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特許7475273地球内部からの熱を使用して発電するシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】地球内部からの熱を使用して発電するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F03G 4/00 20060101AFI20240419BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20240419BHJP
   F24T 50/00 20180101ALI20240419BHJP
   F24T 10/17 20180101ALI20240419BHJP
【FI】
F03G4/00 501
E21B43/00 C
F24T50/00
F24T10/17
F03G4/00 551
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020540233
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018052957
(87)【国際公開番号】W WO2019067618
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】62/564,527
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520108718
【氏名又は名称】エイチエムエフエスエフ・アイピー・ホールディングス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セオドア・エス・サムロール
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-151198(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0270003(US,A1)
【文献】特開昭59-7856(JP,A)
【文献】特開昭57-454(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114297(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 4/00
F24T 10/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱エネルギーシステムであって、
井戸内に位置決めされた一次熱交換器であって、前記井戸は地熱層内の地熱特徴および熱媒体と接触し、前記一次熱交換器は前記一次熱交換器内の前記熱媒体から熱を吸収するように構成されている第1の伝熱流体を収容し、前記一次熱交換器は、複数の支持カラーによって前記井戸内で支持され、前記複数の支持カラーの各々は、第1の端部と第2の端部とを備え、前記複数の支持カラーの前記第2の端部は、前記井戸の内壁に確実に接続され、前記複数の支持カラーの前記第1の端部は、前記複数の支持カラーの対応する前記第2の端部に比べて前記井戸内で高い地点において前記一次熱交換器の外側シェルと連結される、一次熱交換器と、
前記一次熱交換器と熱的に連通する二次熱交換器であって、前記二次熱交換器は第2の伝熱流体を収容し、前記第1の伝熱流体および前記第2の伝熱流体は、互いに分離した状態を維持され、前記第2の伝熱流体は、水よりも低い沸点を有する、二次熱交換器と、
前記二次熱交換器と流体的に連通するタービンであって、前記第2の伝熱流体は、前記二次熱交換器内で蒸発し、前記蒸発した第2の伝熱流体は、前記タービンの作動流体である、タービンと、
前記タービンに接続されている発電装置であって、前記発電装置は前記タービンの動作に基づき発電するように構成されている、発電装置とを備える地熱エネルギーシステム。
【請求項2】
前記一次熱交換器は、供給部分と戻り部分とを備え、前記供給部分は前記地熱特徴と熱的に連通するシェルを備え、前記戻り部分は、前記供給部分の前記シェル内に同心円状に配置される請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項3】
前記戻り部分は、断熱管を備え、前記断熱管は、前記戻り部分内の高温の前記第1の伝熱流体を前記一次熱交換器の前記供給部分内の比較的低温の前記第1の伝熱流体から断熱するように構成される請求項2に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項4】
前記断熱管は、複数のセントラライザを介して前記一次熱交換器の前記シェル内に懸架され、前記セントラライザは前記第1の伝熱流体が前記複数のセントラライザと接触するように前記一次熱交換器の前記シェル内に位置決めされる請求項3に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項5】
前記複数のセントラライザは、前記断熱管の外面に接続され、前記シェルの内面には接続されない請求項4に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項6】
前記断熱管は、前記供給部分の前記シェルの底部分の近くに配置されている第1の端部と前記二次熱交換器に接続されている第2の端部とを有し、前記断熱管の前記第1の端部は閉じられており、前記第1の伝熱流体を前記供給部分から前記断熱管内へ流せるように中に複数の穿孔を備える請求項3に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項7】
前記シェルは井戸ケーシングを備え、前記ケーシングは前記井戸内に位置決めされた複数のケーシングセグメントを備える請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項8】
複数のセントラライザが、前記ケーシングセグメントの間の接合部分で前記ケーシングの内面に接続される請求項7に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項9】
前記一次熱交換器は、高い熱伝導率を有するセメントまたはグラウトによって前記井戸内で支持される請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項10】
前記一次熱交換器は、地表面または海底に、またはその近くで懸架される請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項11】
前記熱媒体は、前記一次熱交換器の外面と壁の内面との間に挿入される熱伝導材料を備える請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項12】
前記熱媒体は、前記地熱層内で流動可能な塩水である請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項13】
前記複数の支持カラーは、前記井戸の底部より上の位置で前記一次熱交換器の前記外側シェルを支持する請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項14】
前記複数の支持カラーは、前記複数の支持カラーが前記地熱層内の前記熱媒体と接触するように前記井戸内に位置決めされ、前記熱媒体は、前記複数の支持カラーの周りに流れ込み前記一次熱交換器と接触することができる請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項15】
前記シェルは、前記シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、前記コーティングはイオン結合部位が形成するのを防ぎ、したがって、スケール形成を防ぎ、また腐食を阻止する非常に滑らかな非金属材料を含む請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項16】
前記シェルは、前記シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、前記コーティングは化学気相成長または蒸着合金化を介して施される炭素またはホウ素などの非金属材料を含む請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項17】
前記シェルは、前記シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、前記コーティングは腐食とスケーリングの両方を遅らせるために著しい量のsp3混成軌道炭素を有する非晶質炭素材料を含む請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項18】
前記シェルは、前記シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、前記コーティングは窒化炭素、窒化ホウ素を含み、スケーリングおよび腐食を防ぐか、または最小限度に抑える請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項19】
前記シェルは、前記シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、前記コーティングはスケーリングおよび腐食に耐える高熱伝導性セラミックを含む請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項20】
前記第1の伝熱流体は、ナノ流体である請求項1に記載の地熱エネルギーシステム。
【請求項21】
地熱エネルギーを使用して発電する方法であって、
第1の伝熱流体を井戸内に位置決めされた一次熱交換器内に移動するステップであって、前記井戸は地熱特徴および地熱層内の熱媒体と接触し、前記一次熱交換器は、複数の支持カラーによって前記井戸内で支持され、前記複数の支持カラーの各々は、第1の端部と第2の端部とを備え、前記複数の支持カラーの前記第2の端部は、前記井戸の内壁に確実に接続され、前記複数の支持カラーの前記第1の端部は、前記複数の支持カラーの対応する前記第2の端部に比べて前記井戸内で高い地点において前記一次熱交換器の外側シェルと連結される、ステップと、
前記第1の伝熱流体において、前記井戸内の前記熱媒体から熱を吸収するステップと、
前記第1の伝熱流体を前記一次熱交換器から、および前記井戸から、二次熱交換器内に移動するステップと、
熱を前記第1の伝熱流体から前記二次熱交換器内の第2の伝熱流体に伝達し、前記二次熱交換器内の二次伝熱流体を蒸発させるステップと、
前記蒸発した二次伝熱流体をタービン内に流し込むステップであって、前記タービンは発電装置に接続され、前記蒸発した二次伝熱流体は前記タービンを動かす、ステップと、
前記タービンの動作を使用して前記発電装置で発電するステップとを含む方法。
【請求項22】
前記第1の伝熱流体を前記一次熱交換器内に前記移動するステップは、
前記第1の伝熱流体を前記一次熱交換器の供給部分を下って移動させるステップと、
前記第1の伝熱流体と、前記一次熱交換器のシェルおよび前記一次熱交換器の前記シェル内に同心円状に配設されている戻り管の表面を接触させるステップとを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の伝熱流体を前記一次熱交換器から、および前記井戸から前記移動するステップは、一次伝熱流体を前記一次熱交換器の供給部分のシェル内に同心円状に配設されている戻り管に通して流すステップであって、前記戻り管は、前記戻り管内の前記一次伝熱流体と前記一次熱交換器の前記供給部分内の前記一次伝熱流体との間の伝熱を最小限度に抑えるために断熱される、ステップを含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記井戸内の前記一次熱交換器は、高い熱伝導率を有する熱セメントまたはグラウトを介して支持される請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記井戸の内面と前記一次熱交換器の外面との間に、また前記複数の支持カラーの周りに前記熱媒体を流すステップをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記一次熱交換器を前記井戸内に挿入するステップであって、前記一次熱交換器は複数の支持カラーを取り付けられており、前記複数の支持カラーのうちの各々の第1の端部は前記一次熱交換器の外面に移動可能に取り付けられ、前記複数の支持カラーのうちの各々の第2の端部が分解接続を介して前記一次熱交換器の前記外面に一時的に接続される、ステップと、
前記一時的な接続を、前記複数の支持カラーのうちの各々の前記第2の端部が伸長して前記井戸の内面と接触するように分解するステップとをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記井戸は前記井戸の一部分のみに沿って延在するケーシングを備え、前記方法は
アンダーリーマーを使用して、前記井戸の直径を大きくするために前記ケーシングが伸長しない前記井戸の一部分を掘削するステップと、
前記一次熱交換器を前記直径を大きくした前記井戸の一部分の中に位置決めするステップとをさらに含む請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般大衆が消費し使用するために発電するための従来のシステムは、原子力、化石燃料を動力源とする蒸気発生プラント、および水力発電を含む。これらのシステムの運転およびメンテナンスは多額の費用を要し、著しい天然資源を利用し、場合によっては、その結果、炭化水素燃焼または使用済み核燃料棒廃棄のいずれかを通して、過剰な汚染を生じる。さらに、太陽光動力システムおよび風力動力システムなどの再生可能エネルギー資源であっても、場所によっては1日平均わずか数時間しか稼動していないが、地熱システムであれば、必要に応じてほぼ24時間年中休まず稼動することができる。
【0002】
