(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】流体供給装置及び管状体の埋設方法
(51)【国際特許分類】
E21B 17/05 20060101AFI20240419BHJP
E21B 4/06 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
E21B17/05
E21B4/06
(21)【出願番号】P 2020135638
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 渉
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183626(JP,A)
【文献】特開2010-084341(JP,A)
【文献】特開2013-151829(JP,A)
【文献】実開昭62-129487(JP,U)
【文献】特開平03-021719(JP,A)
【文献】特開平09-041858(JP,A)
【文献】特開2019-199776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0074075(US,A1)
【文献】実開昭59-067689(JP,U)
【文献】特開2014-163092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入機が把持して地盤に圧入する管状体の内部に挿入されて掘削を行うビット部を備える
ダウンザホールハンマへ流体を供給する流体供給装置であって、
前記ビット部を駆動させる流体を供給
する流体供給管を有し、前記ビット部を先端に配置するロッド部が接続可能とされる
スイベルと、
上下に開口された円管形状とされて前記流体供給管が挿通され、前記
スイベルの外周に
対して水平に設けられたフランジを介して前記
スイベルに取り付けられ、前記管状体と嵌め合わされる連結部と、
を備え
、
前記スイベルと前記連結部とは、前記ダウンザホールハンマの下端からの前記ビット部の突出状態を変更するために、前記フランジと前記連結部との間にスペーサを介して連結され、
前記連結部と前記管状体とが嵌め合わされた場合に、前記管状体の上方位置が前記連結部の上面の位置に規定され、前記連結部が前記管状体の内周に収まる、流体供給装置。
【請求項2】
前記フランジは、ボルトが挿入される孔が形成され、
前記連結部の上面は、前記ボルトが締結される
ボルト溝が形成される、請求項1に記載の流体供給装置。
【請求項3】
前記フランジは、前記連結部に挿入される突起部を有する、請求項1又は請求項2に記載の流体供給装置。
【請求項4】
前記管状体は、周面に突部が設けられ、
前記連結部は、前記管状体を嵌め込んで、前記管状体の長軸を軸中心として左右何れかの方向に回転させることで前記突部に嵌合する第1嵌合部が形成される、請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の流体供給装置。
【請求項5】
前記管状体は、他の前記管状体に設けられた前記突部を嵌め込んで、前記方向とは逆方向に回転させることで前記突部に嵌合する第2嵌合部が形成される、請求項
4に記載の流体供給装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5の何れか1項に記載の流体供給装置に管状体を連結し、前記管状体の内部に流体を供給しながら前記管状体を回転圧入させて埋設する、管状体の埋設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給装置及び管状体の埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管等の管状体(杭材)を地盤に埋設する際に、管状体の内側の地盤を掘削しながら埋設する工法が従来から行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、下端に掘削刃が設けられた管状体を回転させながら地盤に圧入する管状体の回転圧入方法が開示されている。この特許文献1に記載の回転圧入方法は、多重管からなる流体供給管に接続されたダウンザホールハンマを管状体の内部に挿入するものである。