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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】建築物及び建築物の換気方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20240419BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240419BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240419BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20240419BHJP
   F24F 13/22 20060101ALN20240419BHJP
【FI】
F24F7/007 Z
F24F7/06 Z
F24F13/02 C
E04B1/70 B
F24F13/22 221
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020121956
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022024325
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-01-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月6日「ロジポート川崎ベイ1階倉庫床結露対策工事 打ち合わせ」において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】那須 知巳
(72)【発明者】
【氏名】江藤 優太
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-003321(JP,A)
【文献】特開2010-007925(JP,A)
【文献】特開2009-002574(JP,A)
【文献】実開平04-103539(JP,U)
【文献】特開2007-285687(JP,A)
【文献】特開2009-092364(JP,A)
【文献】特開平08-136033(JP,A)
【文献】特開2014-142148(JP,A)
【文献】特開2015-016934(JP,A)
【文献】特開2018-017419(JP,A)
【文献】特開2011-149604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0238231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/06
F24F 13/02
F24F 13/22
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に形成された室及び前記室が接続されている共通室と、
前記共通室と外部空間とを連通する開口部に設置された外部扉と、
前記内部空間の空気を前記外部空間に排出する排気装置と、を備え、
前記共通室は、
当該共通室の内部の空気を除湿する除湿装置を備え、
前記室は、
前記共通室及び前記外部空間と連通自在に構成されており、
前記排気装置は、
前記共通室の内部の空気を前記室に送り、当該室の内部の空気を前記外部空間に排出し、
前記共通室は、
両端が外部に接続されている通路であり、
前記開口部は、
前記共通室の一端に設けられている第1開口部と、
前記共通室の他端に設けられている第2開口部と、を備え、
前記共通室は、
第1送風機及び第2送風機を備え、
前記第1送風機は、前記第1開口部から当該共通室の内側に向かう気流を生じさせ、
前記第2送風機は、前記第2開口部から当該共通室の内側に向かう気流を生じさせる、建築物。
【請求項2】
前記室は、
複数の室を含み、
前記複数の室は、それぞれが前記共通室と接続されている、請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
記複数の室は、
前記第1開口部から前記第2開口部に向かう第1方向に沿って並列に配置されている、請求項2に記載の建築物。
【請求項4】
前記複数の室は、
通路である前記共通室に対し、前記第1方向に交差する第2方向の両側に配置されている、請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
前記第1送風機及び前記第2送風機のそれぞれは、
前記共通室の床面に向かう気流を生じさせる、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の建築物。
【請求項6】
内部空間に形成された室及び前記室が接続されている共通室と、
前記共通室と外部空間とを連通する開口部に設置された外部扉と、
