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特許7475266トマト含有飲料、及びトマト含有飲料の製造方法
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  • 特許-トマト含有飲料、及びトマト含有飲料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】トマト含有飲料、及びトマト含有飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20240419BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240419BHJP
   A23L 2/04 20060101ALI20240419BHJP
   A23L 2/08 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A23L2/02 F
A23L2/00 B
A23L2/04
A23L2/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020206657
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022093925
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】恵良 正和
(72)【発明者】
【氏名】永縄 一樹
(72)【発明者】
【氏名】荻野 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友樹
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-000024(JP,A)
【文献】特開2014-082944(JP,A)
【文献】国際公開第2010/146644(WO,A1)
【文献】[イ コンタディーニ]パッサータ 約500g,世界のチーズ専門店オーダーチーズ[online],2020年08月15日,[2023年10月30日検索],<https://web.archive.org/web/20200815112844/https://www.order-cheese.com/products/detail/223>
【文献】[カクテルレシピ] レッドアイ(ビール+裏ごしトマト),イタリア食材 輸入販売 元CIOJAPANのブログ,2010年07月20日,[2023年10月30日検索],<https://ciojapan.exblog.jp/14017321/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Brix8以上、かつ糖酸比11.0~18.0のトマト含有飲料(ただし、アラニンの割合が2~7質量%であるものを除く。)であって、
当該トマト含有飲料が含有するのは、濃縮トマト、及びトマトパサータである。
【請求項2】
請求項1のトマト含有飲料であって、
濃縮トマト(ただし、Brixが20%未満であるものを除く。)に由来するトマト量[A]とトマトパサータ及びトマトジュースに由来するトマト量[B]は、以下の関係を満たす。
0.2 ≦[B]/([A]+[B])≦ 0.5
【請求項3】
請求項1又は2のトマト含有飲料であって、当該トマト含有飲料の
Hexanalの濃度は、50ppb以下であり、
3-Hexenolの濃度は、80ppb以下であり、
1-Hexanolの濃度は、40ppb以下であり、かつ、
2-Furfralの濃度は、1000ppb以下である。
【請求項4】
請求項1~3の何れかのトマト含有飲料であって、
当該トマト含有飲料のリコピン濃度は、25mg/100g未満である。
【請求項5】
請求項1~4の何れかのトマト含有飲料であって、
当該トマト含有飲料の累積10%粒子径(d10)は、90~250μm 、累積5 0% 粒子径(d50)は、260~500μm 、累積90% 粒子径(d90)は、500~1000μmであり、かつ、
遠心沈殿量は、20% 以上、かつ30% 以下である。
【請求項6】
請求項1~5の何れかのトマト含有飲料であって、
当該トマト含有飲料の漿液比粘度は、1.3~2.5である。
【請求項7】
Brix8以上、かつ糖酸比11.0~18.0のトマト含有飲料であって、
当該トマト含有飲料のHexanalの濃度は、50ppb以下であり、
3-Hexenolの濃度は、80ppb以下であり、
1-Hexanolの濃度は、40ppb以下であり、かつ、
2-Furfralの濃度は、1000ppb以下である。
【請求項8】
請求項7のトマト含有飲料であって、
当該トマト含有飲料のリコピン濃度は、25mg/100g未満である。
【請求項9】
請求項7又は8のトマト含有飲料であって、
当該トマト含有飲料の累積10%粒子径(d10)は、90~250μm、累積5 0%粒子径(d50)は、260~500μm、累積90% 粒子径(d90) は、500~1000μm、であり、かつ、
遠心沈殿量は、20%以上、かつ30%以下である。
【請求項10】
請求項7~9の何れかのトマト含有飲料であって、
当該トマト含有飲料の漿液比粘度は、1.3~2.5である。
【請求項11】
トマト含有飲料(ただし、アラニンの割合が2~7質量%であるものを除く。)の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも次の工程である。
調合: ここで調合されるのは、少なくとも、濃縮トマト、及びトマトパサータであり、
それによって得られるトマト含有飲料のBrixは、8以上であり、かつ、糖酸比は11.0~18.0である。
【請求項12】
請求項11の製造方法であって、前記調合において調合される濃縮トマト( ただし、Brixが20%未満であるものを除く。)に由来するトマト量[A]とトマトパサータ及びトマトジュースに由来するトマト量[B]は、以下の関係を満たす。
0.2≦[B]/([A]+[B])≦ 0.5
【請求項13】
請求項11又は12の製造方法であって、前記トマト含有飲料の
Hexanalの濃度は、50ppb以下であり、
3-Hexenolの濃度は、80ppb以下であり、
1-Hexanolの濃度は、40ppb以下であり、かつ、