そして、この流体供給管は、ダウンザホールハンマを駆動する駆動流体と、掘削ズリ排出補助流体を供給可能に構成され、管状体の回転圧入とダウンザホールハンマによる地盤の掘削とを併用し、掘削により発生した掘削ズリを、管状体の内部を通して上方へ移送させ外部に排出させる。また、特許文献1では、管状体の回転圧入において、連結する管状体の緩み止めを目的としたボルト等のピンを挿入する必要があり、管状体にピン穴(タップ穴)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示されているようなダウンザホールハンマは、一般的に、打下げアタッチメントとスイベルとが一体とされている。なお、打下げアタッチメントは、駆動流体である水と、掘削ズリ排出補助流体である空気とを供給する流体供給管が内側に配設され、圧入機によって把持される管状体である。また、スイベルは、打下げアタッチメントの上部に配置され、流体供給管に供給される水と空気の供給配管が接続される。
【0006】
しかしながら、このような構成ではダウンザホールハンマの全長が長くなり(一例として、スイベルと打下げアタッチメントの全長が4m以上)、上空制限が低い現場(橋梁の桁下など)ではダウンザホールハンマを使用することができなかった。
【0007】
そこで本発明は、上空制限が低い現場でもダウンザホールハンマを使用可能とする、流体供給装置及び管状体の埋設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の流体供給装置は、地盤に圧入する管状体の内部に挿入されて掘削を行うビット部を駆動させる流体を供給し、前記ビット部を先端に配置するロッド部が接続可能とされる固定部と、前記固定部の外周に設けられたフランジを介して前記固定部に取り付けられ、前記管状体と嵌め合わされる連結部と、を備える。
【0009】
本構成によれば、固定部は流体(一例として水)によってビット部を駆動して掘削するダウンザホールハンマを固定する部材であり、この固定部の外周に設けられたフランジを介して連結部が取り付けられる。そして、連結部に管状体が嵌め合わされ、ダウンザホールハンマを使用しながら管状体の圧入が可能とされる。
【0010】
ここで従来は、固定部と固定部に連結される管状体(打下げパイプ筒部ともいう)とが一体構造となっていたため全長が長く(4m以上)、上空制限が十分に高い現場でなければ、ダウンザホールハンマを用いた施工ができなかった。
【0011】
しかしながら、本構成は、固定部に連結部が取り付けられることで、固定部に連結される管状体(打下げパイプ筒部)と固定部とを別体とすることができる。これにより、固定部に連結される管状体として短い管状体が選択できる。従って、上空制限が低い現場であっても、ダウンザホールハンマを用いた施工ができる。
【0012】
本発明の流体供給装置は、前記フランジにボルトが挿入される孔が形成され、前記連結部の上面に前記ボルトが締結される溝が形成される。
【0013】
本構成によれば、簡易な構成で固定部に連結部を取り付けることができる。また、連結部とフランジとがボルトによって固定されることで、ダウンザホールハンマによる反作用力はボルトを介して固定部に伝達される。
【0014】
本発明の流体供給装置は、前記フランジが前記連結部に挿入される突起部を有する。
【0015】
本構成によれば、フランジが有する突起部が連結部に挿入され、さらにボルトを用いた固定部と連結部との締結によって回転方向のトルクが固定部に伝達される。
【0016】
本発明の流体供給装置は、前記固定部と前記連結部とが前記フランジと前記連結部との間にスペーサを介して連結される。
【0017】
本構成によれば、管状体の先端に対するビット部の位置を簡易かつ無段階で調整できる。また、スペーサの厚み分ボルト長が確保できるので、耐トルク性能が向上する。
【0018】
本発明の流体供給装置は、前記管状体の周面に突部が設けられ、前記連結部に前記管状体を嵌め込んで、前記管状体の長軸を軸中心として左右何れかの方向に回転させることで前記突部に嵌合する第1嵌合部が形成される。
【0019】
本構成によれば、連結部と管状体とを簡易かつ強固に連結できる。
【0020】
本発明の流体供給装置は、前記管状体に他の前記管状体に設けられた前記突部を嵌め込んで、前記方向とは逆方向に回転させることで前記突部に嵌合する第2嵌合部が形成される。