したがって、石油系原料の輸入または数十億もの費用がかかる発電プラントの建設に頼ることなく、ほぼ24時間年中休まずに利用可能であるクリーンな電力を安価に生み出すためのシステムおよび方法が当技術分野において必要とされている。地球内部からの熱を使用して発電するためのシステムおよび方法がさらに必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書で説明されている一態様において、地熱エネルギーシステムは、井戸内に位置決めされた一次熱交換器であって、井戸は地熱層(geothermal formation)内の地熱特徴(geothermal feature)および熱媒体と接触し、一次熱交換器は一次熱交換器内の熱媒体から熱を吸収するように構成されている第1の伝熱流体を収容する、一次熱交換器と、一次熱交換器と熱的に連通する二次熱交換器であって、二次熱交換器は第2の伝熱流体を収容し、第1の伝熱流体および第2の伝熱流体は、互いに分離した状態を維持され、第2の伝熱流体は、水よりも低い引火点を有する、二次熱交換器と、二次熱交換器と流体的に連通するタービンであって、第2の伝熱流体は、二次熱交換器内で蒸発し、蒸発した第2の伝熱流体は、タービンの作動流体である、タービンと、タービンに接続されている発電装置であって、発電装置はタービンの動作に基づき発電するように構成されている、発電装置とを備える。
【0004】
いくつかの実施形態において、一次熱交換器は供給部分と戻り部分とを備え、供給部分は地熱特徴と熱的に連通するシェルを備え、戻り部分は、供給部分のシェル内に同心円状に配置される。
【0005】
いくつかの実施形態において、戻り部分は、断熱管を備え、断熱管は、戻り部分内の高温の第1の伝熱流体を一次熱交換器の供給部分内の比較的低温の第1の伝熱流体から断熱するように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態において、断熱管は、複数のセントラライザを介して一次熱交換器のシェル内に懸架され、セントラライザは一次熱交換流体が複数のセントラライザと接触するように一次熱交換器のシェル内に位置決めされる。
【0007】
いくつかの実施形態において、複数のセントラライザは、断熱管の外面に接続され、シェルの内面には接続されない。
【0008】
いくつかの実施形態において、断熱戻り管は、供給部分のシェルの底部分の近くに配置されている第1の端部と二次熱交換器に接続されている第2の端部とを有し、断熱戻り管の第1の端部は閉じられており、第1の伝熱流体を供給部分から断熱戻り管内へ流せるように中に複数の穿孔を備える。
【0009】
いくつかの実施形態において、シェルは井戸ケーシングを備え、ケーシングは井戸内に位置決めされた複数のケーシングセグメントを備える。
【0010】
いくつかの実施形態において、複数のセントラライザは、ケーシングセグメントの間の接合部分でケーシングの内面に接続される。
【0011】
いくつかの実施形態において、一次熱交換器は、高い熱伝導率を有するセメントまたはグラウトによって井戸内で支持される。
【0012】
いくつかの実施形態において、一次熱交換器は、複数の支持カラーによって井戸内で支持される。
【0013】
いくつかの実施形態において、一次熱交換器は、地表面または海底に、またはその近くで懸架される。
【0014】
いくつかの実施形態において、熱媒体は、一次熱交換器の外面と壁の内面との間に挿入される熱伝導材料を備える。
【0015】
いくつかの実施形態において、熱媒体は、地熱層内で流動可能な塩水である。
【0016】
いくつかの実施形態において、複数の支持カラーの各々は、第1の端部と第2の端部とを備え、複数の支持カラーの第1の端部は、井戸の内壁に確実に接続され、複数の支持カラーの第2の端部は、複数の支持カラーの対応する第1の端部に比べて井戸内で高い地点において大部分が一次熱交換器の外側シェルと接触する。
【0017】
いくつかの実施形態において、複数の支持カラーは、井戸の底部より上の位置で一次熱交換器の外側シェルを支持する。
【0018】
いくつかの実施形態において、複数の支持カラーは、複数の支持カラーが地熱層内の熱媒体と接触するように井戸内に位置決めされ、熱媒体は、複数の支持カラーの周りに流れ込み一次熱交換器と接触することができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、シェルは、シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、このコーティングはイオン結合部位が形成するのを防ぎ、したがって、スケール形成を防ぎ、また腐食を阻止する非常に滑らかな非金属材料を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、シェルは、シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、このコーティングは化学気相成長または蒸着合金化を介して施される炭素またはホウ素などの非金属材料を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、シェルは、シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、このコーティングは腐食とスケーリングの両方を遅らせるために著しい量のsp3混成軌道炭素を有する非晶質炭素材料を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、シェルは、シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、このコーティングは窒化炭素、窒化ホウ素を含み、スケーリングおよび腐食を防ぐか、または最小限度に抑える。
【0023】
いくつかの実施形態において、シェルは、シェルの井戸に面する表面上にスケール防止コーティングを備え、このコーティングはスケーリングおよび腐食に耐える高熱伝導性セラミックを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1の伝熱流体は、ナノ流体である。
【0025】
本明細書において説明されている別の態様において、地熱エネルギーを使用して発電する方法は、第1の伝熱流体を井戸内に位置決めされた一次熱交換器内に移動することであって、井戸は地熱特徴および地熱層内の熱媒体と接触する、移動することと、第1の伝熱流体において、井戸内の熱媒体から熱を吸収することと、第1の伝熱流体を一次熱交換器から、および井戸から、二次熱交換器内に移動することと、熱を第1の伝熱流体から二次熱交換器内の第2の伝熱流体に伝達し、二次熱交換器内の第2の伝熱流体を蒸発させることと、蒸発した二次伝熱流体をタービン内に流し込むことであって、タービンは発電装置に接続され、蒸発した二次伝熱流体はタービンを動かす、流し込むことと、タービンの動作を使用して発電装置で発電することとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1の伝熱流体を一次熱交換器内に移動することは、第1の伝熱流体を一次熱交換器の供給部分を下って移動させることと、第1の伝熱流体と、一次熱交換器のシェルおよび一次熱交換器のシェル内に同心円状に配設されている戻り管の表面を接触させることとを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1の伝熱流体を一次熱交換器から、および井戸から移動することは、第1の伝熱流体を一次熱交換器の供給部分のシェル内に同心円状に配設されている戻り管に通して流すことを含み、戻り管は、戻り管内の一次伝熱流体と一次熱交換器の供給部分内の一次伝熱流体との間の伝熱を最小限度に抑えるために断熱される。
【0028】
いくつかの実施形態において、井戸内の一次熱交換器は、高い熱伝導率を有する熱セメントまたはグラウトを介して支持される。
【0029】
いくつかの実施形態において、一次熱交換器は、複数の支持カラーを介して井戸内で支持される。
【0030】
いくつかの実施形態において、方法は、井戸の内面と一次熱交換器の外面との間に、また複数の支持カラーの周りに熱媒体を流すことをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、方法は、一次熱交換器を井戸内に挿入することであって、一次熱交換器は複数の支持カラーを取り付けられており、複数の支持カラーのうちの各々の第1の端部は一次熱交換器の外面に移動可能に取り付けられ、複数の支持カラーのうちの各々の第2の端部が分解接続(degrading connection)を介して一次熱交換器の外面に一時的に接続される、挿入することと、一時的接続を、複数の支持カラーのうちの各々の第2の端部が伸長して井戸の内面と接触するように分解することとをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、井戸は、井戸の一部分に沿ってのみ延在するケーシングを備え、この方法は、アンダーリーマーを使用して、井戸の直径を大きくするためにケーシングが伸長しない井戸の一部分を掘削することと、一次熱交換器を直径を大きくした井戸の部分の中に位置決めすることとをさらに含む。
【0033】
本明細書において説明されている別の態様において、地熱発電用途に使用する熱交換器は、井戸内に配設され、伝熱流体を収容するように構成されているスケール防止および/または防食層を上に有するケーシングであって、伝熱流体を保持するためのシェルを形成するケーシングと、井戸内に配設されている複数の支持カラーであって、複数の支持カラーは井戸内でケーシングを支持し、複数の支持カラーは井戸の内面からケーシングの方へ全体的に上向きの角度で配設される、複数の支持カラーと、円筒形シェル内の同軸上に配設される戻り管であって、ケーシングおよび戻り管のこの配置構成は、戻り管と円筒形シェルとの間に円環を形成し、戻り管の内部容積は円環から断熱される、戻り管と、円環内に配設されている複数のセントラライザであって、複数のセントラライザのうちの各々は第1の端部と第2の端部とを備え、複数のセントラライザの第1の端部はシェルの内面に接続され、複数のセントラライザの第2の端部は戻り管の外面に接続され、セントラライザは円環内の流れに対する液圧抵抗を最小にするように低プロフィールを有する、複数のセントラライザとを備え、複数の支持カラーは、井戸の内面とケーシングとの間を熱媒体が流れることを可能にするように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】例示的な一実施形態による熱電システムのゼーベック効果を例示する図である。
図2】例示的な一実施形態による熱電システムの熱電対列を示す図である。
図3】例示的な一実施形態による熱電発電装置を示す図である。
図4】例示的な一実施形態による熱電発電システムの図解である。
図5】例示的な一実施形態による地表面内の温度の図解である。
図6】例示的な一実施形態による内側管および外側管を備える例示的な管構造の図解である。
図7】例示的な一実施形態による熱電発電システムの図解である。
図8】例示的な一実施形態による熱電発電システムの図解である。
図9A】例示的な一実施形態による管システムの図解である。
図9B】例示的な一実施形態による管システムの図解である。
図10】例示的な一実施形態による熱電発電システムの図解である。
図11】例示的な一実施形態による熱電発電システムの図解である。
図12A】地熱エネルギー生産システムの一実施形態のシステム図である。
図12B】井戸内の熱交換器の一実施形態の切欠図である。
図12C】井戸内の熱交換器の一実施形態の切欠図である。
図12D】熱交換器の一部分の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の例示的な一実施形態が示されている、添付図面を参照しつつ、本発明についてさらに詳しく以下で説明する。しかしながら、本出願は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書で述べられている実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、この実施形態は、本開示が完全なものとなるように、また本発明の範囲が当業者に完全に伝わるように提示されている。全体を通して、類似の番号は、類似の要素を指す。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態では、ごくわずかの投資で取得できる深い井戸(たとえば、廃井となっているか、または利用されていない、油井、ガス井、および地熱井)を利用し、それらの井戸に中規模の再循環タイプのシステムを取り付け、発電、直接暖房、および/または水分凝縮に十分な熱エネルギーを提供する。たとえば、発電手段は、熱電発電装置、スターリングエンジン、ランキンエンジン、マッターランエネルギーサイクルエンジン(Matteran energy cycle engine)、フラッシュ発電プラント、ドライスチーム発電プラント、バイナリ有機ランキンサイクル発電プラント(binary organic Rankine cycle power plant)、フラッシュ/バイナリ複合サイクル(flash/binary combined cycle)、および同様のものを含み得る。深い井戸は熱エネルギーを生み出し得るが、別個の低温源が本明細書で説明されているさまざまな発電手段によって使用されているような温度差を生み出すための冷熱源、ヒートシンク、または同様のものを提供し得る。たとえば、別個の低温源は、大洋、海、湾、河、川、小川、湖、泉を含むさまざまな水源から、または地下水井戸などの任意の地下水源から、または公共用水施設から得られる水によって提供され得る。発電手段は、公共、民間、および政府消費用の電力を供給するために使用され得る。
【0037】
本開示の方法およびシステムは、利用可能なエネルギー源を活用し、物理的および生態学的足跡ならびにその使用の結果生じる廃棄物を制限する効率的設計から結果として得られる多くの固有の利点を有する。たとえば、閉ループまたは実質的な閉ループプロセスとして設計された場合、いくつかの開示されている実施形態は、地表面、地下、および地球の大気を含む、使用するときの周囲環境への汚染および非天然材料の不要な持ち込みを低減することができる。さらに、閉ループという性質、および既存のエネルギー源への依存は、現在の地熱エネルギー発電システムを用いた場合に発生することが多い付加的廃棄物または望ましくない副産物の生成を低減する。地球内部にすでに存在している熱エネルギーの使用を通じて、本発明の実施形態は、それに加えて、未開発の代替エネルギー源を提供し、現在直面している燃料依存問題の多くを克服し得る。本発明の実施形態は、複数のエネルギー発生手段および複数の熱源を備えることを通じてスケーラブルでもあり、地域での使用および/またはより大きい民間もしくは公共の配電網への寄与のための代替エネルギー源を提供し得る。それに加えて、スケーラビリティは、経済面を熟慮してシステムを構築し、過剰な建設費、建設時間、および建設スペースを回避することで達成され得る。最後に、本発明の実施形態は、そうでなければ未使用または十分に利用されていない可能性のある、使用済みの井戸または調査井などの、非生産井戸を介してすでに使用できている既存のエネルギーを活用する機会を生み出す。
