(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】ウェザーストリップ用の接合シート材、ウェザーストリップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/70 20060101AFI20240419BHJP
B60J 10/15 20160101ALI20240419BHJP
B60J 10/84 20160101ALN20240419BHJP
【FI】
B29C65/70
B60J10/15
B60J10/84
(21)【出願番号】P 2020086087
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(72)【発明者】
【氏名】岡村 聡
(72)【発明者】
【氏名】福島 康宏
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-189774(JP,A)
【文献】特開昭62-141037(JP,A)
【文献】特開2010-120378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0102288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェザーストリップ素材の相対する端部同士を接合するための接合シート材であって、
少なくともEPDMと架橋剤とカーボンブラックとを含む組成物
からなり、
JIS-K6271-1:2015の二重リング電極法(試験片の厚さ:2mm)に基づく体積抵抗率が、1.0×10
6Ω・cm以上であり、
前記組成物を、上型と下型とを有する成形型に配置し、50℃において100Kgf/cm
2で60秒間プレス成形し、成形品を作製したときに、次の式(1):厚さ変化率=〔(プレス解放から30分後の成形品の厚み-成形型の厚み)/成形型の厚み〕×100 (1);で表される前記成形品の厚さ変化率が、100%以下であり、
前記成形型の厚みとは、前記上型と前記下型とで画成される成形空間の厚みである、
ことを特徴とする、ウェザーストリップ用の接合シート材。
【請求項2】
前記接合シート材を構成する前記組成物の全体を100体積%としたときに、前記カーボンブラックの配合割合が、11体積%以上19体積%以下である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の接合シート材。
【請求項3】
前記接合シート材を構成する前記組成物の全体を100体積%としたときに、前記カーボンブラックの配合割合が、11体積%以上16体積%以下である、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の接合シート材。
【請求項4】
端部を有する本体部と、前記本体部の相対する端部同士を接合する接合部と、を備え、
前記接合部が、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合シート材の架橋物からなる、
ことを特徴とする、ウェザーストリップ。
【請求項5】
端部を有する本体部と、前記本体部の相対する端部同士を接合する接合部と、を備えるウェザーストリップであって、
前記接合部が、接合シート材の架橋物からなり、
前記接合シート材は、以下の条件:
少なくともEPDMと架橋剤とカーボンブラックとを含む組成物である;
前記接合シート材を構成する組成物の全体を100体積%としたときに、前記カーボンブラックの配合割合が11体積%以上19体積%以下である;
JIS-K6271-1:2015の二重リング電極法(試験片の厚さ:2mm)に基づく体積抵抗率が、1.0×10
6Ω・cm以上である;
をいずれも具備する、
ことを特徴とする、ウェザーストリップ。
【請求項6】
前記接合シート材の厚みが、1.0mm以下である、
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載のウェザーストリップ。
【請求項7】
端部を有する本体部と、前記本体部の相対する端部同士を接合する接合部と、を備えるウェザーストリップの製造方法であって、
前記本体部を形成するためのウェザーストリップ素材と、
前記接合部を形成するための接合シート材であって、以下の条件:
少なくともEPDMと架橋剤とカーボンブラックとを含む組成物
からなり、
JIS-K6271-1:2015の二重リング電極法(試験片の厚さ:2mm)に基づく体積抵抗率が、1.0×10
6Ω・cm以上であり、
前記組成物を、上型と下型とを有する成形型に配置し、50℃において100Kgf/cm
2で60秒間プレス成形し、成形品を作製したときに、次の式(1):厚さ変化率=〔(プレス解放から30分後の成形品の厚み-成形型の厚み)/成形型の厚み〕×100 (1);で表される前記成形品の厚さ変化率が、100%以下であり、前記成形型の厚みとは、前記上型と前記下型とで画成される成形空間の厚みである;
をいずれも具備する接合シート材と、を用意する、用意工程と、
前記ウェザーストリップ素材の相対する端部の間に前記接合シート材を配置して架橋する、架橋工程と、
を含むことを特徴とする、ウェザーストリップの製造方法。
【請求項8】
前記用意工程において、前記組成物をプレス成形型に投入してプレス成形することにより、前記接合シート材を作製する、
ことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記用意工程において、型閉め時の厚みが0.5mm以上である前記プレス成形型を使用する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記用意工程において、厚みが1.0mm以下の前記接合シート材を用意する、
