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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】レーザパワー計測装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/00 20060101AFI20240419BHJP
   H01S 3/131 20060101ALI20240419BHJP
   H01S 3/097 20060101ALI20240419BHJP
   H01S 3/041 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H01S3/00 G
H01S3/131
H01S3/097 Z
H01S3/041
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020115642
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022022744
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】河村 譲一
(72)【発明者】
【氏名】田中 研太
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0025536(US,A1)
【文献】特開2003-059083(JP,A)
【文献】特開2004-259836(JP,A)
【文献】特開平01-292634(JP,A)
【文献】特開平08-201666(JP,A)
【文献】実開平04-131732(JP,U)
【文献】特開平05-021887(JP,A)
【文献】特開2002-368321(JP,A)
【文献】特開平05-167136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094531(US,A1)
【文献】特開2009-141107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
H01S 5/00 - 5/50
H01L 31/00 - 31/024
H01L 31/08 - 31/119
H01L 31/18 - 31/20
H10K 30/60 - 30/65
H10K 39/30 - 39/38
H04B 10/00 - 10/90
H04J 14/00 - 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームが入射する受光面を有し、受光面に入射するレーザビームの平均パワーを測定する第1センサと、
前記第1センサの受光面からの散乱光が入射する位置に配置され、入射するレーザビームのピークパワーを測定する第2センサと
を有するレーザパワー計測装置。
【請求項2】
前記第1センサの受光面で散乱された光を集めて前記第2センサに入射させる集光光学部品を、さらに有する請求項1に記載のレーザパワー計測装置。
【請求項3】
前記第1センサの受光面へのレーザビームの入射角が22.5°以下であり、前記集光光学部品は、前記第1センサの受光面で正反射された光が入射する位置に配置されている請求項2に記載のレーザパワー計測装置。
【請求項4】
前記集光光学部品は集光コーンであり、集光コーンの内面は円錐台の側面を構成しており、円錐台の底面に相当する位置の入側開口部が前記第1センサの方を向き、円錐台の上面に相当する位置の出側開口部が前記第2センサの方を向いている請求項3に記載のレーザパワー計測装置。
【請求項5】
前記集光光学部品の内面の頂角は、前記第1センサの受光面で散乱されて前記集光光学部品の入側開口部の縁に入射する光が出側開口部を通って外部に出力される大きさである請求項4に記載のレーザパワー計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザパワー計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振器の出力変動や、ピークパワーが規定値に達しないウィークパルスの発生を検出するために、レーザ発振器の出口にパワーメータ及びフォトディテクタが配置される。レーザビームを処理対象物に入射させている期間も、出力変動やウィークパルスの検出を行うために、レーザビームの経路にビームスプリッタを配置して、レーザビームの一部をパワーメータ及びフォトディテクタに導いている。ビームスプリッタで分岐したレーザビームのエネルギは、一般的に、元のレーザビームのエネルギの2%~5%程度である。