【0038】
本明細書において説明されている第1の例示的な実施形態は、熱電対列、高温接点、および低温接点を備える熱電発電装置を含み得る。熱電対列の高温接点は、地表面内からの熱を含む高温源に結合され得る。それに加えて、熱電対列の低温接点は、低温接点から地理的に分離されているものとしてよい、水域からの低温源に結合されてよい。したがって、高温源および低温源は、発電のために熱電対列のところに温度勾配を生じさせるものとしてよい。
【0039】
図1に例示されているように、連続的に流れる電流は、第1の材料の第1のワイヤ12が第2の材料の第2のワイヤ14と接合され、接合端16のうちの1つで加熱されたときに生じ得る。これは、ゼーベック効果として知られている。ゼーベック効果には、温度測定(熱電対)と発電という2つの主要な用途がある。熱電システムは、熱エネルギーを電気エネルギーに、または電気エネルギーを減少する温度勾配に変換する熱および電気の両方の効果を組み込んだ回路上で動作するシステムである。2本またはそれ以上のワイヤを組み合わせることで、熱電システムに組み込まれる熱電対列10を形成する。発電を目的として採用されたときには、発生する電圧は、温度差および使用される2本のワイヤの材料の関数となっている。熱電発電装置は、作動流体として働く電子を有する熱機関サイクルに密接に関係するパワーサイクルを有し、発電装置として使用できる。熱は、高温源から高温接点に伝達され、次いで低温接点から低温シンクに、または大気中に直接的に排除される。高温接点と低温接点との間の温度の温度勾配は、電位を発生し、発電する。半導体が、熱電発電装置の電圧出力を著しく増加させるために使用され得る。
【0040】
図2は、n型半導体材料22およびp型半導体材料24で構成される熱電対列20を例示している。電流を増大させるために、n型材料22は、過剰電子を生み出すように高濃度ドープされるが、p型材料24は、電子の不足を生じさせるために使用される。
【0041】
熱電発電装置技術は、機能的で存続可能な連続的長期電源である。自然および人工環境において生じる温度勾配に接近可能であることにより、熱電発電装置は電力の形態で連続的電源を実現し得る。最も豊富に存在する一般的な使用できるエネルギー源の1つは、環境熱、特に、地殻内に含まれる熱である。
【0042】
図3は、熱電発電装置の一実施形態を示している。熱電発電装置300は、複数の高温接点320への入力310と、複数の高温接点320への出力330とを備え得る。高温接点320は、伝熱のために任意の熱源を備え得る。例示的な一実施形態において、熱源はホットプレート332である。ホットプレート332は、金属または他の任意の伝導材料であってよい。ホットプレート332は熱電対列350と界面接触し、伝導、対流、輻射、または他の任意の伝熱手段を通じて熱を熱電対列に供給するものとしてよい。当業者であれば、本明細書では任意の熱電発電装置が使用されてよく、これはこの実施形態に限定されないことを理解するであろう。熱が熱電対列に届くことを可能にする任意のシステムが、本明細書において企図されている。
【0043】
熱電発電装置300は、複数の低温接点360をさらに備え得る。低温接点360は、伝熱のためにコールドプレート312を備え得る。代替的に、熱は、低温接点360から輻射または対流で離れて行くものとしてよい。コールドプレート312は、金属または他の任意の伝導材料であってよい。コールドプレート312は熱電対列350と界面接触し、伝導ヒートシンクを形成し得る。電位は、ホットプレート332の温度とコールドプレート312の温度との間の温度勾配から熱電対列350を横切って生じ得る。温度勾配が大きければ大きいほど、発生する電力も多くなり得る。当業者であれば、本明細書では任意の熱電発電装置が使用されてよく、これはこの実施形態に限定されないことを理解するであろう。
【0044】
熱電対列と界面接触するヒートシンクを備える任意のシステムが本明細書において企図されており、これは流体などの自然発生的な熱吸収源を含む。例示的な一実施形態において、流体は水である。水は、大洋、海、湾、河、川、小川、湖、泉を含む任意の水源、または地下水井戸などの任意の地下水源から、または本出願の目的のための公共用水施設から得られるものとしてよい。水は熱を吸収するために使用されるので、本明細書においてヒートシンクとして使用される公共用水施設からの水は、水を予熱して望む任意の用途の水を加熱するために民間、政府、または産業によって必要とされる電力を減らすという補助目的に役立ち得る。低温源としての水または任意の流体は、より高い伝熱係数を有すること、したがって低温接点によりよい伝熱をもたらすことによって空気またはガスに勝る技術的メリットをもたらす。
【0045】
図4は、熱電発電システム400の例示的な一実施形態を示している。熱電発電装置は、低温源と高温源との間の温度勾配から電力を生産するために熱電発電システムにおいて使用され得る。熱電発電システム400は、限定はしないが、大洋、湾、海、湖、河、泉、小川、または他の任意の比較的冷たい水域を含む水域402内に、またはその近くに配置され得る。熱電発電システム400は、水域402を熱電発電装置のための低温源として利用する。
【0046】
水域402は、温度勾配を高めるために著しく低い温度を熱電発電装置にもたらすことができる。大洋、湾、海、または湖などの、水域402において、水の温度は深さとともに下がる。温度躍層と一般に称される深さでは、水温は著しく低下する。温度躍層が出現する深さは平均して30から50メートルの間であり、世界を通じて変化する。低温源は温度躍層を下回る深さの水であり連続的冷水供給源となること、および好ましくは流れの中で水が淀まず、したがってエネルギー生産動作全体を通して温度上昇があるように連続的低温水流を可能にすることが好ましい。それに加えて、比較的冷たい水域の他の何らかの表面に隣接する発電プラントの位置により、水がプラントを流れ、次いで水の最小の熱変化で放出されることが可能になる。
【0047】
したがって、低温源は、低温接点と直接接触するか、または代替的に、管もしくは他の媒体輸送手段によって低温接点から地理的に分離され、流体的に連通するかのいずれかであってよい。
【0048】
高温源は、地殻404内から供給されてよい。地球は、極端に高い熱の連続的で安価な供給源をもたらす。図5に例示されているように、地球内部の温度は、一般的に、地球の中心部分に向かって60フィート深くなる毎に平均して華氏約1度の割合で上昇する。したがって、地球内部の深い場所は、熱電発電装置の高温接点の高温源として使用され得る。地球内部の場所には、地面に穴416をあけるための掘削もしくは他の手段を通じて接近し、水もしくは他の何らかのタイプの伝熱媒体がその穴を通して循環させられ、表面に移動させられるか、もしくは近づけられ、高効率ポンプまたは他の何らかの方法を採用することによって伝熱を生じさせることができるものとしてよい。
【0049】
ドライホールと一般に称される、いくつかの穴が、地殻内の高い温度を利用するために使用されてよい。ドライホールは、典型的には、石油産業が石油またはガスを見つけようと努力したが成功しなかったことにより存在する。石油産業では、石油探査のため地殻の奥深くまで井戸を掘削する。世界中で掘削された調査井の圧倒的大多数において石油は見つからず、それによって、これは「ドライホール」として示される。ドライホールは、地表下レベルおよび高温条件に比較的容易に接近することを可能にする。ドライホールは、陸地上に、または水域内に位置し得る。ドライホールは、30,000フィートを超える深さに到達し得る。しかしながら、当業者であれば、ドライホールは任意の深さであってよく、活動している、または活動していない、機能している、または機能していない油井、ガス井、および/または地熱井のいずれかであり得ることを理解するであろう。
【0050】
図5は、例示的な井戸についての地殻内の温度と深さとの間の関係を示している。図5に示されているように、井戸またはドライホール内の温度は、非常に高い温度に到達し得る。図5の例示的な図において、干上がった井戸内の温度は、6100フィートで約209°Fである。当業者であれば、本開示が、ドライホールの使用に限定されず、熱電発電装置で使用するために掘削された穴さらには使い果たされたもしくは未使用の油井およびガス井を含む熱源をもたらし得る地殻内の任意の穴または井戸を含み得ることを理解するであろう。図5は、1つの井戸についての例である。いくつかの井戸において、温度プロフィールは変化するものとしてよく、ダウンホール温度は、6100フィートのところで209°Fを超えることがある。
【0051】
再び図4を参照すると、熱電発電システムは、ポンプステーション410と、管システム420と、熱電発電装置430と、伝熱流体440とを備え得る。熱電発電システムは、水域402内に、またはその近くに位置決めされ得る。ポンプステーション410は、ポンプと、ポンプのための関連するハウジングとを備え得る。ポンプは、適当な体積流量で流体を強制的に流すことができる任意の市販のまたは専用設計のポンプであってよい。ポンプステーション410は、陸地上、水面上、または水面下に配置されてよい。ポンプステーション410は、管システム420に接続される。管システム420は、少なくとも1つの管422を備える。管422は、地球によって加熱されるべき伝熱流体440を運ぶための内部分ボアまたは内部分流路を備え得る。内部分ボアは、十分な伝熱流体440がポンプ動作により管システムに通されることを可能にする任意の好適な直径であるものとしてよい。管422は、ポンプステーション410から穴416内に延在し、管422が穴から上昇するように実質的にU字形であるものとしてよい。
【0052】
管システム420は、熱電発電装置430の高温接点320と界面接触するものとしてよい。管システム420の管422の内部分ボアは、熱電発電装置430の高温接点320の入力に接近可能である。管システム420は、熱電発電装置430の高温接点320の出力から延在し、ポンプステーション410に戻る。
【0053】
したがって、管システム420は、ポンプステーション410と熱電発電装置430との間で閉ループまたは実質的な閉ループ構成で構成され得る。より具体的には、ポンプ動作によりポンプステーション410から地表面の下に存在する(たとえば、既存の井戸内の)高温源内に送られ、熱電発電装置の高温接点320への表面に戻る伝熱媒体は、高温接点のところで界面接触するまで管システム420内の周囲要素に露出され管システム420内に全体が収容されることは決してあり得ない。しかしながら、ポンプステーション410のところで伝熱媒体を追加するか、交換するか、または補充することが必要になることもあることは理解されるであろう。
【0054】
いくつかの実施形態において、ポンプステーション410は、管システム420の第1の部分に陽圧をもたらし、ポンプ動作により伝熱流体440を表面から下方に送り穴416に入れ、そこで、流体は地層から熱を吸収する。次いで、伝熱流体440は、上方に流れ、管422の内部分ボアを通り、熱電発電装置430に入り、伝熱流体440は、熱電発電装置430に熱を渡す。次いで、伝熱流体440は、ポンプステーション410を通って再循環し、再び下方に強制的に送られ、このサイクルが繰り返す。
【0055】
いくつかの実施形態において、ポンプステーション410は、管システム420に吸引または真空による力を与え、それによって、流体を、熱電発電装置430と熱的に連通する管システム420の部分など、管システム420の一部分から引き出す。次いで、伝熱流体440は、重力で排出されるか、または望み通りに、下方に引き出されて穴に入り循環する。
【0056】
図6に示されている例示的な一実施形態において、管システムは、円環425が内側管424と外側管423との間に存在するように外側管423と内側管424とを備え得る。この例示的な実施形態において、流体440は、ポンプ動作により内側管424を通して穴に送り込まれてよく、地球によって熱せられた流体440は、ポンプ動作により、穴416から円環425を通り熱電発電装置430の高温接点320に送られるものとしてよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、流体440は円環425を通して穴にポンプ動作により送られ、内側管424を通して穴からポンプ動作により出される。管システム420が界面接触しているであろう周囲の環境および温度に応じて、円環425を通して下方にポンプ動作により送られる戻り流体は、それに加えて、内側管424を通してポンプ動作により汲み上げられる加熱された媒体を断熱し得ることは理解される。
【0058】
図7に例示されている熱電発電システムの別の実施形態において、穴416は、水域に近い陸地上に配置されてよい。穴416は、前に説明されているように高温接点に対する高温源を提供し得る。水域402は、低温接点に対する低温源を提供し得る。水域402は、河、泉、小川、湖、または他の任意の冷水供給源であってよい。熱電発電装置430の低温接点360は、水域402に熱的に結合される。低温接点360は、水域402と直接界面接触し得るか、または水域は、管システムの管422または熱交換器などの水を流路に通して流す他の手段を使用して低温接点360に向けられるものとしてよい。低温接点360は、低温接点と界面接触する水の温度まで近似的に冷却される。熱電発電装置430は、熱電発電装置430の高温接点320および低温接点360の間に電位を生じさせる。地球からの熱を使用して高温接点320の温度を制御すること、および表面または表面近くの水の冷たさにより低温接点360の温度を制御することで、温度勾配を最大化し、熱電モジュールを採用することにより著しい量の電力を生産する。熱電発電装置430から生み出される電力は、送電線450を通して任意の送り先に伝送され得る。
【0059】
図8に例示されている熱電発電システムの別の実施形態において、低温接点360に対する低温源は、地表面のところ、地表面より上、または地表面より下に置かれている冷却装置810からの水であってよい。地表面のすぐ下の温度は低いので、冷却装置810は、水の温度を下げるために使用されてよい。例示的な一実施形態において、冷却装置は、表面から下に最大約300フィートの深さのところに置かれるものとしてよい。表面から約300フィート下のところで、温度は一般的に深さとともに上昇を始める。当業者であれば、300フィートのレベルは近似にすぎないこと、深さは地球の場所に応じて変化するものとしてよく、したがって300フィートの近似に限定されないことを理解するであろう。冷却装置810は、熱電発電装置から生み出された電力で駆動され得る。
