(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】パルス緩衝器を有する流体分離システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
A61M1/02 120
(21)【出願番号】P 2020509010
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2018072072
(87)【国際公開番号】W WO2019034671
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-07-07
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501243775
【氏名又は名称】ビオセフ エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック・アンドレ・シュブレ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06123655(US,A)
【文献】特開昭60-132567(JP,A)
【文献】特表2002-533171(JP,A)
【文献】特表2015-527165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0029762(US,A1)
【文献】国際公開第2016/178100(WO,A1)
【文献】国際公開第83/00088(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38;60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液をその成分へ分離するための
閉じたシステム(1)であって、
回転軸(AR)の周りで回転可能であり、中空の内部(12)を定める壁(11)、上端(13)、下端(14)、および、前記上端(13)に位置付けられる軸方向開口(15)、および、前記下端(14)を有する遠心分離チャンバ(10)と、
前記壁(11)と共に前記遠心分離チャンバ(10)内に可変容積の分離空間(21)を定める、前記遠心分離チャンバ(10)内に収容される軸方向移動可能部材(20)と、
各々が複数の管(31)のうちの1つと選択的な流体接続状態にある複数の弁(30)と、
前記複数の管(31)に流体接続される複数の容器(40)であって、それによって前記遠心分離チャンバ(10)と前記複数の容器(40)とは選択的な流体連通状態にある、複数の容器(40)と、
前記遠心分離チャンバ(10)と前記複数の弁(30)との間に流体連通を確立するための配管(50)であって、前記配管(50)内での流体のポンピングのためにポンプ(60)の少なくとも一部を形成する一部分(51)を含む一本の配管(50)と、
を備え、
前記複数の容器(40)と前記分離空間(21)との間の流路における複数の弁(30)は、前記複数の容器それぞれと前記分離空間(21)との間の経路を開閉するように調整可能であり、かつ、前記ポンプ(60)は、前記配管(50)に沿って両方向に作動可能であり、これにより、前記複数の容器の1つの容器から前記分離空間(21)への生体液の移動、前記分離空間(21)から前記複数の容器の別の容器への生体液の移動、並びに、前記軸方向移動可能部材(20)が前記遠心分離チャンバ(10)の前記下端(14)または前記上端に向かう移動を促進することを特徴とする
閉じたシステム(1)。
【請求項2】
前記遠心分離チャンバ(10)と前記一部分(51)の位置との間の前記配管(50)に沿って配置されたパルス緩衝器(70)をさらに備える、請求項1に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項3】
前記ポンプ(60)は、前記パルス緩衝器(70)と前記複数の弁(30)の構成との間で前記配管(50)に、またはその周りに位置付けられる、請求項2に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項4】
前記遠心分離チャンバ(10)は円筒形である、請求項1から3のいずれか一項に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項5】
前記複数の容器(40)のうち少なくとも1つは採血バッグを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項6】
