(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20240419BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20240419BHJP
【FI】
H01L33/00 Z
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2020100941
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大熊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】島袋 力
【審査官】八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-047874(JP,A)
【文献】特開2013-168586(JP,A)
【文献】特開2015-015276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0353004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板上に設けられ、上面を有する底部及び前記底部の前記上面に配されかつ前記底部の前記上面の1の領域を露出する開口を有する枠部からなる保持体と、
前記底部の前記上面の前記1の領域に載置された発光素子と、
前記開口を覆うように前記枠部に保持された光散乱部材と、
前記光散乱部材の上面に形成された透光性導電膜と、
各々の一端が前記透光性導電膜に接続され、各々の他端が前記回路基板に接続されている第1の複数の配線及び前記回路基板に固定されかつ前記第1の複数の配線全体を担持するフレキシブルプリント回路基板を備える配線構造体と、
を含
み、
前記配線構造体の前記フレキシブルプリント回路基板は前記透光性導電膜の上面に沿って延在し、かつ前記透光性導電膜を露出する開口部を有し、
前記配線構造体の前記フレキシブルプリント回路基板は、前記保持体の前記枠部上に配されておりかつ前記開口部を有する上部と、前記上部から前記保持体の前記枠部の外側面に沿って延在する袖部とを有し、前記袖部は前記回路基板を介して接地されている金属膜を担持していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記配線構造体の前記フレキシブルプリント回路基板は、前記保持体を跨ぐように延在し、前記保持体を挟み込む2つの位置において前記回路基板に固定されていることを特徴とする請求項
1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記枠部の上面には導電体が配され、
前記配線構造体は、前記フレキシブルプリント回路基板に担持され、各々の一端が前記導電体に接続されかつ各々の他端が前記回路基板に接続されている第2の複数の配線を有することを特徴とする請求項1
又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記透光性導電膜は、前記光散乱部材の上面に亘って形成されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項5】
前記透光性導電膜は、ITO、ATO、IGZOのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を出射する発光素子を光源に用い、当該レーザ光を回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)に通して配光パターンを制御する発光装置が知られている。このような発光装置では、DOEの脱落によって所定の配光パターンが乱れることや、発光素子のレーザ光が直接出射される等の不具合を起こす。そのため、DOEの脱落を検知し、光照射を停止する等の工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、成形パッケージ構造体と、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)素子と、成形パッケージ構造体に導通接点を有する光学素子とを備えたVCSEL照明器モジュールが開示されている。特許文献1によれば、光学素子が部分的に又は完全に成形パッケージ構造体から取り外された際、制御回路がVCSEL素子の光照射を停止させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発光装置では、成形パッケージ構造体と光学素子との導通接点における導通が失われた際においてのみVCSEL素子の光照射が停止される。そのため、例えば、導通接点に関与しない位置において光学素子に亀裂が生じた場合、すなわち、導通接点における導通が失われずに光学素子の損傷が発生した場合には、当該損傷が検知されず、発光装置から所定の基準を満たさない配光パターンにて出射光が出射してしまう可能性があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、光学素子のいずれの領域に損傷が生じた場合であっても当該損傷を容易に検出することが可能な発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される発光装置は、回路基板と、前記回路基板上に設けられ、上面を有する底部及び前記底部の前記上面に配されかつ前記底部の前記上面の1の領域を露出する開口を有する枠部からなる保持体と、前記底部の前記上面の前記1の領域に載置された発光素子と、前記開口を覆うように前記枠部に保持された光散乱部材と、前記光散乱部材の上面に形成された透光性導電膜と、各々の一端が前記透光性導電膜に接続され、各々の他端が前記回路基板に接続されている第1の複数の配線及び前記回路基板に固定されかつ前記第1の複数の配線全体を担持するフレキシブルプリント回路基板を備える配線構造体と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学素子のいずれの領域に損傷が生じた場合であっても当該損傷を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る発光装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】実施例1に係る発光装置の光散乱部材の損傷検出状況を模式的に示す図である。
【
図7】実施例3に係る発光装置の構成を示す斜視図である。
【
図8】実施例4に係る発光装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照して具体的に説明する。なお、図面において同一の構成要素については同一の符号を付け、重複する構成要素の説明は省略する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る発光装置10の構成を示す斜視図である。回路基板20は、例えば、発光装置10と他の電子部品を実装させることが可能な基板であって、平板状に形成されている。回路基板20は、例えば、ガラスエポキシ材(FR-4)、またはアルミナ(Al
2O
