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特許7475194不飽和ポリエステル樹脂組成物およびパテ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステル樹脂組成物およびパテ組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20240419BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240419BHJP
   C08G 63/54 20060101ALI20240419BHJP
   C09D 5/34 20060101ALI20240419BHJP
   C09D 125/16 20060101ALI20240419BHJP
   C09D 167/06 20060101ALI20240419BHJP
   C08F 212/12 20060101ALN20240419BHJP
【FI】
C08F283/01
C08F2/44 B
C08G63/54
C09D5/34
C09D125/16
C09D167/06
C08F212/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020082956
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021178879
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503090980
【氏名又は名称】ジャパンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】前田 直
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】梶野 正彦
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-117885(JP,A)
【文献】特開2006-117884(JP,A)
【文献】特開2006-282948(JP,A)
【文献】特開2007-177175(JP,A)
【文献】特開2002-060607(JP,A)
【文献】特開2002-088128(JP,A)
【文献】特開2005-054068(JP,A)
【文献】特開2000-309696(JP,A)
【文献】特開平07-145305(JP,A)
【文献】特表2006-502286(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109535400(CN,A)
【文献】国際公開第2019/099968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08G
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステルと、
ビニルトルエンを含有する重合性単量体と、を含み、
前記不飽和ポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールと、ジシクロペンタジエンとの反応生成物であり、
前記多塩基酸は、マレイン酸およびその無水物を含み、
前記多価アルコールは、ジエチレングリコールを含み、
ジシクロペンタジエンの含有割合は、前記多塩基酸100モル部に対して、30モル部以上60モル部以下であり、
前記重合性単量体100質量%における前記ビニルトルエンの含有割合は、60質量%以上100質量%以下であることを特徴とする、不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記多価アルコール100モル%における前記ジエチレングリコールの含有割合は、30モル%以上60モル%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
金属石鹸をさらに含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むことを特徴とする、パテ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂組成物およびパテ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不飽和多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物である不飽和ポリエステルと、重合性単量体とを含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物が知られている。
【0003】
例えば、ジシクロペンタジエン変性不飽和ポリエステルを、ビニルトルエンに溶解した不飽和ポリエステル樹脂が提案されている(例えば、特許文献1の実施例5参照。)。
【0004】
そのようなジシクロペンタジエン変性不飽和ポリエステルは、無水マレイン酸100モル部に対してジシクロペンタジエン97モル部と水とを反応させて、無水マレイン酸のジシクロペンタジエン変性体を調製し、無水マレイン酸のジシクロペンタジエン変性体と、多価アルコールとしてのジプロピレングリコールとをさらに反応させて調製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-54068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のジシクロペンタジエン変性不飽和ポリエステル樹脂をパテ組成物とした場合、パテ組成物を対象物に塗工して硬化させると、パテ組成物の硬化物が硬脆く、対象物に対する密着性を十分に確保できないという不具合がある。
【0007】
また、パテ組成物では、対象物に塗工したときに早期に乾燥する優れた乾燥性と、硬化後における優れた研磨性(硬さ)とを確保することが望まれる。
【0008】
本発明は、パテ組成物の硬化物の密着性および研磨性と、パテ組成物の乾燥性とをバランスよく確保できる不飽和ポリエステル樹脂組成物およびパテ組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、不飽和ポリエステルと、ビニルトルエンを含有する重合性単量体と、を含み、前記不飽和ポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールと、ジシクロペンタジエンとの反応生成物であり、前記多塩基酸は、マレイン酸およびその無水物を含み、前記多価アルコールは、ジエチレングリコールを含み、ジシクロペンタジエンの含有割合は、前記多塩基酸100モル部に対して、30モル部以上60モル部以下であり、前記重合性単量体100質量%における前記ビニルトルエンの含有割合は、60質量%以上100質量%以下である、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。