前記内部空間の空気を前記外部空間に排出する排気装置と、を備え、
前記共通室は、
当該共通室の内部の空気を除湿する除湿装置を備え、
前記室は、
前記共通室及び前記外部空間と連通自在に構成されており、
前記排気装置は、
前記共通室の内部の空気を前記室に送り、当該室の内部の空気を前記外部空間に排出し、
前記室は、
複数の室を含み、
前記複数の室は、それぞれが前記共通室と接続されており、
前記共通室は、
両端が外部に接続されている通路であり、
前記開口部は、
前記共通室の一端に設けられている第1開口部と、
前記共通室の他端に設けられている第2開口部と、を備え、
前記複数の室は、
前記第1開口部から前記第2開口部に向かう第1方向に沿って並列に配置されており、
前記共通室は、
前記第1開口部と前記第2開口部との間の中央部と、前記中央部に対し前記第1開口部又は前記第2開口部が設置されている側に位置する端部とを定義したときに、
前記除湿装置は、
前記中央部よりも前記端部のほうが除湿能力が高くなるように設置されている、築物。
【請求項7】
前記外部扉は、
開閉自在な電動シャッターである、請求項1~請求項の何れか1項に記載の建築物。
【請求項8】
内部空間に形成された室及び前記室が接続されている共通室と、
前記共通室と外部空間とを連通する開口部に設置された外部扉と、
前記内部空間の空気を前記外部空間に排出する排気装置と、を備え、
前記共通室は、
当該共通室の内部の空気を除湿する除湿装置を備え、
前記室は、
前記共通室及び前記外部空間と連通自在に構成されており、
前記排気装置は、
前記共通室の内部の空気を前記室に送り、当該室の内部の空気を前記外部空間に排出し、
前記外部扉は、
開閉自在な電動シャッターであり、
前記外部扉は、
物体が前記外部扉に近接したことを検知する近接センサーにより開く、築物。
【請求項9】
前記共通室は、
当該共通室の内部の温度を調整する空調装置を備える、請求項1~請求項の何れか1項に記載の建築物。
【請求項10】
前記排気装置は、
前記外部空間と前記室とを隔てる外部壁に設けられている換気扇を含む、請求項1~請求項の何れか1項に記載の建築物。
【請求項11】
前記排気装置は、
前記共通室と前記室とを隔てる内部壁に設けられている換気扇を含む、請求項1~請求項10の何れか1項に記載の建築物。
【請求項12】
内部空間に形成された少なくとも1つの室及び前記室が接続されている共通室と、
前記共通室と外部空間と連通する開口部に設置された外部扉と、を備える建築物の換気方法であって、
前記共通室は、
両端が外部に接続されている通路であり、
前記開口部は、
前記共通室の一端に設けられている第1開口部と、
前記共通室の他端に設けられている第2開口部と、を備え、
前記共通室の内部の空気を除湿し、
前記第1開口部から当該共通室の内側に向かう気流を生じさせるとともに、前記第2開口部から当該共通室の内側に向かう気流を生じさせ、
前記共通室から前記室を経て前記外部空間に空気を流す、建築物の換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部空間の除湿を効率的に行うことができる建築物及び建築物の換気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、倉庫などの建築物は、気温の低い冬季や湿度の高い夏季において、床面、壁面及び天井面に結露が生じることがある。特に、コンクリートにより形成された床面は温度が変化しにくい。そのため、例えば夜間に冷却された床面に暖かい湿度の高い空気が触れることにより、結露が生じる。結露が生じると、建築物の内部に保管されているものが湿気により劣化又は腐食する等の不具合が生じるばかりでなく、内部で作業している作業者又は走行する車両が床面の水分により滑り事故を引き起こす場合がある。
【0003】
上記のような課題を解決するためには、建築物内の湿気を除去する必要がある。特許文献1に開示されている倉庫によれば、倉庫の内部空間の上方位置にエアサーキュレータが配置されている。そして、エアサーキュレータは、複数の保管物の隙間に空気を送りこんでいる。これにより、湿気が溜まりやすい保管物の隙間の空気を循環させ、保管物の隙間の湿気を減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-49400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている倉庫は、内部空間の空気を循環させるものであるため、内部空間の空気の湿度が高い場合には、例えばその空気が床面に触れて結露が発生するのを抑制できないという課題があった。