2-Furfralの濃度は、1000ppb以下である。
【請求項14】
請求項11~13の何れかの製造方法であって、
前記トマト含有飲料のリコピン濃度は、25mg/100g未満である。
【請求項15】
請求項11~14の何れかの製造方法であって、
前記トマト含有飲料の累積10% 粒子径(d10)は、90~250μm、累積5 0%粒子径(d50)は、260~500μm 、及び累積90% 粒子径(d90) は、500~1000μm、であり、かつ、
遠心沈殿量は、20% 以上、かつ30%以下である。
【請求項16】
請求項11~15の何れかの製造方法であって、
前記トマト含有飲料の漿液比粘度は、1.3~2.5である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、トマト含有飲料及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
我が国において、野菜飲料は、広く受け入れられており、その市場規模は、1000億
円を超えている。野菜飲料においても、トマトジュース、及びトマト含有飲料は、従来か
ら知られており、多くの人に親しまれてきた。一方で、トマトは独特の香りや強い酸味を
有し、そのためにトマトジュース、及びトマト含有飲料は敬遠されることもあった。近年
、高糖度のフルーツトマトを使用したトマトジュースや、トマトの酸味を抑え、甘味を強
調したトマト含有飲料が上市され、それらのトマト含有飲料に対しての一定の需要がある
【0003】
特許文献1に記載されているのは、トマト含有飲料であり、その課題は、濃厚な味わい
で、フルーツトマトのような甘みがあり、かつトマトの酸味を抑制することであり、その
解決方法は、糖度、及び糖酸比を調整することである。
【0004】
また、特許文献2に記載されているのは、トマト含有飲料であり、その課題は、フレッ
シュトマト独特の風味を保持しつつ、酸味が抑制され、甘味があり、且つ低粘度でさらっ
とした食感を有し飲みやすくすることであり、その解決方法は、粒子径、糖度、及び糖酸
比を調整することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開第2012-223141号公報
【文献】特開第2014-030389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、呈味、香り、及び食感の観点から、フルーツトマト
を食している感覚に近いトマト飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討し発見したのは、フルーツトマトを
食している感覚に近く、かつ飲料として好まれるものと、呈味、香り及び食感との関係で
ある。
【0008】
呈味に関しては、甘味が強いトマト飲料は好まれるが、甘味があっても、酸味が低すぎ
ると、甘味が強すぎて人工的に感じることがわかった。そのため、甘味と酸味を適度に有
することで濃厚さを有するものとすることが適切であった。
【0009】
香りに関しては、トマト飲料では青臭みは忌避されたり、青臭みが甘みの感覚を抑えた
りする。一方で、青臭さを抑えるために加熱された原料を用いると、今度は加熱臭が出て
くる。そのため、青臭さと加熱臭を共に適度に抑えることで甘味を引き立て、フルーティ
ーさを有するものとすることが適切であった。
【0010】
食感に関しては、生のトマトを食しているものに近づけるため、飲みごたえが必要であ
った。そのため、一定の粒子径、漿液比粘度、及びパルプ分を有すことで、飲みごたえを
有することが適切であった。
【0011】
そのような観点から本発明を定義すると、次のとおりである。
【0012】
Brix8以上、糖酸比11.0~18.0のトマト含有飲料であって、当該トマト含
有飲料が含有するのは、濃縮トマト、及びトマトパサータである。好ましくは、濃縮トマ
ト(ただし、Brixが20%未満であるものを除く。)に由来するトマト量[A]とト
マトパサータ及びトマトジュースに由来するトマト量[B]は、0.2≦[B]/([A
]+[B])≦0.5の関係を満たす。また好ましくは、当該トマト含有飲料のHexa
nalの濃度は、50ppb以下であり、3-Hexenolの濃度は、80ppb以下
であり、1-Hexanolの濃度は、40ppb以下であり、かつ、2-Furfra
lの濃度は、1000ppb以下である。さらに好ましくは、当該トマト含有飲料のリコ
ピン濃度は、25mg/100g未満である。あわせて、好ましくは、当該トマト含有飲
料の累積10%粒子径(d10)は、90~250μm、累積50%粒子径(d50)は
、260~500μm、及び累積90%粒子径(d90)は、500~1000μm、で
あり、かつ、遠心沈殿量は、20%以上、かつ30%以下であり、漿液比粘度は、1.3
~2.5以下である。
【0013】
Brix8以上、糖酸比11.0~18.0のトマト含有飲料であって、当該トマト含
有飲料のHexanalの濃度は、50ppb以下であり、3-Hexenolの濃度は
、80ppb以下であり、1-Hexanolの濃度は、40ppb以下であり、かつ、
2-Furfralの濃度は、1000ppb以下である。好ましくは、当該トマト含有
飲料のリコピン濃度は、25mg/100g未満である。また、好ましくは、当該トマト
含有飲料の累積10%粒子径(d10)は、90~250μm、累積50%粒子径(d5
0)は、260~500μm、累積90%粒子径(d90)は、500~1000μmで
あり、かつ、遠心沈殿量は、20%以上、かつ30%以下である。さらに好ましくは、当
該トマト含有飲料の漿液比粘度は、1.3以上、2.5以下である。
【0014】
トマト含有飲料の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも調合工程であり
、ここで調合されるのは、少なくとも、濃縮トマト、及びトマトパサータであり、それに
よって得られるトマト含有飲料のBrixは、8以上であり、かつ、糖酸比は11.0~
18.0である。好ましくは、前記調合において調合される濃縮トマト(ただし、Bri
xが20%未満であるものを除く。)に由来するトマト量[A]とトマトパサータ及びト
マトジュースに由来するトマト量[B]は、0.2≦[B]/([A]+[B])≦0.