【0060】
地殻内の深いところからの伝熱のための媒体としての水の利用は、金属製管システムの腐食を引き起こし得る。熱水は、特に酸素を含有するときに、金属を急速に腐食し得る。腐食を低減するために、高真空などの、脱酸素化機構が水から酸素を取り除くために使用され得る。代替的に、ステンレス鋼などの非腐食金属が管システムに使用され得る。別の実施形態において、管システムは、高温耐熱性および非腐食性を有するプラスチック配管を備え得る。プラスチック配管の例示的な一実施形態は、PARMAX(登録商標)材料から製造された配管である。当業者であれば、任意の非腐食性および温度耐性プラスチックが使用され得ることを理解するであろう。さらに別の実施形態において、腐食を最小限度に抑えるために腐食防止物質が使用されてもよい。たとえば、クロム酸塩または他の化学物質が使用され得る。水の代わりに、合成油もしくは鉱物油または特別な伝熱流体などの非腐食流体が、高温源のために地殻内からの熱を吸収するために使用され得る。油は、水に比べて高い温度まで加熱できるという利点をさらに有し、したがってこの方式で熱電発電システムからより多くの電力を引き出せ得る。
【0061】
熱電発電装置は、熱電発電装置の寿命を延ばすために稼動中に低温源から保護することができる。保護は、化学的保護または他の任意の源の形態をとり得る。低温接点は、水からの腐食に耐えるセラミック材料を備え得る。熱電発電装置は、また、水が熱電対列に作用または腐食させることのないように封止されてもよい。
【0062】
熱電発電装置は、既製の熱電対列を備えるものとしてよい。熱電発電装置は、実質的に発電量を増やす量子井戸熱電発電装置などの専用設計の熱電対列も使用し得る。
【0063】
熱電発電装置は、システムの効率を高めるためにナノワイヤを使用してもよい。ナノワイヤは、状態密度を高める。ナノワイヤは、生み出された電力を輸送するために、実質的に平行な配列に配置構成され得る。熱電発電装置は、システムの効率を高めるために量子ドットを含むものとしてもよく、システムの熱伝導率を下げる。
【0064】
熱電発電システムの別の実施形態において、高温接点に対する高温源は泥ピットからのものであってよい。泥ピットからの泥は、油井掘削のために掘削流体として使用される。泥は、石油探査のために掘削されている穴の底部まで延在する。泥は、掘削および地表面内からの高温で加熱される。熱電発電装置の高温接点は、泥ピットに界面接触して泥の高い温度に接近し得る。泥の高温は、熱電対列を横切る温度の変化を大きくし、発電量を増やすために使用され得る。
【0065】
熱電発電システムは、従来の発電システムに勝るいくつかの利点を有し得る。たとえば、熱電発電システムは、一部には閉ループシステムとして動作するので汚染問題を最小限度に抑えており、非天然材料の、もしあっても最小限度の持ち込みに頼る。熱電発電システムでは、廃棄物は最小限度に抑えられ、大気中放出も最小限度に抑えられる。熱電発電システムは、また、完全に再生可能である。熱電発電システムは、局所的領域に電力を供給できるレベルにまで規模縮小されてもよい。熱電発電システムは、従来の電力システムと比較して構築および運転の費用が安価であり、非生産井となった井戸を塞ぐか、または新しい穴を掘削する必要がなく、非生産油井を活用することも可能である。
【0066】
図9Aおよび図9Bは、図6を参照しつつ上で説明されているように、同心円状に配置構成されている、外側管910および内側管920の両方を有する管システム900の別の例示的な実施形態を示している。図9Aに例示されているように、内側管920は、管の外側面に取り付けられた複数のフィン930を備え、これは管長の少なくとも一部分に沿って並び、半径方向外向きに延在し得る。一例において、フィン930は、管の実質的に全長に沿って並ぶものとしてよい。しかしながら、別の例では、フィン930は、管システム900の遠位部分のところの、またはその近くの長さ部分に沿って内側管920に取り付けられてよい。フィン930は、地球から中を循環する媒体への地熱伝熱を円滑にするものとしてよく、媒体内の熱放散をさらに円滑にする。したがって、管システム900の一実施形態において、管システム900の遠位部分のみにフィンを備えると、地熱エネルギーが最大である管システムの最も深い部分のところ、またはその近くに伝熱を高めた機構を形成することになるであろう。代替的に、図9Bに例示されている別の例示的な実施形態において、複数のフィン930は、外側管910に取り付けられ、内側管920の方へ半径方向に延在し得る。フィン930は、外側管910と内側管920の両方に取り付けられ、それらの間に延在しているものとしてよいことはさらに理解される。フィン930は、知られているように、高い熱伝導率を有する材料から製作され得る。
【0067】
説明されているようなフィンは、図4を参照しつつ説明されているような実質的にU字形の管システムなどの、内側管または外側管の両方を含まない管システムを有する実施形態において使用されてもよい。これらの実施形態では、フィンは、管の内側面に取り付けられて半径方向内向きに延在し、地球からポンプ動作により通される流体への地熱伝熱をさらに改善し得る。
【0068】
流体440は、ポンプステーション410を使用して強制的にポンプに通される。流体440は、ポンプを使用して、管422、熱電発電装置430の高温接点320、およびポンプステーション410を通り循環する。付加的流体は、連続的に、または管システムおよびポンプステーションの動作中の流体の損失を理由としてシステムによって必要とされるときのいずれかにおいて管システム420に加えられてよい。しかしながら、当業者であれば、熱せられた流体を表面に、またはその近くに移動する他の方法も使用され得ることを理解するであろう。
【0069】
管422内の流体440は、ポンプステーション410から穴416の底部の方へ降下するときに地球によって熱せられる。流体440は、穴416内の地球の温度に近くなるまで熱せられ得る。例示的な一実施形態において、流体440は、華氏200度を超える温度に熱せられ得る。流体440が管422の最低点に到達した後、熱せられた流体は、穴416から上昇して、熱電発電装置430の高温接点320の入力内に入る。
【0070】
管422内の熱せられた流体は高温源となるものとしてよく、熱電発電装置430の高温接点320に熱的に結合される。流体は、管422の内部分ボアから出て、熱電発電装置430の高温接点320の入力に入る。次いで、流体440は、管422の内部分ボアを通り熱電発電装置430の高温接点320の出力330を通って出るものとしてよい。流体440はポンプステーション410に続き、流体のポンプサイクルを閉じる。ポンプステーションは、流体440をポンプ動作により管システム420および熱電発電装置430に適切な体積流量で通されるように動作可能である任意のポンプを備え得る。さらに、熱電発電システムは、閉鎖系または開放系のいずれかとして動作し得る。
【0071】
流体440は、地球によって熱することができ、熱電発電装置の高温接点に送達するために熱の大部分を保持することができる任意の流体を含み得る。例示的な一実施形態において、流体は水であるが、他の流体も、腐食を低減し、水の沸点をはるかに超える加熱を可能にするために使用されてよい。
【0072】
熱電発電装置430は、水域402内に配置され、管システム420と連通するものとしてよい。水域402は、熱電発電装置の低温接点360に対する低温源として使用される。図4の例示的な実施形態において、熱電発電装置430は、低温接点360が温度躍層より低い低温水に接近し得るように水域402の温度躍層の下に配置される。例示的な一実施形態において、熱電発電装置430は、水の流れに接近するために水域402内の現在の流れ内に配置され得る。水域402は、熱電発電装置430の低温接点360に対する低温源を提供する。低温接点360は、水域402内の水に外向きに露出され得る。低温接点360は、腐食を防ぐように十分保護され得る。水域402内の水もまた、熱電発電装置の低温接点360内に流路により導かれ得る。低温接点360は、水を受け入れるための入力と、冷水を出すための出力とを備え得る。水は、低温接点360を通って流れ、熱電発電装置の低温接点360に低温源をもたらすものとしてよい。
【0073】
例示的な一実施形態において、高温源は、華氏100度から華氏600度の間であってよく、低温源は、約華氏32度から華氏130度の間であってよい。当業者であれば、高温源および低温源は、これらの温度範囲に限定されないが、任意の適切な温度範囲にあればよいことを理解するであろう。高温接点と低温接点との間の温度勾配(ΔT)は、例示的な実施形態において470度から68度の間であるものとしてよい。当業者であれば、温度勾配はこの範囲に限定されず、任意の温度勾配であってよいことを理解するであろう。
【0074】
熱電発電装置430は、熱電発電装置の高温接点320および低温接点360の間に電位を生じさせる。地球からの熱を使用して高温接点320の温度を制御すること、および水の冷たさにより低温接点360の温度を制御することで、温度勾配を最大化し、著しい量の電力を生産する。電力は、直流として生み出され得る。直流は、交流に変換され得る。三相電流も生み出され得る。熱電発電装置430から生み出される電力は、送電線450を通して任意の送り先に伝送され得る。例示的な一実施形態において、既存の電力伝送設備および送電線450は、現行の、または新規に構築された任意の配電網に電力を供給し得る。
【0075】
別の実施形態において、高温源は、蒸気動力発電装置と連動して使用され得る。流体は、ポンプ動作により管システムを通して地殻内に送り込まれ得る。次いで、流体は、地殻によって熱せられ、ポンプ動作により表面に送られるものとしてよい。高温源を使用して流体を熱することで、蒸気プラントへの水を予熱することによって蒸気動力発電装置を稼動するのに必要な電力を最小にし得る。流体を沸点まで熱するコストは、したがって、流体が地殻内で熱する結果としてより高い温度にされ得る場合に炭化水素動力または他のタイプの電気プラントにおいて著しく低減される。たとえば、流体が水である場合、高温源は水を沸点またはその近くまで熱し得る。次いで、水は、蒸気動力発電装置内で使用するための蒸気に変換され得る。流体が水より高い沸点を有する油などの流体である場合、流体は、熱交換器を通じて熱を蒸気動力発電装置内の水に伝達し、化石燃料もしくは他のエネルギー源を必要とすることなく、またはごくわずかしか必要とすることなく蒸気に変換され得るように華氏212度を超える温度に熱せられ得る。蒸気動力発電装置は、熱電発電システムと連動して、または完全に分離して使用され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明は、上で説明されているように、熱電発電装置の代わりに、代替的発電手段を備えていてもよい。たとえば、代替的発電手段は、スターリングエンジン、ランキンエンジン、マッターランエネルギーサイクルエンジン、フラッシュ発電プラント、ドライスチーム発電プラント、バイナリ発電プラント、フラッシュ/バイナリ複合サイクル、および同様のものを含み得る。たとえば、スターリングエンジンは、例示的な一実施形態として説明されているが、発電システムは、ランキンエンジン、マッターランエネルギーサイクルエンジン、フラッシュ発電プラント、ドライスチーム発電プラント、バイナリ発電プラント、フラッシュ/バイナリ複合サイクル、および同様のものなどの他の発電手段を含み得ることは理解される。
【0077】
スターリングエンジンは、典型的な内燃機関と大いに異なり、ガソリンまたはディーゼルエンジンに比べてかなり効率的であり得る熱機関である。しかしながら、今日、スターリングエンジンの用途は、典型的には、静粛運転が重要である、潜水艦、またはヨットの補助発電装置などの、専用応用事例に限定される。スターリングエンジンはスターリングサイクルを使用しており、これは、カルノーサイクルの原理の下で動作する、内燃機関において使用されているサイクルとは異なる。例示的なスターリングエンジンは、単一ディスプレーサピストンを使用するアルファ型もしくはベータ型スターリングエンジン、または少なくとも2ピストンを使用するガンマ型スターリングエンジンを含み得る。スターリングエンジンの内側で使用されるガスはエンジンから漏れることはない。ガソリンまたはディーゼルエンジンのように、高圧ガスを放出する排気弁はなく、燃焼は生じない。このため、スターリングエンジンは非常に静粛である。
【0078】
スターリングエンジンの例示的な一実施形態は、ピストンを有する円筒形ホットチャンバーと、ピストンを有する円筒形コールドチャンバーと、ガスと、接続管とを備え得る。高温源は、ホットチャンバー内のガスの温度を上げるためにホットチャンバーに付けられるか、または熱的に結合され得る。高温源から出る熱は、伝導、対流、輻射、または他の任意の手段を通じてガスに伝達され得る。低温源は、コールドチャンバー内のガスの温度を下げるためにコールドチャンバーに付けられるか、または熱的に結合され得る。ガスから出る熱は、伝導、対流、輻射、または他の任意の手段を通じて低温源によって取り出され得る。
【0079】
当業者に知られているように、スターリングエンジンは、高温源をホットチャンバーに付け、低温源をコールドチャンバーに付けることでガスの加圧および減圧を行うことによって動作する。スターリングエンジンによって生み出される効率およびパワーは、また、温度を上げた高温源と温度を下げた低温源とを使用しホットチャンバーおよびコールドチャンバー間に実質的な温度勾配を生じさせることで高められ得る。ホットチャンバーとコールドチャンバーとの間の温度勾配は、エンジン全体にわたる圧力分布を高め、ピストンをより活発に運動させる。したがって、高温熱交換器と低温熱交換器との間の温度差が大きければ大きいほど、スターリングエンジンの運転効率は高くなる。ピストンは、ピストンの運動がシャフトを回転させるようにシャフトに接続され得る。発電装置は、回転するシャフトの機械的エネルギーを電気に変換するようにシャフトに取り付けられ得る。
【0080】
スターリングエンジンを採用するシステムの例示的な一実施形態が図10に例示されている。スターリングエンジン発電システムは、図4図9および熱電発電装置を採用する実施形態を参照しつつ説明されているのとほぼ同じ方式で、ポンプステーション1010、スターリングエンジン発電装置1030(本明細書で参照されているように発電のためにスターリングエンジンと発電装置との両方を含む)、地殻内の深い井戸または他の穴1040内に置かれた管システム1020、および管システム1020を流れる伝熱媒体を含み得る。例示的な一実施形態において、スターリングエンジン発電システムは、水域1050内に、またはその近くに位置決めされ得る。他の例示的な実施形態において、スターリングエンジン発電システムは、水域1050から地理的に分離されてよく、任意選択で、たとえば、図7に例示されているように、二次管システムによってそれと熱的に連通するものとしてよい。
