(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】多機能車椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/00 20060101AFI20240419BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20240419BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20240419BHJP
A61G 5/10 20060101ALN20240419BHJP
【FI】
A61G5/00 701
A61G5/12 706
A61G5/12 701
A61G5/12 705
A61G5/12 702
A61G5/02 707
A61G5/10 704
(21)【出願番号】P 2020156235
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2022-06-03
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520361726
【氏名又は名称】蘇 建忠
(73)【特許権者】
【識別番号】520361737
【氏名又は名称】張 郁閔
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【氏名又は名称】阪本 清孝
(72)【発明者】
【氏名】蘇 建忠
(72)【発明者】
【氏名】張 郁閔
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-279085(JP,A)
【文献】特開2017-070352(JP,A)
【文献】特開2002-233556(JP,A)
【文献】特開2015-073618(JP,A)
【文献】特開2003-000651(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215892(JP,U)
【文献】特開2019-051428(JP,A)
【文献】特開2007-098009(JP,A)
【文献】特開2002-209949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00 - A61G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子本体と、座面板と、昇降サドルと、洗髪用シンクとを備える多機能車椅子であって、
前記車椅子本体は、折り畳み収納可能なシートフレームを含み、前記シートフレームの後側に背もたれが枢着され、前記背もたれと前記シートフレームとの間に少なくとも1つの第1駆動装置が設けられることで、前記背もたれを当該第1駆動装置の連動により枢動させて角度調整を行い得るようにし、前記シートフレームの両側に対称な2つのサイドフレームと、対称な2つの肘掛けとが設置され、前記2つのサイドフレームの外側の後端近傍に2つの主輪が枢設され、前記2つのサイドフレームの前端下方に2つの案内輪が枢設され、前記2つの肘掛けがそれぞれ第2駆動装置上に設置されることで、前記2つの肘掛けを当該第2駆動装置の連動により変位させて昇降調整を行い得るようにし、前記2つの肘掛け上にそれぞれ当て支持部が設けられ、前記シートフレームの前方両側に足置きステップを有する対称な2つの足掛けフレームが設置され、
前記座面板は、前記車椅子本体の前記シートフレーム上に取り外し可能に組み付けられ、
前記車椅子本体の前記シートフレーム上に取り外し可能に組み付けられる前記昇降サドルは、サドルクッションを含み、前記サドルクッションが第3駆動装置上に設置されることで、前記サドルクッションを前記第3駆動装置の連動により変位させて昇降調整を行い得るようにし、
前記洗髪用シンクは、前記車椅子本体の前記背もたれの上側に取り外し可能に組み付けられ、前記洗髪用シンクには洗浄収容室が設けられることを特徴とする、多機能車椅子。
【請求項2】
前記シートフレームの後側には、対称な2つの補助輪組立が下向きに延設され、当該補助輪組立には、補助輪と、足踏みペダルとが設けられることを特徴とする、請求項1に記載の多機能車椅子。
【請求項3】
前記背もたれの上側から後向きに対称な2つの手押しハンドルが延設されることを特徴とする、請求項1に記載の多機能車椅子。
【請求項4】
前記2つの足掛けフレーム(18)は、前記2つの足掛けフレーム(18)上に対称な2つの