5の関係を満たす。
【発明の効果】
【0015】
本発明が可能にするのは、フルーツトマトを食している感覚に近いトマト飲料を提供す
ることである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】トマト含有飲料の製造方法の流れ図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<トマト含有飲料>
本発明に係るトマト含有飲料とは、少なくとも、トマト加工品を含有する飲料である。
好ましくは、実質的にトマト加工品のみを含有する飲料であり、より好ましくは、トマト
加工品のみを含有する飲料である。実質的にトマト加工品のみを含有する飲料とは、飲料
中において、90%(w/w)以上がトマト加工品である飲料である。
【0018】
<トマト加工品>
トマト加工品とは、加工されたトマトであり、例示すると、ダイストマト、トマト搾汁
、トマト濃縮汁、脱酸トマト汁、トマトパルプ、トマトパサータ等である。
【0019】
トマト搾汁とは、トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得ら
れるトマト搾汁、及び、これを濃縮したトマト濃縮汁を希釈還元したものを意味する。ト
マト搾汁は、トマト加工品品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)
で指定されたトマトジュースを含む概念であり、トマト濃縮汁は、トマト加工品品質表示
基準で指定されたトマトピューレ、トマトペースト及び濃縮トマト等を含む概念である。
これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有してい
てもよい。
【0020】
また、本明細書において、トマト搾汁、及びトマト濃縮汁とは、除パルプトマト汁を含
む概念であり、除パルプトマト汁とは、トマト搾汁に含まれる水不溶性固形分(トマトパ
ルプ)の一部又は全部を除去したもの、及びこれを濃縮したもの、並びに、トマト濃縮汁
に含まれる水不溶性固形分(トマトパルプ)の一部又は全部を除去したもの、及びこれら
を濃縮又は希釈還元したものである。
【0021】
さらに、本明細書において、脱酸トマト汁とは、トマト搾汁、又はトマト濃縮汁を脱酸
処理したもの、及びこれを濃縮したものである。脱酸処理の方法は、イオン交換樹脂を用
いた方法、炭酸カルシウムや重炭酸カルシウムを用いた方法、重曹などのpH調整剤を用
いた方法が挙げられる。本脱酸処理の方法は、公知の方法でよい。本脱酸処理の方法とし
てとりこむのは、特開2012-223142号公報、特開2014-183811号公
報、特開2018-102207号公報、及び特開2018-102208号公報である
【0022】
脱酸トマト汁の中でも、さらに除パルプ処理が行われたものを特に、除パルプ脱酸トマ
ト汁という。
【0023】
本発明の実施の形態に係るトマトパサータとは、うらごし(搾汁)したトマトを濃縮し
たものであり、濃縮度合いが、トマトピューレやトマトペーストより低いものである。本
発明に係るトマトパサータは、Brix6.0以上、かつ15.0以下まで濃縮したもの
を用いることが好ましい。より好ましくは、Brix6.0以上、かつ12.0以下であ
り、さらに好ましくは、Brix8.0以上、かつ11.0以下まで濃縮したものを用い
ることが好ましい。また、本発明に係るトマトパサータは、実質的にトマトの種、及び皮
を含有しないことが好ましい。「実質的にトマトの種、及び皮を含有しない」とは、トマ
トの種、及び皮の含有量が5%(w/w)以下であることをいう。
【0024】
さらには、食感の観点から、累積50%粒子径が、2cm以下であることが好ましい。
また、粒子径は、累積10%粒子径(d10)が、150μm以上であることが好ましい
。また、累積50%粒子径(d5)0が、300μm以上であることが好ましい。さらに
、累積90%粒子径(d90)が、600μm以上であることが好ましい。d90の上限
は、好ましくは2cmであり、より好ましくは2000μmであり、さらに好ましくは、
1000μmである。粒子径の調整は、うらごしする際のメッシュサイズを変えることに
より行うことができる。うらごししたトマトを低濃縮することにより、青臭さが低減され
つつ、かつ加熱臭が弱いトマト加工品という特徴を有する。
【0025】
本発明の実施の形態に係るトマトパサータの製造方法は、特に限定されないが、当該製
造方法を概念的に構成するのは、少なくとも、剥皮、切断、加熱、搾汁、及び濃縮である
【0026】
<剥皮>
トマトの表皮を剥く目的は、食感、及び舌触りの改善である。剥皮方法は、手動である
か自動であるかを問わず、公知の方法でよい。また、トマトを洗浄するのは、好ましくは
、剥皮前である。さらに、トマトを洗浄する手段は、水に限らず、温水や蒸気等でもよい
【0027】
<切断>
トマトを切断する目的は、加熱効率の向上である。トマトを切断して加熱をすることに
より、トマトの中心部を含めた全体を、効率よく加熱することができる。切断の方法は、
既知の方法でよい。
【0028】
<加熱>
剥皮、及び切断されたトマトを加熱する目的は、酵素の失活である。加熱を行うことに
より、トマトに含まれる、植物繊維分解酵素(ペクチナーゼ、セルラーゼ等)を失活する
ことができ、以後のトマトの軟化を抑制することができる。また、これにより搾汁後の液