3)等の絶縁基板に銅等の導電体で配線がパターニングされたプリント基板である。回路基板20は、本実施例では、矩形の平面形状を有している。
【0012】
保持体30は、回路基板20上に配された上面形状が矩形の平板状の底部31と当該底部31の上面の外縁に沿って延在している枠部33を備える。保持体30は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナ(Al2O3)等のセラミック基板から構成されている。枠部33は、底部31の上面を露出する開口33Hを有している。
【0013】
発光素子40は、底部31上に配され、上面に発光面を有する発光素子である。発光素子40は、例えば、赤外領域の波長範囲のレーザ光が基板面に垂直に射出される垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)素子である。本実施例のVCSEL素子には、複数のレーザ光の出射領域が格子状に配列されたアレイ型VCSEL素子を用いている。
【0014】
光散乱部材50は、発光素子40の上方において枠部33に保持されている上面形状が矩形の平板状の透光部材である。光散乱部材50は、発光素子40から射出された光の配光パターンを制御する透光性部材である。光散乱部材50は、例えば、石英ガラス等の表面にレーザ光の回折現象を発生させる微細構造パターンを備えた回折光学素子(DOE)である。
【0015】
透光性導電膜60は、光散乱部材50の上面に亘って形成されている透光性の導電体膜である。透光性導電膜60は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)やアンチモン酸化スズ(ATO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の透光性金属からなっている。
【0016】
配線構造体70は、例えば、ポリイミドを用いた薄膜状の絶縁性フィルムを基材とし、当該基材に担持された銅箔による複数の配線を備えたフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuits:FPC)である。
【0017】
配線構造体70は、回路基板20の上面に固定されている基板側固定部71、透光性導電膜60を介して光散乱部材50の上面に固定されている部材側固定部72、及び基板側固定部71と部材側固定部72を接続する接続部73を有している。
【0018】
部材側固定部72は、枠部33に沿って枠状に延在しており、中央に開口部72Oを有している。部材側固定部72は、部材側固定部72の下面に互いに離間して形成された、複数の導電性の部材によって、透光性導電膜60に接続されている。
【0019】
上述の複数の導電性の部材の各々には、上記した配線構造体70の基材に担持されている複数の配線の各々の一端(部材側固定部72側の端部)が接続されている。
【0020】
当該複数の配線の各々は、接続部73を介して基板側固定部71まで伸張し、他端(基板側固定部71側の端部)において、回路基板20上の配線(図示せず)に接続されている。
【0021】
判定回路ICは、回路基板20に設けられている集積回路である。判定回路ICは、上述した配線構造体70の基材に担持されている複数の配線の各々の他端(基板側固定部71側の端部)に接続されている端子を有し、当該端子と電気的に接続されている透光性導電膜60の電気抵抗や電気抵抗率の検知が可能である。
【0022】
図2は、発光装置10の上面図である。上述したように、配線構造体70は、基板側固定部71、部材側固定部72、及び基板側固定部71と部材側固定部72を接続する接続部73を有している。
【0023】
第1の複数の配線としての配線75は、上述したように、配線構造体70の基材に担持されている銅箔によって形成された配線である。本実施例において、配線構造体70は、2枚の薄膜状の絶縁性フィルムからなる基材を有し、当該2枚の薄膜状の絶縁性フィルムによって複数の配線75が挟持される構造を有している。
【0024】
上述のように、複数の配線75の各々は、互いに離隔しつつ基板側固定部71から部材側固定部72まで伸張している。本実施例においては、配線構造体70は、配線75を4本有している。
【0025】
基板側固定部71は、上面形状が長方形を有し、長手方向の一辺が接続部73に接続されている。基板側固定部71は、下面に互いに離間して一列に形成された4つの開口71Hを備えている。この開口71Hの各々から配線75の各々の一端が露出している。
【0026】
開口71Hの各々から露出した配線75の一端は、回路基板20に形成された4本の配線(図示せず)に電気的に接続され、さらに当該4本の配線が回路基板20に実装された当該判定回路ICの所定の端子と電気的に接続されている。
【0027】
部材側固定部72は、上面形状が矩形を有し、上面の外縁の一辺に沿った部分において接続部73に接続されている。部材側固定部72は、上述したように、枠部33に沿って枠状に延在しており、中央に開口部72Oを有している。
【0028】
すなわち、光散乱部材50上に形成された透光性導電膜60は、発光素子40上の部分において、開口部72Oから外部に露出している。言い換えれば、発光素子40から上方に出射された光は、光散乱部材50及び透光性導電膜60を通り、かつ開口部72Oを介して発光装置10の外部に出射される。本実施例において、開口部72Oは、上面視において光散乱部材50及び透光性導電膜60よりも小さい面積を有する。このように、開口部72Oの周囲を囲む部材側固定部72は、透光性導電膜60のガードとして働く。
【0029】
部材側固定部72は、部材側固定部72の下面に互いに離間して形成され、かつ各々の開口面積が等しい円形の4つの開口72Hを備えている。具体的には、開口72Hの各々は、部材側固定部72の4つの角部分に形成されている。言い換えれば、開口72Hの各々は、矩形(正方形又は長方形)の4つの頂点となるように形成されている。
【0030】
開口72Hの各々から配線75の各々の他端が露出している。配線75の各々は、開口72Hの各々を介して透光性導電膜60に電気的に接続されている。
【0031】
接続部73は、上面形状が長方形状を有し、基板側固定部71の少なくとも一辺と部材側固定部72の少なくとも一辺とを接続している。接続部73は、部材側固定部72から伸長した4本の配線75の各々を内包している。
【0032】
以上、発光装置10を構成する光散乱部材50の上面に設けた透光性導電膜60の電気抵抗率は、配線構造体70の配線75及び回路基板20の配線(図示せず)を介して、回路基板20の他の部分に実装した判定回路ICによって検知可能となる。言い換えれば、発光装置10の透光性導電膜60の電気抵抗率を、判定回路ICによって検知できる回路構成となっている。
【0033】
図3は、発光装置10の3-3線に沿った断面図である。なお、
図3においては、配線構造体70に担持されている配線75を省略して示している。
【0034】
基板配線20A、20Bは、回路基板20上において互いに離隔してパターニングされた金属配線である。基板配線20A及び20Bの各々は、発光装置10の外部の電源(図示せず)に接続されている。
【0035】