【0003】
下記の特許文献1に、レーザ発振器から出力されたレーザビームをパワーメータ及びフォトディテクタで検出し、レーザ出力の安定化を図ったレーザ制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-147105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーメータ及びフォトディテクタにレーザビームを導くために、レーザビームの経路上に2個のビームスプリッタを配置することになり、合計で4%~5%程度のエネルギロスが発生する。また、2つのビームスプリッタを配置するためのスペースが必要である。
【0006】
本発明の目的は、エネルギロスを抑制し、省スペース化を図ることが可能なレーザパワー計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
レーザビームが入射する受光面を有し、受光面に入射するレーザビームの平均パワーを測定する第1センサと、
前記第1センサの受光面からの散乱光が入射する位置に配置され、入射するレーザビームのピークパワーを測定する第2センサと
を有するレーザパワー計測装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
第1センサの受光面からの散乱光が第2センサに入射するため、第2センサにレーザビームの一部を入射させるためのビームスプリッタを配置する必要がない。ビームスプリッタの枚数を削減できることにより、エネルギロスを抑制し、省スペース化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施例によるレーザパワー計測装置を搭載したレーザ加工装置の概略図である。
図2図2は、レーザ発振器の光軸を含む断面図である。
図3図3は、実施例によるレーザ発振器の光軸に垂直な断面図である。
図4図4は、レーザパワー計測装置の概略平面図である。
図5図5は、比較例によるレーザパワー計測装置の概略図である。
図6図6A図6Cは、図5に示した比較例によるレーザパワー計測装置のフォトディテクタに入射するパルスレーザビームのビームプロファイルを示すグラフであり、図6D図6Fは、図1図4に示した実施例によるレーザパワー計測装置のフォトディテクタに入射するパルスレーザビームのビームプロファイルを示すグラフである。
図7図7は、他の実施例によるレーザパワー計測装置の概略平面図である。
図8図8は、さらに他の実施例によるレーザパワー計測装置の概略平面図である。
図9図9A及び図9Bは、受光面で散乱されて集光光学部品の入側開口部の縁に入射した光の経路の一例を示す図であり、図9Cは、円錐台面の頂角の大きさと、フォトディテクタから出力される電圧信号の大きさとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図6Fを参照して、一実施例によるレーザパワー計測装置について説明する。
図1は、本実施例によるレーザパワー計測装置50を搭載したレーザ加工装置の概略図である。レーザ加工装置は、レーザ発振器12、レーザパワー計測装置50 加工装置80、及びレーザ電源60を含む。
【0011】
レーザ発振器12は架台11の上に支持されており、架台11は共通ベース100に固定されている。加工装置80は、ビーム整形光学系81及びステージ82を含む。ステージ82の上に加工対象物90が保持される。ビーム整形光学系81及びステージ82は、共通ベース100に固定されている。レーザパワー計測装置50は、例えばビーム整形光学系81と共通の光学定盤に支持される。共通ベース100は、例えば床である。
【0012】
レーザ発振器12は、パルスレーザビームを出力する。レーザ発振器12として、例えば炭酸ガスレーザ発振器が用いられる。レーザ発振器12から出力されたパルスレーザビームが、ビーム整形光学系81によってビームプロファイルを整形され、加工対象物90に入射する。レーザパワー計測装置50は、レーザ発振器12から出力されたパルスレーザビームの平均パワー及びピークパワーを測定し、パワーに応じた電圧信号を出力する。平均パワーは、パルスエネルギにパルスの繰り返し周波数を乗じることにより求まるパワーである。ピークパワーは、パルスエネルギをパルス幅で除した値で近似される。レーザパワー計測装置50から出力された電圧信号がアンプ59を経由してレーザ電源60に入力される。
【0013】
