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特許7475243海底長尺物の保護構造体およびこれを用いた海底長尺物の保護方法
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  • 特許-海底長尺物の保護構造体およびこれを用いた海底長尺物の保護方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】海底長尺物の保護構造体およびこれを用いた海底長尺物の保護方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/08 20060101AFI20240419BHJP
   H02G 1/10 20060101ALI20240419BHJP
   H02G 9/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
E02B3/08 301
H02G1/10
H02G9/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020145799
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040874
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】板垣 聡
(72)【発明者】
【氏名】丹澤 文秀
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓也
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067416(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/155612(WO,A1)
【文献】特開2011-139629(JP,A)
【文献】特開2003-171922(JP,A)
【文献】実開昭51-148816(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/08
H02G 1/10
H02G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底に敷設した海底長尺物を覆って保護する海底長尺物の保護構造体であって、
透水性を有すると共に、前記海底長尺物に跨って被覆可能なシート材と、
前記海底長尺物に跨って設置可能な間隔を設けて予め前記シート材の上面に一体に固定し、前記シート材の位置決め機能を有する複数の根固め材と、からなり、
前記複数の根固め材はそれぞれ、編地からなる袋体と、前記袋体の内部に充填した中詰材を有し
前記シート材により海底長尺物を覆った状態で前記複数の根固め材を海底の地盤上に敷設可能であることを特徴とする、
海底長尺物の保護構造体。
【請求項2】
前記シート材がメッシュ状であることを特徴とする、請求項1に記載の海底長尺物の保護構造体。
【請求項3】
海底に敷設した海底長尺物を保護構造体で覆って保護する海底長尺物の保護方法であって、
請求項1または請求項2に記載の海底長尺物の保護構造体を使用し、
前記シート材を展張した状態で前記根固め材を吊り下げて前記保護構造体を吊り下げ、
前記保護構造体を海中に吊り降ろし、
保護対象となる海底長尺物を前記シート材により覆った状態で、前記複数の根固め材を海底の地盤上に載置し、前記シート材により前記海底長尺物を保護することを特徴とする、
海底長尺物の保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海底ケーブルや管などの海底長尺物の保護構造体に関し、特に、潮流の有無に関わらず確実に海底長尺物を保護することができる保護構造体および海底長尺物の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、陸上に比べて安定して風が吹き、かつ風速も大きな洋上に風力発電施設を建設することが広く行われている。
洋上の風力発電施設により発電された電気はケーブルを介して陸上に送電されるが、このケーブルは海中においては海底に敷設される。
【0003】
海底に敷設されたケーブル(以下、「海底ケーブル」という)の、船舶の錨や漁具、転石の衝突からの保護手段については、特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されている保護手段は海底ケーブルや、ガスや石油などのパイプライン等を含む管を保護するものであり、海底ケーブルおよび管を覆うように袋型の根固め材を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-139629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長尺な海底ケーブルや管を適切に保護するためには、根固め材同士を隙間無く連続して据え付ける必要がある。
袋型の根固め材は施工時に潮流等の影響を受けるため、所定の位置に確実に据え付ける作業は困難である。
また、根固め材の内部には骨材等からなる中詰材が充填されており、中詰材により海底ケーブルや管が破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、潮流の有無に関わらず確実に海底ケーブルや管などの海底長尺物を保護することができる保護構造体およびこれを用いた海底長尺物の保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1発明は海底に敷設した海底長尺物を覆って保護する海底長尺物の保護構造体であって、透水性を有すると共に、前記海底長尺物に跨って被覆可能なシート材と、前記海底長尺物に跨って設置可能な間隔を設けて予め前記シート材の上面に一体に固定し、前記シート材の位置決め機能を有する複数の根固め材と、からなり、前記複数の根固め材はそれぞれ、編地からなる袋体と、前記袋体の内部に充填した中詰材を有し、前記シート材により海底長尺物を覆った状態で前記複数の根固め材を海底の地盤上に敷設可能である