基板配線20Cは、回路基板20上において、基板配線20A及び20Bと互いに離隔してパターニングされた金属配線である。基板配線20Cは、上述した配線75と判定回路ICを接続する配線である。基板配線20Cは、一端が上述の判定回路ICに接続されており、他端が開口71Hを介して配線75に接続されている。
【0036】
具体的には、開口71H内には当該開口71Hから露出する配線75に電気的に接続されたニッケル(Ni)/金(Au)層からなる電極71Aが形成されている(表記「a/b」は、a金属層、b金属層の順にて積層された積層金属層を表す)。この電極71Aは、配線75と錫銀銅(Sn-Ag-Cu)からなる導電体51を介して接合されており、基板配線20Cと電気的に接続されている(表記「a-b-c」は、a、b、cからなる合金を表す)。
【0037】
第1の実装電極31A及び第2の実装電極31Bは、保持体30の底部31の下面に互いに離間して形成されているタングステン(W)/ニッケル(Ni)/金(Au)層からなる金属電極である。第1の実装電極31A及び第2の実装電極31Bは、それぞれ基板配線20A及び20BにSn-Ag-Cu導電体からなる接合材52を介して接合されている。
【0038】
第1の給電パッド31C及び第2の給電パッド31Dは、保持体30の底部31の上面に互いに離間して形成されているW/Ni/Au層からなる金属電極である。第1の給電パッド31C上には発光素子40が配されており、第1の給電パッド31Cと発光素子40の下面電極(図示せず)とが金錫(Au-Sn)はんだ等の導電性接合材によって接合されることで互いに電気的に接続されている。第2の給電パッド31Dと発光素子40の上面電極(図示せず)とは金(Au)からなるボンディングワイヤWで接続されている。
【0039】
なお、第1の実装電極31Aと第1の給電パッド31C、第2の実装電極31Bと第2の給電パッド31Dは、それぞれ保持体30の底部31を上下方向に貫通するタングステン(W)からなる貫通ビア31Vによって電気的に接続されている。
【0040】
図3に示すように、枠部33は、枠部33の上部において段差構造を有している。具体的には、枠部33は、上面33S1を有しており、上面33S1から上方に突出した突出部33Aを有している。突出部33Aは、上面33S1の外縁に沿って形成されている。突出部33Aは、上面33S2を備える。
【0041】
光散乱部材50は、透光性の板状部材からなる基部50A及び基部50Aの下面に形成され、微細な凹凸を有する透光性の部材からなる拡散構造部50Bを備える断面構造を有している。
【0042】
拡散構造部50Bは、基部50Aの下面に亘って設けられ、発光素子40から入射された光を光学回折により拡散させる働きを有する。より具体的には、拡散構造部50Bは、発光素子40から出射されるレーザ光を回折させ、平面形状及び高さを有する複数の微細な凹凸構造体によって、ビーム断面が円形且つガウシアン強度分布であるレーザビームを、ビーム断面が矩形且つ均一強度分布で上下左右に拡散角を有する光に変換する。
【0043】
言い換えれば、光散乱部材50は、線状のレーザビームを角錐状に広がる光となるように、配光パターンを変換する配光変換器である。なお、当該配光パターンは、光散乱部材50の拡散構造部50Bの形成面における微細な凹凸構造の配列パターンを調整することにより、六角形、台形等、任意に設定できる。
【0044】
光散乱部材50は、例えば、ガラスからなる基部50Aの下面に樹脂材からなる拡散構造部50Bが貼付されている構造を有していてもよい。また、基部50Aと拡散構造部50Bは、ガラスまたは透光性の樹脂によって一体成型されていてもよい。
【0045】
光散乱部材50は、例えば、側面が突出部33Aの側面と離間するように、上面33S1上に載置されている。光散乱部材50と上面33S1は、接合材(図示せず)を用いて接合されている。また、光散乱部材50の側面と突出部33Aの側面との間隙は、例えば、エポキシ系の封止材55を用いて封止されている。
【0046】
部材側電極72Aは、配線構造体70の部材側固定部72の下面に離間して形成された複数の導電性の部材である。具体的には、部材側電極72Aは、配線75に電気的に接続されており、
図2に示した部材側固定部72の各々の開口面積が等しい円形の開口72Hの各々から、当該開口72Hで画定された形状で下方に突出したNi/Au層等からなる金属電極である。
【0047】
上述の電極(31A、31B、71A、72A)、給電パッド(31C、31D)、貫通ビア(31V)、導電体(51、52)、ボンディングワイヤW、等は目的に応じてタングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Cu)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、錫(Sn)等の導電性金属から適宜選択できる。また、当該部材が積層金属であるか合金であるかについても、目的に応じて適宜選択できる。なお、後述する電極、給電パッド、貫通ビア、導電体についても同様である。
【0048】
部材側電極72Aは、導電ペースト78によって透光性導電膜60の上面に接合されている。すなわち、配線75の各々は、部材側電極72A及び導電ペースト78を介して透光性導電膜60に電気的に接続されている。
【0049】
導電ペースト78は、例えば、はんだ粒子とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂とを混錬させた異方性導電ペーストでも良い。異方性導電ペーストは、そのままでは絶縁体のような振る舞いをするが、加圧されることにより当該加圧部分の加圧方向に沿った方向においてはんだ粒子が凝集して導通状態となる。この際、加圧されていない部分については絶縁状態のままである。
【0050】
本実施例においては、異方性導電ペーストからなる導電ペースト78を透光性導電膜60の外縁に沿って連続的に塗布している。この場合、透光性導電膜60上に配線構造体70を載置する際に、下方に突出した部材側電極72Aによって、導電ペースト78が押圧され、当該部材側電極72Aによって押圧された部分のみが導電性をもつ。従って、部材側電極72Aの各々が、互いに導電ペースト78を介しては導通せずに、透光性導電膜60に電気的に接続される。
【0051】
言い換えれば、上面視において、各々の部材側電極72Aと重なる領域の導電ペースト78のみが導通状態となり、部材側電極72Aと透光性導電膜60とが導通している。上記以外の領域において、導電ペースト78は絶縁状態を維持しているため、各々の部材側電極72Aは、透光性導電膜60に対して矩形の頂点となる4箇所で電気的に接続されている。
【0052】
なお、上方視において、透光性導電膜60に部材側電極72Aが押し当てられている部分、すなわち透光性導電膜60と部材側電極72Aが重なっている部分にNi/Au層からなる電極(電極パッド)を設けることもできる。当該電極(電極パッド)を設けることで、導電ペースト78を介した接続安定性を向上させることができる。また、当該電極(電極パッド)によって電極面積精度が向上するので、電気抵抗率(又は電気抵抗)の検知精度を向上させることができる。
【0053】
また、透光性導電膜60の少なくとも外部雰囲気に露出された部分に、透光性且つ絶縁性を有する保護膜を設けることができる。保護膜として、例えば、透光性且つ絶縁性に加え、埃や汚れが付きにくい性質を有するフッ素樹脂膜等がある。