前記ポンプは前記配管(50)の外部にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項7】
前記ポンプ(60)は容積式ポンプである、請求項6に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項8】
前記ポンプ(60)は蠕動ポンプである、請求項6に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項9】
前記ポンプ(60)は膜ポンプである、請求項6に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項10】
前記
閉じたシステム(1)の動作を制御するための手段(81)をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項11】
前記手段(81)は、前記軸方向移動可能部材(20)の位置を監視するための手段(82)をさらに備える、請求項10に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項12】
前記遠心分離チャンバ(10)の前記壁(11)は硬いプラスチックから形成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項13】
前記硬いプラスチックはポリプロピレンである、請求項12に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項14】
前記軸方向移動可能部材(20)は硬いプラスチックから形成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項15】
前記硬いプラスチックはポリカーボネートである、請求項14に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項16】
前記軸方向移動可能部材(20)は、その外周の周りに位置付けられる1つまたは複数のシールをさらに備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項17】
前記シールは、Oリング、低摩擦材料、シリコーンおよび/またはゴムを備える、請求項16に記載の
閉じたシステム(1)。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の
閉じたシステム(1)を使用して、生体液をその成分へ分離するための方法であって、前記方法は、
前記軸方向移動可能部材(20)を前記遠心分離チャンバ(10)の前記下端(14)に向けて移動させることで、生体液が回収された前記複数の容器(40)のうちの1つから前記分離空間(21)へと前記生体液を移送するステップと、
前記生体液のいくつかの分離された成分を得るために、前記分離空間(21)内における前記生体液の遠心分離に適する速度で前記遠心分離チャンバ(10)を回転させるステップと、
前記複数の弁の選択的な開放と、前記遠心分離チャンバ(10)の前記上端(13)に向けた前記軸方向移動可能部材(20)の移動とによって、各々の分離された成分を、前記分離空間(21)から、前記分離された成分の回収のために指定された、前記複数の容器(40)のうちの1つとは別の容器へと移送するステップと、
を含み、かつ、
前記軸方向移動可能部材(20)の前記移動は、前記配管(50)内での流体汲み上げのためにポンプ(60)による圧力差の生成によって達成されることを特徴とする方法。
【請求項19】
容器(40)のうちの1つから前記分離空間(21)内へと生体液を移送するステップは、血液収集バッグ内に収集された血液の前記分離空間(21)内への移送を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
容器(40)のうちの1つから前記分離空間(21)内へと生体液を移送するステップは、前記生体液は細胞培養液である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤血球、白血球、血小板、および血漿への全血の分離など、生体液のその構成成分への分離に関する。より詳細には、本発明は、このような分離を実行するときに使用するシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
