が算出される。
【0065】
S720では、S708で算出した基板1の表面の高さの分布Zt1と、S718で算出した基板1の表面の高さの分布Zt2とに基づいて、基板保持部11に保持された状態の基板1の表面の高さの分布Ztを算出する。例えば、基板1の表面の高さの分布Zt1と基板1の表面の高さの分布Zt2との平均を基板1の表面の高さの分布Ztとしてもよいし、基板1の表面の高さの分布Zt1及びZt2のいずれか一方を基板1の表面の高さの分布Ztとしてもよい。
【0066】
S722では、S708で算出した基板1の表面の高さの分布Zt1と、S718で算出した基板1の表面の高さの分布Zt2とに基づいて、基板保持部11の保持面11Aの高さの分布を算出する。このように、S704及びS706のそれぞれで取得される第1計測情報及び第2計測情報と、S714及びS716のそれぞれで取得される第1計測情報及び第2計測情報とに基づいて、保持面11Aの高さの分布を表す第2分布情報を生成する。
【0067】
ここで、第1角度における基板1(基板自体)の表面の高さの分布をZw_0、第2角度における基板1(基板自体)の表面の高さの分布をZw_90、基板保持部11の保持面11Aの高さの分布をZcとする。この場合、基板1の中心を通る鉛直方向の軸周りに90度回転させたときの回転行列をR_90とすると、以下の式(6)、式(7)及び式(8)が成り立つ。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
式(6)、式(7)及び式(8)から、基板保持部11の保持面11Aの高さの分布Zcは、以下の式(9)で表される。なお、式(9)において、Eは、単位行列を表し、R_90’は、R_90の逆行列を表す。
【0072】
【0073】
S722では、上述した式を用いて演算処理を行うことで、基板保持部11の保持面11の高さの分布を算出する。
【0074】
S724では、S722で算出した基板保持部11の保持面11の高さの分布が許容範囲に収まっているかどうかを判定する。基板保持部11の保持面11の高さの分布が許容範囲に収まっていない場合には、S726に移行して、その旨を通知する。例えば、インプリント装置101からアラートを発報することで、ユーザに対して、基板保持部11の保持面11の高さの分布が許容範囲に収まっていないことを通知する。また、インプリント装置101では、アラートの内容に従って、保持部搬送部32を介して、基板保持部11をクリーニング装置に搬送してもよいし、基板保持部11を交換してもよい。一方、基板保持部11の保持面11の高さの分布が許容範囲に収まっている場合には、S728に移行して、その旨を通知する。例えば、インプリント装置101のディスプレイを介して、ユーザに対して、基板保持部11の保持面11の高さの分布が許容範囲に収まっていることを通知する。
【0075】
このように、本実施形態によれば、基板保持部11の保持面11Aの高さの分布を高精度に計測することができる。特に、基板保持部11がピンチャックである場合、保持面11Aの高さを直接計測することが困難であるため、本実施形態の計測方法が有用となる。なお、本実施形態では、上述した式から、基板1(基板自体)の表面の高さの分布Zwも算出することができる。
【0076】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態におけるインプリント装置102の構成を示す概略図である。インプリント装置102は、基板上に供給された未硬化のインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0077】
インプリント装置102は、
図8に示すように、基板保持部11と、駆動部21とを有する。また、インプリント装置102は、型41を保持する保持面51Aを含む型保持部51と、型保持部51をZ方向(高さ方向)に駆動する型駆動部61と、型41を型保持部51に搬送(載置)する型搬送部71とを有する。更に、インプリント装置102は、第2計測部82と、第2制御部92とを有する。
【0078】
型保持部51は、本実施形態では、型41を真空吸着することで型41を保持する。型41は、型保持部51から真空吸着されることで載置位置を維持することができる。但し、型保持部51は、静電方式で型41を保持してもよいし、型41の端面を物理的に拘束することで型41を保持してもよい。
【0079】
型搬送部71は、型41を型保持部51に搬送する際に、型41を鉛直方向の軸周りに回転させる(即ち、型41を所定の角度に回転させる)回転機構711を含む。回転機構711は、例えば、複数のロボットハンドのリンク機構を回転することで実現してもよいし、ロボットハンド自体が回転することで実現してもよい。また、型搬送部71は、型41を搬送する機能に加えて、型保持部51、詳細には、型保持部51の保持面51Aをクリーニングする機能を有していてもよい。
【0080】