【0054】
接続部73は、上述したように、基板側固定部71と部材側固定部72を接続しており、部材側固定部72から伸長した複数の配線75の各々を内包している。本実施例の接続部73は、部材側固定部72から基板側固定部71まで、断面視において緩やかに屈曲している、すなわちスロープ状になっている。このように、接続部73を緩やかなスロープ状とすることで、基板側固定部71が接続部73の弾性で外れることを防止できる。
【0055】
また、接続部73は、基板側固定部71と部材側固定部72とを任意の形状で接続可能である。具体的には、回路基板20上の基板側固定部71が発光装置10の近傍または遠方に位置している場合であっても、接続部73を任意の長さに設定し、基板側固定部71と部材側固定部72とを接続させることが可能となる。
【0056】
以上、基板側固定部71、部材側固定部72、接続部73で構成された配線構造体70について説明したが、基板側固定部71は前述の構造に限るものではない。基板側固定部71は、配線構造体70の各々の配線75を、回路基板20の対応する配線と接続できる構造であれば良い。
【0057】
例えば、接続部73の基板側固定部71側の端部において、接続部73を構成する2枚の薄膜状の絶縁性フィルムの一方を他方よりも短く設定し、担持されている配線75が他方のフィルム上に短冊状に露出されている構造でも良い。また、回路基板20にソケットが設けられている構造でも良い。この構造により、接続部73の基板側固定部71側の端部を当該ソケットに直接差し込んで電気的な接続をなす構造であっても良い。
【0058】
図4は、発光装置10における光散乱部材50の損傷検出状況を模式的に表した図である。
図4に示すように、透光性導電膜60上には4点の部材側電極72Aの各々(72A(1)~72A(4))が配置されている。
【0059】
上述の説明からわかるように、部材側電極72A(1)~72A(4)は、配線75の各々を介して、それぞれが判定回路ICに接続されている。すなわち、判定回路ICは、部材側電極72A(1)~72A(4)の各々の間における透光性導電膜60の電気抵抗率の検知が可能である。
【0060】
例えば、光散乱部材50のいずれかの領域に亀裂等の損傷が生じた場合、光散乱部材50の上面に形成された透光性導電膜60にも損傷が生じ得る。本実施例によれば、透光性導電膜60上に接合された複数の部材側電極72Aの各々によって、透光性導電膜60の電気抵抗率を測定することにより、当該損傷を検出する。すなわち、判定回路ICは、この電気抵抗率の値またはその変化によって、透光性導電膜60の損傷、ひいては光散乱部材50の損傷の検出が可能である。
【0061】
光散乱部材50の損傷は、例えば、透光性導電膜60に対してファン・デル・パウ(Van Der Pauw)法によるシート抵抗(表面抵抗率)を検知することで検出可能である。
【0062】
本実施例において、判定回路ICは、透光性導電膜60上に配された4つの部材側電極72Aの各々の内、ある2点の電極間に電流を流し、前記2点とは異なる2点の電極間の電圧を測定し、透光性導電膜60のシート抵抗を検知する。
【0063】
具体的には、例えば、
図4に示すように部材側電極72A(1)-72A(3)間におけるシート抵抗と、部材側電極72A(2)-72A(4)間におけるシート抵抗を比較し、一定の対称性が保たれている場合は損傷なしと判定する。一方、前記対称性に変化が見られた場合は損傷ありと判定する。
【0064】
上記シート抵抗の対称性が失われている場合、すなわち、光散乱部材50に損傷が発生している、またはその可能性があると判定した場合、判定回路ICは外部にその旨を示す信号を発信可能である。例えば、判定回路ICは、光散乱部材50に損傷が発生している、またはその可能性があると判定した場合は、発光素子40への給電を行う制御部(図示せず)にその旨を示す信号を発信する。制御部は、その信号を受信して、発光素子40への電流供給を停止することができる。
【0065】
従って、光散乱部材50のいずれの領域に損傷が生じた場合であっても、発光素子40への電流供給を停止することが可能となる。このように、光散乱部材50の損傷を検出した際に、発光素子40の発光を止めることで、発光素子40の出射光が散乱されずに直接発光装置10の外部に出射されることを防止することが可能となる。すなわち、本実施例の発光装置10によれば、光散乱部材50の損傷に由来する、発光装置10の配光パターンの異常、発光素子40のレーザ光が直接出射される等の不具合事象を防止することができる。
【0066】
また、上記構成とすることにより、配線構造体70は、保持体30及び光散乱部材50に対する取付け性が良好なため、透光性導電膜60及び回路基板20への取り付けや構造変更が容易となる。具体的には、例えば、透光性導電膜60の上面に設けた複数の部材側電極76の位置調整や配線構造体70の配線パターンの変更等を容易に行うことができる。
【0067】
従って、本実施例によれば、光散乱部材50の上面側に配線構造体70を設ける構成とすることにより、光散乱部材50の損傷検出機能に加え、当該機能を簡便な構造により実現できる発光装置を提供可能である。
【実施例2】
【0068】
図5は、実施例2に係る発光装置11の上面図である。発光装置11は、配線構造体70の配線パターンが実施例1の発光装置10の配線構造体70と異なっている。具体的には、配線構造体70の配線75に加えて、配線85が設けられている。
【0069】
第2の複数の配線としての配線85は、実施例1に示した配線構造体70の配線75と同様に、配線構造体70の基材に担持されている銅箔によって形成された配線である。複数の配線85は、配線75と同様に、配線構造体70の基材を構成する2枚の薄膜状の絶縁性フィルムによって挟持されている。
【0070】
配線85の各々は、互いに離隔しつつ基板側固定部71から部材側固定部72まで伸張している。本実施例において、配線構造体70は、配線75及び配線85を各々4本有している。
【0071】
図5に示すように、基板側固定部71は、実施例1に示した4つの開口71Hに加えて、下面に互いに離間して一列に形成された4つの開口81Hを備えている。実施例2においては、4つの開口71Hの各々と4つの開口81Hの各々とが一直線上に配列されている。また、
図5に示すように、開口81Hが両端に2つずつ配され、それに挟み込まれるように4つの開口71Hが配されている。この開口81Hの各々から配線85の各々の一端(基板側固定部71側の端部)が露出している。
【0072】
開口81Hの各々から露出した配線85の一端は、回路基板20に形成された4本の配線(図示せず)に電気的に接続され、さらに当該4本の配線が回路基板20に実装された当該判定回路ICの所定の端子と電気的に接続されている。
【0073】
実施例2において、枠部33の上面33S2には、上面33S2の内縁に沿って伸長しかつ円環状に形成された金属膜からなる枠部接合電極86が形成されている。
【0074】
部材側固定部72は、実施例1に示した4つの開口72Hに加えて、部材側固定部72の下面に互いに離間して形成された各々の開口面積が等しい円形の4つの開口82Hを備えている。具体的には、開口82Hの各々は、部材側固定部72の4つの角部分に形成されている。言い換えれば、開口82Hの各々は、矩形(正方形又は長方形)の4つの頂点となるように形成されている。実施例1に示した4つの開口72Hの各々よりも外縁側に形成されている。