の漿液比粘度を高めることもできる。トマトの軟化抑制の観点から、加熱温度は、70℃
より高く、かつ、100℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは、75℃以上、さ
らに好ましくは、80℃以上である。当該加熱は、剥皮や切断の前に行っても構わない。
加熱方法は公知の方法で良く、例えば、プレート式加熱、チューブラー式加熱方法、蒸気
や温水中等でのブランチングがある。
【0029】
<搾汁>
トマトを搾汁する目的は、トマトの固体(トマトパルプ)と液体(トマト搾汁)との分
離である。トマトを搾汁する方法は、公知の方法で良く、ふるい、遠心分離式、押し出し
式等である。トマトパサータにおいて、トマトの固形感を残すため、ふるいに用いるメッ
シュサイズ(目開き)は、1mm~2cmであることが好ましい。搾汁は一段階でも二以
上の段階を経て行っても良い。搾汁機を例示すると、デカンター、フィルタープレス、パ
ルパー・フィニッシャー、フレッシュスクイーザー等である。
【0030】
<濃縮>
搾汁によって得られたものを濃縮する目的は、素材のハンドリングの向上、および、青
臭みの低減である。素材を濃縮することで、容積を減らすことができ、保管コストを低減
することができる。また、青臭みに寄与する香気成分を揮発させることができる。青臭み
を低減し、かつ、加熱臭を抑制する観点から、濃縮は、Brix6.0~15.0程度ま
で行うことが好ましい。より好ましくは、Brix6.0~12.0、さらに好ましくは
、Brix8.0~11.0程度まで行うことが好ましい。加熱温度は、45℃~100
℃であることが好ましい。
【0031】
<野菜汁、及び果汁>
本発明の実施の形態に係るトマト含有飲料において、含有することを排除しないのは、
その他の野菜汁、及び果汁である。本発明において、野菜汁とは、野菜の搾汁(ストレー
ト搾汁)、その濃縮汁(ピューレ、ペースト)及び濃縮汁の還元汁、並びにそれらの加工
汁である。果汁とは、果実の搾汁(ストレート搾汁)、その濃縮汁(ピューレ、ペースト
)及び濃縮汁の還元汁、並びにそれらの加工汁である。野菜汁の原料となる野菜を例示す
ると、ナス、パプリカ、ピーマン、ジャガイモ等のナス科の野菜、ニンジン、セロリ、ア
シタバ、パセリ等のセリ科の野菜、キャベツ、紫キャベツ、メキャベツ(プチヴェール)
、ハクサイ、チンゲンサイ、ダイコン、ケール、クレソン、小松菜、ブロッコリー、カリ
フラワー、カブ、ワサビ、マスタード等のアブラナ科の野菜、ホウレンソウ、ビート等の
アカザ科の野菜、レタス、シュンギク、サラダナ、ゴボウ、ヨモギ等のキク科の野菜、タ
マネギ、ニンニク、ネギ等のユリ科の野菜、カボチャ、キュウリ、ニガウリ等のウリ科の
野菜、インゲンマメ、エンドウマメ、ソラマメ、エダマメ等の豆科の野菜、モロヘイヤ、
アスパラガス、ショウガ、サツマイモ、ムラサキイモ、シソ、アカジソ、トウモロコシ等
である。
【0032】
果汁の原料となる果実を例示すると、レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープ
フルーツ、ミカン、ライム、スダチ、柚子、シイクワシャー、タンカン等の柑橘類、リン
ゴ、ウメ、モモ、サクランボ、アンズ、プラム、プルーン、カムカム、ナシ、洋ナシ、ビ
ワ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、カシス、クランベリー、ブルーベリー、メロ
ン、スイカ、キウイフルーツ、ザクロ、ブドウ、バナナ、グァバ、アセロラ、パインアッ
プル、マンゴー、パッションフルーツ、レイシ等である。また、搾汁及び濃縮の詳細な説
明のため、本明細書に取り込まれるのは、最新果汁・果実飲料辞典(社団法人日本果汁協
会監修)の内容である。
【0033】
<食品添加物>
本発明が排除しないのは、食品添加物の使用である。当該食品添加物を例示すると、甘
味料、酸味料、核酸類、香辛料抽出物、着色料、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤
、栄養強化剤、増粘剤等である。もっとも、不自然な甘味を回避するため、高甘味度甘味
料(例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア等)及
び糖アルコールは、極力、使用しない。また、本発明の具現化にあたり、その他の食品添
加物の使用を極力控えるのが好ましい。
【0034】
<Brix(糖度)>
本実施の形態に係るトマト含有飲料において、Brixは、8.0以上である。好まし
くは、Brixは、8.0以上、かつ12.0以下である。より好ましくは、9.0以上
、かつ11.0以下である。さらに好ましくは、9.0以上、かつ10.0以下である。
一般的なトマトジュースは、Brixが4.0~7.0程度である。本実施の形態に係る
トマト含有飲料において、Brixを8以上とすることによって、一般的なトマトジュー
スと比較して、甘さが際立つものとなる。
【0035】
<酸度>
本実施の形態に係るトマト含有飲料の酸度は、好ましくは、0.4~1.1である。より好ましくは、0.4~0.8である。酸度が高くなりすぎて酸味が強くなると、甘味を感じられにくく
なる。一方で、酸度が低すぎると、人工的な甘味になる。
【0036】
<pH>
本実施の形態に係るトマト含有飲料のpHは、特に限定されないが、好ましくは、3.