血液の成分、つまり、赤血球、白血球、血小板、および血漿は、異なる治療のために使用され、そのため、特定の量の提供された全血が、これらの成分を分離するために処理される。典型的な献血では、約450mLの全血が、抗凝血性溶液を含む採血バッグへと回収させられる。回収された血液は、血液バッグを大形の冷凍遠心器において約10分間にわたって回転させることで、小成分へと分離される。遠心分離に続いて、成分の各々は、採血バッグから別の回収バッグへと連続的に送られる。
【0003】
比較的少ない量を処理するのにも適している、生体液の回収および分離のためのより自動化されたコンパクトで持ち運び可能なシステムに対する要求がある。
【0004】
特許文献1および特許文献2は、折り畳み可能なバッグに取り付けられる比較的小さい遠心装置を提案している。しかしながら、これらの装置は、成分が回収され得る前に、通常は約250mLの最低量が処理されることを必要とする最低固定保持量を有する。
【0005】
特許文献3は、処理チャンバが、駆動ユニットの一部を形成する膜を用いて、処理チャンバを生体液で満たすために、または、処理チャンバを空にするために変形され得る柔軟な処理バッグである場合に対応する遠心処理装置を開示している。
【0006】
特許文献4は、ピストンによって分けられた2つのチャンバを有する遠心処理装置を開示している。遠心分離の前、処理される少量の流体が、中心からずれた入口を介して取り込まれ、遠心処理の間に2つのチャンバの間で移送される。
【0007】
特許文献5は、可変容積の処理チャンバを伴う持ち運び可能で使い捨ての遠心装置を教示している。そのため、非常に少量までであるが、異なり得る量の生体液を処理することができる。特許文献6は同様の装置を記載している。これらの文献の両方が、ピストンを望むように上または下へと移動させるために真空または正圧のいずれかを選択的に作り出すチャンバの底に位置させられた空気圧システムを用いてのピストンの移動の制御を教示している。発明者は、下記のものを含め、ピストンの移動を制御するための空気圧システムに伴ういくつかの問題を認識している。
- ピストン移動の低い反応性(15秒間のループ反応性)
- 空気の膨張/圧縮の影響(「付着および滑り」とも称される)
- 最低のピストン速度における制約(-100~+100mbarの間で調整できない)
- ピストンの移動摩擦に対して敏感
【0008】
特許文献5は、生体液を処理チャンバの内部および外部に移送するためにチャンバに接続された配管回路に作用する2つの蠕動ポンプの使用も提案している。発明者は、流れの急な動きが容易に発生させられ、それが生体液における細胞に望ましくないストレスを引き起こす可能性があるという点において、蠕動ポンプは問題になり得ることを認識している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第3737096号
【文献】米国特許第4303193号
【文献】米国特許第5316540号
【文献】欧州特許第0654669号
【文献】欧州特許第0912250号
【文献】米国特許第6733433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、これらの問題を克服する生体液を処理するためのさらに改善されたシステムの余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、本発明は、生体液をその成分へ分離するためのシステム(1)であって、
回転軸(AR)の周りで回転可能であり、中空の内部(12)を定める壁(11)、上端(13)、下端(14)、前記上端(13)に位置付けられる軸方向開口(15)、および、前記下端(14)に位置付けられる任意選択の空気制御システム(16)を有する遠心分離チャンバ(10)と、
前記壁(11)と共に前記チャンバ(10)内に可変容積の分離空間(21)を定める、前記チャンバ(10)内に収容される軸方向移動可能部材(20)と、
各々が複数の管(31)のうちの1つと選択的な流体接続状態にある複数の弁(30)と、
前記チャンバ(10)と前記複数の弁(30)との間に流体連通を確立するための配管(50)であって、配管内での流体汲み上げのためにポンプ(60)の少なくとも一部を形成する一部分(51)を含む配管(50)と、
前記チャンバ(10)と、前記一部分(51)のための位置との間で、前記配管(50)に沿って位置付けられるパルス緩衝器(70)と
を備えるシステム(1)を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、生体液をその成分へ分離するための方法における、本発明のシステム(1)の使用であって、前記方法は、
前記軸方向移動可能部材(20)を前記分離チャンバ(10)の前記下端(14)に向けて移動させることで、生体液が回収された容器(30)から前記分離空間(21)へと前記生体液を移送するステップと、