【0010】
本発明[2]は、前記多価アルコール100モル%における前記ジエチレングリコールの含有割合が、30モル%以上60モル%以下である、上記[1]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。
【0011】
本発明[3]は、金属石鹸をさらに含有する、上記[1]または[2]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む。
【0012】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含む、パテ組成物を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物によれば、多価アルコールが、ジエチレングリコールを含み、多塩基酸に対するジシクロペンタジエンの含有割合が上記範囲内であり、かつ、重合性単量体におけるビニルトルエンの含有割合が上記範囲内であるので、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むパテ組成物の硬化物の密着性(性能)および研磨性(作業性)と、パテ組成物の乾燥性とをバランスよく確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、必須成分として、不飽和ポリエステルと、重合性単量体とを含有する。
1.不飽和ポリエステル
不飽和ポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールと、ジシクロペンタジエン(以下、DCPDとする。)との反応生成物である。
【0015】
多塩基酸は、マレイン酸およびその無水物を含む。
【0016】
また、多塩基酸は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記した特定の多塩基酸(マレイン酸およびその無水物)以外の他の多塩基酸を含むことができる。
【0017】
他の多塩基酸として、エチレン性不飽和二重結合含有多塩基酸(例えば、フマル酸、イタコン酸など不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、不飽和脂肪族ジカルボン酸から誘導される酸無水物など)、エチレン性不飽和二重結合不含多塩基酸(例えば、シュウ酸、マロン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、それらジカルボン酸から誘導される酸無水物など)などが挙げられる。これら他の多塩基酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0018】
他の多塩基酸のなかでは、好ましくは、芳香族ジカルボン酸から誘導される酸無水物が挙げられ、より好ましくは、無水フタル酸が挙げられる。
【0019】
他の多塩基酸の含有割合は、マレイン酸およびその無水物と他の多塩基酸との総和100モル%に対して、例えば、0モル%以上、好ましくは、5モル%以上、例えば、20モル%以下、好ましくは、15モル%以下、さらに好ましくは、10モル%以下である。
【0020】
多塩基酸は、他の多塩基酸の含有割合が10モル%以下であることがとりわけ好ましい。
【0021】
多価アルコールは、ジエチレングリコールを少なくとも含む。
【0022】
多価アルコール100モル%におけるジエチレングリコールの含有割合は、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、より好ましくは、30モル%以上、例えば、100モル%以下、好ましくは、80モル%以下、より好ましくは、70モル%以下、さらに好ましくは、60モル%以下である。
【0023】
ジエチレングリコールの含有割合が上記下限以上であれば、後述するパテ組成物の硬化物の密着性、および、パテ組成物の乾燥性の向上を図ることができる。ジエチレングリコールの含有割合が上記上限以下であれば、後述するパテ組成物の硬化物の研磨性(硬さ)の向上を図ることができる。
【0024】
また、多価アルコールは、好ましくは、ジエチレングリコールに加えて、アルカンジオールを含む。
【0025】
アルカンジオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC(炭素数)2~6のアルカンジオールなどが挙げられる。アルカンジオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0026】
アルカンジオールのなかでは、好ましくは、エチレングリコールおよびプロピレングリコールが挙げられ、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0027】
多価アルコール100モル%におけるアルカンジオールの含有割合は、例えば、0モル%以上、好ましくは、20モル%以上、より好ましくは、30モル%以上、さらに好ましくは、40モル%以上、例えば、90モル%以下、好ましくは、80モル%以下、より好ましくは、70モル%以下である。
【0028】
また、多価アルコールは、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記した特定の多価アルコール(ジエチレングリコールおよびアルカンジオール)以外の他の多価アルコールを含むことができる。
【0029】
他の多価アルコールとして、例えば、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコールを除くポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリプロピレングリコールなど)、脂環族ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールAなど)、芳香族ジオール(例えば、ビスフェノールAなどのビスフェノールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体など)などが挙げられる。他の多価アルコールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0030】