【0081】
管システム1020は、スターリングエンジン発電装置の高温接点(高温熱交換器とも称される)と界面接触し、管システム1020内の伝熱媒体とホットチャンバー(本明細書では「高温接点」または「高温熱交換器」とも称される)との間に熱的連通をもたらす。図4図8を参照しつつ上で説明されているものと同様の方式で、伝熱媒体(たとえば、水などの流体)は、ポンプ動作により、ポンプステーション1010を下って管システム1020に送られ熱せられる。管システム1020内の伝熱媒体は、ポンプステーションから穴1040の底部の方へ降下するときに地球によって熱せられる。伝熱媒体は、穴1040内の地球の温度に近くなるまで熱せられ得る。例示的な一実施形態において、伝熱媒体は、華氏200度を超える温度に熱せられ得る。管システム1020の最低点に到達した後、熱せられた媒体は穴1040から上昇して、スターリングエンジン発電装置1030のホットチャンバーに向かう。
【0082】
管内の熱せられた媒体は、スターリングエンジン発電装置1030の高温熱交換器と熱的に界面接触するための高温源を提供する。したがって、深い井戸または穴1040内で利用可能な熱は、中にあるガスを熱するためにスターリングエンジンと熱的に連通する非常に高い高温源を提供する。伝熱媒体は、地球によって熱することができ、スターリングエンジン発電装置1030のホットチャンバーに送達するために熱の大部分を保持することができる任意の流体を含み得る。例示的な一実施形態において、流体は水であるが、他の流体も、腐食を低減し、水の沸点をはるかに超える加熱を可能にするために使用されてよい。
【0083】
スターリングエンジン発電装置の低温熱交換器またはコールドチャンバー(本明細書では「低温接点」または「低温熱交換器」とも称される)は、図4図8を参照しつつ上でさらに説明されているような水域などの低温源と熱的に連通し得る。スターリングエンジン発電装置の例示的な一実施形態において、発電装置のコールドチャンバーは、コードチャンバーが温度躍層より低いところの低温水に接近し得るか、または温度躍層からの低温水がより低い温度のヒートシンクをもたらすように表面にポンプ動作により送られ得るように水域の温度躍層の下のある地点において水域と熱的に連通している。
【0084】
例示的な一実施形態において、高温源は、華氏100度から華氏600度の間であってよく、低温源は、約華氏32度から華氏130度の間であってよい。しかしながら、高温源および低温源は、これらの温度範囲に限定されないが、任意の適切な温度範囲にあればよいことは理解される。高温接点と低温接点との間の温度勾配(ΔT)は、例示的な実施形態において約470度から約68度の間であるものとしてよい。しかしながら、ここでもまた、温度勾配はこの範囲に限定されず、任意の温度勾配であってよいことは理解される。したがって、地殻内から利用可能な熱エネルギーを使用してスターリングエンジン発電装置の高温熱交換器における温度および低温熱交換器の温度を下げる水の冷たさを高めて、エンジンからの熱を放散するより強力なヒートシンクを形成することにより、温度勾配を最大化し、著しい量の電力を生産する。電力は、直流として生み出され得る。直流は、交流に変換され得る。三相電流も生み出され得る。スターリングエンジン発電装置から生み出される電力は、送電線を通して任意の送り先に伝送され得る。例示的な一実施形態において、既存の電力伝送設備および送電線は、現行の、または新規に構築された任意の配電網に電力を供給し得る。
【0085】
すでに述べているように、より大きい温度差を利用する他の発電手段は、本明細書において説明されているシステムおよび方法によって地殻から伝達される熱エネルギーと合わせて使用され得る。一例において、ランキンエンジンは、熱電発電装置またはスターリングエンジンのいずれかとほぼ同じ方式で使用されてよく、ポンプステーションからの伝熱媒体を井戸または穴の底部へ、次いでランキンエンジンに通し、そして戻すように循環させるが、水域などの低温源も活用する。
【0086】
図11は、図4図10を参照しつつ詳しく説明されているように、タービン1112および発電装置1114を備え得る発電手段1110と、ポンプステーション1120と、地殻内の深い井戸または穴1140内に貫入する管システム1130とを具備する、別の例示的な実施形態を示している。図11に例示されているように、管システムは、内部分管1132と外部分管1134とを備えるものとしてよく、これは図6および図9を参照しつつさらに詳しく説明されている。しかしながら、これらの例示的な実施形態のうちのどれも、たとえば、実質的にU字形の管などの、他の管構成を使用するものとしてよいことは理解される。
【0087】
管システム1130は、知られているように、ヒートパイプまたは熱サイホンとして構成され得ることはさらに理解される。ヒートパイプは、小さな温度勾配で著しい量の熱を輸送するように動作可能である伝熱機構である。ヒートパイプの内側で、高温源のところ、またはその近くにおいて、その中の伝熱流体は蒸発し、当然のことながら、発電手段1110などにおけるより低い温度の界面上で、またはその近くで流れ凝縮する。凝縮した後、液体は落下するか、または毛管作用によって高温源に戻され、再び蒸発し、このサイクルを繰り返す。したがって、管システム1130がヒートパイプとして構成される実施形態では、穴1140の底部から出る熱は、発電手段1110に素早く伝達されるものとしてよく、熱は取り出され、タービン1112を駆動するために使用され得る。ヒートパイプおよび熱サイホンは図11を参照して説明されているが、任意の実施形態においてヒートパイプ技術を採用してその中で使用される管システムの一部分または全部分を構成し得ることはさらに理解される。
【0088】
発電手段1110は、サムロールエネルギーサイクルプラント(Sumrall energy cycle plant)、マッターランエネルギーサイクルプラント、フラッシュ発電プラント、ドライスチーム発電プラント、バイナリ発電プラント、フラッシュ/バイナリ複合サイクル発電プラント、および同様のものを含むものとしてよく、これらの各々は図11を参照しつつさらに詳しく説明される。
【0089】
サムロールエネルギーサイクルプラントを発電手段1110として使用する例示的な一実施形態において、伝熱媒体は、通常室温で液体である媒体であるが、その沸点は水より低く、より低い温度で蒸発させることができる。サムロールエネルギーサイクルでは、低沸点媒体は、知られているようなバイナリサイクル発電プラントのように、管を下って送達される一次伝熱媒体と熱交換器を通して界面接触する二次流体としてではなくむしろ、管システム1130を下って直接送達される。サムロールエネルギーサイクルで使用するための例示的な媒体は、イソブタン、シクロペンタン、または摂氏100度未満で蒸発する他の材料を含み得る。したがって、より低い沸点を有する媒体は、より低い気化熱を有し、したがって、穴または井戸1140の底部のところで管システム1130内に到達した熱によって直接蒸発させられ、蒸気は発電手段1100内のタービン1112に直接輸送され、発電装置1114を駆動し電気エネルギーを生産することができる。タービンに通され送達された後、低沸点媒体は、次いで、再凝縮して液体になり、次の蒸発サイクルのために管システム1130を通り井戸1140を下って戻される。この例示的な実施形態は、サムロールエネルギーサイクルプラントと称されることがあり、完全にまたは実質的に閉ループの設計であってよく、他の熱電発電装置、熱機関、および同様のものの場合のように、低温源を必要とし得ない。さらに、この例示的な実施形態は、熱蒸気は自然に管システムを通って上昇し、重力により高温源に供給され得るので、ポンプステーションの使用を必要とし得ない。低沸点流体は、他の構成のうちのどれにおいても使用されてよく、流体界面ではなく高温接点において気体界面をもたらすことはさらに理解される。
【0090】
タービン内でイソブタンまたはシクロペンタンなどの低引火点流体を使用すると、その結果、水もしくは蒸気を使用した場合と比べてタービンの性能は改善され得る。低引火点流体は、(水または蒸気と比べて)低い圧力および低い速度で使用することができ、その結果、タービンの翼および金属部分品ならびに他の機器の摩耗が少なくなる。低引火点流体を使用することで、流量を大きくすることができ、これにより、大口径タービンを使用することが可能になる。これは、また、作動流体の速度を低下させ、その結果、タービンコンポーネントの摩耗および損傷を減らすことができる。また、低引火点流体が、タービン翼、ケーシング、および他のコンポーネントに当たる可能性のある同伴液体を取り込み、タービンを損傷する可能性が低くなる。
【0091】
別の例示的な実施形態において、発電手段1110は、マッターランエネルギーサイクル発電プラントであってよい。マッターランエネルギーサイクルは、一般的に、流体供給ポンプの使用を必要とせず、伝熱媒体として水の代わりに冷却剤と、一連の制御可能な弁を通して接続されている、蒸気を回収するための凝縮機構(図示せず)、すなわち、加熱のために高温源に送達する前に凝縮物質を加熱する熱交換器(図示せず)とを使用する結果として低温熱源のみを必要とする、閉ループエネルギーサイクルである。したがって、図11を参照すると、発電手段1110は、マッターランエネルギーサイクルプラントを含み得る。したがって、この例示的な実施形態における伝熱媒体は知られているような冷却剤である。さらに、図示されていないが、マッターランエネルギーサイクルプラントは、流体戻り管1134と連通して残留蒸気を凝縮して気体状態にする少なくとも1つの凝縮装置を含み得る。さらに、これも図示されていないが、マッターランエネルギーサイクルプラントは、流体戻り管1134と連通し、前に説明した熱交換器の下流にある少なくとも1つの熱交換器を含み得る。さらに、知られているような弁システムは、加熱のために管システム1130の底部および穴1140の底部に送達する前に凝縮装置および熱交換器を通りタービン1112から出る流体を選択的に制御し得る。熱した後、実質的に蒸発させられ得る流体は、知られているように、発電手段1110のタービン1112に送達され、そこで回転力を生じさせ、発電装置1114に伝達するものとしてよい。タービン1112を通して送達された後、利用される伝熱媒体は、再び、凝縮、熱交換器による加熱、高温源による加熱、および発電手段1110への再送達のその後のサイクルの間に流体戻り管1134を下って送達されることになるであろう。
【0092】
さらに他の実施形態では、ドライスチーム発電プラントまたはフラッシュサイクル発電プラントは、発電手段1110として採用され得る。ドライサイクル発電プラントの実施形態において、発電のために、蒸気が井戸(および一実施形態では地殻内に存在する蒸気を送達する開ループ構成である)内からタービン1112に送達される。フラッシュ蒸気発電プラントでは、タービン1112に送達する前に蒸気を生じさせるために加熱された水が井戸(図4図10を参照しつつ上で説明されているような閉ループ構成、または開ループ構成を含み得る)内から追加のフラッシュタンク(図示せず)に送達される。同様に、バイナリ発電プラントまたは組合せフラッシュ/バイナリ複合サイクルプラントは、その後、タービン1112および発電装置1114を駆動するために蒸発させられる、管システム1130と熱的に連通している二次作動流体を使用し得る。熱は、知られているように、熱交換器または一連の熱交換器を用いて、ポンプ動作により送られる一次媒体から井戸1140の底部に、および井戸1140の底部から二次作動流体に伝達されるものとしてよい。追加の作動流体を使用することで、管システム1130を下って井戸の底部にポンプ動作により送られるのとは異なる質を有する流体をタービン1112と界面接触させることができる。
【0093】
「ポンプステーション」という語が使用されこれらの例示的な実施形態を説明している場合に、「ポンプステーション」は、知られているような実際のポンプ、またはポンプ機能を備える必要はないことは理解される。したがって、本明細書において使用されているような「ポンプステーション」は、伝熱媒体を管システムに通して高温源および低温源のうちの一方もしくは両方に送達し、熱電発電装置、例示的な熱機関、例示的なタービン発電装置、および同様のものなどの、発電手段に戻るように動作可能である機構を単に指すだけであってよい。たとえば、知られているような任意のポンプ手段がいくつかの例示的な実施形態において企図され得るが、他の例示的な実施形態は、重力供給、サイホンベース、変位ベース、および同様のものであってよい。
【0094】
地熱発電システムには、発電の効率性または費用効果に関して問題がある。たとえば、掘削されたすべての地熱井のうちの約40%は非生産井である、すなわち、いくつかの理由から経済システムを持続しないか、または持続し得ず、理由としては、限定はしないが、熱資源が不十分である、熱伝導率が不十分である、地層圧が不十分で高温塩水を表面に送れない、などが挙げられる。さらに、地熱層内の熱媒体である塩水は、環境面および運用面で重大な問題を引き起こし得る。従来の地熱プロセスでは、高温塩水はポンプ動作により生産井から地盤の外に汲み出され、熱は地上に取り出され、塩水はポンプ動作により地盤の中に戻される。標準的なシステムは、塩水から熱の約15~20%を取り出し、塩水は、生産井から著しい距離のところ、たとえば、1~2キロメートル以上のところで注入井内の地熱層内に再導入される。熱は塩水から取り出されているので、塩水の飽和条件は変化しており、管、ポンプ、および熱交換器の表面上への塩分の析出(スケーリング)が生じ得る。塩水の析出は、配管を詰まらせ、伝熱能力を低下させ、ポンプ能力要件を高くし、管破裂の原因となり得る。塩水の析出を防ぐために、著しい量の水が塩水に加えられて元に戻されなければならない。必要な水の量は、生産する電力のMW当たり水1,000エーカーフィートと多量であり得る。したがって、50MWの地熱プラントは毎年163億ガロンの真水を使用し得る。
【0095】
それに加えて、塩水は、カドミウム、ヒ素、セレンなどの重金属、および硫化水素(H2S)などの有毒ガス、同様のものを含む、苛性および有毒成分を含有している場合がある。塩水を表面に移動した結果、これらの成分への曝露および環境内へのこれらの成分の放出の望ましくない事態が生じ得る。さらに、塩水は、腐食性が高く、塩水に曝される配管システムの腐食に対する防護策が講じられなければならない。
