(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】遮水壁の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/18 20060101AFI20240419BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
E02D5/18 101
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2020102953
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】北原 美樹
(72)【発明者】
【氏名】捻金 宏太
(72)【発明者】
【氏名】濱田 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】大西 直宏
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 和男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宰
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-101388(JP,A)
【文献】特開平09-242459(JP,A)
【文献】特開2000-160550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0291153(US,A1)
【文献】特開2019-167751(JP,A)
【文献】特開2020-007815(JP,A)
【文献】特開2017-115457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/18
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔機を用いて削孔水を送水しながら地盤を削孔し、削孔中に取得する削孔データに基づいて前記地盤の難透水層に削孔を到達させる削孔工程と、
前記削孔に注入材を注入し、前記地盤に地盤改良体を形成する注入材注入工程と、
を備え、
前記削孔データは、削孔中に前記削孔に送水する削孔水の削孔送水圧力値を含み、
前記難透水層の深度が取得されている位置の地盤を、削孔機を用いて削孔水を送水しながら削孔し、削孔が前記難透水層に到達したときの削孔送水圧力値を基準削孔送水圧力値とし、
前記削孔工程では、前記削孔送水圧力値が前記基準削孔送水圧力値に達したときに、前記削孔が前記難透水層に到達したと判断し、
前記削孔工程と前記注入材注入工程とを繰り返し、前記地盤改良体を壁状に連続させることで遮水壁を形成する、
遮水壁の構築方法。
【請求項2】
前記削孔工程では、前記削孔送水圧力値が、前記基準削孔送水圧力値に達し、かつ、前記基準削孔送水圧力値以上を所定時間維持したときに、前記削孔が前記難透水層に到達したと判断する、
請求項1に記載の遮水壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地層を判別する地層の判別方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-007815号公報
【文献】特開2017-115457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地盤に遮水壁を施工する場合、遮水壁の下端部を地盤の難透水層に根入れするために、ボーリング調査から得られた難透水層の深度(深度情報)に基づいて遮水壁の深度が設定される。
【0005】
しかしながら、難透水層の表面に不陸がある場合、遮水壁の施工領域での難透水層の深度が、ボーリング調査から得られた難透水層の深度よりも深くなる可能性がある。この場合、遮水壁の下端部が難透水層に到達せず、遮水壁の下端部が難透水層に根入れされない虞がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、遮水壁の下端部を難透水層により確実に根入れすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る遮水壁の構築方法は、削孔機を用いて削孔水を送水しながら地盤を削孔し、削孔中に取得する削孔データに基づいて前記地盤の難透水層に削孔を到達させる削孔工程と、前記削孔に注入材を注入し、前記地盤に地盤改良体を形成する注入材注入工程と、を備え、前記削孔工程と前記注入材注入工程とを繰り返し、前記地盤改良体を壁状に連続させることで遮水壁を形成する。
【0008】