8~7.0である。pHが低くなりすぎると、酸味が強くなり、呈味のバランスの観点か
ら好ましくない。一方で、pHが高すぎると、衛生管理上の観点から強い殺菌が必要とな
り、香味への影響等の観点からも好ましくない。これらの点を考慮し、より好ましくは、
当該pHは、4.0~6.0である。さらに好ましくは、4.0~4.5である。pHの
調整は、公知の方法でよい。具体的には、pH調整剤の使用や、原料の脱酸処理等である
。pH調整剤としては、重曹等が挙げられる。
【0037】
<糖酸比>
糖酸比とは、Brix(糖度)の値を酸度の値で除すことで算出した値である。本実施
の形態に係るトマト含有飲料の糖酸比は、11.0~18.0である。好ましくは、14
.0~18.0である。より好ましくは、15.0~18.0であり、さらに好ましくは
、15.5~17.5である。糖酸比が低すぎると、酸味が強く、甘味が感じられにくく
なる。一方、糖酸比が高すぎると、人工的な甘味となってしまう。
【0038】
<香成分>
本実施の形態に係るトマト含有飲料において、青臭みを抑え、かつ、加熱臭を低減する
観点から、青臭みに関与する香成分の含有量は低く、かつ、加熱臭に関与する香成分の含
有量が低いことが好ましい。本実施の形態に係るトマト含有飲料において、青臭みに関与
する香成分として、Hexanal、3-Hexenol、1-Hexanol、2-H
exenal、3-Hexenalが挙げられる。これらの香成分は、トマトの青臭みに
寄与するものとして一般に知られている(「加熱による青臭みやウリ臭の変化について」
,矢野原泰士,有福一郎,鳥取県産業技術センター研究報No.19,2016)。また
、加熱臭に関与する香成分として、2-Furfralが挙げられる。これらの香成分は
、トマトの加熱臭に寄与するものとして一般に知られている(特許第5285177号等
)。
【0039】
青臭みを抑制する観点から、本トマト含有飲料におけるHexanalの含有量は、好
ましくは、50ppb以下である。より好ましくは、30ppb以下であり、さらに好ま
しくは、20ppb以下である。同様に、3-Hexenolの含有量は、好ましくは、
80ppb以下である。より好ましくは、50ppb以下であり、さらに好ましくは、2
0ppb未満である。同様に、1-Hexanolの含有量は、40ppb以下である。
より好ましくは、20ppb以下であり、さらに好ましくは、10ppb以下である。
【0040】
また、3-Hexenalは、トマトの青臭みに寄与する成分であるが、トマト加工品
からはほとんど検出されない。当該観点から、本トマト含有飲料における3-Hexen
alの含有量は、10ppb以下であることが好ましい。より好ましくは、1ppb以下
である。さらに、2-Hexenalは、トマトの青臭みに寄与する成分であるが、濃縮
トマトにおいてはほとんど検出されない。当該観点から、本トマト含有飲料における2-
Hexenalの含有量は、30ppb未満であることが好ましい。より好ましくは、1
0ppb以下であり、さらに好ましくは、1ppb以下である。
【0041】
上記のとおりの香成分濃度とすることにより、本トマト含有飲料において、Hexan
al、3-Hexenol、1-Hexanol、2-Hexenal、及び3-Hex
enalに由来する青臭みを抑制することができる。
【0042】
加熱臭を低減する観点から、本トマト含有飲料における2-Furfralの含有量は
、好ましくは、1000ppb以下である。好ましくは、400ppb以下であり、さら
に好ましくは、100ppb以下である。上記のとおりの香成分濃度とすることにより、
本トマト含有飲料において、2-Furfralに由来する加熱臭を抑制することができ
る。
【0043】
<漿液比粘度>
本実施の形態に係るトマト含有飲料の漿液比粘度は、好ましくは、1.3~2.5であ
る。より好ましくは、1.4~2.3である。さらに好ましくは、1.5~2.2である
【0044】
漿液比粘度とは、試料から不溶性固形分を除去して漿液を採取した後、これを20℃
に調製して、当該漿液の粘度をオストワルド粘度計で測定し、水の粘度との相対比で示し
たものである。数値が大きい程、飲食品中の漿液(不溶性成分を除いた水溶液)の粘度が
高いことを示す。漿液比粘度が大きくなるにつれ、飲料の漿液に粘性があり、飲みごたえ
を有するものとなる。逆に漿液比粘度が小さくなるにつれ、飲みごたえが低くなるが、飲
み込みやすくなる。
【0045】
<粘度(B型粘度)>
本実施の形態に係るトマト含有飲料のB型粘度は、特に限定されないが、好ましくは、
350mPa・s以上1,000mPa・s以下である。より好ましくは、400mPa
・s以上1000mPa・s以下である。B型粘度の測定方法は、公知の方法で良い。測
定手段を例示すると、TVB-10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、M2ロー
ターにより、20℃、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件である。
【0046】
<累積%粒子径>