ことを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェザーストリップ用の接合シート材、ウェザーストリップ及びその製造方法に関する。詳しくは、ウェザーストリップ素材の相対する端部同士を接合するための接合シート材、上記接合シート材を用いてなるウェザーストリップ、及びウェザーストリップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両において、車体パネルの開口部の周縁と、車体パネルに対して開閉可能に取り付けられる開閉部材との間には、両者の間に生じうる隙間をシールするためのウェザーストリップが配設されている。ウェザーストリップの一例として、車体パネルのドア開口部とドアとの間に配設されるドア用ウェザーストリップ(ドアシール、ドアオープニングトリム等ともいう。)が挙げられる。
【0003】
このようなウェザーストリップの製造方法として、例えば特許文献1には、次の工程:ウェザーストリップ素材の一対の端部を所定の間隔をあけて対向させ、当該対向させた端部の間に接合シート材を配置すること;ウェザーストリップ素材と接合シート材とを押し付け合いながら接合シート材を加硫して、ウェザーストリップ素材からなる本体部を、接合シート材からなる接合部で加硫接合すること;を包含する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合シート材は、例えば、未架橋のゴム材料と架橋剤とを含む組成物をプレス成形することによって作製される。接合シート材は、例えば補強性の強化等を目的として、フィラー成分を含むことがある。接合シート材がカーボンブラック等の導電性を有するフィラー成分を含む場合、接合部が電気伝導性を帯びてしまう。ここで、接合部の電気伝導性が高いと、接合部を介して車体パネルに電気化学的な腐蝕(電蝕、錆び)が発生する原因となる。そこで、導電性を有するフィラー成分の配合割合を減らして接合部の電気伝導性を低下させることが考えられる。
【0006】
しかし、本発明者らの検討によれば、導電性を有するフィラー成分の配合割合を単純に減らすと、相対的にゴム材料の配合割合が高くなる。これにより、上記プレス成形後に圧力を解放した際、接合シート材が、弾性的に長手方向の寸法が小さくなった分だけ厚み方向の寸法が大きくなりやすくなる。厚み方向の寸法が大きい接合シート材を用いてウェザーストリップ素材の端部同士を接合すると、接合部の幅が広くなってしまう。その結果、車両にウェザーストリップを装着したときに見栄えが悪くなり、外観品質が低下する課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するべく創出されたものであり、その目的は、見栄えがよく且つ車体パネルの防錆性に優れたウェザーストリップを実現することができるウェザーストリップ用の接合シート材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記接合シート材を用いてなるウェザーストリップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ウェザーストリップ素材の相対する端部同士を接合するための接合シート材である。当該接合シート材は、少なくともEPDMと架橋剤とカーボンブラックとを含む組成物からなり、JIS-K6271-1:2015の二重リング電極法(試験片の厚さ:2mm)に基づく体積抵抗率が、1.0×106Ω・cm以上であり、前記組成物を、上型と下型とを有する成形型に配置し、50℃において100Kgf/cm2で60秒間プレス成形し、成形品を作製したときに、次の式(1):厚さ変化率=〔(プレス解放から30分後の成形品の厚み-成形型の厚み)/成形型の厚み〕×100 (1);で表される前記成形品の厚さ変化率が、100%以下であり、前記成形型の厚みとは、前記上型と前記下型とで画成される成形空間の厚みである、ことを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成によれば、接合シート材のプレス成形後に厚み方向の寸法が大きくなることを抑えることができる。厚み方向の寸法が大きくなることを抑えた接合シート材を用いてウェザーストリップ素材の端部同士を接合することで、接合部が目立ちにくく見栄えの良いウェザーストリップを実現することができる。また、かかる構成によれば、接合部の電気伝導性を抑えることができる。これにより、ウェザーストリップを車両に装着した際に、接合部を介して車体パネルが錆びることを抑制することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記接合シート材を構成する前記組成物の全体を100体積%としたときに、前記カーボンブラックの配合割合が、11体積%以上19体積%以下である、ことを特徴とするものである。かかる構成によれば、カーボンブラックの配合割合を体積比で規定し、上記範囲とすることで、見栄えがよく且つ車体パネルの防錆性に優れたウェザーストリップを好適に実現することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記接合シート材を構成する前記組成物の全体を100体積%としたときに、前記カーボンブラックの配合割合が、11体積%以上16体積%以下である、ことを特徴とするものである。かかる構成によれば、カーボンブラックの配合割合を体積比で規定し、上記範囲とすることで、車体パネルが錆びることを高いレベルで抑制することができる。
