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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240419BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G03G15/00 651
G03G15/02 101
G03G15/02 102
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020122914
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019213
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】倉内 敬広
(72)【発明者】
【氏名】宮西 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 典英
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-044059(JP,A)
【文献】特開平05-273835(JP,A)
【文献】特開2004-233563(JP,A)
【文献】特開平07-248666(JP,A)
【文献】特開2001-159838(JP,A)
【文献】特開平04-252176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、前記感光体の表面を帯電させるように設けられた帯電器と、前記感光体の帯電した表面に光を照射して静電潜像を形成するように設けられた露光部と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成するように設けられた現像部と、前記トナー像を記録媒体上に転写するように設けられた転写部と、前記感光体の表面の残留トナーを除去するように設けられたクリーニング部と、インダクタとを備え、
前記感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層とを備え、
前記導電性基体は、前記インダクタを介してグラウンドに接続し、
前記帯電器は、前記帯電器の表面を前記感光体の表面に接触させることにより前記感光体の表面を帯電させるように設けられ、
前記インダクタのインダクタンスは、200mH以上600mH以下であり、
前記感光層は、積層型感光層であり、
前記積層型感光層は、前記導電性基体上に設けられた電荷発生層と、前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層とを備え、
前記電荷輸送層の厚さは、34μm以上46μm以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記インダクタは、可変インダクタである請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
制御部をさらに備え、
記制御部は、前記画像形成装置の使用環境、前記電荷輸送層の厚さに応じて前記インダクタのインダクタンスを変化させるように設けられた請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
記帯電器の表面の表面粗さRzは、5.0μm以上13μm以下である請求項1~のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などに多用されている。
電子写真方式の画像形成装置の帯電手段には、ワイヤーとケースを用いたコロトロン帯電器、ワイヤーとケースさらにグリッド電極(以下「グリッド」ともいう)を用いたスコロトロン帯電器が多用されている。特に、スコロトロン帯電器は、ワイヤーと感光体表面との間に配置されたグリッドにより、感光体の表面電位を安定して制御できるという利点があり、帯電器として幅広く用いられている。
【0003】
しかしながら、これらの帯電器には、5~8kVの高電圧を印加する必要があり、オゾン発生量が多いという欠点がある。
そこで、このような欠点を解消すべく、帯電器を感光体に接触または近接させる帯電器として、例えば、接触ローラ帯電器、非接触ローラ帯電器、ブラシ帯電器、磁気ブラシ帯電器などの帯電器が開発されてきた。
これらの帯電器は、一部の注入帯電方式のものを除いて、微小空隙放電による帯電方式を利用しており、従来のスコロトロン帯電器と比較して消費電力を低減でき、その欠点であった高圧電源やオゾン発生の問題を解決可能な帯電器として現在の主流の帯電器となってきている。
【0004】
しかしながら、これらの帯電器は、従来のスコロトロン帯電器と比較して省電源コストといった利点を有するが、同時に感光体表面の帯電の均一化が課題としてある。具体的には、感光体と接触型帯電装置を用いた画像形成装置において、出力画像上に、帯電ムラに起因するうろこ状の画像ムラが発生することがある。このような異常放電による帯電ムラに起因する画像ムラは、帯電ローラに直流電圧のみを印加するDC帯電で感光体を帯電させる場合に特に生じ易い。
【0005】
そこで、この画像ムラの発生を抑制するため、感光体の所望の表面電位に相当する直流電圧に帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有する交流電圧成分を重畳した電圧(脈流電圧)を接触帯電部材に印加する交流帯電方式を用いた接触帯電方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、このような交流電圧を重畳するタイプの帯電器では、交流電流を多量に消費することになり、感光体の膜減りが多く、感光体リークを起こし易い。また、高圧の交流電圧を重畳させるため、直流電源とは別に交流電源が必要となり、装置自体のコストアップを招くなどの多くの問題がある。
【0007】
また、帯電ローラの表面層に樹脂粒子を含有させ、帯電ローラの表面に凹凸を形成させることで異常放電を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これは、帯電ローラの表面の凹凸の存在により、被帯電体である感光体とのニップ部において微小な空隙が形成され、点状放電が起きて帯電ムラが抑制されるものと考えられる。しかしながら、帯電ローラ表面の凹凸を大きくすると、画像かぶりが悪くなることが知られている。
【0008】
他方、電子写真プロセスに用いられる感光体は、導電性材料からなる導電性基体上に、光導電性材料を含有する感光層が積層されて構成されている。光導電性材料には、無機系光導電性材料および有機系光導電性材料(有機光導電体:Organic Photoconductor:OPC)があり、近年の研究開発により、感度および耐久性が向上した、有機系光導電性材料を主成分とする感光層を備えた感光体(「有機系感光体」ともいう)が感光体の主流を占めている。
【0009】
有機系感光体としては、導電性基体上に、電荷発生物質および電荷輸送物質をバインダ樹脂に分散させた単層型感光層を備える構成、および電荷発生物質を蒸着またはバインダ樹脂に分散させた電荷発生層上に、電荷輸送物質をバインダ樹脂に分散させた電荷輸送層を積層した負帯電型の積層型感光層を備える構成が提案されている。これらの内、後者の機能分離型の感光体は、電子写真特性および耐久性に優れ、材料選択の自由度が高く、感光体特性を様々に設計できることから近年になって広く実用化されている。
【0010】
省資源化の観点から、感光体の交換頻度を減らすため、長寿命の感光体の開発が求められている。感光体の寿命を決める因子として、最表面層の膜減りがある。膜減りが進むと、画像かぶりや感光体リーク等による黒点等の画像不良を生じる。そこで、最表面層の膜厚を厚くして長寿命化を達成する試みがなされている。
また、うろこ状の画像ムラを生じさせる帯電ムラは、帯電ローラへの印加電圧がある閾値電圧を超えると発生することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、感光体の表面層を厚膜化すると、感光体のキャパシタンスが低下し前記閾値電圧が上がることが知られている。(例えば、非特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭63-149668号公報
【文献】特開2003-316112号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】日本画像学会誌 第42巻第3号p209-p214