また、多価アルコールは、とりわけ好ましくは、他の多価アルコールを含有せず、ジエチレングリコールと、アルカンジオールとからなる。
【0031】
多価アルコールの含有割合は、多塩基酸100モル部に対して、例えば、50モル部以上、好ましくは、60モル部以上、例えば、90モル部以下、好ましくは、80モル部以下である。
【0032】
DCPDの含有割合は、多塩基酸100モル部に対して、30モル部以上、好ましくは、40モル部以上、60モル部以下、好ましくは、55モル部以下である。
【0033】
DCPDの含有割合が上記下限以上であれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むパテ組成物の乾燥性の向上を図ることができる。DCPDの含有割合が上記上限以下であれば、パテ組成物の硬化物の密着性の向上を図ることができる。
【0034】
このような不飽和ポリエステルは、例えば、上記した多塩基酸とDCPDとを上記のDCPDの含有割合で予め反応させた後、多塩基酸およびDCPDの反応生成物と上記した多価アルコールとを、上記の多価アルコールの含有割合で反応させることにより、調製できる。
【0035】
また、不飽和ポリエステルは、上記した不飽和多塩基酸(無水マレイン酸)100モル部に対し、上記の多価アルコール(ジエチレングリコール)50モル部以下を反応させた後、理論上両末端がカルボキシ基となる不飽和多塩基酸および多価アルコールの反応生成物とDCPDとを上記のDCPDの含有割合で反応させた後に、残りの飽和多塩基酸(芳香族ジカルボン酸から誘導される酸無水物)と、残りの多価アルコール(アルカンジオール)とを反応させることにより、調製することもできる。
【0036】
このような不飽和ポリエステルは、酸価を有する。
【0037】
不飽和ポリエステルの酸価は、例えば、5mgKOH/g以上、好ましくは、10mgKOH/g以上、さらに好ましくは、20mgKOH/g以上、例えば、50mgKOH/g以下、好ましくは、40mgKOH/g以下である。なお、樹脂の酸価は、JIS K 6901に準拠して測定できる(以下同様)。
【0038】
このような不飽和ポリエステルの含有割合は、不飽和ポリエステルおよび重合性単量体の総和(以下、必須成分とする。)100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0039】
2.重合性単量体
重合性単量体は、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性モノマー(ビニルモノマー)であって、上記した不飽和ポリエステルを溶解可能なものである。また、重合性単量体は、上記した不飽和ポリエステルと重合可能(架橋可能)な反応性希釈剤である。
【0040】
重合性単量体は、ビニルトルエンを少なくとも含有する。
【0041】
ビニルトルエンとして、例えば、4-ビニルトルエン、3-ビニルトルエンなどが挙げられる。ビニルトルエンは、単独使用または2種以上併用することができる。ビニルトルエンのなかでは、好ましくは、4-ビニルトルエンおよび3-ビニルトルエンの併用が挙げられる。
【0042】
重合性単量体100質量%におけるビニルトルエンの含有割合は、60質量%以上100質量%以下である。
【0043】
ビニルトルエンの含有割合が上記の範囲であると、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むパテ組成物の乾燥性の向上を確実に図ることができる。
【0044】
また、重合性単量体は、ビニルトルエンに加えて、(メタ)アクリル酸エステルを含有することができる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノ(メタ)アクリル酸エステル、例えば、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、好ましくは、モノ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0046】
モノ(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、水酸基不含モノ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなど)、水酸基含有モノ(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなど)などが挙げられる。
【0047】
モノ(メタ)アクリル酸エステルは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0048】
モノ(メタ)アクリル酸エステルのなかでは、好ましくは、水酸基含有モノ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)が挙げられる。
【0049】
重合性単量体100質量%における(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、例えば、0質量%以上40質量部以下である。
【0050】
また、重合性単量体は、好ましくは、スチレンモノマーを実質的に含有しない。つまり、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、スチレンフリーである。
【0051】
不飽和ポリエステル樹脂組成物がスチレンモノマーを実質的に含有しなければ、環境負荷の低減を図ることができる。
【0052】
このような重合性単量体の含有割合は、必須成分100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、例えば、80質量部以下、好ましくは、65質量部以下である。
【0053】
重合性単量体の含有割合が上記下限以上であれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物が塗工可能となるように、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度を好適に調整できる。重合性単量体の含有割合が上記上限以下であれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むパテ組成物の作業性(パテ塗り付け性)の向上を図ることができる。
【0054】
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、重合禁止剤と、硬化促進剤とを含む。
【0055】