第2計測部82は、駆動部21に設けられ、型保持部51に保持された型41までの距離(第2計測部82と型41のパターン面41Aとの間の距離)を計測する機能を有する。第2計測部82が設けられた駆動部21を水平方向に駆動(走査)しながら、第2計測部82で型41のパターン面41Aまでの距離を計測することで、型41のパターン面41の高さ分布を取得することができる。第2計測部82には、レーザ変位計や分光干渉計などが用いられるが、これに限定されるものではなく、型41のパターン面41Aまでの距離を非接触で高精度(正確)に計測可能な計測器であればよい。
【0081】
第2制御部92は、CPUやメモリなどを含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従って、インプリント装置102の各部を制御する。例えば、第2制御部92は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を制御する。また、第2制御部92は、本実施形態では、第2計測部82で計測された計測結果を処理する機能を有する。
【0082】
図9(a)及び
図9(b)は、本実施形態における型41のパターン面41Aの高さの分布を計測する計測方法を説明するための図である。
図9(a)及び
図9(b)では、型41のパターン面41Aを被計測領域としている。
図9(a)は、Y方向(第1方向)に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点を示している。
図9(b)は、Y方向に直交するX方向(第2方向)に平行な1つの第2計測ラインに設定された複数の第2計測点を示している。本実施形態では、複数の第1計測ラインのそれぞれについて、複数の第1計測点のうちの1つの計測点と複数の第2計測点のうちの1つの計測点とが重なるように、複数の第1計測点及び複数の第2計測点が設定されている。
【0083】
図9(a)を参照するに、本実施形態では、駆動部21によって、第2計測部82を型41に対してY方向に駆動しながら、複数の第1計測ラインのそれぞれについて、各計測点(第1計測点のそれぞれ)までの距離を第2計測部82で計測する。同様に、
図9(b)を参照するに、本実施形態では、駆動部21によって、第2計測部82を型41に対してX方向に駆動しながら、1つの第2計測ラインについて、各計測点(第2計測点のそれぞれ)までの距離を第2計測部82で計測する。本実施形態では、複数の第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点(
図9(a))、第2計測ラインに設定された複数の第2計測点(
図9(b))の順に計測することを想定している。但し、第2計測ラインに設定された複数の第2計測点、複数の第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点の順に計測してもよい。
【0084】
なお、
図9(a)及び
図9(b)では、第1方向をY方向とし、第2方向をX方向としたが、これに限定されるものではない。例えば、第1方向をX方向とし、第2方向をY方向としてもよいし、第1方向を斜め方向とし、第2方向を斜め方向に直交する方向としてもよい。また、第2方向は、第1方向に直交する方向としているが、これに限定されるものではなく、複数の第1計測ラインの全てに交差する方向であればよい。
【0085】
図9(a)に示すように、駆動部21によって第2計測部82をY方向に駆動しながら第1計測点のそれぞれを第2計測部82で計測して得られる第1計測ラインにおける計測結果(型41のパターン面41A(第1計測点)までの距離)をTm1とする。また、
図9(b)に示すように、駆動部21によって第2計測部82をX方向に駆動しながら第2計測点のそれぞれを第2計測部82で計測して得られる第2計測ラインにおける計測結果(型41のパターン面41A(第2計測点)までの距離)をTm2とする。
【0086】
第1実施形態と同様に、1つの第1計測ラインにおける計測結果Tm1については、その計測時間が短く、駆動部21の浮上量Zsの変動が十分に小さいため、駆動部21の浮上量Zsの変動を無視することができる。また、第2計測ラインにおける計測結果Zm2についても同様に、第2計測ラインは1つであるため、駆動部21の浮上量Zsの変動を無視することができる。従って、例えば、Y=0において、第1計測ラインにおける計測結果Tm1(x、0)と、第2計測ラインにおける計測結果Tm2(x、0)とは、型41のパターン面上の同一の計測点(箇所)を計測しているため、同一となるはずである。
【0087】
そこで、本実施形態では、Y=0において、第1計測ラインにおける計測結果Tm1(x、0)が第2計測ラインにおける計測結果Tm2(x、0)となる(一致する)ように、第1計測ラインにおける計測結果Tm1(x、0)を補正する。換言すれば、第2計測ラインにおける計測結果Tm2(x、0)を基準として用いて第1計測ラインにおける計測結果Tm1(x、0)を補正する。この場合、型保持部51に保持された状態の型41のパターン面41Aの高さの分布Ttは、以下の式(10)で表される。