前記足置きステップ(181)と、対称な2つの足掛けプレート(182)とを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の多機能車椅子。
【請求項5】
前記座面板の中央に空所部が設置されることを特徴とする、請求項1に記載の多機能車椅子。
【請求項6】
前記昇降サドルは、前記第3駆動装置の下側にブラケットが組み付けられ、前記ブラケットには、左右に延在する折り畳み収納可能な2つの支柱と、前後に延在する2つのキャスタとが設けられ、前記2つの支柱が前記車椅子本体の前記シートフレーム上に架設されて組み立てられ、前記2つのキャスタは、地面上に当て付けるために用いられることを特徴とする、請求項1に記載の多機能車椅子。
【請求項7】
当該第1駆動装置、当該第2駆動装置及び前記第3駆動装置は、空気圧シリンダであることを特徴とする、請求項1に記載の多機能車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に係り、特に、座り補助、リクライニング補助、排泄介助、洗髪介護、入浴介護などの機能を複合した多機能車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子とは、高齢者、肢体障害者や患者などの身体不自由者の歩行を支援するための道具をいい、車椅子を通じて彼らの運動能力を高め、彼らの外出を容易にすることができ、便利で実用的な道具であり、その主要構造は、車椅子主体の前、後端両側にそれぞれ小径の自在輪と、大径の駆動輪とが設けられ、前記車椅子主体の前方両側にそれぞれ足置きステップを有する足掛けフレームが半田付け固定され、使用者が車椅子に着座している場合に、その足部を足掛けフレームの足置きステップ上に置いてから、使用者の足部を地面から離してその足部を支持する効果を有するので、車椅子の前進が容易となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ただ、現在、一般的な車椅子は、歩行を支援する単一機能のみを有するため、身体不自由者は、身体が虚弱であり、あるいは肢体に力が入らないことから、車椅子上で支持がなされ、身体不自由者に排泄介助、洗髪介護、入浴介護が必要になった場合には、往々にして排泄介助補助具が装着されたトイレや風呂椅子上に抱えて移乗させることは、介護士や家族に手伝ってもらうしか手がなく、相当不便である。このことは、世話係の介護士や家族にとって、大きな負担になることに疑いはなく、かつ介護士や家族が患者を抱え上げる過程において患者が転倒しやすくなり、健康状態がかなり悪化した患者に対し、二次傷害の発生を引き起こすおそれがあり、安全性に疑念と憂慮を持たざるを得ない。
【0004】
また、このように、家中に身体不自由者がいる場合には、車椅子のほかにも、排泄介助補助具の装着、及び風呂椅子の準備が必要となるため、高価な出費が生じるだけでなく、かつ占有スペースが相当に拡大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が提供する多機能車椅子は、車椅子本体と、座面板と、昇降サドルと、洗髪用シンクとを備える。前記車椅子本体は、折り畳み収納可能なシートフレームを含み、前記シートフレームの後側に背もたれが枢着され、前記背もたれと前記シートフレームとの間に少なくとも1つの第1駆動装置が設けられることで、前記背もたれを当該第1駆動装置の連動により枢動させて角度調整を行い得るようにし、前記シートフレームの両側に対称な2つのサイドフレームと、対称な2つの肘掛けとが設置され、前記2つのサイドフレームの外側の後端近傍に2つの主輪が枢設され、前記2つのサイドフレームの前端下方に2つの案内輪が枢設され、前記2つの肘掛けがそれぞれ第2駆動装置上に設置されることで、前記2つの肘掛けを当該第2駆動装置の連動により変位させて昇降調整を行い得るようにし、前記2つの肘掛け上にそれぞれ当て支持部が設けられ、前記シートフレームの前方両側に足置きステップを有する対称な2つの足掛けフレームが設置される。座面板は、前記車椅子本体のシートフレーム上に取り外し可能に組み付けられる。昇降サドルは、前記車椅子本体のシートフレーム上に取り外し可能に組み付けられ、前記昇降サドルは、サドルクッションを含み、前記サドルクッションが第3駆動装置上に設置されることで、前記サドルクッションを前記第3駆動装置の連動により変位させて昇降調整を行い得るようにする。洗髪用シンクは、前記車椅子本体の背もたれの上側に取り外し可能に組み付けられ、前記洗髪用シンクには洗浄収容室が設けられる。
【発明の効果】
【0006】