【0012】
請求項4の発明は、端部を有する本体部と、前記本体部の相対する端部同士を接合する接合部と、を備えるウェザーストリップである。当該ウェザーストリップは、前記接合部が、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合シート材の架橋物からなる、ことを特徴とするものである。かかる構成によれば、外観品質と車体パネルの防錆性とに優れたウェザーストリップを好適に実現することができる。
【0013】
請求項5の発明は、端部を有する本体部と、前記本体部の相対する端部同士を接合する接合部と、を備えるウェザーストリップである。当該ウェザーストリップは、前記接合部が、接合シート材の架橋物からなり、前記接合シート材は、以下の条件:少なくともEPDMと架橋剤とカーボンブラックとを含む組成物である;前記接合シート材を構成する組成物の全体を100体積%としたときに、前記カーボンブラックの配合割合が11体積%以上19体積%以下である;JIS-K6271-1:2015の二重リング電極法(試験片の厚さ:2mm)に基づく体積抵抗率が、1.0×106Ω・cm以上である;をいずれも具備する、ことを特徴とするものである。かかる構成によれば、外観品質と車体パネルの防錆性とに優れたウェザーストリップを好適に実現することができる。
【0014】
請求項6の発明は、請求項4又は5の発明において、接合シート材の厚みが、1.0mm以下である、ことを特徴とするものである。かかる構成によれば、接合部がより目立ちにくくなり、ウェザーストリップの外観品質をさらに向上することができる。
【0015】
請求項7の発明は、端部を有する本体部と、前記本体部の相対する端部同士を接合する接合部と、を備えるウェザーストリップの製造方法である。当該製造方法は、前記本体部を形成するためのウェザーストリップ素材と、前記接合部を形成するための接合シート材であって、以下の条件:少なくともEPDMと架橋剤とカーボンブラックとを含む組成物からなり、JIS-K6271-1:2015の二重リング電極法(試験片の厚さ:2mm)に基づく体積抵抗率が、1.0×106Ω・cm以上であり、前記組成物を、上型と下型とを有する成形型に配置し、50℃において100Kgf/cm2で60秒間プレス成形し、成形品を作製したときに、次の式(1):厚さ変化率=〔(プレス解放から30分後の成形品の厚み-成形型の厚み)/成形型の厚み〕×100 (1);で表される前記成形品の厚さ変化率が、100%以下であり、前記成形型の厚みとは、前記上型と前記下型とで画成される成形空間の厚みである;をいずれも具備する接合シート材と、を用意する、用意工程と、前記ウェザーストリップ素材の相対する端部の間に前記接合シート材を配置して架橋する、架橋工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成によれば、上記接合シート材を架橋接合することにより、本体部の間に接合部を形成することができる。これにより、本体部と接合部とを強固に接合することができる。また、外観品質と車体パネルの防錆性とに優れたウェザーストリップを好適に製造することができる。
【0017】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記用意工程において、前記組成物をプレス成形型に投入してプレス成形することにより、前記接合シート材を作製する、ことを特徴とするものである。かかる構成によれば、接合部を効率的に形成することができ、ウェザーストリップの生産性を向上することができる。
【0018】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記用意工程において、型閉め時の厚みが0.5mm以上である前記プレス成形型を使用する、ことを特徴とするものである。かかる構成によれば、プレス成形後の離型性を良好なもとのすることができる。これにより、ウェザーストリップを安定して製造することができ、成形性や作業性を向上することができる。
【0019】
請求項10の発明は、請求項7~9のいずれか1項の発明において、前記用意工程において、厚みが1.0mm以下の前記接合シート材を用意する、ことを特徴とするものである。かかる構成によれば、接合部がより目立ちにくくなり、外観品質に特に優れたウェザーストリップを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウェザーストリップを示す正面図である。
【
図2】
図1のウェザーストリップを一部破断した部分斜視図である。
【
図3】接合シート材の作製方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」及び「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0022】
≪ウェザーストリップ≫
図1は、本発明の一実施形態に係るウェザーストリップ10を示す正面図である。ウェザーストリップ10は、車体パネルのバックドアの周辺(被取付部)に装着され、バックドア開口部とバックドアとの隙間をシールするものである。これにより、外部から風雨や挨、騒音等が侵入することを防止して、車内の快適性を向上することができる。ウェザーストリップ10は、ここでは環状(リング状)である。ウェザーストリップ10は、一対の端部20aを有する本体部20と、本体部20の相対する端部20a同士を接合する接合部30と、を備えている。なお、ここでは本体部20と接合部30とがそれぞれ1つであるが、本体部20及び/又は接合部30は、2つ以上の複数であってもよい。本体部20は、例えば第1の本体部及び第2の本体部を備え、第1の本体部の一対の端部と、第2の本体部の一対の端部と、第1の本体部の端部と第2の本体部の端部とを接合する接合部30と、を備えていてもよい。