【0088】
【0089】
本実施形態では、Y=0における計測結果、具体的には、第1計測ラインにおける計測結果Tm1(x、0)と第2計測ラインにおける計測結果Tm2(x、0)を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、第1計測ラインのそれぞれに設定された複数の第1計測点のうちの1つの計測点と第2計測ラインに設定された複数の第2計測点のうちの1つの計測点とが重なっていれば、Y=0に限定されない。
【0090】
図10を参照して、本実施形態における型41のパターン面41Aの高さの分布を計測する計測方法を含み、型41のパターン面41Aを確認する方法について説明する。かかる方法は、第2制御部92がインプリント装置102の各部を統括的に制御することで実行される。
【0091】
S1002では、インプリント装置102に型41を搬入する。具体的には、型搬送部71を介して、インプリント装置102に型41を搬入して、かかる型41を型保持部51の保持面51Aで保持する。型41の種類は、パターン面が形成された型の他にも、例えば、パターン面が形成されていない型、型の被保持面側に窪み構造を有する型などを含む。
【0092】
S1004では、駆動部21によって、第2計測部82を型41に対してY方向に駆動しながら、複数の第1計測ラインのそれぞれについて、各計測点までの距離を第2計測部82で計測して、第1計測ラインにおける計測結果Tm1を取得する。このように、第2計測部82を型41に対して第1方向(Y方向)に駆動しながら、第1方向に平行な互いに異なる複数の第1計測ラインのそれぞれを第2計測部82で計測する。これにより、複数の第1計測ラインの各計測ラインにおける型41のパターン面41Aの高さを表す第1計測情報(計測結果Tm1)を取得する。
【0093】
S1006では、駆動部21によって、第2計測部82を型41に対してX方向に駆動しながら、1つの第2計測ラインについて、各計測点までの距離を第2計測部82で計測して、第2計測ラインにおける計測結果Tm2を取得する。このように、第2計測部82を型41に対して第2方向(X方向)に駆動しながら、第2方向に平行な1つの第2計測ラインを第2計測部82で計測する。これにより、第2計測ラインにおける型41のパターン面41Aの高さを表す第2計測情報(計測結果Tm2)を取得する。
【0094】
S1008では、S1004で取得した第1計測ラインにおける計測結果Tm1と、S1006で取得した第2計測ラインにおける計測結果Tm2とに基づいて、型保持部51に保持された状態の型41のパターン面41Aの高さ分布Ttを算出する。具体的には、上述したように、第1計測ラインにおける計測結果Tm1が第2計測ラインにおける計測結果Tm2となるように、第1計測ラインにおける計測結果Tm1を補正することで、型41のパターン面41Aの高さ分布Ttを算出する。このように、S1008では、第1計測情報(計測結果Tm1)及び第2計測情報(計測結果Tm2)に基づいて、型41のパターン面41Aの高さの分布を表す分布情報(型41のパターン面41Aの高さ分布Tt)を生成する。
【0095】
S1010では、S1008で算出した型41のパターン面41Aの高さ分布Ttが許容範囲に収まっているかどうかを判定する。型41のパターン面41Aの高さの分布Ttが許容範囲に収まっていない場合には、S1012に移行して、その旨を通知する。例えば、インプリント装置102からアラートを発報することで、ユーザに対して、型41のパターン面41Aの高さの分布Ttが許容範囲に収まっていないことを通知する。一方、型41のパターン面41Aの高さの分布Ttが許容範囲に収まっている場合には、S1014に移行して、その旨を通知する。例えば、インプリント装置102のディスプレイを介して、ユーザに対して、型41のパターン面41Aの高さの分布Ttが許容範囲に収まっていることを通知する。
【0096】
このように、本実施形態によれば、駆動部21の浮上量が変動した場合においても、その影響を低減して、型41のパターン面41Aの高さの分布を高精度に計測することができる。
【0097】
図11を参照して、本実施形態における型保持部51の保持面51Aの高さの分布を計測する計測方法を含み、型保持部51の保持面51Aの高さの分布を確認する方法について説明する。かかる方法は、第2制御部92がインプリント装置102の各部を統括的に制御することで実行される。
【0098】
S1102では、インプリント装置102に型41を搬入する。具体的には、型搬送部71の回転機構711で型41を第1角度に回転させて、その状態で型保持部51の保持面51Aで保持する。換言すれば、型保持部51の保持面51Aにおける型41の角度を第1角度に設定する。第1角度は、型保持部51及び型駆動部61の構造で制限され、概ね、0度、90度、180度、270度であり、本実施形態では、一例として0度とする。
【0099】
S1104、S1106及びS1108は、