【文献】日本画像学会誌 第56巻第1号p98-p106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
感光体を長寿命化するために感光体の最表面層の膜厚を厚くすると、画像形成装置の実使用領域で、帯電ムラが生じうろこ状帯の画像ムラが生じる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、長期にわたって高品質の画像を形成することができる画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、感光体と、前記感光体の表面を帯電させるように設けられた帯電器と、前記感光体の帯電した表面に光を照射して静電潜像を形成するように設けられた露光部と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成するように設けられた現像部と、前記トナー像を記録媒体上に転写するように設けられた転写部と、前記感光体の表面の残留トナーを除去するように設けられたクリーニング部と、インダクタとを備え、前記感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層とを備え、前記導電性基体は、前記インダクタを介してグラウンドに接続することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置に含まれる感光体の導電性基体がインダクタを介してグラウンドに電気的に接続することにより、異常放電が起こる閾値電圧を下げることができ、容易に実使用領域でうろこ状帯電ムラ(うろこ状画像ムラ)の発生を抑制することができる。このことは、本発明者等が行った実験により明らかになった。また、感光層の最表面層の膜厚を厚くすることが可能になり、感光体の寿命を長くすることができる。この結果、本発明の画像形成装置によれば、長期にわたって高品質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の画像形成装置の概略図である。
図2】(a)は積層型感光層の概略断面図であり、(b)は単層型感光層の概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態の画像形成装置に含まれる帯電器及び感光体の回路図である。
図4】インダクタの切り替えを説明するための回路図である。
図5】インピーダンス変化の説明図である。
図6】可変インダクタの接続を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の画像形成装置は、感光体と、前記感光体の表面を帯電させるように設けられた帯電器と、前記感光体の帯電した表面に光を照射して静電潜像を形成するように設けられた露光部と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成するように設けられた現像部と、前記トナー像を記録媒体上に転写するように設けられた転写部と、前記感光体の表面の残留トナーを除去するように設けられたクリーニング部と、インダクタとを備え、前記感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層とを備え、前記導電性基体は、前記インダクタを介してグラウンドに接続することを特徴とする。
【0018】
前記インダクタのインダクタンスは、10mH以上500mH以下であることが好ましい。このことにより、画像形成装置の画像品質を向上させることができる。具体的には、インダクタンスが10mH~500mHで、ハーフトーン画像上のうろこ状帯電ムラ発生を抑制することができ、白点および画像かぶりが良好にすることができる。このことは、本願発明者等が行った実験により実証された。
前記インダクタは、可変インダクタであることが好ましい。
本発明の画像形成装置の制御部は、画像形成装置の使用環境、感光体の電荷輸送層の厚さ又は感光体の単層型感光層の厚さに応じてインダクタのインダクタンスを変化させるように設けられることが好ましい。このことにより、使用環境の変化、感光層の厚さの変化などで画像品質が低下することを抑制することができる。また、本発明者等が行った実験により、電荷輸送層の膜厚が比較的厚くインダクタのインダクタンスが大きいと印刷品質が良好であり、電荷輸送層の膜厚が比較的薄くインダクタのインダクタンスが小さいと印刷品質が良好になることが明らかになった。このため、電荷輸送層又は単層型感光層が薄くなるにつれインダクタのインダクタンスを小さくすることにより印刷品質の低下を抑制することができる。
【0019】
感光層の電荷輸送層の厚さ又は単層型感光層の厚さは、34μm以上46μm以下であることが好ましい。このことにより、感光体の寿命特性を向上させることができ、かつ、高品質の画像を形成することができる。また、本発明者等が行った実験では、電荷輸送層の厚さを34μm、40μm、46μmとした実験で印刷品質が良好となった。
前記帯電器は、帯電器の表面を感光体の表面に接触又は近接させることにより感光体の表面を帯電させるように設けられることが好ましく、前記帯電器の表面の表面粗さRzは、5.0μm以上13μm以下であることが好ましい。このことにより、画像形成装置の画像品質を向上させることができる。また、本発明者等が行った実験では、帯電ローラの表面粗さRzを5.0μm、8.2μm、13.0μmとした実験で印刷品質が良好となった。
【0020】
以下、複数の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0021】
第1実施形態
図1は、本実施形態の画像形成装置の概略図である。
画像形成装置50は、感光体2と、感光体2の表面を帯電させるように設けられた帯電器7と、感光体2の帯電した表面に光を照射して静電潜像を形成するように設けられた露光部11と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成するように設けられた現像部12と、前記トナー像を記録媒体26上に転写するように設けられた転写部13と、感光体2の表面の残留トナーを除去するように設けられたクリーニング部14と、インダクタ6とを備える。感光体2は、導電性基体3と、導電性基体3上に設けられた感光層4とを備える。導電性基体3は、インダクタ6を介してグラウンドに接続する。
また、画像形成装置50は、定着部19、電源部18a、18b、制御部15、分離爪20、除電部などを有することができる。
【0022】
(1)画像形成装置
画像形成装置50は、電子写真技術を用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置50は、図1に示したようなモノクロ画像を形成できるモノクロ画像形成装置であってもよく、カラー画像を形成できる中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置50は、例えば、トナー像がそれぞれ形成される複数の感光体を所定方向(例えば、水平方向または鉛直方向)に並設した構成を有する所謂タンデム式のフルカラー画像形成装置である。また、画像形成装置50は、他のカラー画像形成装置、複写機、複合機またはファクシミリ装置であってもよい。
【0023】
(2)感光体
感光体2はその表面に静電潜像及びトナー像が形成される部材であり、感光体2が回転することにより連続的に画像が形成される。感光体2は、例えば感光体ドラムである。
感光体2は、画像形成装置50の本体(図示せず)に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体2の芯体を構成する導電性基体3に伝達することによって、感光体2を所定の周速度で回転駆動させる。帯電器7、露光部11、現像部12、転写部13およびクリーニング部14は、この順序で、感光体2の外周面に沿って、感光体2の回転方向の上流側から下流側に向って設けられる。これらの画像形成装置50を構成する各構成要素は、筐体(ハウジング)23に収容されている。
【0024】
感光体2は、導電性基体3と、導電性基体3上に設けられた感光層4とを備える。また、感光体2は、導電性基体3と感光層4との間に下引き層10を備えてもよい。感光層4は、積層型感光層であってもよく、単層型感光層であってもよい。