また、内部空間の空気を外部と換気したとしても、例えば外気の湿度が高い夏季においては、内部空間の空気の湿度が下がらず、床面、壁面及び天井面に生じる結露を抑制できないという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであって、内部の各室の除湿を効率的に行うことができる建築物及び建築物の換気方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る建築物は、内部空間に形成された室及び前記室が接続されている共通室と、前記共通室と外部空間とを連通する開口部に設置された外部扉と、前記内部空間の空気を前記外部空間に排出する排気装置と、を備え、前記共通室は、当該共通室の内部の空気を除湿する除湿装置を備え、前記室は、前記共通室及び前記外部空間と連通自在に構成されており、前記排気装置は、前記共通室の内部の空気を前記室に送り、当該室の内部の空気を前記外部空間に排出し、前記共通室は、両端が外部に接続されている通路であり、前記開口部は、前記共通室の一端に設けられている第1開口部と、前記共通室の他端に設けられている第2開口部と、を備え、前記共通室は、第1送風機及び第2送風機を備え、前記第1送風機は、前記第1開口部から当該共通室の内側に向かう気流を生じさせ、前記第2送風機は、前記第2開口部から当該共通室の内側に向かう気流を生じさせるものである。
【0008】
本発明に係る建築物の換気方法は、内部空間に形成された少なくとも1つの室及び前記室が接続されている共通室と、前記共通室と外部空間と連通する開口部に設置された外部扉と、を備える建築物の換気方法であって、前記共通室は、両端が外部に接続されている通路であり、前記開口部は、前記共通室の一端に設けられている第1開口部と、前記共通室の他端に設けられている第2開口部と、を備え、前記共通室の内部の空気を除湿し、前記第1開口部から当該共通室の内側に向かう気流を生じさせるとともに、前記第2開口部から当該共通室の内側に向かう気流を生じさせ、前記共通室から前記室を経て前記外部空間に空気を流すものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共通室において除湿された空気を各室に送りこむことにより、効率的に各室の除湿を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る建築物100の平面図である。
図2】実施の形態1に係る開口部11bの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。各図は模式的に示すものであって、各部材の相対的な大きさや板厚等は図示する寸法に限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る建築物100の平面図である。図1は、建築物100の内部構造を模式的に表した平面図である。建築物100は、例えば倉庫であり、建築物100の内部空間90が内部壁14及び15により複数の空間に仕切られている。建築物100の内部空間90と外部空間50とは、外部壁16により区切られている。なお、建築物100は、図1に示されている構造の一層で構成されるものに限定されず、上下方向に図1に示されている構造又はその他の構造を多層に積み重ねて形成されたものであっても良い。また、建築物100は、倉庫のほか、工場の建屋、ホテル、病院、又は集合住宅等の内部に複数の室を有するものであっても良い。
【0013】
建築物100は、内部空間90を内部壁14及び15により仕切って形成された共通室10と室20とを備える。実施の形態1において、室20は、複数の室20a~20hを含み、各室20が共通室10に隣接して配置されている。室20と共通室10とは、内部壁14により仕切られている。内部壁14には内部扉17が複数の室20a~20hに対応して設置されている。内部扉17は、室20a~20hと共通室10とを連通自在に形成されている。実施の形態1において、複数の室20a~20hは、建築物100の内部に形成された保管室である。また、内部扉17は、例えば内部壁14に設置されたシャッター又は扉である。
【0014】
(共通室10)
共通室10は、建築物100の中央に配置されており、図1において建築物100を左右方向に貫通するように配置されている。実施の形態1において、共通室10は、保管室である複数の室20a~20hのそれぞれへ、運搬車両が到達できるように設けられた車道である。つまり、建築物100の外部から室20に保管するための荷物を積載したトラックなどの車両が、共通室10の一方の開口部11aから進入し、共通室10を通り室20に到達する。トラックなどの車両は、保管室に荷物を降ろして、共通室10を通り建築物100の外部へと出ていく。なお、共通室の2つの開口部11は、一方を第1開口部と呼び、他方を第2開口部と呼ぶ場合がある。
【0015】
共通室10は、建築物100を横断して貫通しており、両端が建築物100の外部空間50と接続する開口部11a及び11bとなっている。開口部11a及び11bには、外部扉40が設置されている。外部扉40は、共通室10と外部空間50とを仕切るように設置されている。実施の形態1において、外部扉40は、高速で開閉可能な電動シャッターである。例えば、トラック等の車両が外部扉40に近接すると外部扉40は、5秒程度で開き、車両が共通室10の内部に入った後に、10秒程度の時間をかけて閉まる。