図10に示すS1004、S1006及びS1008と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。S1104、S1106及びS1108を経ることで、型保持部51の保持面51Aにおける型41の角度を第1角度に設定した状態での型41のパターン面41Aの高さの分布Tt1が算出される。
【0100】
S1110では、インプリント装置102から型41を搬出する。具体的には、型搬送部71を介して、型保持部51(保持面51A)からインプリント装置102の外部に型41を搬出する。
【0101】
S1112では、インプリント装置102に型41を搬入する。具体的には、型搬送部71の回転機構711で型41を第2角度に回転させて、その状態で型保持部51の保持面51Aで保持する。換言すれば、型保持部51の保持面51Aにおける型41の角度を第2角度に設定する。第2角度は、第1角度と異なっていればよく、本実施形態では、一例として90度とする。従って、第1角度と第2角度との角度差は、本実施形態では、90度となる。
【0102】
S1114、S1116及びS1118は、
図10に示すS1004、S1006及びS1008と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。S1114、S1116及びS1118を経ることで、型保持部51の保持面51Aにおける型41の角度を第2角度に設定した状態での型41のパターン面41Aの高さの分布Tt2が算出される。
【0103】
S1120では、S1108で算出した型41のパターン面41Aの高さの分布Tt1と、S1118で算出した型41のパターン面41Aの高さの分布Tt2とに基づいて、型保持部51に保持された状態の型41のパターン面41Aの高さの分布Ttを算出する。例えば、型41のパターン面41Aの高さの分布Tt1と型41のパターン面41Aの高さの分布Tt2との平均を型41のパターン面41Aの高さの分布Ttとしてもよい。また、型41のパターン面41Aの高さの分布Tt1及びTt2のいずれか一方を型41のパターン面41Aの高さの分布Ttとしてもよい。
【0104】
S1122では、S1108で算出した型41のパターン面41Aの高さの分布Tt1と、S1118で算出した型41のパターン面41Aの高さの分布Tt2とに基づいて、型保持部51の保持面51Aの高さの分布を算出する。このように、S1104及びS1106のそれぞれで取得される第1計測情報及び第2計測情報と、S1114及びS1116のそれぞれで取得される第1計測情報及び第2計測情報とに基づいて、保持面51Aの高さの分布を表す分布情報を生成する。
【0105】
ここで、第1角度における型41のパターン面41A(パターン面自体)の高さの分布をTw_0、第2角度における型41のパターン面41A(パターン面自体)の高さの分布をTw_90、型保持部51の保持面51Aの高さの分布をTcとする。この場合、型41のパターン面41Aの中心を通る鉛直方向の軸周りに90度回転させたときの回転行列をR_90とすると、以下の式(11)、式(12)及び式(13)が成り立つ。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
式(11)、式(12)及び式(13)から、型保持部51の保持面51Aの高さの分布Tcは、以下の式(14)で表される。なお、式(14)において、Eは、単位行列を表し、R_90’は、R_90の逆行列を表す。
【0110】
【0111】
S1122では、上述した式を用いて演算処理を行うことで、型保持部51の保持面51Aの高さの分布Tcを算出する。
【0112】
S1124では、S1122で算出した型保持部51の保持面51Aの高さの分布が許容範囲に収まっているかどうかを判定する。型保持部51の保持面51Aの高さの分布が許容範囲に収まっていない場合には、S1126に移行して、その旨を通知する。例えば、インプリント装置102からアラートを発報することで、ユーザに対して、型保持部51の保持面51Aの高さの分布が許容範囲に収まっていないことを通知する。また、インプリント装置102では、アラートの内容に従って、型搬送部71を介して、型保持部51の保持面51Aをクリーニングしてもよい。一方、型保持部51の保持面51Aの高さの分布が許容範囲に収まっている場合には、S1128に移行して、その旨を通知する。例えば、インプリント装置102のディスプレイを介して、ユーザに対して、型保持部51の保持面51Aの高さの分布が許容範囲に収まっていることを通知する。
【0113】
このように、本実施形態によれば、型保持部51の保持面51Aの高さの分布を高精度に計測することができる。なお、本実施形態では、上述した式から、型41のパターン面41A(パターン面自体)の高さの分布Twも算出することができる。
【0114】
<第3実施形態>