前記生体液のいくつかの分離された成分を得るために、分離空間(21)内における生体液の遠心分離に適する速度で分離チャンバ(10)を回転させるステップと、
前記複数の弁の選択的な開放と、前記分離チャンバ(10)の前記上端(13)に向けた前記軸方向移動可能部材(20)の移動とによって、各々の分離された成分を、前記分離空間(21)から、前記分離された成分の回収のために指定された前記複数の容器(30)のうちの1つへと移送するステップと
を含む、使用において、
前記軸方向移動可能部材の移動は、前記パルス緩衝器(70)と前記弁構成(30)との間で前記配管(50)に、またはその周りに位置付けられるポンプ(60)による圧力差の生成によって達成されることを特徴とする、使用に関する。
【0013】
本発明のシステムは、軸方向移動可能部材の移動を制御するために圧縮空気を使用することと関連付けられる問題を克服し、そのため移動の速度がより細かく制御でき、また、付着および滑りの問題と、移動の間の流れの急な動きの問題とを低減または排除する。本発明は、軸方向移動可能部材の移動の反応性を低減させ、ピストン摩擦に対して非常に敏感である。知られている方法では、圧力を0mbar近く(-100~+100mbarの間)に制御することは難しいが、本発明は1ml/s未満の軸方向移動可能部材の滑らかな移動を可能にする。
【0014】
そのため、この発明は、可変容積の利点を、軸方向移動可能部材の移動の高品質な調整と組み合わせている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のシステムの具体的な実施形態の非限定的な例を示す図である。
図1の様々な符号の付けられた特徴は、本明細書において提供されている記載を参照して理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特許請求されている発明の主題をより明確および簡潔に記載および指摘するために、本明細書および特許請求の範囲を通じて使用されている特定の用語についての定義が以下に提供されている。本明細書における特定の用語の例示は、非限定的な例として考慮されるべきである。
【0017】
「備えている」または「備える」という用語は、本出願を通じてそれらの従来の意味を有しており、物質または組成が列記された本質的な特徴または成分を有さなければならないことと、他のものが追加で存在できることとを意味する。「備えている」という用語は、組成が他の特徴または成分が存在することなく列記された成分を有することを意味する「~から本質的に成る」を好ましい部分集団として含む。
【0018】
本発明の文脈における「生体液」は、限定されることはないが、血液、唾液、リンパ液、脳脊髄液、腹水、および尿を含む、生態と関連付けられる任意の処置されたまたは未処置の流体を意味すると解釈される。生体液には、特には、全血、温血、冷血、および保管された血液または新鮮な血液があり、限定されることはないが、生理食塩水、栄養物、および/または抗凝血性溶液を含む生理溶液で希釈された血液など、処置された血液がある。細胞培養液は生体液として解釈されてもよい。
【0019】
生体液の「成分」は、当の具体的な生体液に依存するが、細胞成分と、成分が存在する液体とを含む。そのため、例えば、人の血液の成分は、赤血球、白血球、血小板、および血漿であり、細胞培養液の成分は、成長させられる細胞および培地である。
【0020】
本明細書で使用されているような「パルス緩衝器」という用語は、脈圧を阻止する、および/または、脈圧の生成を防止する装置に言及するための総称的な用語となるように意図されている。パルス緩衝器が、典型的にはポンプまたは流れ制御弁などの変調要素である流れまたは圧力の擾乱の発生源に概して隣接して位置付けられる。パルス緩衝器は、最大流量を回収し、質量移送の速度が低減するときにそれをシステムに戻すように送達することで作用し、それによって流れを円滑および平均化する。本発明のシステムでは、パルス緩衝器は、分離チャンバへの流れが波状になっているときに問題となり得る流れの急な動きを低減するために、チャンバとポンプとの間に位置付けられる。
【0021】