【0023】
図2は、ウェザーストリップ10を一部破断した部分斜視図である。本体部20は、後述するウェザーストリップ素材で構成されている。本体部20は、典型的には押出成形の手法によって、一体的に連続成形されている。本体部20は、可撓性を有しているとよい。本体部20の一対の端部20aは略同形状で、略同等の断面積を有する(製造誤差は許容しうる。)。本体部20は、ここでは、断面が略U字形状の取付部22と、中空のシール部24と、を備えている。
【0024】
取付部22は、ウェザーストリップ10を車体パネルに固定するための部位である。取付部22は、車体パネルの被取付部に取り付けられる。ここでは、バックドアの開口縁に沿って設けられたフランジ(図示せず)に取り付けられる。取付部22は、略U字形状に屈曲形成された芯金22aと、芯金22aを被覆する被覆部22bと、を備えている。芯金22aは、インサート成形によって被覆部22bの内部に埋設されている。取付部22の内壁面には、複数の保持リップ23(
図2では4つ)が設けられている。複数の保持リップ23は、それぞれ略U字形状の取付部22の内方に向けて延びている。複数の保持リップ23は、車内側と車外側とで対をなすように対向配置されている。保持リップ23は、車体パネルの被取付部(フランジ)を車内側と車外側との両側から挟み込むことで、被取付部を挟持する。
【0025】
シール部24は、バックドアの閉鎖時にバックドア開口部とバックドアとの隙間をシールする部位である。シール部24は、典型的には取付部22よりも柔軟性が高い。シール部24は、弾性変形可能なように構成されている。バックドアを閉めた際にバックドアがシール部24に当接すると、シール部24が弾性変形される。これにより、バックドア開口部とバックドアとの隙間がシール部24でシールされる。なお、シール部は、
図2のような中空形状に限らず、例えばリップ形状であってもよい。
【0026】
接合部30は、本体部20の一対の端部20aの間に介在されている。接合部30は、本体部20を継ぎ合わせる継ぎ目となる部位である。接合部30は、後述する接合シート材3(
図3参照)の架橋物で構成されている。接合部30は、可撓性を有しているとよい。接合部30は、ウェザーストリップ素材と親和性の高い(馴染みやすい)材料で構成されている。接合部30は、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM:Ethylene Propylene Diene (M-Class) Rubber)の架橋物と、カーボンブラックと、を含んでいる。接合部30は、EPDMの架橋物を第1成分(質量比で最も配合割合の高い成分。以下同じ。)として構成されていてもよいし、EPDMの架橋物を主体(接合部30全体の50体積%以上を占める成分。以下同じ。)として構成されていてもよい。
【0027】
≪ウェザーストリップの製造方法≫
ウェザーストリップ10は、ウェザーストリップ素材の相対する端部の間に接合シート材3(
図3参照)を配置し、接合シート材3を介してウェザーストリップ素材の端部同士を接合することで作製することができる。ウェザーストリップ10は、例えば以下のような用意工程と加硫接合工程とを含む製造方法によって製造することができる。なお、加硫接合工程は、架橋工程の一例である。また、任意の段階においてその他の工程を含むことは妨げられない。以下、各工程について説明する。
【0028】
用意工程では、ウェザーストリップ素材と、接合シート材3(
図3参照)と、を用意する。ウェザーストリップ素材は、ウェザーストリップ10の本体部20を形成するためのものである。ウェザーストリップ素材については従来この種の用途に用いられているものと同様でよく、その材質や性状、形状等は特に限定されない。ウェザーストリップ素材は、例えば、EPDM、クロロプレンゴム等のゴムで構成されていてもよい。ウェザーストリップ素材は、加硫が完了した状態であってもよい。ウェザーストリップ素材は、取付部22を構成する部分と、中空のシール部24を構成する部分と、を備えていてもよい。ウェザーストリップ素材は、取付部22を構成する部分と、シール部24を構成する部分とで、材質や性状が異なっていてもよい。
【0029】
接合シート材3(
図3参照)は、ウェザーストリップ10の接合部30を形成するためのものである。接合シート材3は、ウェザーストリップ素材の相対する端部同士を接合するためのものである。接合シート材3は、その厚みt(
図3参照)が、概ね5.0mm以下、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下、特に好ましくは1.0mm以下、さらには0.9mm以下であるとよい。これにより、接合部30がより目立ちにくく特に外観品質に優れたウェザーストリップ10を製造することができる。接合シート材3の厚みtは、概ね0.1mm以上、例えば0.3mm以上、0.5mm以上であってもよい。
【0030】
接合シート材3は、必須の成分として、未架橋のエチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)と、架橋剤と、カーボンブラックと、を含む組成物である。接合シート材3は、ここでは、未加硫のEPDMと、加硫剤と、カーボンブラックと、を含む組成物である。接合シート材3は、EPDMを第1成分として構成されていてもよいし、EPDMを主体として構成されていてもよい。なお、接合シート材3の詳細については、後程詳しく述べる。