【0075】
また、開口82Hは、枠部接合電極86と対向するように形成されている。なお、実施例2において、開口72Hの各々は、透光性導電膜60の4つの角の各々の上に矩形の4つの頂点となるように形成されている。
【0076】
開口82Hの各々から配線85の各々の他端(部材側固定部72側の端部)が露出しており、導電性の部材によって配線85の各々の他端が上記枠部接合電極86に電気的に接続されている。言い換えれば、配線85の各々の他端同士が、枠部接合電極86によって電気的に接続されている。
【0077】
接続部73は、部材側固定部72から伸長した4本の配線75及び4本の配線85の各々を内包している。4本の配線85は、
図5に示すように、配線85の2本ずつが4本の配線75を挟み込むように配されている。
【0078】
以上、実施例1と同様に、発光装置11を構成する光散乱部材50の上面に設けた透光性導電膜60の電気抵抗率は、配線構造体70の配線75及び回路基板20の配線(図示せず)を介して、回路基板20の他の部分に実装した判定回路ICによって検知可能となる。
【0079】
上記に加えて、上面33S2に形成された枠部接合電極86の電気抵抗率は、配線構造体70の配線85及び回路基板20の配線(図示せず)を介して、回路基板20の他の部分に実装した判定回路ICによって検知可能となる。
【0080】
言い換えれば、発光装置11の透光性導電膜60の電気抵抗率及び枠部接合電極86の電気抵抗率を、判定回路ICによって検知できる回路構成となっている。
【0081】
図6は、発光装置12の6-6線に沿った断面図である。なお、
図6においては、配線構造体70に担持されている配線75及び配線85を省略して示している。
【0082】
基板配線20Dは、回路基板20上において、基板配線20A及び20Bと互いに離隔してパターニングされた金属配線である。基板配線20Dは、上述した配線85と判定回路ICを接続する配線である。基板配線20Dは、一端が上述の判定回路ICに接続されており、他端が開口81Hを介して配線85に接続されている。
【0083】
具体的には、開口81H内には当該開口81Hから露出する配線85に電気的に接続されたNi/Au層からなる電極81Aが形成されている。この電極81Aは、配線85とSn-Ag-Cu導電体からなる接合材53を介して接合されており、基板配線20Dと電気的に接続されている。
【0084】
部材側電極82Aは、配線85に電気的に接続されており、配線構造体70の部材側固定部82の開口82H(
図5参照)の各々から当該開口82Hで画定された形状で下方に突出したNi/Au層からなる金属電極である。部材側電極82Aは、導電ペースト88によって枠部接合電極86の上面に接合されている。すなわち、配線85の各々は、部材側電極82A及び導電ペースト88を介して枠部接合電極86に電気的に接続されている。
【0085】
本実施例においても、異方性導電ペーストからなる導電ペースト88は、上述した枠部接合電極86に沿って連続的に塗布してもよい。または、透光性導電膜60上の導電ペースト78が枠部接合電極86の上面まで延在して塗布されていても良い。この場合、枠部接合電極86上に配線構造体70を載置する際に、下方に突出した部材側電極82Aによって、導電ペースト78又は88が押圧され、当該部材側電極82Aによって押圧された部分のみが導電性をもつ。従って、部材側電極82Aの各々が、互いに導電ペースト88を介しては導通せずに、枠部接合電極86に電気的に接続される。
【0086】
上述したように、本実施例における発光装置11の配線構造体70は、4本の配線75の各々が透光性導電膜60に接続される配線パターンと、4本の配線85の各々が枠部接合電極86に接続される配線パターンの2つの構造を備えている。
【0087】
判定回路ICは、実施例1と同様に、透光性導電膜60上に配された4つの部材側電極72Aの各々の内、ある2点の電極間に電流を流し、前記2点とは異なる2点の電極間の電圧を測定し、透光性導電膜60の電気抵抗率を検知する。
【0088】
従って、実施例1と同様に、上記電気抵抗率の変化に伴う光散乱部材50の損傷を検出した際に、発光素子40の発光を止めることで、発光素子40の出射光が散乱されずに直接発光装置11の外部に出射されることを防止することが可能となる。すなわち、本実施例の発光装置11によれば、光散乱部材50の損傷に由来する、発光装置11の配光パターンの異常、発光素子40のレーザ光が直接出射される等の不具合事象を防止することができる。
【0089】
また、本実施例によれば、回路基板20に固定された配線構造体70によって、光散乱部材50を押さえ付ける構造となっている。これにより、光散乱部材50の脱落を機械的に防止することができる。
【0090】
また、上記構成とすることにより、配線構造体70は、上面視において露出されているため、透光性導電膜60及び回路基板20への取り付けや構造変更が容易となる。具体的には、例えば、透光性導電膜60の上面に設けた複数の部材側電極76の位置調整や配線構造体70の配線パターンの変更等を容易に行うことができる。
【0091】
従って、本実施例によれば、光散乱部材50の上面側に配線構造体70を設ける構成とすることにより、光散乱部材50の損傷検出機能に加え、光散乱部材50の機械的及び電気的な脱落防止機能と当該機能を簡便な構造により実現できる発光装置を提供可能である。
【0092】
さらに、本実施例によれば、判定回路ICは、枠部接合電極86上に配された4つの部材側電極82Aの各々を介して、保持体30と配線構造体70との電気的な接続状態の変化を判定する。
【0093】
上記電気的な接続状態が失われている場合、すなわち、配線構造体70の脱落が発生している、またはその可能性、及び光散乱部材50の脱落の可能性があると判定した場合、判定回路ICは外部にその旨を示す信号を発信可能である。判定回路ICは、例えば、配線構造体70の脱落が発生している、またはその可能性があると判定した場合は、発光素子40への給電を行う制御部(図示せず)にその旨を示す信号を発信する。制御部は、その信号を受信して、発光素子40への電流供給を停止することができる。
【0094】
従って、本実施例において、配線構造体70が、4本の配線75と、4本の配線85の2つの配線構造を備えることにより、光散乱部材50の損傷検出機能、光散乱部材50の機械的及び電気的な脱落防止機能及び当該機能を簡便な構造により実現できることに加え、配線構造体70の脱落検出機能を有する発光装置を提供可能である。
【実施例3】
【0095】
図7は、実施例3に係る発光装置12の構成を示す斜視図である。発光装置12は、配線構造体90の構成が実施例1の発光装置10の配線構造体70と異なっている。具体的には、配線構造体90に袖部92B及び固定部92Cが設けられている。
【0096】
配線構造体90は、回路基板20に接続される基板側固定部91、透光性導電膜60の上面に配される部材側固定部92、基板側固定部91と部材側固定部92を接続する接続部93から構成される。
【0097】