【0021】
本構成によれば、連結部に管状体を連結する方向と管状体同士を連結する方向とが逆方向となる。なお、管状体同士を連結する方向は、管状体を把持して圧入する際の回転方向(正転方向、一例として反時計方向)と同じ方向である。これにより、連結部に連結された管状体(打下げパイプ筒部)に連結された管状体を把持して回転圧入しても、第2嵌合部による嵌合に緩みが生じることなく連結が保たれる。従って、第2嵌合部に緩み止めのピンを挿入するためのピン穴を形成する必要がない。
【0022】
ここで、仮に第1嵌合部と第2嵌合部の向きが同じであると、打下げパイプ筒部である管状体を把持して正転方向に回転させた場合に、第1嵌合部による嵌合に緩みが生じる可能性がある。
【0023】
そこで、本構成のように、連結部に形成される第1嵌合部と管状体に形成される第2嵌合部の向きを逆方向とすることで、打下げパイプ筒部である管状体を把持して回転させた場合、当該管状体の突部が連結部の第1嵌合部を押すことになる。このため、当該管状体と共に流体供給装置が回転することとなる。従って、第1嵌合部による嵌合に緩みが生じることなく連結が保たれるので、第1嵌合部にも緩み止めのピンを挿入するためのピン穴を形成する必要がない。
【0024】
なお、上空制限が低い現場では、制限高に応じた全長の短い管状体を複数連結して埋設する。このため、仮に上空制限が低い現場において、連結する管状体毎に緩み止めのピンを挿入する工程を必要とすると、その作業量が多くなる。このため、上空制限が低い現場でピンをピン穴に挿入する工程を不要とすることは、作業工数の低減に寄与することとなる。
【0025】
本発明の管状体の埋設方法は、上記記載の流体供給装置に管状体を連結し、前記管状体の内部に流体を供給しながら前記管状体を回転圧入させて埋設する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、橋梁の桁下など上空制限が有りかつ制限高が低い現場でもダウンザホールハンマを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図3】本実施形態の固定アタッチメントの構成図である。
【
図4】本実施形態の打下げパイプ筒部及びロッド部を示す構成図である。
【
図5】本実施形態のスペーサの使用によるビット部の位置の変化を示す図であり、(A)はビット部を小口径管の下端から下方に突出させた状態を示し、(B)はビット部を小口径管の下端と同程度の高さにした状態を示す。
【
図8】本実施形態のスペーサを挟んだフランジとヘッド部との接続状態を示す上面図である。
【
図9】本実施形態のスペーサを挟んだフランジとヘッド部との接続状態を示す横断面図である。
【
図10】本実施形態の打下げパイプ筒部及び小口径管を把持して回転させる場合の図であり、(A)は埋設する小口径管を把持しながら回転させる場合を示し、(B)は打下げパイプ筒部を把持しながら回転させる場合を示す。
【
図11】本実施形態のウォーターハンマを使用する場合の上空制限を示す図であり、(A)は施工時を示し、(B)は施工完了時を示し、(C)は従来のウォーターハンマによる施工時を示し、(D)は従来のウォーターハンマによる施工完了時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0029】
図1は、本実施形態の圧入機10の外観側面図である。なお、以下の実施形態では、地盤に鋼管杭2と小口径管3からなる壁構造1を構築する場合に基づいて、管状体の一例である小口径管3の回転圧入に本発明を適用する形態を説明する。
【0030】
本実施形態では、詳細を後述するようにダウンザホールハンマ25を用いて埋設する管状体を小口径管3とするが、これは一例であり、ダウンザホールハンマ25を用いて埋設する管状体は小口径管3に限定されるものではない。なお、小口径管3を埋設する場合には、圧入機10に小口径管3を把持するために小口径アタッチメント(不図示)や小口径チャック(不図示)が用いられてもよい。本実施形態の小口径管3は、一例として、小口径チャックを用いて圧入機10によって把持されて埋設される。
【0031】