図12は、本発明の第3実施形態におけるインプリント装置103の構成を示す概略図である。インプリント装置103は、基板上に供給された未硬化のインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0115】
インプリント装置103は、
図12に示すように、基板保持部11と、駆動部21と、基板搬送部31と、保持部搬送部32と、型保持部51と、型駆動部61と、型搬送部71とを有する。また、インプリント装置103は、第1計測部81と、第2計測部82と、第1制御部91と、第2制御部92と、主制御部93とを有する。
【0116】
主制御部93は、CPUやメモリなどを含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従って、第1制御部91や第2制御部92と協同して、或いは、単独で、インプリント装置103の各部を制御する。主制御部93は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を制御する。例えば、主制御部93は、基板1の表面の高さの分布や型41のパターン面41Aの高さの分布に基づいて、型41のパターン面41Aと基板1の表面とが平行となるように、型41及び基板1の少なくとも一方の姿勢を制御する。型41の姿勢や基板1の姿勢は、型41を駆動する型駆動部61や基板1を駆動する駆動部21を介して制御することが可能である。なお、型41及び基板1の少なくとも一方の姿勢の制御は、第1制御部91や第2制御部92で行うことも可能である。
【0117】
インプリント装置103における一連の動作、即ち、インプリント処理について説明する。まず、型搬送部71を介して、インプリント装置103に型41を搬入して、かかる型41を型保持部51の保持面51Aで保持する。次いで、第2実施形態で説明した計測方法を用いて、型41のパターン面41Aの高さの分布を計測する。
【0118】
型41のパターン面41Aの高さの分布の計測が完了すると、基板搬送部31を介して、インプリント装置103に基板1を搬入して、かかる基板1を基板保持部11の保持面11Aで保持する。次いで、第1実施形態で説明した計測方法を用いて、基板1の表面の高さの分布を計測する。なお、基板1の表面の高さの分布の計測に関しては、ロットに含まれる一枚目の基板と、二枚目以降の基板とで、その計測方法を変えてもよい。例えば、一枚目の基板については、第1実施形態で説明した計測方法で基板1の表面の高さの分布を高精度に計測する。そして、二枚目以降の基板については、数点の代表点だけを計測し、一枚目の基板の表面の高さの分布を用いて補間することで、二枚目以降の基板の高さの分布とする。
【0119】
基板1の表面の高さの分布の計測が完了すると、基板1(のショット領域)と型41のパターン面41Aとが対向する(基板1が型41の直下に位置する)ように、基板保持部11を保持した駆動部21を駆動する。基板1には、例えば、インプリント装置103の外部に設けられたコーターデベロッパーなどを用いてインプリント材を事前に供給しておいてもよいし、インプリント装置103に設けられたディスペンサ(不図示)を用いてインプリント材を供給してもよい。
【0120】
基板1と型41のパターン面41Aとを対向させたら、基板上のインプリント材と型41のパターン面41Aとを接触させて、基板上のインプリント材を型41で成形する。この際、上述したように、基板1の表面の高さの分布や型41のパターン面41Aの高さの分布に基づいて、型41のパターン面41Aと基板1の表面とが平行となるように、型41及び基板1の少なくとも一方の姿勢を制御する。なお、型41のパターン面41Aと基板1の表面とを平行にするために必要となる型41や基板1の姿勢の制御量(傾け量)は、基板1のショット領域ごとに異なる。
【0121】
基板上のインプリント材と型41のパターン面41Aとを接触させたら、型41を介して、基板上のインプリント材に紫外線などの光を照射して、かかるインプリント材を硬化させる。そして、基板上の硬化したインプリント材から型41を引き離すことで、基板上のインプリント材のパターンが形成される。
【0122】
このようなインプリント処理を基板1の全てのショット領域に対して行ったら、基板搬送部31を介して、基板保持部11(保持面11A)からインプリント装置103の外部に基板1を搬出する。
【0123】
図13を参照して、インプリント装置103の基板保持部11を交換する方法について説明する。基板保持部11においては、インプリント処理を繰り返すことで、保持面11Aに異物が付着したり、摩耗(削れ)が生じたりする。そこで、基板保持部11に関しては、保持面11Aの高さの分布を定期的に計測して、基板保持部11を交換するかどうかを判定するとよい。
【0124】
まず、S1302、S1304、S1306、S1308、S1310、S1312、S1314、S1316、S1318及びS1320では、基板保持部11の保持面11Aの高さの分布を算出する。S1302乃至S1320のそれぞれは、