図2(a)は積層型感光層を有する感光体4の要部の構成を示す概略断面図であり、図2(b)は単層型感光層を有する感光体4の要部の構成を示す概略断面図である。
積層型感光層(感光層4)は、導電性基体3上に電荷発生物質を含有する電荷発生層8と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層9とがこの順で積層された構造を有する。単層型感光層(感光層4)は、電荷発生物質および電荷輸送物質を含有し導電性基体3上に設けられる。
【0025】
(2-1)導電性基体
導電性基体3は、感光体2の電極としての機能と支持部材としての機能とを有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
導電性基体3の構成材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼およびチタンなどの金属材料、ならびに表面に金属箔ラミネート、金属蒸着処理または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布した、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン)ポリエステル、ポリオキシメチレンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙ならびにガラスなどが挙げられる。これらの中でも、加工の容易性の点からアルミニウムおよびアルミニウム合金が好ましく、JIS3003系(Al-Mn系)、JIS5000系(Al-Mg系)およびJIS6000系(Al-Mg-Si系)などのアルミニウム合金が特に好ましい。
【0026】
導電性基体3の形状は、図1に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
導電性基体3の直径および長さは、例えば、それぞれ10~300mm程度および200~1000mm程度である。
また、導電性基体3の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、レーザ光による干渉縞防止のために、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
導電性基体3は、インダクタ6を介してグラウンドに接続する。このことにより、印刷画像を高品質化することができる。このことは後述する。
【0027】
(2-2)下引き層
下引き層10は、導電性基体3と感光層4との間に配置される。下引き層10は、一般に、導電性基体3の表面の凸凹を被覆し均一にして、感光層4の成膜性を高め、感光層4の導電性基体3からの剥離を抑え、導電性基体3と感光層4との接着性を向上させる。具体的には、導電性基体3からの感光層4への電荷の注入を防止して、感光層4の帯電性の低下を防ぎ、画像のかぶり(いわゆる黒ぽち)の発生を防止する。
下引き層10は、例えば、バインダ樹脂を適当な溶剤に溶解または分散させて下引き層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体3の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成することができる。
【0028】
バインダ樹脂としては、例えば、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、ウレタン樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダ樹脂は、下引き層10上に感光層4を形成する際に用いられる溶剤に対して溶解や膨潤などが起こらないこと、導電性基体3との接着性に優れること、可撓性を有することなどの特性が要求されることから、上記のバインダ樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂およびピペラジン系化合物を含有したポリアミド樹脂が好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば、6-ナイロン、66-ナイロン、610-ナイロン、11-ナイロンおよび12-ナイロンなどの単独重合または共重合ナイロン、N-アルコキシメチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させたタイプなどが挙げられる。
また、バインダ樹脂を架橋する硬化剤を用いて、硬化膜としてもよい。硬化剤としては、塗液の保存安定性や電気特性の観点からブロック化イソシアネートが好ましい。
【0029】
溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、2-ブタノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらの溶剤は、バインダ樹脂の溶解性、下引き層10の表面平滑性などから適切な溶剤を選択し、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、例えば、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。
【0030】
下引き層形成用塗布液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。金属酸化物粒子は、下引き層10の体積抵抗値を容易に調節することができ、電荷発生層8および単層型感光層5への電荷の注入をさらに抑制することができると共に、各種環境下において感光体2の電気特性を維持することができる。
金属酸化物粒子に用いることができる材料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどが挙げられる。
下引き層形成用塗布液におけるバインダ樹脂と金属酸化物粒子との合計質量Aと溶剤の質量Bとの比率(A/B)としては、例えば、1/99~40/60程度が好ましく、2/98~30/70程度が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の質量Cと金属酸化物粒子の質量Dとの比率(C/D)としては、例えば、90/10~1/99程度が好ましく、70/30~5/95程度が特に好ましい。
【0031】
下引き層形成用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。
これらの中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に導電性基体3を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって導電性基体3の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体2の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
自然乾燥により塗膜中の溶剤を除去してもよいが、加熱により強制的に塗膜中の溶剤を除去してもよい。
【0032】
このような乾燥工程における温度は、使用した溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50~140℃程度が適当であり、80~130℃程度が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがあり、また溶剤が充分に蒸発せず下引き層10中に残ることがある。また、乾燥温度が約140℃を超えると、感光体2の繰り返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化することがある。
このような温度条件は、下引き層10のみならず、後述する感光層4などの層形成や他の処理においても共通する。
【0033】
下引き層10の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.05~10μmである。
下引き層10の膜厚が0.01μm未満では、導電性基体側からの電子の注入のブロッキング性および、光散乱による干渉縞対策に対する十分な効果が得られないことがある。一方、下引き層10の膜厚が20μmを超えると、連続印字した際の感度変化が大きくなり、ひいては画像濃度の変化が大きくなることがある。
【0034】
(2-3)電荷発生層