圧入機10は、サドル11と、サドル11の下部に設けられたクランプ装置12と、サドル11上を前後動可能に設けられたスライドベース13と、スライドベース13上に旋回可能に設けられた旋回ベース14と、旋回ベース14の前端部に昇降シリンダ装置15を介して支持されたチャック装置16と、旋回ベース14上に支持されたクレーン20を備えている。
【0032】
圧入機10は、地盤に圧入された既設の鋼管杭2の上端側を掴んで既設の鋼管杭2から反力を取りながら、昇降可能なチャック装置16で新たな鋼管杭2を把持して下降させることにより新たな鋼管杭2を地盤に圧入する。クランプ装置12は、既設の鋼管杭2の上端開口から内部に挿入した把持爪を鋼管杭2の半径方向に移動させる機能を有している。その把持爪を既設の鋼管杭2の半径方向外側に移動させて鋼管杭2の内側で突っ張った状態とすることで既設の鋼管杭2を内側から把持する。これにより圧入機10が既設の鋼管杭2に対して固定される。
【0033】
チャック装置16は、鋼管杭2を把持するチャック部17を有し、チャック部17は鋼管杭2が挿入されるための開口部17aと、開口部17aに挿入された鋼管杭2の半径方向に移動可能な複数の杭把持爪17bを有している。チャック部17は、開口部17aに鋼管杭2が挿入された後、杭把持爪17bを鋼管杭2の半径方向内側に移動させることで鋼管杭2を把持する。また、チャック装置16はチャック部17を回転させるよう構成されている。すなわち、本実施形態の圧入機10は、回転式杭圧入機であり、チャック装置16のチャック部17の回転と、杭把持爪17bによる把持状態と解放状態の切り替えと、昇降シリンダ装置15による昇降移動の組み合わせにより鋼管杭2(先端ビット付鋼管杭)を回転させながら地盤に圧入する。以上の構成は、いわゆるジャイロプレス工法(登録商標)に用いられるジャイロパイラー(登録商標)と同様の構成である。
【0034】
本実施形態の圧入機10は、ダウンザホールハンマ25を用いて小口径管3の圧入を行う。ダウンザホールハンマ25は、管状体としての小口径管3の内部に挿入されて使用される。なお、小口径管3は、円筒形状の鋼管からなり、
図5に示されるように小口径管3の下端面には小口径管3の回転によって地盤を掘削する掘削刃3aが設けられている。
【0035】
本実施形態のダウンザホールハンマ25は、一例として、水を駆動流体とする、いわゆるウォーターハンマであり、例えばWassara社製(Wassaraは登録商標)のワッサラハンマが用いられる。ダウンザホールハンマ25の下端には、地盤を掘削するためのビット部55が着脱自在に取り付けられている。なお、以下の説明では、ダウンザホールハンマ25をウォーターハンマ25として説明する。
【0036】
また、以下の説明において、ウォーターハンマ25の説明に関する“上”又は“下”とは、ウォーターハンマ25の使用時、すなわちウォーターハンマ25が小口径管3に挿入されて、圧入機10により、小口径管3が地盤に回転圧入される状態の“上”又は“下”を意味する。
【0037】
以下、
図2~
図5を参照して、本実施形態のウォーターハンマ25の駆動流体の供給装置について説明する。
図2は、本実施形態の打下げパイプ30の構成図である。
図3は、本実施形態の固定アタッチメント31の構成図である。
図4は、本実施形態の打下げパイプ筒部32及びロッド部33を示す構成図である。
図5は、ウォーターハンマ25が備えるビット部26を示す図である。
【0038】
本実施形態の打下げパイプ30は、小口径管3と同様に内部に流体供給管42を通すことができる円筒形状を有しており、固定アタッチメント31、打下げパイプ筒部32、及びロッド部33によって構成される。
【0039】
固定アタッチメント31は、ビット部26を先端に配置するロッド部33を固定する固定装置であると共に、ウォーターハンマ25へ流体を供給する流体供給装置である。固定アタッチメント31は、スイベル40及びヘッド部41を備える。
【0040】
スイベル40は、地盤に圧入する小口径管3の内部に挿入されて掘削を行うビット部26を駆動させる流体(水)を供給し、ビット部26を先端に配置するロッド部33が接続可能とされる固定部である。
【0041】