レーザ電源60は、制御装置61及び放電電圧印加装置62を含む。制御装置61は、ピークパワーの測定値を一定時間積分し、積分値に応じて放電電圧の大きさを制御する機能を持つ。放電電圧印加装置62は、制御装置61で制御された放電電圧の大きさに基づいて、レーザ発振器12の放電電極に放電電圧を印加する。
【0014】
図2は、レーザ発振器12の光軸を含む断面図である。レーザ発振器12は、レーザ媒質ガス及び光共振器20等を収容するチェンバ15を含む。チェンバ15にレーザ媒質ガスが収容される。チェンバ15の内部空間が、相対的に上側に位置する光学室16と、相対的に下側に位置するブロワ室17と区分されている。光学室16とブロワ室17とは、上下仕切り板18で仕切られている。なお、上下仕切り板18には、レーザ媒質ガスを光学室16とブロワ室17との間で流通させる開口が設けられている。ブロワ室17の側壁から光学室16の底板19が、光共振器20の光軸20Aの方向に張り出しており、光学室16の光軸方向の長さが、ブロワ室17の光軸方向の長さより長くなっている。
【0015】
チェンバ15の底板19が、4個の支持箇所45で架台11(図1)に支持されている。4個の支持箇所45は、平面視において長方形の4個の頂点に相当する位置に配置されている。
【0016】
光学室16内に、一対の放電電極21及び一対の共振器ミラー25が配置されている。一対の放電電極21は、それぞれ電極ボックス22に固定されている。放電電圧印加装置62(図1)から放電電極21に放電電圧が印加される。一対の電極ボックス22は複数の電極支持部材23を介して底板19に支持されている。一対の放電電極21は、上下方向に間隔を隔てて配置され、両者の間に放電領域24が画定される。放電電極21は放電領域24に放電を生じさせることにより、レーザ媒質ガスを励起させる。一対の共振器ミラー25は、放電領域24を通る光軸20Aを持つ光共振器20を構成する。後に図3を参照して説明するように、放電領域24を図2の紙面に垂直な方向にレーザ媒質ガスが流れる。
【0017】
一対の共振器ミラー25は、光学室16内に配置された共通の共振器ベース26に固定されている。共振器ベース26は、光軸20Aの方向に長い板状の部材であり、複数の光共振器支持部材27を介して底板19に支持されている。
【0018】
光共振器20の光軸20Aを一方向(図1において左方向)に延伸させた延長線と光学室16の壁面との交差箇所に、レーザビームを透過させる光透過窓28が取り付けられている。光共振器20内で励振されたレーザビームが光透過窓28を透過して外部に放射される。
【0019】
ブロワ室17にブロワ29が配置されている。ブロワ29は、光学室16とブロワ室17との間でレーザ媒質ガスを循環させる。
【0020】
図3は、実施例によるレーザ発振器12の光軸20A(図2)に垂直な断面図である。図2を参照して説明したように、チェンバ15の内部空間が上下仕切り板18により、上方の光学室16と下方のブロワ室17とに区分されている。光学室16内に、一対の放電電極21及び共振器ベース26が配置されている。一対の放電電極21は、それぞれ電極ボックス22に固定されている。電極ボックス22は、複数の電極支持部材23によってチェンバ15の底板19(図2)に支持されている。一対の放電電極21の間に放電領域24が画定される。共振器ベース26は、複数の光共振器支持部材27によってチェンバ15の底板19(図2)に支持されている。電極支持部材23及び光共振器支持部材27は、図3に示した断面からずれた位置に配置されているため、図3において電極支持部材23及び光共振器支持部材27を破線で表している。
【0021】
光学室16内に仕切り板40が配置されている。仕切り板40は、上下仕切り板18に設けられた開口18Aから放電領域24までの第1ガス流路41、放電領域24から上下仕切り板18に設けられた他の開口18Bまでの第2ガス流路42を画定する。レーザ媒質ガスは、放電領域24を、光軸20A(図2)に対して直交する方向に流れる。放電方向は、レーザ媒質ガスが流れる方向、及び光軸20Aの両方に対して直交する。ブロワ室17、第1ガス流路41、放電領域24、及び第2ガス流路42によって、レーザ媒質ガスが循環する循環路が形成される。ブロワ29は、この循環路をレーザ媒質ガスが循環するように、矢印で示したレーザ媒質ガスの流れを発生させる。
【0022】
ブロワ室17内の循環路に、熱交換器43が収容されている。放電領域24で加熱されたレーザ媒質ガスが熱交換器43を通過することによって冷却され、冷却されたレーザ媒質ガスが放電領域24に再供給される。