電荷発生層8は、画像形成装置50などの電子写真装置において、半導体レーザのような光ビームなどの光出射装置で照射された光を吸収することによって電荷を発生する機能を有し、電荷発生物質を主成分とし、必要に応じてバインダ樹脂や添加剤を含有する。
電荷発生物質は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
電荷発生物質は、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料、オキソチタニウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系化合物、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料、ならびに、セレンおよび非晶質シリコーンなどの無機光導電性材料などが挙げられ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択し、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
これらの電荷発生物質の中でも、フタロシアニン系化合物が好ましく、オキソチタニルフタロシアニンがより好ましく、結晶型のオキソチタニルフタロシアニン(「チタニルフタロシアニン」ともいう)が特に好ましい。
結晶型のオキソチタニルフタロシアニンには、α型、β型、Y型などの結晶型があり、これらの中でも、画像特性の点で、Y型オキソチタニルフタロシアニンが好ましく、CuKα線(波長1.541Å)を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.3°、9.4°、9.7°、26.2°および27.3°に少なくとも回折ピークを有しかつ9.4°と9.7°の重なったピーク束が最大ピークであるY型オキソチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0036】
電荷発生層8の形成方法としては、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷発生層形成用塗布液を導電性基体3上または下引き層10上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野で用いられる結着性を有する樹脂および下引き層10の説明で例示したバインダ樹脂を使用することができ、電荷発生物質との相溶性に優れるものが好ましい。
【0037】
バインダ樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルホルマール、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などが挙げられる。共重合体樹脂としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類;1,2-ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、例えば、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。
【0039】
下引き層10と同様に、電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に溶解または分散させるために、ペイントシェーカー、ボールミルおよびサンドミルなどの分散機を用いることができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗布液中に混入しないように、分散条件を適宜設定することが好ましい。
電荷発生物質の質量Eとバインダ樹脂の質量Fとの比率(E/F)としては、例えば、80/20~50/50程度が好ましい。
【0040】
電荷発生層8の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.05~5μmであり、より好ましくは0.1~1μmである。
電荷発生層8の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感光体2の感度が低下することがある。一方、電荷発生層8の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層8内部での電荷移動が感光層4の表面の電荷を消去する過程の律速段階となり感光体2の感度が低下することがある。
【0041】
(2-4)電荷輸送層
電荷輸送層9は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れて感光体2の表面まで輸送する機能を有し、電荷輸送物質およびバインダ樹脂、必要に応じて添加剤を含有する。
電荷輸送物質は、特に限定されず、当該技術分野で用いられる化合物を使用することができる。
電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ-9-ビニルアントラセンなど)、ポリシランなどが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
【0042】
電荷輸送層9の形成方法としては、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷輸送物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層8上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂は、特に限定されず、当該技術分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用することができ、電荷輸送物質との相溶性に優れるものが好ましい。
バインダ樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、ポリフェニレンオキサイドなどの樹脂、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ、成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0043】
溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類;、並びに、N,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。また、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもでき、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、例えば、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。
【0044】
電荷輸送物質の質量Gとバインダ樹脂の質量Hとの比率(G/H)としては、例えば、10/12~10/30程度が好ましい。
電荷輸送層9の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5~50μmであり、本発明においてより好ましくは36~46μmである。このことにより、感光体2を長寿命化することができる。電荷輸送層9の膜厚を厚くすることによりうろこ状帯電ムラ(うろこ状画像ムラ)が発生する場合があるが、本実施形態の画像形成装置50では、導電性基体3をインダクタ6を介してグラウンドに接続させることにより帯電ムラ(画像ムラ)が発生することを抑制することができる。
電荷輸送層9の膜厚が5μm未満では、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。一方、電荷輸送層9の膜厚が50μmを超えると、感光体2の解像度が低下することがある。
【0045】
(2-5)単層型感光層
単層型感光層5は、下引き層10を形成する場合と同様の方法で形成することができる。例えば、電荷発生物質と電荷輸送物質とバインダ樹脂とを、適当な溶剤に溶解または分散させて感光層形成用塗布液を調製し、この感光層形成用塗布液を浸漬塗布法などによって下引き層10上に塗布することによって形成される。
バインダ樹脂は、電荷発生層8の説明において例示されたバインダ樹脂が好ましい。
単層型感光層5は、電荷発生層8に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
【0046】