そこで、本発明の主要な目的は、一般的な車椅子としての機能のほかにも、身体不自由者のために、リクライニング補助、排泄介助、洗髪介護または入浴介護などの形態に変換することにより、安全性、利便性、実用性を向上させる効果を有することである。
【0007】
また、本発明の副次的な目的は、座り補助、リクライニング補助、排泄介助、洗髪介護、入浴介護などの機能を有し、異なる使用要求を満たすことができ、占有スペースの省減及び経費の節減を図ることができることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の洗髪用シンクと背もたれとの分離状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明のサドルクッションの昇降調整を示す作動図である。
【
図7】本発明の2つの肘掛けの昇降調整を示す作動図である。
【
図8】本発明の背もたれの角度調整を示す作動図である。
【
図9】本発明の一般的な車椅子形態の斜視図である。
【
図11】本発明の洗髪介護形態の使用概略図である。
【
図12】本発明の洗髪用シンクの向きを変えてヘッドレストとしての使用状態を示す図である
【
図13】本発明の補助輪の下向移動を示す作動図である。
【
図14】本発明の補助輪の上向移動を示す作動図である。
【
図16】本発明の入浴介護形態の使用概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図8及び
図15に示すように、本発明に係る多機能椅子は、車椅子本体10と、座面板20と、昇降サドル30と、洗髪用シンク40とを備える。
【0010】
前記車椅子本体10は、折り畳み収納可能なシートフレーム11(
図1、
図4及び
図5参照)を含み、前記シートフレーム11の後側には、対称な2つの補助輪組立12(
図2、
図3及び
図6~
図8参照)が下向きに延設され、当該補助輪組立12には、補助輪121と、足踏みペダル122とが設けられ、前記シートフレーム11の後側に背もたれ13(
図1~
図3及び
図6~
図8参照)が枢着され、前記背もたれ13の上側から後向きに対称な2つの手押しハンドル131が延設され、前記背もたれ13と前記シートフレーム11との間に少なくとも1つの第1駆動装置14(
図2、
図3、
図6及び
図7参照)が設けられ、本実施例では、前記背もたれ13と前記シートフレーム11との間に対称な2つの第1駆動装置14が設けられることで、前記背もたれ13を当該第1駆動装置14の連動により枢動させて角度調整を行い得るようにし、前記シートフレーム11の両側に対称な2つのサイドフレーム15と、対称な2つの肘掛け16(
図1~
図8参照)とが設置され、前記2つのサイドフレーム15の外側の後端近傍に2つの主輪151が枢設され、前記2つのサイドフレーム15の前端下方に2つの案内輪152が枢設され、前記2つの肘掛け16がそれぞれ第2駆動装置17上(
図1~
図8参照)に設置されることで、前記2つの肘掛け16を当該第2駆動装置17の連動により変位させて昇降調整を行い得るようにし、前記2つの肘掛け16上にそれぞれ当て支持部161が設けられ、前記シートフレーム11の前方両側に対称な2つの足掛けフレーム18(
図1及び
図4~
図8参照)が設置され、前記2つの足掛けフレーム18上に対称な2つの足置きステップ181と、対称な2つの足掛けプレート182とが設けられる。
【0011】
前記座面板20は、係合方式を利用して前記車椅子本体10のシートフレーム11上(
図1参照)に取り外し可能に組み付けられ、前記座面板20は、完全な平面であってもよいし、中央に空所部21が設置されるものであってもよい。
【0012】
前記昇降サドル30は、係合方式を利用して前記車椅子本体10のシートフレーム11上(
図4及び
図5参照)に取り外し可能に組み付けられ、前記昇降サドル30は、サドルクッション31を含み、前記サドルクッション31が第3駆動装置32上に設置されることで、前記サドルクッション31を前記第3駆動装置32の連動により変位させて昇降調整を行い得るようにし、前記第3駆動装置32の下側にブラケット33が組み付けられ、前記ブラケット33には、左右に延在する折り畳み収納可能な2つの支柱331と、前後に延在する2つのキャスタ332とが設けられ、前記2つの支柱331が前記車椅子本体10のシートフレーム11上に架設されて組み立てられ、前記2つのキャスタ332は、地面上に当て付けるために用いられる。
【0013】
前記洗髪用シンク40は、前記車椅子本体10の背もたれ13の上側(
図1、
図4及び