第1態様に係る遮水壁の構築方法によれば、削孔工程では、削孔機を用いて削孔水を送水しながら地盤を削孔し、削孔中に取得する削孔データに基づいて地盤の難透水層に削孔を到達させる。また、注入材注入工程では、削孔に注入材を注入し、地盤に地盤改良体を形成する。これらの削孔工程と注入材注入工程とを繰り返して地盤改良体を壁状に連続させることで遮水壁を形成する。
【0009】
ここで、削孔工程では、前述したように、削孔中に取得する削孔データに基づいて地盤の難透水層に削孔を到達させる。これにより、難透水層の表面に不陸があったとしても、削孔を難透水層に到達させることができる。この削孔に注入材を注入することにより、地盤改良体の下端部、すなわち遮水壁の下端部を難透水層により確実に根入れすることができる。
【0010】
第2態様に係る遮水壁の構築方法は、第1態様に係る遮水壁の構築方法において、前記難透水層の深度が取得されている位置の地盤を、削孔機を用いて削孔水を送水しながら削孔し、削孔が前記難透水層に到達したときの削孔送水圧力値を基準削孔送水圧力値とし、前記削孔データは、削孔中に前記削孔に送水する削孔水の削孔送水圧力値を含み、前記削孔工程では、前記削孔送水圧力値が前記基準削孔送水圧力値に達したときに、前記削孔が前記難透水層に到達したと判断する。
【0011】
第2態様に係る遮水壁の構築方法によれば、難透水層の深度が取得されている位置の地盤を、削孔機を用いて削孔水を送水しながら削孔し、削孔が難透水層に到達したときの削孔送水圧力値を基準削孔送水圧力値とする。また、削孔データは、削孔中に削孔に送水する削孔水の削孔送水圧力値を含む。そして、削孔工程では、削孔送水圧力値が基準削孔送水圧力値に達したときに、削孔が難透水層に到達したと判断する。
【0012】
ここで、難透水層の透水係数は、例えば、透水層の透水係数よりも小さい。そのため、削孔中の削孔送水圧力値は、難透水層の方が透水層よりも高くなる。したがって、削孔中の削孔送水圧力値を監視することにより、削孔が難透水層に到達したか否か判断することができる。
【0013】
また、本発明では、前述したように、地盤調査等から難透水層の深度が得られた位置の地盤を掘削し、削孔が難透水層に到達したときの削孔送水圧力値を基準削孔送水圧力値とする。そして、削孔工程において、削孔中に取得する削孔送水圧力値と基準削孔送水圧力値とを比較することにより、削孔が難透水層に到達したか否かの判断精度を高めることができる。
【0014】
第3態様に係る遮水壁の構築方法は、第2態様に係る遮水壁の構築方法において、前記削孔工程では、前記削孔送水圧力値が、前記基準削孔送水圧力値に達し、かつ、前記基準削孔送水圧力値以上を所定時間維持したときに、前記削孔が前記難透水層に到達したと判断する。
【0015】
第3態様に係る遮水壁の構築方法によれば、削孔工程では、削孔送水圧力値が、基準削孔送水圧力値に到達し、かつ、基準削孔送水圧力値以上を所定時間維持したときに、削孔が難透水層に到達したと判断する。
【0016】
ここで、地盤に岩等が埋設されている場合、削孔が難透水層に到達する前であっても、削孔送水圧力値が一時的に高くなる可能性がある。この対策として本発明では、削孔送水圧力値が基準削孔送水圧力値に達しただけでなく、削孔送水圧力値が基準削孔送水圧力値以上を所定時間維持したときに、削孔が難透水層に到達したと判断する。これにより、削孔が難透水層に達したか否かの判断精度をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、遮水壁の下端部を難透水層により確実に根入れすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る遮水壁の構築方法によって施工された遮水壁を示す断面図である。
【
図2】(A)は、一実施形態に係る掘削試験の試験過程を示す
図1の拡大断面図であり、(B)は、掘削試験から得られた削孔送水圧力値の一例を示すグラフである。
【
図3】(A)~(D)は、一実施形態に係る遮水壁施工工程の施工過程を示す断面図である。
【
図4】一実施形態に係る削孔工程において、取得された削孔送水圧力値の一例を示すグラフである。
【
図5】比較例に係る遮水壁の構築方法によって施工された遮水壁を示す断面図である。
【
図6】比較例に係る遮水壁の構築方法によって施工された遮水壁を示す断面図である。
【
図7】一実施形態に係る遮水壁の構築方法によって施工された遮水壁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る遮水壁の構築方法について説明する。
【0020】
(遮水壁の構築方法)
本実施形態に係る遮水壁の構築方法は、削孔試験工程と、遮水壁施工工程とを備え、
図1に示されるように、地盤10の所定領域(以下、「施工領域R2」という)に遮水壁40を形成する。遮水壁40は、地下水を遮水するものであり、その下端部42Lが地盤10の難透水層10Xに根入れされている。
【0021】