【0023】
図4は、レーザパワー計測装置50の概略平面図である。スライドプレート51の上に光学用ホルダ52が固定されている。光学用ホルダ52に、ビームスプリッタ53、第1センサとしてのパワーメータ54、及び第2センサとしてのフォトディテクタ55が取り付けられている。レーザ発振器12(図2)から出力されたパルスレーザビームLBがビームスプリッタ53に入射角45°で入射する。スライドプレート51は、パルスレーザビームLBの光軸に沿って移動可能である。
【0024】
ビームスプリッタ53に入射したパルスレーザビームの約2%~5%の成分がビームスプリッタ53を透過してパワーメータ54の受光面54Aに入射する。受光面54Aへの入射角は、例えば45°である。ビームスプリッタ53に入射したパルスレーザビームLBのうち残りの成分はビームスプリッタ53で反射され、ビーム整形光学系81(図1)に入射する。ビームスプリッタ53として、部分反射鏡または偏光ビームスプリッタ等を使用することができる。
【0025】
パワーメータ54は、受光面54Aに入射したパルスレーザビームの平均パワーを測定する。平均パワーの測定値に応じた電圧信号がレーザ電源60に入力される。パワーメータ54の受光面に入射したパルスレーザビームの一部は、受光面54Aで散乱される。散乱光の一部が、フォトディテクタ55の受光面55Aに入射する。フォトディテクタ55の受光面55Aは、パワーメータ54の受光面54Aで正反射した光が入射する位置に配置されている。一般的に、フォトディテクタ55の受光面55Aの面積は、パワーメータ54の受光面54Aの面積より小さい。
【0026】
フォトディテクタ55として、例えばMCT(HgCdTe)センサが用いられる。MCTセンサは、応答速度が速いという特徴を有しており、例えばナノセカンドレベルの応答特性を有している。したがって、フォトディテクタ55は、ナノセカンド程度のパルス幅のレーザパルスのパルス波形及びピークパワーを測定することができる。
【0027】
フォトディテクタ55が受光面55Aに入射する光のパワーに応じた電圧信号を出力する。この電圧信号は、アンプ59を介してレーザ電源60に入力される。
【0028】
次に、図5図6Fを参照して、上記実施例の優れた効果について説明する。
図5は、比較例によるレーザパワー計測装置の概略図である。パルスレーザビームLBの一部の成分が第1ビームスプリッタ53Aで反射されて、フォトディテクタ55の受光面55Aに入射する。第1ビームスプリッタ53Aを透過したパルスレーザビームの一部が第2ビームスプリッタ53Bを透過してパワーメータ54の受光面54Aに入射する。第2ビームスプリッタ53Bで反射されたパルスレーザビームが、レーザ加工に利用される。第1ビームスプリッタ53Aで反射されたパルスレーザビーム及び第2ビームスプリッタ53Bを透過したパルスレーザビームの合計のエネルギに相当するエネルギロスが生じる。
【0029】
図5に示した比較例では、第1ビームスプリッタ53Aと第2ビームスプリッタ53Bとの2枚のビームスプリッタが、パルスレーザビームLBの経路に沿って異なる位置に配置されている。これに対して本実施例では、1枚のビームスプリッタ53が使用されている。本実施例では、比較例と比べてビームスプリッタの枚数を削減することにより、パルスレーザビームLBの経路長の長大化を抑制することができ、その結果、省スペース化を図ることができる。
【0030】
図5に示した比較例では、第1ビームスプリッタ53Aと第2ビームスプリッタ53Bとで合計2回のエネルギロスが生じる。これに対して本実施例では、エネルギロスはビームスプリッタ53による1回のみである。したがって、本実施例では、比較例と比べてエネルギロスを少なくすることができる。
【0031】
パルスレーザビームの発振デューティの変化、レーザ媒質ガスの劣化、レーザ発振器12(図2図3)内の光学部品の劣化や汚れ等により、パルスレーザビームの光軸のずれや、ビームプロファイルの変化が発生する。次に、光軸のずれやビームプロファイルの変化が発生した場合における本実施例の優れた効果について説明する。
【0032】
図6A図6Cは、図5に示した比較例によるレーザパワー計測装置のフォトディテクタ55に入射するパルスレーザビームのビームプロファイルを示すグラフである。横軸はビームスポット内の位置を表し、縦軸は光強度を表す。ビームスポットの中心が、レーザビームの光軸の位置に相当する。光軸調整を行った時点では、パルスレーザビームの光軸(ビームスポットの中心)が、受光面55Aの中心に一致する。ビームスポットは受光面55Aより大きい。