単層型感光層5中の電荷発生物質の含有量は単層型感光層5の全固形分に対して、0.2~20質量%程度が好ましい。
単層型感光層5の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~50μmである。単層型感光層5の膜厚が5μm未満では、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。一方、単層型感光層5の膜厚が100μmを超えると、感光体2の製造における生産性が低下することがある。
【0047】
(3)帯電器
帯電器7は、感光体2の表面を均一に所定の電位に帯電させる装置である。帯電器7としては、例えば、ローラ形状、ベルト形状、ブレード形状などの接触帯電器を利用できる。
なお、帯電器7への電圧の印加は、電源部(高電圧印加装置)18aのコスト、感光体2および帯電器7の寿命などの観点から、直流電圧のみとするのが最適である。
ここでは、帯電器7としてローラ状の接触帯電器を用いた例について説明する。
帯電器7は、導電性支持体28を基体としてその外周面上に、被覆層として弾性層29および抵抗層30をこの順で有することができる。
【0048】
(3-1)導電性支持体
導電性支持体28は、導電性を有しかつ帯電器7としての強度を保持し得るものであれば特に限定されず、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウムおよびニッケルから選択される少なくとも1つの金属材料からからなる丸棒が挙げられる。また、導電性支持体28は、導電性が損なわれない限り、防錆や耐傷性付与のために、その表面にメッキ処理が施されていてもよい。
【0049】
(3-2)弾性層
弾性層29は、被帯電体としての感光体2に対する給電や、帯電器7の感光体2に対する良好な均一密着性を確保するために、適当な導電性と弾性とを有している。
帯電器7と感光体2との均一密着性を確保するためには、弾性層29は、弾性層29を研磨して、その中央部が一番太く、中央部から両端部に向けて細くなる形状(所謂、クラウン形状)であるのが好ましい。
一般的に、帯電器7は、導電性支持体28の両端部に所定の押圧力を与えることによって感光体2と当接される。このため、押圧力が中央部では小さく、両端部ほど大きくなっている。したがって、帯電器7の真直度が十分である場合には問題ないが、十分ではない場合には中央部と両端部に対応する画像に濃度ムラが生じてしまうという問題がある。また、A3ノビ対応機種の増加やカラー機の増加により帯電領域が拡大してきているため、導電性支持体28の両端部のみへの押圧力によって帯電器7自体がたわみ易くなっており、中央部にギャップができるといった問題が起きている。このような理由により弾性層29をクラウン形状とすることが好ましい。
【0050】
弾性層29は、ゴムなどの弾性材料中に、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物などの電子伝導機構を有する導電剤、ならびにアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩などのイオン伝導機構を有する導電剤を適宜添加し、公知の方法により形成することができる。その体積抵抗は、1×1010Ωcm未満の導電性を示すように調整されることが好ましい。
弾性材料としては、例えば、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)およびクロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、さらには、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
弾性層29の膜厚は、例えば、特に限定されないが、好ましくは1~3mm、より好ましくは1.5~2mmである。
【0051】
(3-3)抵抗層
抵抗層30は、弾性層29に接して形成され、弾性層29中に含有される軟化油や可塑剤などの帯電器表面へのブリードアウトを防止すると共に、帯電器全体の電気抵抗を調整するために設けられる。
抵抗層30を形成する材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種類以上を混合体あるいは共重合体として用いることができる。
【0052】
抵抗層30は、導電性または半導電性を有している。このため、上記の材料に、電子伝導機構を有する導電剤(例えば、導電性カーボン、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)、またはイオン伝導機構を有する導電剤(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等)を適宜添加することによって形成される。
この場合、所望の電気抵抗を得るために、各種導電剤を2種以上併用してもよい。但し、環境変動や感光体の汚染を考慮すると、電子伝導機構を有する導電剤を用いることが好ましい。
【0053】
帯電器7は、5.0μm以上13μm以下の表面粗さRzを有することが好ましい。表面粗さを示す指標には、例えば、十点平均表面粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)、最大粗さ(Ry)、凹凸の平均間隔(Sm)などがあるが、本発明において「表面粗さ」とは、特に言及しない限り、十点平均表面粗さ(Rz)を意味する。
帯電器7の表面には、通常、凹凸が形成されているが、帯電器7の表面粗さを上記の範囲にすることにより、常に安定した帯電電位を確保でき、また問題のないレベルのトナークリーニング性を確保することができ、これにより、常に良好な画像を得ることができる。特に帯電器7に直流電圧のみを印加する場合には、帯電器表面の凸部(突起)が適度な放電ポイントとなり、常に安定した帯電電位を確保することができる。つまり、帯電器7の表面に凸部と凹部とが形成されることによって、当該凸部が感光体2の表面を帯電することになる。
【0054】
帯電器7の表面粗さが3.0μm未満では、ハーフトーン画像上の状帯電ムラを抑制できないことがある。一方、帯電器7の表面粗さが16μmを超えると、ハーフトーン画像上のうろこ状帯電ムラを抑制できるものの、画像かぶりが悪化することがある。
帯電器7の表面粗さは、帯電器7の表面層(抵抗層30)の研磨条件の変更により調整することができる。また、より帯電を安定化させるために、帯電器7の表面層(抵抗層30)にフィラーを含有させてもよい。この場合、フィラーの種類、粒径を変更することにより、帯電器表面の突起の分散状態をよくすることが望ましい。
【0055】
フィラーは、発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されずない。フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリナイト、アスベスト、中空ガラス球、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、アルミニウム繊維、ステンレススチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩などが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2樹以上を組み合わせて用いることができる。
抵抗層30の膜厚は、例えば、特に限定されないが、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは 5μm~20μmである。
【0056】
(4)露光部
露光部11は、画像情報に基づいて変調された光を出射する装置である。露光部11は、半導体レーザまたは発光ダイオードを光源として備えることができ、光源から出力されるレーザビーム光を、帯電器7と現像部12との間の感光体2の表面(外周面)に照射することによって、帯電した感光体2の表面に対して画像情報に応じた露光を施すことができる。光は、主走査方向である感光体2の回転軸線の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体2の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器7により均一に帯電された感光体2の帯電量がレーザビームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
【0057】