本願の第2発明は、第1発明の保護構造体において、前記シート材がメッシュ状であることを特徴とする。
本願の第3発明は、海底に敷設した海底長尺物を保護構造体で覆って保護する海底長尺物の保護方法であって、請前記第1発明または第2発明の海底長尺物の保護構造体を使用し、前記シート材を展張した状態で前記根固め材を吊り下げて前記保護構造体を吊り下げ、前記保護構造体を海中に吊り降ろし、保護対象となる海底長尺物を前記シート材により覆った状態で、前記複数の根固め材を海底の地盤上に載置し、前記シート材により前記海底長尺物を保護することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上の構成により、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>シート材は透水性を有するため、吊り降ろす際に潮流等の影響を受けることなく、所定の位置に吊り降ろすことができ、確実に海底長尺物を保護できる。また、その据え付け作業も容易である。
<2>シート材のため、海底長尺物を破損することがない。
<3>シート材により海底長尺物を保護するため、根固め材は所定の間隔で儲ければ良いため、保護構造体を安価に製作することができる。
<4>広い面積を有するシート材により海底長尺物を保護するため、一度に海底長尺物の広い範囲を覆って保護することができ、施工時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の海底長尺物の保護構造体の説明図(1)
図2】本発明の海底長尺物の保護構造体の説明図(2)
図3】根固め材の説明図
図4】本発明の保護構造体の施工方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明のおよび海底長尺物の保護構造体および海底長尺物の保護方法について詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
<1>保護構造体の構成(図1、2)
本発明の保護構造体1は海底等の地盤G上に敷設された海底ケーブル4を保護するためのものであり、海底ケーブル4を覆うシート材2と、シート材2を地盤G上に固定するための根固め材3と、からなる。
本例では、保護構造体1は海底ケーブル4を保護するものとして説明するが、これに限定されず、ガスや石油のパイプライン等を含む管などの海底に敷設する長尺物(以下、「海底長尺物」とする)を保護することができる。
【0012】
<2>シート材
シート材2は所定の面積を有し、海底ケーブル4の形状や地盤Gの起伏に追従可能な柔軟性を備える、透水性の網体またはシート体からなる。
本例ではシート材2として、ポリエステル繊維製のメッシュシートを採用する。ただしこれに限らず、例えば同樹脂繊維製やポリエチレン樹脂製の網体や、その他適宜の素材の不織布や多重布等を採用してもよいが、透水性と十分な引張強度、および耐摩耗性を備えた素材・構造とすることに留意する。
【0013】
<3>根固め材(図3
根固め材3は、荷重によりシート材2を抑え込み、地盤G上に固定するための部材である。
根固め材3は、袋体31と、袋体31の内部に充填した中詰材32と、を少なくとも備える。
袋体31は、袋状の編地からなる。より詳細には、例えばポリエステル繊維やナイロン繊維、ポリエチレン繊維からなる筒状のラッセル編地の下端を絞り込んで底網を形成し、上端部側の開口を袋口として形成する。袋体31の網目は中詰材32が漏出しない寸法に設定する。
袋体31には、吊り上げに用いる吊りロープ33と、袋体31の袋口を閉じるための口縛りロープ34を有する。
吊りロープ33および口縛りロープ34は、袋体31の袋口の近くに網目に挿通しながら周回して取り付けられている。口縛りロープ34は吊りロープ33に対して上位(袋口により近い側)に位置している。
中詰材32は、例えば玉石等の自然骨材、コンクリートガラ、各種廃棄物の焼成体等を使用できる。
【0014】
<4>シート材に対する根固め材の配置
根固め材3は、下方の数か所で根固め材3の袋体31の網目とシート材2の網目にロープ等の連結材35を連通して締結し、シート材2に固定する。
根固め材3は、シート材2を地盤G上に固定する目的の部材であるため、隙間無く据え付ける必要がなく、例えば展張したシート材2の四隅付近等、所定の間隔で設ければ良いため、保護構造体1を安価に製作することができる。
【0015】
<5>保護構造体による保護機能
本発明の保護構造体1は、シート材2で海底ケーブル4を覆うことにより、船舶の錨や漁具、転石の衝突から海底ケーブル4を保護する。
シート材2により海底ケーブル4を覆うことで、シート材2の上部に砂礫が堆積しやすくなり、海底ケーブル4周囲の洗掘が防止される。
【0016】
<6>海底長尺物の保護方法
予めシート材2と根固め材3を一体とした保護構造体4の吊りロープ33を吊り下げ治具5に取り付けて、作業船のクレーン(図示せず)等により保護対象となる海底ケーブル4上の海上にて、吊り下げ治具5ごと吊り下げる(図4(a))。吊り下げ治具5は、シート材2を展張した状態で吊り下げることができるように、根固め材3の間隔と同程度の長さを有する。
そして、吊り下げ治具5を海中に吊り降ろし、保護対象となる海底ケーブル4上にシート材2を敷設し、シート材2により海底ケーブル4を覆った状態で根固め材3を地盤G上に載置する(図4(b))。シート材2は柔軟性を有するため、海底ケーブル4の外形に追従して変形し、海底ケーブル4を保護する。また、シート材2そのもので海底ケーブル4を破損することもない。
シート材2は透水性を有するため、吊り降ろす際に潮流等の影響を受けることなく、所定の位置に吊り降ろすことができ、据え付け作業が容易である。また、広い面積を有するシート材2により海底ケーブル4を保護するため、一度に海底ケーブルの広い範囲を覆って保護することができ、施工時間が短縮される。
【符号の説明】
【0017】
1 保護構造体
2 シート材
3 根固め材、31 袋体、32 中詰材、33 吊りロープ、34 口縛りロープ、35 連結材
4 海底ケーブル
5 吊り下げ治具
図1
図2
図3
図4