【0031】
接合シート材3は、従来公知の方法、例えば、型成形、押し出し成型、ロール成形、カレンダー成形等によって、作製することができる。好適な一態様において、接合シート材3は、例えば以下のように作製することができる。
【0032】
図3は、接合シート材3の作製方法の一例を示す断面図である。この作製方法では、流動性を有する塊状の組成物1を、シート成形型5でシート状に型成形することにより、接合シート材3を作製する。詳しくはまず、
図3(A)に示すように、組成物1とシート成形型5とを用意する。組成物1は、少なくとも上記した接合シート材3の必須の成分(すなわち、EPDMと架橋剤とカーボンブラックと)を含んでいる。組成物1は、ペースト状やペレット状であってもよい。シート成形型5は、プレス成形型の一例である。シート成形型5は、ここでは、成形空間6を有する下型5aと、下型5aの成形空間6を塞ぐ上型5bと、を備えている。
【0033】
下型5aの成形空間6は、型閉め時の厚み(平均厚み)tmが、概ね0.1mm以上、好ましくは0.5mm以上であるとよい。これにより、型成形後の接合シート3の剛性低下を抑制でき、離型性を良好なものとすることができ、成形性や作業性を向上することができる。また、型閉め時の厚みtmは、概ね5.0mm以下、好ましくは3.0mm以下、2.0mm以下、例えば1.0mm以下であるとよい。これにより、接合部30がより目立ちにくく特に外観品質に優れたウェザーストリップ10を製造することができる。
【0034】
次に、用意した下型5aの成形空間6に組成物1を投入する。次に、
図3(B)に示すように、下型5aに対して上型5bを閉じ、下型5aと上型5bとで組成物1を挟み込む。なお、このとき適宜、シート成形型5に加熱や加圧(プレス)等を施してもよい。これにより、組成物1がシート状に成形される。次に、
図3(C)に示すように、上型5bを開いて、接合シート材3を下型5aから取り出す。このとき、従来であれば、上述の通り、例えば付加していた圧力を解放して、シート成形型5から接合シート材3を取り出すと、接合シート材が弾性的に変形しやすい。詳しくは、長手方向の寸法が小さくなった分だけ、厚み方向の寸法が大きくなりやすい。これに対して、本発明では、接合シート材3の厚み方向の寸法が大きくなることを抑制することができる。以上のようにして、
図3(D)に示すように、略均質な厚みtの接合シート材3を作製することができる。
【0035】
加硫接合工程では、例えばまず、ウェザーストリップ素材の一対の端部を、所定の間隔をあけて対向させる。次に、相対する端部の間に接合シート材3を配置する。次に、接合シート材3を加硫して、EPDMを架橋硬化させる。これにより、ウェザーストリップ素材の端部同士が接合シート材3を介して架橋接合(ここでは加硫接合)される。ウェザーストリップ素材の端部同士を接合する方法は特に限定されず、従来と同様であってよい。好適な一態様において、本工程は、例えば特許文献1に記載されるような製造装置を用いて行うことができる。特許文献1に記載される製造装置は、対向配置された一対の保持型を有し、当該一対の保持型を相対的に近づく方向及び遠ざかる方向に移動可能な保持機構と、保持型を加熱する加熱用ヒータと、を備えている。
【0036】
この製造装置を用いて本工程を行う場合、例えばまず、加硫が完了しているウェザーストリップ素材の相対する端部を、一対の保持型にそれぞれセットする。また、一対の保持型の間に接合シート材3をセットする。次に、一対の保持型を相対的に近づけ、接合シート材3を間に挟んで当接させる。この状態で加熱用ヒータを駆動して、接合シート材3のウェザーストリップ素材と接している部分(接触面部分)を加熱する。加熱温度は、少なくとも接合シート材3の接触面部分での架橋反応(加硫反応)が促進されるように調整するとよい。例えば、一対の保持型を、概ね180℃以上、例えば180~250℃で加熱するとよい。これにより、接合シート材3の接触面部分を軟化させてウェザーストリップ素材と馴染ませると共に、接合シート材3を好適に架橋硬化させることができる。
【0037】
以上のように、特許文献1に記載されるような製造装置を用いて本工程を行うことにより、シール部24の良好なシール性を維持したまま、ウェザーストリップ素材の相対する端部同士を接合して一体化することができる。
【0038】
≪ウェザーストリップ用の接合シート材≫
次に、接合シート材3について説明する。上述の通り、接合シート材3は、ウェザーストリップ10の接合部30を形成するためのものである。接合シート材3は、ウェザーストリップ素材の相対する端部同士を接合するために用いられるものである。接合シート材3は、必須の配合成分として、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)と、架橋剤と、カーボンブラックと、を含む組成物である。
【0039】
EPDMは、エチレンとプロピレンとジエンとを共重合させて得られるベースポリマーである。EPDMとしては特に限定されず、従来のこの種の用途に用いられているものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。特に限定されるものではないが、接合シート材3を構成する組成物の全体を100体積%としたときに、EPDMの配合割合は、カーボンブラックの配合割合よりも多いとよく、概ね30体積%以上、典型的には40体積%以上、例えば50体積%以上であって、概ね89体積%以下、典型的には80体積%以下、例えば70体積%以下、さらには60体積%以下であるとよい。EPDMの含有割合を所定値以上とすることで、耐水性、耐候性、耐熱性、及び弾性のうちの少なくとも1つを向上することができる。また、EPDMの含有割合を上記範囲とすることで、見栄えがよく且つ車体パネルの防錆性に優れたウェザーストリップを好適に実現することができる。