粒子径とは、粒子の長径を測定した値である。ここで「累積a%粒子径」とは、測定で
得られた粒度分布において、粒子集団の全体積を100%として累積頻度を求めたとき、
累積頻度がa%に達する粒子径をいう。すなわち、累積10%粒子径とは、累積頻度が1
0%となる点の粒子径をいう。累積50%粒子径(d50)とは、累積頻度が50%とな
る点の粒子径をいう。また、累積90%径(d90)とは、累積頻度が90%となる点の
粒子径をいう。粒子径を測定する手段は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置であ
る。
【0047】
本発明におけるトマト含有飲料の粒子径は、好ましくは、累積10%粒子径(d10)
が、90μm以上であることが好ましい。また、累積50%粒子径(d50)が、260
μm以上であることが好ましい。さらに、累積90%粒子径(d90)が、500μm以
上であることが好ましい。d90の上限は、好ましくは2cmであり、より好ましくは2
000μmであり、さらに好ましくは、1000μmである。また、好ましくは、d10
が90μm~250μmである。より好ましくは、d10が100μm~200μmであ
る。さらに好ましくは、d10が130μm~200μmである。また、好ましくは、d
50が260μm~500μmである。より好ましくは、d50が、300μm~500
μmである。そして、好ましくは、d90が500μm~1000μmである。より好ま
しくは、d10が550μm~1000μmである。粒子径を大きくすることで、食感、
のど越しを得ることができ、生のトマトを食している感覚に近くなる。粒子径を大きくす
る方法は、公知の方法で良いが、具体的には、トマトを破砕後の、メッシュ(ふるい)サ
イズの調整等が挙げられる。
【0048】
<遠心沈殿量>
遠心沈殿量とは、試料を一定条件で遠心処理した際の沈殿量を体積割合で表したもので
ある。本実施の形態で採用する測定方法は、次のとおりである。すなわち、10ml容の
沈殿管(目盛付きスピッチグラス)に本トマト含有飲料を10ml入れ、2,860rp
m(1,450×g)で10分間遠心後の沈殿物の体積量(%)を測定する。遠心沈殿量
は特に限定されないが、好ましくは、トマト含有飲料の遠心沈殿量が、20%以上、かつ
30%以下である。好ましくは、好ましくは、トマト含有飲料の遠心沈殿量が、25%以
上、かつ30%未満である。遠心沈殿量を調整する方法は、公知の方法で良いが、具体的
には、ふるいによるパルプ分の除去、及び遠心分離によるパルプの除去等が挙げられる。
【0049】
<リコピン濃度>
本発明の実施の形態に係るトマト含有飲料のリコピン濃度は、好ましくは、4mg/1
00g以上、35mg/100g以下である。より好ましくは、5mg/100g以上、
25mg/100g未満である。さらに好ましくは、5mg/100g以上、20mg/
100g以下である。リコピン濃度が高くなりすぎると、リコピンに由来するムレ臭が強
くなり、好ましくない。リコピン濃度の調整方法は、既知の方法であれば、特に限定され
ないが、例えば、トマト含有飲料中のトマト加工品の配合量の調整である。また、リコピ
ンを工業的に濃縮や精製したリコピン製剤も市場において販売されており、リコピン製剤
を使用しても良い。ただし、食品添加物不使用の観点から、本実施の形態に係るトマト含
有飲料は、食品添加物としてのリコピンを使用しないことが好ましい。リコピン濃度の測
定方法は、公知の方法でよい。
【0050】
<本トマト含有飲料の製造方法の概念的構成>
本トマト含有飲料の製造方法(以下、この欄では、「本製法」ということもある。)を
概念的に構成するのは、少なくとも、調合である。
【0051】
<調合(S10)>
調合の目的は、トマト含有飲料の呈味、香り、及び食感の調整である。調合される原材
料の種類は、一又は複数である。水は、適宜、調合される。原材料を例示すると、トマト
破砕物、酸度調整用原料、野菜加工物、果実加工物等である。加工物を例示すると、破砕
物、搾汁(ストレート汁)、濃縮還元汁、濃縮物(ピューレやペースト等)等である。も
っとも、トマトらしい香味維持の観点から、実質的にトマト加工物以外の原材料は、含有
しないことが好ましい。
【0052】
<殺菌、冷却(S20)及び充填(S30)>
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、殺菌、冷却及び充填である。殺菌方法は、
公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌、チューブラー式殺菌方法等がある。冷却方
法は、公知の方法で良い。充填方法は、公知の方法でよい。トマト含有飲料が充填される
(詰められる)容器は、公知の物で良く、例示すると、缶、瓶、紙容器、ペットボトル等
である。
【0053】
<トマト加工品のリコピン濃度>
本発明の実施の形態に係るトマト加工品のリコピン濃度は、市場に流通しているもので
あれば特に限定されないが、濃縮トマトの1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.