【0033】
図6Aに示した例では、パルスレーザビームLB(図5)の光軸が、光軸調整された光軸の位置からずれていない。このため、ビームスポットの中心(ガウシアンビームの場合は、光強度が最大になる位置)が受光面55Aの中心と一致している。
【0034】
図6Bに示した例では、図5において破線で示したようにパルスレーザビームLBの光軸が、光軸調整された光軸の位置からずれており、ビームスポットの中心が受光面55Aの中心からずれている。このため、受光面55Aに入射するレーザパワーの積分値は、図6Aの場合と比べて小さくなる。このように、パルスレーザビームLBのピークパワーに変動がなくても、光軸がずれると、フォトディテクタ55から出力される電圧信号が低下してしまう。
【0035】
図6Cに示した例では、パルスレーザビームLBの光軸はずれておらず、ビームスポットの中心と受光面55Aの中心とが一致しているが、ビームプロファイルが崩れている。このため、受光面55Aに入射するレーザパワーの積分値は、図6Aの場合の積分値から変動する。このように、パルスレーザビームLBのピークパワーに変動がなくても、ビームプロファイルが崩れると、フォトディテクタ55から出力される電圧信号が変動してしまう。
【0036】
ピークパワーに変動がなくても、フォトディテクタ55から出力される電圧信号が変動すると、レーザ電源60(図1)は、ピークパワーが変動したと判定して放電電圧を制御してしまう。したがって、放電電圧の正常な制御が行えなくなり、制御が破綻してしまう。なお、パワーメータ54(図4図5)の受光面54Aは、フォトディテクタ55の受光面55Aより広いため、このような問題は生じにくい。
【0037】
図6D図6Fは、図1図4に示した実施例によるレーザパワー計測装置50のフォトディテクタ55に入射するパルスレーザビームのビームプロファイルを示すグラフである。
【0038】
図6Dに示した例では、パルスレーザビームLB(図4)の光軸が、光軸調整された光軸の位置からずれておらず、ビームスポットの中心が受光面55Aの中心と一致している。本実施例では、パワーメータ54の受光面54A(図4)で散乱された散乱光(拡散光)がフォトディテクタ55の受光面55Aに入射するため、受光面55Aの位置におけるビームプロファイルは、図6Aの場合に比べてブロードになり、フラット形状に近づく。
【0039】
図6Eに示した例では、パルスレーザビームLB(図4)の光軸が、光軸調整された光軸の位置からずれており、ビームスポットの中心が受光面55Aの中心からずれている。ところが、ビームプロファイルがブロードで、フラット形状に近いため、光軸のずれが生じていないとき(図6D)からの、レーザパワーの積分値の低下量は少ない。
【0040】
図6Fに示した例では、パルスレーザビームLBの光軸はずれておらず、ビームスポットの中心が受光面55Aの中心に一致しているが、ビームプロファイルが崩れている。ただし、元のビームプロファイルがフラットに近いため、ビームプロファイルが崩れたとしても、受光面55Aに入射するレーザパワーの積分値の変動量は少ない。
【0041】
このように、本実施例においては、パルスレーザビームLBの光軸のずれや、ビームプロファイルの崩れが発生しても、フォトディテクタ55からの電圧信号の変化量は少ない。このため、パルスレーザビームLBの光軸のずれ、またはビームプロファイルの崩れが生じたときに、放電電圧の制御の破綻が生じにくくなる。
【0042】
比較例における上記問題点を解決するために、第1ビームスプリッタ53Aで反射したパルスレーザビームを積分球に導入して、積分球内で拡散反射した光をフォトディテクタ55で検出する手法も考えられる。この手法では、新たに積分球を配置しなければならないため、装置の大型化及びコスト増を招くことになる。
【0043】
次に、図7を参照して他の実施例によるレーザパワー計測装置について説明する。以下、図1図4に示した実施例によるレーザパワー計測装置と共通の構成については説明を省略する。
【0044】
図7は、本実施例によるレーザパワー計測装置50の概略平面図である。本実施例においては、パワーメータ54の受光面54Aとフォトディテクタ55の受光面55Aとの間に、集光光学部品30が配置されている。集光光学部品30は、パワーメータ54の受光面54Aで散乱された光を集めてフォトディテクタ55の受光面55Aに入射させる。
【0045】