ここで、難透水層10Xとは、水が浸透し難い地層であって、透水係数k(m/s)が小さい地層を意味する。この難透水層10Xには、例えば、透水係数kが10-5以下の地層が含まれる。また、難透水層10Xには、例えば、粘性土層、微細砂層、及びシルト層等が含まれる。
【0022】
一方、透水層とは、水が浸透し易い地層であって、透水係数k(m/s)が大きい地層を意味する。この透水層には、例えば、透水係数kが10-5よりも大きい地層が含まれる。また、透水層には、例えば、砂層、及び礫層等が含まれる。また、透水係数kが10-5よりも大きい微細砂層、及びシルト層等も透水層に含まれる。
【0023】
前述したように、難透水層10Xの透水係数kは、透水層の透水係数kよりも小さい。そのため、削孔水を送水しながら地盤10を削孔する場合、削孔水の送水圧力値(以下、「削孔送水圧力値」という)は、難透水層10Xの方が透水層よりも高くなる。
【0024】
そこで、本実施形態では、先ず、
図2(A)及び
図2(B)に示されるように、削孔試験工程において、削孔30(ロッド24の先端部24T)が難透水層10Xに到達したときの送水圧力値(削孔送水圧力値P
1)を予め計測し、計測した削孔送水圧力値を基準削孔送水圧力値P
Xとする。次に、
図3(A)及び
図4に示されるように、遮水壁施工工程において、基準削孔送水圧力値に基づいて地盤10の削孔深度を決定し、遮水壁40の下端部42Lを難透水層10Xに根入れさせる。以下、削孔試験工程及び遮水壁施工工程の各工程について具体的に説明する。
【0025】
(削孔試験工程)
図1に示されるように、削孔試験工程では、地盤10の施工領域R2、又はその周囲の領域であって、地盤調査(地層調査)を実施済みの領域(以下、「試験領域R1」という)で削孔試験を行う。
【0026】
図2(A)に示されるように、本実施形態では、地盤調査として、例えば、ボーリング調査を行う。ボーリング調査では、地盤10の所定の位置(調査位置)Vを削孔し、所定深度毎に標準貫入試験を行うことにより地盤の強度(硬さ)を計測する。また、採取した掘削土から地質及び地層(地層境界)の深度等を調査する。このボーリング調査によって、地盤10における難透水層10Xの表面10X1の深度(深度情報等)、より具体的には、難透水層10Xと難透水層10Xの直上の地層との地層境界の深度が得られる。
【0027】
なお、試験領域R1は、地盤10の位置V、及び位置Vの周囲を含む概念である。また、ボーリング調査の結果は、例えば、地盤調査報告書にまとめられる。
【0028】
削孔試験では、削孔機20を用いて地盤10の試験領域R1を削孔する。本実施形態では、後述するように、二重管ストレーナ工法等によって地盤10の施工領域R2に遮水壁40(
図1参照)を施工する。そのため、削孔試験においても、二重管ストレーナ工法等に用いられる削孔機20を用いる。
【0029】
削孔機20は、削孔機本体22と、削孔機本体22に支持され、地盤10を削孔するロッド24と、ロッド24に送水管等を介して削孔水を送水する送水ポンプ26と、送水管等に設けられ、削孔水の送水圧力値を計測する送水圧力計28とを有している。ロッド(注入ロッド)24は、例えば、先端部(下端部)24Tに先端装置が装着された二重管とされる。
【0030】
削孔機20は、ロッド24の先端部24Tから削孔水を噴射しながら、ロッド24の先端部24Tが難透水層10Xに到達するまで地盤10を削孔する。この際、送水圧力計28によって削孔水の送水圧力値(以下、「削孔送水圧力値P1」という)を計測する。そして、ロッド24の先端部24Tが難透水層10Xに到達した状態の削孔送水圧力値P1を基準削孔送水圧力値PXとする。
【0031】
図2(B)には、ボーリング調査から得られた試験領域R1の地層、及び削孔試験から得られた削孔送水圧力値P
1の一例が示されている。
図2(B)から分かるように、地盤10は、地表から順に、埋め土層10A、粘土層10B、砂層10C、及び難透水層10Xを含んでいる。
【0032】
また、
図2(B)から分かるように、ロッド24の先端部24Tが粘土層10Bに到達すると、削孔送水圧力値P
1が上昇する。次に、ロッド24の先端部24Tが砂層10Cに到達すると、削孔送水圧力値P
1が減少する。次に、ロッド24の先端部24Tが難透水層10Xに接近するに従って削孔送水圧力値P
1が上昇し、ロッド24の先端部24Tが難透水層10Xに到達すると、削孔送水圧力値P
1が最大となる。このように削孔送水圧力値P
1は、地層によって変動するため、削孔送水圧力値P
1によって難透水層10Xを判別することができる。
【0033】
本実施形態では、例えば、難透水層10Xを所定深度で削孔し、難透水層10Xを削孔しながら計測した複数の削孔送水圧力値の平均値を基準削孔送水圧力値とする。
【0034】
なお、基準削孔送水圧力値PXは、上記のような複数の削孔送水圧力値の平均値に限らず、例えば、難透水層10Xを削孔しながら計測した複数の削孔送水圧力値の最大値としても良いし、最小値としても良い。