ヘッド部41は、スイベル40の外周に設けられたフランジ43を介してスイベル40に取り付けられ、打下げパイプ筒部32と嵌め合わされる連結部である。なお、ヘッド部41は、上下に開口された円管形状とされ、スイベル40が有する流体供給管42が挿通される。ヘッド部41の上部には受け部44が備えられ、受け部44の下面に打下げパイプ筒部32の上面が当接し、打下げパイプ筒部32の上方位置が規定される。
【0042】
打下げパイプ筒部32は、ヘッド部41によって固定アタッチメント31に連結されるものであり、その構成は小口径管3と同様であり、圧入機10による把持が可能とされる。
【0043】
ロッド部33は、スイベル40の流体供給管42の先端に接続される。なお、ロッド部33は、小口径管3の埋設状態に応じて複数本が連結されることで延長可能とされ、複数本が連結されたロッド部33の先端にビット部26が備えられる。
【0044】
なお、スイベル40が有する流体供給管42は多重管であり、本実施形態の流体供給管42は二重管で構成され、ウォーターハンマ25の駆動流体である水と、掘削ズリ排出補助流体である空気を供給する。流体供給管42の上端には、水の供給配管44Aと空気の供給配管44Bが接続されている。供給配管44Aからは、ウォーターハンマ25の駆動流体である水が流体供給管42に供給され、供給配管44Bからは、掘削ズリ排出補助流体である空気が流体供給管42に供給される。
【0045】
掘削ズリ排出補助流体とは、小口径管3の下端において発生した掘削ズリ(掘削された土壌や破砕された岩盤等)の地上への排出を促進させるための流体であり、本実施形態では、掘削ズリ排出補助流体として空気が使用される。そして、ビット部26の上方近辺には掘削ズリ排出補助流体としての空気を吹き出す吐出口(不図示)が設けられている。流体供給管42から供給された空気は、この吐出口から小口径管3の内部に吹出される。
【0046】
ここで従来の打下げパイプ100(
図11参照)は、スイベルとスイベルに連結される打下げパイプ筒部とが一体構造となっていたため全長が長く(4m以上)、上空制限が十分に高い現場でなければ、ウォーターハンマ25を用いた施工ができなかった。
【0047】
しかしながら、本実施形態の打下げパイプ30は、スイベル40にヘッド部41が取り付けられることで、スイベル40と打下げパイプ筒部32とを別体とすることができる。これにより、スイベル40に連結される打下げパイプ筒部32としてより短い小口径管3が選択できる。従って本実施形態の打下げパイプ30は、橋梁の桁下など上空制限が有りかつ制限高が低い現場であっても、ウォーターハンマ25を用いた施工を可能とする。すなわち、本実施形態の打下げパイプ30を備えるウォーターハンマ25は、低空頭用のウォーターハンマとして使用可能である。
【0048】
次に、本実施形態のスイベル40とヘッド部41との接続について、
図6~
図9も参照して説明する。
図6は、フランジ43の上面図であり、
図7は、本実施形態のヘッド部41の上面図である。
図8は、本実施形態のスペーサ50を挟んだフランジ43とヘッド部41との接続状態を示す上面図である。また、
図9は、本実施形態のスペーサ50を挟んだフランジ43とヘッド部41との接続状態を示す横断面図である。
【0049】
上述のように、スイベル40とヘッド部41とは、スイベル40の外周に設けられたフランジ43を介して接続される。本実施形態のスイベル40とヘッド部41とは、一例として、ボルト51による締結によって接続される。
【0050】
このため、本実施形態のフランジ43は、ボルト51が挿入される孔(以下「ボルト穴」という)52Aが形成され、ヘッド部41の上面は、ボルト51が締結される溝(以下「ボルト溝」という。)52Bが形成される。これにより、簡易な構成でスイベル40にヘッド部41を取り付けることができる。また、ヘッド部41とフランジ43とがボルト51によって固定されることで、ウォーターハンマ25による反作用力はボルト51を介してスイベル40に伝達される。なお、本実施形態ではフランジ43及びヘッド部41には、その周方向に対して均等な位置にボルト穴52A及びボルト溝52Bが形成される。これにより、ボルト51での締結によりスイベル40の周方向に対して均等に力が伝達される。
【0051】