(5)現像部
現像部(現像器)12は、露光によって感光体2の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー25を含む)によって現像する装置であり、感光体2と対向して設けられ、感光体2の表面にトナーを供給する現像ローラ31と、現像ローラ31を感光体2の回転軸線と平行または略平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナー25を含む現像剤を収容するケーシング32とを備える。
【0058】
(6)転写部
転写部(転写帯電器)13は、現像によって感光体2の表面に形成された可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって所定の搬送方向から感光体2と転写部13との間に供給される記録媒体26である転写紙上に転写させる装置である。転写部13は、電源部18b(高電圧印加装置)により、感光体2と転写部13との間に形成される転写ニップ部に所定の高電圧を印加する。転写部13は、帯電器7と同様に構成することができ、例えば、記録媒体26にトナー25と逆極性の電荷を与えることによってトナー像を記録媒体26上に転写させる接触式の転写手段である。
【0059】
(7)定着部
定着部(定着器)19は、転写部13により記録媒体26に転写されたトナー像を記録媒体26に定着させる装置である。定着部19は、記録媒体26の搬送方向において感光体2と転写部13との間の転写ニップ部よりも下流側に設けられ、例えば、定着部19は、加熱ローラと、それに対向して設けられる加圧ローラとを備えて、加圧ローラは、加熱ローラに押圧されて定着ニップ部を形成する。
【0060】
(8)クリーニング部
クリーニング部(クリーナ)14は、転写部13による転写動作後に感光体2の表面に残留するトナーを除去し回収する清掃装置である。クリーニング部14は、感光体2の表面に残留するトナー25を剥離させるクリーニングブレード34と、それによって剥離されたトナー25を収容する回収用ケーシング35とを備える。
【0061】
(9)除電部、分離爪
画像形成装置50は、感光体2に残留する表面電荷を除電する除電部をさらに備えることが好ましく、クリーニング部14と共に設けることができる。また、画像形成装置50は、記録媒体26を感光体2から分離する分離爪20をさらに備えることが好ましい。
【0062】
(10)画像形成装置の動作
画像形成装置50の動作を説明する。
まず、感光体2が駆動手段によって所定の回転方向に回転駆動されると、露光部11による光の結像点よりも感光体2の回転方向上流側に設けられる帯電器7から感光体2の表面に負電荷が供給され、感光体2の表面が所定電位に均一に帯電する。例えば、図2(a)(b)のように、感光体2の表面に負電荷が蓄積し、感光体2の表面が帯電する。また、図2(a)(b)のように、帯電した感光体2の表面に対向する導電性基体3の表面において、感光体2の表面の負電荷のクーロン力により正電荷が生じる。このことにより、感光体2の表面の負電荷が安定化し、感光体2の表面が均一に帯電する。従って、帯電ムラが生じることを抑制するには、感光体2の表面の負電荷のクーロン力により導電性基体3の表面に速やかに正電荷を生じさせることが重要である。
また、負に帯電した感光体2の表面、正に帯電した導電性基体3の表面、及びこの2つの間の感光層4は、感光層4を誘電体層とするキャパシタとみなすことができる。
また、導電性基体3は、インダクタ6を介してグラウンドに接続するため、クーロン力により導電性基体3の表面に正電荷が生じると、導電性基体3とグラウンドとの間に電荷が流れることにより、導電性基体3の電荷バランスが調整される。また、インダクタ6により電荷の流れが急激に変化することを抑制することができる。このことにより、導電性基体3の表面に速やかに正電荷を生じさせることができる。帯電器7及び感光体2の回路図は、例えば、図3のように表すことができる。
【0063】
図3では1つのインダクタ6を示しているが、画像形成装置50は、導電性基体3とグラウンドとの間にインダクタンスの異なる複数のインダクタ6を有してもよい。また、複数のインダクタ6は、導電性基体3とグラウンドとの間のインダクタ6を切り替えることができるように設けることができる。例えば、図4のように、画像形成装置50は、インダクタ6a~6c(異なるインダクタンスL1~L3を有する)を有することができる。また、スイッチSW1~SW3を用いて導電性基体3とグラウンドとの間のインダクタ6を切り替えることができる。
【0064】
次いで、露光部11から、画像情報に応じた光が均一に帯電された感光体2の表面に照射される。感光体2は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光部11による光の結像点よりも感光体2の回転方向下流側に設けられる現像部12から、静電潜像の形成された感光体2の表面にトナー25が供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0065】
感光体2に対する露光と同期して、記録媒体26の搬送方向から記録媒体26が、感光体2と転写部13との間の転写ニップ部に供給される。転写部13によって、供給された記録媒体26にトナー25と逆極性の電荷が与えられ、感光体2の表面に形成されたトナー像が、記録媒体26上に転写される。
トナー像が転写された記録媒体26は、搬送手段によって定着部19に搬送され、定着部19の加熱ローラと加圧ローラとの当接部、定着ニップ部を通過する際にトナー像が加熱および加圧され、記録媒体26に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された記録媒体26は、搬送手段によって画像形成装置50の外部へ排紙される。
【0066】
一方、転写部13によるトナー像の転写後も感光体2の表面上に残留するトナー25は、クリーニング部14のクリーニングブレード34によって感光体2の表面から剥離され、回収用ケーシング35に回収される。
このようにしてトナー25が除去された感光体2の表面の電荷は除去され、その表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体2はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
画像形成装置50がクリーニング部14の下流側でかつ帯電器7に至るまでに除電部を備える場合には、除電部の除電ランプからの光によって、感光体2の表面の電荷が効率的にかつより確実に除去されて、感光体2の表面上の静電潜像が消失する。
【0067】
(11)制御部
制御部15は、画像形成装置50を制御する部分である。制御部15は、例えば、CPU、メモリ、タイマー、入出力ポートなどを有するマイクロコントローラを含むことができる。制御部15のメモリは、画像形成装置50を制御するための制御ソフトウェアを記憶している。
また、画像形成装置50は、画像形成装置50の使用環境を検知できるように設けられた温湿度センサーを有することができる。
【0068】
(12)インダクタ
インダクタ6(コイル)は、導線がコイル状に巻いた素子である。インダクタ6は、コイルの断面積S、巻き数N、コア(透磁率μ)に応じたインダクタンスLを有する。
インダクタ6は、コアを有してもよく、コアを有さなくてもよい。インダクタ6は、例えば、強磁性またはフェリ磁性の素材を芯(コア)として、その周りに銅線等の電線を巻くことにより形成することができる。空気より高透磁率のコア素材を使うことで磁場を強化してそれをコイル内に閉じ込めることができ、それによってインダクタンスLを増大することができる。
芯(コア)としては、特に限定されず、当該技術分野で用いられる材料、例えばフェライト、モリブデン、ニッケル、鉄、カーボニル鉄、鉄、ケイ素アルミニウムを使用することができる。
インダクタ6としては、特に限定されないが、電源回路や大電力の信号回路に用いられるもので、高い周波数の交流電流を妨げ、比較的低い周波数の交流電流や直流電流を通すチョークコイルがより好ましい。
【0069】
インダクタ6のインダクタンスは、10mH以上500mH以下であることが好ましい。
3mH以下ではインピーダンス変化が小さく、うろこ状の帯電ムラを抑制効果が出来ないことがある。また、600mH以上では弊害となる白点が発生することがある。
【0070】