本発明の文脈における「遠心分離チャンバ」は、回転駆動ユニットとの係合によって回転軸の周りで回転可能である中空の遠心処理チャンバである。典型的には、遠心分離チャンバは、成分が同心円状に分離されるように形が略円筒形である。一実施形態における分離チャンバは、処理チャンバの端壁から延びる略円筒形の壁を備え、この略円筒形の壁は、内部に回転軸と同軸の中空の開放した円筒形の空間を定め、軸方向開口が、中空の処理チャンバへと開放するために、略円筒形の壁と同軸な前記端壁に設けられる。処理チャンバは、略円筒形の壁の中に軸方向移動可能部材を収容する。分離チャンバが作られ得る典型的な材料には、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、および液状シリコーンゴム(LSR)がある。一実施形態では、チャンバの壁はPPから作られ、軸方向移動可能部材はPCから作られ、シールはLSRから作られる。分離チャンバは技術的に知られており、例えばGE HealthcareのBiosafeから、市販されている。
【0022】
遠心分離チャンバの「壁」は、チャンバの外形を定めると共に中空の内部を定める。「中空の内部」は、チャンバの壁によって定められる内部空間全体である。
【0023】
遠心分離チャンバの上端に位置付けられる「軸方向開口」は、処理される生体液がチャンバに入り、前記生体液の処理された成分がチャンバから出るのに通る開口である。軸方向開口は、成分のいずれにも害をもたらさずに生体液が容易に通過するのに適した直径のものである。前記軸方向開口は、典型的には遠心分離チャンバより細い直径のものである。この開口は、生体液の全体の遠心分離処理が行われる可変容積の分離空間へと繋がる。
【0024】
「軸方向移動可能部材」は、分離空間を遠心分離チャンバの中空の内部の残りの部分から流体的に隔離するように構成される。軸方向移動可能部材は、処理される選択された量の生体液を、軸方向開口を介して分離空間へと吸入するか、または、処理された生体液の成分を、前記開口を介して分離空間から送るかのいずれかのために、移動可能である。一実施形態では、前記軸方向移動可能部材はピストンである。可変容積の分離空間は、チャンバの壁と軸方向移動可能部材とによって、処理チャンバの上方部に定められる。移動可能部材の軸方向の移動は分離空間の容積を変化させ、移動可能部材は、遠心処理の前もしくは最中に、処理される選択された量の生体液を、入口を介して分離空間へと吸入するか、または、遠心処理の後に、処理された生体液の成分を、軸方向の開口を介して分離空間から送るかのいずれかのために、処理チャンバの内部で軸方向に移動可能である。
【0025】
「ポンプの少なくとも一部」という表現は、配管の一部分がポンプの一部として解釈できるという事実を言っている。例示のために、非限定的な例は、配管が蠕動ポンプによって作用させられ得る場所、または、使い捨てのダイヤフラム(または「膜」)ポンプであり得る場所を含む。
【0026】
軸方向移動可能部材の位置を「監視するための手段」は、軸方向移動可能部材の位置における変化に応答する、制御電気回路に接続された検出器を備える。一実施形態では、監視するための手段は、例えば、周囲光からの干渉を回避するために赤外線スペクトルにおいて光が発する、発光ダイオードの鉛直方向の配列から作られる光学センサ組立体を備える。制御電気回路は、検出器の動作のための命令を含むソフトウェアを備える。特定の実施形態では、制御電気回路は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはスマートフォンにプログラムされるソフトウェアの形態を取り得る。
【0027】
前記「複数の容器」の各々は、生体液またはその成分のうちの1つの回収および/または保管に適する容器である。一実施形態では、前記容器の各々は、血液の回収および保管の分野においてよく知られている種類のプラスチックバッグである。
【0028】
「添加溶液」という用語は、例えば抗凝血性溶液、防腐剤、緩衝液といった、血液の回収および保管において有用な任意の溶液を包含すると解釈され得る。
【0029】
「流体連通」という用語は、その通常の意味と取られ、言わば、流体が、直接またはパイプもしくは管などの導管を用いて、1つの構成要素から別の構成要素へと容易に通じることができるという意味と取られる。「選択的な流体連通」という用語は、2つの構成要素の間の経路が選択的に閉じられ得ることを意味する。
【0030】
「複数の弁」は、分離チャンバと複数の容器との間に選択的な連通を確立する分配弁構成、または、処理チャンバと容器の各々とを連通させるかもしくはさせないための分配弁構成である。
【0031】
本発明の文脈における「ポンプ」は、ピストン、プランジャ、または回転羽根のセットを用いて流体を移動させるための装置である。
【0032】