4mg/100g以上3.4mg/100g未満であることが好ましい。より好ましくは
、1.8mg/100g以上2.6mg/100g未満である。また、トマトパサータの
1.0Brix当たりのリコピン濃度は、1.3mg/100g以上2.4mg/100
g未満であることが好ましい。より好ましくは、1.6mg/100g以上2.2mg/
100g未満である。
【0054】
<トマト量>
本発明の実施の形態に係るトマト量とは、トマト加工品をBrix4.5に調整した場
合における、トマト加工品の重量である。具体的には、100Lのトマト含有飲料におい
てBrix27.0のトマト加工品が10kg使用されていた場合、10kg×27.0
/4.5=60kgより、トマト量で60kgが100Lのトマト含有飲料に含まれるこ
ととする。
【0055】
本実施の形態に係るトマト含有飲料において、濃縮トマト(ただし、Brixが20%
未満であるものを除く。)に由来するトマト量[A]とトマトパサータ及びトマトジュー
スに由来するトマト量[B]は、0.2≦[B]/([A]+[B])≦0.5の関係を
満たすことが好ましい。これにより、青臭さが抑制され、かつ、加熱臭が抑制されたトマ
ト含有飲料を作製することが可能となる。より好ましくは、[A]と[B]の関係は、0
.2≦[B]/([A]+[B])≦0.45である。[A]の量が大きくなることで、
[B]/([A]+[B])の値が小さくなると、青臭みは抑制されるものの、加熱臭が
増大する。また、[B]の値が大きくなることで、[B]/([A]+[B])の値が大
きくなると、加熱臭は抑制されるものの、青臭みが増大する。
【0056】
本実施の形態に係るトマト含有飲料における、トマト量の全量は、1600g/1L~
2700g/1Lであることが好ましい。より好ましくは、1800g/1L~2500
g/1Lであり、さらに好ましくは、2000g/1L~2300g/1Lである。
【実施例
【0057】
<原材料の準備>
生のトマトを破砕して、搾汁し、その搾汁液を遠心分離処理することで、トマト漿液を
得た。このトマト漿液を、減圧加熱濃縮を行うことで、Brix29.0まで濃縮したも
のを、トマトエキスとした。
【0058】
生のトマトを剥皮した後、ダイス状に切断し、80度で予備加熱後、1cmの目開きの
メッシュでうらごしした。その後、減圧加熱濃縮を行うことで、Brix9.3まで濃縮
したものを、さらに1mmの目開きのメッシュでうらごししたものを、トマトパサータと
した。
【0059】
<試料の準備>
実施例として、市販のトマトペースト(トルコ産Brix29.0)、トマトエキス(
Brix29.0)、トマトパサータ(Brix9.3)、及び水を用いて、表1に記載
の配合量により調合液を調製し、調合液が93℃に達するまでスパーテル等で攪拌しなが
ら加温し、ペットボトルに充填した後に冷却して、トマト含有飲料を調製した(実施例1
~4)。比較例1として、カゴメトマトジュース(食塩無添加)(カゴメ(株)社製)を
、比較例2として、夏しぼり2019(カゴメ(株)社製)、比較例3として、カゴメプ
レミアムレッド(カゴメ(株)社製)、比較例4として、濃厚リコピン(カゴメ(株)社
製)を、それぞれ市販の物を購入し、準備した。
【0060】
参考例として、高糖度トマトを用いた市場品のトマトジュースとして、参考例1「おも
いろトマトのジュース」(製造者:農業生産法人リコペル)、参考例2「湘南無添加10
0%トマトジュース」(製造者:湘南トマト工房)のBrix,及び糖酸比を測定した。
【0061】
【表1】
【0062】
<Brix(糖度)の測定>
本測定で採用したBrix(糖度)の測定器は、屈折計(RX-5000i、ATAG
O社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
【0063】
<酸度の測定>
本測定で採用した酸度の測定法は、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を用いた
電位差滴定法である。酸度は、電位差滴定法によりpHが8.1になった際の水酸化ナト
リウム標準液使用量を基に算出した。酸度は、クエン酸換算での濃度(%)を意味する。
【0064】
<リコピン濃度の測定>
本測定で採用したリコピンの測定方法は、HPLC法である。試料は公知の方法に基づ
いて、溶媒抽出を行い、フィルター濾過したものを検体とした。詳細な測定条件は、以下
のとおりである。
【0065】
<HPLC装置構成>
オートサンプラー :LC-2030(SHIMADZU)
ポンプ :LC-2030(SHIMADZU)
カラムオーブン :LC-2030(SHIMADZU)
検出器 :LC-2030 UV(SHIMADZU)
<測定条件>
カラム :Mightysil RP18 GP、φ4.6mm×250
mm(関東化学)
移動相 :メタノール:アセトニトリル:ジクロロメタン混液
(7:7:2(v/v)
(α-トコフェロール50ppm含有)
流速 :1.5mL/min
検出波長 :474nm
カラム温度 :40℃
試料注入量 :10μL
分析時間 :45min
【0066】
<pHの測定>
本測定で採用したpHの測定器は、pH計(pH METER F-51 HORIB
A社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
【0067】
<B型粘度の測定>
TVB-10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、回転数を12rpmとし、開