部材側固定部92は、実施例1の発光装置10における配線構造体70と同様に、枠部33に沿って枠状に延在しており、中央に開口部92Oを有する天面部92Aを有している。天面部92Aは、部材側固定部92の下面に互いに離間して形成された複数の導電性の部材(図示せず)によって、透光性導電膜60に接続されている。
【0098】
実施例1と同様に、上述した導電性の部材の各々には、配線構造体90の基材に担持されている複数の配線の各々の一端が接続されている。当該複数の配線の各々は、接続部93を介して基板側固定部91まで伸張し、他端において、回路基板20上の配線(図示せず)に接続されている。
【0099】
複数の袖部92Bは、天面部92Aの上面の外周部から底部31の外側面及び枠部33の外側面に沿って下方に向けて延在し、回路基板20に達している。複数の固定部92Cは、複数の袖部92Bの先端部から回路基板20の上面に沿って伸張しており、回路基板20に接合されている。
【0100】
すなわち、部材側固定部92の天面部92A及び袖部92Bの各々によって、保持体30が覆われている。なお、袖部92Bは、接続部93が接続された天面部92Aの部分おいて、当該接続部93を挟むように2つに分かれて下方に伸張している。また、袖部92Bは、保持体30に密接するように、予め熱プレス等によって曲げ加工を施している。
【0101】
袖部92B及び固定部92Cの内部には、袖部92B及び固定部92Cの全体に亘って連続的に形成された薄い金属膜(図示せず)が、上記配線75と同様に挟持されることで担持されている。
【0102】
また、固定部92Cの各々の下面には、回路基板20に形成された接地配線と上記袖部92B及び固定部92Cに亘って連続的に形成された金属膜とを接続するための開口(図示せず)が形成されている。すなわち、袖部92B及び固定部92Cに担持されている金属膜は、回路基板20を介して接地されている。
【0103】
本実施例において、部材側固定部92に設けた袖部92B及び固定部92Cは、電磁シールドとしての機能を有する。具体的には、例えば、袖部92B及び固定部92Cの各々に担持された金属膜を形成することによって、発光素子40の駆動時に生じたノイズが外部に漏れ出すことを防止し、例えば、発光装置12の外部の装置に当該ノイズが影響することを防ぐことができる。
【0104】
なお、上述した薄い金属膜は、袖部92B及び固定部92Cの表面全体に亘って連続的に形成されていてもよい。薄い金属膜は、例えば、銅や金の薄膜からなる。
【0105】
また、実施例1と同様に、判定回路ICは、配線構造体90の基材に担持されている複数の配線の各々の他端に接続されている端子を有し、当該端子同士の抵抗値を検出可能である。
【0106】
本実施例によれば、実施例1の発光装置10と同様に、光散乱部材50の損傷検出機能、光散乱部材50の機械的な脱落防止機能及び当該機能を簡便な構造により実現できる発光装置を提供可能である。
【0107】
さらに、本実施例によれば、部材側固定部92に金属膜を設けた天面部92A、袖部92B及び固定部92Cを備えることによって、電磁シールド機能を有する発光装置を提供可能である。
【0108】
なお、本実施例における配線構造体90の配線パターンは、実施例1に係る発光装置10の配線構造体70の配線パターンのみに限らない。例えば、実施例2に係る発光装置11の配線構造体70の配線パターンを適用してもよい。
【0109】
具体的には、配線構造体90が、実施例2の配線構造体70に示すように、4本の配線75及び4本の配線85の2つの配線を担持していてもよい。これにより、光散乱部材50の損傷検出機能、光散乱部材50の機械的な脱落防止機能、当該機能を簡便な構造により実現可能とする機能、電磁シールド機能に加え、配線構造体90の脱落検出機能を有する発光装置を提供可能である。
【実施例4】
【0110】
図8は、実施例4に係る発光装置13の構成を示す斜視図である。発光装置13は、配線構造体100の構成が、実施例1の発光装置10の配線構造体70と異なっている。具体的には、保持体30を覆うように部材側固定部102に基板側固定部101及び接続部103が設けられている。
【0111】
配線構造体100は、回路基板20に接続される基板側固定部101、透光性導電膜60の上面に配される部材側固定部102、基板側固定部101と部材側固定部102を接続する接続部103から構成される。また、配線構造体100は、保持体30に密接するように、予め熱プレス等によって曲げ加工を施している。
【0112】
部材側固定部102は、実施例1の発光装置10における配線構造体70と同様に、枠部33に沿って枠状に延在しており、中央に開口部102Oを有している。複数の接続部103は、部材側固定部102の上面の外周部から底部31の外側面及び枠部33の外側面に沿って下方に向けて延在し、回路基板20に達している。複数の基板側固定部101は、複数の接続部103の先端部から回路基板20の上面に沿って伸張しており、回路基板20に接合されている。
【0113】
本実施例では、2つの接続部103及び基板側固定部101が、部材側固定部102を介して各々対向するように接続されている。すなわち、部材側固定部102及び2つの接続部103によって、保持体30が覆われている。
【0114】
図8に示すように、基板側固定部101の各々は、基板側固定部101の下面に互いに離間して一列に形成された各々の開口面積が等しい矩形の2つの開口101Hを備えている。この開口101Hの各々から配線105の各々の一端が露出している。
【0115】
部材側固定部102は、実施例1と同様に、部材側固定部102の下面に互いに離間して形成された各々の開口面積が等しい円形の4つの開口102Hを備えている。具体的には、開口102Hの各々は、部材側固定部102の4つの角部分に形成されている。言い換えれば、開口102Hの各々は、矩形(正方形又は長方形)の4つの頂点となるように形成されている。この開口102Hの各々から配線105の各々の他端が露出している。配線105の各々の他端は、開口102Hを介して透光性導電膜60に電気的に接続されている。
【0116】
複数の配線としての配線105は、実施例1に示した配線構造体70の配線75と同様に、配線構造体100の基材に担持されている銅箔によって形成された配線である。複数の配線105は、配線75と同様に、配線構造体100の基材を構成する2枚の薄膜状の絶縁性フィルムによって挟持されている。本実施例において、配線105は、互いに離隔しつつ基板側固定部101の各々から部材側固定部102まで2本ずつ伸張している。
【0117】
回路基板20には、判定回路ICに接続され、配線105の各々に対応した4本の配線(図示せず)が形成されている。配線105の各々は、開口101Hを介して当該配線の各々に接続されることで、当該判定回路ICに接続されている。
【0118】
以上、実施例1と同様に、発光装置13を構成する光散乱部材50の上面に設けた透光性導電膜60の電気抵抗率は、配線構造体100の配線105及び回路基板20の配線(図示せず)を介して、回路基板20の他の部分に実装した判定回路ICによって検知可能となる。言い換えれば、発光装置13における透光性導電膜60の電気抵抗率を、判定回路ICによって検知できる回路構成となっている。
【0119】
本実施例によれば、実施例1の発光装置10と同様に、光散乱部材50の損傷検出機能、光散乱部材50の機械的な脱落防止機能及び当該機能を簡便な構造により実現可能とする機能を有する発光装置を提供可能である。