図7に示すS704、S706、S708、S710、S712、S714、S716、S718及びS722と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0125】
S1322では、S1320で算出した基板保持部11の保持面11Aの高さの分布が許容範囲に収まっているかどうかを判定する。基板保持部11の保持面11Aの高さの分布が許容範囲に収まっていない場合には、S1324に移行する。一方、基板保持部11の保持面11Aの高さの分布が許容範囲に収まっている場合には、S1346に移行する。
【0126】
S1324では、基板保持部11を交換する。具体的には、保持部搬送部32を介して、保持面11Aの高さの分布が許容範囲に収まっていない基板保持部11を駆動部21からインプリント装置103の外部に搬出し、新たな基板保持部11を駆動部21に保持させる。なお、交換が必要となる基板保持部11は、クリーニングなどでも復帰が見込めないものに限定してもよい。
【0127】
S1326、S1328、S1330、S1332、S1334、S1336、S1338、S1340、S1342及びS1344では、新たな基板保持部11の保持面11Aの高さの分布を算出する。S1326乃至S1344のそれぞれは、
図7に示すS704、S706、S708、S710、S712、S714、S716、S718及びS722と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0128】
S1346では、新たな基板保持部11を用いた場合において、型41のパターン面41Aと基板1の表面とを平行にするために必要となる型41及び基板1の姿勢の制御量(傾け量)を決定する。具体的には、S1320で算出した基板保持部11の保持面11Aの高さの分布と、S1344で算出した新たな基板保持部11の保持面11Aの高さの分布とを比較して、その差分を、これまでの制御量に反映させる。
【0129】
<第4実施形態>
インプリント装置101、102又は103を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは、各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMなどの揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAなどの半導体素子などが挙げられる。型としては、インプリント用のモールドなどが挙げられる。
【0130】
硬化物のパターンは、上述の物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入などが行われた後、レジストマスクは除去される。
【0131】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。
図14(a)に示すように、絶縁体などの被加工材が表面に形成されたシリコンウエハなどの基板を用意し、続いて、インクジェット法などにより、被加工材の表面にインプリント材を付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材が基板上に付与された様子を示している。
【0132】
図14(b)に示すように、インプリント用の型を、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材に向け、対向させる。
図14(c)に示すように、インプリント材が付与された基板と型とを接触させ、圧力を加える。インプリント材は、型と被加工材との隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型を介して照射すると、インプリント材は硬化する。
【0133】
図14(d)に示すように、インプリント材を硬化させた後、型と基板を引き離すと、基板上にインプリント材の硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材に型の凹凸のパターンが転写されたことになる。
【0134】
図14(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材の表面のうち、硬化物がない、或いは、薄く残存した部分が除去され、溝となる。
図14(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材の表面に溝が形成された物品を得ることができる。ここでは、硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子などに含まれる層間絶縁用の膜、即ち、物品の構成部材として利用してもよい。
【0135】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0136】
101、102、103:インプリント装置 1:基板 11:基板保持部 21:駆動部 41:型 51:型保持部 81:第1計測部 82:第2計測部 91:第1制御部 92:第2制御部 93:主制御部