【0096】
本開示の実施形態は、従来の地熱電力生産の問題を克服し、および/または最小化するものである。本明細書において説明されている実施形態は、塩水を処理するか、または塩水と接触している配管および機器の量を最小限度に抑える。本明細書において説明されている実施形態は塩水をポンプ動作により表面に汲み上げずに、地熱層内の地中で熱交換を行う。これにより、大量の補給水または真水を必要としなくて済む。有害な塩水の成分は、表面に移動されず、地熱層内に保たれる。以下で説明されているさらなるシステムは、塩水を表面に移動するのに十分な地層圧を有し得ない既存の、使い尽くされた、または使用済みの油井およびガス井を利用することができる。
【0097】
本開示は、一次伝熱流体を中に有する地中熱交換器、一次伝熱流体がその熱を二次伝熱流体に渡す地上熱交換器、および二次伝熱流体を作動流体として利用する発電部分を利用する地熱発電システムに関するものである。システムは、有機ランキンサイクルを有利には使用することができ、この場合、イソブテン、イソペンタン、シクロペンタンなどの比較的低い沸点を有する有機液体(二次熱交換流体)は熱交換器内で液体から蒸気への相変化を受け、次いで、蒸気はタービンを通過し、再凝縮され、再循環される。
【0098】
図12Aは、地熱特徴から熱を取り出すためのシステムの例示的な実施形態を示している。発電システム1200は、一次熱交換器部分1205と、二次熱交換器部分1207と、発電部分1208とを備える。
【0099】
一次熱交換器部分1205は、地熱層1245内に掘削された穴または井戸1240と、一次熱交換器1220とを備える。井戸1240は、新規に掘削された井戸であってよい。地熱層1245は、地熱エネルギー源と、地熱層内の塩水などの熱媒体とを有することができる。いくつかの実施形態において、井戸1240は、干上がった井戸、使い果たされた油井もしくはガス井、または未使用井戸であってよい。一次熱交換器1220は、井戸1240内に、および地熱層1245内に挿入されるか、または配設され、二次熱交換器部分1207と連通している供給部分1222と戻り部分1224とを有する。供給部分1222および戻り部分1224の一部分は、井戸1240から外に延在し、システム1200の他のコンポーネントに接続する。
【0100】
いくつかの実施形態において、井戸内の温度は、深さが増すとともに上昇し得る。いくつかの井戸では、3000フィートまでの温度は減少し得る、すなわち、より低温になる。いくつかの実施形態において、温度は300フィート未満では高くなることがあり、したがって、地熱層1245からの有用な伝熱が生じ得る。いくつかの実施形態において、地熱特徴は、3000フィートから12,000フィート以上の深さで温度上昇を有し得る。ダウンホールの600°F以上の温度はシステム1200の動作に有利であり得る。戻り部分1224を出る熱交換流体温度は、有利には、約600°Fであるものとしてよい。一次熱交換器1220は、井戸の深さ全体または井戸のほぼ深さ全体に沿って延在し、伝熱は井戸の深さすべてに沿って生じ得る。いくつかの実施形態において、熱交換器は、効率的な伝熱のために十分高い地中温度を有する井戸の部分のみを通って延在することができる。
【0101】
一次熱交換器1220は、以下でより詳しく説明される。ポンプ1210は、供給部分1222および戻り部分1224と流体的に連通しており、一次伝熱流体を供給部分1222および戻り部分1224に通して循環させる推進力をもたらす。いくつかの実施形態において、ポンプ1210は、一次伝熱流体を強制的に地熱層1245内の井戸1240を下って送る陽圧を発生することができる。いくつかの実施形態において、ポンプ1210は、戻り部分1224を介して一次伝熱流体を井戸から上に引き揚げる陰圧を供給することができる。これは、供給部分1222内の流体の静水頭が井戸1240から一次伝熱流体を移動するのを補助することができるので有利であり得る。
【0102】
ポンプ1210は、遠心力ポンプ、容積移送式ポンプ、圧縮空気もしくは不活性ガス源、または他の任意のタイプのポンプであってよい。ポンプ1210は、電気的、機械的、または流体により駆動され得る。当業者であれば、ポンプ1210は、一次伝熱流体を井戸1240内におよび井戸1240から循環させる推進力をもたらすことができる任意のコンポーネントであり得ることを理解するであろう。
【0103】
いくつかの実施形態において、一次伝熱流体は、水などの高い熱容量を有する流体であってよい。いくつかの実施形態において、一次伝熱流体は、高温の気相/液相流体または有機伝熱流体であり得る。Therminol(登録商標)などの超高温伝熱流体が、有利に使用できる。いくつかの実施形態において、一次伝熱流体は、Therminolとナノ粉末マグネシウムなどのナノ粉末との混合物であってよい。Therminol(登録商標)などの高温伝熱流体を使用することで、水および蒸気を使用した場合と比べて、地熱層1245からの熱吸収を改善し、一次熱交換器1220および二次熱交換器1215内の腐食を低減することができる。伝熱流体は、地熱発電と関連付けられている高熱を取り扱うことができることが望ましい。一次伝熱流体の熱伝導率は、ナノ粉末または同様の成分を添加することによって高めることができる。一次伝熱流体はナノ流体であってよい。ナノ流体は、マグネシウムなどの金属のナノメートルサイズの粒子、または平均サイズが1~100nmである、流体の伝熱能力を改善する、セラミックもしくは他の粒子を有する流体であるものとしてよい。いくつかの実施形態において、マグネシウムナノ粉末は、1047J/kg-Kの熱容量を有する。一次伝熱流体の熱容量は、リチウムなどの、他の添加物を加えることによって高めることができる。いくつかの実施形態において、一次熱交換器1220は加圧状態を保つことで、一次伝熱流体が液体として維持され、十分な伝熱能力およびポンプ能力をもたらすことを確実にし得る。いくつかの実施形態において、一次伝熱流体は、システム1200の効率を改善することができる、共晶塩などの地熱伝熱に適した他の材料であってよい。
【0104】
一次熱交換器1220内の熱流は、一次伝熱流体がポンプ動作により下に向けて井戸1240内に送られるか、または他の何らかの方法で推進力を介して井戸1240内に移動されるとき生じる。地熱層1245からの熱は、熱媒体または塩水によって供給部分1222に伝えられる。熱媒体または塩水からの熱は、供給部分1222の壁を通り、一次伝熱流体中に伝達される。伝熱流体は、熱を吸収し、ポンプなどの、推進力を介して二次熱交換器部分1207に移動され、そこで、一次伝熱流体はその熱を二次伝熱流体に渡す。より冷たい一次伝熱流体は再循環されて井戸内を下りサイクルを繰り返す。
【0105】
井戸に戻った一次伝熱流体は、その熱をすべて二次伝熱流体に渡しているわけではないので、すでに周囲温度より高く熱せられている。典型的な地熱運転では、(塩水または蒸気からの)熱の約15~25%しか、熱源から取り出されず、塩水または蒸気の残り部分は、取り出し点から離れたところに再注入され、したがって、プロセスにはそれ以上役立たない。しかしながら、本出願は、この残留熱(元の熱の75~85%)がそれが取り出された同じ井戸内に再注入されて戻せるように設計されている。このようにして、一次流体は最適な温度に再加熱され、地熱層からの入熱を所望の温度に下げてシステムの熱的動作を最適にすることができる。この結果、システム1200内の無駄な熱が減らされ、稼動の効率が改善される。
【0106】
しかしながら、一次熱交換器1220の全体的表面積が、可能な限り管径を太くすることによって増加させることができることは理解されるであろう。たとえば、既存の井戸を使用するときなどいくつかの実施形態において、既存の井戸1240の直径は、既存のケーシングより小さな直径を有する熱交換器のみを許容し得る。しかしながら、アンダーリーマーの採用によって、井戸の裸坑セクション、すなわち、ケーシングを有しない井戸のセクションは、直径を大きくされる(既存のケーシングの直径を超える)ものとしてよく、本明細書の別のところで説明されているような拡張可能ケーシングまたは支持カラーが、井戸の裸坑セクション内に挿入され、それにより、より大口径の一次熱交換器1220を形成し得る。
【0107】
二次熱交換器部分1207は、二次熱交換器1215と、高温流体管路1232と、低温流体管路1234とを備える。いくつかの実施形態において、二次熱交換器1215はシェルおよびチューブ型熱交換器であってよい。いくつかの実施形態において、供給部分1222および戻り部分1224は、二次熱交換器1215のチューブ部分と流体的に連通する。高温流体管路1232および低温流体管路1234は、二次熱交換器1215のシェル部分と流体的に連通する。一次伝熱流体は、二次熱交換器1215のチューブ部分を通って流れ、その熱を二次熱交換器1215内の二次伝熱流体に渡し、二次熱交換器1215のシェル側上で流れる。二次伝熱流体は、一次伝熱流体の熱によって蒸発し、蒸発した二次伝熱流体は、発電装置部分1208内に流れ込む。
【0108】
二次伝熱流体は、フィードポンプ1237を介して高温流体管路1232および低温流体管路1234を通して循環される。フィードポンプ1237は、二次伝熱流体を二次熱交換器1215内に循環させる推進力を伝えることができる任意のタイプのポンプであってよく、本明細書の別のところで説明されているポンプに類似していてよい。
【0109】
いくつかの実施形態において、一次および二次伝熱流体は混合せず、二次熱交換器1215内で互いから分離される。
【0110】
二次伝熱流体は、二次熱交換器1215内で到達する温度で蒸発する流体であってよい。いくつかの実施形態において、二次伝熱流体は、水であってよい。いくつかの実施形態において、二次伝熱流体は、有利には、水より低い引火点を有する有機化合物であってよい。いくつかの実施形態において、二次伝熱流体は、有利には、イソブタンまたはシクロペンタンであってよい。
【0111】
発電装置部分1208は、タービン1230と、発電装置1232と、凝縮装置1235とを備える。蒸発した二次伝熱流体は、タービン1230の翼に当たり、発電装置1232に機械的に接続されているタービンシャフトを回転させる。タービン1230が回転すると、発電装置1232は電力を生み出す。タービン1230は、有利には、有機ランキンサイクルの一部分であり得る。
【0112】
凝縮装置1235は、冷却器1238から供給される冷却材を使用して二次伝熱流体を凝縮するように動作する。冷却器1238は、当技術分野で知られているような1つまたは複数の水冷塔もしくは空冷塔を備えることができる。いくつかの実施形態において、冷却器1238は、水域などの、大きなヒートシンクであってよく、冷却材は、ポンプ(図示せず)を介して送られるか、または自然に、凝縮装置1235を通して循環されるものとしてよく、これは本明細書の別のところで説明されているヒートシンクと同様である。凝縮された二次伝熱流体は、フィードポンプ1237を介して二次熱交換器1215内に循環し、そこで、熱せられ、再び蒸発する。
【0113】
熱交換器1215および1235は、本明細書において、シェルおよびチューブ型熱交換器として説明されている。しかしながら、当業者であれば、本開示によって誘導され、任意のタイプの熱交換器が使用され得ることを理解するであろう。それに加えて、当業者であれば、熱交換器のシェルおよびチューブ側に流れている流体は、本開示の範囲から逸脱することなく変更され得ることを理解するであろう。
【0114】
いくつかの実施形態において、発電システム1200は、二次熱交換器1215を備えていなくてもよい。この場合、一次伝熱流体は、井戸1240内で熱せられ、タービン1230用の作動流体としてタービン1230に循環し、次いで、凝縮装置1235内で凝縮され井戸1240に戻る。
【0115】
図12Bは、井戸1240内の一次熱交換器1220の一部分の拡大断面図である。井戸1240は、地熱層内に形成されたボアであってよく、本明細書の別のところで説明されているものに類似するものであってよい。地熱層1245内に、塩水などの液体が存在し得る。塩水は、地質学的影響によって地熱層1245内で熱せられる。熱せられた塩水は、地熱層1245内に流れ、また井戸1240内に流れ、熱を熱交換器1220に供給する。塩水がない場合などの、高温/乾燥ダウンホール条件の下で、周囲の岩石の熱伝導性によって熱が伝達され得ること、ならびに高温および高熱伝導材料が熱交換器の外側と干上がった井戸の壁との間に挿入され、高温/乾燥ダウンホール条件の下で熱伝導率を高め得ることは理解されるであろう。この場合、高熱伝導材料は、熱を高温岩石から一次熱交換器1220に伝達する熱媒体であってよい。
【0116】
一次熱交換器1220は、供給部分1222と戻り部分1224とを備える。供給部分1222は、地熱層1245と接触している外側シェル1264によって、また戻り部分1224によって囲まれている。外側シェル1264は、ケーシングジョイントまたはケーシングカプラ1227を使用して、端と端とを接して、互いに接続されている複数のケーシングユニットまたはセグメントを備える。このようにして、外側シェル1264は、地熱層1245の深さに到達するのに必要なだけ長くすることができる。ケーシングカプラ1227は、ケーシングの一方のセクションを他方に接続し、一次熱交換器1220の外部分境界を形成する。
【0117】
外側シェル1264は、使い果たされたもしくは未使用の油井またはガス井内のケーシングであってよい。いくつかの実施形態において、外側シェル1264は、まだケーシングを有していない掘削井戸内に設けられるか、または位置決めされ得る。既存のケーシングが井戸内に存在している場合、一次熱交換器1220は、ケーシング内に戻り部分1224を挿入し、塩水の漏入または一次伝熱流体の漏出を防ぐように封止されることによって形成され得る。戻り部分1224は、本明細書において説明されているようにケーシングまたは供給部分1222内に支持され得る。
【0118】
上で述べたように、塩水は非常に腐食性が高く、供給部分1222の外側シェル1264上の析出またはスケーリングの影響を受けやすい。鉄ケイ酸塩または硫酸バリウムなどのスケール物質は、外側シェル1264の井戸側表面に堆積するか、または蓄積する可能性がある。炭酸カルシウムは、井戸1249内の伝熱プロセスが等圧であるので外側シェル1264上にスケールを生じ得ない。外側シェル1264上のスケール蓄積は、外側シェル1264の熱伝導率を下げ、塩水から一次伝熱流体に伝達される熱の量を少なくする。
【0119】