【0040】
架橋剤は、EPDMを架橋させるための成分である。架橋剤としては特に限定されず、従来のこの種の用途に用いられているものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。架橋剤の一例として、加硫剤が挙げられる。具体例として、硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド(DTDM)、ジチオジカプロラクタム(DTDC)、アルキルフェノール・ジスルフィド(APDS)等の硫黄系架橋剤が挙げられる。特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、架橋剤の配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、概ね0.1~20質量部、典型的には0.2~10質量部、例えば0.5~5質量部であるとよい。
【0041】
カーボンブラックは、EPDMをベースポリマーとする組成物に添加することで、組成物の機械的特性(例えば強度)を向上させる成分である。カーボンブラックとしては特に限定されず、従来のこの種の用途に用いられているものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。特に限定されるものではないが、カーボンブラックの平均粒子径(電子顕微鏡観察に基づく個数基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径。)は、概ね1~1000nm、好ましくは10~100nm、例えば40~90nmであるとよい。また、カーボンブラックの比表面積(窒素ガスを用いた定容量式吸着法(窒素ガス吸着法)で測定された表面積をBET法で解析した値。)は、概ね1~1000m2/g、好ましくは10~100m2/g、例えば20~50m2/gであるとよい。また、ヨウ素吸着量(JIS-K6217-1:2015に準拠して測定された値。)は、概ね1~100mg/g、好ましくは10~50mg/g、例えば20~40mg/gであるとよい。また、カーボンブラックのDBP吸収量(JI-K6217-1:2008に準拠して測定された値。)は、概ね10~1000ml/100g、好ましくは50~200ml/100g、例えば100~150ml/100gであるとよい。上記性状のうちの少なくとも1つ(好ましくは2つ以上)を満たすことで、接合シート材3を作成する際の作業性や、接合シート材3の補強性、外観品質、及び車体パネルの防錆性のうちの少なくとも1つを向上することができる。
【0042】
特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、カーボンブラックの配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、概ね1~200質量部、典型的には10~100質量部、例えば40~80質量部、60~74質量部であるとよい。カーボンブラックの含有割合を上記範囲とすることで、接合シート材3に好適な補強性を付与することができる。
【0043】
特に限定されるものではないが、接合シート材3を構成する組成物の全体を100体積%としたときに、カーボンブラックの配合割合は、概ね5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは11体積%以上、特に好ましくは15体積%以上であるとよい。カーボンブラックの配合割合は、EPDMの配合割合よりも少ないとよく、概ね30体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは19体積%以下、特に好ましくは16体積%以下であるとよい。カーボンブラックの配合割合を体積比で規定し、所定値以上とすることで、接合部30が目立ちにくく見栄えの良いウェザーストリップ10を実現することができる。また、カーボンブラックの配合割合を体積比で規定し、所定値以下とすることで、所望の体積抵抗率を好適に実現することができ、接合部30を介して車体パネルが錆びることを高いレベルで抑制することができる。
【0044】
なお、ここでカーボンブラックの配合割合を体積基準で規定したのは、配合成分によって比重が大きく異なるためである。例えば、カーボンブラック(比重:1.8)と、EPDM(比重:0.87)とでは、比重が2倍以上異なる。また、カーボンブラック(比重:1.8)と、後述する加硫活性剤、例えば酸化亜鉛(比重:5.2)とでは、比重が5倍以上異なりうる。本発明者らの検討によれば、カーボンブラックの配合割合を体積基準で規定することにより、質量基準で規定するよりも、ここで開示される技術の効果を発揮し得る範囲を正確に規定することができる。
【0045】
接合シート材は、上記したEPDM、架橋剤、カーボンブラックに加えて、その他の配合成分(任意成分)を含んでもよい。任意成分としては、例えば、可塑剤(軟化剤)、カーボンブラック以外のフィラー、加硫活性剤、加硫促進剤、加工助剤、脱泡剤、発泡剤、老化防止剤、着色剤、等が挙げられる。これらの任意成分は、従来のこの種の用途に用いられているものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、任意成分の合計の配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、概ね100質量部以下であるとよく、例えば10~100質量部、30~80質量部、50~70質量部であってもよい。