【0016】
建築物100は、近接センサー(図示なし)を備える。近接センサーは、車両が外部扉40に近接すると車両を検知する。外部扉40の開閉を制御する制御部(図示なし)は、近接センサーからの検知信号を受けて外部扉40を開く制御を行う。車両が開口部11を通過した後、近接センサーが車両を検知しなくなったら、制御部は、外部扉40を閉じる制御を行う。開口部11の外部扉40の開閉を近接センサーを用いて制御することにより、外部扉40が開放される時間が短縮され、外部空間50の空気が大量に共通室10に流入するのを抑制することができる。なお、外部扉40は、手動で開閉できるように構成されていても良い。
【0017】
(室20)
室20a~20hは、それぞれ独立しており、仕切り壁15により仕切られた空間である。室20a~20hは、それぞれ空調装置等の温度調節装置や除湿装置などが設置されていても良い。室20a~20hは、それぞれ異なる温度管理及び湿度管理がされていてもよく、内部に保管される物品もそれぞれ異なっていても良い。
【0018】
複数の室20は、共通室10の一方の開口部11aから他方の開口部11bに向かう第1方向に沿って並列している。複数の室20は、第1方向に直交する第2方向を定義したときに、共通室10に対し第2方向の両側に位置している。なお、第1方向は図1に示されるx方向に対応しており、第2方向は図1に示されるy方向に対応している。
【0019】
複数の室20a~20dは、共通室10に沿ってx方向に4つ並べられている。複数の室20e~20hは、共通室10を挟んで複数の室20a~20dに対向するようにx方向に4つ並べられている。
【0020】
実施の形態1において、複数の室20は、それぞれ内部にトラックバース(図示なし)が設置されている。トラックバースは、トラックなどを駐車し、荷物を積み卸しするためのスペースである。トラックバースの奥には、荷物を保管するための保管室が設置されている。トラックバースと車道である共通室10とは、内部壁14により仕切られているが、内部壁14には内部扉17が設置されており、内部扉17を開放することによりトラックバースと車道とは行き来が自在になっている。なお、複数の室20の内部の構造は、適宜変更することができ、例えばトラックバースが設置されていなくとも良い。
【0021】
室20a~20hのそれぞれに対応して設置されている内部扉17は、トラックなどの車両が来て荷物を出し入れする時間帯においては開放されており、それ以外は閉じることができる。内部扉17は、共通室10と室20とを連通している。実施の形態1においては、内部扉17は、開閉自在なシャッターであり、共通室10と室20とを連通する開口を開閉するものである。内部扉17を開閉することにより、トラック等の車両は、室20内に出入りできる。
【0022】
また、共通室10と室20とを区切る内部壁14には、送風口18が設けられている。送風口18は、共通室10の空気を室20に送ることができるように構成されており、換気扇などの送風機が設けられていても良いし、共通室10から室20へ空気が通過するような孔だけで構成されていても良い。送風口18は、内部扉17が閉じられた状態においても共通室10と室20とを連通し、少なくとも共通室10から室20へ空気が流れる様に構成されている。
【0023】
室20と外部空間50とを区切る外部壁16a及び16bには、排気口19が設けられている。排気口19は、例えば換気扇などの送風機が設けられていても良いし、室20の内部から外部空間50に空気が通過する様に構成された孔だけで構成されていても良い。
【0024】
(外部扉40)
図2は、実施の形態1に係る開口部11bの拡大図である。共通室10の両端は、外部空間50に連通している開口部11となっている。図2に示されるように開口部11bは、外部扉40が設置されている。外部扉40は、共通室10と外部空間50とを遮断する様に形成されていても良い。しかし、実施の形態1においては、外部扉40が閉じられた状態においても建築物100の内部は、外部空間50との間で所定の換気量が得られるようにするため、外部扉40と開口部11bとの間に所定の隙間が形成されている。この隙間を換気口30と呼ぶ。実施の形態1において換気口30は、人が通れる程度の隙間となっており、作業者等が建築物100に出入りする際にも利用できる。なお、開口部11aも、開口部11bと同様に構成されている。
【0025】
実施の形態1において、外部扉40は、外部扉40a及び40bの2つの扉を含む。建築物100は、例えば倉庫であり、トラックなどの運搬車両が出入りするものであるため、例えば一方の外部扉40aを運搬車両の出口とし、他方の外部扉40bを運搬車両の入口としている。このように構成されることにより、単一の扉で構成された外部扉40を備える建築物100よりも、運搬車両通行時の開口部11が開放される面積を極力小さくできる。また、運搬車両通行時の開口部11が開放される合計時間を短縮することができる。