腐食およびスケールの蓄積を防ぐか、または最小限度に抑え、一次熱交換器の耐用稼動年数を延ばすために、外側シェル1264の材料は、慎重に選択され得る。たとえば、外側シェルは、その後ニッケル合金625などの耐食性材料で被覆されるステンレス鋼から形成することができる。ニッケル合金625は腐食およびスケーリングに耐え、外側シェル1264の高熱伝導率を維持する。耐食性材料はスケールが形成し始めるために必要とされる核形成部位の形成に耐えるので、耐食性材料も効果的なスケール防止剤であり得る。
【0120】
また、運転中に塩水と接触する外側シェル1264の外面は、非常に滑らかな非金属材料でコーティングされ得る。コーティングは炭素またはホウ素などの非金属材料を使用する。この非金属材料は、化学気相成長(CVD)または蒸着合金化(VDA)を介して施され得る。非金属材料は、イオン結合部位が形成するのを防ぎ、したがってスケール形成を防ぐ。
【0121】
ダイヤモンド状炭素(DLC)コーティングは、有利には、外側シェル1264の外面に施され得る。DLCは、著しい量のsp3混成軌道炭素原子を有する非晶質炭素材料の一クラスである。DLCの一形態、たとえば、4面体非晶質炭素(ta-C)は、有利に使用され得る。ta-Cの厚さ2mmのコーティングは、摩損、スケーリング、および他のファウリングに対するステンレス鋼(または低もしくは高グレードの鋼鉄)の耐性を大幅に高めることができる。DLCの他の形態も有利に使用することができ、水素、黒鉛状炭素、または金属を有する形態などが、費用を低減し、他の望ましい特性を付与するために使用できる。いくつかの実施形態において、窒化炭素、窒化ホウ素、または他の炭素もしくはホウ素含有材料は、スケーリングおよび腐食を防ぐか、または最小限度に抑えるために外側シェル1264の外面に有利に施され得る。窒化ホウ素コーティング(CVDまたはVDAまたは類似の方法を介して施される)は、一次熱交換器1220の稼動寿命を最大10倍改善することができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、外側シェル1264は、塩水によるスケーリングおよび腐食に耐える、高熱伝導性セラミックから形成されるか、またはコーティングされ得る。
【0123】
戻り部分1224は、供給部分1222の外側シェル1264内に同心円状に配設される戻り管1254を備える。戻り部分1254を通る流れの速度は、戻り管1254が外側シェル1264よりも小さい直径を有するので、供給部分1222内よりも高くなる。戻り管1254内のより高い速度は、一次伝熱流体が戻り管1254内を上昇するときに、供給部分1222内の一次伝熱流体のより冷たい部分への戻り管の壁を通る熱損失を制限することができる。
【0124】
それに加えて、戻り管1254を通る、供給部分1222から戻り部分への伝熱を最小限度に抑えるために、断熱層1225が戻り管1254の表面に加えられ得る。この断熱層は、供給部分1222と戻り部分1224との間の望ましくない伝熱を防ぎ、下げ、および/または最小限度に抑えることができる。断熱層1225は、戻り管1254の内面上、外面上、または内面と外面の両方に配設され得る。いくつかの実施形態において、断熱層は、たとえば、ポリベンゾイミダゾール(PBI)または高い熱抵抗および低い熱伝導率を有する他の類似の材料などの、耐熱性ポリマーを含み得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、戻り管1254は、真空断熱管類であってよい。真空断熱管類は、2つの壁の間に真空にされた空間を有する二重壁チューブである。真空にされた空間は、戻り管1254内の一次伝熱流体を供給部分1222内の一次伝熱流体から断熱する。いくつかの実施形態において、戻り管は真空断熱管類であってよく、それに加えて、上に断熱コーティングを施してあってよい。
【0126】
戻り管1254は、1つまたは複数のセントラライザ1228を使用して外側シェル1264内に同心円状に適所に支持される。セントラライザは、ケーシングカプラ1227のところ、またはその近くの外側シェル1264の内面から延在し、戻り管1254の外面に接続されている角ブレースである。セントラライザ1228は、戻り管1254の外面の方へ外側シェル1264の内面から下方に角度を付けられている。図12Bは一次熱交換器1220の一方の側のセントラライザ1228を示しているのみであるが、これらは図12Dに関して説明されるように戻り管1254の周上に延在するものとしてよい。セントラライザ1228は、外側シェル1264内の中心に位置する戻り管1254を支持し、維持するように働く。セントラライザ1228は、一次伝熱流体の流れに対する液圧抵抗を最小にする狭プロフィールを有する。
【0127】
戻り管1254は、中に1つまたは複数の穿孔1223を有するように形成される。1つまたは複数の穿孔1223は、供給部分1222と戻り部分1224との間に流体経路をもたらす。いくつかの実施形態において、戻り管1254は、下面1255上で蓋をされ、穿孔が戻り管1254の底面1255に近い位置に周上に形成される。いくつかの実施形態において、戻り管1254の下面1255は蓋をされず、熱せられた一次伝熱流体は上昇して戻り管1254の底部内に流れ込む。いくつかの実施形態において、戻り管1254は、穿孔1223を備え、下面1255上で蓋を外されている。
【0128】
穿孔1223は、有利には、ポンプ動作の結果としてシェルの底部にかかる圧力を減じることによって一次熱交換器1220を通る第1の伝熱流体を循環させるための電力要件を改善することができる。
【0129】
一次伝熱流体は、矢印1222aおよび1222bによって示される方向に一次熱交換器1220を通って流れる。例として、低温、または比較的低温の一次伝熱流体は、矢印1222aによって示されているように、二次熱交換器1215から井戸1240を下り供給部分1222内に、セントラライザ1228の周りに、そして一次熱交換器1220の底面1255に、またはその近くに流れる。一次伝熱流体が供給部分1222を下って流れると、これは塩水と熱的に接触している外側シェル1264を介して地熱層1245から熱を受け取る。地熱層からの熱は、外側シェル1264を伝わり、一次伝熱流体に伝導しおよび/または対流で伝熱する。
【0130】
高温、または比較的高温の一次伝熱流体は穿孔1223を通り、戻り管1254内に流れ込む。戻り管の断熱が、戻り管1254内の高温の一次伝熱流体と供給部分1222内を下って流れるより低温の一次伝熱流体との間の伝熱を最小限度に抑える。次いで、高温の一次伝熱流体は、戻り管1254を上って流れ、二次熱交換器1215に、またはいくつかの実施形態では、タービン1230に流れる。
【0131】
一次熱交換器1220の外側シェル1264は、井戸1240内の適所に支持される。外側シェル1264は、一般的に、井戸1240より直径が小さく、したがって、外側シェル1264と井戸1240の内壁1263との間にギャップがある。
【0132】
いくつかの使い尽くされたまたは干上がった油井およびガス井では、井戸1240内のケーシングを支持するためにポルトランドセメントまたは高ケイ酸セメントが使用されてきた。本明細書において説明されているいくつかの実施形態において、ケーシングは、一次熱交換器1220の外側シェル1264を形成することができる。井戸内で使用されるポルトランドセメントおよび他の類似の構造材料は、非常に低い熱伝導率を有する。ポルトランドセメントは、特に、約0.2W/m・Kの熱伝導率を有する。低い熱伝導率を有する支持材料を使用すると井戸1240内の伝熱を大幅に抑制することがわかっている。そのような低い熱伝導率を有する一次熱交換器1220を支持する構造材料であれば、地熱層1245および塩水から一次熱交換器1220への伝熱を大幅に抑制することであろう。干上がった油井またはガス井などの既存の井戸を使用するときには、既存の井戸の一部分がすでにケーシングにされ、地熱塩水が上へ逆流しなおいっそう浅い真水帯水層内に流れ込むことができないように地熱層内でケーシングがしっかりしたものになるまで低伝導率セメントで固められる。特定の深さ、いくつかの実施形態では、井戸の深さの底から2/3より下に、裸坑、またはケーシングされていない井戸があり、これは地熱層1245内で非常に高い温度状態にあり、その中に熱交換器が挿入されてよく、そこで本明細書において説明されている伝熱動作が実行され得る。一例において、深さ12,000ftの井戸では、最初の3000フィートでは、地表面下の温度は戻り側の一次伝熱流体の温度(355°F)より冷たく、したがって、非伝導性セメントは、その初期戻りサイクルにおける上側層への熱損失を防ぎ、活用されていないセクションのみは3,000から4,000ftの深さ(井戸は地熱層に対して開いている)にある。
【0133】
井戸1240内の一次熱交換器1220を支持するための構造材料に対する好ましい熱伝導率値は、約15W/m・Kであることがわかっている。15W/m・Kより低い熱伝導率では、地熱エネルギーを効率的に使用するまたはその使用を最大にするのに十分な熱流束をもたらし得ず、15W/m・Kを超える熱伝導率値は熱流束をさらに増大させるが、より高い熱伝導率を有する材料を用意するコストに対する収穫逓減点までである。高い熱伝導率を有するセメントまたは構造材料は、有利には、井戸1240内のケーシングまたは外側シェル1264を支持するために使用できる。いくつかの実施形態において、以下でより詳しく説明されるように、一次熱交換器1220は、セメント、コンクリート、またはグラウトを使用することなく、井戸1240内で懸架または支持され得る。
【0134】
支持材料において好ましいまたはより高い熱伝導率を達成するために、熱的に強化された材料を有するコンクリートまたはグラウトが使用され得る。たとえば、セメントまたはグラウトは、アルミニウム、銅、磁鉄鉱などの金属粉末を添加することによって熱的に強化され得る。高い熱伝導率値を有するこれらの材料をセメントまたはグラウトに添加することで、その結果得られるコンクリートの熱伝導率を高める。セメントまたはグラウトは、添加された金属粉末と反応しないように中性から中性に近いpHを有するべきである。アルカリ性または酸性のグラウトは添加された金属材料と反応する可能性があり、結果としてガスの発生、腐食、およびセメントまたはグラウトの弱化が生じることもあり得る。
【0135】
図12Bに示されているようないくつかの実施形態において、外側シェル1264は、熱的に強化されたセメント1260を使用することによって適所に支持される。熱的に強化されたセメント1260は、井戸1240の外側シェル1264と内壁1263との間に配設され得る。熱的に強化されたセメント1260は、地熱層1245と一次熱交換器1220との間の伝熱を改善し、外側シェル1264を井戸1240内で適所に支持する。
【0136】
図12Cは、井戸1240内の一次熱交換器1220の一実施形態を示しており、外側シェル1264は複数の横方向支持カラー1261を使用して適所に支持されている。横方向支持カラー1261は、井戸1240の内壁1263から延在し、外側シェル1264と接触する。横方向支持カラー1261は、外側シェル1264の周上に、また外側シェル1264の長さに沿って間隔をあけて並び、外側シェル1264から井戸1240の内面1263の方へ下方にある角度で延在し得る。したがって、横方向支持カラー1261を使用することで、井戸1240の内壁1263と外側シェル1264との間にギャップ1246を残す。地熱層内の塩水は、ギャップ1246の周りに、およびギャップ1246を通って流れることができ、塩水は、一次熱交換器1220の外側シェル1264と直接接触することができる。この配置構成は、地熱層から一次熱交換器1220への伝熱を高める。いくつかの井戸1240において、外側シェル1264と接触する塩水以外の真水地下水または他の伝熱媒体があり得ることは理解されるであろう。
【0137】
横方向支持カラー1261を外側シェル1264から半径方向外向きに下方に延在させることでも、井戸1240内へ下方に、または負のy軸方向に、一次熱交換器の支持を行うか、またはその移動を制限するが、井戸1240から外に、または正のy軸方向に、上方への移動を可能にする。横方向支持カラー1261は、移動可能である接合部分、またはヒンジのところで、外側シェル1264の外面に取り付けられ得る。熱交換器1220が井戸内に挿入される前に、横方向支持カラーは、付勢されたおよびヒンジ付きの、枢動可能な、または移動可能であるが、取り外し可能でない、接合部分を介して熱交換器の外側シェルに第1の端部で留められ得る。横方向支持カラーの他端は、外側シェル1264の外面に当たって折れ曲がり、一時的接続または分解性材料によって適所に保持され得る。熱交換器1220が井戸1240内に挿入されると、横方向支持カラーは外側シェル1264の外面と同一平面であるか、またはほぼ同一平面であり、熱交換器1220は、横方向支持カラー1261からの干渉を受けることなく井戸1240内に貫入することができる。熱交換器が井戸1240内の適所にあるときに、一時的接続または分解性材料は分解することができる。一時的接続が低下したときに、横方向支持カラー1261の第1の端部における接合部分の付勢力により、横方向支持カラー1261は図12Cに示されている位置まで延在し、井戸1240の内面に当たり、熱交換器1220を井戸1240内で支持する。
【0138】
いくつかの実施形態において、一時的接続または分解性材料は、井戸1240内が苛性になっているという条件により分解するか、または井戸1240の下方に向かって高温になることで熱的に分解するか、またはその両方を行うように構成される。別の分解メカニズムも同様に使用できる。
【0139】
この配置構成は、一次熱交換器1220が必要ならば井戸1240から上方に容易に取り外されることを可能にするが、一次熱交換器1220が井戸1240内にさらに下方に移動することを防ぐ。いくつかの実施形態において、一次熱交換器1220は、有利には、陸地または水面から井戸1240内に懸架され得る。
【0140】
図12Cは、また、接合部分1229のところで戻り管1254に接続され、外側シェル1264に接続されていない、水平ブレースとしてセントラライザ1228を示している。この配置構成は、戻り管1254をシェル1264内の中心に配置し、戻り管1254がシェル1264(またはケーシング)または井戸1240から、メンテナンス、交換、点検、および同様の作業のために取り外されることを可能にする。戻り管1254がケーシングから取り外されるとき、セントラライザ1228は戻り管1254とともに取り外される。この配置構成は、また、シェル1264に接続されている構造の配列を操縦しなくても戻り管1254をシェル1264内に挿入することを可能にする。
【0141】