本発明のシステムの使用に適用されている「移送」という用語は、生体液を分離空間へと移動させる過程、または、分離された成分を分離空間から移動させる過程を言っている。移送の行為は、生体液の成分が無傷であることが治療の用途に要求されるため、生体液の成分に害をほとんどからまったく与えない手法で実行されるべきである。分離チャンバにおける軸方向移動可能部材の下向きの移動は、液体を吸入するために真空を作り出し、軸方向移動可能部材の上向きの移動は、分離された成分のそれらのそれぞれの容器への移送を容易にする。
【0033】
分離チャンバの使用に当てはまるときの「回転」という言葉は、分離チャンバ内で生体液をその成分へと分離するのに適する速度への回転を意味する。一実施形態では、生体液の「遠心分離に適する速度」は、4000~8000rpmの範囲にあり、好ましくは5000~7000rpmの範囲にあり、より好ましくは5500~6500rpmの範囲にある。
【0034】
システム(1)の一実施形態において、前記パルス緩衝器(70)は、前記配管(50)の上方に位置付けられる空気腔を備える。この「空気腔」は、空気が流れの急な動きを円滑にするために流体流れに作用する流体の上方の空気空間であると理解され得る。例えば、非限定的な例は、空気腔がダイヤフラムによって配管における流体流れから分離される場合、または、空気が圧力における変化を受け入れ、空気腔が底における流体を伴う点滴チャンバの一部である場合を含む。一実施形態では、前記パルス緩衝器(70)は空気バネである。一実施形態では、前記パルス緩衝器(70)は点滴チャンバである。
【0035】
一実施形態では、前記空気腔はダイヤフラムによって前記配管(50)の内部から分離される。
【0036】
システム(1)の別の実施形態では、前記パルス緩衝器(70)は、機械的なバネによって後押しされるピストンを備える。
【0037】
システム(1)の一実施形態では、前記分離チャンバ(10)は実質的に円筒形である。一実施形態では、前記分離チャンバ(10)の壁(11)は硬いプラスチックから形成される。一実施形態では、前記硬いプラスチックはポリプロピレンである。
【0038】
システム(1)の一実施形態では、前記軸方向移動可能部材(20)は硬いプラスチックから形成される。一実施形態では、前記硬いプラスチックはポリカーボネートである。一実施形態では、前記軸方向移動可能部材(20)は、その外周の周りに位置付けられる1つまたは複数のシールをさらに備える。一実施形態では、これらのシールはOリングである。一実施形態では、シールは、例えばシリコーンまたはゴムといった低摩擦材料から形成される。
【0039】
一実施形態では、システム(1)は、前記複数の管(31)に流体接続される複数の容器(40)をさらに備え、それによって前記チャンバ(10)と前記複数の容器(40)とは選択的な流体連通状態にある。一実施形態における前記複数の容器(40)は生体液が回収された容器を備える。別の実施形態では、前記複数の容器(40)は、各々が前記生体液の分離した成分のうちの1つの回収のための1つまたは複数の容器を備える。さらなる実施形態では、前記複数の容器(40)は、添加溶液を収容する1つまたは複数の容器を備える。例えば、血液の異なる成分に適した添加溶液が当業者には知られている。なおもさらなる実施形態では、前記複数の容器(40)の各々は、技術的に幅広く使用されている種類の採血バッグであり、つまり、生体液と適合する柔軟なプラスチックから典型的には作られる採血バッグである。
【0040】
一実施形態では、システム(1)は、前記パルス緩衝器(70)と前記弁構成(30)との間で前記配管(50)に、またはその周りに位置付けられるポンプ(60)をさらに備える。一実施形態では、前記ポンプは前記配管(50)の外部にある。一実施形態では、前記ポンプ(60)は容積式ポンプである。一実施形態では、前記ポンプ(60)は蠕動ポンプである。別の実施形態では、前記ポンプ(60)は膜ポンプである。
【0041】
システム(1)の一実施形態では、前記複数の弁は独立した止栓またはピンチ弁である。一実施形態では、前記複数の弁の各々は止栓である。一実施形態では、前記複数の弁の各々はピンチ弁である。
【0042】
一実施形態では、システム(1)は、システム(1)の動作を制御するための手段(81)をさらに備える。ソフトウェアが使用のためにアップロードされ得る任意の装置がこのような手段を構成できる。一実施形態では、前記手段(81)は、前記チャンバへと取り入れられる生体液の量と、分離された成分の送りとを制御するために、前記軸方向移動可能部材(20)の位置を監視するための手段(82)を備える。
【0043】
一実施形態では、システムは血液を処理するために使用され得る。一実施形態では、前記血液は臍帯血である。生体液が血液であるときにシステムの使用によって分離される血液の成分は血漿、幹細胞、および赤血球を含む。