始後60秒後の条件で、粘度を測定した。使用したローターはM2で、測定時の温度は2
0℃であった。測定値が25mPa・s以下となったものは、「測定不可」とした。
【0068】
<遠心沈殿量>
10ml容の沈殿管(目盛付きスピッチグラス)に野菜含有調味料(Brix5.0)
を10ml入れ、2,860rpm(1,450×g)で10分間遠心後の沈殿物の体積量
(%)を測定した。
【0069】
<粒子径の測定>
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置Microtrac S3500(マイクロ
トラック・ベル(株))」を用い、体積換算で頻度の累積が10%、50%、90%にな
る粒子径(それぞれd10、d50、d90)を測定した。屈折率を「1.81」、循環
器流速を「50」、超音波設定を「出力30W、時間60秒」とした。
【0070】
<漿液比粘度の測定>
試料をNo.5Aの濾紙でろ過し、蒸留水とろ液を20℃に保持した。オストワルド粘
度計No.3(柴田科学社製)に、蒸留水10mlを注入し、流下時間を3回測定し、平
均値をとった。蒸留水を除去後、オストワルド粘度計に試料を10ml注入し、流下時間
を3回測定し、平均値をとった。試料の平均流下時間(秒)を蒸留水の平均流下時間(秒
)で除することにより、試料の漿液比粘度を算出した。
【0071】
<GC-MSによる香成分の測定>
本発明に係る香成分の含有量を測定する方法として採用できるのは、ガスクロマトグラ
フィー質量分析法である。トマト含有飲料を、水で薄めたものを試料とした。ガスクロマ
トグラフィー質量分析計(GC-MS)により当該成分を検出することができる。詳細な
前処理条件、測定条件は以下の方法で行った。
【0072】
<前処理条件>
前処理方法 :ダイナミックヘッドスペース法
試料採取量 :5g
内部標準物質 :10ppm 1,2-ジクロロベンゼン溶液を5μL添加
インキュベーションタイム:10min
パージ条件 :6min(10ml/min)
ドライ条件:18min(50ml/min)
<TDU(加熱脱着ユニット)条件>
TDU :30℃→720℃/min→240℃(3min)
CIS :20℃→12℃/sec→240℃(20min)
<GC-MS条件>
GC :Agilent Technologies 8890
MS :Agilent Technologies 5977B
注入口 :溶媒ベントモード
ライナー :Tenax TA充填
カラム :Agilent 122-7063
(60m×250μm×0.50μm)
オーブン温度 :40℃(3min)→10℃/min→
240℃(17min)
測定モード :Scanモード
【0073】
<官能評価方法>
香味評価に鋭敏な感覚を持つ官能評価者(パネル)22名を選定した。
官能評価は、実施例、並びに比較例1~4を用いて、「フルーティさ」、「青臭さ」、
「トマトのコク」、「飲みごたえ」、及び「甘さ」に関して、順位法により行った。
有意差の有無については、各パネリストの評価を基にして、Friedman検定によ
り、危険率(P値)1%、5%にて判断した。実施例と比較して、危険率1%以下で有意
差があるものについては、「*」の印にて、危険率5%以下で有意差があるものについて
は、「**」の印にて示した。
【0074】
<結果>
実施例1~4、並びに比較例1~4について、理化学分析値を表2に、香成分の濃度を
表3に、香成分をOdor Unitに換算したものを表4に、官能評価の結果を表5~表8に示
した。また、参考例1のBrixは、7.1、糖酸比は、15.4であった。参考例2の
Brixは、7.0、糖酸比は、13.5であった。なお、「Odor Unit」とは、香りの
強さを見る一つの指標であって、香成分の定量値を、閾値で除した値である。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
<まとめ、考察>
実施例1~4のトマト含有飲料は、他の市販のトマトジュースと比較して、Brix(
糖度)が高く、糖酸比も高いことがわかった。また、漿液比粘度についても、他の市販の
トマト含有飲料と比較して高い値を示し、粒子径についてもd10,d50、d90にお
いて高い値を示した。
【0083】
次に、含有する香成分に関しても、他の市販のトマトジュースと比較して、青臭みに関
与する香成分の濃度が低く、かつ、他の高糖度トマト含有飲料と比較しても、加熱臭に関
与する香成分の濃度が高い結果となった。
【0084】
そして、官能評価についても、他の市販のトマト含有飲料と比較して、最もフルーティ
さ、甘さを感じられ、最も青臭さを感じられない結果となった。また、比較的トマトのコ
クが高く、飲みごたえがある結果となった。
【0085】
青臭さが最も感じられにくい結果となった理由として、青臭さに関与する香気成分の濃
度が低いことが考えられる。また、フルーティさ、甘さを最も感じられる結果となった理
由として、Brix(糖度)、及び糖酸比の影響が考えられる。併せて、青臭さが少なく
、加熱香に関与する香成分が少ないことで、フルーティさ、及び甘さが際立ったものと考
えられる。さらに、トマトのコク、飲みごたえが感じられる結果となった理由として、B
rix(糖度)の高さに加え、粒子径の大きさ、遠心沈殿量、並びに、漿液比粘度の高さ
の影響が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明が有用な分野は、トマト含有飲料の製造及び販売である。
図1