【0120】
本実施例の発光装置13の配線構造体100は、保持体を挟み込む2つの位置において、2つの基板側固定部101によって回路基板20に固定されている。従って、上記構成は、1つの基板側固定部71のみが回路基板20に固定されている実施例1の発光装置10と比較して、強固に光散乱部材50を押さえ付けることが可能となる。
【0121】
従って、本実施例によれば、光散乱部材50の損傷検出機能及び当該機能を簡便な構造により実現可能とする機能に加えて、光散乱部材50の強固かつ機械的な脱落防止機能を有する発光装置を提供可能である。
【実施例5】
【0122】
図9は、実施例5に係る発光装置14の上面図である。発光装置14は、配線構造体110の構成が実施例1の発光装置10の配線構造体70と異なっている。具体的には、配線構造体110に複数の配線115が設けられている。
【0123】
配線構造体110は、上面視において、平面形状が矩形の板状基板である。配線構造体110は、例えば、ポリイミドを用いた薄膜状の絶縁性フィルムを基材とし、当該基材に担持された銅箔による複数の配線を備えたフレキシブルプリント回路基板(FPC)である。
【0124】
配線構造体110は、枠部33に沿って枠状に延在しており、中央に開口部110Oを有している。配線構造体110は、2枚の薄膜状の絶縁性フィルムからなる基材を有し、当該2枚の薄膜状の絶縁性フィルムによって複数の配線115が挟持される構造を有している。
【0125】
複数の配線115は、例えば、平面形状が三角形の銅箔からなる配線であって、
図9に示すように、配線構造体110の4つの角の各々に沿うように設けられている。本実施例においては、配線構造体110は、配線115を4つ有している。
【0126】
配線構造体110は、配線構造体110の下面に互いに離間して形成された各々の開口面積が等しい円形の4つの開口110Hを備えている。開口110Hの各々は、配線構造体110の4つの角部分に形成されている。言い換えれば、開口110Hの各々は、矩形(正方形又は長方形)の4つの頂点となるように形成されている。
【0127】
配線115の各々は、開口110Hの各々から露出しており、開口110Hに接続された複数の導電性の部材を介して透光性導電膜60に電気的に接続されている。
【0128】
本実施例において、枠部37の上面37S2には、上面37S2の4つの角部の各々の内縁に沿って、L字形の金属膜からなる枠部接合電極112の各々が形成されている。
【0129】
配線構造体110は、配線構造体110の下面に互いに離間して形成された各々の開口面積が等しいL字形の4つの開口110Lを備えている。開口110Lの各々は、枠部37の上面の4つの角に沿うようにL字形に設けられている。
【0130】
具体的には、開口110Lの各々は、配線構造体110の4つの角部分に形成されている。開口110Lの各々は、4つの開口110Hの各々よりも外縁側に形成されている。また、開口110Lは、枠部接合電極112と対向するように形成されている。
【0131】
配線115の各々は、開口110Lに接続された複数の導電性の部材を介して上記枠部接合電極112に電気的に接続されている。
【0132】
以上、実施例1と同様に、発光装置14を構成する光散乱部材50の上面に設けた透光性導電膜60の電気抵抗率は、配線構造体110の配線115及び回路基板20の配線(図示せず)を介して、回路基板20の他の部分に実装した判定回路ICによって検出可能となる。
【0133】
上記に加えて、上面37S2に形成された枠部接合電極112の電気抵抗率は、配線構造体110の配線115及び回路基板20の配線(図示せず)を介して、回路基板20の他の部分に実装した判定回路ICによって検知可能となる。
【0134】
言い換えれば、本実施例では、発光装置14の透光性導電膜60の電気抵抗率及び枠部接合電極112の電気抵抗率を、判定回路ICによって検知できる回路構成となっている。
【0135】
図10は、発光装置14の10-10線に沿った断面図である。基板配線20E、20Fは、回路基板20上において互いに離隔してパターニングされた金属配線である。
【0136】
基板配線20E及び20Fの各々は、発光装置10の外部の電源(図示せず)に接続されている。基板配線20E及び20Fの各々は、回路基板20上において、上述した判定回路ICに接続されている。
【0137】
保持体35は、回路基板20上に配された上面形状が矩形の平板状の底部36と当該底部36の上面の外縁に沿って延在している枠部37を備える。底部36は、第1の部分36P1及び第1の部分36P1上に接合されている第2の部分36P2からなる。枠部37は、底部31の上面を露出する開口37Hを有している。
【0138】
第1の実装電極36A及び第2の実装電極36Bは、保持体35の底部36の下面に互いに離間して形成されているW/Ni/Au層からなる金属電極である。第1の実装電極36A及び第2の実装電極36Bは、それぞれ基板配線20E及び20FにSn-Ag-Cu導電体からなる接合材54を介して接合されている。
【0139】
図10に示すように、枠部37は、枠部37の上部において段差構造を有している。具体的には、枠部37は、上面37S1を有しており、上面37S1から上方に突出した突出部37Aを有している。突出部37Aは、上面37S1の外縁に沿って形成されている。突出部37Aは、上面37S2を備える。
【0140】
上述したように、底部36は第1の部分36P1及び第2の部分36P2から構成される。第1の部分36P1は、第1の部分36P1を上下方向に貫通するWからなる貫通ビア36V1及び36V2を備える。第2の部分36P2は、第2の部分36P2を上下方向に貫通するWからなる貫通ビア36V3及び36V4を備える。
【0141】
電極36Eは、貫通ビア36V1及び貫通ビア36V3を電気的に接続するように第1の部分36P1の上面に配されている。貫通ビア36V1は電極36Eの一端部近傍に接続され、貫通ビア36V3は電極36Eの他端部近傍に接続されている。
【0142】
枠部37を上下方向に貫通するWからなる貫通ビア37V1は、貫通ビア36V3、電極36E及び貫通ビア36V1を介して、第1の実装電極36Aに電気的に接続されている。また、枠部37を上下方向に貫通するWからなる貫通ビア37V2は、貫通ビア36V4及び貫通ビア36V2を介して、第2の実装電極36Bに電気的に接続されている。
【0143】
枠部接合電極112は、上面形状がL字形を有する導電体であり、接合材(図示せず)を介して突出部37Aの上面37S2に接合されている。具体的には、枠部接合電極112は、上述した配線構造体110の開口110Lと垂直方向において重なるように上面37S2の各々の4つの角に設けられている。枠部接合電極112は、枠部37を上下方向に貫通する貫通ビア37V1及び37V2に電気的に接続されている。
【0144】
導電シート120は、透光性導電膜60の外縁に沿って円環状に形成されており、封止材55を跨いで上面37S2及び透光性導電膜60の2つを跨ぐように形成されている。また、導電シート120は、枠部接合電極112の上面を覆っており、枠部接合電極112と電気的に接続されている。
【0145】