インダクタ6は、導電性基体3がインダクタ6を介してグラウンド(接地)に接続するように設けられる。このことにより、うろこ状の画像ムラが発生することを抑制することができる。このことは、本発明者等が行った実験により明らかになった。
インダクタ6を設けることにより画像ムラの発生を抑制することができる理由は明らかではないが、次のように考えられる。
一般にうろこ状帯電ムラには、帯電器7と感光体2とのインピーダンスマッチングが大きく影響する。
帯電器7のインピーダンスZrollを一定とすると、感光体2のインピーダンスZopc=R+j(ωL-1/ωC)であり、感光層4の厚膜化により静電容量C(上述のキャパシタの静電容量)が下がってインピーダンスが変化した分を、インダクタ6により補完することでインピーダンスを戻し(図5)、安定な帯電が可能となったと考えられる。
【0071】
第2実施形態
第2実施形態では、インダクタ6が可変インダクタである。可変インダクタは、インダクタンスを変更できるように設けられたインダクタである。可変インダクタは、コイル中において芯(コア)を移動させることができるような構造を有する。可変インダクタでは、芯(コア)を移動させて巻き線との位置をずらすことで透磁率を変化させることにより、インダクタンスを変化させることができる。芯の移動は制御部15で制御することができる。従って、制御部15を用いて可変インダクタのインダクタンスを制御することができる。例えば、可変インダクタは図6に示した回路図のように設けることができる。
【0072】
画像形成装置50の印刷画像(ハーフトーン画像、白ベタ画像など)のうろこ状ムラ、白点、かぶりなどは、画像形成装置50の使用環境、電荷輸送層9の厚さ又は単層型感光層5の厚さに応じてわずかに現れる。このようなわずかなうろこ状ムラ、白点、かぶりなどの発生を、可変インダクタのインダクタンスを変化させることにより抑制することができる。従って、使用環境の変化、感光層4の厚さの変化などで画像品質が低下することを抑制することができる。
【0073】
具体的には、制御部15は、温湿度センサの測定結果に基づき可変インダクタの芯を移動させインダクタンスを変化させるように設けることができる。このことにより、使用環境に応じてインダクタンスを変化させることができる。
また、制御部15は、感光体の積算回転数に基づき可変インダクタの芯を移動させインダクタンスを変化させるように設けることができる。積算回転数から電荷輸送層9の厚さ又は単層型感光層5の厚さが予想できることから、電荷輸送層9の厚さ又は単層型感光層5の厚さに応じてインダクタンスを変化させることができる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。また、第1実施形態についての記載は矛盾がない限り第2実施形態についても当てはまる。
【0074】
画像形成装置作製実験
表1に示した電荷輸送層の膜厚dを有する感光体と、表1に示した表面粗さRzを有する帯電ローラと、表1に示したインダクタンスLを有するインダクタを作製し、感光体、帯電ローラ、インダクタをデジタル複写機(シャープ株式会社製、商品名:MX-B455W)を改造した試験用複写機に組み込み、実施例1~21の画像形成装置を作製した。また、導電性基体とグラウンドとの間にインダクタを設けていない比較例1、2の画像形成装置及び導電性基体とグラウンドとの間にキャパシタを設けた比較例3、4の画像形成装置も作製した。キャパシタには積層セラミックコンデンサ(村田製作所製)を使用した。
【0075】
感光体は次のように作製した。
酸化チタン(昭和電工株式会社製、商品名:TS-043)3質量部および共重合ポリアミド(ナイロン)(東レ株式会社製、商品名:CM8000)2質量部を、メチルアルコール25質量部に加え、ペイントシェーカー(分散機)にて8時間分散処理して下引き層形成用塗布液3kgを調製した。
次いで、浸漬塗布法により、具体的には、得られた塗布液を塗布槽に満たし、直径30mm、長さ225mmのアルミニウム製のドラム状基体を塗布液に浸漬した後、引き上げ、乾燥して、膜厚1.0μmの下引き層を形成した。
【0076】
電荷発生物質として、Y型オキソチタニルフタロシアニン1質量部(日本資材株式会社製、商品名TPL-530)、およびバインダ樹脂として、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂(積水化学工業株式会社製、商品名:BX-1)1質量部を、メチルエチルケトン98質量部に加え、メディアとしてガラスビーズ(アズワン株式会社製、商品名:BZ-1、ビーズ径:1mm)用い、ペイントシェーカーにて2時間分散処理して電荷発生層形成用塗布液3kgを調製した。
次いで、下引き層の形成と同様に、浸漬塗布法にて電荷発生層形成用塗布液を下引き層の表面に塗布した。具体的には、得られた電荷発生層形成用塗布液を塗布槽に満たし、下引き層が形成されたドラム状基体を塗布液に浸漬した後、引き上げ、自然乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0077】
【化1】
【0078】
電荷輸送物質として、[化1]で表されるトリフェニルアミン系化合物(TPD)(東京化成工業株式会社製、商品名:D2448)2質量部、およびバインダ樹脂として、Z型ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)3質量部に、テトラヒドロフラン24質量部を加え、撹拌・混合して、電荷輸送層形成用塗布液3kgを調製した。
次いで、下引き層の形成と同様に、浸漬塗布法にて電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の表面に塗布した。具体的には、得られた電荷輸送層形成用の塗布液を塗布槽に満たし、電荷発生層が形成されたドラム状基体を塗布液に浸漬した後、引き上げ速度を変えることで表1に示す実施例1~21及び比較例1~4の膜厚とした。その後、130℃で1時間乾燥して、各種膜厚の電荷輸送層を形成した。
【0079】
具体的には、実施例18、19では電荷輸送層の膜厚dを48μmとし、実施例16、17では電荷輸送層の膜厚dを46μmとし、実施例1~10、比較例2~4では電荷輸送層の膜厚dを40μmとし、実施例14、15、比較例1では電荷輸送層の膜厚dを34μmとし、実施例11~13では電荷輸送層の膜厚dを32μmとし、実施例20、21では電荷輸送層の膜厚dを28μmとした。
以上のようにして、感光体を作製した。
【0080】
帯電ローラは次のように作製した。
弾性材料として、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(エチレンプロピレンゴム、EPDM)100質量部、導電剤として、カーボンブラック10質量部および発泡剤として、発泡ウレタン10質量部を用いて混練して、弾性層形成用ゴムを得た。
得られたゴムを、予め直径9mm、長さ355mmのSUM23(快削鋼鋼材)製の導電性支持体をセットした金型に流し込み、電気炉を用いて、内部温度160℃で30分間、加熱し、加硫・発泡を行い、膜厚2mmの弾性層を形成した。
【0081】
弾性材料として、ポリアミド系熱可塑性エラストマー100質量部および導電剤として、カーボンブラック20質量部を混練して、抵抗層形成用ゴムを得た。
得られたゴムを、環状ダイスを用いた溶融押出しにより、抵抗層となるシームレスチューブを作製した。得られたシームレスチューブの一端からエアーを吹き込み、チューブを膨らませながら、チューブ内に弾性層が形成れた導電性支持体(ローラ)を挿入することにより、抵抗層を形成した。
【0082】
得られた帯電ローラの表面を加工し、表1に示す実施例1~21および比較例1~4の表面粗さRZとした。表面粗さRZは表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所製、型式:SE-30H)を用いて、十点平均表面粗さ(Rz)として測定した。
具体的には、実施例1~6、11~21、比較例1~4では、表面粗さRzを8.2μmとし、実施例7では表面粗さRzを4.0μmとし、実施例8では表面粗さRzを5.0μmとし、実施例9では表面粗さRzを13.0μmとし、実施例10では表面粗さRzを15.2μmとした。
以上のようにして、直径14mmの帯電ローラを作製した。
【0083】
インダクタは次のように作製した。
芯(コア)としてフェライトを用い、その周りに銅線を巻きその巻き数を変えることで表1に示す実施例1~21のインダクタを作製した。