【0035】
送水圧力計28には、例えば、高精度圧力計を用いることが望ましい。高精度圧力計とは、例えば、計測精度が0.000MPa以上、計測ピッチが10Hz以上の圧力計を含む。また、送水圧力計28によって計測した送水圧力値は、例えば、データロガー等の記録装置によって記録する。また、ロッド24の先端部24Tが難透水層10Xに到達した状態の削孔送水圧力値を計測する工程は、基準削孔送水圧力値取得工程と捉えられる。
【0036】
(遮水壁施工工程)
図1に示されるように、遮水壁施工工程では、地盤10の施工領域R2に、下端部42Lが難透水層10Xに根入れされた遮水壁40を施工する。本実施形態では、薬液注入工法のうち、例えば二重管ストレーナ工法によって施工領域R2に遮水壁40を施工する。この遮水壁施工工程は、削孔工程と、注入材注入工程とを有し、これらの削孔工程と注入材注入工程とを繰り返すことにより地盤10の施工領域R2に遮水壁40を形成する。
【0037】
(削孔工程)
図3(A)に示されるように、削孔工程では、前述した削孔機20を用いて地盤10の施工領域R2を削孔する。削孔機20は、掘削試験工程と同様に、ロッド24の先端部24Tから削孔水を噴射しながら地盤10の施工領域R2を削孔し、施工領域R2に削孔30を形成する。この際、送水圧力計28によって削孔水の削孔送水圧力値を計測する。そして、例えば、
図4に示されるように、削孔送水圧力値P
2が、基準削孔送水圧力値P
Xに達したときに削孔30が難透水層10Xに達したと判断し、削孔機20による削孔を停止する。
【0038】
なお、例えば、難透水層10Xに対する削孔30の根入れ深さを確保するために、削孔送水圧力値が基準削孔送水圧力値PXに達した後に、難透水層10Xをさらに削孔しても良い。また、削孔送水圧力値は、削孔中に取得する削孔データの一例である。
【0039】
(注入材注入工程)
次に、注入材注入工程では、
図3(B)に示されるように、ロッド24の先端部24Tを難透水層10Xに到達させた状態で、ロッド24の先端部24Tから径方向に注入材32を噴射し、当該先端部24Tの周囲の土に注入材32を注入する。この注入材32は、ロッド24の先端部24Tの周囲の土粒子間の間隙に浸透し、土粒子同士を接着する。これにより、ロッド24の先端部24Tの周囲の土が固化し、円柱状の地盤改良部42Sが形成される。なお、注入材32は、例えば、水ガラスを含む溶材(溶液)とされる。
【0040】
次に、
図3(C)に示されるように、ロッド24を所定量引き上げた状態で、ロッド24の先端部24Tから径方向に注入材32を噴射し、当該先端部24Tの周囲の土に注入材32を注入する。これにより、ロッド24の先端部24Tの周囲の土が固化し、円柱状の地盤改良部42Sが形成される。この際、上下に隣り合う地盤改良部42Sが連続するように、ロッド24の引き上げ量が調整される。
【0041】
このようにロッド24を所定量ずつ引き上げながら地盤10の施工領域R2に注入材32を注入することより、
図3(D)に示されるように、複数の地盤改良部42Sを上下方向(深度方向)に連続させる。これにより、難透水層10Xから地表に亘るとともに、下端部42Lが難透水層10Xに根入れされた円柱状の地盤改良体42を形成する。
【0042】
そして、前述した削孔工程と注入材注入工程とを繰り返し、
図1に示されるように隣り合う地盤改良体42を平面視にてラップさせることにより、壁状の遮水壁40(
図1参照)を形成する。
【0043】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0044】
先ず、比較例に係る遮水壁の構築方法について説明する。
図5には、比較例に係る遮水壁の構築方法によって施工された遮水壁100が示されている。この比較例に係る遮水壁の構築方法では、地盤10の施工領域R2を削孔する際に、ボーリング調査から得られた難透水層10Xの表面10X1の深度に基づいて、削孔30が難透水層10Xに到達したか否かを判断する。
【0045】
ここで、
図5では、難透水層10Xの表面10X1に不陸があり、施工領域R2の難透水層10Xの表面10X1の深度が、ボーリング調査を実施した試験領域R1の難透水層10Xの表面10X1の深度よりも深くなっている。この場合、比較例に係る遮水壁の構築方法のように、施工領域R2に遮水壁100を施工する際に、ボーリング調査から得られた難透水層10Xの表面10X1の深度に基づいて、削孔30が難透水層10Xに到達したか否かを判断すると、遮水壁100の下端部100Lが難透水層10Xに到達せず、遮水壁100の下端部100Lが難透水層10Xに根入れされないことになる。
【0046】
これに対して本実施形態に係る遮水壁の構築方法によれば、
図2(A)に示されるように、削孔試験工程において、ボーリング調査によって難透水層10Xの深度が得られた地盤10の試験領域R1を、削孔機20を用いて削孔する。この際、ロッド24の先端部24Tから削孔水を送水しながら試験領域R1を削孔し、削孔30が難透水層10Xに到達したときの削孔送水圧力値を基準削孔送水圧力値P