【0046】
可塑剤としては、例えば、パラフィン系等のプロセスオイル等が挙げられる。特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、可塑剤の配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、概ね10~80質量部、典型的には20~70質量部、例えば30~60質量部であってもよい。可塑剤の含有割合を所定値以上とすることで、組成物1の粘性を下げて、接合シート材3を作成する際の作業性を向上することができる。さらに、電気伝導性の抑えられた接合部30を好適に実現することができる。また、可塑剤の含有割合を所定値以下とすることで、接合シート材3の剛性を向上することができる。
【0047】
カーボンブラック以外のフィラーとしては、例えば、一般に白色無機フィラーと呼ばれている絶縁性の無機フィラーが挙げられる。具体例として、クレー、タルク、珪藻土、マイカ、ケイ酸、ケイ酸塩、炭酸カルシウム等が挙げられる。特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、カーボンブラック以外のフィラー(典型的には白色無機フィラー)の配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、通常カーボンブラックの配合比よりも少なく、概ね20質量部以下、典型的には10質量部以下、例えば5質量部以下であってもよい。
【0048】
加硫活性剤としては、例えば、酸化亜鉛等が挙げられる。特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、加硫活性剤の配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、通常カーボンブラックの配合比よりも少なく、概ね20質量部以下、典型的には10質量部以下、例えば5質量部以下であってもよい。加硫活性剤の配合比PHRは、概ね0.1質量部以上、例えば1質量部以上であってもよい。
【0049】
加硫促進剤としては、例えば、チラウム系のDPTT(ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド)、ジチオカルバミン酸塩系のZnEPDC(エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛)、チアゾール系のMDB(2-モリホルノジチオ―1,3-ベンゾチアゾール)等が挙げられる。特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、加硫促進剤の配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、通常カーボンブラックの配合比よりも少なく、概ね20質量部以下、典型的には10質量部以下、例えば5質量部以下であってもよい。加硫促進剤の配合比PHRは、概ね0.1質量部以上、例えば1質量部以上であってもよい。
【0050】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸や、脂肪酸エステル等の滑剤が挙げられる。特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、加工助剤の配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、通常カーボンブラックの配合比よりも少なく、概ね20質量部以下、典型的には10質量部以下、例えば5質量部以下であってもよい。加工助剤の配合比PHRは、概ね0.1質量部以上、例えば1質量部以上であってもよい。
【0051】
脱泡剤としては、例えば、酸化カルシウム等が挙げられる。特に限定されるものではないが、EPDMを100質量部としたときに、脱泡剤の配合比PHR(Per Hundred Rubber)は、通常カーボンブラックの配合比よりも少なく、概ね30質量部以下、典型的には20質量部以下、例えば10質量部以下であってもよい。脱泡剤の配合比PHRは、概ね0.1質量部以上、典型的には1質量部以上、例えば5質量部以上であってもよい。また、発泡剤としては、例えば、OBSH(p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)、重曹、熱膨張性マイクロカプセル等が挙げられる。
【0052】
接合シート材3を構成する組成物は、所定の成形型(例えば
図3(A)に示すようなシート成形型5)に配置し、50℃において100Kgf/cm
2で60秒間プレス成形し、成形品を作製したときに、上記した式(1)で表される厚さ変化率が、100%以下であるとよい。厚さ変化率は、80%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましい。これにより、プレス成形後の組成物の厚み方向の寸法が大きくなることを抑えることができ、ウェザーストリップ10を車両に装着した際に接合部30が目立ちにくくなる。したがって、ウェザーストリップ10の外観品質を向上することができる。厚さ変化率は、典型的には0%を超え、概ね10%以上、20%以上、例えば50%以上であってもよい。
【0053】
接合シート材3は、体積抵抗率(JIS-K6271-1:2015の二重リング電極法(試験片の厚さ:2mm)に準拠して測定された値。)が、1.0×106Ω・cm以上であるとよい。体積抵抗率は、1.5×106Ω・cm以上であることが好ましく、1.9×106Ω・cm以上であることがより好ましい。これにより、接合部30の電気伝導性を抑えることができ、ウェザーストリップ10を車両に装着した際に、接合部30を介して車体パネルが錆びることを抑制することができる。