集光光学部品30として集光コーンを用いる。集光コーンは円錐台の側面(以下、円錐台面という場合がある。)を構成する内面を有する。円錐台の底面に相当する位置に設けられた入側開口部31が、円錐台の上面に相当する位置に設けられた出側開口部32より大きい。入側開口部31がパワーメータ54の受光面54Aの方を向き、出側開口部32がフォトディテクタ55の受光面55Aの方を向く。パワーメータ54の受光面54Aで散乱され、集光光学部品30の入側開口部31に入射した光が、出側開口部32を通ってフォトディテクタ55の受光面55Aに入射する。
【0046】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。本実施例では、パワーメータ54の受光面54Aで散乱した光を集めてフォトディテクタ55の受光面55Aに入射させている。このため、図1図4に示した実施例と比べて、フォトディテクタ55の受光面55Aに入射する光のパワーが大きくなる。言い換えると、フォトディテクタ55の受光面55Aに入射する光のパワーを低下させることなく、ビームスプリッタ53の透過率を下げることができる。ビームスプリッタ53の透過率を下げることにより、エネルギロスを低下させることができる。
【0047】
実際に、集光光学部品30の有無以外の条件を同一にして、集光光学部品30を配置した構成と配置していない構成とで、フォトディテクタ55でパルスレーザビームのパワーを測定する評価実験を行った。集光光学部品30を配置した構成では、配置しない構成と比べて、1パルスに相当する電圧波形の面積が約3.3倍になった。この評価実験により、集光光学部品30を配置すると、フォトディテクタ55の受光面55Aに入射する光のパワーが増加することが確認された。
【0048】
レーザ発振器12として炭酸ガスレーザを用いる場合、パルスレーザビームの波長は約10.6μmであるため、機械加工によって集光コーンの円錐台面を形成しても反射面として機能させることができる。高精度な鏡面仕上げを行う必要がないため、集光コーンを追加配置することによるコスト上昇を抑制することができる。
【0049】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では集光光学部品30に集光コーンを用いたが、散乱光を集めて特定の領域に入射させることができる他の光学部品を用いてもよい。例えば、集光レンズ、凹面鏡等を用いてもよい。また、上記実施例では、集光コーンの側面を円錐台の側面で構成しているが、その他に多角錐台、例えば四角錐台の側面で構成してもよいし、放物面で構成してもよい。さらに、集光光学部品30として、内部反射型放物面レンズ等を用いてもよい。内部反射型放物面レンズは、入射端面から入射した光を放物面の側面で反射することにより、出射端面に集める光学部品である。
【0050】
次に、図8を参照してさらに他の実施例によるレーザパワー計測装置について説明する。以下、図1図4に示した実施例、及び図7に示した実施例によるレーザパワー計測装置と共通の構成については説明を省略する。
【0051】
図8は、本実施例によるレーザパワー計測装置50の概略平面図である。図7に示した実施例では、パワーメータ54の受光面54AへのパルスレーザビームLBの入射角が45°である。これに対して本実施例では、入射角θiが22.5°以下である。受光面54Aで正反射した光が入射する位置に、フォトディテクタ55の受光面55Aを配置している。すなわち、受光面54AへのパルスレーザビームLBの入射点から受光面55Aの中心点に向かうベクトルと、受光面54Aの法線ベクトルとのなす角度θrが入射角θiに等しい。
【0052】
集光光学部品30の円錐面の中心軸が、受光面54AへのパルスレーザビームLBの入射点から受光面55Aの中心点に向かう直線に一致するように、集光光学部品30が配置されている。
【0053】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、パワーメータ54の受光面54Aへのパルスレーザビームの入射角θiが22.5°以下であるため、入射角θiが45°の場合と比べて、受光面54Aに形成されるビームスポットが小さくなる。ビームスポットが小さいと、受光面54Aからの散乱光が集光光学部品30に、より多く取り込まれる。これにより、パルスレーザビームLBのより多くのエネルギをフォトディテクタ55に集めることができる。言い換えると、フォトディテクタ55の受光面55Aに入射する光のパワーを低下させることなく、ビームスプリッタ53の透過率を下げることができる。ビームスプリッタ53の透過率を下げることにより、エネルギロスを低下させることができる。
【0054】