Xとする。そして、
図3(A)に示されるように、削孔工程において、削孔中に取得する削孔送水圧力値P
2が基準削孔送水圧力値P
Xに達したときに、削孔30が難透水層10Xに到達したと判断する。
【0047】
これにより、
図1に示されるように、難透水層10Xの表面(地層境界)10X1に不陸があったとしても、削孔30を難透水層10Xに到達させることができる。また、注入材注入工程において、削孔30に注入材32を注入することにより、地盤改良体42の下端部を難透水層10Xに根入れすることができる。したがって、遮水壁40の下端部42Lを難透水層10Xにより確実に根入れすることができる。
【0048】
また、例えば、
図6に示される比較例のように、遮水壁100の下端部100Lが難透水層10Xに到達していない場合、矢印aで示されるように、遮水壁100の下端部100Lと難透水層10Xとの間から遮水壁100の内側に地下水が流入し、矢印bで示されるように、揚水井戸50からの揚水量が増加する可能性がある。
【0049】
これに対して本実施形態では、
図7に示されるように、遮水壁40の下端部42Lが難透水層10Xに根入れされるため、遮水壁40の下端部42Lと難透水層10Xとの間から遮水壁40の内側に地下水が流入することが抑制される。したがって、本実施形態では、比較例に係る遮水壁40と比較して、揚水井戸50からの揚水量(矢印b)を低減することができる。
【0050】
なお、
図6及び
図7に示される符号WL
0は、自然地下水位の一例であり、符号WL
1は、揚水後の地下水位の一例である。
【0051】
また、本実施形態では、薬液注入工法によって遮水壁40を施工する。そのため、本実施形態では、ソイルセメント柱列壁工法(SMW工法)と比較して、小型の重機(削孔機20)によって遮水壁40を施工することができる。また、本実施形態では、例えば、
図7に示されるように、既存耐圧版52の上から遮水壁40を施工する場合、ソイルセメント柱列壁工法と比較して、既存耐圧版52に形成する作業孔54の直径を小さくすることができる。したがって、施工コストを削減することができる。
【0052】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0053】
上記実施形態では、削孔工程において、削孔送水圧力値P2が基準削孔送水圧力値PXに達したときに、削孔30が施工領域R2の難透水層10Xに到達したと判断した。しかし、例えば、削孔送水圧力値P2が基準削孔送水圧力値PXに達しただけでなく、削孔送水圧力値P2が基準削孔送水圧力値PX以上を所定時間維持したときに、削孔30が施工領域R2の難透水層10Xに到達したと判断しても良い。
【0054】
ここで、地盤10に岩等が埋設されている場合、削孔30が難透水層10Xに到達する前であっても、削孔送水圧力値P2が一時的に高くなる可能性がある。この場合、前述したように、削孔送水圧力値P2が基準削孔送水圧力値PXに達しただけでなく、削孔送水圧力値P2が基準削孔送水圧力値PX以上を所定時間維持したときに、削孔30が難透水層10Xに到達したと判断することにより、削孔30が難透水層10Xに達したか否かの判断精度を高めることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、削孔試験工程及び削孔工程において、同じ削孔機20用いた。しかし、削孔試験工程及び削孔工程では、異なる削孔機を用いても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、二重管ストレーナ工法によって遮水壁40を施工した。しかし、例えば、二重管ダブルパッカー工法によって遮水壁40を施工することも可能である。
【0057】
また、上記実施形態では、薬液注入工法によって遮水壁40を施工した。しかし、遮水壁は、例えば、ソイルセメント柱列壁工法(SMW工法)によって施工しても良い。この場合、例えば、削孔工程において、ソイルセメント柱の削孔中に取得する削孔送水圧力値が基準削孔送水圧力値に達したときに、各ソイルセメント柱の削孔が難透水層に到達したと判断すれば良い。
【0058】
また、上記実施形態では、削孔中に削孔30に送水する削孔水の削孔送水圧力値P2を削孔データとした。しかし、削孔データは、削孔送水圧力値に限らず、例えば、地盤を掘削するビットの回転トルク又は削孔速度としても良いし、これらの削孔送水圧力値、ビットの回転トルク、及び削孔速度を組み合わせても良い。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
10 地盤
10X 難透水層
20 削孔機
30 削孔
32 注入材
40 遮水壁
42 地盤改良体
V 地盤の位置