重合禁止剤として、例えば、ハイドロキノン化合物(例えば、ハイドロキノン、2-メチルハイドロキノン、2-t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノンなど)、ベンゾキノン化合物(例えば、パラベンゾキノン、2,5-ジ-t-ブチルベンゾキノンなど)、ナフトキノン化合物(例えば、ナフトキノンなど)、カテコール化合物(例えば、p-t-ブチルカテコールなど)、チアジン化合物(例えば、フェノチアジンなど)、N-オキシル化合物などが挙げられる。重合禁止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0056】
重合禁止剤の含有割合は、必須成分100質量部に対して、例えば、0.005質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上、例えば、0.2質量部以下である。
【0057】
硬化促進剤として、例えば、金属石鹸、アミン化合物などが挙げられる。
【0058】
金属石鹸として、例えば、コバルト石鹸(例えば、オクテン酸コバルト、ナフテン酸コバルトなど)、マンガン石鹸(例えば、オクテン酸マンガン、ネオデカン酸マンガンなど)、亜鉛石鹸(例えば、オクテン酸亜鉛など)などが挙げられる。
【0059】
アミン化合物として、例えば、N,N-置換アニリン(例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリンなど)、N,N-置換-p-トルイジン(例えば、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジンなど)などが挙げられる。
【0060】
硬化促進剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0061】
硬化促進剤のなかでは、好ましくは、金属石鹸が挙げられ、より好ましくは、コバルト石鹸が挙げられ、さらに好ましくは、オクテン酸コバルトが挙げられる。
【0062】
硬化促進剤の含有割合は、必須成分100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上、例えば、5質量部以下、好ましくは、1.0質量部以下である。
【0063】
さらに、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、任意成分として、その他の添加剤を適宜の割合で含有してもよい。その他の添加剤として、例えば、ワックス類、増粘剤、着色剤、湿潤分散剤、分離防止剤、難燃剤、導電剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。その他の添加剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0064】
3.パテ組成物
パテ組成物には、上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物が含まれる。
【0065】
また、パテ組成物は、必要に応じて、充填材と、強化繊維とを含むことができる。
【0066】
充填材として、例えば、無機充填材が挙げられる。無機充填材として、例えば、酸化物(例えば、アルミナ、チタニアなど)、水酸化物(例えば、水酸化アルミニウムなど)、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウムなど)、硫酸塩(例えば、硫酸バリウムなど)、シリカ(例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、フュームドシリカ、乾式シリカ(アエロジル)など)、ガラスパウダー、中空フィラー(例えば、ガラス中空球、シリカ中空球、アルミナ中空球など)、ケイ酸塩(例えば、珪砂、珪藻土、マイカ、クレー、カオリン、タルクなど)、フッ化物(例えば、ホタル石など)、リン酸塩(例えば、リン酸カルシウムなど)、粘土鉱物(例えば、スメクタイトなど)などが挙げられる。充填材は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0067】
充填材のなかでは、好ましくは、ケイ酸塩が挙げられ、より好ましくは、タルクが挙げられる。
【0068】
充填材の含有割合は、上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、50質量部以上、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0069】
強化繊維として、例えば、無機繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維など)、有機繊維(例えば、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、フッ素樹脂系繊維、フェノール系繊維など)、天然繊維(例えば、麻、ケナフなど)などが挙げられる。強化繊維は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0070】
また、パテ組成物は、例えば、上記した必須成分と、必要に応じて、重合禁止剤と、硬化促進剤と、充填材と、強化繊維と、その他の添加剤とを含有するA剤と、硬化剤を含有するB剤とを別々に備える二剤型パテ組成物(パテ用キット)として調製することもできる。この場合、A剤およびB剤を使用直前に混合して使用される。
【0071】
不飽和ポリエステル樹脂組成物およびパテ組成物を硬化させるための硬化剤(重合開始剤)としては、例えば、パーオキサイドを使用できる。パーオキサイドとして、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシアセテートなどが挙げられる。パーオキサイドは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0072】
このような硬化剤(重合開始剤)のなかでは、好ましくは、シクロヘキサノンパーオキサイドが挙げられる。
【0073】
硬化剤(重合開始剤)の含有割合は、上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物100質量部に対して、例えば、0.3質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0074】
このようなパテ組成物は、使用時において、例えば、対象物(例えば、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板などの金属鋼板)に、所定の厚みとなるように塗工される。その後、必要に応じて加熱することにより、パテ組成物が硬化する。