図5参照)に取り外し可能に組み付けられ、前記洗髪用シンク40には洗浄収容室41が設けられる。
【0014】
なお、本実施では、当該第1駆動装置14、当該第2駆動装置17及び前記第3駆動装置32を空気圧シリンダとしているが、これに限定されるものではなく、ラック歯車やスプロケットなどを使用するものとすることもできる。
【0015】
使用時、
図9に示すように、車椅子本体10のシートフレーム11上に完全な平面の座面板20を取り付けて、一般的な車椅子形態に形成してもよく、前記座面板20を利用して身体不自由者の着座のために提供され、一般的な車椅子として使用することができる。
【0016】
図10に示すように、車椅子本体10のシートフレーム11上に中央に空所部21を有する座面板20を取り付けて、前記空所部21を利用して合わせて受け皿(未図示)を使用し、排泄介助形態に形成してもよく、身体不自由者が前記座面板20上に座って排泄を行うために提供される。
【0017】
図11に示すように、当該第1駆動装置14の連動により前記背もたれ13を枢動させることにより、前記背もたれ13を所定の傾斜角度に調整することができ、身体不自由者が車椅子上にリクライニング姿勢で休むことができ、身体不自由者の頭部を前記洗髪用シンク40の洗浄収容室41内に置き、介護従事者が身体不自由者に対して洗髪のサービスを簡単に行うことができる。
【0018】
図12に示すように、前記洗髪用シンク40を逆向きに前記車椅子本体10の背もたれ13の上側に組み付け、そして所定の傾斜角度に調整された背もたれ13を身体不自由者がリクライニング姿勢で休むように供するとき、前記洗髪用シンク40をヘッドレストとして使用することにより、より優れた快適性が得られる得。
【0019】
所定の傾斜角度に調整された背もたれ13を身体不自由者がリクライニング姿勢で休むように供するとき、
図13に示すように、当該補助輪組立12の足踏みペダル122を踏み付けることにより、当該補助輪組立12の補助輪121を下向きに変位させて地面上に当て付けると、補助支持作用が奏される。背もたれ13を概ね垂直状に調整するとき、
図14に示すように、足を利用して補助輪組立12の補助輪121を上向きに押動することにより、当該補助輪組立12の補助輪121を上向きに変位させて地面から離間して宙吊り状態となる。
【0020】
また、
図15及び
図16に示すように、介護従事者が身体不自由者の入浴を助けようとするとき、前記車椅子本体10の2つの肘掛け16を当該第2駆動装置17の連動により変位させることで、前記2つの肘掛け16を所定の高さまで上昇させるように調整することができ、及び前記昇降サドル30のサドルクッション31を前記第3駆動装置32の連動により変位させることで、前記サドルクッション31を所定の高さまで上昇させるように調整することができ、そして前記2つの肘掛け16の当て支持部161が身体不自由者の脇下に当てがわれると共に、身体不自由者が左右または前後に移動する位置に対応できるようにし、及び前記サドルクッション31を身体不自由者の臀部に当てがって支えれば、身体不自由者の上体を起こして立位姿勢に支持可能にすることで、一人の介護従事者でも、身体不自由者の入浴を楽に助けることができる。
【0021】
上記の具体的な実施例の構造によれば、下記の効益が得られる。
【0022】
1.本発明の多機能車椅子は、一般的な車椅子としての機能のほかに、使用需要に応じて身体不自由者のために、リクライニング補助、排泄介助、洗髪介護または入浴介護などの形態に変換することにより、安全性、利便性、実用性を向上させる効果を有する。
【0023】
2.本発明の多機能車椅子は、座り補助、リクライニング補助、排泄介助、洗髪介護、入浴介護などの機能を有し、そして異なる使用要求を満たすことができ、排泄介助補助具を別途に装着する必要、及び風呂椅子を別途に準備する必要をなくすことにより、占有スペースの省減及び経費の節減を図ることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 車椅子本体
11 シートフレーム
12 補助輪組立
121 補助輪
122 足踏みペダル
13 背もたれ
131 手押しハンドル
14 第1駆動装置
15 サイドフレーム
151 主輪
152 案内輪
16 肘掛け
161 当て支持部
17 第2駆動装置
18 足掛けフレーム
181 足置きステップ
182 足掛けプレート
20 座面板
21 空所部
30 昇降サドル
31 サドルクッション
32 第3駆動装置
33 ブラケット
331 支柱
332 キャスタ
40 洗髪用シンク
41 洗浄収容室