【0026】
図2に示される様に、開口部11bの近傍の共通室10の端部は、除湿装置31及び32が設置されている。除湿装置31及び32は、例えば天井面から吊り下げられて設置されている。実施の形態1において、除湿装置31及び32は、除湿専用の除湿装置であるが、除湿性能を有する空調装置で構成されても良いし、除湿専用の除湿装置及び空調装置の2種類を設置しても良い。共通室10は、中央部よりも開口部11の近傍である共通室10の端部において除湿能力が高くなる様に除湿装置31及び32を設置すると良い。開口部11の近傍は、外部空間50からの空気の流入があるため、空気の湿度が高くなり易いからである。また、空気の湿度が高くなり易い共通室10の端部において湿度を下げることにより、共通室10の中央部の湿度も低く維持し易くなる。
【0027】
図2に示される様に、共通室10には、送風機33が設置されていても良い。送風機33は、x方向に長手方向が向けられた共通室10の端部から中央部に向かって空気が流れる様に構成される。また、送風機33は、共通室10の床面に向かって空気が流れるように構成されていても良い。これにより、共通室10の床面付近の空気を循環させて、床面付近の空気の湿度を低下させることができるため、床面の結露を抑制することができる。
【0028】
(建築物100内の空気の流れ)
図1及び図2を用いて、建築物100内の空気の流れを説明する。共通室10には、開口部11a及び11bを経て、外部空間50から空気が流入する様に構成されている。外部扉40が開放されている場合は、開放された外部扉40により形成される開口から空気が流入し、外部扉40が閉じられている場合は、換気口30から空気が流入する。実施の形態1においては、図2に示されるように、共通室10の端部に設置された除湿装置31及び32は、共通室10の端部から中央部に向かって空気が流れるように風向が設定されている。このように構成されることにより、除湿装置31及び32で除湿された空気は、共通室10の中央部に向かって流れ、開口部11から外部空間50に流出しない。そのため、共通室10は、効率良く除湿される。
【0029】
ただし、最も開口部11に近い室20a、20d、20e、及び20hの前に設置されている除湿装置31は、風向が室20に向けて設定されていても良い。図2の矢印34a及び34bは、除湿装置31により除湿された空気の流れを示しており、矢印34aで示される空気は、室20dに流入し易くなる。また、矢印34bで示される空気は、室20hに流入し易くなる。このように構成されることにより、開口部11bに最も近い室20d及び20hに除湿された空気が流入し易くなる。つまり、最も外部空間50に近い室20においても、共通室10の除湿された空気が流入し、外部空間50の空気が直接流入するのを抑えることができる。ため、室20d及び20hの内部の空気の湿度を抑えることができる。
【0030】
共通室10の空気は、矢印12で示される様に、複数の室20に流入する。矢印12a~12hで示される空気の流れは、開放された内部扉17を経て室20a~20hのそれぞれに流入するか、内部扉17が閉じられているときには、送風口18を経て室20a~20hのそれぞれに流入する。そして、室20a~20hのそれぞれは、外部空間50と隔てられている外部壁16a及び16bに、排気口19を備える。室20a~20hの内部の空気は、図1の矢印21a~21hのように排気口19から外部空間50へ排出される。
【0031】
室20a~20hは、それぞれ共通室10から空気が流入し、外部空間50へ空気が流出する様に構成されている。具体的には、建築物100は、送風口18に設置された共通室10から室20へ空気が流れるように構成された送風機及び排気口19に設置された室20から外部空間50へ空気が流れる様に構成された送風機の少なくとも一方を備える。
【0032】
送風口18のみに送風機を備える場合、共通室10の空気は、送風口18を経て室20の内部に吸い込まれ、室20の内部の空気は、排気口19から外部空間50に押し出される。
【0033】
排気口19のみに送風機を備える場合、室20の内部の空気は、排気口19を経て外部空間50に吸い出され、共通室10の空気が送風口18を経て複数の室20のそれぞれに吸い込まれる。
【0034】
つまり、建築物100においては、以下のような換気方法が実施されている。内部空間に形成された室20及び室20が接続されている共通室10と、共通室10と外部空間50と連通する開口部11に設置された外部扉40と、を備える建築物100の換気方法であって、換気方法は、共通室10の内部の空気を除湿し、共通室10から室20を経て外部空間50に空気を流すものである。
【0035】