具体的には、実施例1ではインダクタのインダクタンスLを3mHとし、実施例2、11、20ではインダクタのインダクタンスLを10mHとし、実施例3、12、14ではインダクタのインダクタンスLを100mHとし、実施例4、7~10、13、15、16、21ではインダクタのインダクタンスLを200mHとし、実施例5、17、18ではインダクタのインダクタンスLを500mHとし、実施例6、19ではインダクタのインダクタンスLを600mHとした。
【0084】
実施例1~21の画像形成装置では、感光体の導電性基体を作製したインダクタを介してグラウンドに接続した。比較例1、2の画像形成装置では、感光体の導電性基体を導線を介してグラウンドに接続した(インダクタもキャパシタも設けていない)。比較例3、4の画像形成装置では、感光体の導電性基体をキャパシタ(村田製作所製)を介してグラウンドに接続した。
【0085】
【表1】
【0086】
印刷画像評価実験
30℃/85%(高温/高湿)、25℃/50%(常温/常湿)、および5℃/10%(低温/低湿)のそれぞれの環境における実施例1~21、比較例1~4の画像形成装置の印刷画像を評価した。具体的には、うろこ状帯電ムラ、白点、かぶりを評価した。
【0087】
[評価1:うろこ状帯電ムラ]
各環境下において、感光体表面電位V0/現像バイアスDVBを-750V/-600V、―600V/-450V、―450V/-300V、―300V/-150Vにそれぞれ設定し、ハーフトーン画像で評価した。
得られた結果で、最も悪い感光体表面電位V0/現像バイアスDVBで出力した画像を、下記の基準で判定した。
VG:ムラが全く見られず、非常に良好である。
G :ムラが殆ど見られず、良好である。
NB:所々ムラが見られるが、実使用可能。
B :はっきりとムラが見られ、良好ではない。
【0088】
[評価2:白点]
各環境下において、感光体表面電位V0/現像バイアスDVBを-750V/-600V、―600V/-450V、―450V/-300V、―300V/-150Vにそれぞれ設定し、ハーフトーン画像で評価した。
得られた結果で、最も悪い感光体表面電位V0/現像バイアスDVBで出力した画像を、下記の基準で判定した。
VG:白点が全く見られず、非常に良好である。
G :白点が殆ど見られず、良好である。
NB:所々白点が見られるが、実使用可能。
B :はっきりと白点が見られ、良好ではない。
【0089】
[評価3:かぶり]
各環境下において、感光体表面電位V0/現像バイアスDVBを-750V/-600Vとして、白ベタ画像を分光式色差計(測色色差計、日本電色工業株式会社製、型式:SZ90型)を用いて測定し、画像かぶりを評価した。
得られた結果を、下記の基準で判定した。
VG:非常に良好である(ΔB.G.<0.40)。
G :良好である(0.40≦ΔB.G.<0.70)。
NB:やや良好である(0.70≦ΔB.G.<1.00)。
B :良好でない(1.00≦ΔB.G.)。
【0090】
[総合評価]
評価1~3の判定結果に基づいて、下記の基準で総合判定した。
VG:各項目において、評価VGが5個以上あり、評価NBおよびBがない。
G :各項目において、評価NBおよびBがない。
NB:NBが1個以上ある。
B :Bが1個以上ある。
得られた結果を、表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2の結果から次のことがわかる。
実施例1~21のように、感光体の導電性基体をインダクタを介してグラウンドに接続することで、ハーフトーン画像上のうろこ状帯電ムラ発生が抑制され、白点の評価、および画像かぶりの評価が良好となった。
これに対して、感光体とグラウンドとを導線で接続している比較例1、2、及び、感光体とグラウンドとの間にキャパシタを設けた比較例3、4では、ハーフトーン画像上のうろこ状帯電ムラを抑制することができなかった。
【0093】
実施例1~21では、インダクタンスが10mH~500mHで、ハーフトーン画像上のうろこ状帯電ムラ発生がより抑制され、白点および画像かぶりが良好であった。
使用環境に関して、高温/高湿ではよりインダクタンスの高いインダクタを用いた方が、ハーフトーン画像上のうろこ状帯電ムラ発生が抑制された。一方で低温/低湿ではインダクタンスの高いインダクタを用いるとハーフトーン画像上の白点が出てくるため、インダクタンスを下げた方が好ましい。したがって、環境に応じてインダクタンスを変化させることでより高品質の画像を提供できる。
【0094】
感光体の電荷輸送層の膜厚dに関して、膜厚が厚いほどインダクタンスの高いインダクタを用いた方が、ハーフトーン画像上のうろこ状帯電ムラ発生が抑制された。一方で膜厚が薄いほどインダクタンスの高いインダクタを用いるとハーフトーン画像上の白点が出てくるため、インダクタンスを下げた方が好ましい。したがって、感光体の回転数増加に伴って電荷輸送層の膜厚が薄くなることから、感光体の膜厚が薄くなることに応じてインダクタンスを下げていくことでより高品質の画像を提供できる。
【0095】
例えば、感光体の総回転数が0k回転のときの電荷輸送層の膜厚(初期の膜厚)が46μmである場合(例えば、実施例16、17)、感光体の総回転数が750k回転になると電荷輸送層の膜厚は40μmとなり(例えば、実施例1~6)、感光体の総回転数が1500k回転になると電荷輸送層の膜厚は34μmとなり(例えば、実施例14、15)、感光体の総回転数が1750k回転になると電荷輸送層の膜厚は32μmとなり(例えば、実施例11~13)、感光体の総回転数が2250k回転になると電荷輸送層の膜厚は28μmとなる(例えば、実施例20、21)。
【0096】
総回転数0k回転に対応する実施例16、17では、インダクタンスを500mHとした実施例17は総合判定がVery Goodであったのに対し、インダクタンスを200mHとした実施例16は総合判定がGoodであった。
総回転数750k回転に対応する実施例2~5(インダクタンス10mH~500mH)では総合判定がVery Goodであった。特に、実施例4(インダクタンス200mH)は、Very Goodの数が7個であり優れていた。
総回転数1500k回転に対応する実施例14、15では、インダクタンスを100mHとした実施例14では総合判定がVery Goodであったのに対し、インダクタンスを200mHとした実施例15では総合判定がGoodであった。
このため、総回転数0k回転~1500k回転の範囲(電荷輸送層の膜厚が46μm(初期の膜厚)から34μmになるまで)では、電荷輸送層の膜厚が薄くなるにつれインダクタンスを徐々に下げることにより、印刷画像を良好な状態に保つことができることがわかった。
また、電荷輸送層の膜厚を32μm以下とした実施例(総回転数が1750k回転以上)では、インダクタンス10mH~200mHにおいて印刷品質に大きな差はなかった。
また、電荷輸送層の初期の膜厚が34μm~46μmである範囲においてインダクタを設けることによる効果が最も大きい。
【0097】
例えば、初期(感光体の総回転数0k回転)にインダクタのインダクタンスが500mHとなり、感光体の総回転数750K回転時にインダクタのインダクタンスが200mHとなり、感光体の総回転数1500K回転時に100mHになるように、段階的または徐々にインダクタのインダクタンスが変化するように制御させると画像形成装置のライフを通じて良好な画像を提供することができる。上記はあくまでも例示である。
【0098】
帯電ローラの表面粗さRzが5.0~13.0μmの範囲においてハーフトーン画像上のうろこ状帯電ムラ発生が抑制され、白点、および画像かぶりが良好であった。
【0099】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施することができる。そのため、かかる実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0100】
2:感光体 3:導電性基体 4:感光層 5:単層型感光層 6、6a~6c:インダクタ 7:帯電器 8:電荷発生層 9:電荷輸送層 10:下引き層 11:露光部 12:現像部 13:転写部 14:クリーニング部 15:制御部 18a、18b:電源部 19:定着部 20:分離爪 23:筐体 25:トナー 26:記録媒体(紙) 28:導電性支持体 29:弾性層 30:抵抗層 31:現像ローラ 32:ケーシング 34:クリーニングブレード 35:回収用ケーシング 50:画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6