【0044】
一実施形態では、システムは、興味のある1つまたは複数の細胞集団を含む血液以外の生体液を処理するために使用でき、1つの非限定的な例は細胞培養液である。
【0045】
本発明のシステムは、本明細書において参照によりその全体において組み込まれている特許文献6のシステムについて記載されているのと同じ手法で概して動作させられる。そのため、例えば、処理するために、臍帯血は抗凝血剤を収容するバッグへと回収される。回収された血液を収容するバッグは、遠心分離チャンバの軸方向開口に無菌で接続される。バッグと分離空間との間の流れ経路における弁は、バッグと分離空間との間の経路を開放するように調節され、ポンプは、バッグから分離空間への流体の移動と、分離チャンバの下端に向けての軸方向移動可能部材の移動とを促進させるために作動させられる。遠心分離は、血液が分離空間に入る前に開始し、約4000rpmの速度で安定させられ得る。遠心分離の速度は約6000rpmに到達するまで徐々に増加させることができ、その約6000rpmは約5~8分間にわたって維持され、その後、遠心分離の速度はゆっくりと低下させられる。分離された成分の回収は、遠心分離が停止する前に行われ得る。回収のために、臍帯血の回収バッグと分離空間との間の弁が閉じられ、分離空間と、分離された成分のためのバッグとの間の弁が、分離チャンバの上端に向けての分離チャンバからの移動と軸方向移動可能部材の移動とを促進するために、ポンプを反対の方向で作動させるのと同時に、連続的に開放される。分離された成分は、血漿から始まって、バッフィコート層に含まれる血小板、次に幹細胞、白血球、そして赤血球と続いて回収される。
【0046】
異なる成分は、光学ラインセンサにおける光の吸収によって特定でき、そのため、ソフトウェアによって定められる特定の吸収において、正しい弁が成分を指定のバッグへと方向付けさせることができるように開放される。遠心分離は、残っている赤色細胞のそのバッグへの円滑な抽出を許容するために、幹細胞および白血球の回収に続いて概して停止させられる。任意選択で、添加溶液が、前記添加溶液を収容するバッグと選択されたバッグとの間に流れを確立するために、適切な弁を開放することで、分離された成分を収容するバッグのうちの1つまたは複数に加えられ得る。添加溶液の例は10vol%または20vol%のDMSOに基づく保存液であり、DMSOはリン酸緩衝液などの生理緩衝液も含み得る。
【0047】
幹細胞の濃厚な分画をバッフィコートから隔離するための別の代替は、Ficoll(商標)およびPercoll(商標)の名称の下で入手可能なものなど、密度勾配製品を用いることである。密度勾配製品は、始めに分離空間へと導入され、臍帯血の導入が続き、血液の成分がそのそれぞれの容器へと分離され、その回収は、密度勾配が現れるときに完了される。可及的に、密度勾配製品は処理の間に導入され得る。Ficoll(商標)を使用することは、例えば、始めに密度勾配を処理チャンバへと導入し、続いて血液を導入することから成る。チャンバへの血液の完全な導入の後、数分間の沈降期間が開始される。幹細胞と血小板とが勾配の前に境界面を形成し、赤血球と顆粒球とはFicoll(商標)を通過し、分離チャンバの壁に押し当てられる。次に、ピストンが標準的な手順にあるように優しく持ち上げられ、幹細胞の分画は最初の血小板の出現において回収される。Ficoll(商標)がチャンバを出るとき、流出回路は再びきれいになる。
【0048】
この書かれた記載は、最良の状態を含め、本発明を開示するために、また、任意の装置またはシステムを作って使用することと、任意の組み込まれた方法を実施することとを含め、当業者に本発明を実施させることができるように、例を用いている。本発明の特許可能な範囲は、請求項によって定められ、当業者の思い付く他の例を含む可能性がある。このような他の例は、請求項がその文字通りの言葉と異ならない構造的な要素を有する場合、または、請求項がその文字通りの言葉と非実質的な違いを伴う均等の構造的な要素を含む場合、請求項の範囲内にあるように意図されている。文章において言及されたすべての特許および特許出願は、それらが個々に組み込まれているかのように、それらの全体において本明細書によって参照により組み込まれている。
【符号の説明】
【0049】
1 システム
10 分離チャンバ
11 壁
12 中空の内部
13 上端
14 下端
15 軸方向開口
16 空気制御システム
20 軸方向移動可能部材
21 分離空間
30 弁構成
31 管
40 容器
50 配管
51 一部分
60 ポンプ
70 パルス緩衝器
81 動作を制御するための手段
82 監視するための手段
AR 回転軸