部材側電極110Aは、開口110Hに接続された複数の導電性の部材である。配線115に電気的に接続されており、配線構造体110の開口110Hの各々から当該開口110Hで画定された形状で下方に突出したNi/Au層からなる金属電極である。部材側電極110Aは、導電シート120を介して透光性導電膜60の上面に接合されている。すなわち、配線115の各々は、部材側電極110A及び導電シート120を介して透光性導電膜60に電気的に接続されている。
【0146】
部材側電極110Bは、開口110Lに接続された複数の導電性の部材である。配線115に電気的に接続されており、配線構造体110の開口110Lの各々から当該開口110Lで画定された形状で下方に突出したNi/Au層からなる金属電極である。部材側電極110Bは、導電シート120を介して枠部接合電極112の上面に接合されている。すなわち、配線115の各々は、部材側電極110B及び導電シート120を介して枠部接合電極112に電気的に接続されている。
【0147】
導電シート120は、例えば、はんだ粒子とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂とを混錬させてフィルム状に成型した異方性導電シートである。異方性導電シートは、そのままでは絶縁体のような振る舞いをするが、加圧されることにより当該加圧部分の加圧方向に沿った方向においてはんだ粒子が凝集して導通状態となる。この際、加圧されていない部分については絶縁状態のままである。
【0148】
透光性導電膜60上に配線構造体70を載置する際に、下方に突出した部材側電極110A及び110Bによって、導電シート120が押圧され、当該部材側電極110A及び110Bによって押圧された部分のみが導電性をもつ。従って、部材側電極110A及び110Bの各々が、互いに導電シートを介しては導通せずに、透光性導電膜60及び枠部接合電極112に電気的に接続される。
【0149】
言い換えれば、上面視において、部材側電極110A及び110Bの各々と重なる領域の導電シート120のみが導通状態となっている。上記以外の領域において、導電シート120は絶縁状態を維持しているため、部材側電極110A及び部材側電極110Bの各々は、透光性導電膜60及び枠部接合電極112に対して矩形の頂点となる4箇所で電気的に接続されている。
【0150】
上述したように、本実施例における発光装置14の配線構造体110は、4つの配線115の各々が部材側電極110Aを介して透光性導電膜60に接続される構造と、部材側電極110Bを介して枠部接合電極112に接続される構造の2つを備えている。
【0151】
判定回路ICは、実施例1と同様に、透光性導電膜60上に配された4つの部材側電極110Aの各々の内、ある2点の電極間に電流を流し、前記2点とは異なる2点の電極間の電圧を測定し、透光性導電膜60の電気抵抗率を検知する。
【0152】
従って、実施例1と同様に、上記電気抵抗率の変化に伴う光散乱部材50の損傷を検出した際に、発光素子40の発光を止めることで、発光素子40の出射光が散乱されずに直接発光装置14の外部に出射されることを防止することが可能となる。すなわち、本実施例の発光装置14によれば、光散乱部材50の損傷に由来する、発光装置14の配光パターンの異常、発光素子40のレーザ光が直接出射される等の不具合事象を防止することができる。
【0153】
また、上記構成とすることにより、配線構造体110は、上面視において露出されているため、透光性導電膜60への取り付けや構造変更が容易となる。具体的には、例えば、透光性導電膜60の上面に設けた複数の部材側電極110A及び110Bの位置調整や配線構造体70の配線パターンの変更等を容易に行うことができる。
【0154】
さらに、本実施例によれば、判定回路ICは、枠部接合電極112上に配された部材側電極110Bの各々の電気的な接続状態の変化を判定する。
【0155】
上記電気的な接続状態が失われている場合、すなわち、配線構造体110の脱落が発生している、またはその可能性があると判定した場合、判定回路ICは外部にその旨を示す信号を発信可能である。例えば、判定回路ICは、配線構造体70の脱落が発生している、またはその可能性があると判定した場合は、発光素子40への給電を行う制御部(図示せず)にその旨を示す信号を発信する。制御部は、その信号を受信して、発光素子40への電流供給を停止することができる。
【0156】
さらに、上記構成により、保持体の外部に別途、回路基板20に接続するための配線を設ける必要がなくなる。具体的には、透光性導電膜60に接続された配線115は、枠部接合電極112及び底部36及び枠部37の内部に設けられた配線構造を介して判定回路ICまで電気的に接続されている。すなわち、発光装置のコンパクト化を図ることができる。
【0157】
従って、本実施例によれば、光散乱部材50の損傷検出機能、配線構造体110の脱落検出機能及び当該機能を簡便な構造により実現可能とする機能に加えて、発光装置のコンパクト化の機能を有する発光装置を提供可能である。
【0158】
実施例1~5において説明したように、当該実施例における発光装置によれば、発光素子上に設けた光散乱部材における損傷の有無を、配線を担持する配線構造体によって容易に検出することができる。すなわち、本実施例の発光装置によれば、光散乱部材の損傷に由来する、発光装置の配光パターンの異常、発光素子のレーザ光が直接出射される等の不具合事象を防止することができる。
【0159】
また、上記構成とすることにより、配線構造体は、上面視において露出されているため、透光性導電膜及び回路基板への取り付けや構造変更が容易となる。具体的には、例えば、透光性導電膜の上面に設けた複数の部材側電極の位置調整や配線構造体の配線パターンの変更等を容易に行うことができる。
【0160】
さらに、実施例2において説明したように、枠部の上面に配線構造体に担持された配線の各々を接合することによって、配線構造体の脱落の有無を判定回路によって判定することができる。
【0161】
さらに、実施例5において説明したように、発光装置の保持体内に配線構造を備えることにより、発光装置のコンパクト化を図ることができる。
【0162】
なお、上記実施例において、保持体、光散乱部材及び配線構造体の部材側固定部の平面形状は矩形である場合について説明したが、これに限られない。例えば、円形等の曲線を含む形状と有していてもよい。
【0163】
また、上記実施例において、配線構造体の部材側固定部は、中心に開口部を設ける構造としたが、内部に配線が可能であり、かつ発光素子40から出射された光を阻害しない構成であればよい。すなわち、例えば、配線構造体70の部材側固定部72はコの字の形状であってもよい。
【0164】
本発明に係る発光装置は、上述した実施例に限られるものではなく、用途等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0165】
10、11、12、13、14 発光装置
20 回路基板
30、35 保持体
31、36 底部
33、37 枠部
31A、36A 第1の実装電極
31B、36B 第2の実装電極
31C 第1の給電パッド
31D 第2の給電パッド
40 発光素子
50 光散乱部材
60 透光性導電膜
70、90、100、110 配線構造体
75、85、95、105、115 配線
78、88 導電ペースト
86、112 枠部接合電極
120 導電シート
IC 判定回路