【0054】
以上のように、接合シート材3によれば、ウェザーストリップ素材の相対する端部の間に違和感のない接合部30を形成することができる。これにより、本体部20と接合部30とが連続した一体感が得られ、見栄えの良いウェザーストリップ10を実現することができる。また、接合シート材3によれば、接合部30の電気伝導性が抑えられ、接合部30を介して車体パネルが錆びにくいウェザーストリップ10を実現することができる。さらに、車両のドア開口部とドアとを隙間なく塞いで、優れたシール性を実現することができる。
【0055】
ここに開示される技術は、あらゆる形態のウェザーストリップに適用することができる。例えば、車両のドア部(例えば、バックドア部、フロントドア部、リアドア部)、トランク部、サンルーフ部等において、開口部の周縁と開閉部材との間をシールするウェザーストリップに適用することができる。なかでも、
図1に示すような環状のウェザーストリップ10に好適に適用することができる。
【0056】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0057】
[組成物(実施例1~3、比較例1,2)の調製]
表1に示す配合成分を表2に示す配合比PHR(Per Hundred Rubber)で配合し、混練機で混練することによって、実施例1~3及び比較例1,2の組成物をそれぞれ調製した。なお、実施例1~3及び比較例1,2の組成物は、カーボンブラックの種類及び/又は配合割合のみが相互に異なっている。そして、各組成物について、以下のように、電気伝導性(体積抵抗率)、厚さ変化率、及び外観品質を評価した。
【0058】
【0059】
【0060】
[カーボンブラックの配合割合(体積基準)の計算式]
なお表2には、下記の計算式から算出した体積基準のカーボンブラックの配合割合(組成物の全体を100体積%としたときの体積%)をあわせて示している。
各配合成分の容量Vi=配合比PHR/比重
カーボンブラックの配合割合(体積%)=(カーボンブラックの容量/配合全体の容量ΣVi)×100
【0061】
例えば、実施例3の場合は、各配合成分の容量Viと配合割合(体積基準)とを、表3に示すように算出することができる。
【0062】
【0063】
[電気伝導性(体積抵抗率)の評価]
まず、上記調製した組成物を、プレス成型によって厚さ2mmのシート状に成形して、試験片を作製した。次に、JIS-K6271-1:2015の二重リング電極法に準拠して、体積抵抗率を測定した。なお、試験装置としては、デジタル超高抵抗/微小電流計5451(株式会社エーディーシー社製)を使用した。体積抵抗率(ρ)は、次の式(2): ρ(単位:Ω・cm)=(V/I)×(π×d2)/(4×t) (2);によって算出した。ここで、Vは、試験片に印加した電圧(ボルト)であり、Iは、電圧印加1分後の電流(アンペア)であり、πは、円周率であり、dは、主電極の外径(cm)であり、tは、試験片の厚み(cm)である。そして、体積抵抗率が1.0×106Ω・cm以上だったものを「〇」と判定し、体積抵抗率が1.0×106Ω・cm未満だったものを「×」と判定した。結果を、表2に示す。
【0064】
[厚さ変化率の評価]
まず、上記調製した組成物を、
図3(A)のシート成形型5(型閉め時の厚みt
m:0.5mm)に投入し、50℃において、100Kgf/cm
2で60秒間プレス成形し、成形品を作製した。次に、プレス解放から30分後の成形品の厚み(mm)を読み取り、上記した式(1)から、成形品の厚さ変化率(%)を算出した。そして、厚さ変化率が100%以下(言い換えれば、プレス解放から30分後の成型品の厚みtが、成形型の型閉め時の厚みt
mの2倍以下)だったものを「〇」と判定し、厚さ変化率が100%を超えたものを「×」と判定した。結果を、表2に示す。
【0065】
[外観品質の評価]
上記した厚さ変化率の測定用に作製した成型品を用いて、ウェザーストリップ素材の相対する端部同士を接合した。具体的には、特許文献1に記載されるような製造装置を用いて型成形を行い、ウェザーストリップ素材の一対の端部の間に接合部を形成した。これにより、ウェザーストリップ素材からなる本体部の間に上記成形品からなる接合部を備えたウェザーストリップを得た。そして、得られたウェザーストリップについて、目視で外観品質を評価した。結果を、表2に示す。なお、表2では、比較例1のウェザーストリップを基準として、それよりも接合部が目立たないものを「良」と判定し、特に外観品質に優れるものを「優」と判定した。
【0066】
表2の評価結果に示すように、比較例1では、体積抵抗率が1.0×106Ω・cm以上で電気伝導性が抑えられていたものの、厚さ変化率が100%を大きく超えていた。また、比較例2では、厚さ変化率が100%以下に抑えられていたものの、体積抵抗率が1.0×106Ω・cmを大きく下回る結果となった。これに対して、実施例1~3はいずれも、体積抵抗率が1.0×106Ω・cm以上であり、電気伝導性が抑えられていた。また、厚さ変化率が100%以下であり、比較例1に比べて相対的に接合部が目立ちにくく見栄えの良いウェザーストリップが実現されていた。
【0067】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 組成物
3 接合シート材
5 シート成形型
6 成形空間
10 ウェザーストリップ
20 本体部
20a 端部
30 接合部