いくつかの実施形態において、セントラライザ1228は、水平方向に配置構成され、戻り管1254およびシェル1264の両方に接続され得る。
【0142】
図12B内の角度を付けられたセントラライザ1228の配置構成は、熱的に強化されたコンクリート1260を有する一実施形態において示され、図12Cの水平セントラライザ1228の配置構成は、支持カラー1261を備える一実施形態において示されているが、水平セントラライザ1228は、熱的に強化されたコンクリート1260によって支持される熱交換器内で使用され得ること、および角度を付けられたセントラライザは、支持カラー1261によって支持される熱交換器内で使用され得ることは明確に企図されている。
【0143】
図12Dは、セントラライザ1228の配置構成を示す一次熱交換器1220の上面図である。図示されているように、セントラライザは戻り管1254から半径方向外向きに延在し、外側シェル1264の方へ向かい、戻り管1254の周上に配設される。一次伝熱流体が流れることを可能にするようにセントラライザ1228の間に空間がある。図12Dに示されているセントラライザ1228の図は、角度を付けられた、または水平セントラライザ1228のいずれかに当てはまるものとしてよい。図12Dは、セントラライザ1228が第1の伝熱流体の流れに対する液圧抵抗を最小にするように狭くなっていることを示している。
【0144】
発電するためのシステムおよび方法は、また、設備、機器、および同様のものを加熱し、冷却するように適合され得る。加熱および冷却の用途では、システムはタービンまたは発電装置を備える必要はないが、熱交換器および制御システムを使用して建物、部屋、機器、および同様のものの温度制御を行うことができる。それに加えて、吸収または吸着を使用することで、冷却機器は、有利には、本明細書において説明されている地熱エネルギーを使用する設備および機器の冷却を行うことができるか、または大気中水蒸気の凝縮に使用することができる。
【0145】
図12に関して説明されている一次熱交換器に関する発電システムと詳細は、有利には、本明細書において説明されている熱電発電装置、スターリングエンジン、マッターランサイクル、有機ランキンサイクル、従来のランキンサイクル、または他の任意のサイクルもしくはプロセスを有する実施形態において使用され得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、たとえば、井戸の地熱圧力が不十分であるか、または地熱層内の熱媒体移動が望ましいものより少ない場合に、地熱層および井戸内の熱媒体の流れが十分であることを確実にする策が講じられ得る。たとえば、水圧破砕が、地熱層への熱媒体の全体的な体積露出を増やすように、また一次熱交換器の周り、その上、およびそれに接する循環経路を形成することによって、井戸の近くの領域内で実行され得る。いくつかの実施形態において、水圧破砕は、たとえば、破砕水に含まれる、約80メッシュまたは177マイクロメートルの平均粒子径を有する砂を使用して実行することができる。当業者であれば、本開示に導かれて、本明細書において説明されている実施形態において他の砂の粒径がどのように使用され得るかを理解するであろう。いくつかの実施形態において、砂は、スケール阻害化学物質でコーティングされるか、または混合され得る。スケール阻害化学物質は、一次熱交換器の外側シェル上にスケールが形成するのを防ぐために水圧破砕の中に挿入することができる。そのような化学物質は、アクリル酸重合体、マレイン酸重合体、およびホスホン酸塩を含むことができる。いくつかの実施形態において、スケール阻害化学物質は、望ましい溶解度、熱安定性、および投与効率特性に関して選択することができる。
【0147】
井戸の建設は、本明細書において説明されているような複数の支持カラーを地熱特徴における掘削井戸内に挿入することによって実現され得る。ケーシングユニット、またはケーシングセグメントは、表面上に組み立てることができ、次いで、井戸内に挿入され、支持カラーによって適所に支持することができる。いくつかの実施形態において、ケーシングセグメントは、個別に、井戸内に挿入され、支持カラーによって支持される。ケーシング部分が完了したときに、戻り管がケーシング内に同軸となるように挿入されるものとしてよく、適切な入口および出口ならびに接続部分が作られるものとしてよい。いくつかの実施形態において、熱交換器は、井戸内に、完成ユニットとして挿入されるものとしてよく、支持カラーによって支持され得る。熱交換器にスケールが付いたか、または熱交換器が効率的な伝熱を行えないときに、ユニットは、井戸から取り外され、新しい熱交換器と交換されるか、または取り外された熱交換器は清掃/修理され、井戸内に再挿入されるものとしてよい。
【0148】
前述の内容は、本発明の例示的な実施形態にのみ関係し、本明細書では多数の変更および修正が本明細書において定義されているような適用の精神および範囲から逸脱することなく加えられ得ることは明らかとされたい。
【0149】
上の説明では、本発明のいくつかの方法および材料を開示している。本発明は、方法および材料における修正、さらには加工方法および機器における改変の影響を受けやすい。そのような修正は、本開示の考察または本明細書で開示されている発明の実施から当業者にとって明らかになるであろう。その結果、本発明の範囲が、本明細書において開示されている特定の実施形態に限定されることは意図されていないが、本発明の真の範囲および精神に収まるすべての修正および代替を対象とすることが意図されている。
【0150】
前述の説明は、本明細書において開示されているシステム、デバイス、および方法のいくつかの実施形態の詳細を述べている。しかしながら、前述の説明が本文中でどれだけ詳細なようであるかに関係なく、システム、デバイス、および方法は、多くの仕方で実施され得ることは理解されるであろう。上でも述べたように、本発明のいくつかの特徴または態様を説明するときの特定の用語の使用は、その用語が関連付けられている技術の特徴もしくは態様の任意の特定の特性を含むことに制限されるように本明細書において再定義されていることを意味するものと解釈されるべきでないことに留意されたい。
【0151】
当業者であれば、説明されている技術の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更が加えられ得ることも理解するであろう。このような修正および変更は、実施形態の範囲内に収まることが意図されている。当業者であれば、一実施形態に含まれる部分は他の実施形態と取り替え可能であり、図示されている実施形態からの1つまたは複数の部分は任意の組合せで他の図示されている実施形態に付属し得ることも理解するであろう。たとえば、本明細書において説明されおよび/または図に示されているさまざまなコンポーネントはどれも、他の実施形態と組み合わされ、取り替えられ、または除外されてよい。
【0152】
本明細書における実質的に複数形および/または単数形の語の使用に関して、当業者であれば、背景状況および/または用途に応じて適切に、複数形を単数形に、および/または単数形を複数形に変えることができる。さまざまな単数形/複数形の置き換えは、本明細書ではわかりやすくするために明示的に述べる場合がある。
【0153】
当業者であれば、一般に、本明細書で使用されている言い回しは、「制約のない」言い回し(たとえば、「含む(including)」という言い回しは、「限定はしないが、含む」と解釈すべきであり、「有する」という言い回しは、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む(includes)」という言い回しは、「限定はしないが、含む」と解釈すべきである、など)として一般的に意図されていることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、導入される請求項列挙の特定の数が意図されている場合、そのような意図は、請求項内で明示的に記載され、そのような列挙がない場合は、そのような意図は存在しないことを理解するであろう。たとえば、理解の助けとして、付属の請求項に、「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」という導入句の使用を含めて請求項列挙を導入することができる。しかし、このような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項列挙の導入によって、たとえそのような導入された請求項列挙を含む任意の特定の請求項が「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」という導入句、および「a」または「an」などの不定冠詞を含むとしても、その請求項がそのような列挙を1つしか含まない実施形態に制限されることを意味すると解釈すべきではなく(たとえば、「a」および/または「an」は、典型的には、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)、請求項列挙を導入するために使用される定冠詞の使用についても同じことが成り立つ。
【0154】
それに加えて、特定の数の導入される請求項列挙が明示的に記載されるとしても、当業者であれば、そのような列挙は、典型的には、少なくとも記載されている数を意味するものと解釈すべきであることを理解するであろう(たとえば、他に修飾語を付けない「2つの列挙」という飾りのない列挙は、典型的には、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどのうちの少なくとも1つ」に類似の慣例的言い回しが使用される場合、一般に、このような構文は、当業者がこの慣例的言い回しを理解するという意味で意図されたものである(たとえば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定はしないが、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に、などを有するシステムを含む)。「A、B、またはCなどのうちの少なくとも1つ」に類似の慣例的言い回しが使用される場合、一般に、このような構文は、当業者がこの慣例的言い回しを理解するという意味で意図されたものである(たとえば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定はしないが、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に、などを有するシステムを含む)。さらに、当業者であれば、説明中であろうと、請求項中であろうと、図面中であろうと2つもしくはそれ以上の代替語を示す実質的に任意の離接語および/または語句は、複数の語のうちの1つ、複数の語いずれか、または両方の語を含む可能性を考えるものと理解されるべきであることを理解するであろう。たとえば、語句「AまたはB」は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0155】
本明細書で使用されるような「備える」という語は、「含む」、「収容する」、または「によって特徴付けられる」の同義語であり、包括的または非制約的であり、別の記載されていない要素または方法ステップを排除するものではない。本願発明の実施形態は以下のものをさらに含む。
地熱発電用途において使用するための熱交換器であって、
井戸内に配設され、伝熱流体を収容するように構成されているスケール防止および/または防食層を上に有するケーシングであって、伝熱流体を保持するためのシェルを形成するケーシングと、
前記井戸内に配設されている複数の支持カラーであって、前記複数の支持カラーは前記井戸内で前記ケーシングを支持し、前記複数の支持カラーは前記井戸の内面から前記ケーシングの方へ一般的に上向きの角度で配設される、複数の支持カラーと、
円筒形シェル内の同軸上に配設される戻り管であって、前記ケーシングおよび前記戻り管の配置構成は、前記戻り管と前記円筒形シェルとの間に円環を形成し、前記戻り管の内部容積は前記円環から断熱される、戻り管と、
前記円環内に配設されている複数のセントラライザであって、前記複数のセントラライザのうちの各々は第1の端部と第2の端部とを備え、前記複数のセントラライザの前記第1の端部は前記シェルの内面に接続され、前記複数のセントラライザの前記第2の端部は前記戻り管の外面に接続され、前記セントラライザは前記円環内の流れに対する液圧抵抗を最小にするように低プロフィールを有する、複数のセントラライザとを備え、
前記複数の支持カラーは、前記井戸の前記内面と前記ケーシングとの間を熱媒体が流れることを可能にするように構成される熱交換器。
【符号の説明】
【0156】
10 熱電対列
12 第1のワイヤ
14 第2のワイヤ
16 接合端
20 熱電対列
22 n型半導体材料
24 p型半導体材料
300 熱電発電装置
310 入力
312 コールドプレート
320 高温接点
330 出力
332 ホットプレート
350 熱電対列
360 低温接点
400 熱電発電システム
402 水域
404 地殻
410 ポンプステーション
416 穴
420 管システム
422 管
423 外側管
424 内側管
425 円環
430 熱電発電装置
440 伝熱流体
450 送電線
625 ニッケル合金
810 冷却装置
900 管システム
910 外側管
920 内側管
930 フィン
1010 ポンプステーション
1020 管システム
1030 スターリングエンジン発電装置
1040 穴
1050 水域
1100 発電手段
1110 発電手段
1112 タービン
1114 発電装置
1120 ポンプステーション
1130 管システム
1132 内部分管
1134 外部分管
1134 流体戻り管
1140 深い井戸または穴
1200 発電システム
1205 一次熱交換器部分
1207 二次熱交換器部分
1208 発電部分
1210 ポンプ
1215 二次熱交換器
1220 一次熱交換器
1222 供給部分
1222a、1222b 矢印
1223 穿孔
1224 戻り部分
1225 断熱層
1227 ケーシングジョイントまたはケーシングカプラ
1228 セントラライザ
1229 接合部分
1230 タービン
1232 発電装置
1232 高温流体管路
1234 低温流体管路
1235 凝縮装置
1237 フィードポンプ
1238 冷却器
1240 穴または井戸
1245 地熱層
1246 ギャップ
1249 井戸
1254 戻り管
1255 下面、底面
1260 セメント、コンクリート
1261 横方向支持カラー
1263 内壁
1264 外側シェル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D