入射角θi以外の条件を同一にし、入射角θiが45°のときと22.5°のときとで、フォトディテクタ55から出力される電圧信号を測定した。その結果、入射角θiを22.5°にすると、入射角θiが45°のときと比べて、フォトディテクタ55の出力が約1.2倍になった。このように、入射角θiを小さくすることにより、フォトディテクタ55の受光面55Aに入射する光のパワーを大きくすることができる。受光面55Aに入射する光のパワーを大きくする十分な効果を得るために、入射角θiを22.5°以下にすることが好ましい。
【0055】
次に、図9A図9Cを参照して、集光コーンの円錐台面の好ましい形状について説明する。
【0056】
図9A及び図9Bは、受光面54Aで散乱されて集光光学部品30の入側開口部31の縁に入射した光の経路の一例を示す図である。図9A図9Bとでは、集光光学部品30の円錐台面の頂角が異なっており、図9Bに示した円錐台面の頂角が、図9Aに示した円錐台面の頂角より大きい。ここで、円錐台面の頂角とは、円錐台面を側面とする円錐台を含む円錐の頂角を意味する。
【0057】
図9Aに示すように、受光面54Aで散乱されて集光光学部品30の入側開口部31の縁に入射した光は、円錐台面で複数回反射した後、出側開口部32を通って外部に出力される。図9Bに示すように、円錐台面の頂角を大きくすると、受光面54Aで散乱されて集光光学部品30の入側開口部31の縁に入射した光が円錐台面で反射を繰り返して入側開口部31に戻ってしまう場合がある。
【0058】
実際に、円錐台面の頂角の大きさが異なる複数の集光光学部品30を用いて、フォトディテクタ55から出力される電圧信号を測定する評価実験を行った。評価実験では、2つの受光面54A、55Aの中心同士を結ぶ直線上における入側開口部31及び出側開口部32の位置を固定し、入側開口部31の大きさを変化させた。
【0059】
図9Cは、円錐台面の頂角の大きさと、フォトディテクタ55から出力される電圧信号の大きさとの関係を示すグラフである。横軸は円錐台面の頂角を正規化した値で表し、縦軸はフォトディテクタ55からの電圧信号の大きさを正規化した値で表す。頂角がある大きさの時、フォトディテクタ55からの電圧信号が最大値を示す。このときの頂角の大きさを1として頂角を正規化する。また、このときのフォトディテクタ55からの出力を1として、出力を正規化する。
【0060】
正規化頂角が1から大きくなるにしたがって、フォトディテクタ55の正規化出力が低下する。これは、図9Bに示したように、入側開口部31に入射した光の一部が出側開口部32を通って出力されず、入側開口部31に戻ってくる成分が多くなるためである。また、正規化頂角が1から小さくなっても、フォトディテクタ55の正規化出力が低下する。これは、入側開口部31の面積が小さくなることにより、集光光学部品30に集められる散乱光の量が減少するためである。
【0061】
図9Cに示したように、円錐台面の頂角には、フォトディテクタ55の出力を最大にする最適値が存在する。例えば、集光光学部品30の円錐台面の頂角は、パワーメータ54の受光面54Aで散乱されて集光光学部品の入側開口部の縁に入射する光が、出側開口部を通って外部に出力される大きさとすることが好ましい。また、この条件満たす範囲内で、入側開口部31を最も大きくすることが好ましい。
【0062】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0063】
11 架台
12 レーザ発振器
15 チェンバ
16 光学室
17 ブロワ室
18 上下仕切り板
18A、18B 開口
19 底板
20 光共振器
20A 光軸
21 放電電極
22 電極ボックス
23 電極支持部材
24 放電領域
25 共振器ミラー
26 共振器ベース
27 光共振器支持部材
28 光透過窓
29 ブロワ
30 集光光学部品
31 入側開口部
32 出側開口部
40 仕切り板
41 第1ガス流路
42 第2ガス流路
43 熱交換器
45 支持箇所
50 レーザパワー計測装置
51 スライドプレート
52 光学用ホルダ
53 ビームスプリッタ
53A 第1ビームスプリッタ
53B 第2ビームスプリッタ
54 パワーメータ(第1センサ)
54A 受光面
55 フォトディテクタ(第2センサ)
55A 受光面
59 アンプ
60 レーザ電源
61 制御装置
62 放電電圧印加装置
80 加工装置
81 ビーム整形光学系
82 ステージ
90 加工対象物
100 共通ベース

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9