【0075】
硬化温度は、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、60℃以下である。硬化時間は、温度条件にも大きく左右されるが、例えば、5分以上、好ましくは、10分以上、例えば、40分以下、好ましくは、20分以下である。
【0076】
4.作用効果
上記したパテ組成物は、例えば、上記した対象物に塗工した後、必要に応じて加熱により硬化して、パテ組成物の硬化物(硬化パテ組成物)を形成する。
【0077】
上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物では、多価アルコールがジエチレングリコールを含み、多塩基酸に対するジシクロペンタジエンの含有割合が上記範囲内であり、かつ、重合性単量体におけるビニルトルエンの含有割合が上記範囲内である。そのため、不飽和ポリエステル樹脂組成物を含むパテ組成物の硬化物の密着性および研磨性(作業性)と、パテ組成物の乾燥性および作業性(パテ塗り付け性)とをバランスよく確保できる。
【0078】
また、パテ組成物の硬化物は、対象物に対する優れた密着性および優れた研磨性(硬さ)が要求される。
【0079】
上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物では、多価アルコールにおけるジエチレングリコールの含有割合が上記下限以上である。そのため、パテ組成物の硬化物の対象物に対する密着性の向上を図ることができる。また、上記した不飽和ポリエステル樹脂組成物では、多価アルコールにおけるジエチレングリコールの含有割合が上記上限以下である。そのため、パテ組成物の硬化物の研磨性(硬さ)の向上を図ることができる。
【実施例
【0080】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
<不飽和ポリエステルの調製>
<<合成例1~合成例6>>
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および攪拌機を備えたフラスコを反応器とした。この反応器に、無水マレイン酸100モル部を仕込み、窒素気流下で加熱溶解した。次いで、反応器内の温度を125℃に加熱して、水を、ジシクロペンタジエン(DCPD)と同モル部反応器内に滴下して投入した。
【0081】
次いで、DCPDを、表1に示す処方となるように、反応器内に滴下して投入した。その後、90分間125℃で攪拌した。これによって、DCPDとマレイン酸の反応生成物を調製した。
【0082】
次いで、反応器の内温を100℃以下に冷却した後、表1に示す多価アルコールを、表1に示す処方となるように反応器に仕込んだ。多価アルコールにおけるジエチレングリコールの含有割合を表1に示す。
【0083】
その後、反応器の内温を180℃~200℃に昇温し、8時間、DCPDおよびマレイン酸の反応生成物と多価アルコールとを反応させた。
【0084】
以上によって、不飽和ポリエステルを得た。
【0085】
<<合成例7~合成例10>>
合成例1~6と同様の反応器に、表1に示す処方となるように、無水マレイン酸と、ジエチレングリコール全量とを仕込み、さらにエチレングリコールを、ジエチレングリコールとエチレングリコールとの仕込みモル部の総和が無水マレイン酸の半分のモル部となるように仕込む(例えば、合成例7の場合、ジエチレングリコール37モル部、エチレングリコール8モル部)。その後、それらを窒素気流下で加熱溶解した。次いで、DCPDを、表1に示す処方となるように、反応器内に滴下して投入した。その後、90分間125℃で攪拌した。次いで、反応器の内温を100℃以下に冷却した後、表1に示す残りの多価アルコールと、無水フタル酸(合成例7のみ)とを、表1に示す処方となるように反応器に仕込んだ。その後、反応器の内温を180℃~200℃に昇温し、8時間、DCPDおよび多塩基酸の反応生成物と多価アルコールとを反応させた。
【0086】
以上によって、不飽和ポリエステルを得た。合成例1~10における不飽和ポリエステルの酸価を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
<パテ組成物の調製>
<<実施例1~実施例11>><<比較例1~比較例7>>
表2、表3に示す処方となるように、各合成例の不飽和ポリエステル65質量部に、重合性単量体35質量部とハイドロキノン0.01質量部とを添加し、均一に混合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0089】
次いで、表2、表3に示す処方となるように、不飽和ポリエステル樹脂組成物に、オクテン酸コバルト溶液(濃度8質量%)0.2質量部とタルク67質量部とを添加して混合した。
【0090】
以上によって、パテ組成物を調製した。
【0091】
<評価>
各実施例および各比較例のパテ組成物に、シクロヘキサノンパーオキサイド溶液(濃度35質量%、硬化剤)2.0質量部を添加して混合し、その後、減圧により、混合物を十分に脱気したものを、亜鉛メッキ鋼板に500μmの厚みとなるように塗工し、各項目を評価した。
【0092】
<<乾燥性>>
各実施例および各比較例のパテ組成物を塗工した亜鉛メッキ鋼板を25℃で60分間放置した。パテ組成物の乾燥性を指触乾燥で評価した。その結果を表2および表3に示す。
○:硬化表面に全くベタツキがない。
△:僅かに指紋が残る。
×:ベタツキが残る。
【0093】
<<密着性>>
各実施例および各比較例のパテ組成物を塗工した亜鉛メッキ鋼板を60℃で15分間放置して硬化させた。次いで、鋼板を90°に折り曲げ、パテ組成物の硬化物の密着性を以下の基準で評価した。その結果を表2および表3に示す。
○:パテ組成物の硬化物に裂け目がはいるが、パテ組成物の硬化物は鋼板から剥がれ落ちない。
△:パテ組成物の硬化物に裂け目がはいり、パテ組成物の硬化物の一部は鋼板から剥がれ落ちる。
×:パテ組成物の硬化物に裂け目がはいり、パテ組成物の硬化物の全てが鋼板から剥がれ落ちる。
【0094】
<<研磨性>>
各実施例および各比較例のパテ組成物を塗工した亜鉛メッキ鋼板を60℃で15分間放置して硬化させた。次いで、#400のサンドペーパーを用いて表面を研磨して、パテ組成物の硬化物の研磨性(硬さ)を以下の基準で評価した。その結果を表2および表3に示す。
○:サンドペーパーは目詰まりをおこさない。
△:サンドペーパーは目詰まりを少しおこす。
×:サンドペーパーの目詰まりが激しい。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】