また、本実施形態のフランジ43は、ヘッド部41に挿入される突起部(以下「ピン」という。)53Aを有する。このため、フランジ43にはピン53Aが挿入されるピン穴54Aが形成される。ヘッド部41の上面にはピン穴54Bが形成される。このような構成により、スイベル40とヘッド部41とがボルト51によって締結されると共に、フランジ43が有するピン53Aがヘッド部41のピン穴54Bに挿入されることで、回転方向のトルクがスイベル40に伝達される。
【0052】
また、本実施形態のスイベル40とヘッド部41とは、フランジ43とヘッド部41との間にスペーサ50を介して連結可能とされる。
【0053】
スペーサ50は、
図5に示されるように、小口径管3の下端に対するビット部55の高さを変更するための、例えば板状又はブロック状の部材である。
図5(A)は、ビット部26を小口径管3の下端から下方に突出させた状態を示し、
図5(B)はビット部26を小口径管3の下端と同程度の高さにした状態を示す。すなわち、フランジ43とヘッド部41との間に挟むスペーサ50の枚数やスペーサ50の一枚当たりの厚さを調整することで、小口径管3の下端の掘削刃3aよりも、ウォーターハンマ25の下端のビット部55を下方に突出させたり、小口径管3の下端の掘削刃3aよりも、ダウンザホールハンマ25の下端のビット部55を上方に引き込ませることができる。
【0054】
本実施形態は、スペーサ50の枚数や一枚当たりの厚さを調整することで、ビット部26の位置を簡易かつ無段階で調整できる。なお、本実施形態のスペーサ50は、ボルト51を挿通させるためのボルト穴52Cが形成される。これにり、スペーサ50の総厚み分ボルト長が確保できるので、耐トルク性能が向上する。
【0055】
また、本実施形態のスペーサ50は、フランジ43がピン53Aを有するため、ピン53Aが挿入されるピン穴54Cが形成され、ピン穴54Cにピン53Bが挿入される。そして、スペーサ50が有するピン53Bは、下に重なる別のスペーサ50のピン穴54Cあるいは、ヘッド部41の上面に形成されているピン穴54Bに挿入される。
【0056】
以上のような構成により、本実施形態は、ピン53A,53Bによってフランジ43とヘッド部41との間にスペーサ50が配置・仮固定され、さらにボルト51による締結によりフランジ43とヘッド部41とスペーサ50が強固に連結される。より具体的には、ピン53A,53Bは、スペーサ50同士や、フランジ43とヘッド部41との仮止め用であり、設置が簡単であるものの、ボルト51による締結よりも強度が弱い。一方、ボルト51は、上記各部材を締結によって完全固定するために用いられ、設置に手間を要するものの、ピン53A,53Bに比べて強度が強い。
【0057】
なお、本実施形態では、3対のボルト穴52Aとボルト溝52Bが形成されることで、3のボルト51によってフランジ43とヘッド部41とが締結されるものの、これは一例であり、4本以上又は2本以下のボルト51によって締結されてもよい。また、本実施形態ではピン53A,53Bによるフランジ43とヘッド部41との接続も行われるが、ボルト51による締結のみとし、ピン53A,53Bによる接続は行われなくてもよい。
【0058】
次に、本実施形態のヘッド部41と打下げパイプ筒部32との連結、及び打下げパイプ筒部32と小口径管3との連結について説明する。
【0059】
本実施形態の打下げパイプ筒部32には、周面に突部60が設けられる(
図4参照)。そして、ヘッド部41には、打下げパイプ筒部32を嵌め込んで、打下げパイプ筒部32の長軸を軸中心として左右何れかの方向(以下「第1回転方向」という。)に回転させることで突部60に嵌合する嵌合部61Aが形成される。なお、本実施形態の突部60は、一例として、L字型の嵌合部61Aに嵌合するように矩形状とされているが、それに限らず他の形状にすることも可能である。例えば、突部60と嵌合部61Aをそれぞれ櫛の歯状に形成し、櫛の歯が互いに噛み合うことでより強固に嵌合するようにしても良い。
【0060】
なお、本実施形態の打下げパイプ筒部32に設けられる突部60は、一例として、打下げパイプ筒部32の内周面に設けられる。このため、ヘッド部41の嵌合部61Aは、打下げパイプ筒部32の内側に挿入され、突部60と嵌合する。
【0061】