なお、建築物100の内部において、共通室10から複数の室20を経て外部空間50に空気を流す装置を排気装置と呼ぶ。排気装置は、送風口18、排気口19、送風口18又は排気口19に設置された送風機、及び共通室10に設置され開口部11から共通室10の中央部に向かう空気の流れを生じさせる送風機等が該当する。排気装置は、上記に説明した形態のみに限定されず、少なくとも建築物100の内部の空気を共通室10から複数の室20を経て外部空間50に空気を流すように構成されていれば、その他の形態をとることもできる。なお、排気装置は、共通室10から室20を経て外部空間50に空気を流すようにするため、結果として開口部11から共通室10に外部空間50の空気を取り込むことになる。排気装置により、建築物100の内部の空気が循環し、換気される。
【0036】
(実施の形態1の効果)
上記のように建築物100は、外部空間50から開口部11を経て共通室10に空気が流入し、共通室10の空気が複数の室20のそれぞれに流入し、複数の室20から外部空間50に空気が排出される様に構成されている。このとき、送風機が送風口18又は排気口19の何れに設置されていてもよい。つまり、建築物100の空気の流れは、図1に示される様に、外部空間50、開口部11、共通室10、室20、排気口19、外部空間50の順に流れる様に構成されている。これにより、湿度の高い外部空間50の空気が共通室10において集中的に除湿され、除湿された共通室10の空気のみが複数の室20に流入する。そのため、建築物100は、複数の室20のそれぞれにおいて個別に除湿機を設置する、又は増強するなどの対応をしなくとも複数の室20の湿度を抑えることができる。例えば倉庫において、最も湿度が高くなり易い共通室10の湿度を調整するだけで、複数の保管室の湿度を調節できるため、複数の保管室内部の設備を変更することなく湿度を抑えることが可能となる。
【0037】
また、既存の建築物100の除湿能力を向上させる場合であっても、共通室10に除湿装置31及び32を設置し、送風口18又は排気口19に送風機を設置するだけで、上記の外部空間50、開口部11、共通室10、室20、排気口19、外部空間50の順に流れる空気を流すことができる。これにより、建築物100が既存の倉庫である場合に、複数の室20の内部の設備を変更する必要がない。そのため、保管室である室20の内部の物品を移動させる必要がなく、保管室の通常の操業の状態を保持したまま建築物100の除湿対策工事を行える。また、建築物100の除湿対策工事の工事期間を短縮させることも可能となる。
【0038】
なお、外部扉40は、シャッターに限定されず、エアカーテン、開口部11を覆うシート等であっても良い。ただし、実施の形態1のようにシャッターを用いた場合は、外部空間50が天候により強風である場合に、共通室10に外部空間50の空気が大量に流れ込むのを抑制できるという利点がある。例えば、開口部11が天候の影響を受けない環境に面しているのであれば、外部扉40にエアカーテンやシートを適用することも可能である。
【0039】
また、建築物100は、外部空間50、開口部11、共通室10、室20、排気口19、外部空間50の順に空気が流れるように構成されていれば、その空気の流れを生じさせる送風機の設置位置は適宜変更することができる。実施の形態1に係る建築物100の様に、排気口19に送風機を設置することにより、外部空間50から直接室20に外気が流入するのを抑制することができるという利点がある。
【0040】
実施の形態1においては、共通室10及び室20が水平方向に配置されている建築物100について説明したが、建築物100は、例えば室20を上下方向に並べ、共通室10を室20の配列に沿って上下方向に延びる様に配置したものでも良い。この場合、共通室10は、運搬車両が通行する通路ではなく、例えばエレベーターが上下する空間などで構成される。この場合であっても、排気装置が外部空間50、開口部11、共通室10、室20、排気口19、外部空間50の順に空気を流すことにより、効率良く室20の湿度を調節することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。要するに、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0042】
10 共通室、11 開口部、11a 開口部、11b 開口部、12 矢印、12a 矢印、12b 矢印、12c 矢印、12d 矢印、12e 矢印、12f 矢印、12g 矢印、12h 矢印、14 内部壁、15 仕切り壁、16 外部壁、16a 外部壁、17 内部扉、18 送風口、19 排気口、20 室、20a 室、20b 室、20c 室、20d 室、20e 室、20f 室、20g 室、20h 室、21 排気孔、30 換気口、31 除湿装置、33 送風機、34a 矢印、34b 矢印、40 外部扉、40a 外部扉、40b 外部扉、50 外部空間、90 内部空間、100 建築物。
図1
図2