より具体的には、嵌合部61Aの外径は打下げパイプ筒部32の内径よりも僅かに小さくなっており、嵌合部61Aを打下げパイプ筒部32の上端から、打下げパイプ筒部32の内部に挿入することができる。嵌合部61Aの外周面には、縦方向通路62と横方向通路63を有するL字型の溝部64が設けられている。そして、嵌合部61Aを、打下げパイプ筒部32の上端から内部に挿入する際に、打下げパイプ筒部32の上端の内面に取り付けられた突部60を溝部64の縦方向通路62に通す。そして、突部60が溝部64の横方向通路63に達した位置で、固定アタッチメント31と打下げパイプ筒部32を相対的に回転させる。これにより、突部60を溝部64の横方向通路63内において横方向に移動させることになり、突部4が横方向通路63の最奥部に入り込んだ状態となる。従って、突部4が溝部64の横方向通路63内に嵌合した状態となって、固定アタッチメント31と打下げパイプ筒部32の上端とが連結される。
【0062】
このように本実施形態は、打下げパイプ筒部32に設けられた突部60とヘッド部41に設けられた嵌合部61Aとの嵌め合わせにより、固定アタッチメント31と打下げパイプ筒部32とは、簡易かつ強固に連結される。
【0063】
一方、打下げパイプ筒部32は、小口径管3に設けられた突部60を嵌め込んで、第1回転方向とは逆方向である第2回転方向に回転させることで突部60に嵌合する嵌合部61Bが形成される。すなわち、打下げパイプ筒部32の一端には突部60が形成される一方、他端には嵌合部61Bが形成される。
【0064】
本実施形態の圧入機10によって埋設される小口径管3も、打下げパイプ筒部32と同様の構成とされる。このため、本実施形態の打下げパイプ筒部32の嵌合部61Bは、小口径管3の内側に挿入され、小口径管3の突部60と嵌合することで、打下げパイプ筒部32と小口径管3とは連結される。さらに、小口径管3同士も突部60と嵌合部61Bとを嵌合させることで連結される。
【0065】
なお、嵌合部61Aと嵌合部61Bとは、縦方向通路62に対する横方向通路63の向きが逆向きとされている。換言すると、嵌合部61Aと嵌合部61Bとでは、突部60と嵌合する方向が逆方向とされる。これにより、ヘッド部41に打下げパイプ筒部32を連結する第1回転方向と打下げパイプ筒部32と小口径管3又は小口径管3同士を連結する第2回転方向とは逆方向となる。本実施形態の第2回転方向は、小口径管3を把持して圧入する際の回転方向(正転方向、一例として反時計方向)と同じ方向である。
【0066】
また、突部60及び嵌合部61A,61Bは、各々ヘッド部41、打下げパイプ筒部32、及び小口径管3の周方向に一つ以上設けられていればよい。
【0067】
ここで、
図10は、本実施形態の打下げパイプ筒部32及び小口径管3を把持して回転させる場合の概略図である。
図10(A)は埋設する小口径管3を把持しながら回転させる場合を示し、
図10(B)は打下げパイプ筒部32を把持しながら回転させる場合を示す。
【0068】
小口径管3を圧入する際には、小口径管3を把持しながら正転方向に回転させる(
図10(A)参照)。これにより、嵌合部61Bによる嵌合に緩みが生じることなく連結が保たれる。従って、嵌合部61Bに緩み止めのピン(リーマーボルトともいう。)を挿入するためのピン穴を形成する必要がない。
【0069】
ここで、仮に嵌合部61Aと嵌合部61Bの向きが同じであると、打下げパイプ筒部32を把持して正転方向に回転させた場合に、打下げパイプ筒部32の突部60が嵌合部61Aから外れる方向に動いてしまい、嵌合部61Aによる嵌合に緩みが生じる可能性がある。
【0070】
そこで、本実施形態のように、ヘッド部41に形成される嵌合部61Aの向きを嵌合部61Bの向きを逆方向とすることで、打下げパイプ筒部32を把持して第1回転方向で回転させた場合、打下げパイプ筒部32の突部60がヘッド部41の嵌合部61Aを押すことになる(
図10(B)の矢印A)。このため、打下げパイプ筒部32と共に固定アタッチメント31が回転することとなる。従って、打下げパイプ筒部32を把持して第1回転方向に回転させるだけで嵌合部61Aによる嵌合に緩みが生じることなく連結が保たれるので、ここにも緩み止めのピンを挿入するためのピン穴を形成する必要がない。
【0071】
なお、上空制限が低い現場では、制限高に応じた全長の短い小口径管3を複数連結して埋設する。このため、仮に上空制限が低い現場で小口径管3毎に緩み止めのピンをピン穴に挿入する工程を必要とすると、その作業量が多くなる。このため、上空制限が低い現場でピンをピン穴に挿入する工程を不要とすることは、作業工数の低減に寄与することとなる。
【0072】
図11は、本実施形態の打下げパイプ30を使用する場合の上空制限を示す図であり、
図11(A)は施工時を示し、
図11(B)は施工完了時を示す。一方、
図11(C)は従来の打下げパイプ100による施工時を示し、
図11(D)は従来の打下げパイプ100による施工完了時を示す。なお、
図11に示されるように、本実施形態の小口径管3の埋設方法は、固定アタッチメント31に打下げパイプ筒部32を連結した本実施形態の打下げパイプ30に小口径管3を連結し、小口径管3の内部に流体を供給しながら、圧入機10によって小口径管3を回転圧入させて埋設する。
【0073】
図11(C),(D)に示されるように、従来の打下げパイプ100による施工では、例えば7m以上の上空制限を必要としていた。一方、
図11(A),(B)に示されるように、本実施形態の打下げパイプ30は、従来の打下げパイプ100よりも全長が短くなるため、例えば、従来の打下げパイプ100を用いる場合よりも低い上空制限が5.0mのような現場でも打下げパイプ30を用いた施工が可能となる。
【0074】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0075】
上記実施形態では、突部60が打下げパイプ筒部32及び小口径管3の内周面に設けられる形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、突部60は打下げパイプ筒部32及び小口径管3の外周面に設けられてもよい。この場合、ヘッド部41の嵌合部61Aの内径は、打下げパイプ筒部32の外径よりも僅かに大きくされており、嵌合部61Aを打下げパイプ筒部32の上端から嵌め込み、突部60と嵌合させる。また、打下げパイプ筒部32及び小口径管3に設けられる嵌合部61Bの内径も、打下げパイプ筒部32及び小口径管3の外径よりも僅かに大きくされる。
【0076】
上記実施形態では、突部60が打下げパイプ筒部32及び小口径管3の周方向に一列で設けられる形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、打下げパイプ筒部32及び小口径管3の長軸方向に複数列で設けられてもよい。この場合、嵌合部61A,51Bには、複数列の突部60に対応するように複数列の横方向通路63が形成される。
【0077】
上記実施形態では、突部60と嵌合部61A,51Bとの嵌合により、固定アタッチメント31と打下げパイプ筒部32とを連結し、打下げパイプ筒部32と小口径管3とを連結する形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。固定アタッチメント31と打下げパイプ筒部32とを着脱可能に連結し、打下げパイプ筒部32と小口径管3とを着脱可能に連結できる構成であれば、例えばピンにより各々を接続する等、他の構成が適用されてもよい。
【0078】
上記実施形態では、ウォーターハンマ25の先端にビット部26が取り付けられる形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、地盤の固さによってはビット部26を取り付けずに小口径管3を埋設してもよい。この場合、例えば、固定アタッチメント31の流体供給管42の先端にホースを取り付け、このホースから小口径管3内部への水の供給を行いながら埋設してもよい。
【0079】
上記実施形態では、ダウンザホールハンマの駆動流体を水としたウォーターハンマ25とする形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、駆動流体を圧縮空気としたダウンザホールハンマが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0080】
3 小口径配管(管状体)
26 ビット
31 固定アタッチメント(流体供給装置)
32 打下げパイプ筒部
40 スイベル(固定部)
41 ヘッド部(連結部)
43 フランジ
50 スペーサ
51 ボルト
52A ボルト穴(孔)
52B ボルト溝(溝)
53A ピン(突起部)
60 突部
61A 嵌合部
61B 嵌合部